特許第6165845号(P6165845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6165845遊星軸受として平軸受を備える遊星歯車ステージ及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165845
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】遊星軸受として平軸受を備える遊星歯車ステージ及びその使用
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/08 20060101AFI20170710BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20170710BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20170710BHJP
   F16C 33/06 20060101ALI20170710BHJP
   F03D 80/00 20160101ALI20170710BHJP
【FI】
   F16H57/08
   F16H1/28
   F16C17/10 Z
   F16C33/06
   F03D80/00
【請求項の数】23
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-510698(P2015-510698)
(86)(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公表番号】特表2015-521262(P2015-521262A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】EP2013057345
(87)【国際公開番号】WO2013167332
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年2月1日
(31)【優先権主張番号】12167088.9
(32)【優先日】2012年5月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514011413
【氏名又は名称】ツェットエフ ウィンド パワー アントワープ エヌ ヴイ
【氏名又は名称原語表記】ZF WIND POWER ANTWERPEN N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】ミヒール ヴァン デン ドンケル
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー ボガエール
(72)【発明者】
【氏名】ディルク レイマン
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−232578(JP,A)
【文献】 特開2001−69719(JP,A)
【文献】 特開平6−73486(JP,A)
【文献】 特開平10−6789(JP,A)
【文献】 特開昭54−109565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/08
F16H 1/28
F16C 17/10
F16C 33/06
F03D 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギアボックス(1)のための遊星歯車ステージ(2)であって、該遊星歯車ステージ(2)は、リングギア(8)、サンギア(9)及び少なくとも3つの遊星軸(6)を駆動する遊星キャリア(4)を備え、各遊星軸(6)上へは、少なくとも1つの遊星歯車(5)が平軸受装置(7)により回転可能な状態で取り付けられ、前記遊星歯車(5)は径方向の接触面(18)及び軸方向の接触面(20)を有する遊星歯車ステージ(2)において、前記平軸受装置(7)は、
−前記遊星軸(6)に固定的に接続された2つのブッシュ(12)であって、固定された各ブッシュ(12)は断面がL字型であり、径方向の接触面(13)及び軸方向の接触面(14)を有し、固定されたL字型の前記ブッシュ(12)はU字型の断面を形成するために取り付けられ、軸方向に両外側で接合点(15,16,24)によりロックされ、少なくとも前記遊星歯車(5)の部分が、固定されたL字型の前記ブッシュ(12)により形成された前記U字型の内部に位置するブッシュ(12)と、
−固定されたL字型の前記ブッシュ(12)の前記径方向の接触面(13)と前記遊星歯車(5)の前記径方向の接触面(18)との間の、径方向の滑り支承部(17)と、
−固定されたL字型の前記ブッシュ(12)の前記軸方向の接触面(14)と前記遊星歯車(5)の前記軸方向の接触面(20)との間の、軸方向の滑り支承部(19)と、を備える遊星歯車ステージ(2)。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、固定されたL字型の前記ブッシュ(12)と前記遊星歯車(5)の前記軸方向の接触面(14,20)の接触面角度は−2.5度と+2.5度との間である遊星歯車ステージ(2)。
【請求項3】
請求項2に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、固定されたL字型の前記ブッシュ(12)と前記遊星歯車(5)の前記軸方向の接触面(14,20)の接触面角度は+0.5°度と+1.5度との間である遊星歯車ステージ(2)。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、L字型の前記ブッシュ(2)は幅(W)を有し、前記遊星軸(6)は直径(d)を有する遊星歯車ステージ(2)において、L字型の前記ブッシュ(12)の前記幅(W)と前記遊星軸(6)の前記直径(d)との比率は、0.3以上である遊星歯車ステージ(2)。
【請求項5】
請求項4に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、L字型の前記ブッシュ(12)の前記幅(W)と前記遊星軸(6)の前記直径(d)との比率は、0.5以上である遊星歯車ステージ(2)。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、L字型の前記ブッシュ(12)は、前記遊星軸(6)に対する回転に対して、位置決め素子(21)により固定される遊星歯車ステージ(2)。
【請求項7】
請求項6に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、前記位置決め素子(21)は、前記遊星軸(6)内のキー溝に備えられたキーである遊星歯車ステージ(2)。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、固定されたL字型の前記ブッシュ(12)は、固定的に共に接続される遊星歯車ステージ(2)。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか一項に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、前記平軸受装置(7)は更に、固定されたL字型の前記ブッシュ(12)の間にスペーサ(22)を備える遊星歯車ステージ(2)。
【請求項10】
請求項1〜7の何れか一項に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、前記平軸受装置(7)は更に、固定されたL字型の前記ブッシュ(12)の間に、少なくとも1つの更なるブッシュ(23)を備える遊星歯車ステージ(2)。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、前記径方向の滑り支承部(17)は、固定されたL字型の前記ブッシュ(12)の前記径方向の接触面(13)及び/又は前記遊星歯車(5)の前記径方向の接触面(18)の上に施された平軸受の材料のコーティング(17)を備える遊星歯車ステージ(2)。
【請求項12】
請求項1〜10の何れか一項に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、前記径方向の滑り支承部(17)は少なくとも1つの自由回転ブッシュ(17)を備える遊星歯車ステージ(2)。
【請求項13】
請求項12に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、前記少なくとも1つの自由回転ブッシュ(17)は、平軸受の材料製である遊星歯車ステージ(2)。
【請求項14】
請求項12に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、前記少なくとも1つの自由回転ブッシュ(17)は、鉄製又は平軸受の材料でコーティングされた鉄製である遊星歯車ステージ(2)。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか一項に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、前記軸方向の滑り支承部(19)は、固定されたL字型の前記ブッシュ(12)の前記軸方向の接触面(14)上、及び/又は前記遊星歯車(5)の前記軸方向の接触面(20)上に施された平軸受の材料のコーティング(19)を備える遊星歯車ステージ(2)。
【請求項16】
請求項1〜15の何れか一項に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、前記遊星キャリア(4)はダブルフランジ遊星キャリアである遊星歯車ステージ(2)。
【請求項17】
請求項16に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、L字型の前記ブッシュ(12)を軸方向にロックするための前記接合点は、前記遊星キャリア(4)の支台(15)により一方の外側に、及び前記遊星軸(6)のカラー(16)により他方の外側に形成される遊星歯車ステージ(2)。
【請求項18】
請求項1〜15の何れか一項に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、前記遊星キャリア(4)は単一フランジ遊星キャリアである遊星歯車ステージ(2)。
【請求項19】
請求項18に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、L字型の前記ブッシュ(12)を軸方向にロックするための前記接合点は、前記遊星キャリア(4)の支台(15)により一方の外側に、及びロック機構(24)により他方の外側に形成される遊星歯車ステージ(2)。
【請求項20】
請求項1〜15の何れか一項に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、前記遊星キャリア(4)はバックプレート(26)を備える遊星歯車ステージ(2)。
【請求項21】
請求項20に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、L字型の前記ブッシュ(12)を軸方向にロックするための前記接合点は、ロック機構(24)により両外側に形成される遊星歯車ステージ(2)。
【請求項22】
請求項1〜21の何れか一項に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、少なくとも2つの遊星歯車(5)が同一の遊星軸(6)上に回転可能な状態で取り付けられている遊星歯車ステージ(2)。
【請求項23】
請求項1〜22の何れか一項に記載の遊星歯車ステージ(2)であって、風力タービン用ギアボックス(1)に使用される遊星歯車ステージ(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービン用ギアボックスのための遊星歯車ステージ(遊星歯車変速段)に関する。より詳細に本発明は、遊星歯車を遊星歯車ステージにおいて回転可能な状態で支承する平軸受を備えた遊星歯車ステージに関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービン市場は今日、素早く変化している。より高いメガワットの電気が発電可能な、より大規模な風力タービンに対する需要が続いており、こうした風力タービンは「マルチメガワット風力タービン」とも称される。同時に、タービン及びその構成部品のサイズ及び重量を低減せよとの要求が益々重要となっている。
【0003】
風力タービンにおいて、一般的に風力タービンロータは、ロータのトルク及びスピードを発電機が要求するトルク及びスピードに変換する歯車伝動ユニット又はギアボックスの低速軸を作動させる。マルチメガワット風力タービンに対する需要の高まりにより、こうした風力タービン用のギアボックス等の構成部品の設計を新たにする挑戦へのプレッシャーが強まっている。これは風力タービンの重量及び費用を可及的に低く抑えるか、又は少なくとも許容可能範囲内に抑えるためである。一方、構成部品は、風力タービンの作動中に生成されるロータへの高荷重に確実に耐えなければならない。ギアボックス用の構成部品の重量を低減する1つの方法として、少ない材料を使用する、すなわち材料を薄くすることがある。これにより、ある種の柔軟性がこれら部品に対して与えられる可能性がある。この柔軟性によっては、作動中に風力タービンが変形する可能性が高まるかもしれない。これは、こうした作動中に風力タービン、特にマルチメガワット風力タービンがギアボックスに対して高い動力を生成し、ギアボックス内のスピード変化を引き起こすためである。そのため、ギアボックスの作動中の荷重及びスピードが、設計荷重及び設計スピード、つまり変速機の設計段階での予想荷重及び予想スピードと異なり、更には逆荷重が発生する可能性もある。風力タービン用のギアボックス内のこうした高い特定動力及び荷重、及び上述のギアボックスの重量に関する要件から、ギアボックスの設計段階においては、例えば遊星歯車が大きく変形する可能性があることを考慮する必要がある。
【0004】
従来技術による設計においては、遊星歯車を支承するためにころ軸受が主に使用されてきた。しかし現在では、遊星軸受として平軸受も又検討されている。
【0005】
ヨーロッパ公開特許第2383480号明細書は、風力タービン用遊星歯車ユニットを開示する。遊星歯車ユニットは、サンギア、リングギア及び遊星キャリアを備え、複数の遊星歯車が遊星軸上で軸受上に取り付けられている。更に遊星歯車ユニットは、遊星歯車を支承するために複数の径方向及び軸方向平軸受を備える。径方向の各平軸受は、平軸受の材料で形成されたブッシュを備える。ブッシュは、内輪として遊星軸に取り付けられるか、又は外輪として遊星歯車の孔内に取り付けられる。その場合、対応する外輪又は内輪は各々、遊星歯車の孔又は遊星軸により形成される。軸方向の各平軸受は、平軸受の材料で形成された第1軸受素子を備える。第1軸受素子は、遊星キャリアの壁面と遊星歯車の表側との間の接触面上で、遊星キャリア壁面上又は遊星歯車の表側上に備えられる。その場合、対応する第2軸受素子は各々、遊星歯車の表側又は遊星キャリアにより形成される。
【0006】
ヨーロッパ公開特許第2383480号明細書が開示する平軸受装置は、かご形遊星キャリアと共に使用するよう限定されている。かご形遊星キャリアにおいては、遊星歯車は遊星キャリアの2つの壁面の間に位置し、これらの壁面が遊星軸を遊星歯車の両側で支承する。
【0007】
更に、平軸受が遊星歯車を支承するために使用される場合、上述のような遊星歯車の変形が、こうした軸受装置に不都合となる可能性がある。平軸受が局所的に磨耗する可能性があり、そのために有効性が損なわれ、軸受の故障にさえつながりかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ヨーロッパ公開特許第2383480号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、ギアボックスのための遊星歯車ステージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
遊星歯車ステージはサンギア、リングギア、及び少なくとも3つの遊星軸を駆動する遊星キャリアを備え、各遊星軸上へは、径方向及び軸方向の接触面を有する少なくとも1つの遊星歯車が、平軸受装置により回転可能な状態で取り付けられる。平軸受装置は、遊星軸に固定的に接続された2つのブッシュを備え、固定された各ブッシュは断面がL字型であり、軸方向の接触面及び径方向の接触面を有し、このL字型のブッシュはU字型の断面を形成するために取り付けられ、両外側で接合点により軸方向にロックされる。本発明の実施形態により、接合点は遊星キャリアの一部、及び/又は遊星軸の一部、及び/又は、例えばロックプレート、サークリップ又は溝等の独立したロック機構により形成してよい。少なくとも遊星歯車の部分が、L字型のブッシュにより形成されたU字型の内部に位置する。更に平軸受装置は、固定されたL字型のブッシュの径方向の接触面と遊星歯車の径方向の接触面との間に、径方向の滑り支承部を備え、固定されたL字型のブッシュの軸方向の接触面と遊星歯車の軸方向の接触面との間に、軸方向の滑り支承部を備える。
【0011】
本発明の実施形態による遊星歯車ステージは、例えば単一フランジ遊星キャリア、ダブルフランジ遊星キャリア、及び例えばボギープレート等のバックプレートを備えた遊星キャリア等の全ての種類の遊星キャリアと共に使用可能である。
【0012】
更に、本発明の実施形態による遊星歯車ステージにおいては、平軸受装置はどのようなサイズの遊星歯車と共にも使用可能である。なぜならL字型のブッシュは、U字型を形成するために接続される側部において、例えば研磨、又はスペーサ又は更なるブッシュをL字型のブッシュの間に配置するなどして、サイズを容易に調整可能であるためである。
【0013】
更に、平軸受装置は2つのL字型のブッシュを備えるため、遊星歯車ステージが取り付けられているギアボックスの作動中に発生する可能性のある遊星歯車の変形に、より容易に適応可能であり、これにより磨耗が低減し、平軸受装置の寿命が延びる。
【0014】
本発明の実施形態により、固定されたL字型のブッシュと遊星歯車の軸方向の接触面の接触面角度は−2.5度と+2.5度との間、例えば+0.2度と+2.5度との間、又は+0.5度と1.5度との間でよい。
【0015】
L字型のブッシュは幅を有し、遊星軸は直径を有する。L字型のブッシュの幅と遊星軸の直径との比率は、本発明の実施形態により0.3以上でよく、例えばまた更なる実施形態により0.5以上でよい。
【0016】
L字型のブッシュは、遊星軸に対する回転に対して、例えば遊星軸内のキー溝内に備えられたキー等の位置決め素子により固定してよい。
【0017】
本発明の実施形態により、2つの固定されたL字型のブッシュを固定的に共に接続してよい。
【0018】
本発明の他の実施形態により、平軸受装置は更に、2つの固定されたL字型のブッシュの間にスペーサを備えてよい。
【0019】
また更なる実施形態により、平軸受配装置は更に、2つの固定されたL字型のブッシュの間に少なくとも1つの更なるブッシュを備えてよい。本発明の実施形態により、少なくともいくつかのL字型のブッシュ及びL字型のブッシュの間のブッシュは、固定的に接続されてよい。本発明の他の実施形態により、固定されたL字型のブッシュと隣接するブッシュとの間、及び/又は2つの隣接する更なるブッシュの間には、スペーサが存在してよい。
【0020】
本発明の実施形態により、径方向の滑り支承部は、固定されたL字型のブッシュの径方向の接触面及び/又は遊星歯車の径方向の接触面の上に施された平軸受の材料のコーティングを備えてよい。
【0021】
本発明の他の実施形態より、径方向の滑り支承部は、例えば自由回転ブッシュ等の径方向のプレーンブッシュを備えてよい。本発明の実施形態により、少なくも一つの自由回転ブッシュは、平軸受の材料製又は鉄製、又は平軸受の材料でコーティングされた鉄製でよい。
【0022】
本発明の更なる実施形態により、軸方向の滑り支承部は、固定されたL字型のブッシュの軸方向の接触面上、及び/又は遊星歯車の軸方向の接触面上に施された平軸受の材料のコーティングを備えてよい。
【0023】
遊星キャリアは、ダブルフランジ遊星キャリアでよい。ダブルフランジ遊星キャリアは、かご形遊星キャリアと称してもよい。かご形遊星キャリア又はダブルフランジ遊星キャリアにおいては、遊星キャリアは2つの壁面を有し、その壁面の間に遊星歯車が位置し、壁面が遊星軸を遊星歯車の両側で支承する。こうした実施形態により、固定されたL字型のブッシュを軸方向にロックするための接合点は、遊星キャリアの支台により一方の外側に、及び遊星軸のカラーにより他方の外側に形成してよい。
【0024】
他の実施形態により、遊星キャリアは単一フランジ遊星キャリアでよい。このような場合、遊星軸は遊星キャリアと一体的に成形してよい。
【0025】
単一フランジ遊星キャリアの場合、固定されたL字型のブッシュを軸方向にロックするための接合点は、遊星キャリアの支台により形成してよく、他の側においては、例えばサークリップ、ロックプレート又は溝等のロック機構により形成してよい。
【0026】
また更なる実施形態により、遊星キャリアはバックプレートを備えてよい。バックプレートは、例えばボギープレートでよい。このような場合、固定されたL字型のブッシュを軸方向にロックするための接合点は、例えばサークリップ、ロックプレート又は溝等のロック機構により両外側に形成してよい。
【0027】
本発明の実施形態により、1つの遊星軸上に、1つ、2つ、又は2つを超える遊星歯車を回転可能な状態で取り付けてよい。1つを超える遊星歯車が同一の遊星軸上に備えられる場合、各遊星歯車は、遊星歯車自体の平軸受装置により支承される。
【0028】
更に本発明は、請求項1〜22の何れか一項に記載の遊星歯車ステージの、風力タービン用ギアボックスにおける使用を提供する。
【0029】
また、本発明は風力タービン用ギアボックスを提供する。ギアボックスは、本発明の実施形態による、少なくとも1つの遊星歯車ステージを備える。本発明の実施形態により、ギアボックスは更に平行型ギアステージを備える。
【図面の簡単な説明】
【0030】
異なる図面で使用された同一の符号は、同一、類似又は相似の素子を指すことを注意されたい。
図1】当業者に既知の風力タービン用ギアボックスの概略図である。
図2】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図3】U字型を形成するためのL字型のブッシュ及びその取り付けを示す概略図である。
図4】U字型を形成するためのL字型のブッシュ及びその取り付けを示す概略図である。
図5】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図6】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図7】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図8】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図9】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図10】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図11】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図12】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図13】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図14】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図15】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図16】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図17】本発明の実施形態による遊星歯車ステージと共に使用可能な軸受装置の異なる実施形態を示す概略図である。
図18】本発明の実施形態による遊星歯車ステージを備えたギアボックスの図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
記載では、異なる実施形態を参照して本発明を説明する。従って異なる図面を参照する。これらの図面は制限的であることを意図しておらず、本発明は請求項によってのみ制限されることを理解されたい。従って、図面は説明を目的としており、図中のいくつかの素子のサイズは、明確であることを目的として拡大される場合がある。
【0032】
