(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
a) Fe−Cr合金からなり、65重量%以上のCr含有量を有し、3.0以下の平均値を有し1.5より小さい標準偏差を有するアスペクト比の分布を有する粒子により構成される溶射粉末を準備する工程と、
b) 金属または合金からなる被溶射体を準備する工程と、
c) 前記溶射粉末を使用してプラズマ溶射により前記被溶射体に溶射被膜を形成する工程と、
を備え、
前記被溶射体は、内周面を有し、
前記溶射粉末は、1.5重量%以下の酸素含有量を有し、75μm以下の粒子径を有し、
工程c)は、プラズマ1次ガスがアルゴンガスであり、前記プラズマ1次ガスの流量が30リットル/分以上45リットル/分以下であり、プラズマ2次ガスが水素ガスであり、前記プラズマ2次ガスの流量が3.5リットル/分以上5.0リットル/分以下であり、前記溶射粉末を運搬するキャリアガスがアルゴンガスであり、前記キャリアガスの流量が2.0リットル/分以上9.0リットル/分以下であり、プラズマ出力が12kW以上15kW以下であり、プラズマ電圧が37V以上であり、溶射距離が45mm以上52mm以下であり、溶射ガントラバース速度が8mm/秒以上20mm/秒以下であり、前記被溶射体の周方向の回転数が330rpm以上450rpm以下である溶射条件で前記溶射被膜を前記内周面に形成する
ナトリウム−硫黄電池用の正極集電体を生産する方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1 ナトリウム−硫黄電池
図1は、この実施の形態のナトリウム−硫黄電池を示す模式図である。
図1は、断面図である。
【0017】
図1に示されるナトリウム−硫黄電池1000は、正極容器1012、グラファイトフェルト1014、正極活物質1016、固体電解質管1018、安全管1020、収容容器1022、負極活物質1024、正極金具1026、負極金具1028、絶縁リング1030および負極蓋1032を備える。
【0018】
ナトリウム−硫黄電池1000がこれらの構成物以外の構成物を備えてもよい。ナトリウム−硫黄電池1000からこれらの構成物の一部が省略される場合もある。
【0019】
ナトリウム−硫黄電池1000は円筒型の単電池であり、正極容器1012、固体電解質管1018および安全管1020の各々は有底の円筒状の容器であり、収容容器1022は有底かつ有蓋の円筒状の容器である。
【0020】
ナトリウム−硫黄電池1000が円筒型の単電池以外の単電池に変更されてもよい。例えば、ナトリウム−硫黄電池1000が角型の単電池に変更されてもよい。ナトリウム−硫黄電池1000が円筒型の単電池である場合は、正極容器1012、固体電解質管1018および安全管1020の各々は有底の円筒状の構造物であり、収容容器1022は有底かつ有蓋の円筒状の構造物である。しかし、ナトリウム−硫黄電池1000が円筒型の単電池以外の単電池に変更される場合は、正極容器1012、固体電解質管1018および安全管1020の各々が有底の円筒状の構造物以外の構造物に変更される場合があり、収容容器1022が有底かつ有蓋の円筒状の構造物以外の構造物に置き換えられる場合がある。
【0021】
ナトリウム−硫黄電池1000は、高温動作型の二次電池であり、動作時には約300℃に加熱される。ナトリウム−硫黄電池1000が約300℃に加熱された場合は、正極活物質1016および負極活物質1024は溶融する。
【0022】
正極容器1012には、固体電解質管1018が収容される。固体電解質管1018には、安全管1020が収容される。安全管1020には、収容容器1022が収容される。正極容器1012と固体電解質管1018との間の間隙1042には、グラファイトフェルト1014および正極活物質1016が収容される。収容容器1022には、負極活物質1024が収容される。負極活物質1024は、収容容器1022の底に形成された貫通孔1052を経由して収容容器1022から安全管1020と固体電解質管1018との間の間隙1062に供給される。
【0023】
グラファイトフェルト1014は、正極容器1012に接触する。正極活物質1016は、グラファイトフェルト1014に含浸させられ、正極容器1012およびグラファイトフェルト1014に接触する。これにより、正極容器1012は、正極集電体を構成し、正極活物質1016と直接的にまたはグラファイトフェルト1014を経由して電子をやり取りできる。
