【実施例1】
【0019】
実施例1の道路橋地覆拡幅ユニットは、受けフレームの断面係数が大きい構成であり、たわみ・重量・アスファルト厚・溶接ひずみ・コストの増加を抑えつつ、拡幅長を延ばすことができるものである。
【0020】
{構成}
図1は、本発明の道路橋地覆拡幅ユニットの実施例1の斜視図(1)である。
図1は、平面(上面)、正面、左側面を表す図である。
図2は、本発明の道路橋地覆拡幅ユニットの実施例1の斜視図(2)である。
図2は、平面、背面、右側面を表す図である。道路橋地覆拡幅ユニット1は、鋼製であって、背面側を外部側に、正面側をコンクリート床版側にしてコンクリート床版の端部に受けフレーム6の先部プレート7が接するように、受けフレーム6の長手方向が道路の客員方向と平行になるように連続して並べて設置する。道路橋地覆拡幅ユニット1は、1又は複数を道路端に沿って連続して並べて互いに接続して使用するものである。
【0021】
受けフレーム6は、上面及び下面がフランジであるH形鋼であって、上面側のフランジである上面フランジ61と下面側のフランジである下面フランジ62の間には、ウェブ63を有する。受けフレーム6の一端には先部プレート7が取り付けてある。本実施例では、先部プレート7が取り付けてある方を前方、取り付けていない方を後方とする。受けフレーム6は、前後方向を長手方向とする長尺の棒状である。
【0022】
道路橋地覆拡幅ユニット1は、道路橋の道路幅を拡張する中空のユニットであって底側を開口部とする直角なコの字型すなわち角形の逆U字型の形状の溝形ユニットであるフェースプレート2を端部に有するものであり、橋梁上の設置に特に適している。道路橋地覆拡幅ユニット1の中空ユニット部分は縁石としての役割も兼ね備えることができ地覆部分を担う。本実施例においては、中空ユニット部分を総称して縁石部と表すことがある。
【0023】
フェースプレート2は、鋼板を同方向に連続して3面に屈曲させて形成されるものであり、底側及び左右の側端が開口部であって、上面部24と、上面部の一端下方側に連設した前面部23と、前面部23と対面して上面部24の他端下方側に連設した背面部22と、を備え、縁石部を形成する。
【0024】
受けフレーム6の上面フランジ61の後方端上部に、前面部23が受けフレーム6の前方側となるように、側端を載置して接続する。載置に際しては、フェースプレートの長手方向の長さよりやや短い間隔で平行に並べた受けフレームの後方端に、フェースプレートの長手方向が受けフレームの長手方向と直交する方向として、フェースプレートの側端の一方を一つの受けフレームの上に、同じフェースプレートの側端の他方をもう一つの受けフレームの上に載せる。すなわち、フェースプレートの左右の側端を、一対の受けフレームにフェースプレートを掛け渡すように、それぞれ受けフレームの後方端上部に、前面部を受けフレームの前方側に向けて載置して接続する。
【0025】
本実施例では、フェースプレート2は、左右端がそれぞれ受けフレーム6の上に載置され、一対の受けフレーム6で両端を支えられた状態で固定される。フェースプレート2は、山形鋼(L字鋼)のフェースプレート受けアングル5によって、受けフレーム6の上面フランジ61に接続される。さらに詳細には、フェースプレート2の左右端下部である4か所には、それぞれ、山形鋼(L字鋼)のフェースプレート受けアングル5のうち立設された1辺がボルト止めされ、フェースプレート受けアングル5のうち他辺が受けフレーム6の上面フランジ61の上側にボルト止めされる。1つの受けフレーム6に2つのフェースプレート2を並べて取り付けることができる。すなわち、受けフレーム6の上面フランジ61の右半分には1つのフェースプレート2の左端部分をボルト9で接続し、受けフレームの上面フランジ61の左半分にはもう1つのフェースプレート2の右端部分を接続できる。隣り合うフェースプレート2は、同じフェースプレート受けアングル5に取り付けられて互いに接続される。したがって、フェースプレート受けアングル5によって、隣り合う2つのフェースプレート2と、両方のフェースプレート2の端部を1本で支える受けフレーム6とが接続される。
【0026】
