【実施例1】
【0012】
実施例1の排水溝ユニットは、排水の流れ込んだ量に応じて流路幅が段階的に変わる構成であり、したがって泥が溜まる等メンテナンスが必要となる事態を防ぐことができるものである。
【0013】
{構成}
図1は、本発明の排水溝ユニットの実施例1斜視図である。排水溝ユニット1は、鋼製であって、背面側を歩道側に、正面側を車道側にして、路肩等に連続して並べて、路面の雨水等を排水マスに導いて排水する中空のユニットであり、橋梁上、交差点内、トンネル内道路、線路内等の設置に特に適している。排水溝ユニット1は縁石としての役割も兼ね備え、歩道は、排水溝ユニットの背面側にアスファルト等を流し入れて、車道より高い位置に作られる。
【0014】
排水溝ユニット1は、(a)排水を流す底面部24と、底面部24の端部から立ち上がり正面側の壁となる立ち上がり部23と、立ち上がり部23と反対側の底面部24の端部から立ち上がる背面部25とを有する流水プレート20と、(b)流水プレート20の上に載せて蓋として着脱可能に設けられ流水孔14を穿設したガードプレート10とを有し、流水プレート20の底面部24の上面側に排水の流路と並行に仕切り板21、22を複数突設し、ガードプレート10と仕切り板21、22の先端との間に隙間を設けてある。
【0015】
以下、詳細に示す。ガードプレート10は、鋼板をクランク状に連続して3面に屈曲させて、直角なS字状の形状としてある。すなわち、ガードプレート10は、上面部11と、上端が上面部の一端に連続しており上面部11に対し下方に直角な面となる前面部12と、前面部12の下端に連続しており上面部と反対側に向けて直角な面となる受面部12とを構成する。前面部12と受面部13のなす角部分に雨水が入る流水孔14が複数穿設してある。
図1においては、流水孔14は8つであるが、流水孔の数はこれに限られない。以下、前面部12側を排水溝ユニット1の正面側として説明する。なお、本実施例では、前面部12と、受け面部13や上面部11とのなす角度は90度であるが、これに限られず、前面部下部が正面側にせり出す方向に斜めであってもよいし、前面部上部が正面側にせり出す方向に斜めであってもよい。
【0016】
図2は、本発明の排水溝ユニットの実施例1においてガードプレートを開いた状態の斜視図である。流水プレート20は、鋼板を直角なL字に曲げてさらに正面側先端を上方に直角に曲げて、背面側を背面部25、下面側を底面部24、正面側先端の立ち上がった壁部分を立ち上がり部23として、ガードプレート10の下方にガードプレート10の背面側から正面側下部に向かって中空領域を形成するように配置されており、正面側先端の高さは、ガードプレート10の受面部13と同じ高さにしてある。すなわち、ガードプレート10は、上方が開いた流水プレート20の蓋の役目を果たす。流水プレート20には、底面部24の上面側に、第1の仕切り板21と、第2の仕切り板22が上向きに排水溝ユニットの長手方向全長に渡って並行に並べて溶接されている。流水プレート20の正面側の屈曲部分である立ち上がり部23の外側には、L字型の補強アングル73が、流水プレート20の正面側下部の角部を保護するように設けてある。
【0017】
排水溝ユニット1は、車道の端に一列に直列して並べ、受面部13の上面が車道面に対してフラットになるように埋め込んであり、隣り合う排水溝ユニットは接続されている。ガードプレート10と、流水プレート20とは、曲げ加工又は、ロールホーミング加工で作成され各面を形成している。ロールホーミング及び潰し曲げで加工により流水プレート20と、仕切りプレート板21、22を一体で形成し作成することも可能である。
【0018】
ガードプレート10の裏側には、前面部12と受面部13のなす角の裏側部分に、流水孔14と重ならないように、補強プレート60a、b、cが溶接して設けられている。また、前面部12と上面部11の裏面側に、排水溝ユニット1の長手方向に垂直となるようにリブプレート30a、b、cが設けられている。受面部13に車のタイヤ等が載ったり、前面部12に車のタイヤや車体等が当たったり、上面部11に車のタイヤや車体等が乗り上げたりする事態でも、補強プレート60やリブプレート30によって中空である排水溝ユニットが潰れないように保護する役割を果たす。また、リブプレート30の縁は、上面部11と前面部12の裏側に溶接されており、ガードプレート10を閉じたときに流水プレートの背面に一辺が当たる大きさとなっている。
【0019】
流水プレート20の底面部24の上面側に設けられた、第1の仕切り板21と第2の仕切り板22は、排水溝ユニットの長手方向全長に渡って設けられており、内部を流れる排水は、長手方向に連続して接続される複数の排水溝ユニットを通って排水マスへと導かれる。L字型の流水プレート20の立ち上がり部23の内側、すなわち、正面側から見て裏面側には、L字型の前面受アングル71が溶接されている。前面受アングル71は、ガードプレート10を閉じたときに受面部13の端部を載せる一辺と、流水プレート20の正面側先端裏面側に溶接したもう一辺を有する。また、流水プレート20の背面の上部内側、すなわち正面側から見て表面側には、L字型の背面受アングル72が溶接されている。背面受アングル72は、ガードプレート10を閉じたときに上面部11の端部を載せる一辺と、流水プレート20の背面部25の上部表面側に溶接したもう一辺を有する。
【0020】
ガードプレート10と流水プレート20とは、ガードプレート10の上面部11裏側に設けられた連結プレート40bと流水プレート20の連結プレート40aに接続されたチェーン80a、連結プレート40dと流水プレート20の連結プレート40cに接続されたチェーン80bとで繋がれている。流水プレート20の背面部25の表面側左右端には、左右に並べた排水溝ユニットを接続するボルト止めに用いる接続プレート50a、bが設けられている。なお、連結プレート40a、cの上部には、ガードプレート10を上方に開いて上げた際にガードプレートの端部を挟み込んで保持するための切欠きが設けられている。
図2は当該切欠きにガードプレート10を挟み込んだ状態を示す。
【0021】
ガードプレート10は、上面部11を背面受アングル72の上に載せてリブプレート30の背面側の辺を流水プレート20の背面で支え受面部13を前面受アングル71の上に載せることで安定して保持される。
【0022】
図3は、本発明の排水溝ユニットの実施例1の正面図である。上にガードプレート10を被せた流水プレート20の下部は補強アングル73でカバーされている。
【0023】
図4は、本発明の排水溝ユニットの実施例1の平面図である。流水プレート20の背面部25の裏側には、アンカーパイプ90a、b、c、d、e、f、gが設けられている。
【0024】
図5は、本発明の排水溝ユニットの実施例1の右側面図である。また、
図6は、本発明の排水溝ユニットの実施例1の左側面図である。両図ともチェーンは図示を省略してある。ガードプレート10の上面部11と前面部12の交わる部分の裏側にあたるリブプレート30の上部角は、ガードプレート10とリブプレート30を溶接で接続しているため、スカラップ31が設けられている。リブプレート30の下端は、第1の仕切り板21と第2の仕切り板22の上端とは離れている。第1の仕切り板21の高さは、第2の仕切り板22より低く設けられている。流水プレート20の背面部25及び底面部24とリブプレート30の下端とガードプレート10の受面部13とで作られる空間は、正面側に立ち上がり部23と第1の仕切り板21とで仕切られて作られる第1の流水部110と、第1の仕切り板21と第2の仕切り板22とで仕切られて作られる両仕切り板の間の第2の流水部120と、背面部25と第2の仕切り板22とで仕切られて作られる第3の流水部130とに、いずれも上部空間を共有して分けられている。
【0025】
図7は、本発明の排水溝ユニットの実施例1の背面図である。流水プレート20の背面部25の裏側、すなわち排水溝ユニット1の背面側には、上部に3つのアンカーパイプ90a、b、c、下部に4つのアンカーパイプ90d、e、f、gが並べて溶接してある。各アンカーパイプ90は筒状であり、中には、L字型のアンカーバーを通す。
【0026】
図8は、本発明の排水溝ユニットの実施例1の設置図である。排水溝ユニット1は、受面部13の上面を車道の路面と同じ高さとして路肩に敷設される。アンカーバーは、アンカーパイプ90内に通した一端と直角をなす他端を排水ユニット1の背面と直角に突き出す形にして歩道側のアンカー鉄筋と固定する。
【0027】
図9は、本発明の排水溝ユニットの実施例1の底面図である。排水溝ユニット1は、地面の上に、流水プレート20の底面部24と補強アングル73の底面が、地面に接するように設置する。
【0028】
図10は、本発明の排水溝ユニットの実施例1のA-A断面図である。また、
図11は、本発明の排水溝ユニットの実施例1のB-B断面図である。さらに、
図12は、本発明の排水溝ユニットの実施例1における流水プレート及び補強プレートを組み合わせ部分の斜視図である。これらの図が示す通り、流水孔14から排水溝ユニット1の内部に取り込まれた大半の排水は、まず、第1の流水部110へと導かれる。排水量が多くなると、第1の流水部110からあふれた分は、第1の仕切り板21上端とガードプレート10の底部である受面部13の裏面との間の隙間から排水が第2の流水部120にオーバーフローして導かれる。さらに排水量が多くなると、第2の流水部120からあふれた分は、第2の仕切り板22上端を乗り越えて排水が第3の流水部120にオーバーフローして導かれる。かかる構成により、本実施例によれば、雨量に合わせて排水が流れる空間量を調整できる。
【0029】
排水能力は通水断面積に平均流速を乗じた値となる。流速が高すぎると表面の摩耗等が生じる可能性があるが、流速が小さすぎると土砂が堆積する問題が生じる。雨量について標準降雨強度(3年確率10分間降雨強度)を70〜100mm/hと想定して排水溝の強度計算をするが、日常ではそれほど大雨は多くなく、5〜20mm/hの雨が降ることが多い。しかし、70〜100mm/hの雨量を想定した従来の排水溝では、5〜20mm/h程度の雨では、排水に含まれる土砂も一緒に流すために十分に流速が確保できず、内部に土砂が溜まりやすい。土砂が溜まるとやがて草が生え、排水機能が低下する。本実施例によれば、少ない雨量(およそ20mm/h以下)では第1の流水部110で排水するため、流速を十分確保でき、強い雨が降った場合(およそ20mm/h〜60mm/h)には、第2の流水部120、さらに大雨が降った場合(およそ60mm/h以上)には、第3の流水部130をも自動的に利用して排水されるため、大雨にも対応しつつ、少雨でも土砂の堆積を防ぐことができる。
【0030】
なお、本実施例において、排水溝の長手方向の長さは1.2m、受面部の奥行は150mm、上面部の奥行は200mm、流水プレートの底面下側から正面側の立ち上がり端までの高さは70mm、各鋼板の厚さが5mm、流水プレート20の底面上側からリブプレート30の下端までの高さは60mm、第1の仕切り板21の高さは35mm、第2の仕切り板22の高さは40mmである。ガードプレート10の受面部13の下部に溶接した補強アングル73の下面から流水プレート20の底面部24の上面までの高さは50mmであるので、第1の仕切り板の上部の隙間は15mmはある。第1の流水部110の集水幅は150mm、第2の流水部120と第3の流水部130の集水幅はともに100mmとなる。これらに安全率等を加味して算出される排水流量は、第1の流水部110のみの場合は、0.004m
3/s、第1の流水部110と第2の流水部120をあわせた場合は、0.010m
3/s、第1の流水部110と第2の流水部120と第3の流水部130を合わせた場合は、0.03m
3/sとなる。50m長の道路において、雨量が20mm/hのときの流出流量が0.003m
3/s、雨量が50mm/hのときの流出流量が0.006m
3/s、雨量が110mm/hのときの流出流量が0.0138m
3/sと算出されるから、上記排水流量から安全率等を加味して算出される流速は、雨量が20mm/hのとき0.595m/s、雨量が50mm/hのとき0.774m/s、雨量が110mm/hのとき0.622m/sとなる。したがって、本実施例によれば、雨量に応じて通水断面積を自動的に変えられるので、流速が大きくなりすぎることも小さくなりすぎることも防止できる。
【0031】
仕切り板の数は2本に限らず、3本以上でもよいが、排水スペースが狭いので、2本であることが好ましい。第1の仕切り板より第2の仕切り板の方が低くても、流れ込んだ水量によって2段階の調整が可能であるが、本実施例では、第1の仕切り板より第2の仕切り板の方が高いので、3段階で調整できるので、より好ましい。仕切り板の数が3本以上の場合、背面部25に近い仕切り板の方が高くなるように設けることが好ましい。
【0032】
なお、本実施例では、流水プレート20は、土中に埋めるため、JIS規格でいえば、JIS H 8641の種類2種55(記号HDZ55)の過酷な腐食環境下で使用される鋼材が適用される環境であるが、6mmの厚さがなくても、成分調整して5mm厚でも、通常は6mm厚にしないと付着しない量である550g/m
2の亜鉛を鋼板に付着させることができるため、耐食性を保ちつつ軽量化できる。また、HDZ55より耐性が高い、溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金メッキ鋼鈑を使用することにより、3.2mmまで薄くても耐食性を保つことができる。
【0033】
{効果}
本実施例によれば、流水孔から入ってくる水量が少なければ、調節しなくても自動的に排水を流す範囲を狭くし、流水孔から入ってくる水量が多ければ、調節しなくても自動的に排水を流す範囲を広くできるので、土砂等が堆積しにくくなる。したがって、本実施例によれば、メンテナンスをしなくても排水機能の低下が生じにくくすることを可能とする。さらに、本実施例では第1の仕切り板より第2の仕切り板の方が高いので、流水孔から入ってくる水量による流路の幅を3段階で調整することができる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々と変形実施が可能である。また、上記各実施の形態の構成要素を発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることができる。