(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165757
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】複数の像を示すことに適した表面の領域を含んでなる物体
(51)【国際特許分類】
G09F 19/14 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
G09F19/14
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-541675(P2014-541675)
(86)(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公表番号】特表2015-505973(P2015-505973A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(86)【国際出願番号】EP2012072809
(87)【国際公開番号】WO2013072449
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年9月28日
(31)【優先権主張番号】11382355.3
(32)【優先日】2011年11月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513246436
【氏名又は名称】ファブリカ、ナシオナル、デ、モネダ、イ、ティンブレ−レアル、カサ、デ、ラ、モネダ
【氏名又は名称原語表記】FABRICA NACIONAL DE MONEDA Y TIMBRE−REAL CASA DE LA MONEDA
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】フリアン、ザモラノ、デ、ブラス
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−015528(JP,A)
【文献】
特開2002−326500(JP,A)
【文献】
特開2011−128269(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/100360(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 19/00−19/22
G09F 7/00− 7/22
G09F 13/00−13/46
B44F 1/00− 1/14
B42D 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各像を異なる方向から使用者が観察できるように複数の像を示すことに適した表面の領域(R)を含んでなる物体(1)であって、この平坦な領域(R)が、
・前記領域(R)の表面上に規則正しく分布する低レリーフの複数のキャビティ(1.1);
・前記キャビティ(1.1)の各々が、複数の側部ファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)を示し、1つの像につき少なくとも1つのファセットがあり、各ファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)が、第1光レベルまたは第1と異なる光レベルに関連していること;
・像を決定し、かつ第1光レベルに関連するファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)が、キャビティ(1.1)が位置する表面に対して同じ向きおよび傾きを有するが、この向きが他の異なる像のファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)の向きと異なること、
を含んでなり、
各像を決定し、かつ第1と異なる光レベルに関連するファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)が、同じキャビティ(1.1)の隣接するファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)と接続するための少なくとも1つの転移表面を有することを特徴とする、物体。
【請求項2】
各像を決定し、かつ第1と異なる光レベルに関連したファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)が、キャビティ(1.1)が位置する表面に対して異なる傾きを有することを特徴とする、請求項1に記載の物体(1)。
【請求項3】
ファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)が第1光レベルに関連する場合、それらは基部が領域(R)の表面に位置し、かつ頂点が前記表面の下に位置する角錐の表面に相当するように、低レリーフのキャビティ(1.1)がファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)によって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の物体(1)。
