特許第6165611号(P6165611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6165611相変化インク組成物およびその調製プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165611
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】相変化インク組成物およびその調製プロセス
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/34 20140101AFI20170710BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20170710BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   C09D11/34
   B41M5/00 120
   B41M5/00 100
   B41J2/01 501
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-253043(P2013-253043)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-122341(P2014-122341A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2016年12月2日
(31)【優先権主張番号】13/723,909
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サルマ・ファラー・トゥーシ
(72)【発明者】
【氏名】ミハエラ・マリア・ビラウ
(72)【発明者】
【氏名】ビビー・エスター・エイブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・イフタイム
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ディ・マヨ
(72)【発明者】
【氏名】シー・ジェフリー・アレン
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−072401(JP,A)
【文献】 特開2009−041015(JP,A)
【文献】 米国特許第06860930(US,B1)
【文献】 特開2011−236417(JP,A)
【文献】 特表2010−500339(JP,A)
【文献】 特開昭63−254175(JP,A)
【文献】 特開2011−127114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/34
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化インクを調製するプロセスであって、
(a)白色着色剤を、約30から約110gの加速度の音響混合に曝すことと、
(b)任意で、分散剤を加えて、前記白色着色剤および分散剤を約30から約110gの加速度のさらなる音響混合に曝すことと、
(c)別途、任意の抗酸化剤、任意の共力剤ならびに相変化インク担体であって、(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックスまたはこれらの混合物もしくは組合せを含む相変化インク担体を溶融混合して、溶融混合物を形成することと、
(d)(c)の溶融混合物を(a)または(b)の音響混合した白色着色剤に撹拌しながら加えることと、
(e)任意で蛍光性染料を撹拌しながら加えることと、
(f)任意で前記相変化インクをろ過することと、を含むプロセス。
【請求項2】
前記白色着色剤が、二酸化チタン顔料、ルチル、酸化亜鉛顔料、硫化亜鉛顔料、炭酸カルシウム顔料、クレイ、リトポンまたはこれらの混合物もしくは組合せから選択される白色顔料である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記白色着色剤が、約200から約300ナノメートルの粒径を有する二酸化チタン顔料であり、
前記白色着色剤が、インクの総重量に基づいて約1から約60重量パーセントの量でインク中に存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
(a)または(b)の音響混合ステップ、またはその組み合わせステップが、粉砕媒体の存在下で行われ、
前記粉砕媒体が、ステンレス鋼ショット、球形セラミック媒体、円筒形セラミック媒体、球形ガラスビーズ、およびこれらの組合せから成る群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記蛍光性染料が、ローダミン、フルオレセイン、クマリン、ナフタルイミド、ベンゾキサンテン、アクリジン、アゾ、希土類金属の配位錯体、およびこれらの混合物もしくは組合せから成る群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
(1)インクジェット印刷装置内に、音響処理された白色着色剤であって、約30から約110gの加速度の音響混合を受けた白色着色剤と、任意で約30から約110gの加速度の音響混合を受けた着色剤分散剤と、任意の共力剤と、任意の蛍光性染料と、(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックスまたはこれらの混合物もしくは組合せを含む相変化インク担体と、を含む相変化インク組成物を組み込むことと、
(2)インクを溶融させることと、
(3)前記溶融したインクの小滴を画像状パターンに下地材上へ吐出することと、を含むプロセス。
【請求項7】
前記任意の蛍光性染料が存在し、
前記溶融したインクは、画像状パターンに有色の下地材上へ吐出されて、有色の下地材上に印刷画像を形成し、前記印刷画像は、紫外光下で見た場合に、色を白色から異なる色に変える、請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記任意の蛍光性染料が存在し、
前記溶融したインクは、画像状様に吐出されて、下地材上に白色の背景を形成し、
