(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
n型層、活性層、およびp型層がこの順で積層された積層構造を有するIII族窒化物半導体発光素子において、前記活性層、およびp型層の一部の領域を除去して前記n型層を露出させてメサ構造を形成し、露出した前記n型層の表面に負電極層を形成する方法であって、
前記n型層表面の前記負電極層が形成される領域を、少なくとも、前記メサ構造に近い第一領域と、前記第一領域よりも広い面積を有する第二領域とに区分けする工程、
Ti、VおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなる第一金属電極層を前記第一領域に形成する工程、
Ti、VおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなり、前記第一金属電極層よりも薄い厚みの第二金属電極層を、前記第二領域、および前記第一金属電極層上に形成する工程、
仕事関数が4.0〜4.8eVであり、且つ比抵抗が1.5×10-6〜4.0×10-6Ω・cmである金属からなる反射電極層を前記第二金属電極層上に形成する工程、
Au、およびPtからなる群より選ばれる少なくとも1種の貴金属からなる貴金属層を前記反射電極層上に形成する工程、
前記貴金属層を形成した後、400℃以上1000℃以下の温度で熱処理する第二の熱処理工程を含み、
前記第一金属電極層を形成した後であって前記反射電極層を形成する前までに、800℃以上1200℃以下の温度で熱処理を行い、前記第一金属電極層と前記第1領域との界面に前記第一金属電極層の金属の窒化物又は前記第一金属電極層の金属及び前記n型層のIII族原子の複合窒化物からなる層を形成する第一の熱処理工程を含み、
前記第一の熱処理工程又は前記第二の熱処理工程において、前記第二金属電極層と前記第二領域との界面に前記第二金属電極層の金属の窒化物又は前記第二金属電極層の金属及び前記n型層のIII族原子の複合窒化物からなる層が形成されることを特徴とするn型負電極の形成方法。
n型層、活性層、およびp型層がこの順で積層された積層構造を有するIII族窒化物半導体発光素子において、前記活性層、およびp型層の一部の領域を除去して前記n型層を露出させてメサ構造を形成し、露出した前記n型層の表面に負電極層を有するIII族窒化物半導体発光素子であって、
前記n型層表面の前記負電極層が形成される領域が、前記メサ構造に近い第一領域と、前記第一領域よりも広い面積を有する第二領域とを有し、
Ti、VおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなる第一接合金属層と、仕事関数が4.0〜4.8eVであり、且つ比抵抗が1.5×10-6〜4.0×10-6Ω・cmである金属からなる反射電極層と、Au、およびPtからなる群より選ばれる少なくとも1種の貴金属からなる貴金属層とがこの順で積層された第一オーミック電極層を前記第一領域上に有し、
Ti、VおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなり、前記第一接合金属層よりも薄い厚みの第二接合金属層と、前記反射電極層と、前記貴金属層とがこの順で積層された第二オーミック電極層を前記第二領域上に有し、
前記第一接合金属層と前記第一領域との界面には、前記第一接合金属層の金属の窒化物又は前記第一接合金属層の金属及び前記n型層のIII族原子の複合窒化物からなる層が設けられ、
前記第二接合金属層と前記第二領域との界面には、前記第二接合金属層の金属の窒化物又は前記第二接合金属層の金属及び前記n型層のIII族原子の複合窒化物からなる層が設けられていることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の方法は、n型層、活性層、およびp型層がこの順で積層された積層構造を有するIII族窒化物半導体発光素子において、前記p型層の一部の領域を除去して前記n型層を露出させてメサ構造を形成し、露出したn型層の表面に負電極層を形成する方法である。
【0022】
以下、順を追って説明する。
図2に本発明の好適な一態様である工程図を示した。先ず、n型層、活性層、およびp型層がこの順で積層された積層構造を有するIII族窒化物半導体発光素子について説明する。
【0023】
(III族窒化物単結晶層からなるn型層(n型層の準備))
本発明において、III族窒化物単結晶よりなるn型層は、公知の方法で製造することができる。なお、本発明においてIII族窒化物とは、一般式Al
AIn
BGa
1−A−BN(ただし、A、B、Cは、0≦A≦1.0、0≦B≦1.0、0≦A+B≦1.0を満足する。)で示される組成を満足するものである。
【0024】
前記n型層は、その用途に応じて、組成や構成を適宜決定すればよい。例えば、
図1(図に示すように、該n型層20は、窒化アルミニウム(AlN)基板のような単結晶基板10上や、該基板10上に組成の異なるIII族窒化物半導体層(III族窒化物単結晶層)が1層以上形成された積層体上に、形成されていてもよい。また、n型層20には、ドーパントとしてSiを含むこともできる。なお、該基板10、n型層20の厚みは、使用する用途に応じて適宜決定すればよい。n型層20の厚みは、通常、0.5〜5.0μmである。
【0025】