【請求項4】
・キャビティ(1.1)が、キャビティ(1.1)の基部の端部または側部に平行である行で分布し、
・キャビティ(1.1)の基部の端部または側部に対して平行である複数の行について、少なくとも、第1光レベルと異なる第2光レベルに関連した傾きを有する全く同一の行のキャビティの1つのセットのファセットが同じ傾きを有し;および
・異なる行に属する同じ傾きを有するキャビティのセットの傾きが、行から行まで、全ての行に沿って累進的に変化する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の物体(1)。
【請求項5】
1行につき同じ傾きを共有し、かつ第2光レベルに関連するキャビティのセットによって形成される集団がパターンまたは第2の像を決定することを特徴とする、請求項4に記載の物体(1)。
【請求項6】
角錐の基部が多角形であり、角錐の基部が共に領域(R)の全表面を覆って適合するようにキャビティ(1.1)が分布することを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載の物体(1)。
【請求項7】
角錐の基部が正方形であることを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載の物体(1)。
【請求項8】
第1光レベルと異なる光レベルに関連する最大の傾きを有するファセットが、角錐の基部と共通の側部を有し、かつ角錐の頂点を有する少なくとも1つの転移表面を含んでなることを特徴とする、請求項6に記載の物体(1)。
【請求項9】
角錐の頂点に隣接した転移表面が、転移表面である最大の傾きを有するファセットと異なる程度の反射を有することを特徴とする、請求項8に記載の物体(1)。
【請求項10】
角錐の頂点に隣接した転移表面が、平坦であり、かつ角錐の基部に対して平行であることを特徴とする、請求項8に記載の物体(1)。
【請求項11】
最大の傾きを有するファセットと頂点に隣接した基部に対して平行である表面とを伸長することによって、第1光レベルに関連するものより大きな程度の傾きを有する異なる像に関連する隣接する2つのファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)の間に、コーナの転移が確立されることを特徴とする、請求項10に記載の物体(1)。
【請求項12】
複数の像を示すことに適した前記表面を圧力によって生成することを意図した、請求項1〜11のいずれか一項に記載の物体の領域(R)の表面に補完的な表面を含んでなるパンチ(2)。
【請求項13】
使用者が異なる方向から各像を観察することができるように複数の像を示すことに適した物体の領域内に表面を生成する方法であって、
・請求項1〜12のいずれか一項に記載の複数のキャビティ(1.1)によって形成された表面の配置、またはそれらの補完を確立すること、
・確立した配置により表面上にレーザ彫刻プロセスを行うこと
を含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項14】
レーザ彫刻が行われる物体が、粉末冶金鋼であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
レーザ彫刻が行われる物体がパンチであり、表面の配置が補完的な配置であり;第2の物体内に複数の像を示すことに適した表面を圧力によって生成するために前記パンチを用いることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
表される像を、2つの光レベルを含む像に変化させることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の像を示すことに適した表面の領域を含んでなる物体に関する。これらの像の内の1つを観察する際にその他の像が観察できなくなり、観察像の視認を妨げないように、これらの像の各々は、異なる方向から観察可能である。
【0002】
その配置は、複数の像を示すことに適した表面の領域を生成することを可能にするものであって、打抜きまたは鋳造技術による大量生産に対応しており、無認可の製造者による再現を困難にするものである。
【0003】
複数の像を示すことに適した領域を有する物体を得ることを可能にする方法も本発明の目的である。
【0004】
本発明の一実施形態は、像が位置する表面に対する観察者の傾きの変化によって、観察者が彼/彼女の傾きを変えるにつれて移動する輝度帯が生じる複数の像を示すことに適した領域を特に有し、この効果は、その他の像において生じるものからも独立している。
【背景技術】
【0005】
インクを用いることによって、またはホログラフィー像を生成することを可能にするレーザ彫刻技術によって像を印刷するための各種の解決がある。この型の技術の生産費用および必要とされる材料によって、硬貨鋳造におけるそれらの使用、または例えば打抜きによって得られた物体内へのそれらの組み込みが実行できなくなる。
