特許第6165838号(P6165838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国▲鉱▼▲業▼大学(北京)の特許一覧

<>
  • 特許6165838-大変形引張力試験システム 図000002
  • 特許6165838-大変形引張力試験システム 図000003
  • 特許6165838-大変形引張力試験システム 図000004
  • 特許6165838-大変形引張力試験システム 図000005
  • 特許6165838-大変形引張力試験システム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165838
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】大変形引張力試験システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/08 20060101AFI20170710BHJP
   G01L 5/08 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   G01N3/08
   G01L5/08 Z
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-502049(P2015-502049)
(86)(22)【出願日】2012年3月31日
(65)【公表番号】特表2015-513098(P2015-513098A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】CN2012073423
(87)【国際公開番号】WO2013143149
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年9月30日
【審判番号】不服2016-11579(P2016-11579/J1)
【審判請求日】2016年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】514248617
【氏名又は名称】中国▲鉱▼▲業▼大学(北京)
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】何 ▲満▼潮
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲暁▼▲傑▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 毅
【合議体】
【審判長】 三崎 仁
【審判官】 ▲高▼見 重雄
【審判官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−222824(JP,A)
【文献】 特開昭63−19533(JP,A)
【文献】 特開平5−322726(JP,A)
【文献】 米国特許第6142023(US,A)
【文献】 特開2008−309739(JP,A)
【文献】 特開平9−89737(JP,A)
【文献】 特開2003−106964(JP,A)
【文献】 特開2001−21469(JP,A)
【文献】 特開昭59−61748(JP,A)
【文献】 特開2005−337819(JP,A)
【文献】 特開2003−106964(JP,A)
【文献】 特開2001−21469(JP,A)
【文献】 米国特許第4475404(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N3/00−3/62
G01L5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカー・ロッドまたはアンカー・ロープの大変形引張力を試験するための大変形引張力試験システムであって、
メインフレームと、
前記メインフレームの縦方向の第1の横梁に設けられる後チャック・アセンブリと、
前記メインフレームの縦方向の第2の横梁に、移動可能に設けられる前チャック・アセンブリと、
前記メインフレームの一端に接近して設けられ、前記の前チャック・アセンブリに接続されて、所定の制御モードに従って前記の後チャック・アセンブリと前記の前チャック・アセンブリとの間に挟み込まれる試料を引っ張るための引張装置と、
