特許第6165720号(P6165720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165720
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】光学フィルタ、眼鏡及びヘルメット
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/10 20060101AFI20170710BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20170710BHJP
   A61F 9/02 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   G02C7/10
   G02F1/13 505
   A61F9/02 374
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-511907(P2014-511907)
(86)(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公表番号】特表2014-517345(P2014-517345A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012059871
(87)【国際公開番号】WO2012160196
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年5月22日
(31)【優先権主張番号】1154562
(32)【優先日】2011年5月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513295412
【氏名又は名称】カスビ,エブリン
(73)【特許権者】
【識別番号】513295423
【氏名又は名称】ボロー,ジャン−ポール
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】カスビ,エブリン
(72)【発明者】
【氏名】ボロー,ジャン−ポール
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−050123(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/069166(WO,A1)
【文献】 特表2008−502016(JP,A)
【文献】 特開平08−184799(JP,A)
【文献】 特開平06−027425(JP,A)
【文献】 特開平04−245904(JP,A)
【文献】 特開平02−230116(JP,A)
【文献】 実開平01−010722(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00−13/00
A61F 9/02
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルタであって:
少なくとも1つの光学的に透明な液晶シャッターであって、2つの分極状態間での閾値を構成する分極電圧ULCDを有しシャッターが受ける電圧が前記分極電圧ULCDよりも小さいときには不透明度OPへ、大きいときには不透明度OPへ、少なくとも2種類の不透明度OPとOPとの間で切り換わるように構成され、OPはOPよりも厳密に大きい、液晶シャッター;及び、
前記液晶シャッターの電圧を制御するように構成される前記液晶シャッターの電子制御モジュールと、受ける光度の関数として変化する連続的な電圧UCSを前記電子制御モジュールに供給し、前記電子制御モジュール及び前記液晶シャッターの唯一の電源である感光性センサを有する電子機器システム;
を有し、
前記電子制御モジュールは電圧比較器と遮断器とを有し、前記遮断器は前記感光性センサと前記液晶シャッターとの間に介在し、前記電圧比較器は、前記感光性センサによって供給される電圧UCSと、超過閾電圧Uref1又は不足閾電圧Uref2とを比較し、前記超過閾電圧Uref1は十分の数ボルトだけ前記不足閾電圧Uref2よりも大きく、前記不足閾電圧Uref2は十分の数ボルトだけ前記液晶シャッターの分極電圧ULCDよりも大きく、
前記光学フィルタが1つより多い光学的に透明な液晶シャッターを有する場合、光学的に透明な液晶シャッターの全てが、前記遮断器の出力に並列に接続され、以て、LCDパネルが同じ制御信号を受けて同相制御信号を受信し、
前記感光性センサが目くらまし閾値l未満の光度を受ける場合において、前記感光性センサにより供給される電圧UCSが前記不足閾電圧Uref2より少ないことを前記電圧比較器が検出したとき、前記電圧比較器は前記遮断器が開くように制御し、以て、前記電子制御モジュールは前記液晶シャッターに電圧を供給せず、前記液晶シャッターはもはや給電されず、前記液晶シャッターは不透明度OPを有するようになり、かつ、
前記感光性センサが目くらまし閾値lよりも大きな光度を受ける場合において、前記感光性センサにより供給される電圧UCSが前記超過閾電圧Uref1を越えることを前記電圧比較器が検出したとき、前記電圧比較器は前記遮断器が閉じるように制御し前記液晶シャッターの分極電圧ULCDよりも厳密に大きな前記感光性センサにより出力される連続的なDC電圧U、前記遮断器を介して前記液晶シャッターに給することにより、前記液晶シャッターは、不透明度OPからOPへ切り換わる、
ことを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
前記光学フィルタは、前記遮断器と前記液晶シャッター各々との間で前記遮断器の下流に位置し、かつ、前記液晶シャッターの分極電圧ULCDよりも大き一定の電圧Uまで前記液晶シャッターの各々に印加される電圧を制限するように構成される電圧制御装置をも有する、
請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
不透明度OPは、前記分極電圧ULCDよりも大きな任意の電圧Uについて一定である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記液晶シャッターの不透明度OPを手動制御するための装置をも有する、請求項に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記電子制御モジュールを永続的に手動で停止させる装置をも有する、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記感光性センサは少なくとも1つの支持表面に統合され、
前記電子制御モジュールは、少なくとも1つのレンズ上でのシルクスクリーンプリントによってプリント回路上に作成される、
請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記液晶シャッターはレンズの部分領域に統合される、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
請求項1に記載の光学フィルタを有する一対の眼鏡であって、当該光学フィルタは、当該眼鏡のレンズを構成するか、又は、前記レンズに統合される2つの液晶シャッターを有する、一対の眼鏡。
【請求項9】
特定の装着者の光学補正に役立つように加工又は処理される少なくとも1つのガラスを有する、請求項に記載の一対の眼鏡。
【請求項10】
請求項1に記載の光学フィルタを有するヘルメットであって、当該光学フィルタの液晶シャッターは、当該ヘルメットのひさしを構成するか、又は、前記ひさしに統合される、ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光度を減少させるのに用いられる光学フィルタの分野に関し、より詳細には、周辺光度に適応しうる液晶光学シャッターを有する光学フィルタの分野に関する。
【0002】
本発明は特に、サンガラスとして光から保護するために日常用いられる装置内で実装されうる。
【背景技術】
【0003】
光度を減少させる多数の装置が既に知られている。そのうちの一部は、液晶シャッターを有し、かつ、周辺光度に適応することができる。
【0004】
特に興味深いのは特許文献1である。特許文献1は、到達する光度を増大させる機能である連続信号を送信する感光性センサ、及び、液晶スクリーンの透過率が減少する−つまり感光性センサが受ける光度が増大するときに不透明度が増大する−ようにその液晶スクリーンと接続する電子回路を有するサンガラスについて記載している。
【0005】
特許文献2も既知であり、かつ、特許文献1の特徴をすべて含む。特許文献2では、ガラスの暗さもまた、感光性センサが受ける光度に比例する。
【0006】
特許文献3もまた既知である。特許文献3は、バッテリーが、液晶シャッターの電子制御回路に給電する解決法を提案している。この電子回路はかなり複雑であるため、その応答時間が長い。
【0007】
しかしこれらの装置は多数の欠点を有する。
【0008】
第1に、これらの装置のガラスが暗くなるには、数十秒又は数分の適応時間が必要となる。そのため瞬時に暗くならなければならない状況に十分適応しない。
【0009】
これらの状況の例とは具体的には、たとえば晴天の場合において、運転手がトンネルの中または木の枝や葉の下等を通り抜ける間に、自動車または自動二輪車内で変化する状況である。通常の条件下では、運転手は、目がくらまないように、サンガラス又は色のついたひさしを備えるヘルメットを装着する。運転手が、光度が急激に変化するこれらの経路のうちの1つに到着するとき、その運転手は、ガラスを取り外すか、又は、ひさしを上げる。しかしこのために、その運転手は危険な状態になってしまう。このように光度が急激に変化するために、その運転手が何もできない数秒間の不注意状態が生じてしまうためである。
【0010】
また運転手は、ガラス又はひさしを取り外さない場合の危険性をも負っている。なぜならその運転手の視認性が減少するからである。
【0011】
上述した適応可能な装置は、これらの問題を解決しない。なぜなら上述の状態変化時間にわたって、ユーザーの視認性は阻害され、又は減少するからである。このことは、そのユーザーと他のユーザーの両方が危険になることを意味する。
【0012】
また液晶を利用する装置−たとえば給電が連続的で、暗さが入射光度に比例するように設計されたニューメリック型の装置−では、液晶の分子が、要求される阻止に適合する配向に従って均一に揃わないことが時々ある。その結果、ガラスのレンズでまだらや光沢のような光学現象が生じる。これは、ユーザーを悩ませる恐れがある。
【0013】
特許文献4で与えられる代替解決法は、光学フィルタを提案している。その光学フィルタでは、感光性センサが、液晶スクリーンに電圧を供給することで、そのスクリーンの阻止を制御する。電子回路はまた、上述した光沢が存在しなくなるように液晶スクリーン内の残留電荷を迅速に放電するレジスタをも有する。
【0014】
また、別なバッテリーがシャッターに適合した電圧を出力する解決法が提案された。しかしそのバッテリーがユーザーの役に立たなくなる危険性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】仏国特許第2693562号明細書
【特許文献2】仏国特許第2781289号明細書
【特許文献3】国際特許出願第PCT/US2007/019631号明細書
【特許文献4】国際公開第2009/069166号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って本発明の目的は、これまでの解決法に対する代替解決法−具体的にはユーザーにとって安全な光学フィルタ−を提供することである。当該光学フィルタは、フィルタ上での入射光度に略瞬時に適応することを可能にすることで、ユーザーにとって厄介な光学現象を回避する。
【0017】
本発明の他の目的は、支持体−たとえばガラス、ヘルメット、又は窓−上で容易に用いられうることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的のため、本発明は光学フィルタを提案する。当該光学フィルタは、少なくとも1つの光学的に透明な液晶シャッターと、電子機器システムを有する。前記少なくとも1つの光学的に透明な液晶シャッターは、2つの分極状態間での閾値を構成する分極電圧ULCDを有し、かつ、前記シャッターが受ける電圧が前記分極電圧よりも小さいとき又は大きいときに、少なくとも2種類の不透明度OP1と、OP1よりも厳密に大きなOP2との間で切り換えるように構成される。
【0019】
前記電子機器システムは、前記液晶シャッターの電子制御モジュールと、感光性センサを有する。前記電子制御モジュールは、前記液晶シャッターの電圧を制御するように適合する。前記感光性センサは、該感光性センサが受ける光度の関数として変化する連続の電圧UCSを前記電子制御モジュールに供給する。前記感光性センサは、前記電子制御モジュールと前記液晶シャッターの唯一の電源である。
【0020】
上記構成により、以下が実現される。
− 前記感光性センサが目くらまし閾値le未満の光度を受ける場合には、前記液晶シャッターは不透明度OP1を有する。
− 前記電子制御モジュールは、前記感光性センサが目くらまし閾値leよりも大きな光度を受ける場合には、前記液晶シャッターに、該液晶シャッターの分極電圧ULCDよりも厳密に大きな連続の電圧Ueを供給するように適合する。それにより、前記シャッターは、不透明度OP1からOP2へ切り換わる。
【0021】
任意ではあるが有利となるように、本発明によって提案された光学フィルタは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
− 前記感光性センサが前記目くらまし閾値leよりも大きな光度を受けるときには、前記電子制御モジュールは、十分の数ボルトだけ前記シャッターの分極電圧ULCDよりも大きな電圧Ueを、前記シャッターへ供給する。
− 前記感光性センサが前記目くらまし閾値leよりも小さな光度を受けるときには、前記電子制御モジュールは、前記液晶シャッターへ電圧を供給しない。
− 前記電子制御モジュールは、電圧比較器と遮断器を有する。
− 前記電圧比較器は、前記感光性センサによって供給される電圧UCSと、超過したUref1による閾値電圧又は不足したUref2による閾値電圧とを比較する。ここで、Uref1は、十分の数ボルトだけUref2よりも大きく、かつ、Uref2は、十分の数ボルトだけULCDよりも大きい。
− 前記センサによって供給される電圧UCSが、超過したUref1による閾値電圧を超える場合、前記遮断器は閉じ、前記遮断器はUCSに等しい電圧Ueを前記液晶シャッターに供し、かつ、前記液晶シャッターの不透明度はOP2に等しくなる。前記感光性センサによって供給される電圧UCSが、不足したUref2による閾値電圧未満となる場合、前記遮断器は開き、前記液晶シャッターへの給電は停止され、かつ、前記液晶シャッターの不透明度はOP1に等しくなる。
− 不透明度OP2が前記シャッターの端子での電圧Ueとともに増大し、かつ、前記光学フィルタはまた、前記遮断器の下流に位置し、かつ、前記シャッターの分極電圧ULCDよりも大きくて一定の電圧Ueを供給する電圧制御装置をも有する。さもなければ不透明度OP2は、前記シャッターの分極電圧ULCDよりも大きなすべての電圧Ueについて一定である。
− 前記光学フィルタはまた、前記液晶シャッターの不透明度OP2を手動制御する装置をも有する。
− 前記光学フィルタはまた、前記電子制御モジュールを永続的に手動で停止させる装置をも有する。
− 前記感光性センサは少なくとも1つの支持表面に統合される。前記電子制御モジュールは、少なくとも1つのガラス上でのシルクスクリーンプリントによってプリント回路上に作成される。
− 前記液晶シャッターはガラスの部分領域に統合される。
【0022】
本発明はまた本発明による光学フィルタを備える、一対の眼鏡とヘルメットにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】本発明の実施例による光学フィルタの電子回路構造の例を表している。
図1b】本発明の実施例による光学フィルタの電子回路構造の例を表している。
図2図2a図2b図2cは、フィルタ上での入射光度に関する光学フィルタの素子の動作図の例を表している。
図3a】本発明による光学フィルタの物理的構造の例を概略的に表している。
図3b】本発明による光学フィルタの物理的構造の例を概略的に表している。
図3c】本発明による光学フィルタの物理的構造の例を概略的に表している。
図4a】本発明による光学フィルタを統合した例を表している。
図4b】本発明による光学フィルタを統合した例を表している。
図5】眼鏡レンズ内に設けられた本発明による光学フィルタに光学補正を統合した例を表している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の他の特徴、目的、及び利点は、非限定的な例として与えられている添付図面と共に以降の詳細な説明を参照することで明らかになる。
【0025】
図1a図1bを参照すると、本発明の光学フィルタの好適実施例による電子回路構造の例が示されている。
【0026】
この光学フィルタ1は以下を含むことが好ましい。
− 受ける光度の関数として変化する電圧UCSを供給するように構成される感光性センサ10(たとえば光電池)。電圧UCSはたとえば、センサ10が受ける光度の関数として連続的に増加してよい
− 電子制御モジュール20
− 少なくとも1つの光学シャッター30(好適には液晶)
光学シャッター30は、従来技術から既知の種類である。これはたとえばニューマティック型液晶シャッターである。適切な場合、光学シャッターは、電極310,311、液晶膜32、光学的に透明なスクリーン330,331、及び、偏光子340,341(図5に図示されている)を有することが好ましい。
【0027】
好適には、液晶膜32は、2つの電極310と311との間に設けられる。このとき2つの電極310と311も同様に2つの光学的に透明なスクリーン330と331との間に設けられる。
【0028】
最終的に、光学シャッター30は有利となるように2つの偏光子340と341を有する。2つの偏光子340と341は、光学的に透明なスクリーン330と331の外側表面と接して、光学的に透明なスクリーン330と331が偏光子の間に設けられるように設けられることが好ましい。あるいはその代わりに、偏光子340と341は、電極310(311)と対応するスクリーン330(331)との間、又は、対応する電極と液晶膜との間であってよい。
【0029】
当業者に知られているように、2つの偏光子340,341は一般的には90°配向し、かつ、ニューマティック分子は、電圧が印加されないときには螺旋配向を有する。それにより光は阻止されることなく通過することが可能となる。これらの電極310,311の端子に電圧を印加することで、その電圧の値にしたがって、ニューマティック分子は特定の配向をとる。その結果シャッター30の一部又は全部は光沢を失う。よって、シャッター30が入射光ビームの光路上に設けられる場合、透過する光の量はシャッター30の不透明度の関数として変化する。実際、不透明度はここでは、透過率の逆数として定義される。透過率とは、シャッターを透過する光の光度に対する入射光度の比である。従って不透明度とは、入射光度に対するシャッターを透過する光の光度の比である。
【0030】
光学シャッター30は、光学シャッターの不透明度が2つの異なる大きさを有するように、2つの独立した状態間の閾値を構成する分極電圧ULCDを有することが好ましい。
【0031】
光学シャッターの好適実施例によると、光学シャッターが端子でこの分極電圧ULCD以下の電圧(0ボルトの電圧を含む)を受けるときには、ニューマティック分子は、特定の不透明度−たとえば第1不透明度OP1以下の不透明度−を与えるように配向する。好適には、シャッター30の端子への入力電圧がULCD未満の場合では、シャッターの不透明度は不透明度OP1に等しく一定である。不透明度OP1はたとえば非常に低い(つまり、眼鏡の分野において伝統的に用いられている透明ガラスの不透明度よりも桁違いに低い)。
【0032】
逆に、シャッター30が端子でこの分極電圧ULCDよりも大きな電圧を受けるときには、シャッターが、不透明度OP1よりも厳密に大きな不透明度OP2を少なくとも1つ有するように、ニューマティック分子は配向する。
【0033】
シャッターの特別な実施例によると、前記シャッターは、「オールオアナッシング」型のシャッターであってよい。「オールオアナッシング」型のシャッターとは、分極電圧ULCD未満又はゼロボルト(すなわち電圧が印加されていない)の入力電圧についての不透明度OP1と、分極電圧ULCDよりも大きな入力電圧についての一定の不透明度OP2を有する。
【0034】
代替実施例によると、液晶シャッター30は、可変の不透明度OP2−たとえばシャッター30の端子での入力電圧の増加に対して増加する−を有してよい。
【0035】
本発明によると、電子制御モジュールは、シャッター30の電極310,311の端子31へ電圧Ueを供給する。
【0036】
電子制御モジュール自体は、唯一の電源を構成する感光性センサ10と電気的に接続する。したがって感光性センサ10は、出力で電圧UCSを供する。この電圧は、電子制御モジュール20の端子での入力電圧である。
【0037】
電子制御モジュール20は好適には、少なくとも1つの比較器21と遮断器22を有する。比較器21は、感光性センサ10によって供給される電圧UCSを直接受け、かつ、遮断器22の開閉を制御する。この遮断器は、光学シャッター30の電極310,311の端子と直列に接続する。
【0038】
このようにして、光学シャッター30の唯一の電源は感光性センサ10である。具体的には、比較器21が、遮断器22が開くのを制御するときには、シャッターは給電されないため、シャッターの不透明度は、OP1以下となる(好適にはOP1に等しい)。
【0039】
光学フィルタが複数の液晶シャッターを有する場合、これらの液晶シャッターは、電極端子で同一の入力電圧を受けるように、電子制御モジュール20の出力で並列に接続される。
【0040】
光学フィルタの動作原理は、液晶シャッター30での入射光度の閾値動作で構成される。光度がある閾値−たとえば目くらまし閾値le−を超える場合、電子制御モジュール20は、分極電圧ULCDよりも厳密に大きな電圧をシャッター30へ供給する。それによりシャッターの不透明度は、不透明度OP1よりも厳密に大きな少なくとも1つの不透明度OP2に等しくなる。
【0041】
本発明の好適実施例について以降で説明する。
【0042】
動作中、比較器21は、感光性センサ10によって供給される電圧UCSと閾値電圧Urefとを比較する。電圧UCSが電圧Urefよりも厳密に大きい場合、比較器21は、遮断器22が閉じるのを制御する。よって(複数の)シャッター30の端子31での電圧Ueは電圧UCSに等しい。
【0043】
電圧UCSが電圧Uref以下である場合、比較器21は、遮断器22が開くのを制御し、かつ、シャッター30にはもはや給電されない。
【0044】
図1aを参照すると、光学フィルタ1の電子回路アセンブリの特別な実施例が示されている。
【0045】
この実施例では、液晶シャッター30に供給される電圧Ueは、遮断器22が閉じられるときの電圧UCSに等しい。ここで、液晶シャッター−たとえばニューマティック型−の場合では、分子配向が変化して、有効にガラスを暗くするようなシャッターに印加される分極電圧ULCDは最小となる。
【0046】
また液晶の分子配向を全体的かつ均一に変化させるため、印加電圧はこの分極電圧よりも十分の数ボルトだけ大きくなければならない。実際、これに当てはまらない場合には、液晶の分子はすべて均一に配向しない。これは、ガラス上で生じてユーザーを悩ませる恐れのあるまだらや光沢の原因となる。
【0047】
従って、遮断器22が閉じられるときにシャッター30へ送られる電圧UCSは、分極電圧ULCDよりも厳密に大きくなければならない。つまり電圧UCSは、分極電圧ULCDに十分の数ボルトを加えた値ULCD+εに等しくなければならない。このため、比較器の参照電圧Urefは、ULCD+εに等しくなるように選ばれる。たとえば電圧ULCDが3Vである場合、電圧Urefは3.3Vに等しくなるように選ばれる。
【0048】
図1bに示されている本発明の他の実施例によると、電子制御モジュールはまた、遮断器22とシャッター又は光学結晶シャッター30との間に設けられる電圧レギュレータ23をも有する。
【0049】
シャッター30の不透明度が印加電圧と共に増加する場合において、印加電圧が分極電圧ULCDよりも大きいとき、この電圧レギュレータ23は、シャッター30の電極310,311の端子での電圧Ueの値を制限することで、シャッターの光沢が失われるのを制限する。実際、本発明による光学フィルタがたとえば、サングラスレンズに統合されて利用される場合、不透明度の閾値を超えないことが好ましい。さもなければ、サングラスのユーザーは、この状態を不快であることに気付くだろうし、あるいは、ユーザーが危険な状況におかれる恐れすらある。
【0050】
図1bに図示されている本発明の代替実施例によると、電圧レギュレータ23は電圧ブースとレギュレータであってよい。従って電圧Urefは、電圧ULCDの値とは独立して選ばれてよい。具体的には、電圧UrefはULCD未満となるように選ばれてよい。この場合、遮断器は、電圧Urefよりも大きな電圧の値のすべてで閉じられる。電圧UrefはULCD+ε未満の電圧を含んでよい。従って電圧レギュレータ23は、この電圧UCSを受け、かつ、出力で電圧Ue−好適にはULCDよりも厳密に大きくさらにはULCD+ε以上である−を供給する。それにより液晶の分子は均一な配向をとりうる。
【0051】
図2を参照すると、本発明による光学フィルタの動作図が示されている。
【0052】
図2aは、所与の時間窓での光度での変化を表している。この光度は、大きさle−これは目がくらむ大きさである−を超えて変化することによって、全体が曇った状態から非常に明るい状態−日向での周辺光度と同程度である−まで変化する。
【0053】
図2bは、光度の変化にわたる感光性センサ10によって供給される電圧Ueを示している。光度の関数として供給される電圧UCSは、製造者によって調節される。目くらまし閾値leの大きさで供給される電圧UCSは、閾値電圧Urefよりも厳密に大きくなるように選ばれてよい。
【0054】
電圧UCSが光度と同時に変化するのは明らかである。
【0055】
最後に、図2cは液晶シャッター30の電極310,311での電圧を表している。光度が目のくらむ大きさleに到達するとき、上述したように電圧UCSはUrefよりも大きな閾値に到達し、かつ、電極310,311の電圧の大きさが遷移することで光沢を生じさせる危険性が回避される。
【0056】
再度図2bでは、現実には、電子制御モジュール20はヒステリシスを有する。そのため、超過した閾値電圧は不足する閾値電圧と異なったものになる。これら2つの電圧は、以降Uref1及びUref2と呼ばれる。このヒステリシスは回路を安定化させる。超過と不足による2つの異なる閾値に対する比較器の機能を保証する電子部品は存在し、かつ、そのような電子部品は当業者には既知である。従ってそのような電子部品について以降ではこれ以上詳述しない。
【0057】
特に感光性センサ10によって供給される電圧UCSが光度と共に増加する好適実施例によると、光度が目くらまし光度leを超えるときの始動閾値は閾値電圧Uref1及びUref2の最大値で、かつ、光度が目くらまし光度le未満となるときの停止閾値は閾値電圧Uref1及びUref2の最小値である。
【0058】
たとえば、Uref1はUref2よりも厳密に大きく、Uref1は始動電圧閾値で、かつ、Uref2は停止電圧閾値である。
【0059】
Uref1とUref2は十分の数ボルトだけ異なっている。具体的にはUref1とUref2は、分極電圧ULCDよりも厳密に大きくなるように選ばれることが好ましい。ここで厳密とは、Uref2がULCDよりも十分の数ボルト大きく、かつ、Uref1がUref2よりも十分の数ボルト大きいことを意味する。
【0060】
最終的に、シャッター30の端子での電圧Ueが分極電圧ULCDよりも大きいときのガラスの不透明度OP2の大きさは、一定であり、かつ、使用される装置によって独自に定められるか、又は、閾値電圧Urefの定義により経験的に定められる。
【0061】
あるいはその代わりに、光学フィルタはまた、ユーザーの要求に基づいてレンズの不透明度を手動で制御する装置をも有してよい。たとえば出力電圧の調節が可能な電圧ブースターレギュレータが、液晶シャッターへ供給される閾値電圧を調節するのに用いられてよい。
【0062】
本発明による光学フィルタはまた、電子制御モジュールを手動停止させ、かつ適切な場合には再始動させる追加の装置をも有してよい。
【0063】
本発明は多数の利点を与える。
【0064】
第1に、電圧閾値を利用することで、液晶中での不十分な分子の配向にかかるまだらの危険性が回避される。具体的な理由は、たとえば液晶シャッターの端子での電圧が再度分極電圧未満にまで低下しても、これらのまだらは一般的に残るからである。
【0065】
また電子制御モジュールと液晶シャッターの唯一の電源が感光性センサであるため、フィルタは、ユーザーが必要とするときに役に立たなくなるおそれのあるバッテリーを有していない。フィルタの動作は、太陽又は他の光源が存在するか否かのみによって条件設定される。
【0066】
このような感光性センサの出力電圧のみに基づく閾値による動作は、レンズを略瞬間的に暗くして適合させることを可能にする。略瞬間的とは、1/100秒のオーダーの時間と解される。具体的には視認する時間よりも短い時間である。これにより、たとえばトンネルのように光度が連続して急激に変化するような場合でさえも、瞬時に適合することを知覚できる。
【0067】
最終的に、このような極端な単純な光学フィルタの電子回路は、小型化可能で、かつ、支持体50の空洞内に非常に独立した状態で挿入されてよい。
【0068】
いかなる支持体50であっても、光学フィルタ1を支持体50へ統合する2つの構成が考えられうる。図3aに示された第1実施例によると、感光性センサ10と電子制御モジュール20は、支持体50(図示されていない)に挿入され、かつ、シャッター50に接続されてよい。シャッター30は、電極310,311を介してレンズ40に統合され、かつ、端子31を介して電子モジュール20と接続する。