【0024】
負極活物質1024は、収容容器1022に接触する。これにより、収容容器1022は、負極集電体を構成し、負極活物質1024と電子をやり取りできる。
【0025】
固体電解質管1018は、正極活物質1016および負極活物質1024に接触し、正極活物質1016と負極活物質1024とを隔てる隔壁を構成する。
【0026】
安全管1020は、固体電解質管1018が破損した場合に正極活物質1016と反応する負極活物質1024の量を制限する。また、安全管1020は、固体電解質管1018より大きな熱膨張率を有する。このため、固体電解質管1018が破損し正極活物質1016と負極活物質1024とが直接的に反応した場合は、反応熱により安全管1020が固体電解質管1018より大きく膨張し、間隙1062が狭くなり、正極活物質1016と反応する負極活物質1024の量が減少する。
【0027】
正極金具1026は、正極容器1012に結合され、正極容器1012と電気的に導通する。負極金具1028は、収容容器1022と電気的に導通する。負極蓋1032は、負極金具1028に結合され、負極金具1028と電気的に導通する。
【0028】
正極金具1026は、絶縁リング1030の下面に熱圧接合される。負極金具1028は、絶縁リング1030の上面に熱圧接合される。絶縁リング1030により、正極金具1026と負極金具1028とは互いに絶縁される。絶縁リング1030は、固体電解質管1018の開放端の付近にガラス接合される。
【0029】
グラファイトフェルト1014は、電子伝導性を有する炭素からなる。グラファイトフェルト1014が電子伝導性を有する炭素および他の物質の混合物からなることも許される。グラファイトフェルト1014は、繊維の成形体である。グラファイトフェルト1014は、溶融した正極活物質1016を含侵させることができる多孔質体である。
【0030】
正極活物質1016は、硫黄を含み、ナトリウム−硫黄電池1000が放電させられた場合はナトリウム硫化物も含む。
【0031】
固体電解質管1018は、ナトリウムイオン伝導性を有するβ−アルミナからなる。固体電解質管1018がβ−アルミナ以外のナトリウムイオン伝導性を有する固体電解質からなることも許される。
【0032】
安全管1020、正極金具1026、負極金具1028および負極蓋1032の各々は、アルミニウム合金からなる。安全管1020、正極金具1026、負極金具1028および負極蓋1032の少なくとも一部がアルミニウム合金以外の金属または合金からなることも許される。
【0033】
収容容器1022は、ステンレス鋼からなる。収容容器1022がステンレス鋼以外の金属または合金からなることも許される。
【0034】
負極活物質1024は、金属ナトリウムからなる。負極活物質1024がナトリウム合金またはナトリウム化合物からなることも許される。
【0035】
絶縁リング1030は、α−アルミナからなる。絶縁リング1030がα−アルミナ以外の絶縁体からなることも許される。
【0036】
2 正極容器
図2は、この実施の形態のナトリウム−硫黄電池に備えられる正極容器を示す模式図である。
図2は、断面図である。
【0037】
図2に示されるように、正極容器1012は、容器本体1072および防食層1074を備える。
【0038】
容器本体1072は、有底の円筒状の容器であり、円筒部1082および底部1084を備える。円筒部1082は、内周面1092を有する。内周面1092は、周方向に一周する。
【0039】
防食層1074は、内周面1092を覆い、正極活物質1016に対する耐食性を有し、正極活物質1016が内周面1092に接触することを抑制する。これにより、内周面1092が腐食することが抑制される。
【0040】
防食層1074は、プラズマ溶射により形成される。したがって、防食層1074は、溶射被膜であり、円筒部1082は、溶射が行われる被溶射体である。
【0041】
容器本体1072は、アルミニウム合金からなる。容器本体1072がアルミニウム合金以外の金属または合金からなることも許される。
【0042】
防食層1074は、Fe−Cr合金からなる。
【0043】
3 プラズマ溶射装置
図3は、プラズマ溶射装置を示す模式図である。
図3は、断面図である。
図4および5の各々は、プラズマ溶射装置に備えられる溶射ガンを示す模式図である。
図4は、断面図である。
図5は、正面図である。
