(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記仮想面内にて前記沿面放電電極系に対して前記ガス流れの下流側に設置され、前記仮想面に対して直交する方向の幅は前記沿面放電電極系と略同一である第2整流化部材を更に備える請求項6に記載の粒子荷電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、沿面放電方式の絶縁体と電極は、絶縁体としてのセラミックの内部に誘導電極(内部電極)を設け、セラミックの表面に放電電極(表面電極)を設けて一体成形されている。しかし、セラミックは、還元雰囲気で焼成する必要があるため、電極サイズを大きくできない。そのため、装置の大型化のためには電極の数を増やさなければならず、コストが高くなるという問題があった。また、セラミック上に内部電極を形成した上にセラミックを積層し、さらにその上に表面電極を形成する構造としているため、構造が複雑になり、さらにコストが高くなるという問題があった。
【0009】
また、セラミック表面の放電電極は、臭気ガスやガス状物質を含むガス流れ上に設置されるため、ダストの付着のおそれがある。さらに、アンモニアが存在する環境下では、プラズマによって硝酸アンモニウム等の反応生成物が生成され、電極表面を覆ってしまう。電極表面がダストや反応生成物で覆われた場合、沿面放電が妨げられる。上記特許文献1では、放電部を洗浄液で自動的に洗浄し、メンテナンスの頻度を低減する技術が開示されている。ただし、洗浄しただけでは表面が濡れたままとなり、沿面放電ができないため、風を当てて乾かす等の対策が必要であった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電極における絶縁状態を確実に確保して放電を発生させ、表面電極表面へのダストの付着を低減することが可能なプラズマ発生装置、プラズマ発生装置の洗浄方法、粒子荷電装置及び集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のプラズマ発生装置、プラズマ発生装置の洗浄方法、粒子荷電装置及び集塵装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るプラズマ発生装置は、ガス流れに対して直交して設置され、電気的絶縁性を有する筒状の絶縁部と、前記絶縁部内部に前記絶縁部に密着して設けられた内部電極と、前記絶縁部の表面と一体化せずに密着し、前記ガス流れに対して平行又は斜めに線状に設けられた表面電極と、前記内部電極と前記表面電極との間に電圧を印加して、前記表面電極と前記絶縁部との境界表面に沿面放電を発生させる電源部とを備える。
【0012】
この構成によれば、内部電極は絶縁部内部に絶縁部に密着して設けられ、表面電極は絶縁部の表面に一体化せずに密着して設けられることから、内部電極と表面電極は、筒状の絶縁部によって確実に絶縁されながら、表面電極と絶縁部との境界表面で安定的に沿面放電を発生させることができる。また、表面電極は、ガス流れに対して平行又は斜めに線状に設けられていることから、表面電極と絶縁部の外表面近傍におけるガス流れを整流化すると共に、表面電極や絶縁部の外表面のダスト付着を低減できる。さらに、表面電極は、絶縁部の表面と一体化せずに密着していることから、表面電極と絶縁部が一体成形された場合に比べて、温度上昇時や沿面放電時等における絶縁部と表面電極の熱伸び差を緩和できる。
【0013】
上記発明において、前記表面電極は、前記絶縁部の表面に螺旋状に巻回されてもよい。
この構成によれば、表面電極は、例えばコイルスプリングであって、市販されているものを利用でき、絶縁部に対して密着するように配置しやすい。
【0014】
上記発明において、前記表面電極の両端に電圧を印加する加熱用電源部と、前記絶縁部及び前記表面電極の外表面に対して液体を供給する洗浄部とを更に備えてもよい。
この構成によれば、洗浄部から供給される液体によって、絶縁部や表面電極の外表面に付着したダストや反応生成物等を除去できる。また、加熱用電源部によって表面電極の両端に電圧がされると、表面電極の温度が上昇し、絶縁部や表面電極の洗浄により残存した液体を蒸発させ、絶縁部や表面電極を乾燥させることができる。
【0015】
本発明に係るプラズマ発生装置の洗浄方法は、上記のプラズマ発生装置の洗浄方法であって、前記電源部が前記内部電極と前記表面電極との間に電圧を印加して、前記表面電極と絶縁部との境界表面に沿面放電を発生させるステップと、前記沿面放電の発生を停止させた後、前記洗浄部が前記絶縁部及び前記表面電極の外表面に対して液体を供給するステップと、前記液体の供給を停止させた後、前記加熱用電源部が前記表面電極の両端に電圧を印加するステップとを含む。
【0016】
この構成によれば、表面電極と絶縁部との境界表面で安定的に沿面放電を発生させ、その後、洗浄部から供給される液体によって、絶縁部や表面電極の外表面に付着したダストや反応生成物等を除去する。また、洗浄後は、加熱用電源部によって、表面電極の温度を上昇させ、洗浄により残存した液体を蒸発させ、絶縁部や表面電極を乾燥させる。