「備える」という語句は、いかなる形でも本発明を制限するとは解釈されない。請求項で使用された「備える」という語句は、その後に記述された手段に限定されることを意図しておらず、他の素子、部分又はステップを排除するものではない。
【0033】
請求項及び明細書で使用された「接続される」という語句は、別段の指定がない限り、「直結」に限定されると理解される必要がない。従って、部分Bに接続された部分Aは、部分Bに直結された部分Aに限定されず、部分Aと部分Bとの間の間接接続をも含み、換言すると、部分Aと部分Bとの間に中間部分が存在する場合をも含む。
【0034】
本発明の全ての実施形態が、本発明の全ての特徴を備えるとは限らない。以下の明細書及び請求項においては、請求項に記された実施形態の何れもが、いかなる組合せにおいても使用可能である。
【0035】
本発明は、ギアボックスのための遊星歯車ステージを提供する。遊星歯車ステージはサンギア、リングギア、及び少なくとも3つの遊星軸を駆動する遊星キャリアを備え、各遊星軸上へは、径方向及び軸方向の接触面を有する少なくとも1つの遊星歯車が、平軸受装置により回転可能な状態で取り付けられる。1つを超える遊星歯車が同一の遊星軸上に備えられる場合、各遊星歯車は、遊星歯車自体の平軸受装置により支承される。平軸受装置は、
遊星軸に固定的に接続された2つのブッシュであって、固定された各ブッシュは断面がL字型であり、径方向の接触面及び軸方向の接触面を有し、このL字型のブッシュはU字型の断面を形成するために取り付けられ、両外側で接合点によりロックされ、少なくとも遊星歯車の部分が、L字型のブッシュにより形成されたU字型の内部に位置するブッシュと、
固定されたL字型のブッシュの径方向の接触面と遊星歯車の径方向の接触面との間の、径方向の滑り支承部と、
固定されたL字型のブッシュの軸方向の接触面と遊星歯車の軸方向の接触面との間の、軸方向の滑り支承部と、を備える。
【0036】
本発明の実施形態により、取り付けられたL字型のブッシュをロックするための接合点は、遊星キャリアの一部、及び/又は遊星軸の一部、及び/又は、例えばロックプレート、サークリップ又は溝等の独立したロック機構が挙げられるが、それらに限定されないロック機構により形成してよい。
【0037】
平軸受は、ジャーナル軸受、流体軸受又は滑り軸受と称してもよいことを注意されたい。
【0038】
本発明の実施形態による、ギアボックスのための遊星歯車ステージは、風力タービン用ギアボックスで使用されることを意図している。
【0039】
本発明の実施形態による遊星歯車ステージは、例えば単一フランジ遊星キャリア、ダブルフランジ遊星キャリア、及び例えばボギープレート等のバックプレートを備えた遊星キャリア等の全ての遊星キャリアと共に使用可能である。
【0040】
更に、本発明の実施形態による遊星歯車ステージにおいては、平軸受装置はどのようなサイズの遊星歯車と共にも使用可能である。なぜならL字型のブッシュは、U字型を形成するために接続される側部において、例えば研磨、又はスペーサ又は更なるブッシュをL字型のブッシュの間に配置するなどして、サイズを容易に調整可能であるためである。
【0041】
更に、平軸受装置は2つのL字型のブッシュを備えるため、遊星歯車ステージが取り付けられているギアボックスの作動中に発生する可能性のある遊星歯車の変形に、より容易に適応可能であり、これにより摩耗が低減し、平軸受装置の寿命が延びる。
【0042】
本発明は、異なる実施形態を参照して以下に説明される。これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするためのみを目的としており、いかなる形でも本発明を制限することを意図していない。
【0043】
図1はギアボックス1の例を示す。ギアボックス1は、第1遊星歯車ステージ2a、第2遊星歯車ステージ2b及び平行型ギアステージ3を備える。第1及び第2遊星歯車ステージ2a,2bは、遊星キャリア4及び複数の遊星歯車5を備え、遊星歯車5の各々は、遊星歯車装置7により遊星軸6上に回転可能な状態で取り付けられる。本発明の実施形態により、遊星歯車装置7は平軸受装置7により形成される。遊星歯車ステージ2a,2bは、更にリングギア8、サンギア9を備える。図示例では、平行型ギアステージ3は低速軸10及び高速軸11を備える。
【0044】
図1は本発明の理解を容易にするためのみを目的としており、いかなる形でも本発明を制限することを意図していないことを理解されたい。本発明の実施形態による遊星歯車ステージ2は、当業者にとり既知であるいかなる種類のギアボックスにおいても使用してよい。例えば、ギアボックス1は1つのみの遊星歯車ステージ2を備えてもよく、又は平行型ギアステージ3は、低速軸10及び高速軸11のほかに中間軸を備えてもよい。
【0045】
本発明は遊星歯車ステージ2に関する。より詳細に本発明は、遊星歯車5を、遊星歯車5の遊星軸6上で平軸受装置7により回転可能な状態で支承する構想に関する。図2は、本発明の実施形態による平軸受装置7の第1実施形態を示す。平軸受装置7は、遊星軸6に固定的に接続された2つのブッシュ12を備える。固定された各ブッシュ12はL字型の断面を有する。更なる記載及び請求項では、これらのブッシュ12は「固定されたL字型のブッシュ12」と称される。図3は「L字型のブッシュ」が意味する物を概略的に図示し、説明する。実際は、本発明の実施形態による軸受で使用されたブッシュ12はフランジ付きブッシュ12、すなわちフランジ12aを一方の側に有するブッシュである。これは図3(a)で詳説され、図3(a)はフランジ付きブッシュ12の断面図を示す。断面図の上半分のみ、又は下半分のみを考慮する場合(図3(b)参照)、このフランジ付きブッシュ12はL字型である。従って、更なる記載及び/又は請求項においてL字型のブッシュが参照される場合は常に、図3(a)に示されたフランジ付きブッシュを意味する。
【0046】
