(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165770
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】リキャプチャ用噴霧器シェル
(51)【国際特許分類】
B05B 1/28 20060101AFI20170710BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
B05B1/28
A01M7/00 N
A01M7/00 Q
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-547448(P2014-547448)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公表番号】特表2015-501725(P2015-501725A)
(43)【公表日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】US2012069594
(87)【国際公開番号】WO2013090639
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年12月11日
(31)【優先権主張番号】61/630,475
(32)【優先日】2011年12月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514151063
【氏名又は名称】ゲンズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】GENZ CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,リチャード
【審査官】
富永 久子
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第00580247(EP,A1)
【文献】
米国特許第05062572(US,A)
【文献】
米国特許第04893755(US,A)
【文献】
米国特許第04439948(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00−3/18;7/00−9/08
B05B15/00−15/12
B05B17/00−17/08
A01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧液リキャプチャシェルにおいて:
部分的に取り囲まれた噴霧容積を有するシェル外面と;
前記噴霧液リキャプチャシェルの内面における少なくとも1つの噴霧ノズルと;
周囲圧力よりも高い圧力を有する前記部分的に取り囲まれた噴霧容積の前縁部と;
周囲圧力よりも低い圧力を有する前記部分的に取り囲まれた噴霧容積の後縁部と;
前記噴霧液リキャプチャシェルの内面に前方を向いたエアジェットと、を具えることを特徴とする噴霧液リキャプチャシェル。
【請求項2】
請求項1に記載の噴霧液リキャプチャシェルがさらに、周囲圧力と略同等の圧力を有する前記部分的に取り囲まれた噴霧容積の下側縁部を具えていることを特徴とする噴霧液リキャプチャシェル。
【請求項3】
請求項1に記載の噴霧液リキャプチャシェルがさらに、前記噴霧液リキャプチャシェルの前進方向と略平行の液滴キャッチを具えていることを特徴とする噴霧液リキャプチャシェル。
【請求項4】
請求項1に記載の噴霧液リキャプチャシェルにおいて:
前記少なくとも1つの噴霧ノズルが、前記噴霧液リキャプチャシェルの横断面として規定される平面に位置しており、
前記少なくとも1つの噴霧ノズルが、前記横断面の中心から外れた地点に向けられていることを特徴とする噴霧液リキャプチャシェル。
【請求項5】
請求項1に記載の噴霧液リキャプチャシェルがさらに、互いに自由回転する少なくとも2つの車輪を具えていることを特徴とする噴霧液リキャプチャシェル。
【請求項6】
請求項1に記載の噴霧液リキャプチャシェルがさらに、横軸に沿って固定された複数の噴霧液リキャプチャシェルを具えていることを特徴とする噴霧液リキャプチャシェル。
【請求項7】
請求項1に記載の噴霧液リキャプチャシェルにおいて、前記シェル外面が下端部と中央スパンを有するアーチ形状を具え、
前記下端部が前記中央スパンよりも横方向に狭いことを特徴とする噴霧液リキャプチャシェル。
【請求項8】
請求項1に記載の噴霧液リキャプチャシェルがさらに、前記シェル外面の下側後端に湾曲した切り欠き部を具えることを特徴とする噴霧液リキャプチャシェル。
【請求項9】
対象物体を噴霧する方法において:
部分的に取り囲まれた噴霧容積内に前記対象物体を部分的に取り囲むべくシェルを移動させるステップと;
