特許第6165725号(P6165725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165725
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】液体用の容器
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/00 20060101AFI20170710BHJP
   G21F 5/12 20060101ALI20170710BHJP
   B65D 23/08 20060101ALI20170710BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   A61J1/00 A
   G21F5/00 D
   B65D23/08 A
   A61J1/05 313J
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-519568(P2014-519568)
(86)(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公表番号】特表2014-527423(P2014-527423A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】EP2012063747
(87)【国際公開番号】WO2013007806
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年6月22日
(31)【優先権主張番号】102011079031.4
(32)【優先日】2011年7月12日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515280274
【氏名又は名称】バイエル・アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブセン, ヤンボルゲ
(72)【発明者】
【氏名】ボレッツェン, ピア
(72)【発明者】
【氏名】ハググスター, ビヨーン
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−257582(JP,A)
【文献】 特開2005−053576(JP,A)
【文献】 特表2008−509864(JP,A)
【文献】 特表2010−536674(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/096274(WO,A1)
【文献】 再公表特許第00/063088(JP,A1)
【文献】 実開昭49−147229(JP,U)
【文献】 実開昭63−042549(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3087765(JP,U)
【文献】 米国特許第03826059(US,A)
【文献】 米国特許第05590782(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/00
A61J 1/05
B65D 23/08
G21F 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有毒および/または危険な物質を少なくとも1種含有する液体用の容器であって、
液体を保持するための空洞であって、その複数の側面と底部とに複数の壁が接する空洞と、
前記空洞に前記液体を充填するための開口部と、
前記空洞を閉鎖するための閉鎖体であって、カニューレを前記空洞に挿入するための穿刺領域を有する閉鎖体と、
前記空洞の前記複数の壁を立ち上がり部において取り囲む底部ケーシングと、
穿刺可能な前記閉鎖体の前記穿刺領域以外を取り囲む上部ケーシングと、
前記上部ケーシングから前記底部ケーシングまで延在するフィルムであって、前記上部ケーシングと前記底部ケーシングとを接合し、かつ前記上部ケーシングまたは前記底部ケーシングによって未だ取り囲まれていない前記空洞の前記複数の壁の領域を取り囲む、フィルムと、
を備え、前記空洞の壁および前記閉鎖体が、一次容器を構成する内側シェルを形成しており、かつ前記底部ケーシング、前記上部ケーシング、および前記フィルムが共に、前記一次容器の表面汚染を包囲し、
前記上部ケーシング、前記底部ケーシング、および前記フィルムが、前記液体によっておかされない材料で形成されている、液体用の容器。
【請求項2】
前記空洞に接する前記複数の壁はガラス製であることを特徴とする、請求項1に記載の液体用の容器。
【請求項3】
前記上部ケーシングは前記閉鎖体に、前記上部ケーシングと前記閉鎖体との間にもたらされた摩擦連結によって固定されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の液体用の容器。
【請求項4】
前記底部ケーシングは前記複数の壁の基部に摩擦によって連結されることを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載の液体用の容器。
【請求項5】
前記上部および/または底部ケーシングは弾性ポリマーから成ることを特徴とする、請求項1乃至4の何れかに記載の液体用の容器。
【請求項6】
前記フィルムは前記上部ケーシングと、前記底部ケーシングと、前記複数の壁とに接着によって接合されることを特徴とする、請求項1乃至5の何れかに記載の液体用の容器。
【請求項7】
前記フィルムはそれ自体に部分的に接着によって接合されることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1項に記載の液体用の容器。
【請求項8】
前記空洞を包囲する前記複数の壁は一次ボトルを形成し、前記一次ボトルは、その基部および胴部領域が中空円筒体の形状であり、かつ肩部と首部とを形成するように前記開口部に向かって上方に先細になり、さらにフランジが前記開口部の周囲に設けられることを特徴とする、請求項1乃至7の何れかに記載の液体用の容器。
【請求項9】
前記閉鎖体は、前記一次ボトルの前記フランジに固定されるエプロンを有することを特徴とする、請求項8に記載の液体用の容器。
【請求項10】
前記上部ケーシングは、鏡筒状円筒体のように、先細断面を有する上側領域と幅広断面を有する下側領域とを有し、前記上側領域は前記閉鎖体への連結用に設けられ、前記下側領域は前記空洞を包囲する前記複数の壁に面一で接触することを特徴とする、請求項1乃至9の何れかに記載の液体用の容器。
【請求項11】
少なくとも1種類の放射性核種を収容する、請求項1乃至10の何れかに記載の液体用の容器。
【請求項12】
放射性物質、特に治療および/または診断目的で用いられる放射性物質、を保持および貯蔵するための、請求項1乃至11の何れかに記載の容器の使用。
【請求項13】
前記放射性物質は少なくとも1種類のアルファ線放出放射性核種を含む、請求項12に記載の容器の使用。
【請求項14】
前記容器は薬剤の1回分用量を収容することを特徴とする、請求項12または13に記載の容器の使用。
【請求項15】
容器に液体を充填する方法であって、少なくとも以下のステップ:
一次ボトルに液体を充填するステップと、
充填後の前記一次ボトルを閉鎖するステップと、
前記一次ボトルの立ち上がり部に底部ケーシングを設けるステップと、
閉鎖体に上部ケーシングを設けるステップと、
前記底部ケーシングまたは前記上部ケーシングによって未だ取り囲まれていない前記一次ボトルの部分をフィルムで覆うステップであって、前記フィルムは前記底部ケーシングから前記上部ケーシングまで延在して前記上部ケーシングおよび前記底部ケーシングを互いに連結するステップと、
を含み、前記上部ケーシング、前記底部ケーシング、および前記フィルムが、前記液体によっておかされない材料で形成されている、容器に液体を充填する方法。
【請求項16】
前記液体は薬剤、特に放射線治療剤、の1回分用量であることを特徴とする、請求項15に記載の容器に液体を充填する方法。
【請求項17】
前記フィルムは接着剤層を一方の面に有し、前記フィルムは、前記底部ケーシング、前記上部ケーシング、および前記一次ボトルへの取り付けのために、前記複数の構成要素に巻き付けられることを特徴とする、請求項15または16に記載の容器に液体を充填する方法。
【請求項18】
少なくとも1種類の放射性同位体を収容している一次ボトルの表面汚染から発する放射線による危険を減らす方法であって、
充填後の前記一次ボトルを閉鎖するステップと、
前記充填後の一次ボトルの立ち上がり部に底部ケーシングを設けるステップと、
閉鎖体に上部ケーシングを設けるステップと、
前記底部ケーシングまたは前記上部ケーシングによって未だ取り囲まれていない前記充填後の一次ボトルの部分をフィルムで覆うステップであって、前記フィルムは前記底部ケーシングから前記上部ケーシングまで延在して前記上部ケーシングおよび前記底部ケーシングを互いに連結する、ステップと、
