(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機マット材の厚さは、前記無機マット材が巻き回された前記ハニカム構造体が前記筒状金属部材に収容された状態で、1mm〜20mmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の排ガス処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を説明する。
【0023】
図1には、本発明による排ガス処理装置の一例を模式的に示す。
図2には、本発明による排ガス処理装置を構成するハニカム構造体の構成を概略的に示す。
【0024】
図1に示すように、本発明による排ガス処理装置100は、ハニカム構造体200と、このハニカム構造体200の外周面に巻き回された無機マット材500と、この無機マット材500が巻き回されたハニカム構造体200を収容する筒状金属部材600とを有する。ハニカム構造体200は、一つのハニカムユニットを有する。
【0025】
無機マット材500は、ハニカム構造体200の外周面に巻き回され、自動車等に搭載されて使用する際に、ハニカム構造体200と筒状金属部材600とが接触して、ハニカム構造体200が破損することを防止する役割を有する。
【0026】
筒状金属部材600は、無機マット材500が巻き回されたハニカム構造体200を収容する役割を有する。筒状金属部材600は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル基合金等で作製される。
【0027】
図2に詳細に示すように、ハニカム構造体200は、2つの開口された端面210および215を有する。ハニカム構造体200は、長手方向に沿って一端から他端まで延伸し、両端面210および215で開口された複数のセル(貫通孔)222と、該セルを区画するセル壁224とを有する。セル壁224には、触媒が設置されている。
【0028】
ハニカム構造体200を構成するハニカムユニットは、例えば炭化珪素(SiC)を主成分とした材料で構成される。ハニカム構造体200の電気抵抗を低下させるため、ハニカムユニットには、さらに、例えば窒化アルミニウム(AlN)のような、少量の抵抗調整成分が添加されていても良い。従って、ハニカム構造体200を構成するハニカムユニットは、導電性である。
【0029】
また、ハニカム構造体200の外周面230には、一組の電極260、261が設置されている。
図2の例では、電極260は、ハニカム構造体200の外周面230の一方の端部近傍を取り囲むように構成され、電極261は、ハニカム構造体200の外周面230の他の端部近傍を取り囲むように形成される。ここで、端部近傍とは、ハニカム構造体200の端面から50mm以内の範囲を指す。ただし、これは一例であって、電極260、261の形態および設置箇所は、特に限られない。
【0030】
電極260、261は、例えば金属のような電気伝導性材料で形成される。電極260、261の形成方法は、特に限られない。電極260、2601は、例えば、金属の溶射、金属のスパッタリング法、または金属の蒸着法等により、ハニカム構造体200の外周面230上に形成されても良い。
【0031】
再度
図1を参照すると、排ガス処理装置100は、電極端子7501、7502からなる一組の電極端子を有する。電極端子7501は、無機マット材500を貫通して、ハニカム構造体200に設置された前述の電極260と接続される。同様に、電極端子750−2は、無機マット材500を貫通して、ハニカム構造体200に設置された前述の電極261と接続される。換言すれば、電極端子7501、7502は、それぞれ電極260および261を介して、ハニカム構造体200と電気的に接続されている。なお、電極端子7501、7502は、それぞれ、絶縁碍子7601、7602を介して、筒状金属部材600と絶縁されている。
【0032】
図1に示すように、排ガス処理装置100において、車両等からの排ガスが入口812から出口814に向かって、図の矢印891の方向に流れると、排ガスは、ハニカム構造体200の端面210から、ハニカム構造体200に流入される。
【0033】
ハニカム構造体200には、予め、電極端子7501、7502を介して、電極260、261間に電位差が印加されている。このため、ハニカム構造体200は、抵抗加熱により昇温されている。従って、ハニカム構造体200に流入された排ガスは、例えば、ハイブリッド車等の排ガスのように、温度が低い排ガスであっても、ハニカム構造体200のセル壁224に存在する触媒がハニカム構造体200の抵抗加熱で発生した熱で、活性化されることにより、処理される。その後、処理された排ガスは、ハニカム構造体200の端面215から、図の矢印892で示す方向に排出される。
【0034】
このように、排ガス処理装置100を用いて、ハニカム構造体200内に排ガスを流通させることにより、排ガスを処理することができる。
【0035】
ここで、特許文献1のように、従来の排ガス処理装置の場合、導電性のハニカム構造体と筒状金属部材の間の絶縁は、両者の間に無機マット材を介在させることにより達成される。しかしながら、無機マット材は、乾燥環境(例えば、25℃の室温)では高い電気抵抗で絶縁性を有するが、高湿潤環境では、マット材に水分が含浸して電気抵抗が低下し、導電性を示すようになる。このため、排ガス処理装置の使用中に、無機マット材が水分を含むようになると、無機マット材の電気抵抗が低下し、ハニカム構造体と筒状金属部材の間の絶縁性が悪くなる。
【0036】
これにより、ハニカム構造体と筒状金属部材とが短絡し、電流が金属製の筒状部材にリークするという問題が生じ得る。このように、電流が金属製の筒状部材にリークすると、ハニカム構造体を十分に加熱することができなくなってしまう。
【0037】
これに対して、本発明による排ガス処理装置100では、筒状金属部材600の内表面のうち、少なくとも無機マット材500と当接する箇所に、緻密な絶縁層が形成されているという特徴を有する。
【0038】
筒状金属部材600と絶縁層の界面では、筒状金属部材600を構成する物質と絶縁層を構成する物質とが、化学結合することで、筒状金属部材600と絶縁層の密着性が向上されている。具体的には、筒状金属部材600と絶縁層の間の界面では、筒状金属部材600を構成する物質と絶縁層を構成する物質を含む複合酸化物が形成されることで、筒状金属部材600と絶縁層の密着性が向上されている。
【0039】
このような排ガス処理装置100の作動時には、従来と同様、ハニカム構造体200を構成するハニカムユニットの通電により、ハニカム構造体200の温度が上昇する。また、水分を含む排気ガスの流入により、無機マット材500は、水分を含むようになる。しかしながら、本発明の排ガス処理装置100では、無機マット材500の含水により、無機マット材500の絶縁性が低下しても、筒状金属部材600の内表面の絶縁層の存在により、ハニカム構造体200と筒状金属部材600の間には、良好な絶縁性を確保することが可能となる。例えば、本発明による排ガス処理装置100では、ハニカム構造体200の通電時でも、ハニカム構造体200と筒状金属部材600の間の抵抗は、例えば、1×10
5Ω以上に維持される。
【0040】
従って、本発明では、ハニカム構造体200からの電流リークが有意に抑制され、ハニカム構造体200を適正に抵抗加熱することが可能となる。
【0041】
(筒状金属部材600の内表面に設置された緻密な絶縁層について)
次に、
図3を参照して、筒状金属部材600の内表面に設置された緻密な絶縁層について、詳しく説明する。
図3は、本発明による排ガス処理装置に含まれる筒状金属部材600の長手方向に対して垂直な断面を模式的に示した図である。
【0042】
図3に示すように、筒状金属部材600は、内表面602を有し、該内表面602には、絶縁層610が形成されている。
【0043】
ここで、緻密とは、絶縁層610の厚さ方向に貫通孔(through pore)が存在しない状態をいう。例えば、緻密な絶縁層は、全く孔が存在しない絶縁層、存在する孔が閉気孔(closed pore)である絶縁層、および存在する孔が絶縁層の厚さ方向の片面のみに閉塞している(blind pore)絶縁層を含む。
【0044】
なお、through pore、closed pore、およびblind poreの解釈については、参考文献Characterization of Pore Structure of Filter Media(Fluid/Particle Separation Journal vol.14,No.3,pp.227〜241)に準ずる。
【0045】
また、緻密な絶縁層の確認方法は、まず、Cu粒子をスパッタにより絶縁層610の全表面に塗布し、一組の電極を絶縁層610の表面と筒状金属部材600の外表面に設置する。一組の電極間に500Vの電圧を印加し、抵抗測定器で絶縁層610の表面と筒状金属部材600の外表面の抵抗値を測定する。抵抗測定器にはデジタル超高抵抗/微小電流計(R8340、アドバンテスト社製)を使用する。絶縁層610の表面と筒状金属部材600の外表面の間の抵抗値が絶縁層610の厚みが20μm以上において、4.0×10
4Ωより大きければ、絶縁層610は緻密であるという知見が得られている。なお、
図10は、緻密な絶縁層の走査型電子顕微鏡写真である。
図10は、厚さが20μm以上(400μm)の緻密な絶縁層610を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、倍率500倍で観察した図であり、このときの抵抗値は、4.0×10
4Ωより大きな値を示した。また、厚さが20μm以上であり、厚さ方向に貫通孔(through pore)が存在する絶縁層表面と筒状金属部材600の外表面の間の抵抗値は、4.0×10
4Ωより小さい値を示した。
【0046】
緻密な絶縁層では、孔に水分が侵入することが不可能になる。あるいは孔に水分が侵入しても、孔が絶縁層の厚さ方向に貫通していないので、水分がハニカム構造体200と筒状金属部材600の導電パスになることは不可能である。従って、緻密な絶縁層610が筒状金属部材600の内表面に形成された場合、筒状金属部材600とハニカム構造体200の絶縁性が確保される。
【0047】
絶縁層610の厚さは、例えば、20μm〜400μmの範囲であることが好ましい。
【0048】
絶縁層610の厚さが20μm未満の場合、筒状金属部材600とハニカム構造体200の絶縁性を確保することが困難となる。一方、絶縁層610の厚さが400μmを超えると、絶縁層610の製造時および/または排ガス処理装置100の使用時に、絶縁層610にクラックが入りやすくなるため、絶縁性を確保することが困難となる。
【0049】
絶縁層610は、例えば、「ガラス層」を有していることが好ましい。ここで、「ガラス層」とは、石英ガラスやアルカリガラスのようなガラス成分を含む層の総称である。
【0050】
「ガラス層」が緻密な絶縁層になる理由は、筒状金属部材600の内表面602に、ガラス層を形成させる工程において、ガラス成分を溶融させるときに、溶融ガラス中の空気が抜けるためである。
【0051】
ガラス層のガラス成分としては、例えば、バリウムガラス、ボロンガラス、ストロンチウムガラス、アルミナケイ酸ガラス、ソーダ亜鉛ガラス、およびソーダバリウムガラス等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上併用しても良い。
【0052】
ガラス層の融点は、例えば400℃〜1000℃であることが好ましい。ガラス層の融点が400℃未満では、排ガス処理装置の使用中に、ガラス層が容易に軟化してしまい、絶縁の効果が失われる。一方、ガラス層の融点が1000℃を超えると、筒状金属部材へのガラス層の形成の際に、高温での熱処理が必要となり、この際に、筒状金属部材が劣化する。
【0053】
ガラス層の厚さは、例えば、20μm〜400μmの範囲であることが好ましい。ガラス層の厚さが20μm未満の場合、筒状金属部材600とハニカム構造体200の絶縁性を確保することが困難となる。一方、ガラス層の厚さが400μmを超えると、ガラス層の製造時および/または排ガス処理装置100の使用時に、ガラス層にクラックが入りやすくなるため、絶縁性を確保することが困難となる。
【0054】
あるいは、絶縁層610は、非晶質結合材(ガラス成分)と、結晶質金属酸化物とで構成された混合層であることが好ましい。
【0055】
非晶質結合材としては、例えば、バリウムガラス、ボロンガラス、ストロンチウムガラス、アルミナケイ酸ガラス、ソーダ亜鉛ガラス、およびソーダバリウムガラス等が挙げられる。
【0056】
また、結晶質金属酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化クロム、および酸化アルミニウムのうちの少なくとも一つであっても良い。
【0057】
混合層が緻密な絶縁層になる理由は、筒状金属部材600の内表面602に混合層を形成させる工程において、非晶質結合材(ガラス成分)を溶融させるときに、溶融された非晶質結合材(ガラス成分)中の空気が抜けるためである。
【0058】
混合層の厚さは、例えば、50μm〜400μmの範囲であることが好ましい。混合層の厚さが50μm未満の場合、筒状金属部材600とハニカム構造体200の絶縁性を確保することが困難となる。一方、混合層の厚さが400μmを超えると、混合層の製造時および/または排ガス処理装置100の使用時に、混合層にクラックが入りやすくなるため、絶縁性を確保することが困難となる。
【0059】
図4には、本発明による排ガス処理装置に含まれる別の筒状金属部材の部分断面図を模式的に示す。
【0060】
図4は、筒状金属部材600の内表面602の別の形態(部分図)である。
【0061】
この
図4の例では、筒状金属部材600の内表面602に設置された絶縁層610は、2層構造となっている。すなわち、絶縁層610は、筒状金属部材600の半径方向の中心から遠い順に、第1の層610Aと、第2の層610Bとを有する。第2の層610Bは、前述のようなガラス層であっても良い。第1の層610Aは、筒状金属部材600の内表面602と、第2の層610Bとの間の密着性を高める役割を有する。第1の層610Aは、前述のような混合層であっても良い。
【0062】
例えば、第1の層610Aは、筒状金属部材600の熱膨張係数α
0と、第2の層610Bの熱膨張係数α
Bとの間の熱膨張係数を有していることが好ましい。例えば、筒状金属部材600がステンレス鋼(SUS304)で構成される場合、筒状金属部材600の熱膨張係数α
0は、17.6×10
−6/℃程度である。また、例えば、第2の層610Bが石英ガラスで構成される場合、第2の層610Bの熱膨張係数α
Bは、0.56×10
−6/℃程度である。この場合、第1の層610Aの熱膨張係数α
Aとして、0.6×10
−6/℃〜17×10
−6/℃の範囲を選定した場合、排ガス処理装置100の筒状金属部材600との間で密着性の良好な絶縁層610を形成することが可能になる。
【0063】
なお、絶縁層610が2層構造を有する場合、第1の層610Aは、50μm以上の厚さを有し、および/または第2の層610Bは、20μm以上の厚さを有することが好ましい。第1の層610Aの厚さが50μm未満で、第2の層610Bの厚さが20μm未満の場合、筒状金属部材600とハニカム構造体200の間の絶縁性を確保することが困難となる。また、絶縁層610が2層構造を有する場合、絶縁層610の厚さは、400μm以下であることが好ましい。2層構造を有する絶縁層610の厚さが400μmを超えると、2層構造を有する絶縁層610の製造時および/または排ガス処理装置100の使用時に、2層構造を有する絶縁層610にクラックが入るため、絶縁性を確保することが困難になる。
【0064】
また、
図4の例では、絶縁層610は、2層構造となっているが、絶縁層610を構成する層の数は、これに限られない。例えば、絶縁層610は、3層構造、4層構造等であっても良い。
【0065】
このように、本発明では、筒状金属部材600の内表面602の無機マット材500と当接する箇所に、絶縁層610が形成されているため、排ガス処理装置100の使用時に、無機マット材500の電気抵抗が低下しても、ハニカム構造体200に通電した電流が筒状金属部材600にリークすることを有意に抑制することができる。
【0066】
(排ガス処理装置を構成する他の部材について)
次に、本発明による排ガス処理装置100を構成する他の部材について、詳しく説明する。
【0067】
(ハニカム構造体)
図2の例では、ハニカム構造体200は、円柱形状を有するが、ハニカム構造体200の形状は、いかなる形状であっても良い。例えば、ハニカム構造体200の形状は、楕円柱、四角柱、多角柱等であっても良い。
【0068】
また、
図2の例では、ハニカム構造体200は、単一のハニカムユニットを有する、いわゆる「一体構造」となっている。しかしながら、ハニカム構造体は、複数のハニカムユニットで構成された、いわゆる「分割構造」を有しても良い。
【0069】
図5および
図8には、本発明による排ガス処理装置に含まれるハニカム構造体の別の構成を模式的に示す。
【0070】
図5および
図8には、「分割構造」のハニカム構造体300を示す。
図6には、
図5に示したハニカム構造体300を構成するハニカムユニットの一例を模式的に示す。
【0071】
図5に示すように、このハニカム構造体300は、2つの開口された端面310および315と、外周面330とを有する。
【0072】
ハニカム構造体300は、複数のハニカムユニット340を接着層350を介して複数個接合させることにより構成される。例えば、
図5の例では、ハニカム構造体300は、角柱状のハニカムユニット340を縦横に4個ずつ配列し、これらを接着層350を介して接合した後、周囲(外周面330)を円形状に加工することにより構成される。
【0073】
図6に示すように、各ハニカムユニット340は、該ハニカムユニット340の長手方向に沿って端面342から端面343まで延伸し、両端面342、343で開口された複数のセル322と、該セル322を区画するセル壁324とを有する。ハニカムユニット340は、例えば炭化珪素(SiC)を主成分とした材料で構成され、これに電気抵抗を低下させるため、例えば窒化アルミニウム(AlN)のような、少量の電気抵抗調整成分が添加されている。ハニカムユニット340のセル壁324には、触媒が担持されている。
【0074】
なお、
図5のハニカム構造体300においても、
図2に示したハニカム構造体200と同様、外周面330のいずれかの箇所(
図5の例では、外周面330の両端面近傍)に、一組の電極360、361が設置される。従って、ハニカム構造体300は、両電極360、361に通電することにより、抵抗加熱することができる。
【0075】
図8には、他の「分割構造」のハニカム構造体400を示す。また、
図9には、
図8に示したハニカム構造体400を構成するハニカムユニットの一例を模式的に示す。
【0076】
図8に示すように、ハニカム構造体400は、2つの開口された端面410および415と、外周面430とを有する。
【0077】
ハニカム構造体400は、複数のハニカムユニット440を接着層450を介して複数個接合させることにより構成される。例えば、
図8の例では、ハニカム構造体400は、扇柱状のハニカムユニット440を4個用いて、各々の扇柱状のハニカムユニット440の外周平面が向かい合うように配置し、これらを接着層450を介して接合することに構成される。扇柱状とは、円柱形状のハニカムユニットを2つ以上に切断して、ハニカムユニットの長手方向に対して、垂直断面の形状が2本の同一長さの直線と、1本の円弧によって囲まれた形状を有する柱状体のことを言う。扇柱状の形状および個数は、上記に限定されず、これらは、いかなる形状、およびいかなる個数であっても良い。
【0078】
図8に示すように、各ハニカムユニット440は、両端面442、443で開口された複数のセル422と、該セル422を区画するセル壁424とを有する。ハニカムユニット440は、例えば、炭化ケイ素(SiC)を主成分とした材料で構成され、これに電気抵抗を低下させるため、例えば窒化アルミニウム(AlN)のような、少量の電気抵抗調整成分が添加されている。ハニカムユニット440のセル壁424には、触媒が担持されている。
【0079】
さらに、
図8のハニカム構造体400においても、
図2または
図5に示したようなハニカム構造体200および300と同様、外周面430のいずれかの箇所(
図8の例では、外周面430の両端面近傍)に、一組の電極460、461が設置される。従って、ハニカム構造体400は、両電極460、461に通電することにより、抵抗加熱することができる。
【0080】
以下、「分割構造」のハニカム構造体300および/または400に含まれる各部材について、簡単に説明する。
【0081】
(ハニカムユニット)
ハニカムユニット340および/または440は、前述のように、炭化珪素(SiC)等を主体とした無機材料で構成され、これに電気抵抗を低下させるため、例えば、窒化アルミニウム(AlN)のような、少量の電気抵抗調整成分が添加されている。
【0082】
ハニカムユニット340の長手方向に対して垂直な断面の形状は、特に限定されるものではなく、いかなる形状であっても良い。ハニカムユニット340の形状は、正方形、長方形、六角形などであっても良い。
【0083】
また、ハニカムユニット340のセル322および/またはハニカムユニット440のセル422の長手方向に対して垂直な断面の形状は、特に限られず、略正方形以外に、例えば略三角形、略多角形としても良い。
【0084】
ハニカムユニット340および/または440のセル密度は、15.5〜186個/cm
2(100〜1200cpsi)の範囲であることが好ましく、46.5〜170個/cm
2(150〜800cpsi)の範囲であることがより好ましく、62〜155個/cm
2(150〜400cpsi)の範囲であることがさらに好ましい。
【0085】
ハニカムユニット340および/または440の気孔率は、35%〜70%の範囲であることが好ましい。
【0086】
ハニカムユニット340のセル壁324および/またはハニカムユニット440のセル壁424の厚さは、特に限定されないが、強度の点から望ましい下限は、0.1mmであり、浄化性能の観点から望ましい上限は、0.4mmであることが好ましい。
【0087】
ハニカムユニット340のセル壁324および/またはハニカムユニット440のセル壁424に担持される触媒は、特に限られず、例えば、白金、ロジウム、パラジウム等が使用されても良い。これらの触媒は、アルミナ層を介して、セル壁324および/または424に担持されていても良い。
【0088】
(接着層)
ハニカム構造体300および/または400の接着層350および/または450は、接着層用ペーストを原料として形成される。接着層用ペーストは、無機粒子、無機バインダ、無機繊維、および/または有機バインダを含んでも良い。
【0089】
接着層用ペーストの無機粒子としては、炭化珪素(SiC)が望ましい。無機バインダとしては、無機ゾルや粘土系バインダ等を用いることができ、上記無機ゾルの具体例としては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、または水ガラス等が挙げられる。また、粘土系バインダとしては、例えば、白土、カオリン、モンモリロナイト、セピオライト、またはアタパルジャイト等が挙げられる。これらの無機バインダは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0090】
これらの無機バインダの中では、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、またはアタパルジャイトが望ましい。
【0091】
無機繊維の材料としては、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムまたはホウ酸アルミニウム等が望ましい。これらは、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。上記材料の中では、シリカアルミナが望ましい。
【0092】
また、有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどから選ばれる1種以上が挙げられる。有機バインダの中では、カルボキシルメチルセルロースが望ましい。
【0093】
接着層の厚さは、0.3〜2mmの範囲であることが好ましい。接着層の厚さが0.3mm未満では、接着層とハニカムユニットとの間で十分な接合強度が得られなくなるためである。また接着層の厚さが2mmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失が大きくなる。なお、接合させるハニカムユニットの数は、ハニカム構造体の大きさに合わせて適宜選定される。
【0094】
(無機マット材500)
無機マット材500は、無機繊維を含む限り、いかなる組成のマット材であっても良い。
【0095】
無機マット材500は、例えば、アルミナおよびシリカからなる無機繊維(例えば、直径3μm〜8μm)を含んでも良い。また、無機マット材500は、有機バインダを含んでも良い。
【0096】
無機マット材500の厚さは、筒状金属部材600に収容された状態で、1mm〜20mmの範囲であることが好ましい。
【0097】
無機マット材500の厚さが1mm未満の場合、自動車等に搭載して使用する際、ハニカム構造体200、300および400と筒状金属部材600の間の緩衝効果が不十分となり、ハニカム構造体200、300および400が破損するという問題が発生する。一方、無機マット材500の厚さが20mmを超えると、ハニカム構造体200、300および400を保持する力が低下し、自動車等に搭載して使用する際、ハニカム構造体200、300および400が筒状金属部材600から脱落するという問題が発生する。
【0098】
無機マット材500の密度は、筒状金属部材600に収容された状態で、0.05g/cm3〜0.5g/cm3の範囲であることが好ましい。無機マット材500の密度が0.05g/cm3未満の場合、自動車等に搭載して使用する際、ハニカム構造体200、300、および400と筒状金属部材600の間の緩衝効果が不十分となり、ハニカム構造体200、300、および400が破損するという問題が発生する。一方、無機マット材500の密度が0.5g/cm3を超えると、無機マット材500が筒状金属部材600およびハニカム構造体200、300、および400から受ける圧力が大きくなり、無機マット材500の潰れまたは破損の問題が発生する。
【0099】
(排ガス処理装置の作製方法)
次に、本発明による排ガス処理装置100の製造方法について説明する。
【0100】
本発明の排ガス処理装置100は、ハニカム構造体200、300および400の外周面に無機マット材500を巻き回し、この無機マット材500が巻き回されたハニカム構造体200、300および400を、内表面602に絶縁層610を有する筒状金属部材600内に収容することにより構成される。
【0101】
以下、ハニカム構造体の製造方法、および筒状金属部材への絶縁層の形成方法の一例について説明する。
(ハニカム構造体の製造方法)
ハニカム構造体は、以下の方法で製造される。
【0102】
なお、以下の記載では、
図5、
図8に示したような「分割方式」のハニカム構造体300、400の製造方法について説明する。ただし、この方法は、接着層で複数のハニカムユニットを接合する部分を除き、「一体型」のハニカム構造体200の製造にも同様に適用することができることは、当業者には明らかである。
【0103】
まず、炭化珪素(SiC)を主成分とし、原料ペーストを用いて押出成形等を行い、ハニカムユニット成形体を作製する。なお、ハニカムユニットの電気抵抗調整のため、原料ペースト中には、さらに、適量の窒化アルミニウム(Alおよび/または成形助剤を成形性にあわせて適宜加えてもよい。有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂等から選ばれる1種以上の有機バインダが挙げられる。有機バインダの配合量は、無機粒子、無機バインダおよび無機繊維の合計100重量部に対して、1〜10重量部が好ましい。
【0104】
分散媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(ベンゼンなど)およびアルコール(メタノールなど)などを挙げることができる。成形助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸およびポリアルコール等を挙げることができる。
【0105】
原料ペーストは、特に限定されるものではないが、混合および混練することが好ましく、例えば、ミキサーまたはアトライタなどを用いて混合してもよく、ニーダーなどで十分に混練してもよい。原料ペーストを成形する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、押出成形などによってセルを有する形状に成形することが好ましい。
【0106】
次に、得られたハニカムユニットの成形体は、乾燥することが好ましい。乾燥に用いる乾燥機は、特に限定されるものではないが、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機および凍結乾燥機などが挙げられる。また、得られたハニカムユニットの成形体は、脱脂することが好ましい。脱脂する条件は、特に限定されず、ハニカムユニットの成形体に含まれる有機物の種類や量によって適宜選択するが、おおよそ400℃、2時間が好ましい。その後、得られたハニカムユニットの成形体の焼成を行う。焼成条件としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気において、2200℃で3時間焼成することが好ましい。
【0107】
次に、以上の工程で得られたハニカムユニットの側面に、後に接着層となる接着層用ペーストを均一な厚さで塗布した後、この接着層用ペーストを介して、順次他のハニカムユニットを積層する。この工程を繰り返し、所望の寸法のハニカム構造体(ハニカムユニットの集合体)を作製する。
【0108】
次にこのハニカム構造体を加熱して、接着層用ペーストを乾燥、脱脂、固化して、接着層を形成させるとともに、ハニカムユニット同士を固着させる。このとき、ハニカム構造体を加熱する際の温度は、500℃〜800℃が好ましく、600℃〜700℃がさらに好ましい。ハニカム構造体を加熱する際の温度が500℃未満の場合、接着層用ペーストに含まれる無機バインダの縮合重合が進まず、接着層の接合強度が低下し、自動車等に搭載して使用する際、ハニカムユニットが脱落するという問題がある。一方、温度が800℃を超えると、接着層用ペーストに含まれる無機バインダの縮合重合が終了しているため、これ以上のハニカムユニットの接合強度の増加効果が得られないことに加えて、生産性が悪くなるという問題がある。
【0109】
ハニカム構造体を加熱する時間は、2時間程度である。
【0110】
その後、ハニカム構造体を構成するハニカムユニットのセル壁に、触媒が担持される。
【0111】
次に、ハニカム構造体の外周面に、電極が設置される。電極は、前述のように、金属の溶射、スパッタ等により形成することができる。
【0112】
以上の工程により、
図5、
図8に示すような「分割式」のハニカム構造体300、400を製作することができる。
(筒状金属部材への絶縁層の形成方法)
筒状金属部材600の絶縁層610は、以下の方法で形成される。
【0113】
まず、筒状金属部材600を準備する。筒状金属部材600は、例えば、ステンレス鋼(SUS304、SUS430等)またはニッケル基合金であっても良い。
【0114】
次に、筒状金属部材600の内表面602に絶縁層610を形成する。前述のように、絶縁層610は、ガラス層を有しても良く、混合層を有しても良い。
【0115】
絶縁層610の成膜方法は、特に限られず、絶縁層610は、ガラス成分のスプレー塗布法、刷毛塗り法など、一般的なコーティング法で成膜しても良い。
【0116】
絶縁層を2層以上の複数層で構成する場合も、同様である。
【0117】
なお、成膜された絶縁層は、緻密性を確保するために、コーティングと焼き付けを数回以上繰り返して成膜しても良い。
【0118】
通常の場合、成膜された絶縁層は、焼成され、これにより絶縁層が筒状金属部材の内表面に固着される。例えば、絶縁層として、前述のようなガラス層または混合層を用いる場合、成膜後の焼成温度は、400℃〜1000℃の範囲であることが好ましい。
【0119】
成膜後の焼成温度が400℃未満の場合、絶縁層610と筒状金属部材600の間の界面において、絶縁層610を構成する物質と筒状金属部材600を構成する物質が、化学結合によって複合酸化物を形成することができず、絶縁層610と筒状金属部材600の密着性が低下し、絶縁層610が筒状金属部材600から剥離するという問題がある。一方、成膜後の焼成温度が1000℃を超えると、筒状金属部材600が変形するという問題がある。
【実施例】
【0120】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0121】
(実施例1)
以下の方法で、実際に、内表面に絶縁層が形成された筒状金属部材を作製した。また、この筒状金属部材を有する排ガス処理装置を作製した。
【0122】
(筒状金属部材の作製)
筒状金属部材には、外径105mm(肉厚2mm)、全長90mmのSUS304綱管を使用した。使用前に、このSUS304綱管をアルコール中で超音波洗浄した。
【0123】
まず、SUS304綱管の内表面にサンドブラスト処理を実施した。サンドブラストには、#80のアルミナ砥粒を使用し、処理時間は、10分間とした。サンドブラスト処理後のSUS304綱管の内表面の最大高さRzは、2.5μmであった。
【0124】
次に、以下のようにして、SUS304綱管の内表面に絶縁層を形成した。
【0125】
まず、バリウムを含むケイ酸ガラス粉末100重量部に対して、水を100重量部加えて、ボールミル処理器で湿式混合し、スラリーを得る。
【0126】
このスラリーを、SUS304綱管の内表面にスプレー塗布し、2時間乾燥させる。その後、SUS304綱管を900℃で20分間保持し、SUS304綱管の内表面にガラス層を形成した。ガラス層の厚さは、30μmであった。
【0127】
このSUS304綱管を、以下、「実施例1に係る筒状金属部材」と称する。
【0128】
(排ガス処理装置の作製)
以下の手順で、排ガス処理装置を作製した。
【0129】
図7は、実施例および比較例に係る排ガス処理装置を模式的に示した断面図である。
【0130】
図7には、実施例1で作製した排ガス処理装置の構造を概略的に示す。排ガス処理装置900は、ハニカム構造体910と、無機マット材920と、実施例1に係る筒状金属部材930と、一組の測定用電極940A、940Bとで構成される。
【0131】
まず、ハニカム構造体910として、
図5に示したような、ハニカム構造体300を準備した。
図7に示すように、ハニカム構造体910は、内径93mmφ、全長100mmの円筒状のハニカム構造体である。このハニカム構造体910を構成する各ハニカムユニットは、炭化珪素製である。
【0132】
このハニカム構造体910の側面に、アルミニウム製の測定用電極940Aを取り付けた。測定用電極940Aは、全長100mm×幅10mm×厚さ0.3mmの寸法を有する。測定用電極940Aは、市販の絶縁テープを用いて、ハニカム構造体910の側面に固定した。
【0133】
次に、ハニカム構造体910の側面に、無機マット材920を巻き回した。無機マット材920は、アルミナ繊維で構成され、無機マット材920の幅(
図7の横方向の長さ)は、30mmである。
【0134】
次に、無機マット材920が巻き回されたハニカム構造体910を、実施例1に係る筒状金属部材930内に圧入した。筒状金属部材930内に収容された無機マット材920の厚さは、4mmである。
【0135】
最後に、実施例1に係る筒状金属部材930の外表面に、アルミニウム製の別の測定用電極940Bを設置した。測定用電極940Bは、全長100mm×幅10mm×厚さ0.3mmの寸法を有する。測定用電極940Bは、市販の絶縁テープを用いて、実施例1に係る筒状金属部材930の外表面に固定した。
【0136】
このようにして得られた排ガス処理装置900を、以下、「実施例1に係る排ガス処理装置」と称する。
【0137】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、筒状金属部材(実施例2に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例2に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例2では、筒状金属部材の内表面に形成されたガラス層の厚さは、20μmとした。その他の作製条件は、実施例1と同様である。
【0138】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、筒状金属部材(実施例3に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例3に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例3では、筒状金属部材の内表面に形成されたガラス層の厚さは、80μmとした。その他の作製条件は、実施例1と同様である。
【0139】
(実施例4)
実施例1と同様の方法で、筒状金属部材(実施例4に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例4に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例4では、筒状金属部材の内表面に形成されたガラス層の厚さは、400μmとした。その他の作製条件は、実施例1と同様である。
【0140】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で、筒状金属部材(比較例1に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(比較例1に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この比較例1では、筒状金属部材の内表面に形成されたガラス層の厚さは、8μmとした。その他の作製条件は、実施例1と同様である。
【0141】
(比較例2)
実施例1と同様の方法で、筒状金属部材(比較例2に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(比較例2に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この比較例2では、筒状金属部材の内表面に形成されたガラス層の厚さは、600μmとした。その他の作製条件は、実施例1と同様である。
【0142】
(実施例5)
実施例1と同様の方法で、筒状金属部材(実施例5に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例5に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例5では、以下のようにして、SUS304綱管の内表面に絶縁層を形成した。
【0143】
酸化マンガン(MnO
2)粉末と、酸化鉄(FeO)粉末と、酸化銅(CuO)粉末と、前述のバリウムを含むケイ酸ガラス粉末とを、MnO
2:FeO:CuO:ガラス粉末が重量比で30:5:5:60となるように乾式混合し、混合粉末を得る。この混合粉末100重量部に対して、水を100重量部加えて、ボールミル処理器で湿式混合し、スラリーを得る。
【0144】
このスラリーを、SUS304綱管の内表面にスプレー塗布し、2時間乾燥させる。その後、SUS304綱管を900℃で20分間保持し、SUS304綱管の内表面に、結晶質金属酸化物と非晶質結合材とからなる混合層を形成した。混合層の厚さは、50μmであった。
【0145】
このSUS304綱管を、以下、「実施例5に係る筒状金属部材」と称する。
【0146】
実施例5に係る筒状金属部材を用いて、実施例1と同様の方法で、実施例5に係る排ガス処理装置を作製した。
【0147】
(実施例6)
実施例5と同様の方法で、筒状金属部材(実施例6に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例6に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例6では、筒状金属部材の内表面に形成された混合層の厚さは、100μmとした。その他の作製条件は、実施例5と同様である。
【0148】
(実施例7)
実施例5と同様の方法で、筒状金属部材(実施例7に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例7に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例7では、筒状金属部材の内表面に形成された混合層の厚さは、400μmとした。その他の作製条件は、実施例5と同様である。
【0149】
(実施例8)
実施例1と同様の方法で、筒状金属部材(実施例8に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例8に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例8では、以下のようにして、SUS304綱管の内表面に絶縁層を形成した。
【0150】
酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末と、前述のバリウムを含むケイ酸ガラス粉末とを、Al
2O
3:ガラス粉末が重量比で10:90となるように乾式混合し、混合粉末を得る。この混合粉末100重量部に対して、水を100重量部加えて、ボールミル処理器で湿式混合し、スラリーを得る。
【0151】
このスラリーを、SUS304綱管の内表面にスプレー塗布し、2時間乾燥させる。その後、SUS304綱管を900℃で20分間保持し、SUS304綱管の内表面に、結晶質金属酸化物と非晶質結合材とからなる混合層を形成した。混合層の厚さは、100μmであった。
【0152】
このSUS304綱管を、以下、「実施例8に係る筒状金属部材」と称する。
【0153】
実施例8に係る筒状金属部材を用いて、実施例1と同様の方法で、実施例8に係る排ガス処理装置を作製した。
【0154】
(実施例9)
実施例1と同様の方法で、筒状金属部材(実施例9に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例9に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例9では、以下のようにして、SUS304綱管の内表面に絶縁層を形成した。
【0155】
酸化マンガン(MnO
2)粉末と、前述のバリウムを含むケイ酸ガラス粉末とを、MnO
2:ガラス粉末が重量比で15:85となるように乾式混合し、混合粉末を得る。この混合粉末100重量部に対して、水を100重量部加えて、ボールミル処理器で湿式混合し、スラリーを得る。
【0156】
このスラリーを、SUS304綱管の内表面にスプレー塗布し、2時間乾燥させる。その後、SUS304綱管を900℃で20分間保持し、SUS304綱管の内表面に、結晶質金属酸化物と非晶質結合材とからなる混合層を形成した。混合層の厚さは、100μmであった。
【0157】
このSUS304綱管を、以下、「実施例8に係る筒状金属部材」と称する。
【0158】
実施例8に係る筒状金属部材を用いて、実施例1と同様の方法で、実施例8に係る排ガス処理装置を作製した。
【0159】
(比較例3)
実施例5と同様の方法で、筒状金属部材(比較例3に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(比較例3に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この比較例3では、筒状金属部材の内表面に形成された混合層の厚さは、600μmとした。その他の作製条件は、実施例5と同様である。
【0160】
(比較例4)
実施例5と同様の方法で、筒状金属部材(比較例4に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(比較例4に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この比較例4では、筒状金属部材の内表面に形成された混合層の厚さは、20μmとした。その他の作製条件は、実施例5と同様である。
【0161】
(実施例10)
実施例1と同様の方法で、筒状金属部材(実施例10に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例10に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例10では、以下のようにして、SUS304綱管の内表面に絶縁層を形成した。
【0162】
酸化マンガン(MnO
2)粉末と、酸化鉄(FeO)粉末と、酸化銅(CuO)粉末と、バリウムを含むケイ酸ガラス粉末とを、MnO
2:FeO:CuO:ガラス粉末が重量比で30:5:5:60となるように乾式混合し、混合粉末を得る。この混合粉末100重量部に対して、水を100重量部加えて、ボールミル処理器で湿式混合し、第1のスラリーを得る。
【0163】
この第1のスラリーを、SUS304綱管の内表面にスプレー塗布し、2時間乾燥させる。その後、SUS304綱管を900℃で20分間保持し、SUS304綱管の内表面に、結晶質金属酸化物と非晶質結合材とからなる混合層を形成した。混合層の厚さは、5μmであった。
【0164】
次に、前述のバリウムを含むケイ酸ガラス粉末100重量部に対して、水を100重量部加えて、ボールミル処理器で湿式混合し、第2のスラリーを得る。
【0165】
この第2のスラリーを、SUS304綱管の内表面に形成された混合層上にスプレー塗布し、2時間乾燥させる。その後、SUS304綱管を900℃で20分間保持し、SUS304綱管の混合層上に、ガラス層を形成した。ガラス層の厚さは、20μmであった。
【0166】
このSUS304綱管を、以下、「実施例10に係る筒状金属部材」と称する。
【0167】
実施例10に係る筒状金属部材を用いて、実施例1と同様の方法で、実施例10に係る排ガス処理装置を作製した。
【0168】
(実施例11)
実施例10と同様の方法で、筒状金属部材(実施例11に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例11に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例11では、筒状金属部材の内表面に設置された混合層の厚さは、50μmとし、ガラス層の厚さは、5μmとした。その他の作製条件は、実施例10と同様である。
【0169】
(実施例12)
実施例10と同様の方法で、筒状金属部材(実施例12に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例12に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例12では、筒状金属部材の内表面に形成された混合層の厚さは、200μmとし、ガラス層の厚さは、200μmとした。その他の作製条件は、実施例10と同様である。
【0170】
(実施例13)
実施例10と同様の方法で、筒状金属部材(実施例13に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例13に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例13では、筒状金属部材の内表面に形成された混合層の厚さは、50μmとし、ガラス層の厚さは、25μmとした。その他の作製条件は、実施例10と同様である。
【0171】
(実施例14)
実施例10と同様の方法で、筒状金属部材(実施例14に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例14に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例14では、第1のスラリーは、以下のようにして調製した。
【0172】
酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末と、バリウムを含むケイ酸ガラス粉末とを、Al
2O
3:ガラス粉末が重量比で10:90となるように乾式混合し、混合粉末を得る。この混合粉末100重量部に対して、水を100重量部加えて、ボールミル処理器で湿式混合し、第1のスラリーを得た。
【0173】
その他の作製条件は、実施例10と同様である。
【0174】
なお、筒状金属部材の内表面に形成された混合層の厚さは、50μmであり、ガラス層の厚さは、25μmであった。
【0175】
(実施例15)
実施例10と同様の方法で、筒状金属部材(実施例15に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(実施例15に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この実施例15では、第1のスラリーは、以下のようにして調製した。
【0176】
酸化マンガン(MnO
2)粉末と、バリウムを含むケイ酸ガラス粉末とを、MnO
2:ガラス粉末が重量比で15:85となるように乾式混合し、混合粉末を得る。この混合粉末100重量部に対して、水を100重量部加えて、ボールミル処理器で湿式混合し、第1のスラリーを得た。
【0177】
その他の作製条件は、実施例10と同様である。
【0178】
なお、筒状金属部材の内表面に形成された混合層の厚さは、50μmであり、ガラス層の厚さは、25μmであった。
【0179】
(比較例5)
実施例10と同様の方法で、筒状金属部材(比較例5に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(比較例5に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この比較例5では、筒状金属部材の内表面に形成された混合層の厚さは、300μmとし、ガラス層の厚さは、300μmとした。その他の作製条件は、実施例10と同様である。
【0180】
(比較例6)
実施例10と同様の方法で、筒状金属部材(比較例6に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(比較例6に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この比較例6では、筒状金属部材の内表面に形成された混合層の厚さは、20μmとし、ガラス層の厚さは、5μmとした。その他の作製条件は、実施例10と同様である。
【0181】
(比較例7)
実施例10と同様の方法で、筒状金属部材(比較例7に係る筒状金属部材)および排ガス処理装置(比較例7に係る排ガス処理装置)を作製した。ただし、この比較例7では、筒状金属部材の内表面に形成された混合層の厚さは、10μmとし、ガラス層の厚さは、10μmとした。その他の作製条件は、実施例10と同様である。
【0182】
表1および表2には、各実施例および比較例に係る筒状金属部材の絶縁層の組成、膜厚(層の厚さ)等をまとめて示した。
【0183】
【表1】
【0184】
【表2】
(密着性評価)
前述の方法で作製した実施例1〜実施例15に係る筒状金属部材、および比較例1〜比較例7に係る筒状金属部材を用いて、絶縁層の密着性評価試験を行った。評価試験方法として、以下の熱衝撃試験を採用した。
【0185】
まず、各筒状金属部材を、850℃に加熱する。この状態で、各筒状金属部材を25℃の水中に投下する。その後、各筒状金属部材を回収し、絶縁層の剥離状況を目視で観察した。
【0186】
結果をまとめて、前述の表1、表2の「密着性」の欄に示す。この密着性評価の結果から、実施例1〜15に係る筒状金属部材では、絶縁層に剥離は生じていないことがわかる。一方、比較例2、3および5の筒状金属部材では、試験後に絶縁層に剥離が生じた。
【0187】
(抵抗値測定)
次に、実施例1〜実施例15に係る排ガス処理装置、および比較例1〜比較例7に係る排ガス処理装置を用いて、装置の抵抗(体積抵抗)値測定を行った。抵抗値の測定には、抵抗測定器(デジタル超高抵抗/微小電流計(R8340、アドバンテスト社製))を使用した。具体的には、以下のように行った。
【0188】
測定前に、排ガス処理装置の無機マット材に、25℃における電気抵抗率が0.1〜1.0MΩ・cmである蒸留水を注水した(蒸留水の電気抵抗率は、テクノ・モリオカ社製の電気抵抗率計7727−A100で測定した)。これにより、無機マット材は、該無機マット材から水がしたたるほど、十分に含水された。
【0189】
この状態で、一組の測定用電極間に抵抗測定器を接続した。両電極の間に、500Vの電圧を印加し、10分経過後に、電極間の抵抗値を測定した。
【0190】
なお、前述の測定方法では、絶縁層自体の抵抗値を測定せず、排ガス浄化装置において、蒸留水が含水された無機マット材と筒状金属部材の間の抵抗値を測定している。しかしながら、実施例1〜実施例15および比較例1〜比較例7において、蒸留水が含水された無機マット材と筒状金属部材の抵抗値は、絶縁層の抵抗値に比べて、1/10
18〜1/10
6倍と格段に低いため、無機マット材と筒状金属部材の間の抵抗値を測定することは、実質的に絶縁層自体の抵抗値を測定していることと等しいと言える。
【0191】
測定結果を、前述の表1、表2の「抵抗測定値」の欄にまとめて示す。
【0192】
この抵抗値評価の結果から、比較例1、4、6、および7に係る排ガス処理装置では、抵抗値は、4×10
4Ω以下であることがわかる。一方、実施例1〜15に係る排ガス処理装置では、抵抗値は、少なくとも9×10
5Ω以上であった。すなわち、実施例1〜15に係る排ガス処理装置では、比較例1、4、6、7に係る排ガス処理装置に比べて、抵抗値は、少なくとも20倍以上大きくなっており、良好な絶縁性が得られていることがわかる。
【0193】
このように、本発明による排ガス処理装置では、ハニカム構造体と筒状金属部材の間に、良好な絶縁性が確保されることが確認された。