前記シェルの内面の前方を向いたエアジェットからエアストリームを放出するステップと;
周囲圧力よりも高い圧力を有する前記部分的に取り囲まれた噴霧容積の前縁部を作り出すステップと;
周囲圧力よりも低い圧力を有する前記部分的に取り囲まれた噴霧容積の後縁部を作り出すステップと;
噴霧液を前記対象物体に塗布するステップと、を具える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2011年12月13日出願の米国仮特許出願第61/630,475号、名称「果樹園用の堅い本体を有するリキャプチャ噴霧器(Hard Bodied Recapture Sprayer for Orchards)」の権利を主張するものであり、その全ての内容は参照により本書に援用される。
【0002】
本開示は概して、噴霧放出物を噴霧し、閉じ込めて、リキャプチャするためのシステムおよび方法に関するものである。より具体的には、本開示は、対象物体を部分的に取り囲み、噴霧液を放出し、スプレーしぶき(overspray)を軽減するシェルに関するものである。
【背景技術】
【0003】
塗料、肥料、殺菌剤、除草剤、および殺虫剤を含む農業用化学物質、および他の種類の噴霧放出物のスプレーしぶきを防ぐために、噴霧液リキャプチャシステムが過去に使用されてきた。一般に、従来のリキャプチャシステムは、小さな物体、あるいは収容された空間での使用に限定される。従来の農業用噴霧器は、スプレーしぶきを閉じ込める手段を有することができず、それ故に、特に塗布が風の強い屋外エリアで行われる場合には、スプレーしぶきが対象エリアから漏れ出すことがある。
【0004】
幾つかの場合では、噴霧放出物は、人間の健康および/または環境に危険を及ぼすおそれがある揮発性有機成分(VOC)を含んでいる。したがって、対象物体への噴霧範囲を高めると共に、スプレーしぶきや滴下を最小限にしながら、噴霧液を閉じ込めて収集する方法およびシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態には、噴霧液リキャプチャシェルが開示されている。この噴霧液リキャプチャシェルは、部分的に取り囲まれた噴霧容積を有するシェル外面と、噴霧液リキャプチャシェルの内面における少なくとも1つの噴霧ノズルと、周囲圧力よりも高い圧力を有する部分的に取り囲まれた噴霧容積の前縁部と、周囲圧力よりも低い圧力を有する部分的に取り囲まれた噴霧容積の後縁部とを有する。
【0006】
他の実施形態には、対象物体を噴霧する方法が開示されている。この方法は、部分的に取り囲まれた噴霧容積内に対象物体を部分的に包含するようシェルを移動させるステップと、周囲圧力よりも高い圧力を有する部分的に取り囲まれた噴霧容積の前縁部を作り出すステップと、周囲圧力よりも低い圧力を有する部分的に取り囲まれた噴霧容積の後縁部を作り出すステップと、噴霧液を対象物体に塗布するステップと、を有する。
【0007】
本開示は、要約、詳細な説明、及び具体的に考察または開示された好適または特定の実施形態と併せて読むことが意図された添付の図面を参照することで、より完全に説明されるであろう。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態に組み込むことができ、本書において説明された実施形態に限定するよう解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が当該分野における当業者に本開示の全ての範囲を十分かつ完全に伝えるように、例示としてのみ与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示は、添付の図面と併せて以下の記載を参照することによって理解することができ、図中の同一符号は同一の構成要素を識別している。
【
図1】
図1は、本開示の実施形態によるリキャプチャ用噴霧器シェルの斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態によるリキャプチャ用噴霧器シェルの側面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態によるリキャプチャ用噴霧器シェルの底面斜視図を示す切断図である。
【
図4】
図4は、一実施形態によるリキャプチャ用噴霧器シェルの背面図である。
【
図5A】
図5Aは、使用時の複数のリキャプチャ用噴霧器シェルを示している。
【
図5B】