【0017】
上記発明において、前記加熱用電源部による電圧印加を停止させた後、前記電源部が電圧を印加し、前記内部電極と前記表面電極との間を流れる電流の電流値を測定するステップと、前記測定された電流値に基づいて、前記電圧の印加を継続するか否かを判断するステップとを更に含んでもよい。電流値としては、そのピーク値、平均値若しくは実効値、又はこれらの組み合わせを検出するものとする。
【0018】
この構成によれば、洗浄処理及び乾燥処理が終了した後、電源部によって電圧が印加されるとき、内部電極と前記表面電極との間を流れる電流の電流値が測定される。そして、測定された電流値に応じて、電源部による電圧の印加を継続するか否かが判断される。例えば、規定の電圧を満たしている場合において、電流値が所定の範囲内にあるとき、洗浄及び乾燥が適正に実施されたと認定し、電流値が所定の範囲を逸脱しているとき、洗浄又は乾燥が不足していると認定する。
【0019】
本発明に係る粒子荷電装置は、ガス流れに対して平行な互いに対向する二つの仮想面内にそれぞれ設置され前記二つの仮想面間に交番電界を形成する沿面放電電極系を備え、前記沿面放電電極系は、前記ガス流れに対して直交して設置され、電気的絶縁性を有する筒状の絶縁部と、前記絶縁部内部に絶縁部に密着して設けられる内部電極と、前記絶縁部の表面と一体化せずに密着し、前記ガス流れに対して平行又は斜めに線状に設けられた表面電極とを有し、前記沿面放電電極系の前記内部電極と前記表面電極の両方に交番電圧を印加する主電源部と、前記内部電極と前記表面電極との間に励起電圧を更に印加して、前記表面電極と前記絶縁部との境界表面に沿面放電を発生させる励起電源部とを更に備える。
【0020】
この構成によれば、内部電極は絶縁部内部に絶縁部に密着して設けられ、表面電極は絶縁部の表面に一体化せずに密着して設けられることから、内部電極と表面電極は、筒状の絶縁部によって確実に絶縁されながら、表面電極と絶縁部との境界表面で安定的に沿面放電を発生させることができる。また、表面電極は、ガス流れに対して平行又は斜めに線状に設けられていることから、沿面放電電極系近傍におけるガス流れを整流化すると共に、沿面放電電極系表面のダスト付着を低減できる。
【0021】
上記発明において、前記仮想面内にて前記沿面放電電極系に対して前記ガス流れの上流側に設置され、前記仮想面に対して直交する方向の幅は前記沿面放電電極系と略同一であり、前記ガス流れに対して平行な面を有する第1整流化部材を更に備えてもよい。
【0022】
この構成によれば、ガス流れに対して平行な仮想面内において、第1整流化部材が沿面放電電極系に対してガス流れの上流側に設置されており、第1整流化部材の前記仮想面に対して直交する方向の幅は沿面放電電極系と略同一であって、ガス流れに対して平行な面を有する。その結果、第1整流化部材の下流側に位置する沿面放電電極系の近傍で、ガス流れが整流化され、表面電極の磨耗を促進する角度で衝突するガス流れの流速を低減できることから、表面電極の摩耗を減らせる。
【0023】
上記発明において、前記仮想面内にて前記沿面放電電極系に対して前記ガス流れの下流側に設置され、前記仮想面に対して直交する方向の幅は前記沿面放電電極系と略同一である第2整流化部材を更に備えてもよい。
【0024】
この構成によれば、ガス流れに対して平行な仮想面内において、第2整流化部材が沿面放電電極系に対してガス流れの下流側に設置されており、第2整流化部材の前記仮想面に対して直交する方向の幅は沿面放電電極系と略同一である。その結果、第2整流化部材の上流側に位置する沿面放電電極系の近傍で、ガス流れが整流化される。
【0025】
上記発明において、前記第1整流化部材及び第2整流化部材は、導電性を有し、表面電極と同一の電圧に印加されることが望ましい。
【0026】
この構成によれば、第1整流化部材及び第2整流化部材は、沿面放電電極系とともに互いに対向する二つの仮想面間に交番電界を形成することから、電界を形成する範囲が沿面放電電極系のみならず、第1整流化部材及び第2整流化部材の範囲まで広がるため、対向する整流化部材・沿面放電電極系どうしの間の空間で、より均一化された電界強度分布を得ることができる。したがって、第1整流化部材又は第2整流化部材が設置されない場合に比べて、沿面放電電極系の上流及び下流において、イオンを移動させられる範囲が広がることになる。更に、第2整流化部材に関しては、ガス流れによって、沿面放電電極系よりも下流に生成されたイオンが流れた場合でも、対向する仮想面内に設置された第2整流化部材のほうにイオンを移動させることができる。したがって、第2整流化部材が設置されない場合に比べて、帯電時間を長くすることができるため、粒子を効率良く荷電させることができる。
【0027】
上記発明において、一方の前記沿面放電電極系の前記表面電極は、対向する他方の前記沿面放電電極系に面する部分にのみ形成されてもよい。
【0028】
この構成によれば、互いに対向する沿面放電電極系が設置され、対向する沿面放電電極系間に交番電界が形成される。一方の沿面放電電極系のうち対向する他方の沿面放電電極系に面する部分にのみ表面電極が形成されているとき、内部電極と表面電極との間の放電は、一方の沿面放電電極系のうち対向する他方の沿面放電電極系に面する部分にのみ生じ、形成される交番電界と一致する。したがって、交番電界が形成されない部分では放電を発生させず、必要な部分のみ放電させていることから、消費電力を低減できる。
【0029】
また、本発明に係る集塵装置は、バグフィルタと、前記バグフィルタに対して前記ガス流れの上流側に配置される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、電極における絶縁状態を確実に確保して放電を発生させ、表面電極の表面へのダストの付着を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係るプラズマ発生装置1について、
図1〜
図7を用いて説明する。
プラズマ発生装置1は、
図1に示すように、主電源部5と、絶縁体(絶縁部)7と、内部電極8と、表面電極9などを備える。絶縁体7、内部電極8及び表面電極9は、沿面放電電極系を構成する。プラズマ発生装置1は、1つ又は複数の沿面放電電極系を備える。
【0033】
主電源部5は内部電極8と接続され、表面電極9は接地されている。主電源部5は、高周波高電圧を内部電極8に印加する。内部電極8に電圧が印加されると、表面電極9と絶縁体7との境界表面に沿面放電が発生する。これにより、プラズマの発生によってオゾンやラジカルが生成され、ガス流れに含まれる臭気分子又はVOC等がこれらと接触し分解される。
【0034】
絶縁体7は、例えばセラミックス製であって電気的絶縁性を有し、中空の円筒形状である。絶縁体7は、軸線方向がガス流れに対して直交して設置される。絶縁体7は、市販のセラミックスチューブを用いることによって、製造コストを抑制できる。
絶縁体7の軸線を通過する中空部分には、絶縁体7に密着して内部電極8が軸線に対して平行に設置される。内部電極8は、金属製の中実若しくは中空の棒状部材、金属繊維又は鉄粉などである。
絶縁体7の表面には、絶縁体7に対して拘束させずに、かつ、絶縁体7に密着して表面電極9が設置される。表面電極9は、1本の絶縁体7の軸線方向に設置される。
【0035】
表面電極9は、ガス流れに対して平行又は斜めに線状に形成される。表面電極9は、例えば、
図2に示すように、コイルスプリングを絶縁体7の表面に巻きつけることによって、絶縁体7の表面に密着して形成される。コイルスプリングは、市販されているものを利用でき、その場合、製造コストを抑制でき、プラズマ発生装置1の大型化に利点がある。また、コイルスプリングは絶縁体7に対して密着するように配置しやすい。
【0036】
また、表面電極9は、
図3に示すように、絶縁体7の表面に波状に導電線を設置したり、
図4に示すように、絶縁体7の表面に複数のリング状部材を設置し、各リング状部材を電気的に接続することによって、絶縁体7の表面に密着して形成される。
【0037】
さらに、表面電極9は、例えば
図5に示すように、導電線を複数本の絶縁体7にわたって設置することによって、複数本の絶縁体7の表面に沿って密着して形成される。また、表面電極9は、例えば
図6及び
図7に示すように、パンチングメタルを複数本の絶縁体7にわたって設置することによって、複数本の絶縁体7の表面に沿って密着して形成される。パンチングメタルを適用する場合、金属板に形成される貫通孔9Aは、ガス流れの方向に長いことが望ましい。これらの方法により、各沿面放電電極系の表面電極9は、複数本の絶縁体7にわたってガス流れに対して平行に設置される。
【0038】
表面電極9は、耐腐食性が高い材質である。これにより、水等の液体による洗浄に対しても腐食することなく、表面電極9の交換回数を低減できる。また、表面電極9は、導電性があり、かつ、ヒータ(加熱体)として機能するための電気抵抗率を有する。これにより、表面電極9は、後述するとおり、洗浄液を乾燥させるためのヒータとしても使用される。具体的には、表面電極9は、耐腐食性を有しつつ銅の10倍以上の電気抵抗率を有するチタン(電気抵抗率:4.27×10
-7Ωm)、又は、ステンレス(電気抵抗率:7.2×10
-7Ωm)などが望ましい。
【0039】
表面電極9が
図2に示すように、コイルスプリングであって絶縁体7に対して拘束されていない場合、従来の絶縁体と電極の一体成形品に比べて、加熱時や沿面放電時における絶縁体7と表面電極9の熱伸び差を緩和できる。したがって、熱伸び差が比較的小さいことから、従来よりもプラズマ発生装置の大型化を図ることが容易となる。
【0040】
上述したとおり絶縁体7の表面に表面電極9が形成されることによって、表面電極9は、ガス流れに対して平行又は斜めに線状に設けられる。これにより、表面電極9は、プラズマ発生装置1の近傍におけるガス流れを整流化すると共に、プラズマ発生装置1の表面のダスト付着を低減できる。
なお、表面電極9には、窒化等の表面硬化処理を施したり、導電性の耐磨耗性材料を表面に適用したりしてもよい。これにより、表面電極9などの寿命を延長することができる。
【0041】
以上、本実施形態によれば、内部電極8は絶縁体7の内部に絶縁部7に密着して設けられ、表面電極9は絶縁体7の表面に密着して設けられることから、内部電極8と表面電極9は、筒状の絶縁体7によって確実に絶縁されながら、表面電極9と絶縁部7との境界表面で沿面放電を発生させることができる。また、表面電極9は、ガス流れに対して平行又は斜めに線状に設けられていることから、プラズマ発生装置1の近傍におけるガス流れを整流化すると共に、プラズマ発生装置1の表面のダスト付着を低減できる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るプラズマ発生装置2について、
図8及び
図9を用いて説明する。
プラズマ発生装置2は、第1実施形態と同様に、主電源部5と、絶縁体(絶縁部)7と、内部電極8と、表面電極9などを備え、さらに、加熱用電源部14を備える。主電源部5、内部電極8及び表面電極9によって放電用回路が構成され、放電用回路にはスイッチSW1が設けられる。加熱用電源部14及び表面電極9によって加熱用回路が構成され、加熱用回路にはスイッチSW2が設けられる。絶縁体7、内部電極8及び表面電極9は、沿面放電電極系を構成する。
図8及び
図9で示した例では、沿面放電電極系は1本であるが、複数本でもよい。複数本の場合、各沿面放電電極系は、主電源部5又は加熱用電源部14に対し、直列、並列、又は直並列に接続される。
【0043】
表面電極9の近傍には、洗浄ノズル13が設けられ、洗浄ノズル13から洗浄液が表面電極9に対して噴出される。これにより、表面電極9に付着したダストや、硝酸アンモニウム等の反応生成物を除去できる。
図8及び
図9で示した例では、洗浄ノズル13は、1本の沿面放電電極系に対して、1個設置されているが、複数個設置されてもよい。
【0044】
表面電極9は、両端、すなわち絶縁体7の上部に配置された上端と、絶縁体7の下部に配置された下端とが、加熱用電源部14と接続される。加熱用電源部14は、交流電圧又は直流電圧を表面電極9に印加する。表面電極9に電圧が印加されると、表面電極9の温度が上昇する。これにより、絶縁体7や表面電極9の洗浄により残存した洗浄液を蒸発させ、絶縁体7や表面電極9を乾燥させることができる。その結果、水分が介在することによる沿面放電時の荷電の集中を防止できる。
【0045】
表面電極9は、絶縁体7の表面に設置されている。そのため、例えばコイルスプリングのような断面が円形状を有する場合、特に表面電極9と絶縁体7の接触部分の近傍に洗浄液が残存しやすい。したがって、表面電極9そのものが加熱体となることによって、表面電極9から離隔した位置からヒータ等によって加熱する場合に比べて、残存した洗浄液を乾燥させやすい。
【0046】
次に、
図8〜
図10を参照して、本実施形態に係るプラズマ発生装置2の運転方法及び洗浄・乾燥方法について説明する。
起動時は、まず、
図9に示すように、加熱用回路のスイッチSW2をONにし、放電用回路のスイッチSW1をOFFにして、表面電極9に電圧を印加し表面電極9の温度を上昇させる。これにより、結露等によって表面電極9と絶縁体7に付着していた水分を乾燥できる。
【0047】
乾燥処理が所定時間経過した後、
図8に示すように、加熱用回路のスイッチSW2をOFFにし、放電用回路のスイッチSW1をONにして、表面電極9の加熱を停止し、内部電極8に高周波高電圧を印加する。これにより、表面電極9と絶縁体7との境界表面に沿面放電が発生し、ガス流れに含まれる臭気分子又はVOC等を分解できる。この間、ガス流れの脱臭やガス状物質の除去が可能となる。
【0048】
脱臭やガス状物質の除去を継続すると、表面電極9や絶縁体7の表面にダストが付着したり、反応生成物によって表面電極9の表面が覆われたりする。脱臭やガス流れの除去の実行期間が所定時間経過した後、加熱用回路のスイッチSW2と放電用回路のスイッチSW1の両方をOFFにする。そして、洗浄ノズル13から洗浄液を表面電極9に対して噴出させ、表面電極9及び絶縁体7に付着したダストや反応生成物を除去する。洗浄処理が所定時間経過した後、洗浄液の噴出を停止し、加熱用回路のスイッチと放電用回路のスイッチの両方をOFFにしたまま、所定時間放置する。これにより、表面電極9や絶縁体7の表面に残存した洗浄液をある程度取り除くことができる。
【0049】
このような水切り期間を経た後、加熱用回路のスイッチSW2をONにし、放電用回路のスイッチSW1をOFFにして、表面電極9に電圧を印加し表面電極9の温度を上昇させる。これにより、洗浄処理によって表面電極9と絶縁体7に付着していた洗浄液を乾燥できる。その後は、上述した脱臭やガス状物質の除去処理、洗浄処理及び乾燥処理を順次繰り返してプラズマ発生装置9を運転させる。これらの運転は、シーケンス制御によって実行されるようにしてもよい。
【0050】
次に、表面電極9及び絶縁体7の洗浄及び加熱の可否判定について説明する。
可否の判断は、主電源部5に設置されている電圧・電流計測器を使用する。
乾燥処理が所定時間経過した後、放電用回路のスイッチSW1をONにして、内部電極8に高周波高電圧を印加する。そして、規定の電圧を満たしている場合、電流値が予め定められた範囲内にあるか否かを判断する。電流値(ピーク値、平均値若しくは実効値、又はこれらの組み合わせ)が所定の範囲内にあるとき、洗浄及び乾燥が適正に実施されたと認定して、高周波高電圧の印加を継続する。
【0051】
一方、規定の電圧を満たしている場合において、電流値(ピーク値、平均値若しくは実効値、又はこれらの組み合わせ)が所定の範囲を逸脱しているとき、洗浄又は乾燥が不足していると認定して、高周波高電圧の印加を停止する。洗浄が不足している場合、再度洗浄処理と乾燥処理を実施する。乾燥が不足している場合、加熱用電源部14によって電圧を印加して乾燥処理を再開する。乾燥処理を再開する場合、主電源部5を調整して低電流の電気を内部電極8と表面電極9の間に流し、誘電加熱によって、残存した水分を蒸発させてもよい。そして、乾燥が完了した後、高周波高電圧の印加を実施する。
【0052】
なお、高周波高電圧の印加が所定時間以上実行されないで、洗浄処理又は乾燥処理に繰り返し移行する場合は、何らかの不具合が生じていると認定して、警告を通知することで、管理者等が迅速にメンテナンスの用意をしたりメンテナンスを開始することができる。
【0053】
以上、本実施形態によれば、表面電極9を加熱体として使用することで、表面電極9や絶縁体7の表面に残存した洗浄液等の水分を乾燥させることができる。その結果、沿面放電時の荷電の集中を防止できる。表面電極9がコイルスプリングの場合のように、断面が円形状を有する場合、表面電極9と絶縁体7の接触部分の近傍に洗浄液が残存しやすいが、表面電極9そのものが加熱体となることによって、より確実に乾燥を行うことができる。
【0054】
また、表面電極9及び絶縁体7の洗浄及び加熱の可否判定を行うことで、表面電極9及び絶縁体7が適切に洗浄や乾燥が実行されたことを担保でき、自動運転を長時間にわたって継続することが可能となる。また、可否判定を行わない場合に比べて、メンテナンスが必要な時期を迅速に判断することもできる。
【0055】
集塵装置は、石炭焚き若しくは重油焚き等の発電プラント、又は焼却炉などの煙道や、粉塵を発生させる装置の後流に設置される。集塵装置には、一例としてバグフィルタが設置され、バグフィルタは、濾布を用いて燃焼排ガスや空気中に含まれるダスト(粒子状物質)を集塵する。
【0056】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る粒子荷電装置、及び、本実施形態に係る粒子荷電装置を備える集塵装置について説明する。
<本実施形態が解決しようとする課題>
ボクサーチャージャは、互いに対向する電極間に交番電界を形成し、かつ、電極近傍でコロナ放電を発生させる。ボクサーチャージャは、電界の両側からダストの帯電が可能であるため、高い帯電能力を有し、電界が周期的に交番するため、電極にダストが付着しても当該ダスト層への電荷の蓄積がなく、逆電離現象の発生を防止できる。
【0057】
しかし、例えばガス流速5m/s以上のダスト雰囲気下では、ダスト等による電極の磨耗が生じて、放電が発生しにくくなり、帯電性能が低下する。また、特許文献1で開示されているように、電極を構成する主電界形成用電極とコロナ電極が二つのコイルスプリングを組み合わせた形状を有する場合、主電界形成用電極とコロナ電極を接触させないで、絶縁状態を確実に確保することが困難であった。
【0058】
本実施形態は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電極における絶縁状態を確実に確保して放電を発生させることが可能な粒子荷電装置及び集塵装置を提供することを目的とする。
【0059】
<本実施形態の構成及び作用効果>
集塵装置は、石炭焚き若しくは重油焚き等の発電プラント、又は焼却炉などの煙道や、粉塵を発生させる装置の後流に設置され。集塵装置は、燃焼排ガスや空気中に含まれるダスト(粒子状物質)を集塵するバグフィルタと、予備荷電部としてのボクサーチャージャなどを備える。集塵装置において、ボクサーチャージャは、バグフィルタに対してガス流れの上流側に設置される。
【0060】
ボクサーチャージャ15は、
図11に示すように、互いに対向する第1アーム11A及び第2アーム11Bと、主電源部5と、励起電源部6とを有する。以下、第1アーム11Aと第2アーム11Bは、単に「アーム11」ともいう。各アーム11は、複数本の沿面放電電極系16と、上流側整流体(第1整流化部材)3と、下流側整流体(第2整流化部材)4と、枠材10を備える。第1アーム11Aと第2アーム11Bは、共通する主電源部5に接続され、かつ、それぞれ異なる励起電源部6に接続される。ボクサーチャージャ15は、互いに対向する第1アーム11Aの沿面放電電極系16と第2アーム11Bの沿面放電電極系16との間に交番電界を形成し、かつ、沿面放電電極系16の表面電極9と絶縁体7との境界表面に沿面放電を発生させる。
【0061】
ボクサーチャージャ15の内部、すなわち第1アーム11Aと第2アーム11Bとの間には、
図12に示すように、ガスが流通する。ここで、説明の便宜上、アーム11の中心部を通過する仮想面21,22を設定する。仮想面21,22は、ガス流れに対して平行であり、互いに対向し平行である。仮想面21内に第1アーム11Aが設置され、仮想面22内に第2アーム11Bが設置される。アーム11の各構成要素は、仮想面21,22内において、ガス流れの上流側から、上流側整流体3、複数本の沿面放電電極系16、下流側整流体4の順に設置される。なお、ここでのガス流れとは、ボクサーチャージャ15の内部に供給される直線状のガスの流れをいう。
【0062】
各アーム11において、沿面放電電極系16は、1本のみ設置されてもよいが、通常帯電時間を長くして帯電効率を向上させることを考慮して複数本設置される。沿面放電電極系16は、
図12に示すように、絶縁体(絶縁部)7と、内部電極8と、表面電極9などから形成される。
【0063】
絶縁体7は、例えばセラミックス製であって電気的絶縁性を有し、中空の円筒形状である。絶縁体7は、ガス流れに対して直交して設置される。
絶縁体7の軸線を通過する中空部分には、絶縁体7に密着して内部電極8が軸線に対して平行に設置される。内部電極8は、金属製の中実又は中空の棒状部材、金属繊維又は鉄粉などである。絶縁体7の表面には、絶縁体7に密着して表面電極9が設置される。表面電極9は、1本の絶縁体7の軸線方向に設置されてもよいし、複数本の絶縁体7にわたってガス流れに対して平行に設置されてもよい。表面電極9の設置方法については後述する。
【0064】
表面電極9は、ガス流れに対して平行又は斜めに線状に形成される。これにより、表面電極9は、沿面放電電極系16の近傍におけるガス流れを整流化すると共に、沿面放電電極系16の表面のダスト付着を低減できる。
一つのアーム11における複数本の沿面放電電極系16は、表面電極9を含む沿面放電電極系16の外径をdとしたとき、d以下の間隔で設置される。沿面放電電極系16間が離れすぎていないことによって、複数本の沿面放電電極系16が一体化された一つの電極であるように作用する。すなわち、沿面放電電極系16が筒形状で形成され複数本組み合わされることによって、ボクサーチャージャ15の帯電時間の増加に寄与し、発電プラント又は焼却炉などの煙道等のガス流速に対応して必要な帯電時間を満たす仕様のボクサーチャージャ15を製作できる。更に、一つのアーム11における沿面放電電極系16間が離れすぎていないことによって、下流側の沿面放電電極系16の近傍で、ガス流れが整流化され、表面電極9の磨耗を促進する角度で衝突するガス流れの流速を低減できることから、表面電極9の摩耗を減らせる。
【0065】
上流側整流体3は、横断面が長円形状の筒状部材であり、上述した仮想面21,22内にて、沿面放電電極系16の上流側に設置される。上流側整流体3は、沿面放電電極系16の軸線方向と平行に設置され、上流側整流体3は、
図11に示すように、ガス流れから沿面放電電極系16を隠して防ぐような長さを有する。また、上流側整流体3の横断面の長円形状は、
図12に示すように、仮想面21,22に対して直交する方向の幅が沿面放電電極系16の外径dとほぼ同一であり、ガス流れに対して平行な平面のガス流れ方向の長さが沿面放電電極系16の外径d以上である。
上流側整流体3と上流側整流体3に隣接する沿面放電電極系16は、沿面放電電極系16の外径d以下の間隔で設置される。
【0066】
上流側整流体3が設置されることによって、上流側整流体3が設置されない場合に比べて、上流側整流体3の下流側に位置する沿面放電電極系16の近傍で、ガス流れが整流化される(なお、流れの相違は、シミュレーションによって確認されている)。また、上流側整流体3が設置されることによって、表面電極9の磨耗を促進する角度で衝突するガス流れの流速を低減できることから、表面電極9の摩耗を減らせる。
上流側整流体3は、例えば炭素鋼製又はSUS製の導電性部材であり、沿面放電電極系16の表面電極9と同一の電圧が印加される。
【0067】
下流側整流体4は、横断面が円形状の中空又は中実の筒状部材であり、上述した仮想面内にて、沿面放電電極系16の下流側に設置される。下流側整流体4は、沿面放電電極系16の軸線方向と平行に設置され、下流側整流体4の長さは、上流側整流体3とほぼ同一である。下流側整流体4の外径は、沿面放電電極系16の外径dとほぼ同一である。
下流側整流体4と上流側整流体4に隣接する沿面放電電極系16は、沿面放電電極系16の外径d以下の間隔で設置される。
下流側整流体4が設置されることによって、下流側整流体4が設置されない場合に比べて、下流側整流体4の上流側に位置する沿面放電電極系16の近傍で、ガス流れが整流化される(なお、流れの相違は、シミュレーションによって確認されている)。
下流側整流体4は、例えば炭素鋼製又はSUS製の導電性部材であり、沿面放電電極系16の表面電極9と同一の電圧が印加される。
【0068】
上述したとおり、一つのアーム11において、上流側整流体3、複数本の沿面放電電極系16、下流側整流体4の順に間隔を設けて配置することで、沿面放電電極系16近傍でのガス流れが整流化され、特に、最も磨耗条件が厳しい角度である、仮想面21,22に対して45°の角度で表面電極9に入射するガス流れの流速を低減できる。その結果、表面電極9での磨耗を減らして、長寿命化を図ることができる。
【0069】
なお、表面電極9、上流側整流体3及び下流側整流体4には、窒化等の表面硬化処理を施したり、導電性の耐磨耗性材料を表面に適用したりしてもよい。これにより、表面電極9などの寿命を延長することができる。また、上流側整流体3の場合、板状部材(犠牲材)を更に上流側に設置することによって、簡易に長寿命化を図ることもできる。
【0070】
上流側整流体3、複数本の沿面放電電極系16及び下流側整流体4は、上部及び下部のそれぞれで枠材10によって固定されており、これにより、上流側整流体3、複数本の沿面放電電極系16及び下流側整流体4が一体化される。枠材10は、導電性の部材であり、沿面放電電極系16の表面電極9、上流側整流体3及び下流側整流体4と電気的に接続される。したがって、沿面放電電極系16の表面電極9に電圧を印加する際、上流側整流体3と下流側整流体4にも同一の電圧を印加しやすくなる。また、一体化構造となることから、ボクサーチャージャ15の製作が容易になる。
【0071】
以下、例として表面電極9と内部電極8の両方に交番電圧を印加し、内部電極8に更に励起電圧を重畳する場合について記載する。なお、内部電極8ではなく、表面電極9のほうに励起電圧を重畳してもよい。
主電源部5は、同一の仮想面21,22に存在する複数本の沿面放電電極系16の表面電極9、上流側整流体3及び下流側整流体4に同一の交番電圧を印加する。また、主電源部5は、励起電源部6にも同一の交番電圧を印加する。第1アーム11Aの沿面放電電極系16と第2アーム11Bの沿面放電電極系16は、
図13に示すように、半波長ずれたタイミングで交番電圧(
図13中のVcharage)が印加されることから、二つの仮想面21,22間には交番電界が形成される。
【0072】
励起電源部6は、内部電極8に断続的に(例えば主電源部5が印加する交番電圧の半周期ごとに)、主電源部5よりも高周波の交番電圧(励起電圧)を更に重畳する(
図13中のVextation)。これにより、内部電極8は、主電源部5と励起電源部6によって重畳された電圧が印加される。そして、表面電極9と絶縁体7との境界表面に沿面放電が発生する。励起電圧を上昇させると、沿面放電の強度が増加し、沿面放電電極系16に付着したダストを払い落とす効果を高める。
【0073】
図13の場合、励起電圧は主電源電圧の正極性に重畳されているため、沿面放電によって発生したプラズマに正イオンが含まれることになり、当該正イオンは電界の作用によって、対面する沿面放電電極系16の方向へ引き出される。そして、ガス流れによって搬送されたダスト(粒子)が、引き出された正イオンによって荷電される。なお、励起電圧を主電源電圧の負極性に重畳すると、負イオンが引き出されることになり、ダスト(粒子)が、引き出された負イオンによって荷電される。正極と負極のどちらの極性を選択しても良い。
【0074】
上流側整流体3及び下流側整流体4も、主電源部5によって、表面電極9と同電位とされることから、沿面放電電極系16よりも上流側及び下流側にも均一な強度分布を有する交番電界が形成される。したがって、第1整流化部材3及び第2整流化部材4が設置されない場合に比べて、沿面放電電極系16の上流及び下流において、イオンを移動させることが可能な範囲が広がることになる。また、ガス流れによって、沿面放電電極系16よりも下流に生成されたイオンが流れた場合でも、
図12の矢印Dに示すように、対向する仮想面内に設置された下流側整流体4のほうにイオンを移動させることができる。すなわち、下流側整流体4がイオンの受け手となるため、下流側整流体4が設置されない場合に比べて帯電時間を長くなるため、粒子を効率良く荷電させることができ、ボクサーチャージャ15の性能を向上させる。
【0075】
次に、絶縁体7の表面に設置される表面電極9について説明する。
表面電極9は、例えば、
図2に示すように、コイルスプリングを絶縁体7の表面に巻きつけたり、
図3に示すように、絶縁体7の表面に波状に導電線を設置したりすることによって、絶縁体7の表面に密着して形成される。また、表面電極9は、
図4に示すように、絶縁体7の表面に複数のリング状部材を設置し、各リング状部材を電気的に接続することによって、絶縁体7の表面に密着して形成される。
【0076】
これらの方法により、各沿面放電電極系16の表面電極9は、1本の絶縁体7の軸線方向に設置される。ボクサーチャージャ15が複数本の沿面放電電極系16を有する場合、各絶縁体7上に形成された表面電極9は互いに電気的に接続される。
【0077】
また、表面電極9は、例えば
図5に示すように、導電線を複数本の絶縁体7にわたって設置することによって、複数本の絶縁体7の表面に沿って密着して形成される。さらに、表面電極9は、例えば
図6及び
図7に示すように、パンチングメタルを複数本の絶縁体7にわたって設置することによって、複数本の絶縁体7の表面に沿って密着して形成される。パンチングメタルを適用する場合、金属板に形成される貫通孔9Aは、ガス流れの方向に長いことが望ましい。これらの方法により、各沿面放電電極系16の表面電極9は、複数本の絶縁体7にわたってガス流れに対して平行に設置される。
【0078】
上述したとおり絶縁体7の表面に表面電極9が形成されることによって、表面電極9は、ガス流れに対して平行又は斜めに線状に設けられる。これにより、表面電極9は、沿面放電電極系16の近傍におけるガス流れを整流化すると共に、沿面放電電極系16の表面のダスト付着を低減できる。
【0079】
さらに、表面電極9は、
図14に示すように、各絶縁体7の表面において、対向する他方の沿面放電電極系16に面する部分にのみ形成される。例えば、仮想面21に位置する沿面放電電極系16の絶縁体7の表面のうち、対向する他方の沿面放電電極系16に面している、絶縁体7の周囲の90°の部分に表面電極9が形成される。
【0080】
本実施形態に係るボクサーチャージャ15では、仮想面21と仮想面22にそれぞれ位置し互いに対向する沿面放電電極系16が設置され、対向する沿面放電電極系16間に交番電界が形成される。ここで、交番電界に形成される電流密度分布は
図15に示すようになる。
図15は、第1アーム11Aの沿面放電電極系16が放電しているときの状態であり、色が濃い部分が、電流密度が高い箇所である。この結果より、第1アーム11Aの沿面放電電極系16のうち対向する第2アーム11Bの沿面放電電極系16に面する部分は電流密度が高く、第1アーム11Aにおいて隣接し合う沿面放電電極系16間は電流密度が低いことが分かる。
【0081】
沿面放電は、表面電極9と絶縁部7との境界表面で発生する。本実施形態では、一方の沿面放電電極系16のうち対向する他方の沿面放電電極系16に面する部分にのみ表面電極9が形成されていることから、表面電極9と絶縁部7との境界表面の沿面放電は、一方の沿面放電電極系16のうち対向する他方の沿面放電電極系16に面する部分のみに生じる。そのため、沿面放電によってイオンが生成される部分は、交番電界の電流密度が高い部分と一致する。すなわち、交番電界の電流密度が低い部分では沿面放電を発生させず、必要な部分のみ沿面放電させていることから、本実施形態では、消費電力を低減できる。
【0082】
以上、本実施形態によれば、内部電極8は絶縁体7の内部に絶縁部7に密着して設けられ、表面電極9は絶縁体7の表面に密着して設けられることから、内部電極8と表面電極9は、筒状の絶縁体7によって確実に絶縁されながら、表面電極9と絶縁部7との境界表面で沿面放電を発生させることができる。また、表面電極9は、ガス流れに対して平行又は斜めに線状に設けられていることから、沿面放電電極系16の近傍におけるガス流れを整流化すると共に、沿面放電電極系16の表面のダスト付着を低減できる。
【0083】
また、ガス流れに対して平行な仮想面内において、上流側整流体3及び下流側整流体4が沿面放電電極系16に対してガス流れの上流側及び下流側にそれぞれ設置されている。したがって、沿面放電電極系16の近傍で、ガス流れが整流化され、表面電極9の磨耗を促進する角度で衝突するガス流れの流速を低減できることから、表面電極9の摩耗を減らせる。
【0084】
なお、上記実施形態では、内部電極8と表面電極9に主電源部5によって交番電圧を印加し、内部電極8に励起電源部6によって励起電圧を重畳する場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、表面電極9に励起電源部6によって励起電圧を重畳してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、
図13に示すように、主電源部5による交流電圧が正(+)の極性で励起電圧を印加する場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。励起電圧は、正(+)又は負(−)のいずれかの極性で印加される。
【0086】
さらに、上記実施形態では、主電源部5による交番電圧及び励起電源部6による交番電圧が正弦波である場合について説明したが、少なくともいずれか一方が例えば矩形波などその他の任意波形の交番電圧でもよい。
図16は、主電源部5による交番電圧と励起電源部6による交番電圧が矩形波である場合について示している。