(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、このトレッドの半径方向内側に位置するベルトとを備えた空気入りタイヤであって、
このタイヤが、それぞれが上記ベルトよりも軸方向外側に位置する一対の補強層をさらに備えており、
上記ベルトが、内側層と、この内側層の半径方向外側に位置する外側層とを備えており、
上記内側層及び外側層のそれぞれが並列された多数のベルトコードを含んでおり、
それぞれのベルトコードが赤道面に対して傾斜しており、
上記補強層が、並列された多数の補強コードを含んでおり、
それぞれの補強コードが周方向に対して傾斜しており、
このタイヤのプロファイルが、接地面とそれぞれがこの接地面から半径方向略内向きに延びる一対の側面とを備えており、
軸方向における両側面間距離の最大値がこのタイヤの最大幅であり、
上記接地面と上記側面との境界が点PBとされ、上記最大幅を示す上記側面上の地点が点PWとされ、上記点PWを通り軸方向に延びる仮想直線が基準線とされ、上記基準線から赤道までの半径方向長さが基準長さとされ、上記点PWよりも半径方向外側に位置し、かつ、上記基準線からの半径方向長さが上記基準長さの1/3に相当する上記側面上の地点が点P1とされ、上記点P1よりも半径方向外側に位置し、かつ、この点P1からの半径方向長さが上記基準長さの1/3に相当する上記側面上の地点が点P2とされ、半径方向における上記点P2と上記点P1との中間位置にある上記側面上の地点が点P3とされ、そして、半径方向における上記点P2と上記点PBとの中間位置にある上記側面上の地点が点P4とされたとき、
上記プロファイルのうち、上記点PBから上記点PWまでのゾーンが3つの円弧により形成されており、
これらの円弧が、第一円弧と、この第一円弧から半径方向略外向きに延びる第二円弧と、この第二円弧からさらに半径方向略外向きに延びる第三円弧とからなり、
上記第一円弧が、上記点PW及び上記点P1を通り、
上記第二円弧が、上記点P1、上記点P3及び上記点P2を通り、
上記第三円弧が、上記点P2、上記点P4及び上記点PBを通り、
上記第二円弧の曲率半径R2の上記第一円弧の曲率半径R1に対する比が1.45以上3.26以下であり、
上記第三円弧の曲率半径R3の上記第一円弧の曲率半径R1に対する比が0.45以上0.58以下であり、
上記第一円弧の延長線が、上記点P1と上記基準線に対して線対称な位置関係にある仮想点を通り、
上記外側層の軸方向幅の、上記タイヤの呼び幅に対する比が、0.66以上0.77以下であり、
上記外側層の軸方向幅に対する上記第三円弧の曲率半径R3の比が、0.18以上0.23以下であり、
上記補強層が、上記側面の上記点P1から上記点P2までのゾーンと重複しており、
上記点P3における上記側面法線が上記補強層の半径方向における中点を通り、
上記補強層の長さの上記第二円弧の長さに対する比が、1.1以上1.7以下である、空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
【0016】
このタイヤ2は、リム4に組み込まれている。このリム4は、正規リムである。このタイヤ2には、空気が充填されている。このタイヤ2の内圧は、正規内圧である。本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0017】
このタイヤ2は、トレッド6、サイドウォール8、クリンチ10、ビード12、カーカス14、ベルト16、インナーライナー18及び補強層20を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0018】
トレッド6は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド6は、路面と接触するトレッド面22を形成する。トレッド面22には、溝24が刻まれている。この溝24により、トレッドパターンが形成されている。図示されていないが、トレッド6は、ベース層とキャップ層とを有している。キャップ層は、ベース層の半径方向外側に位置している。キャップ層は、ベース層に積層されている。ベース層は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0019】
サイドウォール8は、トレッド6の端から半径方向略内向きに延びている。サイドウォール8の半径方向外側端は、トレッド6と接合されている。サイドウォール8の半径方向内側端は、クリンチ10と接合されている。サイドウォール8は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。サイドウォール8は、軸方向においてカーカス14よりも外側に位置している。サイドウォール8は、カーカス14の損傷を防止する。