フェースプレート2と受けフレーム6の接続は、フェースプレート2の背面部22が受けフレーム6の後方端の上部に位置するように行う。フェースプレート2の長手方向と受けフレーム6の長手方向は直交する。本実施例の道路橋地覆拡幅ユニット1では、隣り合う道路橋地覆拡幅ユニット1で受けフレーム6とその上に接続されたベースプレートの腕部32を共有して、連続して設置する。
【0027】
本実施例によれば、道路端には、道路の長手方向に直交して設けられる複数本の受けフレームの後方端の上に、道路の長手方向と平行な方向を長手方向とするフェースプレート2すなわち縁石部が連続して形成される。
【0028】
各道路橋地覆拡幅ユニット1の左右端には、直角なコの字型すなわち角形の逆U字型の形状のロックプレート10をフェースプレート2の内側面に沿って嵌め込んで、フェースプレート2の左右端部内壁の外側に突出しており、フェースプレート受けアングル5の上に下端を載せる。ロックプレート10はフェースプレート2の上面部24と受けフレーム6の間の高さを保ち、がたつきを防止する。フェースプレート2は、上面部の裏側に一部を溶接して垂設し、前面部と背面部の内側面に当接して一部を溶接して固定したフェースプレート補強リブ21を複数枚有するが、枚数は限定されない。
【0029】
図3は、本発明の道路橋地覆拡幅ユニットの実施例1の背面図である。
【0030】
荷重受けアングル8は、一対の受けフレーム6の間で受けフレーム6の長手方向と直交する方向に配置されたアングルであって、両端部をそれぞれ受けフレーム6のウェブ63に接続することにより、一対の受けフレーム6を連結する。荷重受けアングル8は、上面と、上面に垂下した前面とを有するL字鋼であり、上面は、受けフレーム6の上面フランジ61と同じ高さに調整してあり、前面の左右端にはボルト穴が穿設されている。
【0031】
受けフレーム6は、ウェブ63の左右両側に、ボルト穴が穿設されたプレート状のアングル保持リブ4を立設して溶接してある。アングル保持リブ4のボルト穴に、荷重受けアングル8の左右端のボルト穴を合わせてボルト止めして、受けフレーム6と荷重受けアングル8とを接続する。1つの受けフレームにおいて、ウェブ63の左側で1つの荷重受けアングル8、ウェブ63の右側でもう1つの荷重受けアングル8を保持する。したがって、アングル保持リブ4によって、ウェブ63を挟んで隣り合う2つの荷重受けアングル8と、両方の荷重受けアングル8の端部を1本で支える受けフレーム6とが接続される。
【0032】
図4は、本発明の道路橋地覆拡幅ユニットの実施例1の右側面図である。また、
図5は、本発明の道路橋地覆拡幅ユニットの実施例1の左側面図である。本実施例においては、1つの受けフレーム6について、アングル保持リブ4は、4か所のウェブ63の左右、すなわち合計8か所に設けられているが、枚数に制限はない。フェースプレート2は、受けフレーム6で両端を支えられており、中央部分の下部にはベースプレート等がないため軽量である。
【0033】
図6は、本発明の道路橋地覆拡幅ユニットの実施例1の平面図である。また、
図7は、本発明の道路橋地覆拡幅ユニットの実施例1の正面図である。
【0034】
ベースプレート3は、基部31と腕部32とを有する。基部31は、一対の受けフレーム6の上に掛け渡して載置した平板状のプレートであって、一対の受けフレーム6の上面フランジ61に接続する左右翼部分を有する。腕部32は、受けフレーム6の上面フランジ61において基部31の左右翼部分が接続された部分より前方に載置して接続した平板状のプレートであって、受けフレーム6の前方端より前方に延伸された部分を有するプレートである。基部31と腕部32は、同じ厚みであり、上面が同じ高さとなるように調整してある。
【0035】
本実施例においては、基部31はT字型の平板状のプレートであり、左右翼部分を含む幅はフェースプレート2の長手方向の長さと同じであり、左右翼部分のない部分の幅は一対の受けフレーム6の間の長さと同じであり、基部31の背面はフェースプレート2の前面部23に接するように、かつ基部31の左右翼部分が上面フランジ61の左半分又は右半分の上に重なるように載置されており、基部31の左右翼部分は、上面フランジ61に左右2カ所ずつボルト止めされている。基部31の左右翼部分のない部分は荷重受けアングル8の上に載っているが、ボルト止めはされていない。受けフレーム6は、隣り合う基部31を同じ受けフレーム6にボルト止めすることにより、隣り合う基部31同士を接続する。
