(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上層は、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料であり、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングに対して前記光半透過膜との間でエッチング選択性を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
前記下層は、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングが可能であり、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングが可能である材料で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
前記遮光膜は、前記上層の表層に接して最上層を備え、前記最上層は、タンタルを含有し、ハフニウム、ジルコニウムを実質的に含有しない材料で形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
前記遮光膜の少なくとも上層に前記遮光帯パターンを形成する際に行われるドライエッチングは、前記遮光膜に前記光半透過パターンを形成する際に行われるドライエッチングよりも高バイアス状態で行われることを特徴とする請求項18または19に記載の転写用マスクの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や特許文献2で開示されているような露光光を所定の透過率で透過させるような薄膜(光半透過膜)で転写パターンを形成するタイプの転写用マスクは、光半透過膜の上に遮光膜を積層したマスクブランクを用いて作製される。このマスクブランクから作製される転写用マスクでは、基板上の転写パターンが形成される領域には、遮光パッチ等を形成する必要がある特定領域を除いては、光半透過膜のパターンのみが存在する。一方、所定の光学濃度が必要な外周領域(ブラインドエリア)には、光半透過膜と遮光膜とが積層した状態の層(遮光帯)が存在する。このような構成の転写用マスクを作製する必要があるため、光半透過膜と遮光膜とがそれらの膜の間に他の膜を介さずに積層する構造の場合には、光半透過膜と遮光膜とは互いにエッチング特性の異なる材料で形成する必要がある。
【0009】
前記のようなマスクブランクから転写用マスクを作製する手順としては、以下のとおりである。最初に、遮光膜上に光半透過膜に形成すべきパターンを有する第1のレジストパターンを設ける。次に、第1のレジストパターンをマスクとして、遮光膜をエッチングしてパターンを形成する。次に、第1のレジストパターンを除去する。次に、遮光膜のパターンをマスクとして、光半透過膜をエッチングして
光半透過パターンを形成する。次に、遮光膜上に、遮光膜に形成すべきパターンを有する第2のレジストパターンを設ける。次に、第2のレジストパターンをマスクとして遮光膜をエッチングして
遮光パターン(遮光帯)を形成する。最後に第2のレジストパターンを除去し、所定の洗浄工程を経て、転写用マスクが出来上がる。
【0010】
光半透過膜に形成すべきパターンは、半導体ウェハ上のレジスト膜に露光転写するものであるため、非常に微細なパターンである。しかし、マスクブランクにおける光半透過膜の上には遮光膜が積層しているため、遮光膜に一度、光半透過膜に形成すべきパターンを形成しなければならない。前記のとおり、光半透過膜に対しては、露光光を所定の透過率で透過させること以外の機能を兼ね備えさせる場合が多い。そして、このような特性を光半透過膜に持たせるために、ケイ素を含有する材料や、ケイ素と遷移金属とを含有する材料を適用することが多い。これらの材料からなる光半透過膜に微細パターンを形成する場合、フッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングでパターニングすることが望ましい。
【0011】
フッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングで光半透過膜をパターニングすることを前提として、前記の転写用マスクの作製プロセスを実現するには、遮光膜はフッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングに対して耐性を有する材料である必要がある。それに加え、フッ素系ガス以外のエッチングガスで、光半透過膜に形成すべき微細パターンを遮光膜に形成できることも必要である。また、前記のとおり、
光半透過パターンが形成された領域は、遮光パッチ等を形成する必要がある特定領域を除いて、その直上の遮光膜は全て除去される。このため、遮光膜を除去する際のドライエッチングで用いられるエッチングガスに対して、光半透過膜が十分なエッチング選択性を有するようにすることが望まれる。これらの条件を同時に満たす遮光膜の材料としては、クロムを含有する材料が挙げられ、以前より用いられてきている。クロムを含有する材料からなる遮光膜に微細パターンを形成するために用いられるエッチングガスは、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスである。
【0012】
しかし、一般に使用される有機系材料で形成されるレジスト膜は、酸素ガスのプラズマに対する耐性が、他のガスのプラズマに対する耐性に比べて大幅に低い。このため、クロム系材料の遮光膜を塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスでドライエッチングした場合、レジスト膜の消費量(エッチング中に生じるレジスト膜の減膜量)が多くなる。ドライエッチングによって遮光膜に微細パターンを高い精度で形成するには、遮光膜のパターニング完了時に、所定以上の厚さでレジスト膜が残存している必要がある。しかし、最初にパターンを形成するレジスト膜の膜厚を厚くすると、レジストパターンの断面アスペクト比(パターン線幅に対する膜厚の比率)が大きくなり過ぎるために、レジストパターンが倒壊する現象が発生しやすくなる。
【0013】
クロム系材料以外の材料でもフッ素系ガスを含有するエッチングガスに対して耐性を有する材料は存在する。例えば、タンタル−ハフニウム合金、タンタル−ジルコニウム合金、タンタル−ハフニウム−ジルコニウム合金等(以下、これらをタンタル−ハフニウム合金等という。)の材料で形成された薄膜は、フッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングに対して耐性を有し、酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチングでパターニングが可能である。光半透過膜を形成するケイ素を含有する材料や、ケイ素と遷移金属とを含有する材料は、酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチングに対して比較的耐性がある。しかし、タンタル−ハフニウム合金やタンタル−ジルコニウム合金等の材料は酸化しやすく、酸化が進んでしまうと酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチングのエッチングレートが大きく低下するという問題がある。
【0014】
光半透過膜の上に他の膜を介さずにタンタル−ハフニウム合金等の材料で遮光膜を積層したマスクブランクとした場合、光半透過膜に形成すべきパターンを遮光膜に形成する段階では、遮光膜の酸化が比較的進んでいないため、酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチングで十分にパターニング可能である。しかし、
光半透過パターン上の遮光膜を除去する段階になると、遮光膜の酸化が進んでおり、遮光膜の酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチングに対するエッチングレートが大きく低下している。このような酸化が進んだタンタル−ハフニウム合金等の材料の遮光膜を除去するには、通常よりも高いバイアスを掛けた塩素系ガスによるドライエッチングを行うことが有効である。しかし、この高いバイアスのドライエッチングは、物理的な作用が大きいドライエッチングであるため、遮光膜が除去されたときに露出する
光半透過パターンの表層にダメージを与える恐れがあるという問題がある。光半透過膜が、露光光を所定の透過率で透過させる機能だけでなく、その光半透過膜を透過した露光光に対してその光半透過膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間に所定の位相差を生じさせる機能も兼ね備えた位相シフト膜である場合、表層がダメージを受けることによる影響は特に大きい。
【0015】
このような問題を解決する手段として、光半透過膜と遮光膜との間にクロムを含有する材料からなるエッチングストッパー膜を設けることが考えられる。このようなエッチングストッパー膜を設けた場合、タンタル−ハフニウム合金等の材料からなる遮光膜に光半透過膜に形成すべきパターンを形成した後、遮光膜をマスクとして、エッチングストッパー膜に光半透過膜に形成すべきパターンを形成するドライエッチングのプロセスが入る。このエッチングストッパー膜に対するドライエッチングで用いられるエッチングガスは、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスが用いられる。このドライエッチング時、遮光膜の表面が酸素ガスのプラズマに晒される。このため、クロムを含有する材料からなるエッチングストッパー膜が設けられていない構成の場合よりも、遮光膜を形成するタンタル−ハフニウム合金等の材料の酸化が進むことが避けられない。
【0016】
上記のような酸化が大幅に進んだタンタル−ハフニウム合金等の材料の遮光膜を除去する場合におけるドライエッチングは、より高バイアスの条件で行う必要がある。しかし、この段階で光半透過膜にパターンが形成されている場合、透光部である透光性基板の表面が露出している部分が高バイアスのエッチングに晒されるため、基板の表面がエッチングされる恐れがある。
【0017】
一方、光半透過膜と遮光膜との間に設けられるエッチングストッパー膜に適用可能な材料としてケイ素と酸素を含有する材料が挙げられる。このエッチングストッパー膜の場合、転写用マスクが出来上がる段階で遮光膜が除去されている領域のエッチングストッパー膜は除去せずに残される。このエッチングストッパー膜の場合においても、酸化が大幅に進んだタンタル−ハフニウム合金等の材料の遮光膜を除去する高バイアスのドライエッチングが行われるとき、エッチングストッパー膜がエッチングされる恐れがある。この場合のエッチングストッパー膜は、光半透過膜との積層構造で
光半透過パターンとして機能するものであるため、エッチングストッパー膜がエッチングされてしまうと、光半透過膜とエッチングストッパー膜の積層構造のパターンから所望の光学特性を得られなくなってしまう恐れがある。
【0018】
