(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165763
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】IRエミッタの温度変調および電力消費を改善するための構造設計およびプロセス
(51)【国際特許分類】
G01N 21/01 20060101AFI20170710BHJP
H01K 1/02 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
G01N21/01 D
H01K1/02
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-544011(P2014-544011)
(86)(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公表番号】特表2015-500465(P2015-500465A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】IB2012056755
(87)【国際公開番号】WO2013080122
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年11月24日
(31)【優先権主張番号】61/565,582
(32)【優先日】2011年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,ジ−シン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス,レイモンド
【審査官】
横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−057456(JP,A)
【文献】
特表平05−508473(JP,A)
【文献】
特開2010−236934(JP,A)
【文献】
再公表特許第97/047159(JP,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02043406(EP,A1)
【文献】
特開2005−183272(JP,A)
【文献】
米国特許第05369277(US,A)
【文献】
国際公開第91/018279(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第00530309(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
H01K 1/02
G01J 3/00− 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線エミッタであって、
第1の表面および該第1の表面と対向する第2の表面を有し、実質的に平坦な基板と、
前記基板の前記第1の表面の一部に配置された加熱素子であって、導入される電流に応じて、赤外電磁放射線を放射するように構成された加熱素子と、
前記基板の前記第1の表面に配置された分散層であって、厚さが40μm未満であり、前記第1の表面の少なくとも70%を被覆し、110W/m℃以上の熱伝導率を有する材料で構成された分散層と、
を有し、
前記分散層の少なくとも一部は、露出されている、赤外線エミッタ。
【請求項2】
前記分散層は、前記基板と前記加熱素子の間に配置され、前記加熱素子の側から見たとき、少なくとも一部が露出されている、請求項1に記載の赤外線エミッタ。
【請求項3】
前記基板は、5W/m℃未満の熱伝導率を有することを特徴とする請求項1に記載の赤外線エミッタ。
【請求項4】
さらに、前記基板に担持されたリードの組を有し、
該リードの組は、前記加熱素子を電源に接続するように構成され、前記加熱素子への電流の導入が容易化され、
前記リードの組は、前記分散層の前記基板の前記第1の表面とは反対の側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の赤外線エミッタ。
【請求項5】
さらに、前記基板に担持されたリードの組を有し、
該リードの組は、前記加熱素子を電源に接続するように構成され、前記加熱素子への電流の導入が容易化され、
前記リードの組は、前記分散層を形成することを特徴とする請求項1に記載の赤外線エミッタ。
【請求項6】
さらに、前記基板の前記第2の表面に設置された背面層を有し、
該背面層は、145W/m℃以上の熱伝導率を有する材料で形成されることを特徴とする請求項1に記載の赤外線エミッタ。
【請求項7】
赤外電磁放射線を放射する方法であって、
加熱素子を電源に接続するステップであって、前記加熱素子は、第1の表面および該第1の表面と対向する第2の表面を有する、実質的に平坦な基板の上に配置され、前記加熱素子は、前記基板の前記第1の表面に配置され、導入される電流に応じて、赤外電磁放射線を放射するように構成され、前記加熱素子は、前記基板に配置されたリードの組により、前記電源と接続され、前記リードの組は、前記加熱素子を前記電源に接続して、前記加熱素子への電流の導入を容易化するように構成される、ステップと、
前記電源から、前記リードを介して、前記加熱素子に電流を誘導するステップと、
前記加熱素子から、前記電流に応じて、電磁放射線を放射するステップと、
前記基板の前記第1の表面の少なくとも70%の上に配置された分散層を介して、前記基板から熱を逸散させるステップであって、前記分散層は、110W/m℃以上の熱伝導率を有する材料で構成されるステップと、
を有し、
前記分散層の少なくとも一部は、露出されている、方法。
【請求項8】
前記分散層は、前記基板と前記加熱素子の間に配置され、前記加熱素子の側から見たとき、少なくとも一部が露出されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基板は、5W/m℃未満の熱伝導率を有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記リードの組は、前記分散層の前記基板の前記第1の表面とは反対の側に配置されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記リードの組は、前記分散層を形成することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記基板の前記第2の表面に設置された背面層を介して、前記基板から熱を逸散させるステップを有し、
前記背面層は、145W/m℃以上の熱伝導率を有する材料で形成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
赤外線エミッタであって、
当該エミッタの部材を担持する手段であって、第1の表面および該第1の表面と対向する第2の表面を有し、実質的に平坦な、担持する手段と、
前記担持する手段の前記第1の表面の一部に配置された、赤外電磁放射線を放射する手段であって、導入される電流に応じて赤外電磁放射線を放射するように構成された、放射する手段と、
前記担持する手段の前記第1の表面の少なくとも70%の上に配置された、熱を逸散させる手段であって、110W/m℃以上の熱伝導率を有する材料で構成された、熱を逸散させる手段と、
を有し、
前記熱を逸散させる手段の少なくとも一部は、露出されている、赤外線エミッタ。
【請求項14】
前記熱を逸散させる手段は、前記担持する手段と前記放射する手段の間に配置され、前記放射する手段の側から見たとき、少なくとも一部が露出されている、請求項13に記載の赤外線エミッタ。
【請求項15】
前記担持する手段は、5W/m℃未満の熱伝導率を有することを特徴とする請求項13に記載の赤外線エミッタ。
【請求項16】
さらに、電源から、前記放射する手段に電流を誘導する手段を有し、
該電流を誘導する手段は、前記熱を逸散させる手段の上に配置されることを特徴とする請求項13に記載の赤外線エミッタ。
【請求項17】
さらに、電源から、前記放射する手段に電流を誘導する手段を有し、
該電流を誘導する手段は、前記逸散させる手段を構成することを特徴とする請求項13に記載の赤外線エミッタ。
【請求項18】
さらに、前記担持する手段からさらに熱を逸散させる手段を有し、
該さらに熱を逸散させる手段は、前記基板の前記第2の表面に配置され、145W/m℃以上の熱伝導率を有する材料で構成されることを特徴とする請求項13に記載の赤外線エミッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、IRガス検出システムに利用可能な赤外線エミッタに関し、優れた効率および/または寿命を有する赤外線エミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
低い熱伝導率を有する基板上に形成された赤外線エミッタが知られている。そのようなエミッタから、基板に配置された放射層により、赤外電磁放射線が放射される。放射層には、基板上に配置された電気的リードにより、電流が提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、基板は、少なくとも約0.005インチの厚さを有する。通常、エミッタの熱質量を抑制する試みの代わりに、従来の赤外線エミッタは、予め把握された熱質量のバランスレベルが得られるように形成される傾向にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の開示の1または2以上の態様は、赤外線エミッタに関する。ある実施例では、エミッタは、基板と、加熱素子と、分散層とを有する。基板は、第1の表面と該第1の表面と対向する第2の表面とを有し、実質的に平坦である。加熱素子は、前記基板の前記第1の表面の一部に配置され、加熱素子に導入される電流に応じて、赤外電磁放射線を放射するように構成される。分散層は、前記基板の第1の表面に配置され、約40μm未満の厚さを有し、前記第1の表面の少なくとも約70%を被覆する。分散層は、少なくとも110W/m℃の熱伝導率を有する材料で構成される。
【0005】
本願の開示のさらに別の態様は、赤外電磁放射線を放射する方法に関する。ある実施例では、この方法は、加熱素子を電源に接続するステップであって、前記加熱素子は、第1の表面および該第1の表面と対向する第2の表面を有する、実質的に平坦な基板の上に配置され、前記加熱素子は、前記基板の第1の表面に配置され、導入される電流に応じて、赤外電磁放射線を放射するように構成され、前記加熱素子は、前記基板上のリードの組を介して前記電源に接続され、前記リードの組は、前記加熱素子を電源に接続して、前記加熱素子への電流の導入を容易化するように構成されるステップと、前記リードを介して、前記電源から、前記加熱素子に電流を誘導するステップと、電流に応じて、前記加熱素子から電磁放射線を放射するステップと、前記基板の第1の表面の少なくとも70%を覆う分散層を介して、前記基板から熱を逸散させるステップであって、前記分散層は、少なくとも約110W/m℃の熱伝導率を有する材料で形成されるステップと、有する。
【0006】
本願の開示のさらに別の態様は、赤外線エミッタに関する。ある実施例では、このエミッタは、当該エミッタの部材を担持する手段であって、第1の表面および該第1の表面と対向する第2の表面を有し、実質的に平坦な、担持する手段と、前記担持する手段の前記第1の表面の一部に配置された、赤外電磁放射線を放射する手段であって、導入される電流に応じて赤外電磁放射線を放射するように構成された、放射する手段と、前記担持する手段の前記第1の表面の少なくとも70%の上に配置された、熱を逸散させる手段であって、少なくとも約110W/m℃の熱伝導率を有する材料で構成された、熱を逸散させる手段と、
を有する。
【0007】
本願のこれらのおよび他の目的、特徴、および特性、ならびに作動方法、構造の関連する素子の機能、部品の組み合わせ、および製造の経済性は、添付図面を参照して、以下の記載および特許請求の範囲を考慮することにより、明らかになろう。図面は、この明細書の一部を構成し、同様の参照符号は、それぞれの図において、対応する部品を表す。ただし、図面は、一例を示すためでのものあって、開示を限定することを意図するものではないことは明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】エアウェイアダプターおよび変換器の分解図である。
【
図2】エアウェイアダプターおよび変換器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願において使用される、「一つの」および「その」という単数用の用語は、他に明確な記載がない限り、複数のものを含む。本願において使用される、2もしくは3以上の部品または部材が「結合される」と言う記載は、リンクがある限り、直接または間接的に、すなわち1もしくは2以上の中間部品または部材を介して、部品が相互に接合され、あるいは作動することを意味する。本願において使用される、「直接結合(される)」と言う用語は、2つの素子が相互に直接接触することを意味する。本願において使用される「固定的に結合(される)」または「固定(される)」とは、2つの部材が、相互に対して一定の配向を維持した状態で、一体として移動できるように結合されることを意味する。
【0010】
本願において使用される、「単一の」という用語は、部材が単一部材またはユニットで形成されることを意味する。すなわち、別個に形成されてから、ユニットとして相互に結合されるピースを含む部材は、「単一の」部材またはボディではない。本願において使用される、2もしくは3以上の部品または部材が相互に「係合する」という表現は、部品が、相互に対して、直接または1もしくは2以上の中間部品もしくは部材を介して、力を行使することを意味する。本願において使用される、「数」と言う用語は、1または1以上の整数(すなわち複数)を意味する。
【0011】
本願において使用される方向に関する語句、例えば、これに限定されるものではないが、上部、底部、左、右、上方、下方、前方、後方、およびそれらの関連語は、図に示した素子の配向に関し、明確な記載がない限り、請求項を限定するものではない。
【0012】
本願に示した赤外線エミッタの原理は、(a)患者−機械ベンチレータ回路におけるエアウェイアダプタを通って流れる二酸化炭素の濃度に比例する信号、および(b)参照信号を出力する変換器(transducer)に使用することができる。これらの信号は、例えば、米国特許第4,859,858号、第4,859,859号、および/または第5,369,277号の1または2以上に示した方法で割り当てられ、これらは、本願の参照として取り入れられている。これにより、エアウェイアダプタを流れる二酸化炭素の濃度を動的に表す、第3の信号が提供される。エアウェイアダプタおよび相補的な変換器の一例は、
図1および
図2に示されており、それぞれ、参照符号22、24で示されている。
【0013】
図1には、主として、変換器24の高分子ハウジング26を示す。この変換器は、さらに、(a)赤外放射線エミッタユニット28、(b)検出器ユニット30(
図2に示されている)、および(c)検出器ユニット電源32を有する。
【0014】
示されたエアウェイアダプタ22は、患者の気管に挿入された気管内チューブ、および/または他のインターフェース器具と、医療用ベンチレータまたは他の呼吸性ガスの加圧流の発生器の配管との間を接続するように構成され、変換器24は、この例では、医療患者の呼気二酸化炭素レベル、および/または他のガスのレベルの測定に使用される。
図1および2を参照すると、エアウェイアダプタ22は、一ピースのユニットであり、通常、Valoxポリエステルおよび/または他のポリエステルから成形される。エアウェイアダプタ22は、通常、平行六面体中心区画34と、2つの円筒状エンド区画36、38と、を有し、円筒状エンド区画36、38は、アダプタを貫通して端部から端部に延伸するサンプリング通路40を有する。エンド区画36、38は、中心区画34と軸方向に整列されている。
【0015】
エアウェイアダプタ22の中心区画34は、変換器24の台座を提供する。全体U字型のケーシング素子42により、変換器24は、
図1の矢印44に示す横断方向において、アダプタの端部に正確に配置される。
【0016】
また、矢印44は、エアウェイアダプタ22を変換器24と組み合わせる際のエアウェイアダプタ22の配置方向を示す。開口46、48は、エアウェイアダプタ22の中心区画34に形成される。変換器24とエアウェイアダプタを組み合わせることにより、これらの開口は、
図2において参照符号50で示す光路に沿って整列される。光路は、変換器24内の赤外線エミッタユニット28から、エアウェイアダプタ22およびガス流を横断し、変換器24の赤外線検出器ユニット30まで延伸する。
【0017】
以下の目的、
(a)エアウェイアダプタ22を通って流れるガスが、開口46、48から抜けることを抑制し、光路50を横断する赤外線を減衰させることを防ぎ、
(b)エアウェイアダプタの内部からの異物を維持するため、
開口は、窓52および54によってシールされる。窓52および54は、サファイヤまたは他の透過性材料のような、赤外線透過材料で形成されても良い。
【0018】
ソースユニット28と検出器ユニット30とが収容された変換器24のケーシング26は、第1および第2のエンド区画58、60を有し、これらの間には、矩形状に構成されたギャップ62が配置される。変換器がエアウェイアダプタ22と組み合わされると、変換器ケーシング26の2つの区画58および60は、エネルギー透過窓52、54が導入された、エアウェイアダプタ中心区画34の2つの内側壁64、66を取り囲む。
【0019】
光学的に透明な窓68および70は、変換器ハウジング26の内端壁76、78に提供された開口72および74内に、光路50に沿って導入される。これらの窓により、変換器ハウジング26の左側エンド区画58のユニット28で生じた赤外線のビームは、エアウェイアダプタ22を通り、該エアウェイアダプタから変換器ハウジングの右側区画60の検出器ユニット30まで進行することができる。同時に、窓68および70は、異物が変換器ケーシングの内部に進入することを抑制する。
【0020】
赤外線エミッタ80は、赤外線エミッタユニット28によって保持され、これに印加される電流に応じて、赤外電磁放射線を放射するように構成される。
図3および
図4には、変換器24から分離、独立した状態の赤外線エミッタ80を示す。
図3および
図4に示すように、赤外線エミッタ80は、約0.250インチの長さおよび/または約0.040インチの幅を有する基板90を有する。ある実施例では、基板は、0.003インチ未満の厚さを有し、これにより、エミッタ80の全体の熱質量を効率的に低減することができる。ある実施例では、基板は、0.003から0.005インチの間の厚さを有する。基板90は、低熱伝導率の材料で形成される。例えば、材料の熱伝導率は、約5W/m℃未満であり、これによりエミッタ80の全体の熱質量が効率的に抑制される。これに限定されるものではないが、基板90は、ステアタイト、シリカ、macor(登録商標)、マイカ、および/または他の材料の1または2以上で構成されても良い。
【0021】
基板90の上部表面92には、分散層93が配置される。分散層93は、高い熱伝導率および低い電気伝導度を有する材料で形成される。その熱伝導率は、少なくとも約100W/m℃であり、少なくとも約120W/m℃であり、少なくとも約145 W/m℃であり、および/または他の熱伝導率である。その電気伝導度は、0.01/Ωm未満であり、0.005/Ωm未満であり、および/または他の電気伝導度である。分散層93は、使用中、基板90から熱を逸散させるように構成される。ある実施例では、分散層93は、上部表面92の少なくとも約70%を被覆し、上部表面92の少なくとも約80%を被覆し、上部表面92の少なくとも約90%を被覆し、および/または他の割合で上部表面92を被覆する。分散層93は、最大約50μmの厚さであっても良く、最大約40μmの厚さであり、最大約30μmの厚さであり、最大約20μmの厚さであり、および/または他の厚さであっても良い。
【0022】
基板90の上部表面92には、2つの電気的リード94よび96が配置される。
図4および
図5に示した赤外線エミッタ80の例では、リード94と95の間のギャップ100は、約0.020インチである。ある実施例では、リード94および96は、分散層93の上に配置され、分散層93は、基板90からリード94と96を分離する。
【0023】
リード94および96は、比較的大きな電気伝導度および比較的大きな熱伝導率を有する材料から構成される。例えば、リード94および96は、少なくとも約4.5×10
6/Ωmの電気伝導度を有する。リード94および96は、少なくとも約145W/m℃の熱伝導率を有しても良い。これに限定されるものではないが、リード94および96は、金、銅、シリコン、および/または他の材料の1または2以上から形成されても良い。リード94および96は、エミッタ80に結合されても良い。これは、印刷プロセスを介して、実施されても良い。リードの厚さは、最大20μmであっても良い。厚さは、10μm未満で制御することができ、リードは、同時に熱逸散層として機能させるため、基板の第1の表面上の加熱素子から少なくとも1mmの間隔で、配置されても良い。
【0024】
加熱素子102は、リード94および96に重ねられようにして、基板90の上部表面92に配置される。加熱素子102は、放射性の電気抵抗材料の厚いフィルムまたは層である。非限定的な例では、加熱素子102は、相当の割合で白金を含むインクを加熱することにより形成され、作動温度は、約250℃と約700℃の間である。
【0025】
ある実施例では、加熱素子102は、約0.070インチの長さを有する。加熱素子102の2つの端部104および106は、約0.020インチだけ、エミッタ80のリード94、96と重なり合う。従って、全重なり量は、加熱素子102の全面積の約50%から約67%の間であっても良い。
【0026】
作動中、リード94および96は、加熱素子102を電源に接続し、リード94および96を介して、電源からの電流が加熱素子102に印加される。前述の範囲の重なりにより、加熱素子102とリード94および96の間の界面において、電流密度が極めて大きくなることが抑制される。高電流密度は、加熱素子80の溶け落ちや疲労クラックなど、加熱素子80の不具合につながる。
【0027】
図5および
図6には、分散層93がリード94および96自身によって形成された、エミッタ80の実施例を示す。そのような実施例では、分散層93は、2つの物理的に分離された区画として形成され、それぞれは、加熱素子102の各側に接続される。これらの実施例と、印刷リードを有する従来のエミッタの間の潜在的な差異は、そのような実施例では、前述のように、リード94および96が組み合わされ、上部表面92の一部を被覆することである。これに限定されるものではないが、分散層93は、シリコン(例えば、リード94および96が分散層93とは別個に形成される場合)、金もしくは銅のような金属(例えば、リード94および96が分散層93を形成する場合)、および/または他の材料の1または2以上で形成される。
【0028】
基板90の背面108には、背面層110が設置される。背面層110は、背面108の少なくとも実質的に全ての部分(例えば、全てまたはほとんど全て)を被覆する。背面層110は、作動中、基板90から熱を効率的に逸散させる。背面層110は、約0.00004インチ未満の厚さを有する。背面層110は、少なくとも約145W/m℃の熱伝導率を有しても良い。背面層110は、金、銅、シリコン、および/または他の材料の1または2以上で形成されても良い。
【0029】
特に、基板90の抑制された熱伝導率、基板90の低減された厚さ、リード94および96の改善された電気伝導度、分散層93を介して高められた熱伝導率、および/または背面層108の追加のうちの1または2以上により、赤外線エミッタ80の効率は、抑制された熱質量を示し、および/または従来のエミッタに比べて熱がより逸散される。従来の加熱される素子(IRエミッタ)の場合、ガス分析のため、ある温度または温度変調を得ることが必要となる。この温度または温度変調は、IRエミッタの動的加熱および伝導の結果である。赤外線エミッタ80の設計および構成により、パルスエネルギー供給、熱質量、断熱および/または熱伝導の制御およびバランスを介して、改善された電力効率および温度変調が得られる。ジューティサイクルでの変調の間のトラフ(trough)温度は、赤外線エミッタ80の設計により、最大60%まで抑制され得る。改善された電力効率および供給により、電力消費が抑制され、赤外線エミッタ80の運転寿命が延び、ならびに/または光学ロスおよび耐久性などの他の特性に対して改善が得られる。改善された温度および温度変調は、信号対ノイズ比を高め、電力消費の必要性が抑制され、および/または他の改善が得られる。
【0030】
図7には、赤外電磁放射線を放射する方法120を示す。以下に示す方法120の動作は、一例である。ある実施例では、方法120は、示されていない1もしくは2以上の追加の動作とともに、ならびに/または示された動作の1もしくは2以上を実施せずに、行われても良い。
【0031】
また、
図7および以下に示した方法120の動作の順番は、これに限られるものではない。
【0032】
動作122では、加熱素子が電源に接続される。ある実施例では、加熱素子は、加熱素子102(
図3および
図4に示されている)と同様である。ある実施例では、動作122は、リード94および96(
図3および
図4に示されている)と同様のリードの組によって実施される。
【0033】
動作124では、加熱素子に電流が流され、加熱素子での加熱が開始される。ある実施例では、動作124は、リード94および96(
図3および
図4に示されている)と同様のリードの組で実施される。
【0034】
動作126では、電流に応じて赤外電磁放射線が放射される。ある実施例では、動作126は、加熱素子102(
図3および
図4に示されている)と同様の加熱素子によって実施される。
【0035】
動作128では、加熱素子から熱が逸散される。加熱素子からの熱の逸散は、振幅変調を高め、電力消費を抑制し、寿命を延ばし、および/または他の特徴を提供する。ある実施例では、動作128は、分散層93および/または背面層110(
図3乃至
図6に示されている)と同様の分散層および/または背面層により、実施される。
【0036】
特許請求の範囲において、括弧内の参照符号は、請求項を限定するものと解してはならない。「有する」または「含む」という用語は、請求項に示された要素またはステップ以外の要素またはステップの存在を排斥するものではない。いくつかの手段が挙げられている
装置の請求項において、これらのいくつかの手段は、同一のハードウェアアイテムで実施されても良い。要素の前の「一つの」と言う用語は、そのような素子の複数の存在を排斥するものではない。いくつかの手段が挙げられているいかなる装置の請求項においても、これらのいくつかの手段を同一のハードウェアで実施することができる。単にある素子が相互に異なる従属請求項に記載されていることから、これらの素子を組み合わせて使用することができないと解してはならない。
【0037】
前述の記載は、現在考えられる最も実際的で好適な実施例に基づいて、詳しい説明を提供するためのものであり、そのような詳細な説明は、単に一例のためであって、明記された実施例に限定するためのものではないことを理解する必要がある。むしろ、これは、添付の請求項の思想および範囲に含まれる修正および等価な配置を網羅することを意図する。例えば、本開示は、可能な範囲で、実施例の1または2以上の特徴が、他の実施例における1または2以上の特徴と組み合わせ得ることを意図することが理解される。