センサーモジュール、制御モジュール、解析モジュールおよび出力モジュールを有する測定制御装置とを備え、
前記センサーモジュールは前記引張装置に接続されて、前記引張装置のリアルタイム変位および引張装置の前記試料に対するリアルタイム引張力を検知し、リアルタイム変位データおよびリアルタイム引張力データを形成して、解析モジュールおよび制御モジュールに伝送し、
前記制御モジュールは所定の制御モードおよび前記センサーモジュールの入力に従って、試験プロセスが所定の試験条件の下で行われるように制御し、
前記解析モジュールは前記センサーモジュールの入力を解析して試験結果を形成し、出力モジュールにより出力し、
且つ、前記引張装置は、連結車と、1対の親ネジとピストン型油圧シリンダとを含み、前記1対の親ネジは、前記の前チャック・アセンブリと前記連結車の連結板との間に、電機の駆動により前記の前チャック・アセンブリと前記の後チャック・アセンブリとの間の距離を微調整すべく設けられ、前記ピストン型油圧シリンダのシリンダは、前記メインフレームの一端に固定して接続され、前記ピストン型油圧シリンダのシリンダロッドは前記連結板に接続され、前記シリンダロッドは、前記メインフレームより遠く離れる方向に伸びるように設けてあり、前記引張装置は、前記1対の親ネジ及び前記ピストン型油圧シリンダにより、前記シリンダロッドの最大ストロークに対応する範囲で前記試料を引っ張る ことを特徴とする大変形引張力試験システム。
【請求項2】
前記試料を挟持するための、前記の前チャック・アセンブリおよび前記の後チャック・アセンブリにおけるチャックは液圧チャックであることを特徴とする請求項1に記載の大変形引張力試験システム。
【請求項3】
前記センサーモジュールは、前記ピストン型油圧シリンダの変位を測定するための巻き線式エンコーダを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の大変形引張力試験システム。
【請求項4】
前記の後チャック・アセンブリおよび前記の前チャック・アセンブリは、いずれも、異なる試料に適応するための複数セットのチャックを備えることを特徴とする請求項2に記載の大変形引張力試験システム。
【請求項5】
前記メインフレームは、平行に設置され、且つ断面がU字形である2つのスロット型縦梁を含み、2つの前記スロット型縦梁のU字形の開口は対向していることを特徴とする請求項2に記載の大変形引張力試験システム。
【請求項6】
前記スロット型縦梁の上翼板と下翼板の上に、前記の後チャック・アセンブリを固定するための複数の貫通孔が、均一に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の大変形引張力試験システム。
【請求項7】
前記連結車の底端に転輪が設けられ、前記転輪が転がるための軌道が、前記メインフレームと縦方向に平行するように設けられることを特徴とする請求項6に記載の大変形引張力試験システム。
【請求項8】
さらに、前記メインフレームの上方を覆うように安全防護ネットが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の大変形引張力試験システム。
【請求項9】
前記の測定制御装置は、さらに、作業台を備え、前記作業台上に制御ボタンおよび前記試験結果を表示するための表示スクリーンが配置されることを特徴とする請求項1記載の大変形引張力試験システム。
【請求項10】
前記ピストン型油圧シリンダの後端の表面に第1の敷板が設けられ、前記の前チャック・アセンブリの前端の表面に第2の敷板が設けられ、試料を前記第1の敷板と前記第2の敷板との間に配置して圧縮試験を行うことを特徴とする請求項1記載の大変形引張力試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大変形引張力試験機に関し、特に、定抵抗の大変形アンカー・ロッド(アンカー・ロープ)、およびその他の通常のアンカー・ロッド(アンカー・ロープ)の静力学的性能を室内で検討するための大変形引張力試験システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、国民経済の急速な発展に伴い、各の業界において、エネルギー源への需要は年々増えている。現在、中国の露天掘り鉱山は、既に、深部採掘の段階に入っており、鉱山、水利、交通などの分野において、多くの斜面(スロープ)、活断層、洞窟周辺岩盤の安定性問題に繋がっている。