そこで、本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光半透過膜上に遮光膜が積層したマスクブランクにおいて、光半透過膜に微細パターンを高い精度で形成でき、かつ、光半透過膜のパターン上の遮光膜を除去するドライエッチングによって生じる光半透過膜や透光性基板の表面へのダメージを抑制することが可能なマスクブランクを提供することである。また、このマスクブランクを用いて製造される転写用マスクおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、本発明を完成させたものである。すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
透光性基板の主表面上に光半透過膜と遮光膜とが積層した構造を有するマスクブランクであって、前記光半透過膜は、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料で形成され、前記遮光膜は、下層と上層の積層構造を少なくとも含み、前記下層は、タンタルを含有し、ハフニウム、ジルコニウムおよび酸素を実質的に含有しない材料で形成され、前記上層は、ハフニウムおよびジルコニウムから選ばれる1以上の元素とタンタルとを含有し、かつその表層を除いて酸素を実質的に含有しない材料で形成され、前記光半透過膜と前記下層の間に、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングに対して、前記下層との間でエッチング選択性を有する材料からなるエッチングストッパー膜が設けられていることを特徴とするマスクブランク。
【0020】
(構成2)
前記上層は、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料であり、かつフッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングに対して前記光半透過膜との間でエッチング選択性を有する材料で形成されていることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)
前記下層は、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングが可能であり、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングが可能である材料で形成されていることを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランク。
【0021】
(構成4)
前記下層は、窒素を含有する材料からなることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成5)
前記上層は、その表層を除いて非金属元素を含有しない材料からなることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
【0022】
(構成6)
前記光半透過膜は、ケイ素と窒素とを含有する材料からなることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
前記遮光膜は、前記上層の表層に接して最上層を備え、前記最上層は、タンタルを含有し、ハフニウム、ジルコニウムを実質的に含有しない材料で形成されていることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
【0023】
(構成8)
前記最上層は、窒素を含有する材料からなることを特徴とする構成7記載のマスクブランク。
(構成9)
前記遮光膜の表面に接して有機系材料からなるレジスト膜が設けられていることを特徴とする構成1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
【0024】
(構成10)
前記下層の厚さは、前記上層の厚さよりも厚いことを特徴とする構成1から9のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成11)
前記エッチングストッパー膜は、クロムを含有する材料からなることを特徴とする構成1から10のいずれかに記載のマスクブランク。
【0025】
(構成12)
前記エッチングストッパー膜は、酸素の含有量が20原子%以下である材料で形成されていることを特徴とする構成11記載のマスクブランク。
(構成13)
前記エッチングストッパー膜は、クロムの含有量が55原子%以上である材料で形成されていることを特徴とする構成11または12に記載のマスクブランク。
【0026】
(構成14)
前記エッチングストッパー膜は、厚さが3nm以下10nm以下であることを特徴とする構成11から13のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成15)
前記光半透過膜、前記エッチングストッパー膜および前記遮光膜の積層構造における露光光に対する光学濃度が2.8以上であることを特徴とする構成11から14のいずれかに記載のマスクブランク。
【0027】
(構成16)
前記エッチングストッパー膜は、ケイ素および酸素を含有する材料からなることを特徴とする構成1から10のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成17)
構成1から15のいずれかに記載のマスクブランクの前記光半透過膜に光半透過パターンが形成され、前記エッチングストッパー膜および前記遮光膜に遮光帯パターンが形成されていることを特徴とする転写用マスク。
【0028】
(構成18)
構成16記載のマスクブランクの前記光半透過膜および前記エッチングストッパー膜に光半透過パターンが形成され、前記遮光膜に遮光帯パターンが形成されていることを特徴とする転写用マスク。
【0029】
(構成19)
構成11から15のいずれかに記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記遮光膜上に形成された転写パターンを有する第1のレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングによって前記遮光膜に光半透過パターンを形成する工程と、
前記光半透過パターンを有する前記第1のレジスト膜または前記遮光膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングによって前記エッチングストッパー膜に前記光半透過パターンを形成する工程と、
前記光半透過パターンを有する前記遮光膜または前記エッチングストッパー膜をマスクとし、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングによって前記光半透過膜に前記光半透過パターンを形成する工程と、
前記遮光膜上に形成された遮光帯パターンを有する第2のレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングによって前記遮光膜に遮光帯パターンを形成する工程と、
前記遮光膜上に形成された遮光帯パターンを有する前記第2のレジスト膜または前記遮光膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングによって前記エッチング
ストッパー膜に遮光帯パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【0030】
(構成20)
構成16記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記遮光膜上に形成された転写パターンを有する第1のレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングによって前記遮光膜に光半透過パターンを形成する工程と、
前記光半透過パターンを有する前記第1のレジスト膜または前記遮光膜をマスクとし、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングによって前記エッチングストッパー膜と前記光半透過膜に前記光半透過パターンを形成する工程と、
前記遮光膜上に形成された遮光帯パターンを有する第2のレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングによって前記遮光膜に遮光帯パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【0031】
(構成21)
前記遮光膜の少なくとも上層に前記遮光帯パターンを形成する際に行われるドライエッチングは、前記遮光膜に前記光半透過パターンを形成する際に行われるドライエッチングよりも高バイアス状態で行われることを特徴とする構成19または20に記載の転写用マスクの製造方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、光半透過膜、エッチングストッパー膜および遮光膜の積層構造のマスクブランクにおいて、遮光膜を、タンタルを含有し、ハフニウム、ジルコニウムおよび酸素を実質的に含有しない材料で形成された下層と、ハフニウムおよびジルコニウムから選ばれる1以上の元素とタンタルとを含有し、かつその表層を除いて酸素を含有しない材料で形成された上層の積層構造を少なくとも含む構成とすることにより、エッチングストッパー膜上の遮光膜をドライエッチングで除去するときに、エッチングストッパー膜が消失する恐れがなく、光半透過膜の表層がダメージを受けることも抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の第1の実施形態を詳述する。
本発明の第1の実施形態は、透光性基板の主表面上に光半透過膜と遮光膜とが積層した構造を有するマスクブランクであり、具体的には、上記構成1にあるように、光半透過膜は、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料で形成され、遮光膜は、下層と上層の積層構造を少なくとも含み、下層は、タンタルを含有し、ハフニウム、ジルコニウムおよび酸素を実質的に含有しない材料で形成され、上層は、ハフニウムおよびジルコニウムから選ばれる1以上の元素とタンタルとを含有し、その表層を除いて酸素を実質的に含有しない材料で形成され、光半透過膜と下層の間に、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングに対して、前記下層との間でエッチング選択性を有する材料からなるエッチングストッパー膜が設けられていることを特徴とするものである。
【0035】
前述の通り、光半透過膜の上に、他の膜を介さずにタンタル−ハフニウム合金等の材料で形成される遮光膜を設けた積層構造を有するマスクブランクでは、材料の酸化が進んだ状態の遮光膜に対してパターニングを行う場合、酸素ガスを含有しない塩素系ガスによる高バイアスでのドライエッチングを用いる必要がある。しかし、この高バイアスでのドライエッチングを行うと、光半透過膜の表層をエッチングしてしまう恐れがある。
【0036】