を含み、請求項1から11のいずれか一項に記載の容器の空洞を取り囲む壁が、前記一次ボトルを形成し、かつ
前記上部ケーシング、前記底部ケーシング、および前記フィルムが、前記液体によっておかされない材料で形成されている、危険を減らす方法。
【請求項19】
前記危険は、取り扱い上の危険、汚染の危険、および/または環境上の危険である、請求項18に記載の危険を減らす方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体用の容器、当該容器への充填方法、および放射性物質、特に治療および/または診断用の放射性物質、などの物質の保持および貯蔵のための本発明による容器の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の保持および貯蔵用の容器は、ありふれた物である。化学または医学分野においては、ねじ蓋、圧着式閉鎖体、ストッパ、またはフランジ付きキャップによって閉鎖されるガラス瓶が液体用の貯蔵手段として成功している。
【0003】
ガラス瓶は、安価であり、滅菌し易く、かつ多種類の液体の存在下で不活性であるという利点がある。
【0004】
特許文献1には、小容積の医学用ガラス製容器が例として記載されている。
【0005】
特許文献2、特許文献3、および特許文献4は、フランジ付き兼スナップ留め式の蓋閉鎖体を有する容器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第19739139A1号
【特許文献2】国際公開第1992/00889A1号
【特許文献3】国際公開第1993/11053A1号
【特許文献4】国際公開第1995/04685A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガラス瓶への液体の充填時に、液体の滴が誤って瓶の縁部または瓶の外壁に付着することがありうる。人々および/または環境にとって危険な液体の場合、これは問題である。危険な物質が誤って環境に侵入しないことを保証することは極めて重要である。これは、特に放射性物質に当てはまる。
【0008】
放射性物質は、医学において診断および治療目的で使用される。例えば生体の断面画像を作成するために、放射性化合物が用いられる診断プロセスとして単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT:Single Photon Emission Computed Tomography)および陽電子放射型コンピュータ断層撮影法(PET:Positron Emission Tomography)が挙げられる。アルファ粒子を放出する物質は、例えば腫瘍の治療に用いられる(放射線療法)。
【0009】
医学分野においては、ガラス瓶が病院職員によって取り扱われるので、特に、ガラス瓶への放射性物質の充填時におけるガラス外壁の汚染を防止しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、独立請求項1に記載の新しい容器と、本発明による新しい容器への独立請求項12に記載の充填方法とを提供することによって、この汚染の問題を解決する。本発明は、独立請求項10に記載の、放射性化合物、特に治療および/または診断用の放射性物質、の保持および貯蔵のための本発明による容器の使用にさらに関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一次ボトルを示す側断面図である。
図2】本発明による容器の斜視図である。
図3】本発明による容器の側面図である。
図4】本発明による容器の側断面図である。
図5】本発明による容器の上部ケーシングである。
図6】本発明による容器の底部ケーシングである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の複数の好適な実施形態は、従属請求項に見出される。
【0013】
したがって、第1の態様において、本発明は液体用の容器に関する。本容器は、
液体を保持するための空洞であって、その複数の側面と底部とに複数の壁が接する空洞と、
前記空洞に前記液体を充填するための開口部と、
前記空洞を閉鎖するための閉鎖体であって、カニューレを前記空洞に挿入するための穿刺領域を有する閉鎖体と、
前記空洞の前記複数の壁を立ち上がり部において取り囲む底部ケーシングと、
穿刺可能な前記閉鎖体の前記穿刺領域以外を取り囲む上部ケーシングと、