有色インクを前記白色の背景上に画像状様に堆積させることによって、印刷画像が形成され、前記背景は、紫外光に曝した場合に、色を白色から異なる色に変える、請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記下地材は、暗い下地材、黒色の下地材、茶色の下地材、ボール紙下地材、クラフト紙下地材および厚紙下地材から成る群から選択される、請求項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に相変化インク、特に相変化インクを調製するプロセスに関するものであり、当該プロセスは、(a)白色着色剤を、約30から約110g(gは重力加速度である)の加速度の音響混合に曝すことと;(b)任意で、分散剤を加えて、白色着色剤および分散剤を約30から約110gの加速度のさらなる音響混合に曝すことと;(c)別途、任意の抗酸化剤、任意の共力剤ならびに相変化インク担体であって、(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックスまたはこれらの混合物もしくは組合せを含む相変化インク担体を溶融混合して、溶融混合物を形成することと;(d)(c)の溶融混合物を(a)または(b)の音響混合した白色着色剤に撹拌しながら加えることと;(e)任意で蛍光性染料を撹拌しながら加えることと;(f)任意で相変化インクをろ過することと、を含む。
【背景技術】
【0002】
白色インクは、特定のグラフィック用途およびラベリング用途に非常に所望されるものである。白色インクは、最も一般的には、透過的でありかつ暗い下地材上にて用いられて、テキストまたは図形に背景を補う、または提供する。白色着色剤として顔料があり、これは、種々の材料(最も一般的には二酸化チタン)を含んでよい。白色は光の散乱によって生み出されるので、十分な不透明性を実現するために、200から300ナノメートルの容積平均粒径を有する顔料が一般的に選択される。分散系中の粒径がこの範囲未満で小さくなるにつれ、分散系は選択的に青色光を散乱させて、青っぽい白色に見える。さらに粒径が小さくなるにつれ、分散系は可視光を散乱させなくなり、透過的になる。より小さなナノメートルサイズの二酸化チタン顔料が知られているが、これらは色がない。濃厚な分散系(例えば、顔料および分散系1ミリリットルあたり顔料が2から4グラム)、比較的大きなサイズ、および高いロード量の顔料を組み合わせると、貯蔵安定性があり、かつ噴射可能な白色の硬化性固体インクを設計することが、特に困難な課題となる。
【0003】
インクジェット印刷プロセスに適し、音響インクジェット印刷プロセスに適した相変化白色インクについて、有色のパッケージ下地材(有色(特に茶色または他のより暗い色)のボール紙または厚紙を含む)上に優れた印刷品質を提供することができ、暗い下地材の全体にわたって白色印刷の所望の美的外観および魅力を与えることができ、改善された貯蔵安定性および低いニュートン粘性を実現する、デジタルインクジェット相変化白色インクの改善が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
記載されるのは、相変化インクを調製するプロセスであり、(a)白色着色剤を、約30から約110gの加速度の音響混合に曝すことと;(b)任意で、分散剤を加えて、白色着色剤および分散剤を約30から約110gの加速度のさらなる音響混合に曝すことと;(c)別途、任意の抗酸化剤、任意の共力剤ならびに相変化インク担体であって、(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックスまたはこれらの混合物もしくは組合せを含む相変化インク担体を溶融混合して、溶融混合物を形成することと;(d)(c)の溶融混合物を(a)または(b)の音響混合した白色着色剤に撹拌しながら加えることと;(e)任意で蛍光性染料を撹拌しながら加えることと;(d)任意で相変化インクをろ過することと、を含むプロセスである。
【0005】
また、記載されるのは、相変化インクであり、音響処理された白色着色剤であって、約30から約110gの加速度の音響混合を受けた白色着色剤と;任意で約30から約110gの加速度の音響混合を受けた着色剤分散剤と;任意の共力剤と;任意の蛍光性染料と;(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックスまたはこれらの混合物もしくは組合せを含む相変化インク担体と;を含む相変化インクである。
【0006】
また、記載されるのは、(1)インクジェット印刷装置内に、音響処理された白色着色剤であって、約30から約110gの加速度の音響混合を受けた白色着色剤と;任意で約30から約110gの加速度の音響混合を受けた着色剤分散剤と;任意の共力剤と;任意の蛍光性染料と;(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックスまたはこれらの混合物もしくは組合せを含む相変化インク担体と;を含む相変化インク組成物を組み込むことと;(2)インクを溶融させることと;(3)溶融したインクの小滴を画像状パターンに下地材上へ吐出することと;を含むプロセスである。
【0007】
また、記載されるのは、インクジェットプリンタスティックまたはペレットであり、音響処理された白色着色剤であって、約30から約110gの加速度の音響混合を受けた白色着色剤と;任意で約30から約110gの加速度の音響混合を受けた着色剤分散剤と;任意の共力剤と;任意の蛍光性染料と;(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックスまたはこれらの混合物もしくは組合せを含む相変化インク担体と;を含む相変化インク組成物を含む、インクジェットプリンタスティックまたはペレットである。
【0008】
さらに記載されるのは、コーティングされた下地材であって、下地材と、その上に堆積された相変化インク組成物とを含み;該相変化インク組成物が、音響処理された白色着色剤であって、約30から約110gの加速度の音響混合を受けた白色着色剤と;任意で約30から約110gの加速度の音響混合を受けた着色剤分散剤と;任意の共力剤と;蛍光性染料と;(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックスまたはこれらの混合物もしくは組合せを含む相変化インク担体と;を含む、コーティングされた下地材である。