【0003】
現在、中国は、様々な工事や建設が急速な発展の時期に入っており、鉱物資源の採掘および地下工事の建設の過程において、例えば、岩ハネ、地圧衝撃(ショック・バンプ)、地滑りなどの多くの災害が発生した。高い急斜面や坑道周辺岩盤の安定性において発生した自然災害および工事災害の制御については、主に伝統的なプレストレス・アンカー・ロッド(アンカー・ロープ)補強システムおよびその派生した保持構造の工事に依存している。ところが、大部分の岩土壌体の構造的な不安定性は、弾塑性大変形に繋がる問題であるため、従来のプレストレスト・アンカー・ロッド(アンカー・ロープ)システムに基づく支援(supporting)、および補強という概念は、もうすでに岩土壌体(斜面(スロープ)岩盤、トンネル周辺岩盤)の大変形の進化規律に適応することができず、坑道の支援過程において一部のアンカー・ロッドの端部の崩壊、アンカー・ロープ(ロッド)の中部の崩壊、支援区域への複数回の修復、鉄骨フレームの捻り変形・破壊・失効などの故障を生じてしまう。
【0004】
上記の問題に対応して、「柔よく剛を制す」、「柔と剛とが相乗する」という哲学思想の観点から、何満潮教授は、定抵抗大変形の新規材料の設計構想を提出し、且つ、新規アンカー・ロッド、すなわち、定抵抗大変形の材料を開発し(例えば、公開番号がCN101858225Aである中国発明特許に開示された定抵抗大変形アンカー・ロッドを参照)、これに基づいて斜面の補強、地すべりおよび地震災害の監視と早期警報、地下工事の支援にかかる一連の制御理念および技術的機器システムを形成して、岩盤工事における大変形問題を解決するために、優れた探索モードを提供した。
【0005】
定抵抗大変形アンカー・ロッド(アンカー・ロープ)の研究・開発の上、定抵抗の大変形アンカー・ロッド(アンカー・ロープ)の機械的特性について、さらに系統的に試験・検討し、且つ、その機械的特性を同じ実験条件の下で通常の変形アンカー・ロッド(アンカー・ロープ)と比べるために、大変形引張力試験システムが必要となり、実験を通じて、定抵抗大変形アンカー・ロープを含む測定しようとするアンカー・ロッド(アンカー・ロープ)の静力学パラメータを得て、力と変位、力と変形、力と時間などの関する実験曲線を描画すると共に、計算および関する測定により、軟岩大変形、衝撃(岩ハネ)大変形、突出大変形、地すべり大変形、地震断層大変形に対してよりよい支援を提供することが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第2567557号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術に存在する問題に鑑みて、本発明は、アンカー・ロッドまたはアンカー・ロープの大変形引張力を、正確に効率よく試験することができる大変形引張力試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次の技術案によって達成される。
【0009】
アンカー・ロッドまたはアンカー・ロープの大変形引張力を試験するための大変形引張力試験システムであって、メインフレームと、前記メインフレームの縦方向の第1の横梁に設けられる後チャック・アセンブリと、前記メインフレームの縦方向の第2の横梁に、移動可能に設けられる前チャック・アセンブリと、前記メインフレームの一端に接近して設けられ、前記の前チャック・アセンブリに接続されて、所定の制御モードに従って前記の後チャック・アセンブリと前記の前チャック・アセンブリとの間に挟み込まれる試料を引っ張るための引張装置と、センサーモジュール、制御モジュール、解析モジュールおよび出力モジュールを有する測定制御装置とを備え、前記センサーモジュールは前記引張装置に接続されて、前記引張装置のリアルタイム変位および引張装置の前記試料に対するリアルタイム引張力を検知し、リアルタイム変位データおよびリアルタイム引張力データを形成して、解析モジュールおよび制御モジュールに伝送し、前記制御モジュールは所定の制御モードおよび前記センサーモジュールの入力に従って、試験プロセスが所定の試験条件の下で行われるように制御し、前記解析モジュールは前記センサーモジュールの入力を解析して試験結果を形成し、出力モジュールにより出力し、且つ、前記引張装置は、連結車と、1対の親ネジとピストン型油圧シリンダとを含み、前記1対の親ネジは、前記の前チャック・アセンブリと前記連結車の連結板との間に、電機の駆動により前記の前チャック・アセンブリと前記の後チャック・アセンブリとの間の距離を微調整すべく設けられ、前記ピストン型油圧シリンダのシリンダは、前記メインフレームの一端に固定して接続され、前記ピストン型油圧シリンダのシリンダロッドは前記連結板に接続され、前記シリンダロッドは、前記メインフレームより遠く離れる方向に伸びるように設けてあり、前記引張装置は、前記1対の親ネジ及び前記ピストン型油圧シリンダにより、前記シリンダロッドの最大ストロークに対応する範囲で前記試料を引っ張ることを特徴とする大変形引張力試験システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の大変形引張力試験システムによれば、定抵抗大変形アンカー・ロッドを含む各類のアンカー・ロッド、およびアンカー・ロープの静力学パラメータを、正確で且つ効率的に得ることができ、力と変位、力と変形、力と時間などの関する実験曲線を描画することができると共に、計算および関する測定により、半径方向および長さ方向における研究を行うことができて、軟岩大変形、衝撃(岩ハネ)大変形、突出大変形、地すべり大変形、地震断層大変形に対してよりよい支援を提供することができる。
【0011】
さらに、本発明に係る大変形引張試験システムによれば、異なる制御モードを用いて各種のアンカー・ロッド(アンカー・ロープ)の様々な形態の力学性能の試験を達成することが可能であり、且つ省エネルギー、環境に優しい利点を有し、より高い安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る大変形引張力試験システムを模式的に示す平面図である。
図2】本発明の実施例に係る大変形引張力試験システムを模式的に示す正面図である。
図3】本発明に係る大変形引張力試験システムの引張装置の試験グラフである。
図4】本発明に係る大変形引張力試験システムの引張装置の試験グラフである。
図5】本発明に係る大変形引張力試験システムの引張装置の試験グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の特徴および利点を具現化した好適な実施例について、本発明を詳しく説明する。本発明は、異なる実施例において様々な変化を有することができ、これらの変化は、本発明の範囲から逸脱することでなく、且つ、その説明および添付した図面は、本質的には例示として用いられ、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【0014】
図1および図2に示すように、本発明の実施例に係る大変形引張力試験システムは、その機能によって5つの部分、即ち、メインフレーム1、前チャック・アセンブリ3、後チャック・アセンブリ2、引張装置4、測定制御装置(図示せず)に分けることができる。以下、上記の5つの部分をそれぞれ紹介する。
【0015】
1.メインフレーム
本発明の大変形引張力試験システムにおいて、メインフレーム1は、水平フレーム構造を採用し、いずれも、高品質の鋼材で作られて、その材料の特性が安定しており、圧縮性能に優れ、外観が整然と美しくなっている。
【0016】
引張装置4は、メインフレーム1の一端に設けられる。本明細書では、説明の便宜上に、メインフレーム1について、引張装置4が設けられた側の一端を前端とし、逆にその他の一端を後端としている。その他の部品の前後関係についても、これを基準としている。
【0017】
図1および図2に示すように、メインフレーム1は、2つの平行に設置された、断面がU字形であるスロット型縦梁13、14を備え、スロット型縦梁13、14のU字形の開口部が対向している。スロット型縦梁13、14の下方は、前支え座15、および複数の後支え座16により支持される。ここで、前支え座15の上に支持されているのが引張装置4のピストン型油圧シリンダ41であるため、前支え座15の縦方向長さは、後支え座16よりも大きくなされている。
【0018】
試験の安全性を確保し、試料が突然に断ち切られるなどによる損害を防ぐために、スロット型縦梁13、14の上翼板の上表面の間には、スロット型縦梁13およびスロット型縦梁14にまたがって覆うように、安全防護ネットを設けてもよい。また、当該安全防護ネットを容易に移動させるために、スロット型縦梁13、14の上表面に軌道を設け、安全防護ネットの底端にガイドホイールを設けて、当該軌道上で当該安全防護ネットを推進してもよい。
【0019】
2.前チャック・アセンブリおよび後チャック・アセンブリ
図1および図2に示すように、前チャック・アセンブリ3と後チャック・アセンブリ2とは、対向して設けられ、同一形状であってもよい。また、前チャック・アセンブリ3および後チャック・アセンブリ2を容易に移動させるために、前チャック・アセンブリ3および後チャック・アセンブリ2のチャック30、20は、それぞれ横梁31、21上に設けられ、横梁31、21の両端は、それぞれスロット型縦梁13、14の下翼板の上表面に支持される。横梁31、21を容易に移動させるために、横梁31、21の下翼板の上表面にガイドホイールを設けてもよい。
【0020】
相違点と言えば、試験の過程において、前チャック・アセンブリ3は移動を必要とするが、後チャック・アセンブリ2は固定されて移動しないことにある。試験の前に、前チャック・アセンブリ3は、ピストン型油圧シリンダ41に接続される必要があるため、固定されて移動しないようにされている。後チャック・アセンブリ2は、異なる長さの試料を挟持することができるように、スロット型縦梁13、14の上翼板および下翼板には、後チャック・アセンブリ2を固定するための複数の貫通孔12が設けられ、固定する場合、貫通孔12の直径とマッチングされた親ネジを用いて、スロット型縦梁13、14の上翼板の貫通孔12、横梁21上の貫通孔、スロット型縦梁13、14の下翼板の貫通孔12を、上から下に通り抜け、前記親ネジには固定ピンが貫通して設けられ、これにより、後チャック・アセンブリ2を固定する。前チャック・アセンブリ3も、後チャック・アセンブリ2と同じ固定形態により固定されてもよい。
【0021】
異なる長さの試料に加えて、本発明の実施例の大変形引張力試験システムの汎用性を向上させるために、後チャック・アセンブリ2および前チャック・アセンブリ3は、いずれも、異なる試料に適応する複数セットのチャック(治具)を備え、これにより試料の異なる直径および形状に対応してもよい。チャックとしては、V型チャック、平型チャック、鋼より線専用のチャック、アンカー・ロッド専用のスリーブチャックなどが挙げられ、アンカー・ロッド(アンカー・ロープ)、鋼より線、板材、棒材など様々な材料の引張試験に用いられ、そのため、本発明の大変形引張力試験システムは、汎用性の高い試験設備であると言える。
【0022】
さらに、本発明の大変形引張力試験システムは、試料圧縮時の静力学的性能の試験に用いられることができ、この場合、横梁31の前端の表面に敷板48を設け、ピストン型油圧シリンダ41の後端の表面に敷板47を設け、圧縮しようとする試料を、敷板47と敷板48との間に配置した後、油圧シリンダピストン41を起動して、試料を圧縮することができる。
【0023】
チャック・アセンブリ2、3は、いずれも、高品質の鋼材鍛造品から製造され、内蔵されたチャック20、30は、液圧により駆動する液圧チャックであってもよく、手動のプッシュスイッチボックスで制御することができで、試料を容易に挟持でき、作業効率を向上した。
【0024】
3.引張装置
図1および図2に示すように、引張装置4は、連結車43と、1対の親ネジ42と、ピストン型油圧シリンダ41とを備え、親ネジ42は、前チャック・アセンブリ3の横梁31の両側と、連結車43の連結板430との間に固定接続され、2つの親ネジ42は、ピストン型油圧シリンダ41を介して左右対称されている。また、ピストン型油圧シリンダ41のシリンダは、メインフレーム1の前端に固定接続され、ピストン型油圧シリンダ41のシリンダロッドは、連結板430に固定接続され、シリンダロッドは、メインフレーム1から遠く離れる方向へ伸ばすようになっている。連結車43上にはギア減速機ユニットが設けられ、当該ギア減速機ユニットは、電機48を備え、親ネジのストロークを自動的に調整することができで、引張試験が便利になっている。後チャック・アセンブリ2の位置調整については、貫通孔12の間隔が固定されているため、前チャック・アセンブリ2と後チャック・アセンブリ3との間の距離への微調整ができないが、ギア減速機ユニット48が横梁31の位置への微調整を行うことができるため、親ネジストロークへの微調整が可能になり、より多くの試料に適応することができる。
【0025】