このようなn型層は、例えば、有機金属気相成長法(MOCVD法)により形成することができる。具体的には、市販の装置を使用し、前記単結晶基板上に、または、前記積層体上に、III族原料ガス、例えば、トリメチルアルミニウムのような有機金属のガスと、窒素源ガス、例えば、アンモニアガスのような原料ガスを基板上に供給することにより、n型層を形成することができる。前記MOCVD法によりn型層を形成する条件は、公知の方法を採用することができる。
【0026】
本発明においては、前記方法に従いn型層を形成することができる。該n型層は、特に制限されるものではなく、前記組成で示されるIII族窒化物単結晶から構成されればよい。そのため、n型層は、GaN層であってよい。ただし、本発明の方法は、特に、n型層がAlを含むIII族窒化物単結晶から構成される場合、中でも、Al
xIn
yGa
zN(x、y、zは、0<x≦1.0、0≦y≦0.1、0≦z<1.0を満たす有理数とし、x+y+z=1.0である)で示される組成を満足するIII族窒化物単結晶から構成される場合に、優れた効果を発揮する。中でも、本発明においては、Alの含有量が多いIII族窒化物単結晶からなるn型層の場合に、特に好適に適用される。具体的には、上記Alの含有量が多いIII族窒化物単結晶の中でも、好ましくはxが0.5以上であり、特に好ましくはxが0.6以上であるIII族窒化物単結晶からなるn型層の場合に、本発明の方法は、特に好適に適用される。なお、この場合、yは0以上0.1以下であればよいが、特にyは0であることが好ましい。
【0027】
(メサ構造の形成およびダメージ層の除去)
本発明において、得られる窒化物半導体発光素子は、III族窒化物単結晶からなる上記n型層上にコンタクト電極部(
図1の第一金属電極層61)が形成された部分と、反射電極部(第二金属電極層62a/反射電極層62b/貴金属層62cからなる層を指す)が形成された部分とを有する。通常、III族窒化物半導体を製造する場合には、n型コンタクト電極を形成するn型層20上に、活性層30、さらに、p型コンタクト電極を形成するp型層40を積層する。活性層は、井戸層と障壁層とが積層された量子井戸構造を有するものである。また、p型層40は、組成の異なる多層構造を有していてもよい。
図1には、p型の電子ブロック層40a、p型クラッド層40b、およびp型コンタクト層40cからなるp型層40を例示した。この構造に限定される訳ではないが、特に、p型コンタクト電極と接触するp型コンタクト層40は、III族窒化物単結晶の中でもGaN層から形成されることが好ましい。
【0028】
そして、この活性層、およびp型層の一部を削除して、メサ構造を形成する。削除する方法としては、エッチング処理(例えば、ハロゲン系ガス、例えば、塩素原子を含む塩素系ガス、フッ素原子を含むフッ素系ガスによるドライエッチング処理))を行えばよい。このようなエッチング処理を行い、メサ構造を形成する。
【0029】
さらには、本発明の方法は、ドライエッチング処理した後、酸溶液、あるいはアルカリ溶液による表面処理を行ったn型層上に、コンタクト電極を形成する場合にも有効に適用できる。当然のことながら、本発明の方法は、ドライエッチング処理を行わず、酸溶液、或いはアルカリ溶液による表面処理を行っただけのn型層上に、コンタクト電極を形成する場合にも有効に適用できる。該表面処理により、n型層体表面の酸化膜、水酸化膜、または、ドライエッチング処理によって受けたn型窒化物半導体層のダメージ層を除去することができる。酸溶液による表面処理、アルカリ溶液による表面処理方法は、特許文献1に記載の方法を参考にすることができる。
【0030】
本発明は、必要に応じて前記方法で表面処理した前記n型層の表面における負電極層60が形成される領域を、メサ構造に近い側の第一領域と、それ以外の第二領域とに区分けする。次にこの区分け工程について説明する。先ず、
図1における第一領域60a、第二領域60bに区分けする。
【0031】
(第一領域、および第二領域の区分け工程)
本発明においては、露出したn型層の表面を、第一金属電極層61をその上に形成する第一領域60aと、第二金属電極層62aがn型層20上に直接接する第二領域60bとに少なくとも区分けする。区分けするには、メサ構造に近い第一領域60aに第一金属電極層61を形成するため、第二領域60bをフォトレジスト等によりマスク(保護)してやればよい。この時、第二領域60b以外にも、第一金属電極層61がメサ構造に接触しないように、メサ構造(側面)と第一金属電極層61がその上に形成される領域(第一領域60a)との間もフォトレジスト等によりマスク(保護)することが好ましい。このメサ構造の側面と第一領域60aとの間の領域は、当然のことながら、負電極層が形成される領域には該当しない。メサ構造の側面と第一領域60aとの距離は、特に制限されるものではないが、短絡を防ぎ、歩留まりを向上するためには、1〜10μmとすることが好ましく、さらに2〜8μmとすることが好ましい。なお、使用するマスクとして、例えば、ZEON社製 フォトレジスト:ZPN1150‐90が挙げられる。このマスクは、アセトンで除去することができる。
【0032】
上記マスクを行った後、n型層上の第一領域60aに、公知の方法により、第一金属電極層61を形成してやればよい。
【0033】
本発明において、第一領域60aは、メサ構造に近い側とし、さらに、第二領域60bよりも小さい面積とする必要がある。メサ構造に近い側に第一領域60a上に第一金属電極層61を設けることにより、抵抗を小さくすることができる。また、第二領域60bよりも面積を小さくすることにより、反射効率を高めることができる。第一領域60aと第二領域60bとの面積比は、特に制限されるものではないが、オーミック特性と反射効率とを考慮すると、第二領域60bの面積を、第一領域60aの面積に対して1倍を超え40倍以下とすることが好ましく、さらに1倍を超え20倍以下、さらに好ましくは2倍以上10倍以下とすることが好ましい。そのため、第一領域60a(第一金属電極層61)は、メサ構造の側面から120μm以内、より好ましくは60μm以内、さらに好ましくは40μm以内に形成されることが好ましい。ただし、第一領域60a(第一金属電極層61)は必ずしもメサ構造全面を囲む必要はなく、一部に抜けがあってもよい。なお、上記の通り、メサ構造の側面から第一領域60aとは、1〜10μmの間隔(距離)を設けることが好ましい。
【0034】
上記のような要件を満足するように、第二領域60b、およびメサ構造と第一領域60aとの間にフォトレジスト等を塗布した後(マスクし)、次に、第一領域60a上に、第一金属電極層61を形成する。次に、この第一金属電極層について説明する。
【0035】
(第一金属電極層の形成方法)
本発明において、前記n型層20上に、第一金属電極層61を形成する方法は、公知の方法を採用することができる。ただし、第一金属電極層61を形成する金属は、Ti、VおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である。
【0036】
第一金属電極層61を形成する具体的な方法としては、前記n型層20の表面(第一領域60a上)に、電子線真空蒸着法にて金属膜を成膜する方法を挙げることができる。金属膜を蒸着する際のチャンバー内圧力は、不純物等の影響を低減するために1.0×10
−3Pa以下であることが好ましい。
【0037】
第一金属電極層61を形成する金属は、Ti、VおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である。これら金属は、III族窒化物に対して活性を有し、高温で反応して窒化物を形成するという共通の性質を有する。そのため、下記に詳述する800℃以上1200℃以下の温度での加熱処理によって、第一金属電極層61と第一領域61aとの界面において、窒化チタン(TiN)、窒化バナジウム(VN)、窒化タンタル(TaN)といった前記金属の窒化物或いは前記金属とIII族原子の複合窒化物からなる層(反応層)が形成され、電子空乏層を薄くし(ショットキーバリア幅を狭くし)、トンネル効果が発現するような界面状態となり、接触抵抗値を低減できるものと考えられる。第一金属電極層61は、後述する第二金属電極層62a、反射電極層62bとの兼ね合いを考慮すると、Tiから構成されることが最も好ましい。
【0038】
なお、後述する本発明の実施例においては、第一金属電極層61にTiを用いた態様を例示しているが、「JOURNAL OF ELECTRONIC MATERIALS, Vol.37,No.5,2008」、「JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 100, 046106(2006)」等に示される類似性から、V或いはTaを用いた場合にも同様の効果が得られると考えられる。
【0039】
本発明において、第一金属電極層61の厚みは、特に制限されるものではないが、10nm以上であることが好ましい。第一金属電極層61の厚みが、上記範囲を満足することにより、下記に詳述する貴金属層を形成した後、400℃以上1000℃以下の温度で熱処理する工程によって金属が拡散したとしても、n型層20の第一領域60aを第一金属電極層61で覆うことができ、良好な接触抵抗値を得ることができる。また、第一金属電極層61の厚みの上限値は、特に制限されるものではないが、生産性、経済性を考慮すると50nmである。
【0040】
本発明においては、n型層の第一領域上に前記第一金属電極層61を形成した後、下記に詳述する反射金属層62bを形成する前までに、800℃以上1200℃以下の温度で熱処理を行う。次に、この熱処理(以下、第一の熱処理とする場合もある)について説明する。
【0041】
(第一の熱処理)
この第一の熱処理は、下記に詳述する第二金属電極層62aを形成する前に実施することが好ましい。すなわち、第一金属電極層61を形成した後、次いで、この第一の熱処理を実施することが好ましい。その理由は、以下の通りである。電極を蒸着して形成する場合には、その蒸着に時間がかかる。しかも、下記に詳述するが、第二金属電極層62aは薄膜でよいことから、第二電極金属層62a、反射電極層62b、および貴金属層62cは連続して蒸着により形成することが工程の時間短縮に繋がる。さらに、第二金属電極層62aは、薄膜であるため、貴金属層62c形成後の熱処理だけでも十分に接触抵抗値を下げられるものと考えられ、反射効率についても、貴金属層62c形成後の熱処理だけの方が有利になると考えられる。
【0042】
第一の熱処理を第一金属電極層61形成後に実施する場合には、第二領域60b、およびメサ構造と第一領域60aとの間のマスクをレジスト剥離液等により除去してから行う。第二領域の60bのマスクを除去する方法は、公知の方法を使用することができる。具体的には、マスクとして、例えば、ZEON社製 フォトレジスト:ZPN1150−90を使用した場合には、アセトンにより除去すればよい。
【0043】
マスクを除去した後、第一の熱処理を行う。この熱処理を行うことにより、第一金属電極層61とn型層20との密着性が高くなり、良好な接触抵抗値が得られる。
【0044】
本発明において、第一の熱処理温度は、800℃以上1200℃以下でなければならない。該温度が800℃未満の場合には、第一金属電極層61とn型層20との密着性が低下するため好ましくない。一方、1200℃を超えると、n型層20の熱分解が生じるおそれがあるため好ましくない。n型層20と第一金属電極層61との密着強度、n型層20の熱分解を考慮すると、第一の熱処理の温度は、800℃以上1100℃以下とすることが好ましい。なお、この第一の熱処理は、温度が上記範囲であれば一定の温度であってもよいし、上記範囲内で変動してもよい。また、変動する場合、貴金属層62cを形成した後の熱処理温度との比較は、平均値を比較してやればよい。
【0045】
本発明において、第一の熱処理の時間は、n型層20の組成、第一金属極層61の種類、厚さ等に応じて適宜決定すればよいが、30秒以上90秒以下で実施することが好ましい。なお、該熱処理の時間には、昇温過程の時間を含むものではない。昇温時間は、できるだけ短い方がよいが、装置の容積、性能、熱処理温度等により影響されるため、通常、120秒以下であることが好ましく、さらには60秒以下であることが好ましい。昇温時間の最短時間は、装置の性能に大きく影響されるため一概に限定できないが、通常、10秒である。
【0046】
本発明において、第一の熱処理は、特に制限されるものではないが、n型層20との反応を防ぐという点から、不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素雰囲気下で実施することが好ましい。
【0047】
このような第一の熱処理は、n型コンタクト電極を形成する場合に、通常用いられるRTA(Rapid Thermal Annealing:瞬間熱処理)装置を用いて実施することができる。
【0048】
次に、第二領域60b、および第一金属電極層61上に、第二金属電極層62aを形成する。この第二金属電極層の形成方法について説明する。
【0049】
(第二金属電極層の形成方法)
本発明においては、第一金属電極層61と第二領域60bとの上に、Ti、VおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなり、第一金属電極層61よりも薄い厚みの第二金属電極層62aを形成することを特徴とする。この第二金属電極層62aが第二領域60b上、および第一金属電極層61上に存在することにより、本発明の方法で得られる発光素子は、優れた効果を発揮する。
【0050】
本発明において、第二金属極層62aを形成する方法は、第一金属電極層61を形成する方法と同じく、公知の方法を採用することができる。具体的には、第二領域60bと前記第一金属電極層61の表面に、電子線真空蒸着法にて金属膜を成膜する方法を挙げることができる。金属膜を蒸着する際のチャンバー内圧力は、不純物等の影響を低減するために1.0×10
−3Pa以下であることが好ましい。このような方法により、
図1に示すように、第一金属電極層61、および第二領域60b上に、第二金属電極層62aを形成することができる。なお、第二金属電極層62aを形成する前には、短絡を防ぐため、メサ構造と第一領域60aとの間に、フォトレジスト等によりマスク(保護)する。第一領域60aとメサ構造の側面との距離は、前記の通り、1〜10μmとすることが好ましい。
【0051】
第二金属電極層62aは、Ti、VおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなり、第一金属電極層61よりも薄くなければならない。また、第二金属電極層62aを構成する金属は、第一金属電極層61を構成する金属と同種であることが好ましい。そのため、第一金属電極層61がTiから構成される場合には、第二金属電極層62aはTiから構成されることが好ましい。
【0052】
第二金属電極層62aの厚みは、第一金属電極層61の厚みよりも薄くなければならない。第一金属電極層61と同じか、厚くなると、反射電極層62bによる光の反射効果が低減するため好ましくない。具体的な厚みは、0.1nm以上5nm以下であることが好ましい。
【0053】
なお、本発明においては、この第二金属電極層62aを形成した後、前記第一の熱処理を実施することもできる。さらには、第一金属電極層61を形成した後、第一の熱処理を行い、次いで、第二金属電極層62aを形成した後、さらに、第一の熱処理を行うこともできる。なお、当然のことながら、第一の熱処理を行う場合には、第一領域60aとメサ構造との間のフォトレジストは除去してから熱処理を行う必要がある。これらの方法によれば、低接触抵抗の発光素子を得ることができるが、工程を簡略化し、光の反射効率を高めるためには、前記の通り、第二金属電極層62aを形成した後は、次いで、反射電極層62bを形成することが好ましい。そして、最も工程を簡略化するためには、第二金属電極層62a、反射電極層62b、および貴金属層62cは同じ蒸着装置で連続して形成することが好ましい。
【0054】
(反射電極層を形成する方法)
本発明においては、前記第二金属電極層62a上に、仕事関数が4.0〜4.8eVであり、且つ比抵抗が1.5×10
−6〜4.0×10
−6Ω・cmである金属からなる反射電極層62bを形成する。
【0055】
反射電極層62bは、仕事関数が4.0eV〜4.8eVであり、且つ比抵抗が1.5×10
−6Ω・cm〜4.0×10
−6Ω・cmである金属(特定高導電性金属)からなる高導電性金属層である。一般に、金属の仕事関数は、測定方法及び出典により若干数値が異なることがあるが、本発明ではJAP_48_4729(1977)に記載された仕事関数を指すこととする。第一の熱処理後に、反射金属層62bとして特定高導電性金属からなる金属層を形成し、さらに下記に詳述する熱処理を行うことにより、第一の熱処理で得られた界面状態を保持し、ショットキーバリアを増大させることなく高導電性金属が接合し、接触抵抗を低くすることができる。このことからも、第一の熱処理は、反射電極層62bを形成する前に実施する必要がある。
【0056】
特定高導電性金属としては、Al(比抵抗2.65×10
−6Ω・cm、仕事関数:4.28eV)、Ag(比抵抗1.59×10
−6Ω・cm、仕事関数:4.26eV)、Cu(比抵抗1.92×10
−6Ω・cm、仕事関数:4.65eV)等を挙げることができるが、低コストで高い効果が得られることからAlを使用することが好ましい。
【0057】
反射電極層62bは、公知の方法で形成することができる。反射電極層62bの厚みは、特に制限されるものではないが、反射効率、低接触抵抗化の効果を考慮すると、100〜500nmとすることが好ましい。より好ましくは250〜400nmである。
【0058】
(貴金属層を形成する方法)
本発明においては、前記反射金属層62b上に、Au、およびPtからなる群より選ばれる少なくとも1種の貴金属からなる貴金属層を形成する。貴金属層62cを形成することにより、安定して接触抵抗を低くすることができ、オーミック接合を実現することも可能となる。また、反射金属層62bと貴金属層62cとの間にNi層を設けることもできる。Ni層を設けることにより、下記に詳述する熱処理で貴金属が拡散することを抑制し、ボイド発生防止(ボイドを埋める)機能を損なうことなく、貴金属がn型層20にまで拡散して接触するのをより確実に防止することができる。
【0059】
貴金属層62cは、公知の方法で形成することができる。貴金属層62cの厚みは、特に制限されるものではないが、反射効率の維持、低接触抵抗化の効果を考慮すると、5〜60nmとする事が好ましい。より好ましくは5〜30nmとする事が好ましい。
【0060】
本発明においては、この貴金属層62cを形成した後、400℃以上1000℃以下の温度で熱処理する工程を行う。以下、この熱処理を第二の熱処理とする場合もある。次に、この第二の熱処理について説明する。なお、この第二の熱処理を行う前に、第一領域60aとメサ構造との間に存在するフォトレジストを公知の方法により除去する。
【0061】
(第二の熱処理)
本発明においては、第二の熱処理を行うことにより、優れた効果を発揮する。この熱処理を行わない場合には、第一金属電極層61と第二金属電極層62a、およびn型層20と第二金属電極層62aとの密着性が不十分となる。また、第二金属電極層62aが多層膜の場合、合金化することができないため、良好な接触抵抗値が得られない。
【0062】
本発明において、第二の熱処理の温度は、400℃以上1000℃以下である。この温度範囲を外れると、密着性が低下したり、良好な接触抵抗値が得られない。また、貴金属層62c形成後の熱処理温度が特許文献1記載の方法よりも低温でよいのは、第二領域60b上に反射電極部を有することに起因していると考えられる。つまり、この第二領域60b上の反射電極部もオーミック接触に寄与していると考えられるため、比較的低温で熱処理しても、優れた効果が発揮されるものと考えられる。加えて、低温で実施することにより、反射率を向上することができる。第二金属電極層62aとn型層20との間での高い光反射率の維持、およびオーミック接触とを考慮すると、第二の熱処理の温度は、400℃以上950℃以下とすることがより好ましく、特に、700℃以上900℃以下とすることが好ましい。また、この第二の熱処理温度は、前記表面処理したn型層上にコンタクト電極を形成する場合には、表面処理の態様により、その温度を変えることが好ましい。この理由は、明らかではないが、表面処理の態様の違いにより、n型層の表面状態が異なることに起因しているものと考えられ、その表面状態の違いがこの第二の熱処理温度に影響を与えるものと考えられる。
【0063】
具体的な温度条件を説明すると、n型層を酸溶液により表面処理した場合には、第二の熱処理の温度は、400℃以上950℃以下とすることが好ましく、さらに、430℃以上940℃以下とすることが好ましく、特に、オーミック接触を向上させるためには、750℃以上910℃以下とすることが好ましい。
【0064】
一方、アルカリ溶液により表面処理した場合には、第二の熱処理の温度は、400℃以上950℃以下でとすることが好ましく、さらに425℃以上930℃以下とすることが好ましく、特に、オーミック接触を向上させるためには、750℃以上900℃以下とすることが好ましい。
【0065】
また、第二金属電極層62aの反射率を維持するために、第二の熱処理の温度は、第一の熱処理の温度よりも低くすることが好ましい。具体的には、第一の熱処理よりも、100℃以上低い温度とすることが好ましい。
【0066】
なお、この第二の熱処理は、温度が上記範囲であれば、一定の温度であってもよいし、上記範囲内で変動してもよい。また、変動する場合、第一の熱処理温度との比較は、平均値を比較してやればよい。
【0067】
本発明において、第二の熱処理は、特に制限されるものではないが、第一の熱処理と同じく、n型層との反応を防ぐという点から、窒素雰囲気下で実施することが好ましい。また、熱処理の時間は、合金化するための時間、n型層へのダメージ低減を考慮すると、30秒以上90秒以下とすることが好ましい。なお、該熱処理の時間には、昇温過程の時間を含むものではない。昇温時間は、できるだけ短い方がよいが、装置の容積、性能、熱処理温度等により影響されるため、通常、120秒以下であることが好ましく、さらには60秒以下であることが好ましい。昇温時間の最短時間は、装置の性能に大きく影響されるため一概に限定できないが、通常、10秒である。
【0068】
このような第二の熱処理は、第一の熱処理と同じく、n型コンタクト電極を形成する場合に用いられるRTA(Rapid Thermal Annealing:瞬間熱処理)装置を用いて実施することができる。
【0069】
以上の通り、n型コンタクト電極形成を多段階に分割すると、例えば、第一金属電極層61を形成する際に、Tiを含む金属を使用した場合には、n型層の表面全体をTiNで密着性良く覆うことができるものと考えられる。その結果、第二の熱処理によって形成される空隙や拡散した金属がn型層とn型コンタクト電極層の界面に侵入することを防ぐことができるため、良好な接触抵抗値を得ることができると考えられる。さらに、良好な接触抵抗値を得るための同一プロセスによって高い反射率を持つ反射膜が形成可能となると考えられる。なお、この一連の方法により形成される、第一金属電極層61、第二金属電極層62a、反射電極層62b、貴金属層62cの全てが負電極層60である。
【0070】
(p型層上の正電極層の形成方法)
p型層上の正電極層50は、特に制限されるものではなく、公知の方法により製造することができる。具体的には、真空蒸着法によりNi/Au電極を形成することができる。Ni層の厚みは、特に制限されるものではなく、5〜50nmとすることが好ましい。また、Au層も特に制限されるものではなく、10〜100nmとすることが好ましい。
【0071】
(III族窒化物半導体発光素子)
上記方法によれば、n型層上にオーミック特性が良好であって、かつ高い反射率を持つ負電極層を形成できる。そうして得られたIII族窒化物半導体は、n型反射膜による光取り出し効率の向上と低電圧での駆動が可能となり、そのため、LEDデバイス等、省エネルギーが必要不可欠なデバイスに使用することができる。
【0072】
本発明のIII族窒化物半導体発光素子は、第一領域の第一金属電極層と第二金属電極層とが一緒になって第一接合金属層となり、そして、この第一接合金属層と、反射電極層と、貴金属層とがこの順で積層された第一オーミック電極層を有し、
第二領域の第二金属電極層を第一接合金属層よりも薄い厚みの第二接合金属層となり、この第二接合金属層と、反射電極層と、貴金属層とがこの順で積層された第二オーミック電極層を有する形態であってもよい。
【0073】
このとき、第一金属電極層と第二金属電極層とは、同一の金属からなることが好ましい。そして、第一、第二オーミック電極層とするためには、上記に説明した層構成の電極層とし、かつ第一の熱処理、第二の熱処理を実施して形成することが好ましい。
【0074】
そのため、本発明のIII族窒化物半導体発光素子は、n型層、活性層、およびp型層がこの順で積層された積層構造を有するIII族窒化物半導体発光素子において、前記活性層、およびp型層の一部の領域を除去して前記n型層を露出させてメサ構造を形成し、露出したn型層の表面に負電極層を有するIII族窒化物半導体発光素子であって、
前記n型層表面の負電極層が形成される領域が、メサ構造に近い第一領域と、第一領域よりも広い面積を有する第二領域とを有し、
Ti、VおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなる第一接合金属層と、仕事関数が4.0〜4.8eVであり、且つ比抵抗が1.5×10
−6〜4.0×10
−6Ω・cmである金属からなる反射電極層と、Au、およびPtからなる群より選ばれる少なくとも1種の貴金属からなる貴金属層とがこの順で積層された第一オーミック電極層を前記第一領域上に有し、
Ti、VおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなり、前記第一接合金属層よりも薄い厚みの第二接合金属層と、前記反射電極層と、前記貴金属層とがこの順で積層された第二オーミック電極層を前記第二領域上に有するものと見なすことができる。
【実施例】
【0075】
以下に、本発明の具体的な実施例および比較例について図を参照しながら説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
予備実験(第二金属電極層の厚み検討)
窒化物半導体発光素子を作製する前に、先ず、第二金属電極層の厚みの変化による反射効率を調べた。具体的にはサファイア基板上にMOCVD法により窒化アルミニウム単結晶層(AlN単結晶層)を成長させ、その後、AlN単結晶層表面に、Ti/Al(厚み200nm)/Au(厚み5nm)の順に蒸着して、反射率測定用のサンプルを作製した。サファイア基板側より、発光波長が265nmの紫外光を入射し、Ti/Al(200nm)/Au(5nm)膜の反射率を調べた。この予備実験において、Tiの膜厚のみ変更し、反射率とTiの膜厚の関係を調べた。その関係を
図3に示した。
図3から明らかな通り、Tiの膜厚が薄い方が反射率を高くすることができ、光を取出すのに有利であることが分かった。Tiの膜厚が20nm以下になることにより、反射率がより高くなり、特に、Tiの膜厚が5nm以下になることにより、反射率が60%を超える値とすることができ、より効果を発揮することが確認できた。
【0077】
実施例1
(n型層20の準備)
MOCVD法により、サファイア基板上1にn型層20として、SiをドープしたAl
0.75Ga
0.25N層(Si濃度1×10
19[cm
−3])を層厚み2.0μmで形成した。
【0078】
n型層20上に、活性層30を量子井戸構造として、井戸層(組成Al
0.5Ga
0.5N)を層厚み2nm、障壁層(組成Al
0.75Ga
0.25N)を層厚み7nmで形成した。また井戸層を3層、障壁層を4層形成した。(各障壁層は組成、厚みとも同じである。また、各井戸層も組成、厚みとも同じである。)。
【0079】
次に、活性層30上に、電子ブロック層40aとして、MgをドープしたAlN層(バンドギャップ6.00eV、Mg濃度5×10
19[cm
−3])を層厚み15nmで形成した。 電子ブロック層40a上に、p型クラッド層40bとして、MgをドープしたAl
0.80Ga
0.20N層(Mg濃度5×10
19[cm
−3])を層厚み50nmで形成した。その後、p型コンタクト層40cとして、MgをドープしたGaN層(バンドギャップ3.40eV、Mg濃度2×10
19[cm
−3])を層厚み240nmで形成した(
図2の(0))。
【0080】
次いで、窒素雰囲気中、20分間、900℃の条件で熱処理を行った。その後、p型コンタクト層51の表面にフォトリソグラフィーにより所定のレジストパターンを形成し、レジストパターンの形成されていない窓部を反応性イオンエッチングによりn型層20の表面が露出するまでエッチングした。その後、該基板を濃度37wt%の塩酸に40℃の温度で15分間浸漬させて、Al
0.75Ga
0.25N層(n型層20)の表面処理を行った(
図2の(a))。
【0081】
(第一領域60aの形成)
反応性イオンエッチングにより形成したメサ構造を囲むようにして、露出したn型層20上にフォトリソグラフィーにより所定のレジストパターンを形成し、その窓部に第一領域60aを確保した。第一領域60aはメサ構造より5μm間隔をあけて、メサ構造を囲むようにして形成した。
【0082】
(第一金属電極層61の形成、および第一の熱処理)
表面処理を行い、第二領域60b、およびメサ構造の側面と第一領域60aとの間をマスクしたAl
0.75Ga
0.25N層(n型層20)上に、第一金属電極層61としてTiを電子線蒸着法にて10nm成膜した(
図2の(b))。これにより、第一領域60aに第一金属電極層61が形成できた。次いで、第二領域60b、およびメサ構造の側面と第一領域60aとの間のマスクをアセトンにより除去した。
【0083】
次いで、第一の熱処理は、窒素ガス雰囲気中で行い、該熱処理は、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いた瞬間熱処理により行った。熱処理時間は1分とし、第一の熱処理温度は、1000℃で行った。なお、1000℃になるまでの昇温時間は60秒であった。
【0084】
(第二領域60bの形成と、第二金属電極層、反射電極層、貴金属層の形成、および第二の熱処理)
次に、再びフォトリソグラフィーによりメサ構造を囲むようにして、第一領域60a(第一金属電極層61)および露出したn型層20上に所定のレジストパターンを形成した(第一領域60aとメサ構造との間をマスクし、第一金属電極層61、および第二領域60b上はマスクを行っていない。)。このとき、第一領域60aと第二領域60bとの面積比は1:6となるようにレジストパターンの設計を行った。前記第一金属電極層61として形成されたTi層の上および第二領域60b上に、第二金属電極層62aとしてTi層、次いで、反射電極層62bとしてAl層、さらに、貴金属層62cとしてAu層を電子線蒸着法にて順次成膜し、膜厚は、それぞれ1nm、300nm、5nmとした(
図2の(c))。次いで、アセトンによりレジストパターンの剥離を行った。
【0085】
その後、第二の熱処理は、第一の熱処理と同じく、窒素ガス雰囲気中において行い、該熱処理は、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いた瞬間熱処理により行った。熱処理時間は1分とし、熱処理温度は、810℃とした。なお、810℃になるまでの昇温時間は60秒であった。
【0086】
(p型層上の正電極層の形成)
その後、p型コンタクト層40c上に、真空蒸着法によりNi(20nm)/Au(50nm)電極(正電極層50)を形成した後、酸素雰囲気中、3分間、550℃の条件で熱処理を行い、以上の層構成を有するウェーハを製造した。次いで、700μm角に切り出し、III族窒化物半導体発光素子1を作製した(
図2の(d))。
【0087】
こうして作製された負電極層60(第一金属電極層61、第二金属電極層62a、反射電極層62b、および貴金属層62c)の電流−電圧特性を測定した。20mA時における下記に示す参考例1の電圧値を1として規格化した場合、電圧値は1.1となった(参考例1の電圧値に対して、1.1倍であった。)。また、得られたIII族窒化物半導体発光素子の光出力−電流特性を測定した。60mA時における下記に示す参考例1の発光効率の値を1として規格化した場合、発光効率は1.1となった(参考例1の発光効率に対して、1.1倍であった)。この結果を表1にまとめた。
【0088】
参考例1
実施例1において、第二領域60bを形成せず、負電極60をn型層20上に形成した例である。
【0089】
つまり、先ず、実施例1と同様の方法でn型層20上に第一金属電極層61を10nm形成した後、実施例1と同様の方法で第一の熱処理を行った。この第一金属電極層61が形成された部分は、実施例1の第一領域60aと第二領域60bとを合計した部分である。次いで、実施例1と同様の方法で第一金属電極層61上の全面に、反射電極層62bを300nm、貴金属層62cを5nm形成した後、実施例1と同様の方法で第二の熱処理を行った。また、正電極層の形成、および得られたIII族窒化物半導体発光素子の電流−電圧特性の測定、光出力−電流特性の測定は、実施例1と同様の方法で実施した。この参考例1で得られたIII族窒化物半導体発光素子の電流−電圧特性において、20mA時における電圧を1として規格化し、実施例、比較例の電圧と比較した。また、得られたIII族窒化物半導体発光素子の光出力−電流特性において、60mA時における発光効率の値を1として規格化し、実施例、比較例の発光効率の値と比較した。
【0090】
比較例1
実施例1において、第二金属電極層62a、および貴金属層62cを作製せず、反射電極層62bをAl単体として300nmの膜厚とし、さらに第二の熱処理を施さなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った(第一金属電極層61の形成した後、第一の熱処理を行い、次いで、反射電極層62bのみを形成した。)。こうして作製されたIII族窒化物半導体発光素子1の20mA時における電圧値は、参考例1の電圧値に対して2.5倍であった。また、60mA時における発光効率の値は、電圧が高すぎたために発光素子が劣化し発光効率の評価ができなかった。結果を表1にまとめた。
【0091】
比較例2
比較例1において、反射電極層62b(Al層 厚み300nm)を形成した後、第二の熱処理として、窒素ガス雰囲気中、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いた瞬間熱処理を行った以外は、比較例1と同様の操作を行った。熱処理時間は1分とし、熱処理温度は、810℃とした。なお、810℃になるまでの昇温時間は60秒であった。こうして作製されたIII族窒化物半導体発光素子1の20mA時における電圧値は、参考例1の電圧値に対して1.3倍であった。また、60mA時における発光効率の値は、参考例1の発光効率の値に対して1.1倍であった。結果を表1にまとめた。
【0092】
実施例2
実施例1において、第二の熱処理における熱処理温度を860℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。なお、860℃になるまでの昇温時間は60秒であった。こうして作製されたIII族窒化物半導体発光素子1の20mA時における電圧値は、参考例1の電圧値に対して1.0倍であった。また、60mA時における発光効率の値は、参考例1の発光効率の値に対して1.1倍であった。結果を表1にまとめた。
【0093】
実施例3
実施例1において、第二の熱処理における熱処理温度を760℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。なお、760℃になるまでの昇温時間は60秒であった。こうして作製されたIII族窒化物半導体発光素子1の20mA時における電圧値は、参考例1の電圧値に対して1.3倍であった。また、60mA時における発光効率の値は、参考例1の発光効率の値に対して1.3倍であった。結果を表1にまとめた。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例1で得られた本発明のIII族窒化物半導体発光素子は、参考例1のものと比較すると、電圧値は高くなるが、発光効率が向上しているのが分かった。そして、比較例1、2と比較して明らかな通り、本発明のIII族窒化物半導体発光素子は、電圧値の向上を抑えつつ、発光効率を高くすることができた。すなわち、第二金属電極層を形成し、第一の熱処理、および第二の熱処理をして得られる本発明のIII族窒化物半導体発光素子は、オーミック接触を維持しつつ、発光効率を高めることができた。また、第二の熱処理温度を調整すれば、電圧値が同等のまま発光効率を高くすることができたり(実施例2)、多少、電圧値は高くなるが発光効率をより高くすることもできた(実施例3)。