固定されたL字型のブッシュ12の各々は、径方向の接触面13及び軸方向の接触面14を備える。固定されたL字型のブッシュ12は、断面においてU字型を形成するよう取り付けられる。これは図4に概略的に示され、説明される。フランジ付きブッシュ12は、図4(a)に見られるフランジ12aを備えた側と反対側に、共に取り付けられる。換言すると、フランジ付きブッシュ12は、ブッシュのフランジ12aが互いに可及的に離れて位置するよう取り付けられる。この断面図の上半分のみ、又は下半分のみを考慮する場合(図4(b)参照)、このフランジ付きブッシュ12は、U字型を形成するよう共に取り付けられる。従って、更なる記載及び/又は請求項において、U字型を形成するよう共に取り付けられたL字型のブッシュが参照される場合は常に、図4(a)に示された設計を意味する。
【0047】
図示例において遊星キャリア4は、ダブルフランジ遊星キャリアとも称するかご形遊星キャリアである。かご形遊星キャリアは2つの壁面4a,4bを備える。遊星歯車5は、これら2つの壁面4a,4bの間に位置し、これらの壁面4a,4bが遊星軸6を遊星歯車5の両側で支承する。図示例では、L字型のブッシュ12をロックするための接合点は、遊星キャリア4の支台15により一方の外側に、及び遊星軸6のカラー16により他方の外側に形成される。
【0048】
少なくとも遊星歯車5の部分は、固定されたL字型のブッシュ12により形成されたU字型の内部に位置する。図2に示された例では、遊星歯車5の形状は、遊星歯車5の部分のみが、固定されたL字型のブッシュ12により形成されたU字型の内部に位置する。この実施例により、遊星歯車5はより小さい部分とより大きい部分を備える。より小さい部分は、固定されたL字型のブッシュ12により形成されたU字型の内部に位置する。この利点は、依然として遊星歯車5の全幅を使用可能である一方で、遊星キャリア4は、図2の遊星歯車5の最も幅広部分に等しい幅を遊星歯車5が有し、軸受を遊星歯車の周囲で設計した場合と比較して、より小型化が可能であることである。遊星キャリア4のサイズが小型化可能である場合、遊星キャリア4がより変形しにくく、これは磨耗及びそれに伴う寿命の観点から平軸受装置にとり極めて有利である。
【0049】
L字型のブッシュ12の各々は幅Wを有し、遊星軸6は直径dを有する(図ではd/2のみが示される)。本発明の実施形態により、L字型のブッシュ12の幅Wと遊星軸6の直径dの比率は、0.3以上とするか、又は換言するとW/d≧0.3でよい。例えばL字型のブッシュ12と遊星軸6の直径dの比率は、0.5以上とするか、又は換言するとW/d≧0.5でよい。
【0050】
更に平軸受装置7は、固定されたL字型のブッシュ12の径方向の接触面13と遊星歯車5の径方向の接触面18との間に、径方向の滑り支承部17を備え、固定されたL字型のブッシュ12の軸方向の接触面14と遊星歯車5の軸方向の接触面20との間に、軸方向の滑り支承部19を備える。
【0051】
図示例では、径方向の滑り支承部17は、固定されたL字型のブッシュ12の各々の径方向の接触面13と遊星歯車5の径方向の接触面18の双方の上に施された平軸受の材料のコーティング17で形成してよい。しかし、本発明の他の実施形態によるが図示されていない実施形態により、平軸受の材料17を固定されたL字型のブッシュ12の径方向の接触面13又は遊星歯車5の径方向の接触面18の、一方のみの上に施してもよい。
【0052】
更なる実施形態及び図5により、径方向の滑り支承部17は径方向のプレーンブッシュ17、より詳細には径方向の平軸受17により形成してよい。本発明の実施形態により、径方向の平軸受17は、少なくとも1つの自由回転ブッシュ又は浮動ブッシュ17(図5参照)により形成してよい。「自由回転ブッシュ」又は「浮動ブッシュ」とは、ブッシュのどの側面も、いかなる形でも軸受装置7の別の部分と接続していないことを意味する。本発明の実施形態により、自由回転ブッシュ17は、完全に平軸受の材料で形成してよい。本発明の実施形態により、自由回転ブッシュ17は鉄製、又は平軸受の材料でコーティングされた鉄製でよい。
【0053】
本発明の更なる実施形態により、軸方向の滑り支承部19は、固定されたL字型のブッシュ12の軸方向の接触面14上、及び/又は遊星歯車5の軸方向の接触面20上に施された平軸受の材料のコーティング19で形成してよい。図2に示された例では、平軸受の材料のコーティング19は、固定されたL字型のブッシュ12の軸方向の接触面14上のみに施されている。図5の例では、平軸受の材料のコーティング19は、遊星歯車5の軸方向の接触面20上のみに施されている。更に、本発明の更なる実施形態によるが図示されていない実施形態により、平軸受の材料のコーティング19は、固定されたL字型のブッシュ12の軸方向の接触面14及び遊星歯車5の軸方向の接触面20の双方の上に施してよい。
【0054】
更に、図5に示された例では、図2に示された例と同様に、遊星歯車5の形状は、遊星歯車5の部分が固定されたL字型のブッシュ12により形成されたU字型の内部に位置する。より詳細には、遊星歯車5はより小さい部分とより大きい部分を備え、より小さい部分は固定されたL字型のブッシュ12により形成されたU字型の内部に位置する。
【0055】
図6及び図7では、本発明による平軸受装置7の代替的な実施形態が示される。これらの実施形態により、遊星歯車5は又少なくとも部分的に、2つの固定されたL字型のブッシュ12により形成されたU字型の内部に位置する。又は換言すると、少なくとも遊星歯車5の部分が、2つの固定されたL字型のブッシュ12により形成されたU字型の内部に位置する。しかし図6及び図7において遊星歯車5は、図2及び図5で示された例の場合のような、幅の異なる2つの部分を有しておらず、図6及び図7の例では、遊星歯車5の幅は、2つの固定されたL字型のブッシュ12により形成されたU字型の内部にぴったりとはめ込まれる幅である。図6では遊星歯車5が、2つの固定されたL字型のブッシュ12により形成されたU字型の内部に部分的に位置する。一方図7で遊星歯車5は、2つの固定されたL字型のブッシュ12により形成されたU字型の内部に完全に位置する。
【0056】
更に、図6及び図7に示された実施形態により、軸方向の滑り支承部19が、固定されたL字型のブッシュ12の軸方向の接触面14における平軸受の材料のコーティング19として施される。これはいかなる形でも本発明を制限することを意図しておらず、説明を容易にするためのみを目的とすることを理解されたい。
【0057】