【0009】
さらに記載されるのは、セキュリティ対応相変化インク組成物であり、不可視の蛍光性染料と;音響処理された白色着色剤であって、約30から約110gの加速度の音響混合を受けた白色着色剤と;任意の分散剤と;任意の共力剤と;(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックスまたはこれらの混合物もしくは組合せを含む相変化インク担体と;を含み;該相変化インク組成物で作成される印刷画像が、通常の周囲条件下で白色に見え、紫外光に曝すと、該印刷画像は色を変える、セキュリティ対応相変化インク組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、インクカバレッジの範囲の全体にわたる、黒色の紙上での白色印刷を示す印刷物である。
図2図2は、本開示の白色インクの100%および200%カバレッジについて、ならびに黒色の紙下地材について、反射率対波長を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、相変化インクを調製するプロセスであって、(a)白色着色剤を、30から110g(gは重力加速度であり、9.81m/sと規定される)の加速度の音響混合に曝すことと;(b)任意で、分散剤を加えて、白色着色剤および分散剤を30から110gの加速度のさらなる音響混合に曝すことと;(c)別途、任意の抗酸化剤、任意の共力剤ならびに相変化インク担体であって、(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックスまたはこれらの混合物もしくは組合せを含む相変化インク担体を溶融混合して、溶融混合物を形成することと;(d)(c)の溶融混合物を(a)または(b)の音響混合した白色着色剤に撹拌しながら加えることと;(e)任意で蛍光性染料を撹拌しながら加えることと;(f)任意で相変化インクをろ過することと、を含むプロセスに関するものである。白色着色剤、実施形態ではTiO顔料を含む濃厚なペーストを効率的に混合するには、本明細書中の音響混合の加速度が、少なくとも1回の音響混合工程区間において、30から110g、または60から108g、または85から105gの加速度にて進むことが望ましい。
【0012】
白色着色剤は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、クレイ、リトポン(硫酸バリウムおよび硫化亜鉛の混合物)またはこれらの混合物もしくは組合せから選択される白色顔料であり、実施形態では二酸化チタン顔料またはルチルとして知られるTiOである。TiOの商業用等級が、追加の人工物により、着色力および底色等の光学特性を増強し、かつ分散安定性を高めるように設計される。顔料の特徴として、サイズ、シリカおよび/またはアルミナならびに任意の有機材料によるコーティングの度合いが挙げられる。酸化チタン顔料として、Ti−Pure(登録商標)R−108、Ti−Pure(登録商標)R−104(DuPont Titanium Technologiesから入手可能である)から選択される顔料が挙げられる。
【0013】
本明細書中の顔料は、150から450ナノメートル、または200から300ナノメートルの容積平均粒径(直径)を有してよい。実施形態において、白色着色剤は、200から300ナノメートルの粒径を有する二酸化チタン顔料である。
【0014】
白色着色剤は、インクの総重量に基づいて1から60重量パーセント、またはインクの総重量に基づいて20から40重量パーセントの量で、インク中に存在する。実施形態において、白色着色剤は、インクの総重量に基づいて、1から60パーセント、または30から40パーセント、または10から25パーセントの量でインク中に存在する二酸化チタン顔料である。
【0015】
音響処理された白色着色剤であって、30から110gの加速度の音響混合を受けた白色着色剤と;任意で30から110gの加速度の音響混合を受けた着色剤分散剤と;任意の共力剤と;(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックスまたはこれらの混合物もしくは組合せを含む相変化インク担体と;蛍光性染料とを含む、セキュリティ印刷用途用の固体インク組成物が提供される。該相変化インク組成物の性能は固有のものである。なぜなら、以下の特徴を含むからである:(a)有色の下地材上にした印刷について、印刷情報は、UV光下で見た場合に、色を白色から異なる色に変える;(b)本出願の相変化インク組成物で作成した白色背景上にした暗いインクによる印刷について、背景は、UV光に曝した場合に、色を白色から異なる色に変える;(c)情報がデジタル的に印刷されている暗い下地材上に、本出願の蛍光性の白色インク組成物でコーティングができる、というものである。
【0016】
蛍光性染料は一般に、通常の観察光(例えば室内周囲光または太陽光)においては無色であり、紫外(UV)光(限定されない)で見た場合に明るい光を放出する染料である。本明細書中の使用に適した蛍光性染料として、ローダミン、フルオレセイン、クマリン、ナフタルイミド、ベンゾキサンテン、アクリジン、アゾ、希土類金属イオンの配位錯体、希土類金属の配位錯体、これらの混合物として知られる染料ファミリーに属するものが挙げられる。種々の不可視の蛍光性染料が市販されている。他の適切な蛍光性染料として、オイルおよび溶媒ベースの染料(Risk Reactorから入手可能なDFSBクラス、DFPDクラス、DFSB−Kクラス等)が挙げられる。
【0017】
適切な蛍光性染料(通常の観察条件下にて無色の染料および有色の染料の双方を含む)として、例えば、Basic Yellow 40、Basic Red 1、Basic Violet 11、Basic Violet 10、Basic Violet 16、Acid Yellow 73、Acid Yellow 184、Acid Red 50、Acid Red 52、Solvent Yellow 44、Solvent Yellow 131、Solvent Yellow 85、Solvent Yellow 135、solvent Yellow 43、Solvent Yellow 160、Fluorescent Brightener 61、オイルおよび溶媒ベースの染料(DFSBクラス、DFPDクラス、DFSB−Kクラス等)が挙げられる。
【0018】
本出願の蛍光性の相変化インク組成物は、以下を含む:
【0019】
(a)片面上のインクベースおよび/または顔料の吸収スペクトルと、蛍光性染料の吸収スペクトルとの限られた(低い、または少しもない)重なり。これにより、活性化UV光が、インク組成物中に分散している蛍光性染料に達することができる。そうでない場合、蛍光は活性化されず、または光の強度がかなり小さくなるので、インク検出性能が低くなる。
【0020】
(b)インクベース/顔料パッケージの発光スペクトルと、蛍光性染料の発光スペクトルとの限られた(低い、または少しもない)重なり。
【0021】
(c)対象物がほとんどまたは全く変化しないで白色に見える通常の周囲観察光下で、不可視(すなわち無色)の蛍光性染料。
【0022】
本明細書中のセキュリティ対応相変化インク組成物は、不可視の蛍光性染料と;音響処理された白色着色剤であって、30から110gの加速度の音響混合を受けた白色着色剤と;任意の分散剤と;任意の共力剤と;(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックスまたはこれらの混合物もしくは組合せを含む相変化インク担体と;を含み;該相変化インク組成物で作成される印刷画像が、通常の周囲条件下で白色に見え、紫外光に曝すと、該印刷画像は色を変える。
【0023】
相変化インク担体は、(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックスまたはフィッシャー−トロプシュワックスを含む。
【0024】
実施形態において、分岐トリアミドは、式
【化1】
のものであり、
【0025】
式中、x、yおよびzはそれぞれ、独立してプロピレンオキシ繰返し単位の数を表し、x+y+zは5から6であり、p、qおよびrはそれぞれ、互いに独立して15から60である。
【0026】
トリアミドは、相変化インク担体の2から50重量パーセントで存在してよい。
【0027】
実施形態において、ワックスはポリエチレンワックスであり;
【0028】
フィッシャー−トロプシュワックスが、高温の石炭に蒸気を通すことによって得られる水素および一酸化炭素の混合物から調製されてよい。この合成は、金属触媒を用いて高い温度および圧力で行われてよい。フィッシャー−トロプシュワックスは、以下の点で、ポリエチレンワックス(エチレン(CH=CH)の重合によって調製される)とは異なる:ポリエチレンワックスは完全に直鎖状となる傾向があるが、フィッシャー−トロプシュワックスは内部にある程度の分岐を有する傾向がある、という点である。この分岐のため、フィッシャー−トロプシュワックスは、完全に直鎖状のポリエチレンワックスと比較して、いくぶん結晶性に欠け、いくぶん硬度に欠ける傾向がある。
【0029】
実施形態において、本明細書中で開示されるインク中のポリエチレンワックスは、最小の分子量画分の一部がそこから除去されており、最大の分子量画分の一部がそこから除去されている。
【0030】
最小の分子量画分および最大の分子量画分は、米国特許出願公開第2005/0130054号に記載の蒸留法、および米国特許出願公開第2006/0257495号に記載の精製法によって、ポリエチレンまたはフィッシャー−トロプシュワックスから除去され得る。
【0031】
ポリエチレンワックスは、相変化インク担体の10から95重量パーセントでインク中に存在してよい。
【0032】
フィッシャー−トロプシュワックスは、相変化インク担体の1から99重量パーセントでインク中に存在してよい。
【0033】
適切な相変化インク担体材料のさらなる例は、モノアミド、テトラ−アミド、これらの混合物等である。
【0034】
また、相変化インク担体材料として適しているのは、イソシアネート由来樹脂およびワックス(ウレタンイソシアネート由来材料、尿素イソシアネート由来材料、ウレタン/尿素イソシアネート由来材料、これらの混合物等)である。
【0035】
実施形態において、相変化インク担体は、(a)ステアリルステアルアミド、(b)トリアミドまたは(c)これらの混合物を含む。他の実施形態において、相変化インク担体は、1つまたは複数のアミドおよび1つまたは複数のイソシアネート由来材料の混合物を含む。
【0036】
インク担体は、インクの0.1から99重量パーセントで相変化インク中に存在する。
【0037】
インクは、抗酸化剤を含んでもよく、インクの0.01から20重量パーセントでインク中に存在する。
【0038】
インクへの他の任意の添加剤として、清澄剤、粘着付与剤、接着剤が挙げられる。
【0039】
白色着色剤は、分散コポリマーおよびブロックコポリマーであってよく、実施形態において、顔料親和性基(アミン類、エステル類、アルコール類およびカルボン酸類等)を含むコポリマーおよびブロックコポリマーである。
【0040】
実施形態において、分散剤は式
【化2】
の化合物であるか、
【0041】
またはこれらの混合物であり、式中、RおよびR’は同じであるか異なっており;RおよびR’は独立して、37個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基および47個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基から選択され、mは1から30の整数である。
【0042】
分散剤は任意で、ポリマー分散剤(Solsperseの名前で販売されているもの等)であってよい。
【0043】
分散剤は、相変化インク組成物中の顔料の総重量に基づいて、1から500パーセントの量で存在してよい。
【0044】
本明細書中の相変化インク組成物は、共力剤を含んでよい。
【0045】
実施形態において、銅フタロシアニン誘導体が、色素性相変化インクの分散安定性を向上させるための共力剤として用いられる。
【0046】
共力剤は、相変化インク組成物中の相変化インク担体の総重量に基づいて、1から300パーセントの量で存在してよい。
【0047】
インク成分は、一緒に混合されてから、均一なインク組成物が得られるまで低くとも100℃から140℃以下の温度に加熱されて撹拌された後に、インクが周囲温度に冷却されてよい。インクは、周囲温度にて固体である。特定の実施形態において、形成プロセス中、溶融状態のインクを、型に注入してから、冷やして凝固させると、インクスティックが形成される。
【0048】
本明細書中のプロセスは、白色着色剤を音響混合に曝すことを含み、実施形態において、音響ミキサー(インペラなしで混合するために高強度の音響エネルギーを発生させることができる)を利用する。特定の実施形態において、白色着色剤は、音響混合を受けてから、相変化インク担体と組み合わされる。
【0049】
音響ミキサーとして、インペラのない密閉容器であって、低周波の高強度音響エネルギーを用いて、白色着色剤の所望の混合を実現する密閉容器を挙げることができる。
【0050】
インペラを有する従来のミキサーを用いて生じる虞のある問題として、混合サイクルが緩慢となること;高粘度の混合能力が限られること;粘性による加熱が生じること;充填ロード能力が限られること;高いせん断力が局部的にとどまる混合となること;接触混合が必要なため、インペラの洗浄がさらなる工程となり、プロセス中に行われなければならないこと;ならびにプロセスが混合およびコンテナへの移動を含み、その後にコンテナが輸送されること、が挙げられる。
【0051】
反対に、音響ミキサーを用いて見られる利点として、混合サイクルが速くなること;高粘度の混合能力が優れること;熱の発生が低いこと;充填ロード量の効率が上がること;混合される材料の全体にわたって混合強度が高いこと;非接触の、衛生的な、密封された混合であること;および材料を有するコンテナ内で混合してからコンテナを輸送できるので、プロセスがより短いこと、が挙げられる。
【0052】
本開示に従って選択される音響ミキサーは、容器全体の至る所に一貫したせん断場を供給することによって均質な混合を実現するので、本明細書中の白色着色剤の混合に特に適切であり得る。
【0053】
本開示に従う使用に適した音響ミキサーとして、LABRAMミキサーおよびRESONANTACOUSTIC(登録商標)ミキサーが挙げられ、これらはインペラがなく、Resodyn(商標)Acoustic Mixers,Inc.から市販されている。音響ミキサーは、共鳴周波数で稼動する。厳密に制御される電気機械的オシレータが、混合材料を励起するために用いられる。音響ミキサーは、15から2000ヘルツまたは30ヘルツの周波数で稼動してよい。全体の系は、共鳴状態で振動してよく、これにより高度に効率的なエネルギー伝達およびポリマー溶融物の成分の急速な混合が可能となる。白色着色剤は、30から110gの加速度の音響混合を受ける(gは重力加速度であり、約9.81m/sと規定される)。
【0054】
音響ミキサー(Resodyn(商標)Acoustic Mixers,Inc.から入手可能なもの等)は、高強度、低周波数の音響エネルギーを供給して、例えば、種々の物理的状態の材料をせん断および非常に効率的に混合することができる。音響ミキサー内での顔料の最適な湿潤化およびその後の支持賦形剤内への混合が、30から110gの加速度および50から100パーセント強度の供給パーセンテージ強度で行われる。
【0055】
音響ミキサーは、最大1億センチポイズ(cP)、100万cPから8000万cPの粘度を有するポリマー溶融物を処理し得る。インペラベースのミキサーと比較して、音響ミキサーは、非常に短い時間内で良好な溶融混合を容易に達成することができ、実施形態において1分から300分、または2分から60分で済む。
【0056】
白色着色剤(実施形態では二酸化チタン顔料)は、音響ミキサー(Resodyn(商標)Acoustic Mixers,Inc.のResodyn(商標)音響ミキサー等)で処理される。
【0057】
実施形態において、本明細書中の白色着色剤は、音響混合を受け、この音響混合は、白色着色剤を音響混合に曝すことと、分散剤を加えて、白色着色剤および分散剤をさらなる音響混合にさらに曝すことと、その後、溶融混合した相変化インク担体組成物を、音響混合した白色着色剤および任意の分散剤に加えることと、を含んでよい。相変化インク担体組成物は、音響混合した白色着色剤を含むコンテナ内に、速度制御してポンプ輸送されてよい。任意で抗酸化剤、任意で共力剤、および任意で蛍光性染料が、相変化インク担体に撹拌しながら加えられてよい。任意で、プロセスは相変化インクをろ過することを含んでよい。
【0058】
TiO顔料の湿潤化および微粉化が、加熱したアトライタ容器(加熱ステンレス鋼ショットおよび溶融蝋様賦形剤(ステアリルステアルアミドで構成されるもの等)を用いる)内でゆっくり進むと、濃縮物が形成されたが、TiO顔料は、徹底的に湿潤化されていなかったという証拠があり、この濃縮物では、5ミクロンに定めたステンレス鋼メッシュフィルタを通ってろ過され得ない粗悪なインクが形成された。実施形態において、同じ組成のTiOおよびSolsperse(登録商標)21000を、0.3ミリメートル直径のYTZ(登録商標)粉砕ビーズと共に音響混合すると、非常に濃厚なペーストが生じ、驚くべきことに、他の溶融固体インク成分と共に容易に組み込まれ、低い粘性のニュートン性インク(5ミクロンに定めたステンレス鋼メッシュフィルタを通ってろ過され得るようなもの等)が生じた。
【0059】
最終の白色着色剤の粒径および粒度分布は、分散剤の量、および音響混合を受けるコンテナ内での総滞留時間を調整することによって、制御されてよい。実際には、30から500ナノメートル(または80から300ナノメートル)の最終粒径が達成されてよい。実施形態において、白色着色剤は200から300ナノメートルの粒径を有し、より具体的な実施形態において、白色着色剤は二酸化チタン顔料であり、200から300ナノメートルの粒径を有する。
【0060】
白色着色剤を、単独で、または相変化インク担体成分および任意の添加剤と組み合わせて保有するコンテナは、音響混合装置内に入れられて、混合後、混合が起こったコンテナから一度も材料を取り出すことなく輸送されてよい。
【0061】
インクは、ダイレクト印刷インクジェットプロセス用の装置、および非ダイレクト(オフセット)印刷インクジェット用途において、使用されてよい。
【0062】
実施形態において、本明細書中のプロセスは、(1)インクジェット印刷装置内に、音響処理された白色着色剤であって、30から110gの加速度の音響混合を受けた白色着色剤と;任意で30から110gの加速度の音響混合を受けた着色剤分散剤と;任意の共力剤と;任意の蛍光性染料と;(i)分岐トリアミドおよび(ii)ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックスまたはこれらの混合物もしくは組合せを含む相変化インク担体と;を含む相変化インク組成物を組み込むことと、(2)インクを溶融させることと;(3)溶融したインクの小滴を画像状パターンに下地材上へ吐出することと;を含む。
【0063】
実施形態において、本明細書中のプロセスでは、任意で蛍光性染料が相変化インク中に存在し;溶融したインクは、画像状パターンに有色の下地材上へ吐出されて、有色の下地材上に印刷画像を形成し、該印刷画像は、紫外光下で見た場合に、色を白色から異なる色に変える。
【0064】
実施形態において、本明細書中のプロセスでは、任意で蛍光性染料が存在し;溶融したインクは、画像状様に吐出されて、下地材上に白色の背景を形成し;有色インクを該白色の背景上に画像状様に堆積させることによって、印刷画像が形成され、該背景は、紫外光に曝した場合に、色を白色から異なる色に変える。
【0065】
実施形態において、本明細書中のプロセスでは、下地材は、暗い下地材、黒色の下地材、茶色の下地材、ボール紙下地材、クラフト紙下地材および厚紙下地材からなる群から選択される。
【0066】
任意の適切な下地材または記録シートが用いられてよい。実施形態において、下地材は、暗い(茶色、黒色等)下地材(茶色または黒色のクラフト紙等)を含む。実施形態において、下地材は、ボール紙下地材または厚紙下地材を含む。実施形態において、下地材は、暗い下地材、黒色の下地材、茶色の下地材、ボール紙下地材、クラフト紙下地材および厚紙下地材からなる群から選択される。
【実施例】
【0067】
実施例1
10.0部(10.0グラム)のTiO顔料を、120ミリリットルのプラスチックボトル内に加えた。ボトルに、100グラムの0.3ミリメートル直径のジルコニアビーズを充填した(実際のミル用にボトル内に空間をいくらか残すべきである)。ボトルをResodyn(商標)音響ミキサー内部に入れ、TiO顔料をジルコニアビーズによって20分間80%の強度で粉砕するようにした。6.0部(6.0グラム)のSolsperse(登録商標)21000ポリマー分散剤を、30分後のボトルに(TiO顔料およびジルコニアビーズの混合物に)加えた。顔料および分散剤の混合物をさらに10分間粉砕した。
【0068】
最終の混合物(濃厚な白色ペースト)をビーカー内に入れ、これにゆっくり加えたのは(すでに120℃で溶融し、徹底的に混合している)、49.7部(49.7グラム)の蒸留ポリエチレンワックス(1モルあたり350から730グラムの平均ピーク分子量、1.03から3.0の多分散度、および非対称の分子量分布(高い分子量の側の方にゆがむ)を有し、Baker Petroliteから得、米国特許第7407539号に記載されるように改変したもの)、12.3部(12.3グラム)の樹脂6(米国特許第6860930号明細書の実施例IIに記載されるように調製したトリアミド樹脂)、12.3部(12.3グラム)のKEMAMIDE(登録商標)S−180(ステアリルステアルアミド)、7.8部(7.8グラム)のKE−100(水素化されたアビエチン酸のトリグリセリド)、0.9部(0.9グラム)のウレタン樹脂(米国特許第6309453号明細書の実施例4で調製されるようなもの)、および0.1部(0.1グラム)のNaugard(登録商標)445(芳香族アミン抗酸化剤)であった。生じたインクを2時間120℃にて撹拌した。最終のインクを5μmメッシュを通して簡単にろ過して、ビーズを単離すると共にインクをろ過した。
【0069】
実施例2
15.0部(15.0グラム)のTiO顔料を、120ミリリットルのプラスチックボトル内に加えた。ボトルに、100グラムの0.3ミリメートル直径のジルコニアビーズを充填した(実際のミル用にボトル内に空間をいくらか残すべきである)。ボトルをResodyn(商標)音響ミキサー内部に入れ、TiO顔料をジルコニアビーズによって20分間80%の強度で粉砕するようにした。9.0部(9.0グラム)のSolsperse(登録商標)21000ポリマー分散剤を、20分後のボトルに(TiO顔料およびジルコニアビーズの混合物に)加えた。顔料および分散剤の混合物をさらに10分間粉砕した。最終の混合物(濃厚な白色ペースト)をビーカー内に入れ、これにゆっくり加えたのは(すでに120℃で溶融し、徹底的に混合している)、46.4部(46.4グラム)の蒸留ポリエチレンワックス(実施例1に記載したもの)、11.2部(11.2グラム)の樹脂6(米国特許第6860930号明細書の実施例IIに記載されるように調製したトリアミド樹脂)、11.2部(11.2グラム)のKEMAMIDE(登録商標)S−180(ステアリルステアルアミド)、6.2部(6.2グラム)のKE−100(水素化されたアビエチン酸のトリグリセリド)、0.9部(0.9グラム)のウレタン樹脂(米国特許第6309453号明細書の実施例4で調製されるようなもの)、および0.1部(0.1グラム)のNaugard(登録商標)445(芳香族アミン抗酸化剤)であった。生じたインクを2時間120℃にて撹拌した。最終のインクを5μmメッシュを通して簡単にろ過して、ビーズを単離すると共にインクをろ過した。
【0070】
実施例3
120ミリリットルのLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)ボトル内に、100.0グラムの0.3ミリメートル直径のYTZ(登録商標)粉砕ビーズ(東ソー株式会社から入手可能なイットリア安定化ジルコニア粉末から製造した粉砕媒体)および10.0グラムのTi−Pure(登録商標)R−931二酸化チタンを入れた。続いて、混合物を、Resodyn(商標)Acoustic Mixer内に入れ、90%の強度(98から104Gの力を発生)で20分間にわたって混合して、MIXTURE Aを混合形成した。初めの混合工程の後、6.0グラムのSOLSPERSE(登録商標)21000をMIXTURE Aに加え、続いてResodyn(商標)Acoustic Mixer内に入れ、90%の強度(98から104Gの力を発生)で10分間にわたって混合して、MIXTURE Bを混合形成した。この実施例をもう一度繰り返して、十分な量の色素性白色濃縮物を、本明細書中の続く処理工程のために製造した。