【0020】
クリンチ10は、サイドウォール8の半径方向略内側に位置している。クリンチ10は、軸方向において、ビード12及びカーカス14よりも外側に位置している。クリンチ10は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ10は、リム4のフランジ26と当接する。
【0021】
ビード12は、クリンチ10の軸方向内側に位置している。ビード12は、コア28と、このコア28から半径方向外向きに延びるエイペックス30とを備えている。コア28はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス30は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス30は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0022】
カーカス14は、カーカスプライ32からなる。カーカスプライ32は、両側のビード12の間に架け渡されており、トレッド6及びサイドウォール8に沿っている。カーカスプライ32は、コア28の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ32には、主部32aと折り返し部32bとが形成されている。
【0023】
カーカスプライ32は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス14はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス14が、2枚以上のカーカスプライ32から形成されてもよい。
【0024】
ベルト16は、トレッド6の半径方向内側に位置している。ベルト16は、カーカス14と積層されている。ベルト16は、カーカス14を補強する。
【0025】
このタイヤ2のベルト16は、内側層34a及び外側層34bからなる。
図1から明らかなように、外側層34bは内側層34aの半径方向外側に位置している。軸方向において、外側層34bの幅は内側層34aの幅よりも若干小さい。外側層34bの軸方向幅は、通常、内側層34aの軸方向幅の0.85倍以上1.15倍以下である。
【0026】
図示されていないが、内側層34a及び外側層34bのそれぞれは、並列された多数のベルトコードとトッピングゴムとからなる。言い換えれば、ベルト16は並列された多数のベルトコードを含んでいる。各ベルトコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層34aのベルトコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層34bのベルトコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。ベルトコードの好ましい材質は、スチールである。ベルトコードに、有機繊維が用いられてもよい。好ましい有機繊維として、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。ベルト16が、3以上の層34を備えてもよい。
【0027】
インナーライナー18は、カーカス14の内側に位置している。インナーライナー18は、カーカス14の内面に接合されている。インナーライナー18は、架橋ゴムからなる。インナーライナー18には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー18の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0028】
補強層20は、ベルト16よりも軸方向外側に位置している。この補強層20は、トレッド6のショルダーからサイドウォール8にかけての領域、すなわち、バットレス領域に位置している。補強層20は、サイドウォール8とカーカス14との間に位置している。図から明らかなように、補強層20はカーカス14と積層されている。
【0029】
補強層20は、並列された多数の補強コードとトッピングゴムとからなる。言い換えれば、補強層20は並列された多数の補強コードを含んでいる。補強コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0030】
このタイヤ2では、補強層20の剛性の観点から、この補強層20における補強コードの密度は30エンズ/5cm以上が好ましく、40エンズ/5cm以下が好ましい。なお、この補強コードの密度は、補強層20における補強コードの長手方向に垂直な断面において、この補強層20の5cm幅あたりに存在する補強コードの断面の数(エンズ)が計測されることにより得られる。