図8は本発明の更なる実施形態を示す。遊星歯車5の部分は、2つの固定されたL字型のブッシュ12により形成されたU字型の内部に位置する。この実施形態により、図2及び図5に示された実施形態と同様に、遊星歯車5はより小さい部分とより大きい部分を備え、より小さい部分は固定されたL字型のブッシュ12により形成されたU字型の内部に位置する。しかし、この実施形態が図2及び図5に示された実施形態と異なるのは、遊星歯車5の最も幅広部分が、2つの固定されたL字型のブッシュ12がU字型を形成するために取り付けられた際の全体幅よりも小さいことである。又は換言すると、遊星歯車5の最も幅広部分は、U字型の全体幅よりも小さい。
【0058】
図9に示された更なる実施形態により、従前の例の場合のように遊星歯車5の径方向の接触面18に略垂直である遊星歯車5の軸方向の接触面20に替えて、遊星歯車5の軸方向の接触面20が垂直方向から外れてよい。図9に示されるように、これは接触面角度αにより表される。本発明の実施形態により、遊星歯車5の軸方向の接触面20の接触面角度αは、−2.5度と+2.5度との間、例えば+0.2度と+2.5度との間、又は+0.5度と1.5度との間でよい。同様に、軸方向の接触面14は、−2.5度と+2.5度との間、例えば+0.2度と+2.5度との間、又は+0.5度と+1.5度との間の接触面角度αを有してよい。これにより、より経済的な形で材料の取り扱い方法が提供される。換言すると、L字型のブッシュ12及び遊星歯車5の軸方向の接触面14,20を僅かに傾斜させることにより、L字型のブッシュ12及び5を形成する材料の支承特性が向上し、これらの構成部品により安価な材料を使用可能となる。
【0059】
図10に示された更なる実施形態により、同一であるか又は対称的であり、従って同じ幅Wを有するL字型のブッシュ12に替えて、L字型のブッシュ12は非対称的とするか、又は互いに異なってもよい。その結果この実施形態によるL字型のブッシュ12は幅が異なる。または換言すると、第1のL字型のブッシュ12aは第1幅Wを、第2のL字型のブッシュ12bは第2幅Wを有する。第1幅Wは第2幅Wと異なる。
【0060】
図5及び図10に関して上述された例では、1つの自由回転ブッシュ又は浮動ブッシュ17が、径方向の滑り支承部として提供される。しかし本発明の更なる実施形態より、径方向の滑り支承部17は1つを超える自由回転ブッシュ又は浮動ブッシュ17を有してよい。図11は平軸受装置7の実施形態を示し、この実施形態においては、径方向の滑り支承部17は2つの自由回転ブッシュ又は浮動ブッシュ17a,17bにより形成される。これらの自由回転ブッシュ又は浮動ブッシュ17a,17bは、遊星軸6に沿った方向で互いに隣接する。図11に示された例は、いかなる形でも本発明を制限することを意図しておらず、本発明の更なる実施形態により、径方向の滑り支承部17は、いかなる適切な個数の自由回転ブッシュ又は浮動ブッシュ17により、本発明による他の実施形態に関して記載された全ての他の特徴を組み合わせ、形成してよいことを注意されたい。
【0061】
本発明の実施形態により、固定されたL字型のブッシュ12は、遊星軸6に対する回転に対して位置決め素子21により固定してよい。図12は、こうした位置決め素子21の例を示す。この例では、固定されたL字型のブッシュ12を、遊星軸6に対する回転に対して遊星軸6内のキー溝内に備えられたキーにより固定してよい。
【0062】
上述の例では、固定されたL字型のブッシュ12は、固定的に互いに接続される。これは、例えばボルトを使用して実施してよい。しかし本発明の他の実施形態により、図13に示されるように、2つの固定されたL字型のブッシュ12の間にスペーサを備えてよい。本発明のまた更なる実施形態により、少なくとも1つの更なるブッシュ23を、2つの固定されたL字型のブッシュの間に備えてよい(図14参照)。少なくとも1つの更なるブッシュ23は、固定的に遊星軸6に接続してよい。本発明の実施形態により、図14に示されるように、少なくとも1つの更なるブッシュ23は、固定されたL字型のブッシュ12の間の固定接続に関して記述されたのと同様な方法で、固定されたL字型のブッシュ12と固定的に接続してよい。1つを超える更なるブッシュ23を、固定されたL字型のブッシュ12の間に備える場合、更なるブッシュ23も又、互いに固定的に接続してよい。本発明の他の実施形態により、スペーサ22は、更なるブッシュ23と固定されたL字型のブッシュ12の各々との間に存在してよい。1つを超える更なるブッシュ23が存在する場合、スペーサ22は隣接する更なるブッシュ23の各々の間にも存在してよい。
【0063】
上述の例では、遊星キャリア4は、ダブルフランジ遊星キャリア又はかご形遊星キャリア4であり、2つの壁面4a,4bを備える。しかし遊星キャリア4は又、図15に示されるような単一フランジ遊星キャリア4とすることもできる。このような場合、L字型のブッシュ12を遊星軸6に対する回転に対してロックするための接合点は、遊星キャリア4の支台15により一方の外側に、及び図示の例ではサークリップ24であるロック機構24により他方の外側に形成される。別の実施形態により、ロック機構24は、例えばロックプレート又は溝等が挙げられるが、それらに限定されない、当業者に既知のいかなる適切なロック機構としてもよい。図15の例では、遊星軸6は遊星キャリア4と一体的に成形される。または換言すると、遊星キャリア4及び遊星軸6は、1個部品として形成される。図15の例においては、径方向の滑り支承部17は、浮動ブッシュ17により形成されることを注意されたい。しかし既に上述したように、径方向の滑り支承部17は、L字型のブッシュ12の径方向の接触面13及び/又は遊星歯車5の径方向の接触面18の上に施された平軸受の材料のコーティングにより形成してもよい。軸方向の滑り支承部19は、遊星歯車5の軸方向の接触面20に施されたコーティング19により形成される。しかし、軸方向の滑り支承部19は、L字型のブッシュ12の軸方向の接触面14上、又は遊星歯車5の軸方向の接触面20及びL字型のブッシュ12の軸方向の接触面14の双方の上に施されたコーティング19により形成してもよい。
【0064】