引張装置4は、所定の制御モードに応じて、親ネジ42の伝動により、後チャック・アセンブリ2と前チャック・アセンブリ3との間に挟持された試料を引っ張る。ピストン型油圧シリンダ41の引張り力は、所定の制御モードにより制御され、当該制御モードは、所望の試験項目に関連している。
【0026】
図2に示すように、連結車43の底端に転輪46が設けられ、転輪46は、メインフレーム1と縦方向に平行に設けられた軌道40上で転がることができる。
【0027】
ピストン型油圧シリンダ41のシリンダロッドが外界からの影響を受けずに、よく作動できるために、メインフレーム1の前端に、ピストン型油圧シリンダ41のシリンダロッドを覆う立方体形のケーシング44を設けてもよい。且つ、ピストン型油圧シリンダ41のシリンダロッドと、連結車43の連結板430との間に、伸縮可能な防塵カバー45をさらに装着することができ、当該防塵カバー45は、シリンダロッドの伸縮に伴って伸長または短縮することができる。
【0028】
本発明の実施例に係る大変形引張力試験システムにおいて、ピストン型油圧シリンダ41を主作動油圧シリンダと称することができ、前チャックアセンブリ3と後チャックアセンブリ2において、試料を挟持することに動力を提供するための補助油圧シリンダを備えてもよい。ピストン型油圧シリンダ41は、設備全体の核心部品であり、鍛造品から製造され、優れた品質特性を有している。ピストン型油圧シリンダ41のピストンは、内静圧軸受け機構を採用することができ、浮遊ピストンの効果を果たす。また、試料が破裂する時にピストン型油圧シリンダ41に衝撃を与えることを防止して、部品の破損を避けるために、ピストン型油圧シリンダ41の油圧シリンダ内部に液圧緩衝装置を備えることができる。また、人為的な障害を避けるために、引張装置4は、力値超限保護、圧力超限保護、変位超限保護、過電流・過電圧保護、位置制限保護などを採用してもよい。
【0029】
ピストン型油圧シリンダ41の液圧源は、サーボ液圧源であってもよく、サーボ液圧源から排出した油圧オイルは、オイルフィルタを経て分配器に入る。分配器に入った油は、サーボ比例弁を介して主作動油圧シリンダの試験力の制御に用いられ、油液の圧力がオーバーフロー弁の設定圧力に達した場合、余分の油は、オーバーフロー弁からオーバーフローした後、油タンクに戻る。システムの圧力は、圧力計で随時に観察することができる。試料を確実に挟持するために、独立した補助オイルポンプを用いて液圧チャックを制御し、主作動油圧シリンダの作動とは互いに干渉しない。
【0030】
サーボ液圧源の油タンクとして、密閉型油タンクを用い、これにより二次汚染を避けることができる。システムにおいてオイルフィルタを用いることができ、油液中の不純物を濾過するために、濾過精度を10μmにする。長期間使用した場合、オイルフィルタには、不純物が大量存在するため詰まってしまい、このため、具体的な状況に応じて、オイルフィルターカートリッジを交換して、油路システムの清潔を確保し、各の液圧素子の寿命を向上させる。同時に、空気冷却器が設けられ、所定の温度を越えた場合、自動的に起動して、油の温度の上昇を制限し、液圧システムを常に最適な状態に確保する。
【0031】
引張装置4の閉ループ制御は、サーボ比例弁を用いることができ、制御器の電圧信号を変更することにより、高周波数応答サーボ比例弁を通過する油量および方向を変更して、ピストン型油圧シリンダ41に対する等試験力(等変位(equal displacement))のローディング、試験力(変位)の維持、等試験力(等変位)のアンロードの制御を図ることができで、異なる試験項目を完成することが可能である。以上の機能は、真の閉ループ制御であり、外界環境からの影響を受けず、試験の正確度を確保するものである。且つ、高周波数応答サーボ比例弁は、耐汚染性が強く、システムの安定性が大幅に向上される。
【0032】
サーボ液圧源には、荷重敏感システムを設けてもよく、これにより高圧システムが低圧の下で作動する時のポンプの輸出圧力と荷重圧力とをマッチングを確保して、両者の差値は、スロットル弁の開口部の圧力差のみの約1MPaになる。過剰の油圧オイルは、いずれも、荷重圧力より1MPa高い条件の下で、荷重敏感弁を経て油タンクに戻って、高圧でオーバーフローすることによるパワーロスを低減すると共に、システムの発熱と、システムの雑音も低減して、省エネルギーの目的に達する。且つ、発熱が低いため、液圧部品の寿命を向上させ、システムの漏れを低減して、システム安定性を大幅に向上させる。