前記上部ケーシングから前記底部ケーシングまで延在して前記上部ケーシングまたは前記底部ケーシングによって未だ取り囲まれていない前記空洞の前記複数の壁の領域を取り囲むフィルムと、
を少なくとも備える。
【0014】
本発明による容器は、内側シェルおよび外側シェルを有する。内側シェルは、空洞を取り囲んで液体を保持する役割を果たす。したがって、内側シェルは、液体を充填可能であり、かつその液体が貯蔵される一次ボトルを構成する。
【0015】
外側シェルは、内側シェルを取り囲む。外側シェルの設置は、必ず空洞の充填後に行われる。外側シェルは、充填時に誤って内側シェルの外側に達した液体残渣を包囲するようになっているので、これら残渣は取り扱い上または健康上の危険を及ぼすことも、環境に侵入することもない。
【0016】
本発明によると、内側シェルは複数の壁と1つの閉鎖体とで形成される。これらの壁は、液体を保持するための空洞を複数の側面と底部とにおいて形成する。この空洞は最上部において形成されない。すなわち、最上部には液体をこの空洞に充填するための開口部が設けられる。
【0017】
本説明において方向の情報は何れも重力の方向を基準とする。用語「下方」は、重力の方向を意味する。用語「上方」は、重力とは反対の方向を意味する。「横方向」または「側方に」などの用語は、重力の方向に対して垂直な方向を示す。
【0018】
これらの壁は、使用される液体を通さず、かつ使用される液体によって冒されない材料から成る。材料科学の当業者であれば、個々の液体に適した材料を認識するであろう。
【0019】
好適な材料は、多種類の異なる液体に対して不活性の、すなわち冒されない、ガラス類またはプラスチック類である。ただし、これらの壁を、例えば、金属製とすることも可能である。水溶液の場合、ガラス類とプラスチック類、例えばポリオレフィン類(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)またはポリエステル類(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート)などのポリマー類、とかが特に適している。複合材料も可能である。
【0020】
好適な一実施形態においては、水溶性化学物質の貯蔵に従来用いられている種類の珪酸塩ガラスが用いられる。このようなガラス類は、例えばショット社(Schott AG)などの会社が販売している。
【0021】
本発明による容器は薬品または診断剤の1回分用量を保持するようになっていることが好ましいので、空洞の容積は1ml乃至200mlであることが好ましい。空洞の容積は2ml乃至100mlであることが特に好ましく、5ml乃至30mlであることが最も好ましい。
【0022】
液体を保持するための空洞に接する壁は、一次ボトルを形成する。一次ボトルは、好適な一実施形態によると、下側領域(特に外側)が中空円筒体の形状でもよい。この中空円筒体は、一般に開口部に向かって上方に先細になるので、一次ボトルは、多くの液体容器に一般的な肩部および/または首部の形状を有しうる。首部の端部には、一次ボトルの開口部の周囲に延在して閉鎖体の取り付けに用いられるフランジが存在することが好ましい。閉鎖体を取り付けるための他の方法(例えば接着による方法)も同等に用いられることは当該分野の当業者には明らかであろう。この種の好適な一次ボトルが例として図1に示されている。
【0023】
充填後、空洞は閉鎖される。したがって、本発明による容器は、空洞の閉鎖時に充填用開口部(例えば図1の5)に被せられる閉鎖体(例えば図4に40および43として図示)を有する。
【0024】
閉鎖体と一次ボトルとは、密封後の一次ボトルから液体が誤って漏出しないように、具現化される。通常、例えば合成ゴム製の、密封リング(Oリング)などのシールが用いられる。シール用材料の選択は、とりわけ、使用される液体と一次ボトルおよび閉鎖体に用いられる材料とに左右されるであろう。材料科学の当業者であれば、どの材料が適しているかを知っているであろうし、当業者は多くの選択肢を容易に入手可能である。
【0025】
好適な一実施形態において、閉鎖体はエプロンを有し、これにより、スナップ留め式蓋閉鎖体またはフランジ付き閉鎖体のように、閉鎖体を一次ボトルのフランジに固定することができる。
【0026】
閉鎖体は、穿刺可能に構成されることが好ましい。これは、カニューレを空洞に挿入して液体を抜き取るために、カニューレを閉鎖体に押し込んで貫通させることができることを意味する。この目的のために、閉鎖体は、カニューレを押し込んで貫通させることができる領域を少なくとも1つ有する。ここで、この領域を穿刺領域と称する。本願明細書において、用語「カニューレ」は、液体の抜き取りまたは移送に適した何れかの中空穿刺要素を指すために用いられる。これは、金属、プラスチック、または何れか適した剛性材料で形成された中空の針、カニューレ、管、または同様の装置であれば如何なるものも含まれる。
【0027】
例えば、使用される閉鎖体は、医学分野における注射用アンプルにおいて一般に常法であるように、シリコン/ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluorethylene)製隔壁または合成ゴム製隔壁を有するフランジ付きアルミニウムキャップでもよい(PTFE層が液体に面する側になる)。
【0028】
本発明による容器は、底部ケーシングをさらに備える。底部ケーシングは、空洞の基部において空洞の壁を取り囲む。換言すると、一次ボトルは底部ケーシングの内部に着座する。底部ケーシングは、一次ボトルのための一種の脚部(shoe)を形成する。底部ケーシングは、一次ボトルをその基部において保護するばかりでなく、その安定性を保証する。
【0029】
一次ボトルと底部ケーシングとの間の接合は、さまざまな方法で形成できる。例えば、底部ケーシングを一次ボトルに摩擦または噛み合いによって連結することも可能であり、および/または適した接着剤によって接合することも可能である。一次ボトルと底部ケーシングとの螺合を可能にするねじ山を底部ケーシングおよび一次ボトルの各々に設けることも可能である。底部ケーシングは摩擦によって一次ボトルに連結されることが好ましい。
【0030】
本発明による容器は、底部ケーシングに加え、上部ケーシングを有する。上部ケーシングは穿刺可能な閉鎖体を取り囲むが、上部ケーシングに開口部などが設けられるため、穿刺領域は覆われない。好適な一実施形態において、上部ケーシングは、穿刺領域と同じ(またはほぼ同じ)大きさの、上部ケーシングと閉鎖体とが互いに接合された後に穿刺領域に位置合わせされるように位置決めされた、開口部を有する。上部ケーシングは、一次ボトルの上側部分も取り囲みうる。
【0031】
閉鎖体と上部ケーシングとの間の連結は、さまざまな形態を取りうる。例えば、上部ケーシングを閉鎖体に(場合によってはさらに一次ボトルに)摩擦または噛み合いによって連結、さらに/または接着剤によって連結、可能である。上部ケーシングと閉鎖体とにねじ山を設けて、これら構成要素同士の螺合を可能にすることも可能である。上部ケーシングは閉鎖体に摩擦によって連結されることが好ましい。
【0032】
底部および上部ケーシングは、衝撃を緩和できる弾性材料から成ることが好ましい。一次ボトルが、例えば、砕け易くて比較的壊れ易いことが公知のガラス製の場合、底部および上部ケーシングは、一次ボトルの底部および上部領域に衝撃保護をもたらすことが好ましい。
【0033】
底部および上部ケーシングは、プラスチック、例えば合成ゴムまたは熱可塑性プラスチックなど、から成ることが好ましい。複合材料も使用されうる。底部および上部ケーシングは同じ材料または互いに異なる材料で製造されうる。底部および上部ケーシングは同じ材料から成ることが好ましい。好適な材料の例として、ポリオレフィン類(例えば、ポリエチレン類、ポリプロピレン類)またはポリカーボネートなどのポリマー類が挙げられる。
【0034】
特に好適な一実施形態において、一次ボトルはその下側領域に中空円筒体の外部形状を有する。底部ケーシングは、弾性材料から成り、一次ボトルの形状に合わせられる。好適な一実施形態において、底部ケーシングの内径は一次ボトルの下側領域の外径よりいくらか小さい(例えば、一次ボトルの下側領域の外径より0.5%乃至10%小さい内径を有する)。底部ケーシングを一次ボトルに取り付けるために、底部ケーシングは一次ボトルの下側部分の周囲に押し嵌められる。弾性材料は伸張して底部ケーシングと一次ボトルとの間に摩擦による連結をもたらす。
【0035】
一次ボトルの内部形状は、選択可能な一実施形態において、一次ボトルの外部形状と、特に下側領域において、異なってもよい。特に、一次ボトルは、容器からの少量の液体の取り出しを(例えば流体の抜き取りの最後において)助けるために内側を先細にしうる。これは、ほぼ円筒体の外部形状を下側領域に維持しながら内側が先細になるように、各側面および底部(例えばそれぞれ図1の3および2)の壁の厚さを変化させることによって実現可能である。
【0036】
同様に、上部ケーシングと閉鎖体との間にも好適な連結がなされる。すなわち、閉鎖体は円筒状の構成であり、上部ケーシングは弾性材料で構成され、閉鎖体の形状に合わせられる。好適な一実施形態において、上部ケーシングの内径は閉鎖体の外径よりいくらか小さい(例えば、閉鎖体の外径より0.5%乃至10%小さい内径を有する)。上部ケーシングを閉鎖体に固定するために、上部ケーシングは閉鎖体に押し被せられる。これにより、弾性材料は伸長し、上部ケーシングと閉鎖体との間に摩擦による連結をもたらす。材料および接続技術の当業者にとっては、底部ケーシングと、上部ケーシングと、一次ボトルと、閉鎖体とがどのように構成されれば、底部および上部ケーシングが外れないように、一次ボトルが底部ケーシング内に押し込まれ、上部ケーシングが閉鎖体に押し被されるかは明らかである。
【0037】
一次ボトルおよび閉鎖体への底部および上部ケーシングの連結は、特に堅固にする必要はない。これら構成要素はフィルムによっても固定されるからである(下記参照)。この連結は、底部および上部ケーシングの外れを防止するに十分なだけ強固であればよい。重要なのは、これら構成要素同士の接合が容易に行えることである。充填工程は、原則として自動化可能であるべきである。高速かつ摩擦のない操作のためには、一次ボトルが底部ケーシングに容易に嵌入し、かつ上部ケーシングが閉鎖体の周りに容易に嵌まることが重要である。
【0038】
底部ケーシングと上部ケーシングとは、フィルムによる連結のための領域も提供する。
【0039】
好適な一実施形態において、上部ケーシングは鏡筒式円筒体の形態であり、上側の先細部分と下側の拡径部分とを有する。この種の上部ケーシングが例として図5に示されている。先細部分は、閉鎖体の周りに嵌まり、摩擦による連結をもたらす。拡径部分は一次ボトルの首部と肩部とを取り囲み、一次ボトルの円筒状胴部領域に面一に接触する。この好適な実施形態は、フィルムまたは箔の取り付けに極めて適した瓶を作製する。
【0040】
本発明による容器のフィルムは、底部ケーシングと上部ケーシングとの間に延在してこれらケーシング同士を接合する。このフィルムは、底部または上部ケーシングによって未だ取り囲まれていない一次ボトルの領域を取り囲む(ただし、一般には、閉鎖体の穿刺領域に位置合わせされる上部ケーシングの開口部を覆わない)。底部ケーシング、上部ケーシング、および一次ボトルへのフィルムの連結は、接着剤の層によって行われることが好ましい。ただし、底部ケーシング、上部ケーシング、および一次ボトルにフィルムを熱収縮させて取り付けることも可能である。フィルムは、一次ボトルと、閉鎖体と、底部ケーシングと、上部ケーシングとから成る組立体に機械的安定性をもたらす。フィルムは、一次ボトルへの充填中に一次ボトルの外壁に付着した如何なる汚染も安全に包囲する。底部ケーシングと、上部ケーシングと、フィルムとから成る組立体は、一次ボトルの第2の皮膜を構成し、これにより、一方では一次ボトルとその中身とを外部の影響から保護し、さらには一次ボトルが破損して液体が一次ボトルから漏出するおそれがある場合でも環境の保護をもたらす。これは、如何なる表面汚染も包囲することに加え、表面汚染によって引き起こされる危険をも減らす。したがって、フィルムは、一次ボトルと同様に、当該液体に冒されない材料から成ることが好ましい。好適な材料の例として、ポリオレフィン類(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)またはポリエステル類などのポリマー類がある。複合材料も可能である。
【0041】
1つの実施形態において、フィルムは、一次ボトル(好ましくはさらに上部および底部ケーシング)の外周全体に巻き付くために十分なサイズを有する。したがって、フィルムがフィルム自体に重なる重なり部分が存在するように、フィルムは一次ボトルの外周より長いサイズにしてもよい。この実施形態において、フィルムはフィルム自体に少なくとも部分的に、例えば接着剤によって、固定されうる。一次ボトルの外周のサイズを少なくとも有するフィルムを設けることによって、一次ボトルの外側壁が完全に包封されうるので、如何なる表面汚染も完全に包封されうる。重なり部分がある場合は、重なり部分を一次ボトルの外周の、例えば、1%乃至50%にしうる。
【0042】
好適な一実施形態において、本発明による容器は、密封フィルムをさらに有する。これは、上部ケーシングの開口部を穿刺領域の上方で密封する。密封フィルムは、接着によって上部ケーシングに接合されることが好ましい。密封フィルムは、穿刺領域へのアクセスをもたらすために、完全に、または少なくとも部分的に、除去可能であるように設計されうる。あるいは、密封フィルムはカニューレによって穿刺されてもよい。