上述の全ての実施形態では、1つのみの遊星歯車5が各遊星軸6上に備えられる。しかし本発明の更なる実施形態により、各遊星軸6は1つを超える遊星歯車5を備えてよい。図16は、同一軸上に2つの遊星歯車5が備えられた例を示す。遊星歯車5は直に隣接して備えられる。図示例においては、遊星キャリア4は単一フランジ遊星キャリア4である。この例により、L字型のブッシュ12をロックするための接合点は、遊星キャリア4の支台15により一方の外側に、及び、この場合においてはボルト25により遊星軸6に固定されたロックプレート24で形成されたロック機構24により、他方の外側に形成される。上述したように、ロック機構24はサークリップ又は溝により形成してもよい。他の実施形態により、遊星キャリア4はダブルフランジ遊星キャリア又はかご形遊星キャリア4としてもよい。図16の例では再び、径方向の滑り支承部17は、浮動ブッシュ17により形成される。しかし既に上述したように、径方向の滑り支承部17は、L字型のブッシュ12の径方向の接触面13及び/又は遊星歯車5の径方向の接触面18の上に施された平軸受の材料のコーティングにより形成してもよい。軸方向の滑り支承部19は、遊星歯車5の軸方向の接触面20に施されたコーティング19により形成される。しかし、軸方向の滑り支承部19は、L字型のブッシュ12の軸方向の接触面14上、又は遊星歯車5の軸方向の接触面20及びL字型のブッシュ12の軸方向の接触面14の双方の上に施されたコーティング19により形成してもよい。
【0065】
本発明のまた更なる実施形態により、2つを超える遊星歯車5を同一の遊星軸6上に備えてもよい(図示されず)。
【0066】
また更なる実施形態では、遊星キャリア4はバックプレート26を備えてよい(図17参照)。
【0067】
特定の実施形態により、バックプレート26はボギープレート26でよく、ボギープレート26上に遊星軸6が取り付けられ、遊星キャリア4の残余の部分にスタッドにより接続される。各遊星軸6は1対の遊星歯車5を支承し、各対の遊星歯車5は、ボギープレート26の反対側に取り付けられる。この例では、L字型のブッシュ12をロックするための接合点は、両外側でロック機構24、より詳細には、ボルト25により遊星軸6に固定されたロックプレート24により形成される。しかし、例えばサークリップ又は溝等の、他のいかなる適切なロック機構24も、L字型のブッシュ12をロックするための本発明と共に使用可能である。
【0068】
図を参照して説明された上述の実施形態は、いかなる形でも本発明を制限することを意図していないことを理解されたい。異なる図及び実施形態に関して記された特性は交換可能であり、及び/又は共に使用可能である。
【0069】
本発明の実施形態による平軸受装置7を潤滑するために、当業者にとり既知の従来の潤滑システムを使用可能である。例えば、ヨーロッパ公開特許第1488139号明細書又はヨーロッパ公開特許第1767814号明細書が開示する潤滑システムを、本発明の実施形態による平軸受装置7を潤滑するために使用可能である。好適には、潤滑路及び油溜まりは、平軸受装置7を最良の方法で潤滑可能であるよう設計及び位置させる。
【0070】
本発明の実施形態による遊星歯車ステージ2においては、上述の平軸受装置7は、単一フランジ遊星キャリア、ダブルフランジ遊星キャリア、又はバックプレートを備えた遊星キャリア等の全てのタイプの遊星キャリアと共に使用してよい。そのため、総体的な解決策が提供され、この解決策は1種類の遊星キャリアに限定されず、従って1種類の遊星歯車ステージに限定されない。
【0071】
更に、本発明の実施形態による遊星歯車ステージ2においては、平軸受装置7はどのようなサイズの遊星歯車5と共にも使用可能である。なぜならL字型のブッシュ12は、U字型を形成するために接続される側部において、例えば研磨、又はスペーサ22又は更なるブッシュ23をL字型のブッシュの間に配置するなどして、サイズを容易に調整可能であるためである。
【0072】
更に、平軸受装置7は2つのL字型のブッシュ22を備えるため、L字型のブッシュ12は遊星歯車5の変形により容易に適応可能であり、これにより摩耗が低減し、平軸受装置7の寿命が延びる。
【0073】
第2の態様で本発明は、上記の実施形態で記載した、少なくとも1つの遊星歯車ステージ2を備えるギアボックス1を提供する。本発明の1つの実施形態による遊星歯車ステージ2を備えたギアボックス1は図18に示される。ギアボックス1は1つの遊星歯車ステージ2及び平行型ギアステージ3を備える。平行型ギアステージ3は、低速軸10、中間軸27及び高速軸11を備える。
【0074】
遊星歯車ステージ2はリングギア8、サンギア9及び少なくとも3つの遊星軸6を駆動する遊星キャリア4を備え、各遊星軸6上へは、遊星歯車5が平軸受装置7により回転可能な状態で取り付けられる。遊星キャリア4はダブルフランジ遊星キャリア又はかご形遊星キャリア4であり、2つの壁面4a,4bを有し、その壁面4a,4bの間に遊星歯車5が取り付けられ、これら壁面4a,4bが遊星軸6を遊星歯車5の両側で支承する。
【0075】
L字型のブッシュ12はU字型の断面を形成するために共に取り付けられ、一方の外側で遊星キャリア4の支台15により、他方の外側で遊星軸6のカラー16により軸方向にロックされる。
【0076】
図18の例では、平軸受装置7は、L字型のブッシュ12の径方向の接触面上と遊星歯車5の径方向の接触面上にコーティング17により形成された径方向の滑り支承部17を備える。軸方向の滑り支承部19は、遊星歯車5の軸方向の接触面上に施されたコーティング19により形成される。
【0077】
図18は説明を容易にするためのみを目的としており、いかなる形でも本発明を制限することを意図していないことを理解されたい。上記の実施形態で記載したいかなる他の遊星歯車ステージ2も、図18で示したギアボックス1において使用可能である。また、径方向の滑り支承部17及び軸方向の滑り支承部19は、上記の実施形態で記載したいかなる他の方法で形成してもよい。更に、遊星キャリア4は単一フランジ遊星キャリアとしてもよく、又は、例えばボギープレート等のバックプレートを備えた遊星キャリアとしてもよい。ギアボックス1は2つの遊星歯車ステージ2a,2bを備えてよく、これら遊星歯車ステージ2a,2bの少なくとも1つは、本発明の実施形態による遊星歯車ステージ2とする。更に平行型ギアステージ3は、低速軸10、中間軸27及び高速軸11に替えて、低速軸10及び高速軸11のみを備えてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18