【0033】
本発明の大変形引張力試験システムにおいて、その引張装置4の、試料に対する最大試験力は500kNに達することが可能であり、且つ、試験力に等級がつけられず、無段階変速になっている。油圧シリンダピストン41のストロークは、1200mmに達し、親ネジ(親ネジ42)のストロークは0〜1000mmの範囲であり、試料を0〜1100mm引っ張ることができる。
【0034】
4.測定制御装置
測定制御装置は、センサーモジュール、制御モジュール、解析モジュール、および出力モジュールに細分することができる。
【0035】
センサーモジュールは、引張装置4に接続されて、引張装置4中のシリンダロッドのリアルタイム変位、および引張装置の前記試料に対するリアルタイム引張力を検知し、リアルタイム変位データ、およびリアルタイム引張力データをを形成して、制御モジュールに送信して制御を行い、且つ、解析モジュールに送信して解析を行って、試験結果を形成する。
【0036】
制御モジュールは、試験プロセスが順調に運行されるように制御するものである。制御モジュールは、作業台、電気制御キャビネット、および手持ち式制御カートリッジを備えることができる。制御モジュールの殆どの部品は、1つの作業台に設けられてもよく、前記作業台上には、前記試験を制御するためのボタン、および前記試験結果を表示するための表示スクリーンが設けられる。作業台の側面には、総電源スイッチなどを設けることができ、作業台の台面上には制御キャビネットを載置することができる。また、当該制御キャビネットのパネル上に、ピストン型油圧シリンダ41の急停止を制御するための急停止プッシュボタン、ピストン型油圧シリンダ41の起動/停止を制御するためのプッシュボタン、補助オイルポンプの起動/停止を制御するためのプッシュボタン、温度管理計などを備えて、操作が非常に便利である。また、作業台内には、コンピュータを設けることができ、コンピュータの表示デバイスを作業台の台面上に設けてもよく、コンピュータの表示により、試験の制御モードの選択を行い、解析結果などを出力することもできる。
【0037】
本発明の大変形引張力試験システムは、試験を開始する前に、複数の試験制御モードを選択ことができ、試験過程において、夫々の制御速度および制御機能は、いずれも互いに切換えることができ、例えば、試験力の等速度制御(例えば、1分あたり5KNの試験力を施す)、変位の等速度制御(例えば、1分あたり1mmの変位)、定試験力、定変形、定変位速度などの様々な制御モードを選択して、試料の大変形引張力試験を行うことができる。
【0038】
試験過程において、制御モジュールは、変位センサ、負荷センサ(圧力センサ)、および変形センサからフィードバックされたリアルタイムデータを受けることにより、試験条件へのリアルタイム制御を行い、これで試験要求を満足している。
【0039】
試験プロセスの制御に加えて、制御モジュールの作用は、さらに液圧のチャック30への制御を含み、手持ち式制御カートリッジ上のプッシュボタン・スイッチによりチャック30の制御を行う。横梁の制御プッシュボタンは、ポイント/クリック式制御モードを採用し、顎板(鉗口)の挟持および弛緩は自動ロックするプッシュボタンであり、ここで、押すと作動態様になり、放すと停止態様になる。
【0040】
電気制御キャビネットは、本発明の大変形引張力試験システムの電気回路への総制御を行うためのものである。電気制御キャビネットは、単独してメインフレーム1と作業台との間に載置することができる。
【0041】
通常、解析モジュールは作業台内のコンピュータデータ解析プログラムにより完成され、試験要求に応じて収集したデータを、本技術分野の共用の解析方法で解析を行い、さらに試験結果を得て出力モジュールにより出力する。
【0042】
出力モジュールからの出力は、主に2つの面を含み、その1つは試験結果の出力であり、もう1つは試験中間データの出力である。試験結果は、表示デバイスにより出力し、且つ、試験データはコンピュータのハードディスクに記憶されてもよく、外付けの表示スクリーンにより出力してもい。試験中間データについて、コンピュータの表示デバイスおよび外付けの表示スクリーンでリアルタイム出力する。
【0043】