【0071】
実施例4
600ミリリットルのビーカー内に、15.13グラムのKEMAMIDE(登録商標)S−180、15.13グラムのトリアミドワックス(米国特許第6860930号明細書の実施例IIに記載されるようなトリアミド)、61.34グラムの蒸留ポリエチレンワックス(1モルあたり350から730グラムの平均ピーク分子量、約1.03から約3.0の多分散度、および非対称の分子量分布(高い分子量の側の方にゆがむ)を有し、米国特許第7407539号に記載されるように改変したポリエチレンワックス)、8.38グラムのKE−100樹脂、1.22グラムのウレタン樹脂(3等量のステアリルイソシアネートおよびグリセロール系アルコールのアダクトであり、米国特許第6309453号明細書の実施例4に記載されるように調製されるもの)および0.14グラムのNAUGARD(登録商標)445抗酸化剤を入れた。混合物を120℃のオーブンに移し、2時間後、120℃に設定したホットプレート上に移して1時間混合し、MIXTURE Cを形成した。実施例1で反復調製した2つのMIXTURE Bの調製物を、600ミリリットルのビーカーへ定量的に移し、続いて120℃のオーブンに入れた(1時間)。その後、MIXTURE Bを含む600ミリリットルのビーカーを120℃に設定したホットプレート(高架式撹拌装置および多翼型インペラを備え、オーブン中で120℃に予熱したもの)へ移した。MIXTURE Bを、最初はゆっくり撹拌し、30分間にわたってMIXTURE Cでゆっくり希釈しつつ、撹拌速度を350RPMに上げ、その速度でさらに2時間撹拌した。新たに形成された色素性白色インクを、KST−47ろ過装置を用いて、120℃にて、165×800 304 SSメッシュ(25ミクロンに定められている)を通してろ過することによって、YTZ(登録商標)粉砕媒体から単離した。
【0072】
実施例5
実施例4の色素性白色インク、MIXTURE Cを、120℃に設定したホットプレート(高架式撹拌装置および多翼型インペラを備え、オーブン中で120℃に予熱したもので、撹拌速度を300RPMとした)上へ戻した。撹拌中のMIXTURE Cに、Risk Reactorから市販されている0.74gのDFKY−C7(透明な赤色蛍光性染料)をゆっくり加えた。インクを2時間撹拌してから、KST−47ろ過装置(Advantec Corporationから入手可能である)を用いて、120℃にて、165×800 304 SSメッシュ(25ミクロンに定められており、McMaster−Carrから入手可能である)を通してろ過した。
【0073】
実施例2のレオロジーを、RFS−IIIレオメータの50ミリメートルのコーンおよびプレートジオメトリを用いて、110℃にて求めた。動的粘度を、2つの異なるせん断速度(せん断速度スイープを、High To LowおよびLow To Highモードの双方において、1から100(s−1)まで上げた)にて測定した。目標とする適切なインクの粘性は、110℃にて約10センチポイズである。
【0074】
レオロジーの結果から、表1においてわかるように、白色の固体インクはニュートン挙動を示すことが明らかとなった。
【表1】
【0075】
実施例2のインクサンプルを、Xerox(登録商標)Phaser(登録商標)8860プリンターで印刷した。異なる濃度の異なる領域カバレッジが印刷されるように、ターゲットを選んだ。印刷画像の1つは、525×450dpi解像度での、10%から200%のインクの領域カバレッジ(領域カバレッジは10%ずつ増加する)を示す。試験印刷を、様々な紙下地材(黒色および茶色のクラフト紙等)上に行った。特に興味深いのは、黒色の下地材上に行った印刷である。黒色の下地材は、白色インクにとって最悪のシナリオケースととらえられる。低い隠蔽力の白色層を通過する任意の周囲光が、その下の黒色背景によって吸収されると、貧弱な白色に見える。図1は、10%から200%のカバレッジ範囲に及ぶ、黒色の紙上の白色印刷を示す。白色と黒色領域とのコントラストは、特に200%のカバレッジ状態について、かなり優れている。100%とは、通常の印刷である。200%とは、2層の印刷を表す。
【0076】
優れた外観に加えて、黒色の紙上の白色インクの印刷品質を、反射分光法によって、標準的な可視領域の光スペクトル(380ナノメートルから730ナノメートル)の全体にわたって特徴付けた。これは、GretagMacbeth Spectrolino分光光度計により実行した。
【0077】
図2は、実施例2の白色インク(200%および100%)の、および黒色の紙下地材のみ(比較用)の、反射スペクトルを示す。
【0078】
約40%の反射が通常の印刷条件(100%、1層)により達成されることがわかる。白色の質は、2層(200%のカバレッジ)を印刷することによって、約60%の反射にさらに向上する。これは黒色の下地材に対して、かなり良好な隠蔽力である。全可視スペクトルにわたる200%のカバレッジについての平均吸光度は、OD=0.28であった。結果として、白色は優れた隠蔽力を示す。
【0079】
比較のために、達成され得る最良の白色を白色の紙とする。Xerox(登録商標)4200白色紙は、OD=0.07の平均吸光度を示した。黒色の紙下地材上の200%のカバレッジについて測定された0.28という値は、かなり優れており、黒色の紙下地材上に印刷される白色インクの十分なコントラストを実現するものと予想される。該インクは、有色の下地材、特に黒色または非常に暗い下地材上に、テキストまたはコード(2Dコードおよびバーコード等)を印刷するのに使用され得る。
【0080】
白色の質に関係がある1つの特定の側面として、反射は、スペクトルの全可視領域にわたって略一定であるという事実がある。これは、印刷されるインクが、全ての波長の入射光を散乱させることを意味する。これは、純粋な白色に非常に近いものととらえられ、当然所望されるものである。
【0081】
有色の下地材上への印刷に適した白色の固体インク組成物を提供する。実施形態において、該インクは、白色顔料を固体インクベース組成物に加えることによって、調製される。実施形態において、該インク組成物は、(a)二酸化チタン白色顔料と、(b)インクベースと、(c)分散剤と、(d)任意の共力剤とを含む。約12から約17%の二酸化チタンを有するある種のインクが、デジタル的に印刷されて、良好な隠蔽力(不透明性)を示した。例えば、黒色の紙上に本明細書中で記載される白色の固体インクで印刷した試験パッチ上で、最大60%の反射が測定された。TEM(透過型電子顕微鏡)およびSEM(走査型電子顕微鏡)分析を行った。実施形態において、TEMにより、一次TiO粒子が約150から約200ナノメートルであることが示される。SEM分析により、TiOは、分析されたサンプルの至る所に非常によく、そして一様に分散していることがわかる。従って、有色の下地材上で良好な隠蔽力を可能にするのに十分な高顔料ロード量で噴射可能な白色固体インクが提供される。本明細書中の白色固体インクは、ラベリング市場およびパッケージ市場において、広い利用可能性を提供する。
【0082】
実施例5のインクのせん断粘度プロフィールを、RFS−IIIレオメータの50ミリメートルのコーンおよびプレートジオメトリを用いて、110℃にて求めた。1および100(s−1)のせん断粘度を、1から約251.2s−1に及ぶせん断速度スイープから求めた。目標とする適切なインクの粘度範囲は、約8から約12センチポイズであり、各比較のせん断速度(1および100s−1等)での粘度の差異が最小である(1センチポイズ未満、0.5センチポイズ未満またはゼロ等)場合に、より良好なニュートン挙動が実現される。実施例5のインクの粘度結果の概要を、以下の表2に示す。
【表2】
【0083】
表2のデータにより、実施例5のインクは、その粘度せん断速度インデックスによって与えられる非常に良好なニュートン品質を有することが示される。というのも、1に非常に近く(正確に1の値であると、ニュートン流体と考えられる)、典型的なピエゾインクジェット(PIJ)インクの一般要件と一致する全体的なせん断粘度を有するからである。
【0084】
実施例5のインクサンプルを、Xerox(登録商標)Phaser(登録商標)8860プリンターで印刷した。異なる濃度の異なる領域カバレッジが印刷されるように、ターゲットを選んだ。印刷画像の1つは、525×450dpi解像度での、10%から200%のインクの領域カバレッジ(領域カバレッジは10%ずつ増加する)を示す。試験印刷を、様々な紙下地材(黒色および茶色のクラフト紙等)上に行った。特に興味深いのは、黒色の下地材上に行った印刷である。黒色の下地材は、白色インクにとって最悪のシナリオケースととらえられる。低い隠蔽力の白色層を通過する任意の周囲光が、その下の黒色背景によって吸収されると、貧弱な白色に見える。
【0085】
通常の条件下で見ると、印刷されたインクは、茶色および黒色の双方の紙上で白色に見える。紙下地材の背景色と印刷された領域との良好なコントラストが、双方の種類の下地材(茶色および黒色)について見られる。従って、通常の条件下で、インクは、白色固体インクとしてふさわしい形で機能する。
【0086】
本出願のインクは、サンプルが紫外光下で見られる場合、前に白色だった領域が、紫外光下で明るい赤色の光の放出を示すという点で、利点をもたらす。これは、本出願のセキュリティ白色固体インクに固有の特性であり、以前に開示された白色固体インク(紫外光下でも白みがかった青色っぽく見える(有意な色の変化はない))では見られないものである。この特徴により、他の誰かによって再現するのが難しい重要なセキュリティ機能が実現される。さらに、蛍光性材料によって付与される赤色のスイッチング能力は、コピーすることができない。
【0087】
上記白色インクは、暗い下地材上に印刷されるセキュリティインクとして用いられてよい。このインクでなされた印刷は、通常の光の下で、任意の他のインクと同じように白色に見える。しかしながら、UV光下で、該印刷は赤色に見える。例えばバーコードをこのインクで印刷した場合、バーコードが色を白色(通常の可視光)から赤色(紫外光下)に変えることができるか否かにより、製品の信ぴょう性を実証できるであろう。
【0088】
白色の背景領域が、下地材上に、実施形態では暗い有色の下地材上に、印刷されてよい。目的とする情報(例えば、ラベルまたはパッケージング用途において)が、白色の紙上に印刷されるのと同様にして、通常の有色インクで印刷されてよい。印刷された文書またはパッケージは、通常の光の下で白色の背景を示すことになる。紫外光下で、印刷された文書またはパッケージは、異なる色を放出することになる。該情報は、背景の明るい赤色の光と、印刷に用いられた通常の暗いインクの不変的な色とのコントラストとして、紫外線下でも完全に読み取ることができる。白色背景の、選択された色に対する配色により、信頼できる製品またはパッケージングが示されるだろう。色が変化しないと、偽造品であると示される。背景は、コーティングプロセスを用いるデジタル印刷または堆積によってよく、該プロセスとしては、既知のコーティングプロセス(スピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、浸漬コーティング等)が挙げられるが、限定されない。
【0089】
実施形態において、相変化インク組成物はさらに、インクのセキュリティ機能を強めるために、さらなる成分を含む。実施形態において、該相変化インク組成物は、インクを、現在入手可能である他の固体インクセキュリティインクと比較して、より信頼できかつ固有のものとするさらなる成分を含む。本明細書中の相変化インク組成物は、前記インクの新規な使用(取引および販売促進部門、およびパッケージングにおける使用が挙げられる)を可能にするセキュリティインクとして用いられてよい。デジタル印刷された特注割引チェックおよびクーポンが、取引および販売促進用文書の重要なコンポーネントである。
【0090】
上記相変化インク組成物の性能は、二重セキュリティ機能を有するので、比類のないものである:普通に見る条件下では白色に見え、紫外光源(ブラックライト等)で見ると有色に見えることである。該相変化インクは、インクによって偽造をより困難にするという重要な要件の独自性を提供する。本発明者らは、種々の色を放出するインクを示した(すなわち、UV光下で白色が赤色に変わるというものである)。これら比類のないインク組成物の印刷適性も示した。
図1
図2