【0043】
本発明による容器は、さまざまな液体の貯蔵および輸送に適する。本発明による容器は、人々または環境にとって危険な液体に用いられることが好ましい。
【0044】
本発明は、放射性物質、特に放射線治療および/または診断剤、最も好ましくはアルファ粒子を放出する物質、の貯蔵用のための本発明による容器の使用にさらに関する。本発明による容器は、人間または動物の治療用の、または人間または動物の診断用の、1回分用量を保持することが好ましい。
【0045】
本発明の容器(および他のすべての態様)は、アルファ線放出放射性核種を含有する液体用に特に適している。この理由は、このようなアルファ線放出放射性核種は危険および/または有毒であり、厳重な管理下に置かれるが、本願明細書で言及されている上部および底部ケーシングおよびフィルムの形成に適したプラスチック類などの材料はアルファ線を容易に阻止するからである。したがって、如何なる表面汚染も本願明細書に記載の各方法によって包封することによって、アルファ線放出放射性核種の危険が効果的に回避または制限される。
【0046】
本発明による容器に関する上記の好適な各実施形態は、本発明による使用にも同様に適用される。
【0047】
この新規容器の使用前、先ず液体が一次ボトルに充填される。充填前に一次ボトルを滅菌することも可能である。医学および滅菌分野の当業者は、複数の適した方法を熟知されているであろう。ここでは、所謂オートクレーブ処理を例として挙げる。充填は対応する分注ロボットを用いて自動的に実施されることが好ましく、充填後、一次ボトルは、好ましくは同じく自動的に、穿刺可能な閉鎖体で流体密に密封される。
【0048】
密封工程後、例えばオートクレーブ処理によって、滅菌を実施することも可能である。
【0049】
一次ボトルの充填または密封中に、または滅菌が行われる場合はこの滅菌工程中に、一次ボトルの外壁が汚染されることも考えられる。例えば、充填中に液体の滴が一次ボトルの開口部の縁部に付着し、この微量の液体が密封中に一次ボトル内に密封されずに一次ボトルと閉鎖体との間に残る可能性がある。この場合、このような微量の液体が環境に侵入する危険がある。特に放射性物質(アルファ線放出放射性核種など)の場合、環境汚染の防止が絶対に不可欠である。
【0050】
したがって、充填および密封後、場合によっては滅菌後、本発明による容器は覆われる。すなわち、一次ボトルに底部ケーシングが設けられ、閉鎖体に上部ケーシングが設けられ、一次ボトルの残りの部分にフィルムが設けられる。フィルムは上部ケーシングの一部と底部ケーシングの一部とによっても覆われる。密封フィルムを穿刺領域に被せることも任意である。
【0051】
本発明は、本容器に液体を充填する方法をさらに含む。本発明による方法は、
一次ボトルに液体(例えば、放射性核種などの有毒および/または危険な物質を少なくとも1種含有する液体)を充填するステップと、
充填後の前記一次ボトルを閉鎖するステップと、
前記一次ボトルの基部に底部ケーシングを設けるステップと、
閉鎖体に上部ケーシングを設けるステップと、
前記底部ケーシングまたは前記上部ケーシングによって未だ包囲されていない前記一次ボトルの部分をフィルムで覆うステップであって、前記フィルムは前記底部ケーシングから前記上部ケーシングまで延在して前記上部ケーシングおよび前記下部ケーシングを互いに接合する(ただし、上部ケーシングの開口部は未包封にしておいてもよく、または別の密封フィルムによって包封されてもよい)ステップと、
を少なくとも含む。
【0052】
本発明による容器に関する上記の好適な各実施形態は、本発明による方法にも同様に適用される。
【0053】
本発明による方法の好適な一実施形態において、接着剤層を一方の面に有するフィルムは、このフィルムを一次ボトルに取り付けるために、一次ボトルに巻き付けられる。この工程は自動化されることが好ましい。このフィルムは透明な、またはほぼ透明な、フィルムであることが好ましい。これにより、容器の中身の可視性が維持される。
【0054】
別の一実施形態において、本発明は、少なくとも1種類の放射性同位体を収容している一次ボトルの表面汚染から発する放射線による危険を減らすための方法を提供する。本方法は、
充填後の一次ボトルを閉鎖するステップと、
前記一次ボトルの立ち上がり部に底部ケーシングを設けるステップと、
閉鎖体に上部ケーシングを設けるステップと、