【0006】
剛体面上に二重の像彫刻物を得る方法を記載している公開番号ES2042423号のスペイン特許が知られている。この特許は、像を生成するための異なる傾きを有する溝を有する表面を扱うものである。溝の使用によって、容易にこの型の彫刻物を生成することが可能になるが、この簡単な生成によって、このように彫刻された部分からの第三者による再現が容易になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、複数の像を、これらの像を組み込んでいる本物の物体から開始するコピーを作製することを非常に困難にするように再現することができる表面を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、各像を向きが異なる方向から使用者が観察できるように複数の像を示すことに適した表面の領域を含んでなる物体である。本発明は、ある方向から使用者がこの領域を観察する場合、彼/彼女が像またはその像の一部を知覚するが、残りの像は知覚しないように、この領域の配置を確立するものである。残りの像を観察するためには、使用者は、同じ領域に対する彼/彼女の観察の向きを変える必要がある。複数の像を示す領域は、好ましくは平坦であるが、本発明は、一定の曲線を有する表面上の複数の像を視認することも可能にするものである。これらの場合において、像は、同じ向きからその全体を見ることができず、全体の像を知覚するためにはわずかに向きを変えることが必要である。
【0009】
以下のものを含んでなる複数の像を示す領域。
・前記領域の表面上に規則正しく分布する低レリーフの複数のキャビティ。
キャビティの特別な配置は、観察の向きに従って異なる像を視認することを可能にする。本発明により生成される物体を提供する場合、低レリーフを用いることによって生成が難しくなるが、例えばレーザ彫刻されたパンチからから開始する打抜き技術によってそれを低費用で生成することができる。
・前記キャビティの各々は複数の側部ファセットを示し、1つの像につき少なくとも1つのファセットがあり、各ファセットは、第1光レベルまたは第1と異なる光レベルに関連している。
本発明は、第1光レベルと、1つ以上の異なる光レベルとを確立するものである。最も単純な特定の実施形態は、2つの光レベルを使用するが、前記実施形態において、観察者が、適切に選択された光レベル範囲の使用に基づいて彼/彼女の像の内の1つの観察ポイントの傾きを累進的に変える場合、シフト効果が生じることを可能にする特定の一実施形態が記載されている。
各キャビティは、複数のファセットによって形成され、ファセットは、キャビティの平坦な領域であると理解され、故にほとんど同じ反射を有する。各キャビティは、1つの像につき1つのファセットを有する。しかるに、各像は、ファセットに対して条件を課して構成されるが、前記ファセットは、かかる条件が残りの像の視認に影響を及ぼすことなく前記像に関連しており、故に、前記ファセットは、その他のかかる像に関連している。
・像を決定し、かつ第1光レベルに関連するファセットは、キャビティが位置する表面に対して同じ向きおよび傾きを有するが、この向きは、他の異なる像のファセットの向きと異なる。
これが、像の各々が生成される方法である。少なくとも2つの光レベルが使用される。キャビティの像を決定するものの各ファセットは、像の画素として役割を果たし、少なくとも2つの光レベルを示すことができる。これらの光レベルは、他の異なる像を観察することを可能にする向きのため、同じキャビティによって示されるものから独立している。
向きと傾きは区別される。向きとは、ファセットの表面に対して垂直の方向である。本明細書の全体にわたって、傾きは、ファセットとキャビティが位置する表面との間に形成される角度を指す。概念的に、主要表面とは、キャビティがない場合に相当するものである。傾きを変化させることは向きを変化させることを意味するものの、ファセットの傾きは、そのファセットの向きではない。
【0010】
異なる技術的課題をも解決する異なる特定の場合については、発明を実施するための形態に記載される。
【0011】
本発明の第2の態様は、使用者が異なる方向から各像を観察することができるように複数の像を示すことに適した物体の領域内に表面を生成する方法である。
【0012】
前記方法は、少なくとも2つの工程を含んでなる。
・前記実施形態のいずれかによる複数のキャビティによって形成された表面の配置、またはそれらの補完を確立すること、
・確立した配置により表面上にレーザ彫刻プロセスを行うこと。
【0013】
前記方法は、本発明の第1の態様により、直接観察可能な、または補完的な配置を有する表面を生成することを意図するものである。この第2の場合において、得られた物体は、ひいては複数の表面を生成することができる。これは、パンチを製造する場合である。
【0014】
前記表面の配置は、例えばコンピュータによって表すことができるモデルによって、第1の本発明の態様により確立することができ、前記モデルの定義により表面を生成することが可能な機械に転写することができる。
【0015】
確立された配置による表面のレーザ彫刻によって、例えば後続の打抜きおよび/または鋳造作業により複数の転写が可能な表面が生じる。
【0016】
粉末冶金鋼の使用は、とりわけ、コンピュータによって生成された原版の定義の正確な再現である本発明の第1の態様による複数の像を有する物体を打抜きによって生成する物体を作製することに適していることが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の前述の、そして他の特徴および効果は、添付の図面を参照して、非限定的な例証となる例としてのみ提供される以下の好ましい実施形態の詳細な記載からより良好に理解されるであろう。
【
図1】複数の像を示すことに適した表面を有する領域を含んでなる物体が硬貨である一実施形態を示す。
【
図2a】三角形、正方形および六角形に基づいた角錐によるキャビティの配置の3つの異なる実施形態を示す。
【
図2b】三角形、正方形および六角形に基づいた角錐によるキャビティの配置の3つの異なる実施形態を示す。
【
図2c】三角形、正方形および六角形に基づいた角錐によるキャビティの配置の3つの異なる実施形態を示す。
【
図3】2つのキャビティの平面図、ならびにその平面図の中心線に位置する主要表面に対して垂直な断面を示す。ファセットの傾きによる小さな変化を記載することを可能にする矢印を断面上に示す。
【
図4】像を表すキャビティの4つの特定の場合の斜視図を示す。
【
図5】複数の像が位置する領域のエリアが、観察者の向きが少し変化することによる前記像の内の1つについての輝度の累進的な変化の効果を示す実施形態を模式的に示す。
【
図6】重ね合せた4つの像が定義された領域の模式的な描写を示す。
【
図7】一実施形態によるキャビティを有する領域の斜視図における像の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の態様は、複数の像を示すことに適した表面の領域(R)を含んでなる物体である。第1の実施形態において、この物体は、複数の像を示すことに適した領域(R)がその面の内の少なくとも1つの中にある硬貨(1)である。
【0019】
この領域(R)は、前記領域(R)内に規則正しく分布する複数の低レリーフキャビティ(1.1)を含んでなる。
図2a、2bおよび2cは、キャビティが、基部が硬貨(1)の面の主要表面に一致するような角錐である異なる実施形態を示し、その三角形面は、頂点が主要表面の下に位置するように内側に設定される。別の一実施形態において、角錐は、先端が切られており、故に、頂点を有さない。
【0020】
図2aは、三角形に基づいた角錐の規則的な分布を示し、
図2bは、正方形に基づいた角錐の規則的な分布を示し、
図2cは、六角形に基づいた角錐の規則的な分布を示す。全表面を像の内の1つの一部として反射させるために、規則正しい分布は、利用可能な全表面エリアを覆うようなものであるが、各々のキャビティの間に一定の分離距離が存在することができる。これらの図面は、いくつかのキャビティを示すだけでもあったが、領域(R)の表面が特定のパターンの繰り返しによって覆われることが理解される。このパターンは、角錐基部の多角形の配置によって異なる。正方形に基づいた角錐を使用することによって、例えば、デカルト構造により行および列の分布が得られるが、硬貨(1)の面と一致する主要面上の投影を考慮する場合、六角形の基部の使用することによって、3つの主要方向が得られる(それによって6つの像が得られる可能性がある)。
【0021】
キャビティ(1.1)が多角形に基づいた角錐である本実施形態において、角錐の表面の各々は、異なる像に関連している。角錐のこれらの表面は、ファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)である。故に、ファセットは、平坦なセクター、この特定の場合においては角錐の面であり、それらの各々は像に関連する。
【0022】
図3は、キャビティが正方形に基づいた角錐の形態の配置に相当する平面図における2つのキャビティ(1.1)を示す。キャビティ(1.1)の外側開口部の正方形の基部と角錐の側壁とは、ファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)に相当する。その角錐は正方形に基づいた角錐であり、4つの面を有するので、この型のキャビティ(1.1)で構成される領域は、4つの像を示すことができる。
【0023】
本実施形態においては、2つの光レベル(第1光レベルおよび第2光レベル)が用いられる。この同じ
図3において、2つのキャビティの平面図の上部で、角錐の基部に含まれ、かつキャビティの2つの頂点を通過する主要表面に対して垂直な面に従って、断面が示される。
【0024】
左側に示されるキャビティ(1.1)を考慮すること、前記キャビティのファセットの各々は、異なる垂直の方向を有する。この場合、4つの異なる向きがある。左側のキャビティの4つのファセットによって示される向きは第1光レベルに相当するが、それが正角錐に相当するものである場合、それはファセットの傾きに関連したレベルである。