図5Bは、使用時の複数のリキャプチャ用噴霧器シェルの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の記載では、その一部を構成する添付の図面について参照しており、当該図面には、本開示を実施することができる特定の例示的な実施形態が例として図示されている。これらの実施形態は、開示されたコンセプトを当業者が実行できる程度に十分詳しく記載されており、本開示の概念および範囲から逸脱することなく、開示された様々な実施形態に対して改変をすることができると共に、他の実施形態を利用することもできる。したがって、以下の詳細な説明は、限定する意味に解釈すべきではない。
【0010】
本開示の実施形態の目的は、スプレーしぶき、流出、損失を最小限にしながら、対象物体に噴霧液を塗布し、シェル内に噴霧液を閉じ込め、噴霧液をリキャプチャすることである。複数の実施形態では、噴霧液は、化学物質を含んだエアストリームを含むものである。代替的には、この噴霧液は、液体、エアロゾル、またはそれらの組み合わせを含む。代替的な実施形態では、この噴霧器は静電スプレーを含む。このような実施形態は、静電スプレーを放出するよう構成された1以上のノズルを有しうる。化学物質は、噴霧器によって塗布することができ、且つ噴霧液のリキャプチャが望ましい植物栄養素などの肥料、農薬、除草剤、殺菌剤、または他の化学物質を含みうる。代替的な実施形態では、噴霧液中の化学物質は、塗料、着氷防止剤などを含む。本開示の実施形態は、対象物体を部分的に取り囲むよう構成されたシェルを具える。複数の実施形態では、このシェルは、噴霧ノズルと、正圧ノズルと、噴霧液リキャプチャポートとを具える。
【0011】
図1および2を参照すると、本開示の実施形態は、噴霧液リキャプチャシェル100を具えている。図示された実施形態では、シェル100は、中央部のスパンよりも底部で横方向に狭くなった、湾曲したU字型アーチ形状を具えている。シェル100は、対象空間110を部分的に取り囲む覆いを具えている。代替的な実施形態では、シェル100の表面は、湾曲した、若しくは角度がある形状のアーチを有する。代替的な実施形態では、シェル100は、意図する対象物体を部分的に、あるいは完全に包含するのに適した形状およびサイズを有する。噴霧液リキャプチャシェル100は、シェル外面120を具えている。シェル100は、対象物体に対応するように選択的にサイズ変更することができる。例えば、対象物体が20フィートの一般的な高さを有する樹木を含む場合、20フィートよりも僅かに高いおおよその高さを有するシェル100の実施形態を使用することができる。
【0012】
複数の実施形態では、シェル外面120は、シェル100が曝されうる紫外線光および/または他の成分に対する耐性を有する表面物質を具える。複数の実施形態では、シェル外面120はめっき層を具える。代替的な実施形態では、シェル外面120は、製品の他の耐性物質および/または耐久物質を具える。シェル外面120は、金属/プラスチック複合材料を含む、様々な物質の複合材料を具えうる。複数の実施形態では、内層面130は、ポリエチレン、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)などの耐溶剤性材料を具える。代替的な実施形態では、内層面130は、予想される用途に応じて他の耐薬品性材料を具えうる。代替的な実施形態は、ステンレス鋼から製造された内層面130を具える。
【0013】
図3に示すように、噴霧液リキャプチャシェル100は噴霧ノズル140を具えている。図示された実施形態では、噴霧ノズル140は、噴霧液リキャプチャシェル100の内面130の周りを2列に交互に配列されている。図示された実施形態では、各列の噴霧ノズル140は、噴霧液リキャプチャシェル100の移動方向に対して垂直の平面におおよそ位置している。図示された実施形態では、噴霧液リキャプチャシェル100の内面130周囲の噴霧ノズル140の分布は、対象空間110の周りを約270度取り囲んでいる。代替的な実施形態では、車輪150、155の間の隙間が狭い噴霧液リキャプチャシェルはより広い取り囲み角度を有し、ほぼ360度に等しくなりうる。反対に、車輪150、155の間の隙間が広いということは、取り囲み角度が小さいこととなりうる。他の実施形態では、噴霧ノズル140は、内面130上に交互のパターンで分布している。
図1に示すように、車輪150、155は互いに自由回転する。
【0014】
図4に示す実施形態では、噴霧ノズル140はそれぞれ、シェル100内の中心からおよそ15度だけ外れて向けられている。噴霧ノズル140のこのようなオフセットは、リキャプチャシェル100内での噴霧液の循環を高めることができる。代替的な実施形態では、噴霧ノズル140は他の角度でオフセットしている。他の実施形態では、噴霧ノズル140はオフセットせず、結果的に噴霧液リキャプチャシェル100のほぼ中心に向けられる。他の実施形態では、噴霧ノズル140は、噴霧シェル100の局所的な要求または使用を満たすように調整することができる。
【0015】