【0031】
このタイヤ2は、次のようにして製造される。図示されていないが、このタイヤ2の製造方法では、フォーマーのドラム上で、トレッド6、サイドウォール8等の部材が組み合わされる。これにより、ローカバーが得られる。ローカバーは、未架橋のタイヤ2である。ローカバーが組み立てられる工程は、成形工程とも称されている。
【0032】
ローカバーは、モールドに投入される。このとき、ブラダーはローカバーの内側に位置している。ブラダーにガスが充填されると、ブラダーは膨張する。これにより、ローカバーは変形する。モールドが締められ、ブラダーの内圧が高められる。
図2に模式的に示されているのは、このときの様子である。なお、ブラダーに代えて中子が用いられてもよい。中子は、トロイダル状の外面を備える。この外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ2の内面の形状に近似される。
【0033】
図2に示されているのは、モールド36が締められたときの様子である。モールド36が締められると、ローカバー38はモールド36とブラダー40とに挟まれて加圧される。ローカバー38は、モールド36及びブラダー40からの熱伝導により、加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバー38のゴム組成物が流動する。加熱によりゴム組成物が架橋反応を起こし、
図1に示されたタイヤ2が得られる。ローカバー38が加圧及び加熱される工程は、架橋工程とも称されている。
【0034】
架橋工程では、膨張したブラダー40がモールド36のキャビティ面42にローカバー38を押し付ける。ゴムは、流動し、キャビティ面42にめり込む。これにより、タイヤ2の外面が形成される。この外面には、前述のトレッド面22の溝24が含まれる。サイドウォール8に文字、記号等の装飾物が設けられている場合は、この装飾物もこの外面に含まれる。
【0035】
本発明では、外面の輪郭はプロファイルと称される。このプロファイルは、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定された寸法に基づいて決められる。なお、この外面の一部をなすトレッド面22に溝24がある場合は、この溝24がないと仮定して得られる仮想トレッド面を用いてプロファイルは表される。サイドウォール8に装飾物が設けられている場合は、この装飾物がないと仮定して得られる、サイドウォール8の仮想外面を用いて、このプロファイルは表される。
【0036】
図1において、このタイヤ2のプロファイルが実線OLで表されている。このプロファイルOLは、接地面44と、この接地面44から半径方向略内向きに延びる側面46とを備えている。
図1中、点PBは接地面44と側面46との境界を表している。この点PBは、正規内圧の状態にあるタイヤ2に、その軸方向が水平となるように保持した状態、つまり、キャンバー角が0°となる状態で、正規荷重を付加したときにこのタイヤ2が路面と接触している部分のうち、軸方向において最も外側に位置する端により表される。本発明では、プロファイルOLのうち、左側の点PB(図示されず)から右側の点PBまでのゾーンが接地面44とされる。
【0037】
このタイヤ2は、軸方向における左右の側面46の間において最大幅を有する。言い換えれば、軸方向における両側面46の間の距離の最大値が、このタイヤ2の最大幅である。
図1では、最大幅を示す側面46上の地点が点PWで表されている。実線LBは、この点PWを通り軸方向に延びる仮想直線である。本発明では、この実線LBは基準線と称される。
【0038】
図中、符号PEで示されているのは接地面44と赤道面との交点である。本発明において、この交点PEは赤道と称される。実線LEは、この赤道PEを通り軸方向に延びる仮想直線を表している。このタイヤ2の外径は、この実線LEにより規定される。
【0039】
図1において、両矢印HAは基準線LBから実線LEまでの半径方向長さを表している。この長さHAは、基準線LBから赤道PEまでの半径方向長さである。本発明では、この長さHAは基準長さと称される。
【0040】
点P1は、点PWよりも半径方向外側に位置する側面46上の地点である。両矢印H1は、基準線LBからこの点P1までの半径方向長さを表している。このタイヤ2では、長さH1は、基準長さHAの1/3である。点P1は、点PWよりも半径方向外側に位置し、かつ、基準線LBからの半径方向長さが基準長さHAの1/3に相当する側面46上の地点である。
【0041】