光半透過膜と遮光膜の間に、酸素ガスを含有しない塩素系ガスに対してエッチング耐性を有するエッチングストッパー膜を設けることで解決を図ることが考えられる。しかし、遮光膜の厚さ方向の全体に対するドライエッチングを高バイアスのドライエッチングで行う場合、面内におけるパターンの粗密差によって、先に遮光膜が全てエッチングされて、エッチングストッパー膜が露出する領域が生じることは避けがたい。そして、先にエッチングストッパー膜が露出した領域は、ほかの遮光膜が残存している領域のエッチングが終了するまで、高バイアスのドライエッチングに晒されることになる。これにより、局所的にエッチングストッパー膜が消失してしまう恐れがある。
【0037】
本発明の第1の実施形態では、遮光膜を上層と下層の積層構造を少なくとも含む構成とし、それぞれ異なる材料で形成している。上層は、ハフニウムおよびジルコニウムから選ばれる1以上の元素とタンタルとを含有し、その上層の表層を除いた部分は酸素を実質的に含有しない材料で形成している。このような材料からなる上層は、フッ素系ガスでのドライエッチングに対して高い耐性を有し、塩素系ガスによるドライエッチングによってパターニングされる。しかし、この上層は酸化が進むと、酸素ガスを含有しない塩素系ガスによるドライエッチングによるパターニングが難しくなるため、高バイアスでドライエッチングする必要がある。
【0038】
一方、下層は、タンタルを含有し、ハフニウム、ジルコニウムおよび酸素を実質的に含有しない材料で形成している。このような材料からなる下層は、フッ素系ガスでのドライエッチングに対してエッチングされてしまうが、上層を形成する材料に比べて酸化しにくく、高バイアス状態でない塩素系ガスによるドライエッチングにもパターニングできる。遮光膜をこのような下層と上層の積層構造としたことにより、上層の酸化が進んでいる場合であっても、酸素ガスを含有しない塩素系ガスによる高バイアスのドライエッチングで上層をパターニングし、酸素ガスを含有しない塩素系ガスによる高バイアスではないドライエッチングで下層をパターニングするプロセスを行うことができる。下層に対するドライエッチングは高バイアスではないため、エッチングストッパー膜をエッチングされる現象を低減できる。
【0039】
また、遮光膜の上層と下層の両方を塩素系ガスによる高バイアスのドライエッチングでパターニングする場合においても、本発明の遮光膜の構成は有効に機能する。一般に、薄膜に対してドライエッチングでパターニングを行う場合、面内のパターンの疎密差があることに起因して、パターニングが終了する時期が面内の領域によって異なる。遮光膜における早期にパターニングが終了し、エッチングストッパー膜の表面が露出した領域は、遮光膜の全体でパターニングが終了するまでの間、そのエッチングストッパー膜の表面が高バイアスのドライエッチングに晒されることになる。本発明における遮光膜の下層は、塩素系ガスによる高バイアスのドライエッチングに対するエッチングレートが、遮光膜の上層に比べて大幅に速い。
【0040】
上層の材料で遮光膜の全体を形成した場合よりも、本発明の上層と下層の積層構造の遮光膜の方が、塩素系ガスによる高バイアスのドライエッチングに対するエッチングレートが速くなる。すなわち、本発明の遮光膜の場合、その遮光膜のパターニングが早期に終了し、エッチングストッパー膜の表面が露出した領域は、遮光膜の全体でパターニングが完了するまでの間、そのエッチングストッパー膜の表面が高バイアスのドライエッチングに晒される時間が短くなる。このため、本発明における遮光膜の上層と下層の両方に対して塩素系ガスによる高バイアスのドライエッチングでパターニングする場合においても、エッチングストッパー膜がその塩素系ガスによる高バイアスのドライエッチングでエッチングされる現象を低減することができる。
【0041】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマスクブランクの層構成を示す断面図である。
図1に示す本発明のマスクブランク100は、透光性基板1上に、光半透過膜2、エッチングストッパー膜3および遮光膜4が順に積層された構造である。また、遮光膜4は、下層41と上層42が積層された構造を備える。
【0042】
上記透光性基板1としては、使用する露光波長に対して透明性を有するものであれば特に制限されない。本発明では、合成石英ガラス基板、その他各種のガラス基板(例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等)を用いることができる。半導体装置のパターンを微細化するに当たっては、光半透過膜に形成されるマスクパターンの微細化に加え、半導体装置製造の際のフォトリソグラフィーで使用される露光光源波長の短波長化が必要となる。半導体装置製造の際の露光光源としては、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。各種ガラス基板の中でも特に合成石英ガラス基板は、ArFエキシマレーザーまたはそれよりも短波長の領域で透明性が高いので、高精細の転写パターン形成に用いられる本発明のマスクブランクの基板として好適である。
【0043】
上記光半透過膜2は、フッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングが可能な材料で形成される。光半透過膜2は、露光光を所定の透過率で透過させる機能を有する膜である。光半透過膜2は、露光光に対する透過率が1%以上であることが好ましい。光半透過膜2は、ハーフトーン型位相シフトマスクに用いられる位相シフト膜やエンハンサー型位相シフトマスクに用いられる光半透過膜であることが好ましい。
【0044】
ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜(位相シフト膜)2は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものであって、所定の位相差(例えば180度)を有するものである。この光半透過膜2をパターニングした光半透過部と、光半透過膜2が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部とによって、光半透過部を透過して光の位相が光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係になるようにすることによって、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回り込んだ光が互いに打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト即ち解像度を向上させるものである。
【0045】
一方、エンハンサー型位相シフトマスク用のマスクブランクの光半透過膜2は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものではあるが、透過する露光光に生じさせる位相差が小さい膜(例えば、位相差が30度以下。好ましくは0度。)であり、この点が、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜とは異なる。
【0046】
光半透過膜2は、ケイ素と窒素とを含有する材料からなることが好ましい。また、光半透過膜2は、ケイ素、遷移金属および窒素を含有する材料からなることが好ましい。この場合の遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)およびパラジウム(Pd)等のうちいずれか1つ以上の金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。光半透過膜2の材料には、前記の元素に加え、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)およびホウ素(B)等の元素が含まれてもよい。また、光半透過膜2の材料には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の不活性ガスが含まれてもよい。
【0047】
これらの材料は、フッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングに対するエッチングレートが速く、光半透過膜2に求められる諸特性を得られやすい。特に、これらの材料は、光半透過膜2を透過する露光光の位相を厳密に制御する必要がある位相シフト膜や、位相遅延膜と位相進行膜が積層した構造を有するエンハンサー型位相シフトマスク用の光半透過膜2を形成する材料として望ましい。光半透過膜2がハーフトーン型位相シフト膜や半透明積層膜の場合、膜中の遷移金属(M)の含有量[at%(原子%)]を、遷移金属(M)とケイ素(Si)との合計含有量[at%]で除して算出した百分率[%](以下、M/M+Si比率という。)が、35%以下であることが好ましく、25%以下であるとより好ましく、20%以下であるとさらに好ましい。遷移金属は、ケイ素に比べて消衰係数は高いが、屈折率も高い元素である。第1の膜を形成する材料の屈折率が高すぎると、膜厚変動による位相の変化量が大きくなり、位相と透過率との両方を制御することが難しくなる。
【0048】
遮光膜4の下層41は、タンタルを含有し、ハフニウム、ジルコニウムおよび酸素を実質的に含有しない材料で形成される。また、下層41は、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料であるだけでなく、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングも可能な材料であることが好ましい。このような特性を満たす材料としては、タンタル金属からなる材料、タンタルとホウ素からなる材料、タンタルと炭素からなる材料、タンタルとホウ素と炭素からなる材料、およびこれらの材料に酸素以外の非金属元素を含有した材料などが挙げられる。下層41の材料には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の不活性ガスが含まれてもよい。
【0049】
下層41の材料には、窒素を含有させることが好ましい。タンタルに窒素を含有させることにより、窒素を含有していないタンタルの場合に比べて酸化を抑制することができる。一方、下層41の材料中における窒素の含有量が多くなるに従い、材料の光学濃度が低下することが避けられない。これらの点を考慮すると、下層41の材料中における窒素の含有量は、30at%以下であることが好ましく、20at%以下であるとより好ましく、10at%以下であるとさらに好ましい。
【0050】
下層41は、上層42とは異なるドライエッチング特性を持たせる必要があることから、ハフニウムおよびジルコニウムを実質的に含有しない材料であることが求められる。このハフニウムおよびジルコニウムを実質的に含有しない材料は、材料中のハフニウムおよびジルコニウムの合計含有量が少なくとも5at%以下であることが必要とされ、3at%以下であると好ましく、組成分析における検出下限値以下であるとより好ましい。また、下層41は、酸素を実質的に含有しない材料であることが求められる。この酸素を実質的に含有しない材料は、材料中の酸素の含有量が少なくとも5at%以下であることが必要とされ、3at%以下であると好ましく、組成分析における検出下限値以下であるとより好ましい。
【0051】
遮光膜4の上層42は、ハフニウム(Hf)およびジルコニウム(Zr)から選ばれる1以上の元素とタンタル(Ta)とを含有し、かつその表層を除いて実質的に酸素を含有しない材料で形成される。また、上層42は、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料であり、かつフッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングに対して前記光半透過膜2との間でエッチング選択性を有する材料で形成されていることが好ましい。このような特性を満たす材料としては、タンタル−ハフニウム合金、タンタル−ジルコニウム合金、タンタル−ハフニウム−ジルコニウム合金、またはこれらの合金の酸素以外の元素を含有する化合物が挙げられる。上層42の材料には、炭素(C)およびホウ素(B)のほか、酸素以外の非金属元素が含まれてもよい。また、上層42の材料には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の不活性ガスが含まれてもよい。
【0052】
タンタル−ハフニウム合金等の材料からなる上層42は、酸素を含有していない場合、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングによって微細なパターンを形成することが可能となるだけのエッチングレートを得ることができる。タンタル−ハフニウム合金等の材料は、材料中の酸素含有量が多くなるにつれ、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスに対するエッチングレートが大幅に低下していく特性を有する。上層42の表層(膜の表面から5nm以下程度の深さまでの範囲)で酸化が進んでいたとしても、表層に対しては物理的なエッチング作用を利用することで上層42に微細パターンを形成することは可能である。しかし、上層42の全体で酸化が進んでしまっていると、微細パターンを形成することが困難になる。このため、上層42は、酸化することが避けがたい表層を除いて酸素を実質的に含有しない材料で形成することが好ましい。ここでいう、酸素を実質的に含有しない材料とは、酸素を全く含有しない材料だけに限らず、上層42のスパッタ成膜時にコンタミの影響等で混入してしまう程度の酸素が含有された材料(酸素含有量が5at%以下の材料)までは含まれるものとする。
【0053】
上層42を形成する材料は、前記のエッチング特性を有する必要がある。タンタル−ハフニウム合金等の材料がこのようなエッチング特性を有するようにするには、材料中のハフニウムおよびジルコニウムの合計含有量[原子%]を、タンタル、ハフニウムおよびジルコニウムの合計含有量[原子%]で除した比率の百分率(以下、[Hf+Zr]/[Ta+Hf+Zr]比率という。)が10%以上である材料とすることが望まれる。タンタルは、酸素を含有しない塩素系ガスに対してドライエッチング可能なだけでなく、フッ素系ガスを含有するエッチングガスに対してもドライエッチング可能であり、タンタルのみでは、フッ素系ガスを含有するエッチングガスに対するエッチング耐性が確保できない。[Hf+Zr]/[Ta+Hf+Zr]比率が10%未満であると、フッ素系ガスを含有するエッチングガスに対する耐性が低下し、光半透過膜2に転写パターンを形成するときのフッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングの際にエッチングマスクとして機能することが困難になる。一方、転写用マスクを洗浄する際の洗浄液に対する耐性の点を考慮すると、タンタルの含有比率を高めた方がよく、上層42の[Hf+Zr]/[Ta+Hf+Zr]比率は50%以下であることが好ましい。
【0054】
遮光膜4は、上層42のみが光半透過膜2に微細な転写パターンを形成するドライエッチング時にエッチングマスクとして機能する。上層42を形成する材料は、タンタル−ハフニウム合金等の酸化が進むと、高バイアスのドライエッチングでパターニングする必要がある。高バイアスでのドライエッチング時は、面内のパターンの粗密差等の要因によるエッチングレート差が大きくなる傾向がある。このため、遮光膜4の全体をエッチングするのに要する時間に対する、高バイアスでドライエッチングを行う時間の比率は小さい方が望ましい。
【0055】
また、前記のとおり、遮光膜4の上層42と下層41の両方を塩素系ガスによる高バイアスのドライエッチングでパターニングする場合においても、遮光膜4の全体におけるエッチングレートが速くなるほど、エッチングストッパー膜3がその塩素系ガスによる高バイアスのドライエッチングでエッチングされる現象を低減することができる。これらの点を考慮すると、遮光膜4の下層41の厚さは、上層42の厚さよりも厚いことが好ましい。
【0056】
上層42の厚さは、光半透過膜に微細な転写パターンを形成するドライエッチング時にエッチングマスクとして機能させるためには、3nm以上であることが好ましく、5nm以上であるとより好ましく、7nm以上であるとさらに好ましい。また、上層42の厚さは、高バイアスでのドライエッチングの時間を短くするためには、20nm以下であることが好ましく、15nm以下であるとより好ましく、10nm以下であるとさらに好ましい。
【0057】
遮光膜4の全体の厚さに対する上層42の比率は、1/10以上であることが好ましく、1/5以上であるとより好ましく、1/4以上であるとさらに好ましい。遮光膜4の全体の厚さに対する上層42の比率は、2/3以下であることが好ましく、1/2以下であるとより好ましく、1/3以下であるとさらに好ましい。
【0058】
本発明のマスクブランクは、光半透過膜2、エッチングストッパー膜3および遮光膜4の積層構造における露光光に対する光学濃度(OD)が2.8以上であることが必要とされており、3.0以上であると好ましい。また、この露光光には、ArFエキシマレーザー(波長:193nm)が適用されることが好ましい。上記の積層構造(積層膜)における各膜に求められる機能を考慮すると、遮光膜4がより高い光学濃度を有することが望まれる。遮光膜4に高い光学濃度を持たせる最も単純な方法は、膜厚を厚くすることである。
【0059】
遮光膜4は、上層42のみが光半透過膜2に微細な転写パターンを形成するドライエッチング時にエッチングマスクとして機能する。しかし、遮光膜4は下層41と上層42の積層構造を有しているため、遮光膜4の全体で形成されるパターンをエッチングマスクとして、光半透過膜2をドライエッチングすることになる。微細な転写パターンを光半透過膜2に精度よく形成するために、遮光膜4の全体における厚さは極力薄いことが望まれている。上記のとおり、下層41には材料の酸化を抑制するために窒素を含有させることが好ましいとされており、下層41の材料自体の光学濃度を高めることには限界がある。
【0060】
一方、上層42は、酸素を実質的に含有しないことが望ましく、材料自体の光学濃度を下げる方向に機能する非金属元素を含有させる必要性は特にない。このため、上層42は、光学濃度を低下させる非金属元素を含有しない材料で形成することが好ましい。この観点においては、上層42を形成する材料として、タンタル−ハフニウム合金、タンタル−ジルコニウム合金、タンタル−ハフニウム−ジルコニウム合金から選ばれる材料を適用することが好ましい。遮光膜4は、全体の厚さが40nm以下であることが好ましく、35nm以下であるとより好ましい。
【0061】
エッチングストッパー膜3は、転写用マスクの製造工程(詳しくは後で説明する)において、光半透過膜2に光半透過パターンが形成された後、光半透過パターン上に残る遮光膜を除去し、かつ遮光パターン(遮光帯等のパターン)を形成するために行われる酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチング時に、光半透過膜2がエッチングされてしまうことを防止する機能を有する必要がある。この第1の実施形態におけるエッチングストッパー膜3は、転写用マスクが完成したときに、光半透過パターンが形成された光半透過膜2上からエッチングストッパー膜3が除去されるものである。このため、エッチングストッパー膜3に対して行われるドライエッチングに用いられるエッチングガスは、光半透過膜2がエッチング耐性を有するものである必要がある。このため、エッチングストッパー膜3には、クロムを主成分とする材料が適用される。
【0062】
転写用マスクの製造工程において、遮光膜4はドライエッチングで2回パターニングされる。1回目のドライエッチングは、光半透過膜2に形成すべき転写パターン(光半透過パターン)を遮光膜4に形成する際に行われる。2回目のドライエッチングは、遮光膜4に形成すべきパターン(遮光帯等のパターン)を遮光膜4に形成する際に行われる。遮光膜4の上層42および下層41のいずれのドライエッチングも、塩素系ガスを含有し、酸素ガスを含有しないエッチングガスが用いられる。1回目のドライエッチングの段階では、上層42は表層以外では酸化がほとんど進行しておらず、物理的な作用がさほど強くない傾向である通常のエッチングバイアスで、上層42にパターンを形成することが十分に可能である。しかし、2回目のドライエッチングの段階では、その前段階のプロセスで行われる洗浄等の各処理によって、上層42の酸化が進んでしまっており、物理的な作用が強い傾向である高いエッチングバイアス(高バイアス状態)でドライエッチングを行わなければ、上層42にパターンを形成することが難しい。
【0063】
2回目のドライエッチングの段階では、上層42に対しては高バイアスでのドライエッチングでパターニングを行う必要があるが、下層41に対しては通常のバイアスでのドライエッチングでもパターニングは可能である。しかし、遮光膜4に対する塩素系ガスを含有し、酸素ガスを含有しないエッチングガスによるドライエッチングにおいて、高バイアス状態にして上層42をパターニングし、途中で通常のバイアス状態に変更して下層41をパターニングすることは可能ではあるが、パターンの粗密差が大きい場合など制御が容易ではない場合がある。
【0064】
クロムを含有する材料からなるエッチングストッパー膜3の場合、塩素系ガスを含有し、酸素ガスを含有しないエッチングガスによる高バイアス状態でのドライエッチングへの耐性を考慮することが望ましい。そこで、表1に示すクロム系材料のサンプル膜7種類について、塩素系ガス(Cl
2)をエッチングガスに用いた高バイアス状態でのドライエッチングを行い、各サンプル膜のエッチングレートを確認する実験を行った。各サンプル膜の塩素系ガス(Cl
2)に対するエッチングレートを
図2に示す。なお、この実験でのエッチングバイアスは、50Wとした。
【0066】
また、
図2の結果では、クロム系材料膜中の酸素含有量が20%よりも大きくなると、高バイアス状態での塩素系ガスに対するエッチングレートの上昇度合いが高くなり、また、エッチングレート自体も6.0nm/分以上と高くなることがわかる。酸化が進んでしまったタンタル−ハフニウム合金等の材料からなる遮光膜4に対してドライエッチングを行う際、面内において早期に遮光膜4が除去されてエッチングストッパー膜3が露出した領域は、遮光膜4のパターニングが完了するまで高バイアス状態の、酸素を含有しない塩素系ガスに晒され続ける。酸素を含有しない塩素系ガスを用いた高バイアス状態でのドライエッチングに対する耐性が低いと、その領域のエッチングストッパー膜3が消失してしまう。その結果、その直下の光半透過膜2の表層が高バイアス状態の酸素を含有しない塩素系ガスに晒されてダメージを受けてしまう。
図2の実験結果等を検討した結果、エッチングストッパー膜3を形成するクロム系材料膜中の酸素含有量は20原子%以下であることが好ましいという結論に至った。
【0067】
また、クロム系材料膜中の酸素含有量ほど顕著ではないが、高バイアス状態のドライエッチングは物理的な作用の傾向が強いため、クロム系材料膜中の金属成分であるクロム含有量によって、酸素を含有しない塩素系ガスを用いた高バイアス状態でのドライエッチングに対する耐性が変わる。
図2の結果等を考慮すると、エッチングストッパー膜3を形成するクロム系材料膜中のクロム含有量は55原子%以上であることが好ましい。
【0068】
エッチングストッパー膜3を形成するクロムを含有する材料は、遮光膜4の上層42を形成するタンタル−ハフニウム合金等の材料や下層41を形成するタンタルを含有し、ハフニウム、ジルコニウムおよび酸素を実質的に含有しない材料に比べて、露光光に対する光学濃度が低い傾向がある。この第1の実施形態におけるマスクブランクから作製される転写用マスクは、エッチングストッパー膜3と遮光膜4との積層構造で遮光帯を形成する。このため、エッチングストッパー膜3と遮光膜4との積層構造で所定の光学濃度を確保する必要がある。エッチングストッパー膜3と遮光膜4との積層構造で所定の光学濃度をより薄い合計膜厚で実現するには、エッチングストッパー膜3の厚さは極力薄くすることが望まれる。他方、酸素を含有しない塩素系ガスを用いた高バイアス状態でのドライエッチングに対して光半透過膜2を保護する観点を考慮すると、エッチングストッパー膜3の膜厚は厚いほど望ましいといえる。これらの点を総合的に考慮すると、エッチングストッパー膜3の厚さは、8nm以下であることが好ましい。また、エッチングストッパー膜3の厚さは、3nm以上であることがより好ましい。エッチングストッパー膜3の厚さは、5nm以上7nm以下であるとさらに好ましい。
【0069】
遮光膜4は、下層41と上層42の積層構造に加え、上層42の表層に接して最上層を設けた構成としてもよい。この最上層は、タンタルを含有し、ハフニウムおよびジルコニウムを実質的に含有しない材料で形成されていることが好ましい。最上層を設けることによって、上層42の表層の酸化を抑制できる。最上層の厚さは、上層42の表層の酸化を抑制するためには少なくとも3nm以上であることが求められ、4nm以上であると好ましい。また、最上層の厚さは、10nm以下であることが好ましく、8nm以下であるとより好ましい。
【0070】
最上層は、遮光膜4の最表面側の層となるため、最上層をスパッタ成膜法等で形成する段階では、酸素を含有させないことが好ましい。最上層は、その形成時に酸素を含有させない方法で形成しても、大気中に出すとその表層側から酸化が進んでいく。このため、最上層を含む遮光膜4に微細な転写パターンを形成するドライエッチングに酸素ガスを含有しない塩素系ガスを適用する場合、少なくとも最上層に対しては高バイアスの条件で行う必要がある。よって、最上層を設けた場合であっても、上層42の表層が酸化している場合と同様のエッチングストッパー膜3等の条件を満たすことが望まれる。
【0071】
遮光膜4に最上層が設けられる場合、上層42の表層は酸化していないことが好ましい。例えば、下層41、上層42、最上層の順にスパッタ成膜し、その間、透光性基板1を一度も大気中に出さないようにすることで上層42の表層の酸化を抑制することができる。
【0072】
透光性基板1上に、光半透過膜2、エッチングストッパー膜3、および遮光膜4を成膜する方法としては、例えばスパッタ成膜法が好ましく挙げられるが、本発明ではスパッタ成膜法に限定する必要はない。
【0073】
本発明の第1の実施形態は、前記の第1の実施形態に係るマスクブランクの光半透過膜に光半透過パターンが形成され、エッチングマスク膜と遮光膜に遮光帯パターンが形成された転写用マスクやその転写用マスクの製造方法についても提供するものである。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る転写用マスクの製造工程を示す断面図である。
図3に示す製造工程に従って、第1の実施形態に係る転写用マスクの製造方法を説明する。ここで使用するマスクブランク100(
図3(a)参照)の構成の詳細は上述したとおりである。
【0074】
まず、上記マスクブランク100の上層42の表面に接して、有機系材料からなる第1のレジスト膜5を形成する(
図3(a)参照)。次に、このマスクブランク100上に形成した第1のレジスト膜5に対して、光半透過膜2に形成すべき所望の光半透過パターン(転写パターン)のパターン描画を行い、描画後、現像処理を行うことにより、所望の光半透過パターンを有する第1のレジストパターン5aを形成する(
図3(b)参照)。次いで、この光半透過パターンを有する第1のレジストパターン5aをマスクとしたドライエッチングによって、光半透過パターンを有する上層42aと下層41aの積層構造からなる遮光膜4aを形成する(
図3(c)参照)。
【0075】
本発明のタンタル−ハフニウム合金等の材料からなる上層42および下層41に対しては、塩素系ガスを含有し、酸素ガスを含有しないエッチングガスを用い、物理的な作用がさほど強くない傾向である通常のエッチングバイアスでのドライエッチングが行われるのが好適である。上層42および下層41のドライエッチングに用いる塩素系ガスとしては、例えば、Cl
2、SiCl
4、CHCl
3、CH
2Cl
2、CCl
4およびBCl
3などが挙げられる。遮光膜4に光半透過パターンを形成した後、残存する第1のレジストパターン5aは除去される。この第1のレジストパターン5aの除去は、酸素プラズマによるアッシング処理で行われる場合が多い。また、アッシング処理後、洗浄処理が行われる。これらの処理によって、上層42aの酸化が進むことは避けられない。
【0076】
次に、光半透過パターンが形成された遮光膜4aをマスクとしたドライエッチングによって、光半透過パターンを有するエッチングストッパー膜3aを形成する(
図3(d)参照)。このドライエッチングでは、エッチングガスとして塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いる。塩素系ガスについては、前記の上層42等で用いたものが適用可能である。このエッチングストッパー膜3に対するドライエッチング時に、上層42aに対しても酸素プラズマが当たるため、この処理によって上層42aの酸化がさらに進んでしまう。
【0077】
次いで、光半透過パターンが形成された遮光膜4a(上層42a)をマスクとしたドライエッチングによって、光半透過パターンを有する光半透過膜(光半透過パターン)2aを形成する(
図3(e)参照)。このドライエッチングでは、エッチングガスとして、例えば、SF
6、CHF
3、CF
4、C
2F
6、C
4F
8などのフッ素系ガスを含有するエッチングガスを用いる。フッ素系ガスの中でも、SF
6は透光性基板1とのエッチング選択性が比較的高く、好ましい。
【0078】
次に、遮光膜4a上に
第2のレジスト膜を形成し、この
第2のレジスト膜に対して、遮光膜4に形成すべき所望の遮光帯パターン(転写パターン)のパターン描画を行い、描画後、現像処理を行うことにより、所望の遮光帯パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成する(
図3(f)参照)。次いで、遮光帯パターンを有する第2のレジストパターン
6bをマスクとしたドライエッチングによって、遮光帯パターンを有する遮光膜4bを形成する(
図3(g)参照)。
【0079】
このドライエッチングでは、使用されるエッチングガス自体は、上層42と下層41に光半透過パターンを形成するときに用いたものと同じく塩素系ガスである。しかし、この段階での上層42aは、材料の酸化が相当進んでおり、上層42に光半透過パターンを形成するときのドライエッチングでのエッチングバイアスではエッチングレートが大幅に遅く、遮光帯パターンを精度よく形成することは難しい。このため、この上層42aに遮光帯パターンを形成するときのドライエッチングでのエッチングバイアスは、上層42に光半透過パターンを形成するときのドライエッチングでのエッチングバイアスよりも大幅に高い状態で行われる。
【0080】
なお、下層41aについては、材料の酸化が全く進んでいないわけではないが、エッチングレートの低下度合いは、上層42aの場合よりも小さい。このため、下層41aに遮光帯パターンを形成するときのドライエッチングでのエッチングバイアスは、下層41に光半透過パターンを形成するときのドライエッチングでのエッチングバイアスと同程度であってもよい。この上層42aおよび下層41aへのドライエッチング時、光半透過パターンを有する光半透過膜2aの表面は、エッチングストッパー膜3aによって保護される。なお、遮光膜4aに遮光帯パターンを形成された後、残存する第2のレジストパターン6bは除去される。
【0081】
次に、遮光帯パターンが形成された遮光膜4bをマスクとしたドライエッチングによって、遮光帯パターンを有するエッチングストッパー膜3bを形成する。この第1の実施形態の転写用マスクでは、エッチングストッパー膜3bと遮光膜4bとの積層構造で遮光帯が形成される。その後、所定の洗浄を施すことで、転写用マスク200が得られる(
図3(h)参照)。
【0082】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態における転写用マスクは、本発明の第1の実施形態におけるマスクブランクの光半透過膜に光半透過パターンが形成され、エッチングストッパー膜および遮光膜に遮光帯パターンが形成されていることを特徴とするものである。
【0083】
すなわち、第1の実施形態における転写用マスクは、透光性基板の主表面上に光半透過パターンと遮光帯パターンとが積層した構造を有する転写用マスクである。光半透過パターンは、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチング可能な材料で形成されている。遮光帯パターンは、遮光帯のパターンを有する
遮光パターンと、光半透過パターンと
遮光パターンとの間に設けられ、遮光帯のパターンを有するエッチングストッパー膜パターンの積層構造からなる。
遮光パターンは、下層と上層の積層構造からなる。下層は、タンタルを含有し、ハフニウム、ジルコニウムおよび酸素を実質的に含有しない材料からなる。上層は、ハフニウムおよびジルコニウムから選ばれる1以上の元素とタンタルとを含有し、かつその表層を除いて酸素を含有しない材料からなる。そして、エッチングストッパー膜パターンは、クロムを含有する材料で形成されている。
【0084】
次に、本発明の第2の実施形態を詳述する。
本発明の第2の実施形態は、透光性基板1の主表面上に光半透過膜2と遮光膜4とが積層した構造を有するマスクブランクであり、エッチングストッパー膜3を除き、第1の実施形態のマスクブランクと同様の構成を有する。この第2の実施形態のマスクブランクは、エッチングストッパー膜3が、ケイ素および酸素を含有する材料で形成されている点が、第1の実施形態のマスクブランクとは異なる。このケイ素および酸素を含有する材料で形成されるエッチングストッパー膜3は、下層41のパターニングする際に行われる塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングに対し、下層41との間でエッチング選択性を有する。
【0085】
この第2の実施形態のマスクブランクにおけるエッチングストッパー膜3は、このマスクブランクから転写用マスクを作製したときに、光半透過パターンが形成された光半透過膜2上にエッチングストッパー膜3が残される。このため、第1の実施形態のエッチングストッパー膜3のように、エッチングストッパー膜3と光半透過膜2との間でのエッチング選択性を確保する必要がない。この第2の実施形態のエッチングストッパー膜3は、転写用マスクの完成時に光半透過膜2との積層構造で光半透過パターンを構成する。これらのことから、エッチングストッパー膜3を形成する材料は、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングに対し、下層41との間でエッチング選択性を有すること、光半透過パターンを構成する1層として機能することの2つの条件を同時に満たすものを選定する必要がある。
【0086】
これらの条件を同時に満たす材料としては、ケイ素と酸素を含有する材料が挙げられる。ケイ素と酸素を含有する材料は、露光光に対する透過率が比較的高く、位相シフト量も比較的小さく、光半透過膜2との積層構造からなる光半透過パターンの光学特性に与える影響が比較的小さい。エッチングストッパー膜3を形成する材料は、金属を含有していないことが好ましい。金属を含有する材料でエッチングストッパー膜3を形成すると、光半透過パターンの光学特性に与える影響が大きくなるためである。この実施の形態2におけるエッチングストッパー膜3に好適な材料としては、ケイ素と、酸素、窒素、炭素、水素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1以上の元素とからなる材料が挙げられる。これらの材料の中でも、ケイ素と酸素とからなる材料や、ケイ素と酸素と窒素とからなる材料が特に好ましい。
【0087】
本発明の第2の実施形態のマスクブランクにおいても、遮光膜4は、下層41と上層42の積層構造に加え、上層42の表層に接して最上層を設けた構成としてもよい。最上層に関するその他の事項については、第1の実施形態の場合と同様である。
【0088】
本発明の第2の実施形態は、前記の第2の実施形態に係るマスクブランクの光半透過膜およびエッチングストッパー膜に光半透過パターンが形成され、遮光膜に遮光帯パターンが形成された転写用マスクやその転写用マスクの製造方法についても提供するものである。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る転写用マスクの製造工程を示す断面図である。
図4に示す製造工程に従って、第2の実施形態に係る転写用マスクの製造方法を説明する。ここで使用するマスクブランク100(
図4(a)参照)の構成の詳細は上述したとおりである。
【0089】
まず、上記マスクブランク100の上層42の表面に接して、有機系材料からなる第1のレジスト膜5を形成する(
図4(a)参照)。次に、このマスクブランク100上に形成した第1のレジスト膜5に対して、光半透過膜2に形成すべき所望の光半透過パターン(転写パターン)のパターン描画を行い、描画後、現像処理を行うことにより、所望の光半透過パターンを有する第1のレジストパターン5aを形成する(
図4(b)参照)。次いで、この光半透過パターンを有する第1のレジストパターン5aをマスクとしたドライエッチングによって、光半透過パターンを有する上層42aと下層41aの積層構造からなる遮光膜4aを形成する(
図4(c)参照)。このドライエッチングにおけるエッチングガス等のエッチング条件については、第1の実施形態の転写用マスクの製造方法と同様である。
【0090】
次に、光半透過パターンが形成された遮光膜4a(上層42a)をマスクとしたドライエッチングをエッチングストッパー膜3と光半透過膜2に対して行う。これにより、光半透過パターンを有するエッチングストッパー膜3aと光半透過膜2aが形成される(
図4(d)参照)。このドライエッチングでは、第1の実施形態の転写用マスクの製造方法で光半透過膜2のドライエッチングで使用したエッチングガスが用いられる。
【0091】
次に、遮光膜4a上に
第2のレジスト膜を形成し、この
第2のレジスト膜に対して、遮光膜4に形成すべき所望の遮光帯パターン(転写パターン)のパターン描画を行い、描画後、現像処理を行うことにより、所望の遮光帯パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成する(
図4(e)参照)。次いで、遮光帯パターンを有する第2のレジストパターン
6bをマスクとしたドライエッチングによって、遮光帯パターンを有する遮光膜4bを形成する(
図4(f)参照)。このドライエッチングは、第1の実施形態の転写用マスクの製造方法で、遮光帯パターンを生成したときの場合と同様である。
【0092】
次に、残存する第2のレジストパターン6bを除去する。この第2の実施形態の転写用マスクでは、遮光膜4bのみで遮光帯が形成される。その後、所定の洗浄を施すことで、転写用マスク200が得られる(
図4(f)参照)。
【0093】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態における転写用マスクは、本発明の第2の実施形態におけるマスクブランクの光半透過膜およびエッチングストッパー膜に光半透過パターンが形成され、遮光膜に遮光帯パターンが形成されていることを特徴とするものである。
【0094】
すなわち、第2の実施形態における転写用マスクは、透光性基板の主表面上に光半透過パターンと遮光帯パターンとが積層した構造を有する転写用マスクである。光半透過パターンは、
光半透過パターンとエッチングストッパー膜パターンとの積層構造からなる。光半透過膜は、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチング可能な材料で形成されている。エッチングストッパー膜パターンは、ケイ素および酸素を含有する材料で形成されている。遮光帯パターンは、遮光帯のパターンを有する
遮光パターンからなる。
遮光パターンは、下層と上層の積層構造からなる。下層は、タンタルを含有し、ハフニウム、ジルコニウムおよび酸素を実質的に含有しない材料からなる。上層は、ハフニウムおよびジルコニウムから選ばれる1以上の元素とタンタルとを含有し、かつその表層を除いて酸素を含有しない材料からなる。
【0095】
次に、本発明の第3の実施形態を詳述する。
本発明の第3の実施形態は、第1の実施形態または第2の実施形態のマスクブランクにおける遮光膜4の上層42の上(最上層を有する構成の場合には、最上層の上)にハードマスク膜7を備えた構成とした点が、第1の実施形態および第2の実施形態のマスクブランクとは異なる(
図5(a)参照)。
【0096】
すなわち、本発明の第3の実施形態は、透光性基板1の主表面上に光半透過膜2、遮光膜4およびハードマスク膜7が積層した構造を有するマスクブランク101であり、具体的には、光半透過膜2は、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料で形成されている。また、遮光膜4は、下層41と上層42の積層構造を少なくとも含み、下層41は、タンタルを含有し、ハフニウム、ジルコニウムおよび酸素を実質的に含有しない材料で形成され、上層42は、ハフニウムおよびジルコニウムから選ばれる1以上の元素とタンタルとを含有し、その表層を除いて酸素を実質的に含有しない材料で形成されている。そして、光半透過膜2と下層41の間に、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングに対して、前記下層41との間でエッチング選択性を有する材料からなるエッチングストッパー膜3が設けられている。
【0097】
このハードマスク膜7は、フッ素系ガスによるドライエッチングによってパターニングが可能な材料であるが、塩素系ガスによるドライエッチングに対しては高い耐性を有する。すなわち、ハードマスク膜7は、遮光膜4にパターンを形成するときにエッチングマスクとして機能する。ハードマスク膜7は、遮光膜4をパターニングする際に行われる塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングに対し、遮光膜4との間でエッチング選択性を有する材料で形成されている。ハードマスク膜7は、ケイ素と酸素を含有する材料で形成されていることが好ましい。
【0098】
レジスト膜5は、酸素を含有しない塩素系ガスやフッ素系ガスによるドライエッチングによっても減膜する。また、その減膜は、レジストパターンの上面からだけでなく、パターン側壁からも進む(これをサイドエッチングという。)。レジスト膜5に形成するパターンの幅は、このサイドエッチングによる線幅の減少量を予め見込んで広く形成される。この実際に遮光膜4やハードマスク膜7に形成すべきパターンの線幅とレジスト膜に形成するパターンの線幅との差をエッチングバイアスという。遮光膜4よりハードマスク膜7の方が厚さを薄くすることができるため、微細な転写パターンを形成するためのドライエッチングの時間が短くできる。すなわち、ケイ素と酸素を含有する材料からなるハードマスク膜7を遮光膜4の上に設けることによって、レジスト膜に形成するパターンのエッチングバイアスを小さくすることができる。
【0099】
ハードマスク膜7を設けることによって、遮光膜4の表層の酸化を抑制できる。ハードマスク膜7の厚さは、少なくとも3nm以上であることが求められ、4nm以上であると好ましい。ハードマスク膜7の厚さは、15nm以下であることが求められ、10nm以下であると好ましく、8nm以下であるとより好ましい。ハードマスク膜7は、ケイ素と酸素を含有するとともに、窒素、炭素、水素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成されることが好ましい。ハードマスク膜7は、ケイ素と酸素とからなる材料や、ケイ素と酸素と窒素とからなる材料で形成されると特に好ましい。
【0100】
ハードマスク膜7は、光半透過膜2に微細なパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスを用いるドライエッチングのときに消失する。このため、光半透過膜2をパターニングした後の洗浄処理等によって遮光膜4はその表層側から酸化が進んでいく。このため、遮光膜4に遮光帯のパターンを形成する際に行う酸素ガスを含有しない塩素系ガスによるドライエッチングは、高バイアスの条件で行う必要がある。よって、ハードマスク膜7を設けた場合であっても、遮光膜4の上層42が酸化している場合と同様のエッチングストッパー膜3等の条件を満たすことが望まれる。
【0101】
遮光膜4上にハードマスク膜7が設けられる場合、上層42の表層は酸化していないことが好ましい。例えば、下層41、上層42、ハードマスク膜7の順にスパッタ成膜し、その間、透光性基板1を一度も大気中に出さないようにすることで上層42の表層の酸化を抑制することができる。
【0102】
本発明の第3の実施形態は、転写用マスクやその転写用マスクの製造方法についても提供するものである。
図5は、本発明の第3の実施形態に係る転写用マスクの製造工程を示す断面図である。
図5に示す製造工程に従って、第3の実施形態に係る転写用マスクの製造方法を説明する。なお、ここで使用するマスクブランク101(
図5(a)参照)は、第2の実施形態のマスクブランク(エッチングストッパー膜3がケイ素および酸素を含有する材料で形成されているマスクブランク)における遮光膜4の上にハードマスク膜7が設けられた構成を有する。
【0103】
まず、上記マスクブランク101のハードマスク膜7の表面に接して、有機系材料からなる第1のレジスト膜5を形成する(
図5(a)参照)。次に、このマスクブランク101上に形成した第1のレジスト膜5に対して、光半透過膜2に形成すべき所望の光半透過パターン(転写パターン)のパターン描画を行い、描画後、現像処理を行うことにより、所望の光半透過パターンを有する第1のレジストパターン5aを形成する(
図5(b)参照)。次いで、この光半透過パターンを有する第1のレジストパターン5aをマスクとしたドライエッチングによって、光半透過パターンを有するハードマスク膜7aを形成する(
図5(b)参照)。このドライエッチングにおけるエッチングガスには、前記のフッ素系ガスが用いられる。
【0104】
次いで、この光半透過パターンを有するハードマスク膜7aをマスクとしたドライエッチングによって、光半透過パターンを有する上層42aと下層41aの積層構造からなる遮光膜4aを形成する。このドライエッチングにおけるエッチングガス等のエッチング条件については、第1の実施形態の転写用マスクの製造方法と同様である。次いで、ハードマスク膜7a上に残存する
第1のレジストパターン5aを剥離する(
図5(c)参照)。
【0105】
次に、光半透過パターンが形成された遮光膜4a(上層42a)をマスクとしたドライエッチングをエッチングストッパー膜3と光半透過膜2に対して行う。これにより、光半透過パターンを有するエッチングストッパー膜3aと光半透過膜2aが形成される(
図5(d)参照)。このドライエッチングでは、第2の実施形態の転写用マスクの製造方法と同様である。なお、このドライエッチングによって、ハードマスク膜7aはエッチングされて消失する。
【0106】
次に、遮光膜4a上に
第2のレジスト膜を形成し、この
第2のレジスト膜に対して、遮光膜4に形成すべき所望の遮光帯パターン(転写パターン)のパターン描画を行い、描画後、現像処理を行うことにより、所望の遮光帯パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成する(
図5(e)参照)。次いで、遮光帯パターンを有する第2のレジストパターン6bをマスクとしたドライエッチングによって、遮光帯パターンを有する遮光膜4bを形成する(
図5(f)参照)。このドライエッチングは、第1の実施形態の転写用マスクの製造方法で、遮光帯パターンを生成したときの場合と同様である。
【0107】
次に、残存する第2のレジストパターン6bを除去する。この第2の実施形態の転写用マスクでは、遮光膜4bのみで遮光帯が形成される。その後、所定の洗浄を施すことで、転写用マスク200が得られる(
図5(f)参照)。
【0108】
なお、第1の実施形態のマスクブランクにおける遮光膜4の上にハードマスク膜7が設けられた構成のマスクブランク101を用いる転写用マスクやその転写用マスクの製造方法については、エッチングマスク膜3に対するパターニングに関する事項(第1の実施形態の転写用マスクの製造方法を参照。)以外は、上記の場合と同様である。
【0109】
以上説明したように、本発明の第3の実施形態における転写用マスクは、本発明の第3の実施形態におけるマスクブランクの光半透過膜およびエッチングストッパー膜に光半透過パターンが形成され、遮光膜に遮光帯パターンが形成されていることを特徴とするものである。
【実施例】
【0110】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
【0111】
(実施例1)
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面および主表面を所定の表面粗さに研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものであった。
【0112】
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=12at%:88at%)を用い、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)およびヘリウム(He)の混合ガス雰囲気で反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、基板1上に、モリブデン、ケイ素および窒素からなる光半透過膜2(MoSiN膜 Mo:12at%,Si:39at%,N:49at%)を69nmの膜厚で形成した。なお、MoSiN膜の組成は、オージェ電子分光分析(AES)によって得られた結果である。以下、他の膜に関しても同様である。
【0113】
次いで、上記MoSiN膜(光半透過膜2)が形成された透光性基板1に対して、光半透過膜2の表層に酸化層を形成する処理を施した。具体的には、加熱炉(電気炉)を用いて、大気中で加熱温度を450℃、加熱時間を1時間として、加熱処理を行った。加熱処理後の光半透過膜2をオージェ電子分光分析(AES)で分析したところ、光半透過膜2の表面から約1.5nm程度の厚さで酸化層が形成されていることが確認され、その酸化層の酸素含有量は42at%であった。加熱処理後のMoSiN膜(光半透過膜2)に対し、位相シフト量測定装置でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率および位相差を測定したところ、透過率は6.07%、位相差が177.3度であった。
【0114】
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)およびヘリウム(He)の混合ガス雰囲気で反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、光半透過膜2の表面に接して、クロムおよび窒素からなるエッチングストッパー膜3(CrN膜 Cr:81at%,N:19at%)を5nmの膜厚で形成した。
【0115】
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、タンタル(Ta)ターゲットを用い、窒素(N
2)およびキセノン(Xe)ガス雰囲気でのスパッタリング(DCスパッタリング)により、エッチングストッパー膜3の表面に接して、タンタルおよび窒素からなる遮光膜4の下層41(TaN膜 Ta:88.7at%,N:11.3at%)を20nmの膜厚で形成した。
【0116】
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、タンタル(Ta)とハフニウム(Hf)との混合ターゲット(Ta:Hf=80at%:20at%)を用い、キセノン(Xe)ガス雰囲気でのスパッタリング(DCスパッタリング)により、下層41の表面に接して、タンタルおよびハフニウムからなる遮光膜4の上層42(TaHf膜 Ta:86.4at%,Hf:13.5at%)を10nmの膜厚で形成した。さらに所定の洗浄処理を施し、実施例1のマスクブランク100を得た。
【0117】
[転写用マスクの製造]
次に、実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で実施例1の転写用マスク200を作製した。最初に、スピン塗布法によって遮光膜4(上層42)の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなる第1のレジスト膜5を膜厚80nmで形成した(
図3(a)参照)。次に、第1のレジスト膜5に対して、光半透過膜2に形成すべき光半透過パターンであるDRAM hp32nm世代の転写パターン(線幅40nmのSRAFを含んだ微細パターン)を電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、光半透過パターンを有する第1のレジスト膜5(第1のレジストパターン5a)を形成した(
図3(b)参照)。次に、第1のレジストパターン5aをマスクとし、塩素ガス(Cl
2)を用いたドライエッチングを行い、光半透過パターンを有する遮光膜4a(下層41a,上層42a)を形成した。このドライエッチングにおけるエッチングバイアスは15Wであり、通常のドライエッチングで行われる範囲のドライエッチング条件であった。続いて第1のレジストパターン5aを除去した(
図3(c)参照)。
【0118】
次に、光半透過パターンが形成された遮光膜4a(上層42a)をマスクとし、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl
2:O
2=4:1)を用いたドライエッチングを行い、光半透過パターンを有するエッチングストッパー膜3aを形成した(
図3(d)参照)。次いで、光半透過パターンが形成された遮光膜4a(上層42a)をマスクとし、フッ素系ガスを含有するエッチングガス(SF
6+He)を用いたドライエッチングを行い、光半透過パターンを有する光半透過膜2aを形成した(
図3(e)参照)。
【0119】
次に、遮光膜4aに接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなる
第2のレジスト膜を膜厚80nmで形成した。続いて、
第2のレジスト膜に対して、遮光膜4に形成すべき遮光帯パターンを電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、遮光帯パターンを有するレジスト膜6b(第2のレジストパターン6b)を形成した(
図3(f)参照)。次に、遮光帯パターンを有する第2のレジストパターンをマスクとし、塩素ガス(Cl
2)を用いたドライエッチングを行い、遮光帯パターンを有する遮光膜4b(下層41b,上層42b)を形成した(
図3(g)参照)。このドライエッチングにおけるエッチングバイアスは50Wであり、通常のドライエッチングで行われる範囲のドライエッチングよりもエッチングバイアスが大幅に大きい条件といえる。続いて第2のレジストパターン6bを除去した。
【0120】
次に、遮光帯パターンが形成された遮光膜4bをマスクとし、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl
2:O
2=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光帯パターンを有するエッチングストッパー膜3bを形成した。その後、所定の洗浄を施し、転写用マスク200が得られた(
図3(h)参照)。
【0121】
[パターン転写性能の評価]
作製した実施例1の転写用マスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、パターンの短絡や断線はなく、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、この実施例1の転写用マスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
【0122】
(実施例2)
実施例1と同様の手順で、透光性基板1上に光半透過膜2を形成した。ただし、この実施例2では、光半透過膜2の膜厚を67nmとした。次に、枚葉式RFスパッタ装置内に光半透過膜2が形成された透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO
2)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および酸素(O
2)の混合ガス雰囲気で反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、光半透過膜2の表面に接して、ケイ素および酸素からなるSiO
2膜(エッチングストッパー膜3)を3nmの膜厚で形成した。MoSiN膜(光半透過膜2)とSiO
2膜(エッチングストッパー膜3)の積層膜に対し、位相シフト量測定装置でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率および位相差を測定したところ、透過率は5.98%、位相差が179.2度であった。
【0123】
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、タンタル(Ta)ターゲットを用い、窒素(N
2)およびキセノン(Xe)ガス雰囲気でのスパッタリング(DCスパッタリング)により、エッチングストッパー膜3の表面に接して、タンタルおよび窒素からなる遮光膜4の下層41(TaN膜 Ta:88.7at%,N:11.3at%)を20nmの膜厚で形成した。
【0124】
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、タンタル(Ta)とハフニウム(Hf)との混合ターゲット(Ta:Hf=80at%:20at%)を用い、キセノン(Xe)ガス雰囲気でのスパッタリング(DCスパッタリング)により、下層41の表面に接して、タンタルおよびハフニウムからなる遮光膜4の上層42(TaHf膜 Ta:86.4at%,Hf:13.5at%)を10nmの膜厚で形成した。さらに所定の洗浄処理を施し、実施例2のマスクブランク100を得た。
【0125】
[転写用マスクの製造]
次に、実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で実施例2の転写用マスク200を作製した。最初に、スピン塗布法によって遮光膜4(上層42)の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなる第1のレジスト膜5を膜厚80nmで形成した(
図4(a)参照)。次に、第1のレジスト膜5に対して、光半透過膜2に形成すべき光半透過パターンであるDRAM hp32nm世代の転写パターン(線幅40nmのSRAFを含んだ微細パターン)を電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、光半透過パターンを有する第1のレジスト膜5(第1のレジストパターン5a)を形成した(
図4(b)参照)。次に、第1のレジストパターン5aをマスクとし、塩素ガス(Cl
2)を用いたドライエッチングを行い、光半透過パターンを有する遮光膜4a(下層41a,上層42a)を形成した。このドライエッチングにおけるエッチングバイアスは15Wであり、通常のドライエッチングで行われる範囲のドライエッチング条件であった。続いて第1のレジストパターン5aを除去した(
図4(c)参照)。
【0126】
次に、光半透過パターンが形成された遮光膜4a(上層42a)をマスクとし、フッ素系ガスを含有するエッチングガス(SF
6+He)を用いたドライエッチングを行い、光半透過パターンを有するエッチングストッパー膜3aおよび光半透過膜2aを形成した(
図4(d)参照)。
【0127】
次に、遮光膜4aに接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなる
第2のレジスト膜を膜厚80nmで形成した。続いて、
第2のレジスト膜に対して、遮光膜4に形成すべき遮光帯パターンを電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、遮光帯パターンを有するレジスト膜6b(第2のレジストパターン6b)を形成した(
図4(e)参照)。次に、遮光帯パターンを有する第2のレジストパターンをマスクとし、塩素ガス(Cl
2)を用いたドライエッチングを行い、遮光帯パターンを有する遮光膜4b(下層41b,上層42b)を形成した(
図4(f)参照)。このドライエッチングにおけるエッチングバイアスは、上層42のパターニング時は50Wとし、下層41のパターニング時は15Wとした。続いて第2のレジストパターン6bを除去した。その後、所定の洗浄を施し、転写用マスク200が得られた(
図4(f)参照)。
【0128】
[パターン転写性能の評価]
作製した実施例2の転写用マスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、パターンの短絡や断線はなく、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、この実施例2の転写用マスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
【0129】
(実施例3)
実施例2と同様の手順で、透光性基板1上に光半透過膜2、エッチングストッパー膜3および遮光膜4の下層41と上層42をそれぞれ形成した。次に、枚葉式RFスパッタ装置内に、光半透過膜2、遮光膜4が積層した透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO
2)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および酸素(O
2)の混合ガス雰囲気で反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、遮光膜4の上層42の表面に接して、ケイ素および酸素からなるSiO
2膜(ハードマスク膜7)を5nmの膜厚で形成した。さらに所定の洗浄処理を施し、実施例3のマスクブランク101を得た。
【0130】
[転写用マスクの製造]
次に、実施例3のマスクブランク101を用い、以下の手順で実施例3の転写用マスク201を作製した。最初に、スピン塗布法によってハードマスク膜7の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなる第1のレジスト膜5を膜厚80nmで形成した(
図5(a)参照)。次に、第1のレジスト膜5に対して、光半透過膜2に形成すべき光半透過パターンであるDRAM hp32nm世代の転写パターン(線幅40nmのSRAFを含んだ微細パターン)を電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、光半透過パターンを有する第1のレジスト膜5(第1のレジストパターン5a)を形成した(
図5(b)参照)。次に、第1のレジストパターン5aをマスクとし、フッ素系ガス(CHF
3)を用いたドライエッチングを行い、光半透過パターンを有するハードマスク膜7aを形成した(
図5(b)参照)。
【0131】
次に、第1のレジストパターン5aおよびハードマスク膜7aをマスクとし、塩素ガス(Cl
2)を用いたドライエッチングを行い、光半透過パターンを有する遮光膜4a(下層41a,上層42a)を形成した。このドライエッチングにおけるエッチングバイアスは15Wであり、通常のドライエッチングで行われる範囲のドライエッチング条件であった。続いて第1のレジストパターン5aを除去した(
図5(c)参照)。
【0132】
次に、光半透過パターンが形成された遮光膜4a(上層42a)をマスクとし、フッ素系ガスを含有するエッチングガス(SF
6+He)を用いたドライエッチングを行い、光半透過パターンを有するエッチングストッパー膜3aおよび光半透過膜2aを形成した(
図5(d)参照)。
【0133】
次に、遮光膜4aに接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなる
第2のレジスト膜を膜厚80nmで形成した。続いて、
第2のレジスト膜に対して、遮光膜4に形成すべき遮光帯パターンを電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、遮光帯パターンを有するレジスト膜6b(第2のレジストパターン6b)を形成した(
図5(e)参照)。次に、遮光帯パターンを有する第2のレジストパターン6bをマスクとし、塩素ガス(Cl
2)を用いたドライエッチングを行い、遮光帯パターンを有する遮光膜4b(下層41b,上層42b)を形成した(
図5(f)参照)。このドライエッチングにおけるエッチングバイアスは、上層42および下層41のパターニングともに50Wとした。続いて第2のレジストパターン6bを除去した。その後、所定の洗浄を施し、転写用マスク201が得られた(
図5(f)参照)。
【0134】
[パターン転写性能の評価]
作製した実施例3の転写用マスク201に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、パターンの短絡や断線はなく、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、この実施例3の転写用マスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
【0135】
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
遮光膜4とエッチングストッパー膜3を除き、実施例1の場合と同様の手順で、マスクブランクを製造した。この比較例1のマスクブランクは、実施例1のマスクブランク100とは、遮光膜4として、タンタルおよびハフニウムからなるTaHf膜(TaHf膜 Ta:86.4at%,Hf:13.5at%)のみを33nmの膜厚で形成した点と、エッチングストッパー膜3として、クロム、酸素、炭素および窒素からなるCrOCN膜(Cr:37at%,O:38at%,C:16at%,N:9at%)を10nmの膜厚で形成した点が異なる。
【0136】
[転写用マスクの製造]
次に、実施例1の転写用マスクの製造の手順と同様の手順で、比較例1のマスクブランクを用いて比較例1の転写用マスクを製造した。
【0137】
[パターン転写性能の評価]
作製した比較例1の転写用マスクに対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、パターンが短絡している箇所や断線している箇所が多く発生しており、設計仕様を満たしていなかった。この結果から、この比較例1の転写用マスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できないといえる。また、この比較例1の転写用マスクは、パターンの短絡箇所や断線箇所が多数あり、マスク欠陥修正装置での欠陥修正は実務上困難であった。