【0025】
キャビティ(1.1)の第1側部ファセット(1.1.1)への入射ビームから反射された光を受ける観察者の眼が、断面に模式的に示されている。観察者に対する領域(R)のこの向きにより、この観察者の眼は、残りの側部ファセット(1.1.2、1.1.3、1.1.4)のいずれから反射される光も受けない。
【0026】
右側に示されたキャビティ(1.1)は、傾き増大した第1側部ファセット(1.1.1)を示す。傾きは、主要表面と側部ファセット(1.1.1)との間に位置する端部に対する回転によって増大した。この場合、この端部は、角錐の基部と第1側部ファセット(1.1.1)との間の交差から生じる端部とも一致する。
【0027】
本実施形態において、第1側部ファセット(1.1.1)の傾きが増大することによって、第1側部ファセット(1.1.1)とその隣接する側部ファセット(1.1.2、1.1.4)との間の接続表面として役割を果たすさらなる平坦表面を有する3つのセクター(B1、B2、B3)、特に基部または主要表面に平行する底部に三角形表面(B1)を有する1つのセクター、および斜面の三角形側部表面を有する2つのセクターの外観が得られる。傾きが増大し、故に第2光レベルに関連する第1側部ファセット(1.1.1)と側部ファセットとを接続するこの方法は1つだけではない。隣接する側部ファセットを接続する他の方法は、他の実施形態に記載される。
【0028】
この同じ配置上で、
図3で右側に示されるこのキャビティ(1.1)に相当する断面において、左側のキャビティに模式的に示される観察者と同じ位置にある観察者について、および同じ方向からも来る入射光ビームについて、反射光は観察者に到達せず、むしろ、本実施形態において、それは基部(B1)に当たることが観察される。
【0029】
一実施形態においては、第1光レベルと第2光レベルとの間の差異をより大きな程度に区別するようにより小さい程度に入射光を反射する斑紋状の表面に従って基部(B1)を作製した。
【0030】
しかし、観察者がいる方向で入射ビームが終わることは可能であるが、反射のこの最後の方向は、同じキャビティ(1.1)のいくつかの表面上のより多くの反射の結果である。この場合、各反射が光レベルを変えるので、使用者は、この変化、故に像も知覚する。第1光レベルと第2光レベルとの間の差異がより大きいほど、再現された像のコントラストがより大きくなる。
【0031】
実施形態を継続し、詳細に本発明を記載するために正方形に基づいた角錐の特定の場合を用いて、各側部ファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)は異なる像を再現することができるが、この特定の場合4において、4つの像を視認することを可能にする表面が得られる領域(R)を配置するために各キャビティおよび各ファセットにおける光レベルを割り当てる方法を決定することが必要である。
【0032】
本実施形態において、4つの異なる像:文字「M」を示す第1の像、数を示す第2の像、円を示す第3の像、および記号を示す第4の像、が選択される。
【0033】
これらの像は、例えば、白黒で表すことができる。白黒のデジタル像のように、2つの切り離された領域をもたらす白で照明される画素と黒の他のものとが区別されるが、この場合、各キャビティ(1.1)(実際は前記キャビティのファセット)は、画素の機能を果たし、第1光レベルまたは第2光レベルも割り当てられる。例えば、第1光レベルは白色に相当し、第2光レベルは黒に相当する。
【0034】
各キャビティ(1.1)は4つの側部ファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)を有するので、第1の像は、さらなる表面(B1、B2、B3)を組み込む、
図3の左側に示されるか、または
図3の右側に示される第1側部ファセット(1.1.1)によって採用される傾きを各キャビティにおいて確立する。
【0035】
いずれかの光レベルに関連した側部ファセットの傾きを置き換えることによって逆にすることが可能である。
【0036】
図4は、連続した4つの異なるキャビティの斜視図を示す。左側に示されるキャビティは、傾きが同じの4つのファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)を有する逆にした角錐である。この場合は、4つの像が前記キャビティにおいて第1光レベルを示すことを必要とする状況に相当する。
【0037】
左側から始まる第2キャビティは、(図面のシートの向きに対して)上側に位置するファセット(1.1.4)に関連した像がその傾きの増大によって第2光レベルを必要とするキャビティである。頂点の近くには、この側部ファセット(1.1.4)と、残りの側部ファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3)と、特に底部の基部(B1)との間に転移した3つのさらなる三角形表面がある。傾きが増大した側部ファセット(1.1.4)のこの配置は、その他の3つの像に関連した残りの側部ファセットが示し続ける光レベルに影響を及ぼさない。
【0038】
左側から始まる第3キャビティは、2つの像が、(図面のシートの向きに対して)上側の側部ファセット(1.1.4)および右側の側部ファセット(1.1.3)において傾きの程度が増大して第2光レベルを示し、残りの第3および第4の像が、この同じキャビティ(1.1)において第1光レベルを必要とし、故に、(また、図面のシートの向きに対して)左側(1.1.1)および下側(1.1.2)に位置するファセットの傾きの増大を必要としないキャビティである。この特定の場合において、上側のファセット(1.1.4)および右側のファセット(1.1.3)に共通する底部(B1)で表面を確立することによって転移表面の数を減らし、傾きが改変しなかった表面を有する1つの転移表面だけを加えた。
【0039】
傾きが増加して共通の底部から離れる界面表面を除去する隣接する側部ファセットを同定する技術的効果は、同じ光レベルを表すためのキャビティ(1.1)における端部の除去である。レーザ彫刻に基づいた生成プロセスがコンピュータプロセスによって表面の配置を転写することを必要とし、かつ管理される情報の量が端部および頂点の数に比例するので、像の端部の減少は非常に重要である。像の解像度がキャビティ数(1.1)に比例し、かつそれは高くなる可能性があるものの、端部の数は、いくつかの像を伴い、かつレーザ装置管理システムの飽和をもたらす可能性もある非常に大量の情報を伴う。
【0040】
増大した傾きを側部ファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)に割り当てることによって第1光レベルと異なる光レベルを得ることができることが既に述べられた。記載される実施形態において、この増大した傾きは、すべてのキャビティ(1.1)において同じである。
【0041】
一実施形態において、第1光レベルに関連したファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)と異なるこの傾きは、特定の方法で選択される。
【0042】
図5は、行および列で分布する、低レリーフの正方形に基づいたキャビティ(1.1)が配置された矩形状領域(R)を示す。パターン(P)を形成するキャビティのサブセットは、このセットのキャビティ(1.1)から同定された。このパターン(P)は、簡潔さのために矩形状でもあり、例えば、領域(R)によって示される4つの像と異なり、特にこの図の上側の部分に配置された側部ファセットに関連し、かつ第1の像と関連する像と異なる像を示す。
【0043】
本実施形態によれば、パターン(P)によって、
図5において黒で強調された上側の側部ファセット(1.1.1)が第1の像に従えば第1光レベルと異なる光レベルを示す必要があるキャビティのサブセットが確立され、次いで、あらかじめ確立された関数に従って上側の側部ファセット(1.1.1)の傾きの程度を決定する。
【0044】
図面の右側は、座標が、パターン(P)の矩形エリア内に位置するキャビティ(1.1)の行における分布に対して垂直な方向に沿った位置、および関数の値の横座標である関数を示す。この場合、横座標の値は、傾きの程度、故に光に関連した「L」と同定された。
【0045】
特定の行の位置に相当する位置でとられたこの関数によって、その行の側部ファセット(1.1.1)によって採用された傾きが、前記側部ファセットに関連した像によって光レベルが第1光レベルと異なることが確立される場合に確立される。
【0046】
図5は、破線によって、X座標の計数値が前記座標に相当する関数の値をとるためにとられた部位を示す。離散化された関数の値は、関数の連続曲線上の黒丸によって示される。
【0047】
この場合、領域(R)のキャビティが確認する必要がある条件は、以下の通りである。
・キャビティ(1.1)は、キャビティ(1.1)の基部の端部または側部に平行である行で分布する。
この場合、行は、水平、故に、キャビティ(1.1)の基部の上側端部または側部に平行であると考えられる。仮に、例えば、キャビティが
図2cで示すような六角形に基づいたキャビティであった場合、行の分布は、水平である可能性があるか、または、六角錐の基部の端部もしくは側部によって課される向きと一致する2本の斜線に従う可能性もある。
・キャビティ(1.1)の基部の端部または側部に対して平行である複数の行について、少なくとも、第1光レベルと異なる第2光レベルに関連した傾きを有する全く同一の行のキャビティの1つのセットのファセットは同じ傾きを有する。
第1光レベルと異なる第2光レベルに関連した傾きを有する全く同一の行のキャビティのセットは、パターン(P)によって同定されたセットである。全く同一の行においてキャビティのサブセットを選択する可能性によって、使用者の向きが累進的に変化することによってシフトし得る輝度効果を観察することを可能になり、この輝度効果は、ひいては使用者によって視認される像とは異なる形態を有することができる。キャビティのこのサブセットの選択によって、この異なる像の形態が決定される。
・異なる行に属する同じ傾きを有するキャビティのセットの傾きは、行から行まで、全ての行に沿って累進的に変化する。
同じ傾きを有するキャビティの傾きの行から行への累進的な変化を表す簡潔な−そして唯一のものではない−方法は、
図5の右側で表される関数の使用である。
関数の挙動は、使用者が彼/彼女の向きを変える場合に輝度シフト効果を変化させる方法を変える。
【0048】
図5に示される例において、パターン(P)は矩形状であり、関数は連続関数である。使用者は、彼/彼女が反射ビームを直接知覚する向きに近いそれらの行における明るい帯を視認する。これらの行から更に間隔をおいてある行は、異なる角度を有し、故により暗色である。使用者が物体の傾きをわずかに変える場合、反射ビームが直接知覚される(使用者が輝度を観察する)方向は、先の行の上または下に累進的に位置する行に相当する。物体が移動する間に結果として生じる効果は、明るい帯が物体の向きの変化によりシフトする効果である。
【0049】
本実施形態において最高4つの像があり得るが、像の各々は、独立して輝度変化効果ももたらすそのパターンおよび傾きの変化の機能をそれと関連づけることができた。
【0050】
画素に分解された効果を防止し、表された像の定義を向上させるため、キャビティ(1.1)の特性的サイズは、最もわずかな可能性である必要がある。原型を用いて試験を行い、基部の側部の大きさが0.1〜0.3mmの間、好ましくは0.15〜0.20mmの間、より好ましくは0.16mmであり、角錐の頂点の深さが0.04〜0.08mmの間、好ましくは0.06mmである正方形に基づいた角錐を使用する場合に結果が非常に良いことが分かった。
【0051】
これらの大きさについて、粉砕プロセスを使用することは、あいまいな境界を有する丸い端部および面が得られ、表された像のシャープネスおよびコントラストが低下するので、正確な結果が得られない。
【0052】
かかる制限的な条件を有する複数の像を示すことに適した領域(R)を組み込む物体を得ることに適した生成モードは、冷間加工工具で使用されるものの鋼塊においてレーザ機器を用いる。使用するレーザは、およそナノ秒のパルス時間および10〜15μmのビーム径の特性を有する。
【0053】
パルスレーザビームによる彫刻を最終部分に直接行うことができるが、いくつかの部分を彫刻することが必要な場合、好ましくは、高レリーフの角錐を有する逆になる中間部または金型に対する、引き続いてレーザによって得られた原版と同じ配置によって定義される最終部分に対するプレスタンピングによってそれは転写される。
【0054】
実施したタンピング試験は良好であり、原版の光学的効果は最終部分において維持された。
【0055】
硬貨およびメダル鋳造プロセスについて生成プロセスを試験した。
【0056】
例えば、
図6は、2つのアーチ型側部セクターおよび2つの直線セクターによって上および下で区別される領域(R)を模式的に示す。上および下における側部という用語の使用は、図面の向きにより解釈する必要がある。本実施形態において、この領域(R)は、硬貨の面のエリアの一部である。この領域(R)内に4つの像が示され、各々は異なる向きから視認することが可能であり、それらは
図6に示される投影において重ね合せられる。領域(R)を観察する使用者は、彼/彼女が右側に位置する場合は像を、彼/彼女が左側に位置する場合は別の像を、彼/彼女が上側に位置する場合は別の像を、彼/彼女が下側に位置する場合は別の像を観察し、使用者は常に表面から一定の距離で位置する必要がある。
【0057】
一実施形態によれば、像のいずれも第1光レベルと異なる光レベルを割り当てない場合、領域(R)は、正方形に基づいた角錐形のキャビティで覆われた。
図6は、全ての側部ファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)が第1光レベルを割り当てられるそれらのキャビティ(1.1)がその中において正方形で表されるので、模式的な図であることが述べられる。実際のところ、低レリーフの逆の角錐の投影は2本の対角線をも示すが、この模式的な描写は、どのファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)が第1光レベルと異なる光レベルで示されるのかを指示することを意図する。これらのファセット(1.1.1、1.1.2、1.1.3、1.1.4)は、三角形で同定されるものである。その三角形がその最も長い側部を正方形の基部の内部において上方に有する場合、そのファセットは、それが第1光レベルを有する場合に採用するものと異なる傾きを有すると解釈する必要がある。
【0058】
この模式的な描写によれば、各像は、1つの型の三角形:いずれかの側部でより大きい基部を上、下に有するもの、を割り当てるだけである。正方形は、三角形が表される場合にファセットに関連した各部位が第2光レベルを有する0、1つ、2つ、3つまたは4つの三角形を有する。
【0059】
図7は、4つの像を有する図柄を適用した後に得られたキャビティを有する領域(R)の像の拡大詳細図を示す。この場合、第2光レベルを示す必要があるそれらのファセット内の増大した傾斜によって、キャビティ(1.1)の基部に対して平行である基部内に三角形が生じる。