コンピュータ制御を用いることにより、ほとんどすべての操作が、いずれも中国語仮想パネル上で行われ、直感的で操作しやすく、容易に試験パラメータの設置、試験の制御、データの解析および処理を完成することができる。また、スクリーンを用いて、試験プロセス、および力−時間の曲線、力-変位、力-変形の曲線などを、リアルタイムに表示する。且つ、プリンターを用いて試験報告および曲線を印刷する。
【0044】
制御モジュールは、コンピュータにより試験プロセスの自動制御を完成することができると共に、コンピュータにより手動的に制御することができる。
【0045】
次に、本発明に係る大変形引張力試験システムの具体的な操作ステップを簡単に紹介する。
1)作業台中のコンピュータを起動する、
2)制御部の起動:油源を点検し、総電源スイッチをオンにし、補助オイルポンプの起動プッシュボタンを押す、
3)チャック30、20を装着し(装着する場合に、補助オイルポンプの静止状態を確認する必要がある)、試料を挟持し、ここで、試料の挟持される部分が、チャック20、30の1/2の位置を越えなければいけなく、
4)安全防護ネットを試料の直上方の位置まで押す、
5)制御モジュールにおける相応する制御ソフトウェアを開き、1つの試験項目を新たに作成し、試験制御モードに関連する選択肢の情報を入力する、
6)試験を行う。試験の時に、試料は、チャック30とチャック20との間に挟持され、チャック20の位置は固定されて移動しないが、チャック30は、ピストン型油圧シリンダ41に連れての作用の下で、図1の左側へ移動する。ピストン型油圧シリンダ41のシリンダロッドは、左側へ伸ばし、連結車43を動かして移動させ、連結車43は、親ネジ42を動かして左側へ移動させることで、横梁31を左側へ移動させ、これにより、チャック20とチャック30との間に挟持された試料はに大変形引張力を施し、検知装置は、巻き線式エンコーダにより、ピストン型油圧シリンダ41のシリンダロッドのリアルタイム変位を検知し、検知装置における大変形引張計により、試料の変形を検知する。
試験を終了した後、作業台上のストップキーを押し、且つ、試験データを保存する、
7)試料を取り出し、ピストンシリンダ41を返す、
8)電源をオフする。
【0046】
本発明の大変形引張力試験システムによれば、アンカー・ロッド(アンカー・ロープ)に対して、例えば、アンカー・ロッドの基本的な性能の試験、臨時のアンカー・ロッドクリープ試験、永久のアンカー・ロッドクリープ試験、アンカー・ロッド弛緩試験、アンカー・ロッド引張試験などの様々な試験を行うことができる。試験結果は、次のように例を挙げて説明する。
【0047】
図3は、臨時のアンカー・ロッドクリープ試験の試験グラフ(力−時間曲線)であり、当該試験において、軸方向設計値60kNを入力し、試験のかかる時間の合計で5.25時間である。図3において、縦軸上における力の単位はkNであり、横軸上における時間の単位は分(min)である。当該試験曲線によれば、試料は、90kN以下の引張力下でその静力学的性能を維持することができるが、引張力90kNで一定時間後に、試料上の定抵抗材料がアンカー・ロッドから外して試験が終了したことを示す。
【0048】
図4は、永久のアンカー・ロッドクリープ試験の試験グラフ(力−時間曲線)であり、当該試験において、軸方向設計値60kNを入力し、試験のかかる時間の合計で5.25時間である。図4において、縦軸上の力の単位はkNであり、横軸上の時間の単位は時間(h)である。当該試験曲線によれば、試料は90kN以下の引張力の下でその静力学的性能を維持することができるが、引張力90kNで一定時間後に、試料上の定抵抗材料がアンカー・ロッドから外して試験が終了したことを示す。
【0049】
図5は、1つのアンカー・ロッド引張試験の試験グラフ(力−変位曲線)であり、当該試験において、制御モードは変位制御モードである。図5において、縦軸上の力の単位はkNであり、横軸上の変位の単位はミリメートル(mm)である。当該試験曲線によれば、900mm以下の変位の場合、試料はその静力学的性能を維持することができるが、変位が900mmを越えた後に、試料上の定抵抗材料がアンカー・ロッドから外して試験が終了したことを示す。
【0050】
以上、好適な実施例により、本発明の技術案を掲示した。当業者にとって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内においてさまざまな変更及び改善を行い得る。かかる変更及び改善はすべて本発明の保護範囲に属することは、自明なことである。
図1
図2
図3
図4
図5