点P2は、点P1よりも半径方向外側に位置する側面46上の地点である。両矢印H2は、点P1からこの点P2までの半径方向長さを表している。このタイヤ2では、長さH2は、基準長さHAの1/3である。点P2は、点P1よりも半径方向外側に位置し、かつ、この点P1からの半径方向長さが基準長さHAの1/3に相当する側面46上の地点である。
【0042】
図1において、点P3は、半径方向における点P2と点P1との中間位置にある側面46上の地点である。点P4は、半径方向における点P2と点PBとの中間位置にある側面46上の地点である。
【0043】
このタイヤ2では、外面のプロファイルOLのうち、点PBから点PWまでのゾーンは3つの円弧により形成されている。これらの円弧は、第一円弧と、第二円弧と、第三円弧とからなる。
【0044】
第一円弧は、点PWから半径方向略外向きに延びている。第一円弧は、点PW及び点P1を通る。
図1において、矢印R1で示されているのは、この第一円弧の曲率半径である。
【0045】
図1において、符号P5で示されているのは、点P1と基準線LBに対して線対称な位置関係にある仮想点である。二点鎖線L1で示されているのは、第一円弧の延長線である。図から明らかなように、この第一円弧の延長線L1は仮想点P5を通る。前述したように、第一円弧は点PW及び点P1を通る。このタイヤ2では、第一円弧の中心は基準線LB上に存在している。
【0046】
第二円弧は、第一円弧から半径方向略外向きに延びている。第二円弧は、点P1、点P3及び点P2を通る。
図1において、矢印R2で示されているのは、この第二円弧の曲率半径である。このタイヤ2では、第二円弧の中心は点P1と第一円弧の中心とを通る直線上に存在している。言い換えれば、第二円弧は第一円弧と点P1において接している。点P1は、第一円弧と第二円弧との接点である。点P1は、第一円弧と第二円弧との境界でもある。
【0047】
第三円弧は、第二円弧から半径方向略外向きに延びている。第三円弧は、点P2、点P4及び点PBを通る。
図1において、矢印R3で示されているのは、この第三円弧の曲率半径である。このタイヤ2では、第三円弧の中心は点P2と第二円弧の中心とを通る直線上に存在している。言い換えれば、第三円弧は第二円弧と点P2において接している。点P2は、第二円弧と第三円弧との接点である。点P2は、第二円弧と第三円弧との境界でもある。
【0048】
従来のタイヤでは、設計の効率化を図るために、接地面と第一円弧とは直線で繋げられる。このため、従来のタイヤでは、荷重がかけられたとき、第一円弧と直線との境界に歪みが集中しやすい傾向にある。撓みが特異であるため、従来のタイヤでは、サイドウォールの撓みが、変形に伴って生じるエネルギーを十分に吸収できない。このため、転がり抵抗の低減のために、例えば、質量を低減しても、期待通りの効果が得られないという現状がある。しかもこの直線部分において繰り返される屈曲が転がり抵抗の増大に拍車をかける恐れもある。
【0049】
これに対して、本発明のタイヤ2では、接地面44と第一円弧との間には第三円弧及び第二円弧が存在している。このタイヤ2では、接地面44は、第三円弧及び第二円弧を介して第一円弧と繋げられている。
【0050】
このタイヤ2では、第一円弧に接する第二円弧は、カーカス14からプロファイルOLまでの距離を適切に維持することに寄与する。つまり、このタイヤ2では、接地面44と第一円弧とが直線で繋げられた従来のタイヤのように、カーカス14がプロファイルOLに急激に近づくことなく、徐々に近づいていく。このタイヤ2では、点PBから点P1までのゾーン、言い換えれば、このタイヤ2のバットレス領域に、特異な剛性を有する部分はない。この第二円弧は、このタイヤ2のトレッド6の部分の動きとそのサイドウォール8の部分の動きとの分離に効果的に寄与しうる。このタイヤ2は、荷重がかけられたとき、適正に撓む。このタイヤ2では、この領域において繰り返される屈曲が転がり抵抗に与える影響が、効果的に抑えられる。このタイヤ2では、サイドウォール8が撓むことにより、変形に伴って生じるエネルギーが十分に吸収される。このタイヤ2では、転がり抵抗が低減される。このタイヤ2の転がり抵抗は、従来のタイヤの転がり抵抗に比べて小さい。しかも、適正な撓みは操縦安定性にも寄与する。
【0051】
このタイヤ2では、接地面44に接する第三円弧は、このタイヤ2のショルダーにおける接地圧の均一化に寄与する。均一な接地圧は、ショルダーにおける肩落ち摩耗を抑制する。このタイヤは、耐摩耗性に優れる。
【0052】
このタイヤ2では、プロファイルOLの最適化により転がり抵抗の低減が達成される。このため、転がり抵抗の低減の観点から、トレッド6、サイドウォール8、ベルト16等のボリュームを減らす必要はない。適正な仕様を有するベルト16を有することができるので、操縦安定性及び耐摩耗性が適切に維持される。このタイヤ2では、操縦安定性及び耐摩耗性を損なうことなく、転がり抵抗の低減が達成される。
【0053】
このタイヤ2では、第二円弧の曲率半径R2の第一円弧の曲率半径R1に対する比は1.45以上3.26以下である。この比が1.45以上に設定されることにより、サイドウォール8の撓みが適正にコントロールされる。このタイヤ2では、そのトレッド6の部分の動きとそのサイドウォール8の部分の動きとが効果的に分離される。このプロファイルOLは、転がり抵抗の低減に有効に機能しうる。この比が3.26以下に設定されることにより、点PBから点P1までのゾーンにおける、カーカス14からプロファイルOLまでの距離が適正とされたタイヤ2が得られる。このタイヤ2では、プロファイルOLに基づく質量の増加による、転がり抵抗への影響が抑えられる。この場合においても、このプロファイルOLは、転がり抵抗の低減に有効に機能しうる。しかもこの比が1.45以上3.26以下に設定されたタイヤの撓みは適正であるため、良好な操縦安定性も達成される。
【0054】
このタイヤ2では、第三円弧の曲率半径R3の第一円弧の曲率半径R1に対する比は0.45以上0.58以下である。このタイヤ2では、ショルダーが一様な接地圧で路面と接触する。しかも前述したように、適正な仕様を有するベルト16を有することができる。このプロファイルOLは、肩落ち摩耗のような偏摩耗の発生防止に寄与しうる。この観点から、この比は0.46以上が好ましく、0.56以下が好ましい。
【0055】
図1において、両矢印BW/2は外側層34bの軸方向幅の半分を表している。したがって、この外側層34bの軸方向幅はBWで表される。
【0056】
このタイヤ2では、その呼び幅をRWで表したとき、軸方向幅BWの呼び幅RWに対する比は0.66以上0.77以下が好ましい。この比が0.66以上に設定されることにより、ベルト16の軸方向幅が十分に確保される。このベルト16は、操縦安定性及び耐摩耗性に寄与しうる。この比が0.77以下に設定されることにより、ベルト16の軸方向幅が適切に維持される。このタイヤ2では、ベルト16の端に起因して生じるクラックの発生が効果的に防止される。このタイヤ2は、耐久性に優れる。しかもこのタイヤ2では、ベルト16による質量への影響が効果的に抑えられる。
【0057】
本発明では、タイヤ2のサイズに表される、幅の呼びが、呼び幅RWと称されている。例えば、タイヤ2のサイズが195/65R15で表される場合には、「195」がこのタイヤ2の呼び幅RWである。
【0058】
このタイヤ2では、第三円弧の曲率半径R3の軸方向幅BWに対する比は0.18以上0.23以下が好ましい。この比が0.18以上に設定されることにより、ベルト16の端に起因して生じるクラックの発生が効果的に防止される。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から、この比は0.19以上が好ましい。この比が0.23以下に設定されることにより、曲率半径R3の第三円弧を有するプロファイルOLからベルト16の端までの距離が適正に維持される。このタイヤ2では、プロファイルOLによるタイヤ2の質量への影響が効果的に抑えられている。しかもベルト16が適正な位置に配置されるので、このベルト16が操縦安定性及び耐摩耗性に効果的に寄与しうる。この観点から、この比は0.22以下が好ましい。
【0059】
図3には、このタイヤ2のバットレス領域が示されている。
図3において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
【0060】
図3において、実線VLは点P3における側面46の接平面に直交する直線である。直線VLは、この点P3における側面46の法線である。両矢印HRは、補強層20の半径方向内端からその半径方向外端までの半径方向長さである。点PVは、この半径方向長さHRの中間位置にあるこの補強層20の内面上の地点である。この点PVは、この補強層20の半径方向における中点である。このタイヤ2では、補強層20は、その中点PVが法線VL上に位置するように配置されている。したがって、この法線VLはこの中点PVを通る。
【0061】
前述したように、このタイヤ2では、第二円弧は、側面44上の、点P1、点P3及び点P2を通る。つまり、この点P1から点P2までのゾーンは、第二円弧で表される。このタイヤ2では、補強層20はこの点P1から点P2までのゾーンと重複している。この補強層20は、このタイヤ2のトレッド6の部分の動きとそのサイドウォール8の部分の動きとをより効果的に分離する。この補強層20は、タイヤ2の質量に影響するものの、転がり抵抗の低減に寄与する。しかも補強層20はバットレス領域の剛性に寄与するので、このタイヤ2では耐衝撃性の向上が達成される。このタイヤ2は、薄いサイドウォール8を採用できる。本発明によれば、操縦安定性及び耐摩耗性を損なうことなく、転がり抵抗を低減しつつ、耐衝撃性の向上が達成された空気入りタイヤ2が得られる。
【0062】
図3において、両矢印Lは補強層20の長さを表している。この長さLは、補強層20の内端からその外端までの長さをこの補強層20に沿って計測することにより得られる。両矢印LC2は、第二円弧の長さを表している。この長さLC2は、点P2から点P1までの側面46の長さである。両矢印tは、この補強層20の厚みを表している。
【0063】
このタイヤ2では、補強層20の長さLの、第二円弧の長さLC2に対する比は1.1以上1.7以下である。この比が1.1以上に設定されることにより、補強層20は、このタイヤ2のトレッド6の部分の動きとそのサイドウォール8の部分の動きとをより効果的に分離する。この補強層20は、タイヤ2の質量に影響するものの、転がり抵抗の低減に寄与する。しかも補強層20はバットレス領域の剛性に寄与するので、このタイヤ2では耐衝撃性の向上が達成される。この観点から、この比は1.2以上が好ましい。この比が1.7以下に設定されることにより、補強層20の質量が適切に維持される。このタイヤ2では、補強層20による転がり抵抗への影響が防止される。この観点から、この比は1.6以下が好ましい。
【0064】
このタイヤ2では、補強層20の厚みtは0.5mm以上1.5mm以下が好ましい。この厚みtが0.5mm以上に設定されることにより、補強層20が転がり抵抗の低減に効果的に寄与する。この観点から、この厚みtは0.8mm以上がより好ましい。この厚みtが1.5mm以下に設定されることにより、補強層20の質量が適切に維持される。この観点から、この厚みtは1.2mm以下がより好ましい。
【0065】
図4には、補強層20がカーカスとともに示されている。
図4において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の半径方向である。この
図4においては、補強層20の補強コードが符号48で、この補強層20のトッピングゴムが符号50で示されている。符号PVで表された実線は、前述の、この補強層20の半径方向における中点である。
【0066】
図4から明らかなように、補強層20に含まれる補強コード48は周方向に対して傾斜している。言い換えれば、この補強層20は、周方向に対して傾斜して延在する補強コード48を多数含んでいる。この補強層20は、サイドウォール8の適正な撓みに寄与しうる。この補強層20は、、このタイヤ2のトレッド6の部分の動きとそのサイドウォール8の部分の動きとをより効果的に分離する。この補強層20は、転がり抵抗の低減に寄与する。しかも補強層20はバットレス領域の剛性に寄与するので、このタイヤ2では耐衝撃性の向上が達成される。このタイヤ2は、薄いサイドウォール8を採用できる。このタイヤ2では、操縦安定性及び耐摩耗性を損なうことなく、転がり抵抗を低減しつつ、耐衝撃性の向上が達成される。
【0067】
図4において、符号αは補強コード48が実線PVに対してなす角度を表している。この角度αは、補強コード48が周方向に対してなす角度である。本願においては、補強コード48の傾斜角度αは、補強層20の、半径方向における中点PVの位置において計測される。
【0068】
このタイヤ2では、補強層20が適度な剛性を有し、サイドウォール8が適正に撓むとの観点から、補強コード48の傾斜角度αの絶対値は20°以上が好ましく、50°以下が好ましい。このタイヤ2では、操縦安定性及び耐摩耗性を損なうことなく、転がり抵抗を低減しつつ、耐衝撃性の向上が達成される。
【0069】
操縦安定性及び耐摩耗性を損なうことなく、転がり抵抗を低減しつつ、耐衝撃性の向上が達成れるとの観点から、特に、このタイヤ2のサイズが195/65R15で表される場合においては、プロファイルOLについては、第二円弧の曲率半径R2は80mm以上180mm以下が好ましく、第三円弧の曲率半径R3は25mm以上31mm以下が好ましい。ベルト16の外側層34bについては、その軸方向幅BWは128mm以上150mm以下が好ましい。補強層20については、その長さLは25mm以上35mm以下が好ましい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0071】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された実施例1の空気入りタイヤを得た。タイヤのサイズは、195/65R15とされた。したがって、このタイヤの呼び幅RWは、195mmである。この実施例1では、第一円弧の曲率半径R1は55mmとされた。第二円弧の曲率半径R2は、130mmとされた。第三円弧の曲率半径R3は、28mmとされた。ベルトの一部をなす外側層の軸方向幅BWは、140mmとされた。この実施例1では、バットレス領域に補強層が設けられている。補強層のための補強コードには、アラミド繊維からなるコード(構成=1840dtex/2)が用いられた。補強コードの傾斜角度αは、35°とされた。この補強層における補強コードの密度は、50エンズ/5cmとされた。補強層の長さLは、30mmとされた。第二円弧の長さLC2が21mmであったので、比(L/LC2)は1.4であった。補強層の厚みtは、1.0mmとされた。
【0072】
この実施例1では、半径R2の半径R1に対する比(R2/R1)は2.35であった。半径R3の半径R1に対する比(R3/R1)は、0.51であった。幅BWの呼び幅RWに対する比(BW/RW)は、0.72であった。半径R3の幅BWに対する比(R3/BW)は、0.20であった。
【0073】
[実施例2−3及び比較例1−2]
半径R2を変えて、比(R2/R1)を下記の表1の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−3及び比較例1−2のタイヤを得た。
【0074】
[実施例4−7及び比較例3−4]
半径R3を変えて、比(R3/R1)及び比(R3/BW)を下記の表2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例4−7及び比較例3−4のタイヤを得た。
【0075】
[実施例8−9及び比較例5−6]
半径R3及び幅BWを変えて、比(R3/R1)及び比(BW/RW)を下記の表3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例8−9及び比較例5−6のタイヤを得た。
【0076】
[実施例10−13]
補強層の長さLを変えて、比(L/LC2)を下記の表4の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例10−13のタイヤを得た。
【0077】
[比較例7]
第一円弧と第三円弧とを円弧ではなく直線で繋げ、半径R1、半径R3及び幅BWを下記の表5の通りとするとともに、補強層を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例7のタイヤを得た。
【0078】
[比較例8]
補強層を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例8のタイヤを得た。
【0079】
[質量及び転がり抵抗]
下記の条件にて、有限要素法(Finite Element Method;FEM)による解析を行い、タイヤの質量及び転がり抵抗を算出した。この結果が、比較例1を100とした指数で下記の表1から表5に示されている。質量の指数は、数値が小さいほど軽いことを表している。転がり抵抗の指数は、数値が小さいほど転がり抵抗が小さいことを表している。したがって、転がり抵抗については、数値が小さいほど好ましい。
リム:6.0JJ
内圧:230kPa
荷重:4.24kN
【0080】
[操縦安定性及び耐摩耗性]
タイヤを6.0JJのリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、排気量が1800ccである前輪駆動の国産乗用車に装着した。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、操縦安定性及び耐摩耗性を評価させた。この結果が、5点が満点とされた指数として下記の表1から表5に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0081】
[耐衝撃性]
タイヤを6.0JJのリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを試験機に装着した。このタイヤに荷重を付与し、このタイヤのバットレス領域とクリンチ領域とを挟み、そのときの荷重−歪み曲線を計測した。この計測は、カーカスに含まれるコードが破断した時点で終了した。得られた曲線に基づいて、単位歪み当たりの荷重の積算値(タイヤ破壊エネルギー)を算出した。この結果が、比較例1を100とした指数で下記の表1から表5に示されている。数値が大きいほど耐衝撃性が良好である。つまり、数値が大きいほど好ましい。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
表1から表5に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。