【0069】
あるいはその代わりに、最近は、図3b図3cで表されているように、ガラス又は他の材料(たとえば一部のプラスチック)で作られた光学的に透明な支持体表面を利用してすべての光学フィルタ1を統合することが可能である。
【0070】
図3bでは、感光性センサ10と電子制御モジュール20は支持体表面40に統合される。支持体表面40上には、シャッター30が、感光性センサ10も電子制御モジュール20も覆うことなく配置される。
【0071】
図3cでは、感光性センサ10と電子制御モジュール20は、支持体表面40上に設けられるか、又は、支持体表面40に統合され、かつ、液晶シャッター30によって覆われる。適切な場合には、光学シャッターの光学的に透明なスクリーン330と331は、光学フィルタに対して支持体表面として機能するレンズ40を構成しうる。あるいはその代わりに、支持体表面40は液晶シャッター30によって覆われてもよい。
【0072】
これら2つの場合では、レンズに統合される光電池型の感光性センサが用いられることが好ましい。またこの場合では、制御電子機器は、ガラス上でのシルクスクリーンプリントによって生成されるプリント回路内に生成されることが好ましい。
【0073】
またこれらの場合では、液晶シャッター30は、支持体表面40の一部分のみ覆ってよいし、又は、複数の部分を覆ってもよい。
【0074】
図4aを参照すると、支持体50は、上述の支持体表面40を構成する2つのレンズ40Aと40Bを有するガラス製の載置体であってよい。図示されているように、レンズの載置体50内で独立した状態で統合されるのに十分小さな感光性センサ10が用いられてよい。また電子制御モジュールは、小型化して載置体50へ統合するのに十分な程度に単純である。
【0075】
また光学フィルタ1は2つの液晶シャッター30Aと30Bを有する。シャッター30の光学的に透明なスクリーン330A,331A,330B,331Bは、ガラスのレンズ40Aと40Bを構成してよい。あるいはその代わりに、シャッター30A,30Bがガラスの支持表面40に統合されるように、少なくとも1つの追加のレンズ41が、シャッター30A,30Bに接合されてよい。
【0076】
またレンズ40A,40Bの眼鏡に液晶シャッター30が統合されることで、その眼鏡は、その眼鏡の装着者の光学補正に役立つ。
【0077】
図5を参照すると、適切な場合には、追加のガラス41は、装着者の光学補正に役立つ既知の技術に従って作用するスライドガラスであってよく、かつ、入射光の光路に対してシャッターの上流又は任意で下流に設けられてよい。
【0078】
あるいはその代わりに、シャッターは、装着者の光学補正に役立つように加工された2つのスライドガラス間に設けられる。シャッターは、スライドガラスの接触表面に接合するように局面を有する。
【0079】
また再度図5を参照すると、眼鏡のレンズ40は任意で1つ以上のUV防止フィルタ42を有してよい。
【0080】
本発明は、1つのガラス40しか有していない片眼鏡にも同様に適用される。この場合、光学フィルタ1は、レンズに統合される液晶シャッター30を1つだけ有する。
【0081】
結果は、必要に応じて有効利用される日光の保護、及び、恒久的な光学補正を有する独自の製品である。従ってこの独自製品は、上述の光度の急激な遷移段階に関連するいかなる危険性をも排除する。
【0082】
図4bを参照すると、支持体51は、光学フィルタ1のレンズ1を構成するひさしを有するヘルメット−たとえば二輪車用のヘルメット−であってよい。
【0083】
また光学的に透明なスクリーン330,331はガラスに限定されず、好適な曲率を示すように変形できるような柔らかいスクリーン−たとえば柔らかいプラスチックで作られたもの−であってもよい。
【0084】
しかし本発明による光学フィルタの応用はこの実施例に限定されず、建物の窓ガラスに関連してもよい(たとえば、窓、ドア、張り出し窓、又は、一時的若しくは恒久的な遮断が、本発明による光学フィルタによって実現されうる任意の種類のガラス表面)。
【0085】
光学フィルタの用途にかかわらず、自動で始動する特徴は、当該光学フィルタを、従来の日光保護装置よりも実用的かつ危険性の小さなものにしている。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5