図1および3を参照すると、噴霧液リキャプチャシェル100はさらに、内面130に配置されたエアノズル160を具えている。図示された実施形態では、エアノズル160は、シェル100の後部付近、且つシェル100の底部付近に配置されている。エアノズル160は、噴霧液リキャプチャシェル100の前縁部170に向かって、上方かつ前方に向けられている。代替的な実施形態では、エアノズル160がエアストリームを前縁部170の方へと向けることができるように、エアノズル160は噴霧液リキャプチャシェル100の他の地点に配置される。
【0016】
エアノズル160は、ホース網を通ってエアノズル160へとエアストリームを供給するように構成された空気圧縮機と流体連通している。この空気圧縮機は、噴霧液リキャプチャシェル100上若しくはその内側に、またはトラクターなどの牽引車両に配置することができる。シェル100が比較的広い対象空間110を有する場合といった、高程度の空気の動きが必要とされる用途については、複数の空気圧縮機を利用してもよい。代替的に、ノズル160を通る空気流は、空気発生装置または送風アセンブリによって駆動される。
【0017】
図3に示すように、リキャプチャポート180は、噴霧液リキャプチャシェル100の後方付近の内面130の上部またはその付近に配置される。代替的な実施形態では、リキャプチャポート180は、噴霧液リキャプチャシェル100の内面130の他の位置に配置される。リキャプチャポート180は、真空機構およびリキャプチャタンクと流体連通している。このリキャプチャタンクは、噴霧液リキャプチャシェル100または牽引車両に配置することができる。
【0018】
噴霧液リキャプチャシェル100は、内面130の下方縁部に液滴キャッチ縁部190を具えている。液滴キャッチ縁部190は内面130の底縁部に沿って小さいフランジを具え、滴を液滴キャッチ口200に運ぶよう構成されている。液滴キャッチ口200は、収集タンクおよび/またはポンプに接続された1以上の内部ホースと流体連通し、内面130からの液滴を再循環させる。液滴は滴保持用タンクに送り込まれ、濾過されて中央の噴霧タンクに保管される、および/または対象物体に再度塗布するために噴霧ノズルに送り戻されうる。
【0019】
ここで
図1を参照すると、噴霧液リキャプチャシェル100は牽引舌状部210を具えている。牽引舌状部は、オフセット部230を有する牽引ヒッチ部220を具え、牽引車両と各対象物体の間に十分なクリアランスを作り出している。牽引オフセット部230のサイズは、対象物体のサイズ、牽引車両のサイズ、および/または噴霧液リキャプチャシェル100のサイズによって決定することができる。
【0020】
図2に示すように、噴霧液リキャプチャシェル100は、拡張した後方部分240を具えている。この後方部分240は対象空間110を越えて突出し、湾曲した切り欠き部250を具えている。他の実施形態では、後方部分240と切り欠き部250は、湾曲していない後方縁部というように、代替的な形状および形態を具える。
【0021】
噴霧液リキャプチャシェル100の実施形態は、スケルトンのフレーム部材(図示せず)を具えている。フレーム部材は、シェル内面130とシェル外面120の間に挟みこまれ、シェル100に構造上の剛性を与えてシェル100の構造全体にわたって前進運動力を伝えることができる。山形鋼または耐久性且つ十分な強度がある他の材料をフレーム部材に使用してもよい。
【0022】
化学噴霧液を保持するタンク、化学噴霧液に加圧する流体ポンプ、空気圧縮機、および/または追加の機器を牽引車両または噴霧液リキャプチャシェル上に配置してもよい。このような機器は、PTOまたは他の動力源によって動力供給することができる。
【0023】
代替的な実施形態は、噴霧液リキャプチャシェル100の前縁部にトリマ装置を具え、これにより、対象空間110内に適合することができない場合に、対象物体を含む植物をトリミングすることができる。このトリマ装置は、牽引車両からのパワー・テイク・オフ(PTO)シャフト、PTOにより駆動される水力、または他の動力源によって動力供給することができる。
【0024】
図5Aおよび5Bに示すように、本開示の実施形態は、支持構造260に沿って固定された複数の噴霧液リキャプチャシェル100を具え、これにより、複数列の対象物体を同時に噴霧することができる。このような実施形態は車輪を有さないが、支持構造260から自由に吊り下げることができる。複数の実施形態では、外面120および内面130は、比較的柔軟性が高い材料を具えうる。したがって、特定の環境および要因を満たすように、選択した任意の数の噴霧液リキャプチャシェル100を互いに固定してもよい。
【0025】
本開示の実施形態では、PTOまたは他の動力源によって駆動された水力は、外側車輪155を駆動するために適用することができる。コンバータは、外側車輪155を加速または減速して、牽引車両の回転または他の速度を補正することができる。代替的に、外側車輪155は、電気モータまたは他の手段によって動力供給することもできる。
【0026】
動作時、噴霧液リキャプチャシェル100は、果樹園、田畑、または1以上の物体に噴霧すべき他の場所を通って牽引車両により牽引される。牽引ヒッチのオフセット部230により、噴霧液リキャプチャシェル100は牽引車両の直ぐ後ろではなく、むしろその片側の後ろとなりうる。したがって、牽引車両は一列の樹木または他の対象物体に沿って駆動することができ、車輪150、155が対象物体に跨った状態で、噴霧液リキャプチャシェル100は各対象物体の上を越えて通過することができる。噴霧液リキャプチャシェル100が一列の対象物体に接近すると、オペレータは噴霧用ポンプ、真空ポンプ、および空気圧縮機を作動させることができる。
【0027】
エアノズル160は、噴霧液リキャプチャシェル100の前方付近に向かってエアストリームを放出する。リキャプチャポート180は、真空機構から吸引を適用する。このようなエアノズル160およびリキャプチャポート180での作用の結果、噴霧液リキャプチャシェル100によって取り囲まれた対象空間110の前縁部170には周囲圧力よりも圧力が高い側が作り出され、噴霧液リキャプチャシェル100によって取り囲まれた対象空間110の後縁部には周囲圧力よりも圧力が低い側が作り出される。圧力が高い側と圧力が低い側の間の対象空間110内には、自然の圧力領域が作られうる。周囲圧力よりも圧力が高い側は概して、噴霧液リキャプチャシェル100の前方開口部全体にわたって移行領域を規定し、噴霧液リキャプチャシェル100が前方に移動するときに周囲の大量の空気が侵入するのを防ぐバリアとして機能しうる。したがって、対象空間110内を再循環する空気が噴霧液リキャプチャシェル100から流れ出る可能性を最小限にするか減少させるように、実質的に隔離された循環空気のポケットを対象空間110内に維持することができる。
【0028】
噴霧ポンプは噴霧タンク内に保存された化学成分を加圧し、それによって噴霧ノズル140に化学物質を噴霧させる。部分的に閉じられた対象空間110内の空気は循環しているため、噴霧された化学物質を空間110内の周囲、およびその中の対象物体へと運ぶことができる。噴霧されたある程度の量の化学物質は、対象物体の様々な表面に付着することができる。対象空間110内の空気の再循環により、化学物質の噴霧液は、対象物体の比較的広い表面に接触することができる。リキャプチャポート180からの吸引は、再循環する、リサイクルする、あるいは保存するために、スプレーしぶきをポート180に引き寄せることができる。内面130と接触する化学物質の噴霧液は下方に滴り落ちて、液滴キャッチ縁部190を通って液滴キャッチ口200へと運ぶことができる。本開示の実施形態は、液滴キャッチ口200に入った液体を加圧し、このような液体を1以上のフィルタを通して送り、化学物質の保存タンク内に戻す、再度噴霧すべく噴霧ノズルに戻す、および/または液滴保持タンク内に戻す液滴キャッチポンプを具える。
【0029】
本開示の実施形態によると、リキャプチャシェル100は、樹木、ブドウ畑、小さい作物、または他の種類の農業使用における農業用途において化学物質を噴霧するために利用することができる。本開示の代替的な実施形態は、自動車用、宇宙空間用等の用途で塗料を噴霧するために利用することができる。複数の実施形態は、宇宙空間における着氷防止噴霧液の噴霧などの用途、路面に塗料を噴霧する、または対象物体に噴霧液を塗布することができる他の用途に利用することができる。
【0030】
本開示の利益を有する当業者によって理解されるように、本書に開示された実施形態の利点は、従来の噴霧器よりも低い圧力および/または少量の化学物質を利用することを伴いつつ、対象物体への優れた又はより最適な全体への適用を実現することである。したがって、本書に開示された実施形態を利用すると、コストを削減し、且つ、環境被害を低減することができる。さらに、噴霧液リキャプチャシェル100は、現在の技術では実行不可能な強風環境での噴霧液の塗布を可能にしうる。例えば、噴霧液リキャプチャシェル100は、横風による擾乱から対象空間110を保護することができる。エアノズル160からの空気流量を調整して、向かい風または追い風との釣り合いを取ることができる。
【0031】
本開示は特定の実施形態の条件を使用しているが、本書に説明された全ての利点および特徴を提供しない実施形態を含む他の実施形態は、本開示の利益を有する当業者には明らかであり、そのような実施形態も本開示の範囲内に含まれる。本開示の概念および範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができると理解されたい。