【0044】
図3に示されるプラズマ溶射装置1100は、防食層1074の形成に使用される。プラズマ溶射装置1100は、回転機構1112および溶射ガン1114を備える。
図4および5の各々に示されるように、溶射ガン1114は、パウダーインジェクタ1122、ノズル1124および電極1126を備える。
【0045】
ノズル1124には、流路1132が形成される。流路1132は、ノズル1124の外面1134に露出する噴射口1136に至る。
【0046】
パウダーインジェクタ1122は、ノズル1124の外面1134に沿って配置される。パウダーインジェクタ1122には、流路1142が形成される。流路1142は、噴射口1136に近接する供給口1144に至る。
【0047】
防食層1074が円筒部1082の内周面1092に形成される場合は、回転機構1112により円筒部1082が周方向に回転し、溶射ガン1114が円筒部1082の内部において軸方向に運動する。また、円筒部1082が回転しており溶射ガン1114が運動している状態において、溶射ガン1114が噴射口1136から内周面1092に向かってプラズマジェット1152を噴射しプラズマジェット1152に溶射粉末を吹き込む。これにより、溶射粉末の溶融物1162が内周面1092に付着し、防食層1074が内周面1092に形成される。
【0048】
プラズマジェット1152が噴射される場合は、1次ガスおよび2次ガスが流路1132に流され、ノズル1124と電極1126との間に電圧が印加される。これにより、ノズル1124と電極1126との間にアークが発生し、発生したアークにより1次ガスおよび2次ガスがプラズマ化される。溶射粉末は、キャリアガスとともに流路1142に流され、キャリアガスにより運搬され、供給口1144から流出し、プラズマジェット1152に吹き込まれる。
【0049】
4 正極容器を生産する方法
図6は、正極容器を生産する方法を示すフローチャートである。
【0050】
図6に示される工程S101においては、溶射粉末が準備される。溶射粉末は、Fe−Cr合金からなり、65重量%以上のCr含有量を有する。溶射粉末は、2.6g/cm
3以上の見掛密度を有し、35sec/50g以下の流動度を有する。見掛密度は、日本工業規格JIS Z 2504:2012により測定される。流動度は、日本工業規格JIS Z 2502:2012により測定される。溶射粉末は、1.5重量%以下の酸素含有量を有する。溶射粉末は、75μm以下の粒子径を有する。粒子径は、レーザー回折法により測定される。75μm以下の粒子径を有する溶射粉末は、粉砕により得られた塊状粉末に篩を通過させることにより得られる。
【0051】
図6に示される工程S102においては、円筒部1082および底部1084が準備される。円筒部1082は、例えば、95mmの直径を有し、1.5mmの肉厚を有する。
【0052】
図6に示される工程S103においては、準備された溶射粉末が使用されプラズマ溶射により円筒部1082の内周面1092に防食層1074が形成される。プラズマ1次ガスは、アルゴンガスであり、プラズマ1次ガスの流量は、30リットル/分以上45リットル/分以下である。プラズマ2次ガスは、水素ガスであり、プラズマ2次ガスの流量は、3.5リットル/分以上5.0リットル/分以下である。キャリアガスは、アルゴンガスであり、キャリアガスの流量は、2.0リットル/分以上9.0リットル/分以下である。プラズマ出力は、12kW以上15kW以下である。プラズマ電圧は、37V以上である。溶射距離Sは、噴射口1136から内周面1092までの距離であり、45mm以上52mm以下である。溶射ガントラバース速度は、8mm/秒以上20mm/秒以下である。円筒部1082の回転数は、330rpm以上450rpm以下である。
【0053】
図6に示される工程S104においては、底部1084が円筒部1082に溶接され、正極容器1112が得られる。防食層1074が形成される前に底部1084が円筒部1082に溶接されてもよい。
【0054】
溶射粉末が2.6g/cm
3以上の見掛密度を有し35sec/50g以下の流動度を有する場合は、防食層1074が形成されるときに溶射粉末の流動性が安定し、円筒部1082に付着する溶射粉末の重量が円筒部1082により変動することが抑制され、円筒部1082に形成される防食層1074の厚さが位置により変動することが抑制される。溶射粉末の流動性が安定した場合に円筒部1082に付着する溶射粉末の重量が円筒部1082により変動することが抑制され円筒部1082に形成される防食層1074の厚さが位置により変動することが抑制されるのは、溶射粉末の流れに脈動が生じにくくなるためである。