【0036】
また、本実施例においては、腕部32は、I型の平板状のプレートであり、幅が、基部31の左右翼部分の幅の2倍、すなわち受けフレーム6の上面フランジ61の幅と同じである。腕部32は、上面フランジ61のうちボルト止めされた基部31の左右翼部分より前方側すべてを覆い、かつ上面フランジ61の前方端より前方に300mm以上延伸されている。本実施例では、腕部32は上面フランジ61に6カ所でボルト止めされ、延伸部分にはコンクリート床版にボルト止めするためのボルト穴が6カ所設けられている。
【0037】
ベースプレート3は、縁石部には含まれない。道路橋地覆拡幅ユニット1をコンクリート床版の端部に設置した後、コンクリート床版の上にベースプレート3の腕部32の先端を取り付けて固定し、道路橋地覆拡幅ユニット1のベースプレート3の上にアスファルト等を流し入れて、車道又は歩道の幅を拡張する。道路橋地覆拡幅ユニット1の上に欄干や防護柵等を設けてもよい。
【0038】
図8は、本発明の道路橋地覆拡幅ユニットの実施例1の内部構造説明図である。
図8は、
図1におけるベースプレート3を構成する基部31と腕部32を取り外した状態を示す。
【0039】
荷重受けアングル8の本数は、本実施例では4本であるが、1又は複数本でよく、数は問わない。多いほど耐荷重は増えるが、重量は増す。しかし、ベースプレートのみの場合と比べて同じ重量でも耐荷重は飛躍的に大きい。荷重受けアングル8の上部には、受けフレーム6の上面フランジ61の厚み分だけ切り欠きがあり、これにより、荷重受けアングル8の上面の高さと
受けフレーム6の上面の高さをそろえることができる。
【0040】
道路橋地覆拡幅ユニット1は、上面及び下面がフランジであるH形鋼であって平行に並べた一対の受けフレーム6と、受けフレームの後方端上部に接続したフェースプレート2と、受けフレームを連結する1又は複数本の荷重受けアングル8と、受けフレームに接続する左右翼部分を有する基部及び受けフレームの前方端より前方に延伸された腕部を有するベースプレート3と、を有する。
【0041】
受けフレーム6は、H形鋼の前方端面がコンクリート床版の端部に接するものであってもよいが、本実施例では、受けフレーム6は、前方端面を覆う先部プレート7が設けられているため、受けフレーム6の先部プレート7全体がコンクリート床版に接し、接する断面積が増え、より安定する。
【0042】
図9は、本発明の道路橋地覆拡幅ユニットの実施例1の設置方法の説明図である。道路橋地覆拡幅ユニット1は、コンクリート床版側端部の地覆除去部の上にベースプレート3の腕部32をアンカーボルトで取り付けて設置する。腕部32の裏面と受けフレーム6の先部プレート7の前面において、コンクリート床版Cの側端部を覆って密着させ、アンカーボルトで道路橋地覆拡幅ユニット1をコンクリート床版Cに固定する。ベースプレート3の上には、アスファルトDを、ベースプレート3を覆うように舗装する。本実施例によれば、受けフレームの断面係数が大きくなる。したがって、拡幅が長くなってもたわみが生じにくい。
【0043】
連続して配置した道路橋地覆拡幅ユニットでは、受けフレームAとその右隣の受けフレームBをフェースプレートS及びベースプレートGの基部が掛け渡して接続し、受けフレームBとそのまた右隣の受けフレームCをフェースプレートSの隣に連続して設置された別のフェースプレートM及び別のベースプレートHの基部が掛け渡して接続することとなる。このとき、受けフレームBの上面フランジの上には、後端側フェースプレートSの右端とフェースプレートMの左端が接続され、フェースプレートが接続された前側に、ベースプレートGの基部の右翼部分とベースプレートHの基部の左翼部分とが接続され、それより前側にベースプレートの腕部が接続される。すべての受けフレームにベースプレートの腕部が接続され、腕部の延長部分でコンクリート床版に固定される。
【0044】
本実施例においては、コンクリート床版Cの厚みは200mm、アスファルトDの厚みは50mmである。たわむとアスファルトが割れてしまうが、本実施例によればたわみが少なくアスファルトが割れる恐れがない。また、92mmのアスファルト厚を要するアンカーバーが不要であるので、その分アスファルトの厚みが少なくてすむ。また、高価であるポリマーセメントで嵩上げする方法と比べてきわめてコストが安い。
【0045】
本実施例において、フェースプレート2について長手方向の長さは994mm、幅方向の長さは400mm、高さは300mmであるが、大きさはこれに限定されない。なお、本実施例によれば、道路幅員は、受けフレーム6の先部プレート7からフェースプレート2の背面部22までの距離分、すなわち、受けフレーム6の長さ分だけ広がる。
【0046】
本実施例においては、受けフレーム6について、長さは1000mm、幅及び高さは200mm、フェースプレート2の背面部22から腕部32の先端までの長さは1360mmである。
【0047】
本実施例の道路橋地覆拡幅ユニットで構造計算を行った結果、想定される輪荷重と衝突荷重を合わせても、作用応力は、許容応力の範囲内であり、本実施例の道路橋地覆拡幅ユニットは安全性に優れていることが分かった。
【0048】
受けフレームは、長さが2000mmまで可能であり、したがって、拡幅長を従来と比べ非常に長くすることができる。
【0049】
{効果}
本実施例によれば、たわみ・重量・アスファルト厚・溶接ひずみ・コストの増加を抑えつつ、拡幅長を延ばすことを可能とする。
【0050】
本実施例によれば、受けフレームの断面係数が大きくなるため、拡幅が長くなってもたわみが生じにくい。また、強度を確保でき、角材を使わなくても断面二次モーメントを確保することができる。さらに、鋼材で出来ていることから、設置のための本体補強が不要なため、重量を軽くできる。また、フレーム構造であるため、アスファルト厚を厚くしなくて済む。また、荷重がかかった時に、床版側面に圧縮力が働くため、ベースプレートには引張力のみが働き、よって固定ボルトにはせん断力が働くため、あと施工アンカーの使用が可能となる。また、コーン破壊防止のための設置延長が不要となり、コンクリート端面からの長さについて、コーン破壊防止用に長くする必要がない。さらに、溶接の大部分が薄板同士の溶接となるため溶接に大熱量を要せず、したがって溶接ひずみが少なくてすむ。また、設置のための本体補強等が不要なためコストが安くなる。また、既設の橋梁の取り壊し範囲が小さくてすむので、施工費が削減できる。さらに、溶接ひずみが少ないので、加工費用を削減できる。また、ボルト構造であるため、狭い場所でも現場で組立して取り付けが可能となる。また、道路の端部に密着する断面積が増え、安定して支えることができるため、たわみが生じにくい。アングル保持リブは受けフレームのウェブに溶接して設けることが好ましい。荷重受けアングルと受けフレームとの接続をボルト締めで行うことができ、利便性に優れる。
【0051】
また、道路の端に歩道のみの拡幅を行うとき、歩車道分離柵がない場合でも、歩道帯に駐停車する車や歩道帯に侵入する車を想定し、輪荷重を考慮した拡幅をすることができる。また、添架設備等があって道路の片側しか拡幅できない場合、ひとつの道路橋地覆拡幅ユニットで必要な拡幅が大きくなるが、本実施例によればたわみが小さいため、安全性を確保することができる。また、アスファルト厚が薄くてすむので、既設の橋梁への負担が少ない。
【0052】
本実施例によれば、1000mm以上の拡幅を実現できる。また、アスファルト厚が50mm以上であればよいため、ほとんどの既設橋で増厚しなくて良い。また、あと施工アンカーが可能であるので、PC(プレキャストコンクリート)橋や床版橋でも固定できる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々と変形実施が可能である。また、上記各実施の形態の構成要素を発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることができる。