(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165880
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】硫酸銅溶液の逆流による電解銅箔の生産方法のシステム
(51)【国際特許分類】
C25D 1/04 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
C25D1/04 311
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-552983(P2015-552983)
(86)(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公表番号】特表2016-507652(P2016-507652A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】CN2013089959
(87)【国際公開番号】WO2014110958
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】201310021021.7
(32)【優先日】2013年1月21日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515198647
【氏名又は名称】福建清景▲銅▼箔有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼金▲財▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼初坤
【審査官】
祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−254673(JP,A)
【文献】
特開昭53−039941(JP,A)
【文献】
特開昭63−149390(JP,A)
【文献】
特開平10−036991(JP,A)
【文献】
特開2001−011685(JP,A)
【文献】
特公昭46−039444(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極ロール、弧状陽極及び銅溶解装置を含み、陰極ロールは弧状陽極の中に回転できるように設置され、陰極ロールと弧状陽極の間で設置された隙間で陽極槽を形成し、陽極槽に硫酸銅溶液を陽極槽へ搬送する上部槽が設けられており、陽極槽両側の上端口はそれぞれ陰極ロールの両側に位置し、そのうち片側は箔の生成側であり、前記陽極槽には硫酸銅溶液の流入口と流出口が設置されており、銅溶解装置は搬送パイプを介して上部槽の液体注入口と連通しており、さらに、硫酸銅溶液のレシーバタンクが設置され、陽極槽の硫酸銅溶液の流出口は前記レシーバタンクと連通し、レシーバタンクは銅溶解装置と連通し、前記レシーバタンクは硫酸銅溶液の補助ポンプを介して上部槽の液体注入口に連通し、前記上部槽の液体排出口は硫酸銅溶液搬送パイプを介して少なくとも陰極ロールの一つの側面にある陽極槽の上端口と連通し、前記上部槽の液体排出口は硫酸銅溶液の搬送パイプを介して前記陰極ロールの両側にある陽極槽の上端口と連通し、前記陽極槽の硫酸銅溶液流出口は陽極槽の底部に設置され、前記陽極槽の底部の硫酸銅溶液流出口の前記陰極ロール軸方向における長さは前記陰極ロールの軸方向長さと同じであり、前記硫酸銅溶液流出口の幅は少なくとも前記陰極ロールと弧状陽極の間にある隙間の2倍であり、陽極槽の中には流動する硫酸銅溶液があり、陰極ロールは陽極槽の中で回転し、陰極ロールの一部の外表面が硫酸銅溶液に浸され、陰極ロールと陽極の間に電流を流し、陰極ロールの回転につれて、陰極ロールにメッキした銅箔がはがれながら巻き取られており、前記硫酸銅溶液は少なくとも陰極ロールの片側にある陽極槽の上端口から陽極槽に流れ込み、銅箔の鍍層表面のあらさRzが設定値より大きい場合、陰極ロールの流れ込む側の表面で硫酸銅溶液が形成する流速を上げ、銅箔の鍍層の表面のあらさRzが設定値より小さい場合、陰極ロールの流れ込む側の表面で硫酸銅溶液が形成する流速を下げ、前記硫酸銅溶液は、一次硫酸銅溶液と二次硫酸銅溶液の混合液で、前記一次硫酸銅溶液は銅溶解装置から直接提供される硫酸銅原液で、前記二次硫酸銅溶液は陽極槽から流出してメッキした後の硫酸銅溶液であることを特徴とする硫酸銅溶液の上から下への流れによる電解銅箔の生産方法のシステム。
【請求項2】
前記上部槽と陽極槽の硫酸銅溶液の流入口とを連通するパイプには総流量制御弁が設置され、前記陽極槽の硫酸銅溶液流出口とレシーバタンクとを連通するパイプの中に陽極槽の硫酸銅溶液流速を調節する流速制御弁が設置され、前記硫酸銅溶液の補助ポンプと上部槽の間を連通するパイプには硫酸銅溶液流量の制御弁が設置されていることを特徴とする請求項1に記載の硫酸銅溶液の上から下への流れによる電解銅箔の生産方法のシステム。
【請求項3】
前記陰極ロールの片側の陽極槽の上端口は陰極ロールの箔の生成側にある陽極槽の上端口であることを特徴とする請求項1または2に記載の硫酸銅溶液の上から下への流れによる電解銅箔の生産方法のシステム。
【請求項4】
前記陽極槽上端口には陽極槽上端口と同幅の流入する硫酸銅溶液の転換口が連結され、転換口には硫酸銅溶液の流動方向を制御できるそらせ板が設置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の硫酸銅溶液の上から下への流れによる電解銅箔の生産方法のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解銅箔の生産技術分野に属し、特に硫酸銅溶液の逆流による電解銅箔の生産方法及びシステムに関する。陽極槽中の硫酸銅溶液を下から上まで流す伝統的な方法を上から下まで流すように変え、硫酸銅溶液の方向と流速を変えることによって銅箔表面の品質を制御でき、銅箔の生産に意外な効果を持たらし、添加剤でしか銅箔表面の質量を制御できないという歴史から徹底的に脱出した。
【背景技術】
【0002】
現在、電解銅箔の生産は環境に優しくなく、浸食されやすい鉛陽極の代わりに、表面に導電層を塗ったチタンイリジウム陽極を使う。ただし、鉛陽極とチタンイリジウム陽極のうちどちらを使用しても、その生産プロセスは基本的に変わらなく、陽極槽中の硫酸銅溶液はいつも槽の底から流入し、陽極槽の上端口から流出して銅溶解装置に逆流する。伝統的な生産設備とプロセスにおいて、銅箔の生産は、表面の粗さがRa≦0.4μmである陰極ロールの軸線以下を陽極槽中で流動する銅濃度が70−110g/Lで、酸濃度が80−130g/Lで、温度が40−65℃である硫酸銅溶液中に浸し、陰極ロールと陽極の間に電流を通すとメッキの原理に従い、流動する硫酸銅溶液に浸している陰極ロールの表面に銅の結晶粒子がメッキされる。メッキ定数:1.186g/A−hによって、電流が一定の状況で、陰極ロール表面にメッキする銅箔の厚さは陰極ロールが硫酸銅溶液に浸す時間によって決定される。陰極ロールを回転して硫酸銅溶液での陰極ロールの回転速度を変えることによって陰極ロール表面にメッキする銅箔の厚さを変えることができ、陰極ロールの回転に従い、陰極ロール表面にメッキしている銅箔をどんどん剥がすことで厚さの異なる銅箔を得る。銅箔の陰極ロールの表面に貼る側を光面と呼び、メッキ層側を粗面と呼ぶ。メッキ過程の分極作用によって、銅箔の粗面に山のような不規則な銅結晶粒子ができ、銅箔が厚いほど銅結晶粒子は大きくなり、粗さも大きくなる。生産プロセスにおいて、添加剤(ゼラチンや修飾ゼラチン、チオ尿素など)を加えることで銅箔の粗さRzを制御する。しかし、生産プロセスは複雑で非常に制御し難いため、銅箔生産のボトルネックになり、各銅箔製造会社が秘密にする独自の技術にもなっているとともに、硫酸銅溶液中に大量の添加剤を添加したため、硫酸銅溶液が銅溶解装置に逆流した時、硫酸銅溶液の品質を高めるために上記添加剤を濾過する必要があり、そのため複数の濾過設備を増やす必要があり、したがって濾過器の負担も増やす。また、硫酸銅溶液中の銅イオンが陰極ロールの表面にメッキされる過程に酸素を放出して、大量の気泡が発生し、気泡もメッキ効果に影響を及ぼす。硫酸銅溶液は上へ流れるため、気泡は硫酸銅溶液によって陽極槽の上端口から持ち出され、硫酸煙を生成し、陰極ロールから剥がしたばかりの銅箔表面を酸化する。この問題を解決するために、陽極槽の口に大排気量の排気口を設置することにより、銅箔を生産する設備が複雑になり、制御も難しくなる。
【0003】
1955年電解銅箔がYatesによって商業化された以来、その生産プロセスは基本的に変わらなく、ずっと溶液は下から入り、上から溢れ出る方法で生産する。この方法は主に溶液中の銅イオンや添加剤の濃度を維持することで、槽中の流体力学の問題を解決する良い方案はなかった。
【0004】
電解銅箔の生産に高位槽や耐酸ポンプのどれかで硫酸銅溶液を供給しても、流速は一般的に0.5メートル/秒以下になり、得られた銅箔結晶は棒状である。ライト添加剤の添加によって常温での結晶構造及び物理的特性を変えることができても、高温の下では非常に不安定的であり、抗張力は大きく減衰する。結晶格子を利用することによって欠陥が生じるため、ピンホール及び反りが生じしやすく、このような銅箔は高級な回路基板お及びリチウム電池への使用に適しない。
【0005】
銅箔の生産過程において、銅原子は陰極の表面に堆積し、酸素気泡は陽極表面に生成し且つ下から入る溶液に連られて液面に到着し、硫酸銅とともに酸霧を生成して、銅箔の表面及び操作者に大きな損害を及ぼすため、必ず強力な換気装置で職場の清潔を維持しなければならない。
【0006】
下から入る溶液は液体注入口付近で大きな乱流を生成し、ルノー数が2000を超える。多くのメーカーは液体注入管のデザインに沢山苦労したが、厚さの不均衡の現象を解決することはまだできない。液体注入バルブやシールドを利用して厚さを調整しなければならないが、このような調節方法は一時的で、非常に不安定であり、一日又は二日一回調整する必要がある。シールドは一回から二回しか使えなく、コストも驚くほど高いため、連続的な生産には困ることになっている。
【0007】
下から入る溶液には閉鎖式及び開放式の2種類があって、前者は100パーセントの新液で、後者は新旧液を同時に使うことになっている。しかし、どの方式でも、左右両側の陽極の流量を正確に制御することはできない。両方に各半分の流量があると仮定するしかなく、流量に対する制御性は相当低い。
【0008】
下から入る溶液の最大な欠点は、陽極槽の硫酸銅溶液流出口の液面の溶液は電解した後の旧液で、銅イオンや添加剤の濃度は低く、液面に沢山の気泡が累積して、液面の抵抗が大きくなることである。両者を混合した後、液面の電流密度が液面の下より低くなる。このような現象は陰極ロールを液面に入れる時、結晶核の生成に不利である。酷い状況では、銅箔にピンホールや反りができる大きな原因になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は上記の問題に対して硫酸銅溶液の逆流による電解銅箔の製造方法及びシステムの技術的解決手段を提供し、硫酸銅溶液を陽極槽の下から上へ流す伝統的な方法を上から下まで流す方法に改善して、流速を高め、銅箔の生産に意外な効果を持たらし、添加剤だけで銅箔の表面品質を制御できる歴史から徹底的に脱出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を実現するための本発明の技術的解決手段は、
硫酸銅溶液の逆流による電解銅箔の生産方法であって、陰極ロールと、弧状陽極と、陰極ロールと弧状陽極の間に設置される隙間で形成される陽極槽とを含み、陽極槽両側の上端口は陰極ロールの両側にあり、その片側は箔の生成側であり、陽極槽の中には流動する硫酸銅溶液があり、陰極ロールは陽極槽の中で回転し、陰極ロールの一部の外表面が硫酸銅溶液に浸され、陰極ロールと陽極の間に電流を流し、陰極ロールの回転につれて、陰極ロールにメッキした銅箔がどんどんはがれながら巻き取られ、そのうち、前記方法は前記硫酸銅溶液が少なくとも陰極ロールの片側にある陽極槽の上端口から陽極槽に流れ込むことである。
【0011】
さらに好ましい方法は、前記硫酸銅溶液が陰極ロールの箔の生成側の陽極槽の上端口から陽極槽に流れ込むことである。
【0012】
さらに好ましい方法は、前記硫酸銅溶液が陰極ロールの箔の生成側の陽極槽の上端口から陽極槽に流れ込み、且つ陽極槽の底部から流れ出し、流れ出す硫酸銅溶液がメッキする時にできた気泡を陽極槽の底部から持ち出すことである。
【0013】
さらに好ましい方法は、前記の方法はさらに銅箔の鍍層の表面のあらさが設定値より大きい場合、陰極ロールの流れ込む側の表面で硫酸銅溶液が形成する流速をあげ、銅箔の鍍層の表面のあらさが設定値より小さい場合、陰極ロールの流れ込む側の表面で硫酸銅溶液が形成する流速をさげることを含むことである。
【0014】
さらに好ましい方法は、電解銅箔の生産プロセスの条件の下で、前記陰極ロールの表面で硫酸銅溶液が形成する流速は少なくとも0.5メートル/秒であり、前記電解銅箔の生産プロセスの条件は、銅の含有量は70−110g/Lで、酸の濃度は80−130g/Lで、温度は40−65℃である硫酸銅溶液と、50アンペア−85アンペア毎平方デシメートルの陽極の電流密度を含むことである。
【0015】
さらに好ましい方法は、前記硫酸銅溶液は一次硫酸銅溶液と二次硫酸銅溶液の混合液で、前記一次硫酸銅溶液は銅溶解装置から直接提供される硫酸銅原液で、前記二次硫酸銅溶液は陽極槽から流出してメッキした後の硫酸銅溶液である。
【0016】
さらに好ましい方法は、前記混合液の中で一次硫酸銅溶液と二次硫酸銅溶液の比は≧1:2である。
【0017】
硫酸銅溶液の逆流による電解銅箔の生産方法を実現するシステムであって、陰極ロール、弧状陽極及び銅溶解装置を含み、陰極ロールは弧状陽極の中に回転できるように設置され、陰極ロールと弧状陽極の間に設置された隙間で陽極槽を形成し、陽極槽には硫酸銅溶液を陽極槽へ搬送する
上部槽が設けられており、陽極槽両側の上端はそれぞれ陰極ロールの両側に位置し、そのうち片側は箔の生成側であり、前記陽極槽には硫酸銅溶液の流入口と流出口が設置されており、銅溶解装置は搬送パイプを介して
上部槽の液体注入口と連通しており、さらに、逆流する硫酸銅溶液のレシーバタンクが設置され、陽極槽の硫酸銅溶液の流出口は前記レシーバタンクと連通し、レシーバタンクは銅溶解装置と連通し、前記レシーバタンクは硫酸銅溶液の補助ポンプを介して
上部槽の液体注入口に連通し、前記
上部槽の液体排出口は硫酸銅溶液搬送パイプを介して少なくとも陰極ロールの一つの側面にある陽極槽の上端口と連通する。
【0018】
さらに好ましい方法は、前記
上部槽と陽極槽の硫酸銅溶液の流入口とを連通するパイプには総流量制御弁が設置され、前記陽極槽の硫酸銅溶液流出口とレシーバタンクとを連通するパイプの中に陽極槽の硫酸銅溶液流速を調節する流速制御弁が設置され、前記硫酸銅溶液の補助ポンプと
上部槽の間を連通するパイプには逆流する硫酸銅溶液流量の制御弁が設置されている。
【0019】
さらに好ましい方法は、前記陰極ロールの片側の陽極槽の上端口は陰極ロールの箔の生成側にある陽極槽の上端口である。
【0020】
さらに好ましい方法は、前記
上部槽の液体排出口は硫酸銅溶液の搬送パイプを介して陰極ロールの両側にある陽極槽の上端口と連通し、前記陽極槽の硫酸銅溶液流出口は陽極槽の底部に設置される。
【0021】
さらに好ましい方法は、前記陽極槽の底部の硫酸銅溶液流出口の長さは陰極ロールの長さであり、流出口の幅は少なくとも陰極ロールと弧状陽極の間にある隙間の2倍である。
【0022】
さらに好ましい方法は、前記陽極槽上端口には陽極槽上端口と同幅の流入する硫酸銅溶液の転換口が連結され、転換口には硫酸銅溶液の流動方向を制御できるそらせ板が設置される。
【0023】
既存技術と比べ、本発明は以下のような利点がある。
1.添加剤でしか銅箔表面の質量を制御できない生産プロセスを徹底的に覆し、硫酸銅溶液の方向を変えること及び陰極ロール表面での硫酸銅溶液の流速を制御することによって銅箔表面のあらさ、及び銅箔の銅イオンのメッキ密度を制御し、それにより濾過設備に対する要求を低下させ、生産プロセスを簡単化し、制御の過程が簡単になり、操作しやすくなる。
【0024】
2.本発明はろ過装置への要求を低下させ、伝統的な箔の生産設備より簡単で、生産コストを低下させる。
【0025】
3.本発明の生産過程は汚染物の排出を減少し、環境に優しく、著しい経済利益及び社会利益がある。
【0026】
以下、添付図と実施例を参照しながら本発明をより詳しく説明する。
【0027】
発明内容
ここに技術分野の説明段落をタイピングする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図3】本発明の陽極槽上端口の流入する硫酸銅溶液の転換口構造の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
具体的な実施形態
実施例1
硫酸銅溶液の逆流による電解銅箔の生産方法の実施例であり、
図1のように、陰極ロール1と湾曲した半円弧状陽極の間に設置される隙間で形成される陽極槽とを含み、陽極と陰極ロール間の距離は通常8−15mmの間に維持され、陽極槽両側の上端口は陰極ロールの両側に位置し(すなわち、陰極ロールの中心軸に沿って垂直に分離した二つの側面)、そのうち片側は箔の生成側であり、陽極槽の中には流動する硫酸銅溶液4があり、陰極ロールは陽極槽の中で回転し、陰極ロールの軸線以下の外表面は銅の含有量は70−110g/Lで、酸の濃度は80−130g/Lで、温度は40−65℃である硫酸銅溶液を入れている陽極槽に浸され、陰極ロールと陽極の間に電流を流し、陰極ロールの回転につれて、電気化学反応により、陰極ロールにメッキされた銅箔5はどんどん剥がされ、剥離ロール6を経て巻取ロール7で巻取る。そのうち、前記硫酸銅溶液が少なくとも陰極ロールの片側にある陽極槽の上端口から陽極槽に流れ込むことにより、硫酸銅溶液は陰極ロールの流入側の表面で下向けの流速の衝撃力を形成する(すなわち、硫酸銅溶液が気泡を生成する動きと逆方向である一定の流速の衝撃力、つまり気泡を下へ持ち運ぶ流速の衝撃力を形成する)。
【0030】
本実施例の好ましい形態1は、前記片側の陽極槽の上端口とは陰極ロールの箔の生成側の陽極槽の上端口であり、すなわち、前記硫酸銅溶液は陰極ロールの箔の生成側の陽極槽の上端口3−1から陽極槽に流れ込むことである。
【0031】
本実施例の好ましい形態2は、硫酸銅溶液は少なくとも陰極ロールの片側にある陽極槽の上端口から流入するため、陽極槽からの硫酸銅溶液の流出は陽極槽の底からでもよいし、陰極ロールの他側にある陽極槽の上端口からでもよいことである。硫酸銅溶液中の銅イオンが陰極ロールの表面をメッキする過程において、酸素の放出により大量の気泡が発生され、陽極槽の上端口から放出されることを防止するため、当該好ましい形態と上記方法との相違点は、硫酸銅溶液は陰極ロールの両側にある陽極槽の上端口から陽極槽中に流れ込み、且つ陽極槽の底から流出するため、流出する硫酸銅溶液はメッキ過程で発生した気泡を陽極槽の底から持ち出す。下へ高速に流れる硫酸銅溶液は迅速に気泡を持ち出し、銅箔品質への気泡の影響を低下させ、さらに無くす。
【0032】
上記形態において、更なる方法は、銅箔表面の粗さが設定値より大きい場合、陽極槽の底から流出する硫酸銅溶液の速度を上げ、即ち、陰極ロール表面での硫酸銅溶液の流速をあげる。銅箔表面の粗さが設定値より小さい場合、陽極槽の底から流出する硫酸銅溶液の速度を下げ、即ち、硫陰極ロール表面での酸銅溶液の流速を下げる。銅箔メッキ層表面の粗さの設定値、つまり粗面の粗さは製品によって異なるが、通常Rz≦2.5μmに制御する。
【0033】
上記形態において、メッキ過程の分極作用を改善して、銅箔品質への気泡の影響を解決し、銅箔表面の粗さと銅箔結晶粒子の密度を改善するため、電解銅箔の生産プロセス条件で、前記硫酸銅溶液が陰極ロール表面で形成する流速は少なくとも0.5メートル/秒で、通常0.5−0.9メートル/秒であり、前記電解銅箔の生産プロセス条件は、硫酸銅溶液の銅の含有量は70−110g/Lで、酸の濃度は80−130g/Lで、温度は40−65℃で、陽極の電流の密度は50アンペア−85アンペア毎平方デシメートルであることを含む。そのうち、陽極電流密度が70/dm
2アンペアであるとき、発生した気泡を早速に持ち出すために、硫酸銅溶液の流速を0.7メートル/秒に制御することが好ましい。
【0034】
伝統的なプロセスにおいて、陽極槽の中で硫酸銅溶液は下から上へ流れ、それにより陰極ロール表面で形成する硫酸銅溶液の流速は常に0.5メートル/秒以下であり、もし0.5メートル/秒より大きくする場合、陽極槽の上端口から大量の硫酸煙が持ち出され、且つ硫酸銅溶液も噴出されるなど一連の問題が発生するため流速を上げることはできない。これに対し、本実施例は陽極槽での硫酸銅溶液の搬送方向を変えることにより、陰極ロール表面形成する前記硫酸銅溶液の流速がすくなくとも0.5メートル/秒であることを実現し、且つ陰極ロールの表面での硫酸銅溶液の流速を制御することで銅箔表面の粗さを制御し、銅箔表面の粗さが設定値より大きい場合、陽極槽から流出する硫酸銅溶液の速度を上げ、即ち、硫酸銅溶液の流速を上げる。銅箔表面の粗さが設定値より小さい場合、陽極槽の底から流出する硫酸銅溶液の速度を下げ、即ち、硫酸銅溶液の流速を下げる。銅箔表面の粗さの設定値、つまり粗面の粗さは製品によって異なるが、通常Rz≦2.5μmに制御する。
【0035】
実施例2
硫酸銅溶液の逆流による電解銅箔の生産方法の別の実施例であり、本実施例は実施例1を基に改善したものであり、本実施例における例1と実施例2の同じ部分は、実施例1と実施例2に開示した内容を参考に理解し、実施例1と実施例2の開示された内容は本実施例の内容にもなるべきである。
【0036】
上記実施例において、陰極ロール表面で形成する硫酸銅溶液の流速を上げるため、硫酸銅原液に対するニーズが増加し、それによって銅溶解装置へのニーズも増加し、したがって設備への投入も増加する。この問題を解決するため、本実例において、前記硫酸銅溶液とは一次硫酸銅溶液と二次硫酸銅溶液の混合溶液であり、前記一次硫酸銅溶液とは銅溶解装置から直接流出する硫酸銅原液であり、前記二次硫酸銅溶液とは陽極槽から流出するメッキ後の硫酸銅溶液である。そのうち、硫酸銅溶液中の銅含有率の変化は元の生産プロセスの効果を影響しないため、本実例に係る混合溶液における一次硫酸銅溶液と二次硫酸銅溶液の比は≧1:2であり、7:3がもっとも好ましい。すなわち、100%の硫酸銅溶液において、70%は一次硫酸銅溶液で、30%は二次硫酸銅溶液である。
【0037】
実施例3
図1と
図2のように、実施例1と実施例2の硫酸銅溶液の逆流による電解銅箔の生産方法に基づいたシステムである。陰極ロール1、半円弧状陽極2及び銅溶解装置12を含み、陰極ロールは弧状陽極の中に回転できるように設置され、陰極ロールと弧状陽極の間に設置された隙間で陽極槽3を形成し、陽極と陰極ロール間の距離は通常8‐15mmの間に維持され、陽極槽の上部に硫酸銅溶液を陽極槽中に搬送する上部槽13を設置し、陽極槽には硫酸銅溶液を陽極槽へ搬送する
上部槽13が設けられ、陽極槽両側の上端口はそれぞれ陰極ロールの両側に位置し(すなわち、陰極ロールが中心軸に沿って垂直に分離した二つの側面にある陽極槽の上端口)、そのうち、陰極ロールの半径方向の両側のうち一側は箔の生成側である。前記陽極槽には硫酸銅溶液流入口と流出口が設置され、銅溶解装置は搬送パイプ18を介して
上部槽の液体注入口と連通し、そのうち、前記システムは逆流する硫酸銅溶液のレシーバタンク8が設置され、陽極槽の硫酸銅溶液の流出口は前記レシーバタンクと連通し、前記レシーバタンクは銅溶解装置と連通し、前記レシーバタンクは硫酸銅溶液の補助ポンプ9を介して
上部槽の液体注入口に連通し、前記
上部槽の液体排出口は硫酸銅溶液搬送パイプを介して少なくとも陰極ロールの片側にある陽極槽の上端口と連通する。
【0038】
前記の銅溶解装置は現在銅箔工場が使用する伝統的なシステム装置であり、銅溶解タンク、熱交換器、濾過器及び貯蔵タンクを含み、銅溶解装置は搬送パイプによって
上部槽の液体注入口に連通し、つまり銅溶解装置の貯蔵タンクがポンプとパイプを介して
上部槽の液体注入口に連通する。
【0039】
好ましい形態1として、本実例に係る陰極ロールの片側とは、陰極ロールの箔の生成側を示し、即ち、前記陰極ロールの片側にある陽極槽の上端口は陰極ロールの箔の生成側の陽極槽の上端口である。
【0040】
好ましい形態2として、前記陽極槽の硫酸銅溶液流入口は、少なくとも陰極ロールの片側にある陽極槽の上端口であるため、陽極槽の硫酸銅溶液流出口は陽極槽の底にあってもよく、陰極ロールの別側にある陽極槽の上端口にあっても良い。硫酸銅溶液中の銅イオンが陰極ロールの表面にメッキされる過程で酸素の放出により発生される大量の気泡が陽極槽の上端口から放出されることを克服するため、当好ましい形態において、前記
上部槽の形態排出口は硫酸銅溶液の搬送パイプによって陰極ロールの両側にある陽極槽の上端口に連通し、前記陽極槽の硫酸銅溶液流出口は陽極槽の底に設置されている。(すなわち、弧状陽極の底には軸方向に沿って全長のノッチを設置する)。
【0041】
そのうち、陽極槽の中での硫酸銅溶液の流速の制御を実現するため、前記陽極槽の底の硫酸銅溶液流出口の長さは陰極ロールの長さと同じにし、流出口の幅19は少なくとも陰極ロールと弧状陽極間の隙間の2倍にする。
【0042】
実施例において、前記
上部槽と陽極槽の硫酸銅溶液流入口を連通するパイプ14には総流量制御弁15が設置され、前記陽極槽の硫酸銅溶液流出口とレシーバタンクを連通するパイプ10には陽極槽での硫酸銅溶液流速の制御弁11が設置されて、前記硫酸銅溶液の補充ポンプと
上部槽を連通するパイプ16には逆流する硫酸銅溶液の流速を調整する制御弁17が設置されている。
【0043】
実施例4
本実施例は、実施例3を基に改善したものであり、本実施例における例3と同じ部分は、実施例3に開示した内容を参考に理解し、実施例2に開示された内容も本実施例の内容になるべきである。
【0044】
本実施例に係る陽極槽の上端口は、陽極槽の上端口と同じ幅の流入する硫酸銅溶液の転換口20に連結され、転換口の中に硫酸銅溶液の流れ方向を調節できるそらせ板21が設置される。そらせ板の方向を制御することで銅箔の断面の厚さの均一さを調節できる。