【0055】
図7は、溶射本数と1本の円筒部に付着する溶射粉末の付着重量との関係を示すグラフである。
【0056】
図7に示されるグラフにおいては、溶射本数が横軸にとられており、1本の円筒部1082に付着する溶射粉末の付着重量が縦軸にとられており、溶射粉末が2.6g/cm
3以上の見掛密度を有し35sec/50g以下の流動度を有する場合(解決技術)およびそうでない場合(従来技術)の各々について、溶射本数と1本の円筒部1082に付着する溶射粉末の付着重量との関係が示されている。
【0057】
図7に示されるように、溶射粉末が2.6g/cm
3以上の見掛密度を有し35sec/50g以下の流動度を有する場合は、溶射本数が200本に達するまで1本の円筒部1082に付着する溶射粉末の付着重量がほぼ一定であるが、そうでない場合は、1本の円筒部1082に付着する溶射粉末の付着重量が急激に減少する。
【0058】
また、溶射粉末が2.6g/cm
3以上の見掛密度を有し35sec/50g以下の流動度を有する場合は、供給口1144から流出した溶射粉末が噴射口1136の周りに堆積しにくくなり、
図8および9の各々に示されるような溶射粉末の堆積物1172に供給口1144が塞がれる問題が起こりにくい。
【0059】
上記のCr含有量によれば、防食層1074の耐食性が不十分になることが抑制される。また、上記の酸素含有量によれば、溶射粉末に含まれる酸化物が減少し、防食層1074において耐食性が局所的に低下することが抑制される。さらに、上記の溶射条件によれば、溶射粉末を構成する粒子が適度に溶融し、高い品質を有する溶射被膜が高い収率で得られる。
【0060】
5 見掛密度の管理幅および流動度の管理幅の決定
Fe−Cr合金からなる溶射粉末の靱性は、Cr含有量が多くなるほど低くなり、Fe−Cr合金からなる溶射粉末は、溶射粉末のCr含有量が多くなるほど粉砕されやすくなる。このため、Fe−Cr合金からなる溶射粉末を構成する粒子の形状は、溶射粉末のCr含有量が多くなるほど扁平になりやすい。
【0061】
図10は、溶射粉末1、2および3の各々について、溶射粉末に含まれる扁平な粒子の量、溶射粉末の見掛密度、溶射粉末の流動度、溶射被膜の厚さの平均値(AVE)および標準偏差(STD)ならびに正極容器1012の断面の光学顕微鏡像を示す。
図11は、溶射粉末1、2および3の各々について、試料の光学顕微鏡像ならびに溶射粉末を構成する粒子のアスペクト比の平均値および標準偏差を示す。
図12は、溶射粉末の見掛密度と溶射粉末を構成する粒子のアスペクト比との関係を示すグラフである。
図13は、溶射粉末の流動度と溶射粉末を構成する粒子のアスペクト比との関係を示すグラフである。
図12においては、溶射粉末の見掛密度が横軸にとられており、溶射粉末を構成する粒子のアスペクト比が縦軸にとられている。
図13においては、溶射粉末の流動度が横軸にとられており、溶射粉末を構成する粒子のアスペクト比が縦軸にとられている。
【0062】
試料は、溶射粉末が埋め込まれた樹脂硬化物を研磨紙により研磨することにより得られる。試料の光学顕微鏡像には、粒子の断面像が含まれる。溶射粉末を構成する粒子のアスペクト比の分布の測定においては、光学顕微鏡で撮影を行うことにより得られた像に2本の対角線が引かれ、倍率20倍で対角線に接触する複数の断面像の各々の長径寸法および短径寸法から粒子の各々のアスペクト比が算出される。
【0063】
図10および11に示されるように、溶射粉末に含まれる扁平な粒子が多くなり溶射粉末を構成する粒子のアスペクト比の平均値が大きくなるほど、溶射粉末の見掛密度が小さくなり、溶射粉末の流動度が大きくなる。その結果として、溶射被膜の厚さのばらつきが大きくなる。そして、溶射粉末が2.6g/cm
3以上の見掛密度を有し35sec/50g以下の流動度を有するためには、望ましくは溶射粉末を構成する粒子のアスペクト比の平均値は3.0以下であり溶射粉末を構成する粒子のアスペクト比の標準偏差は1.5より小さく、さらに望ましくは当該平均値は2.0以下であり当該標準偏差は1.0以下である。
【0064】
図14は、見掛密度の管理幅および流動度の管理幅の決定の流れを示すフローチャートである。
【0065】
図14に示される工程S111においては、複数の試験用の溶射粉末が準備される。複数の試験用の溶射粉末の各々は、Fe−Cr合金からなり、65重量%以上のCr含有量を有する。複数の試験用の溶射粉末は、互いに異なる粒子のアスペクト比の分布を有する。
【0066】
図14に示される工程S112においては、複数の試験用の溶射粉末の各々に対応する試験用の円筒部1082が準備される。試験用の円筒部1082は、工程S102において準備される生産用の円筒部1082と同様のものである。
【0067】
図14に示される工程S113においては、複数の試験用の溶射粉末の各々の見掛密度および流動度が測定され、測定の結果が得られる。
【0068】
図14に示される工程S114においては、複数の試験用の溶射粉末の各々である各溶射粉末が使用されプラズマ溶射により各溶射粉末に対応する試験用の円筒部1082に試験用の防食層1074が形成される。試験用の防食層1074の形成は、工程S103において実行される生産用の防食層1074の形成と同様に行われる。
【0069】
図14に示される工程S115においては、形成された試験用の防食層1074が評価され、試験用の防食層1074についての評価の結果が得られる。
【0070】
図14に示される工程S116においては、測定の結果および試験用の防食層1074についての評価の結果から、基準を満たす防食層1074が生産時に形成されるように見掛密度の管理幅および流動度の管理幅が決定される。例えば、円筒部1082に付着する溶射粉末の重量の円筒部1082による変動が上限以下であるという基準、円筒部1082に形成される防食層1074の厚さの位置による変動が上限以下であるという基準等が満たされるように見掛密度の管理幅および流動度の管理幅が決定される。
【0071】
工程S115において、試験用の溶射粉末の溶射ガン1114への堆積が評価され堆積についての評価の結果が得られてもよい。この場合は、工程S116において、測定の結果、溶射被膜についての評価の結果および堆積についての評価の結果から基準を満たす防食層1074が生産時に形成され生産用の溶射粉末の溶射ガン1114への堆積が基準を満たすように見掛密度の管理幅および流動度の管理幅が決定される。例えば、生産用の溶射粉末の溶射ガン1114への堆積重量が上限以下であるという基準が満たされるように見掛密度の管理幅および流動度の管理幅が決定される。
【0072】
工程S111からS116までにより、先述の2.6g/cm
3以上という見掛密度の管理幅および35sec/50g以下という流動度の管理幅が決定される。したがって、2.6g/cm
3以上という見掛密度の管理幅に含まれる見掛密度を有し35sec/50g以下という流動度の管理幅に含まれる流動度を有する生産用の溶射粉末を使用することにより、基準を満たす防食層1074が生産時に形成される。
【0073】
6 ナトリウム−硫黄電池を生産する方法
図15は、ナトリウム−硫黄電池を生産する方法を示すフローチャートである。
【0074】
図15に示される工程S121においては、先述の正極容器を生産する方法により正極容器1012が生産される。
【0075】
図15に示される工程S122においては、ナトリウム−硫黄電池1000を構成する、正極容器1012以外の構成物が準備される。
【0076】
図15に示される工程S123においては、ナトリウム−硫黄電池1000が得られるように、生産された正極容器1012および準備された正極容器1012以外の構成物が組み立てられる。
【0077】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【課題】被溶射体に溶射被膜を形成することによりナトリウム−硫黄電池に備えられる正極集電体が生産される場合に、被溶射体に付着する溶射粉末の重量が被溶射体により変動することを抑制し、被溶射体に形成される溶射被膜の厚さが位置により変動することを抑制する。
【解決手段】見かけ密度の管理幅および流動度の管理幅が決定される。溶射粉末および被溶射体が準備される。溶射粉末は、Fe−Cr合金からなり、65重量%以上のCr含有量を有する。溶射粉末は、2.6g/cm
以上の見掛密度を有し、35sec/50g以下の流動度を有し、3.0以下の平均値を有し1.5より小さい標準偏差を有するアスペクト比の分布を有する粒子により構成される。被溶射体は、金属または合金からなる。溶射粉末が使用され、プラズマ溶射により被溶射体に防食層が形成される。