前記底部ケーシングまたは前記上部ケーシングによって未だ取り囲まれていない前記一次ボトルの部分をフィルムで覆うステップであって、このフィルムは前記底部ケーシングから前記上部ケーシングまで延在して前記上部ケーシングおよび前記底部ケーシングを互いに連結する、ステップと、
を含む。
【0055】
前記危険として、放射性核種、特にアルファ放射性核種、に伴うあらゆる危険、例えば、取り扱い上の危険、汚染の危険、および/または環境上の危険など、がありうる。本願明細書に記載の全ての実施形態および定義は、本発明のこの態様に、文脈が許せば、特に本願明細書において好適と記載されている態様に適用される。
【0056】
本発明は、別の態様において、上部ケーシング、底部ケーシング、および底部ケーシングから上部ケーシングまで延在して少なくとも1種類の放射性同位体を収容した充填後の一次ボトルの表面汚染から発する放射線による危険を減らすためのフィルムの使用を提供する。
【0057】
このような危険として、放射性核種、特にアルファ放射性核種、に伴うあらゆる危険、例えば、取り扱い上の危険、汚染の危険、および/または環境上の危険などがある。本願明細書に記載の全ての実施形態および定義は、本発明のこの態様に、コンテキストが許せば、特に本願明細書において好適と記載されている態様に適用される。
【0058】
次に、本発明をさらに説明するために、好適な一実施例をより詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
[実施例]
以下の構成要素から容器を作製した。
【0059】
一次ボトル:欧州薬局方に準拠して製造された透明ガラス製の10ml試料容器(例えばバイアル)または透明ガラス製の10ml注射薬アンプル、ガラスタイプI(ISO719またはISO720)。
【0060】
閉鎖体:ゴム製ストッパを有するフランジ付きアルミニウムキャップ。
【0061】
上部キャップ:射出成形されたポリプロピレン製部品(ボレアレス社(「Borealis AG)製のBormed(商標)HF840MO)。
【0062】
底部キャップ:射出成形されたポリプロピレン製部品(ボレアレス社製のBormed(商標)HF840MO)。
【0063】
フィルム:透明ポリオレフィンフィルムとアクリル接着剤とから成る糊付き複合材料であるストラルフォルス・ラベル材料((Stralfors Label Material)LR2240(ストラルフォルス社(Stralfors AG))。
【0064】
図1乃至図5は、作製された容器とその構成要素とを示す。
【0065】
図1は、一次ボトルの好適な一実施例を断面図で示す。下壁2と複数の側壁3とが空洞4を包囲する。この空洞には液体を開口部5から充填可能である。一次ボトルの下側領域と胴部領域とは、中空円筒体の形状である。この中空円筒体は上方に先細になって肩部6と首部7とが形成される。開口部5の周囲は、閉鎖体を取り付け可能なフランジ8である。
【0066】
図2は、本発明による容器を斜視図で示す。この図面は、開口部を有する上部ケーシング10を示している。開口部の下に、閉鎖体の穿刺領域45が見える。底部ケーシング20および上部ケーシングと底部ケーシングとの間に延在するフィルム30も見える。
【0067】
図3は、本発明による容器を側面図で示す。この図面は、上部ケーシング10と、底部ケーシング20と、上部および底部ケーシングを互いに接着によって連結するフィルム30とを示している。
【0068】
図4は、本発明による容器を側断面図で示す。一次ボトル1は、隔壁43とフランジ付きアルミニウムキャップ40とによって閉鎖される。上部ケーシング10が閉鎖体に被せられ、フランジ付きアルミニウムキャップに摩擦によって連結される。上部ケーシングは下方に拡径する。上部ケーシングは一次ボトルの外壁に面一に接触する。底部ケーシング20は、一次ボトル1の基部に摩擦によって連結される。一次ボトルには、上部および底部ケーシング間に延在するフィルム30が巻き付けられる。
【0069】
図5は、図2乃至図4に示されている新規容器の上部ケーシングを(a)側面図、(b)側断面図、(c)上面図、および(d)斜視図で示す。上部ケーシングは拡径領域12と縮径領域14とを有し、肩部13がこれらの領域同士を接合している。
【0070】
図6は、図2乃至図4に示されている新規容器の底部ケーシングを(a)側面図、(b)側断面図、(c)上面図、および(d)斜視図で示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6