(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【0009】
(アースオーガーの構成例)
以下、本実施形態に係るアースオーガーの概略構成例について
図1を参照して説明する。本実施形態に係るアースオーガー5は、例えばレッカー車などの作業車に接続されて使用される。より具体的には、
図1に示すように、レッカー車などの作業車のブーム1の先端に、鉛直方向に伸びるリーダー2の一端側を連結する。そして、このリーダー2の他端側は、地表部3に立設される。リーダー2の上方側には、減速機付き回転手段4が移動可能に設けられ、この回転手段4にアースオーガー5が回動可能に垂設される。アースオーガー5は、筒部6と、この筒部6の外周に設けられた螺旋ねじ状の掘削羽根7とを有する。そして、アースオーガー5の下端側には、先鋭な円錐部8が設けられている。
【0010】
(地盤改良工法の手順例)
次に、本実施形態に係るアースオーガー5を用いた地盤改良工法の手順例について、
図1〜
図5を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係る地盤改良工法は、腐植土を含む地盤に対して特に有効な地盤改良工法であるが、腐植土を含まない地盤であっても適用可能である。一般的に、腐植土を含む地盤は、腐植土に含まれるフミン酸由来の成分が地盤の圧密効果を阻害するため、地盤改良が困難になる。本実施形態に係る地盤改良工法は、後述する実施例でも示されるように、全量が腐植土であっても圧密効果を発揮するため、腐植土を含まない地盤であっても、同様以上の効果を奏する。
【0012】
同様に、本実施形態に係る地盤改良工法は、骨材としても腐植土を含む骨材を使用することができ、例えば、骨材全量に対して50重量%以上の割合で腐植土を使用することができ、より好ましくは、骨材を全量、腐植土とすることができる。例えば、アースオーガーの掘削により排出された腐植土をそのまま使用することができるため、地盤改良工法の費用を抑えることができる。
本実施形態に係る地盤改良工法は、先ず、地盤改良を行う地表部3において、ボーリングを行い地中からサンプルを採取し、所定の試験を行う。これにより、後述する各種データを算出する。
【0013】
次に、アースオーガー5を掘削方向に回転させることで、
図1及び
図2に示すように、所定の深さの掘削孔11を形成する。この後、
図3に示すように、アースオーガー5を低速で逆回転し、この掘削孔11に、地表部3から少なくとも腐植土12を含む骨材を投入する。この場合、アースオーガー5に加える垂直荷重Wの軸力は、2〜3トン程度とし、アースオーガー5の回転速度は、毎分25回転以下、好ましくは毎分20回転程度とする。
【0014】
アースオーガー5に加える垂直荷重Wと回転数とを上記値に設定することにより、腐植土12及び固化材14が水平方向に向かう力を効果的に得ることができ、掘削孔11の周囲の地盤を効果的に圧密することができる。なお、アースオーガー5と回転手段4とを合わせた自重が2〜3トン程度であれば、この例では、別個にウェートなどを設けることなく、垂直荷重Wを得ることができる。また、垂直荷重Wを大きく設定する場合は、回転手段4に図示しないウェートを設けたり、回転手段4に図示しないワイヤーなどを連結し、このワイヤーを巻き取るなどして下向きの荷重を付加するようにすれば良い。
【0015】
腐植土12は、例えばアースオーガー5の掘削により排出された腐植土を使用することができる。
【0016】
腐植土12の投入量としては、改良地盤容積の6%程度から10%未満、好ましくは6%程度から7%程度である。なお、改良地盤容積とは、地盤を改良する箇所の面積に掘削孔11の掘削深さをかけたものを意味する。
【0017】
このように腐植土12を投入した後、アースオーガー5を逆回転しながら、所定量の腐植土12を投入した後、
図4に示すように、固化材14を掘削孔11に投入する。固化材14は、逆回転するアースオーガー5のスクリューコンベア作用により、掘削孔11の下部まで送られ、掘削孔11の深さ方向全体へと行き渡る。固化材14の投入が終わった後も、アースオーガー5を逆回転することにより、投入した腐植土12及び固化材14による側方応力を増大させ、掘削孔11周囲の過剰間隙水圧を発生させて排水を促すことで圧密を促進させる。なお、掘削孔11を塞ぐ程度の腐植土12を投入した後、所定量の固化材14を投入し、この後、追加で腐植土12を投入するようにしてもよい。
【0018】
アースオーガー5を逆回転させると、腐植土12及び固化材14は、掘削孔11内において、主として粒径が大きい固化材14が外周側へと移動する。これは液体中の粒子の沈降速度がその粒径が大きいほど速いのと類似しており、別の例えでは、土石流の場合に、大きな粒子ほど前面に出てくるのと類似した現象である。また、粒径が大きいことにより、水分との反応に時間を要するため、外側まで移動し易くなる。
【0019】
固化材14の種類としては、硫酸アルミニウム及び生石灰、高炉スラグ、セメントを所定の分量で混合したものを使用することができる。固化材14の詳細については、後述する。
【0020】
固化材14の投入量としては、通常、腐植土全体に対して、7重量%程度である。
固化材14の粒径は、腐植土12の粒径より大きいことが好ましく、具体的には、30mm以上60mm以下であり、好ましくは40mm以上50mm以下である。固化材14の粒径が30mm未満の場合、固化材14の外側への移動が不十分となることがある。なお、固化材14の粒径が50mmを超える場合、市販品として入手が困難なことによる経済性の面と、50mmを超えると、アースオーガー5の掘削羽根7に加わる抵抗が大きくなり、掘削孔11の底部まで送り難くなるためである。
【0021】
(地盤改良工法の作用)
上記説明した、本実施形態に係る地盤改良工法の作用について説明する。粘性土を攪拌すると、粘性土は液状化する。粘性土をこの状態で放置すると、液性の性質を失い、剛な状態になるが、この攪拌がランダムで静的に近い(静止土圧係数に近い状況)応力で加圧すると、構造配列が不完全配向構造から配向構造へと変化する。この現象は、シキソトロピー現象として知られている。
【0022】
一方、高速道路などの盛土試験では、実際の変位値と理論値との間に違いが見られ、この違いは異方圧密によるせん断強度の増加と説明されている。すなわち、地盤の中の要素を検討すると、等方圧密は特殊な場合であり、普通は有効土かぶり圧と側方の拘束圧力の値は異なる。地盤中のひずみは鉛直(垂直)方向のみに生じ、水平方向にはひずみは生じない。従って、このような地盤中の応力やひずみの条件に合わせた圧密試験を現在K0試験と呼んでいる。静止土圧係数K0の値は、0.95−sinΦ´に近似する(Φ´は土中の内部摩擦角)。
【0023】
そして、静止土圧係数に近い力で略水平方向の応力を加えながらゆっくりと加圧することにより、応力の増加が地盤内にほぼ均質に起こることとなる。この加圧はアースオーガー5を逆回転させ、その重量と回転速度を制御することにより調整可能となる。
このように、地盤中に貫入したアースオーガー5を逆回転させることによって、腐植土12を軟弱地盤中に押し込んで、土杭15を地盤中に造成して圧密効果を促進させるとともにその土杭15周辺の固化剤、間隙水及び土粒子から起こる一連の化学反応を利用して、広範囲に地盤の圧密効果(物理効果)を促進させ、長期にわたってセメンテーション(化学効果)を続伸させることができる。
【0024】
物理的には、土杭15の造成により側方応力を増大させ過剰間隙水圧を発生させて排水を促すことで圧密を促進させる。土杭15そのものは圧密沈下がほとんどなくまた支持力も大きいため、地盤の支持力増大に寄与する。
【0025】
(固化材)
本実施形態に係る地盤改良工法における、固化材14の種類としては、硫酸アルミニウム及び生石灰、高炉スラグ、セメントを所定の分量で混合したものを使用することができる。
≪硫酸アルミニウム≫
一般的に、腐植土の地盤において、上記説明したアースオーガーを使用する地盤改良工法では、地盤の圧密効果を得ることはできない。これは、腐植土に含まれるフミン酸由来の成分が、地盤の圧密効果を阻害するからである。
【0026】
しかしながら、固化材の一成分として硫酸アルミニウムを使用することにより、腐植土を凝縮させ、表面積を現象させることで、フミン酸による反応の阻害を抑制することができる。また、硫酸アルミニウムは弱酸性であり、固化処理後の土壌のpHの上昇を抑制して中性に保つ役割を果たす。
【0027】
なお、硫酸アルミニウムとしては、無水アルミニウム、硫酸アルミニウム14〜18水和物等が挙げられるが、本発明はこの点において限定されないが、入手性の観点から、硫酸アルミニウム16水和物を使用することが好ましい。
【0028】
硫酸アルミニウムの含有量は、固化材の全重量に対して、3重量%〜5重量%の範囲内とすることが好ましい。硫酸アルミニウムの含有量が3重量%を下回ると、腐植土に対しての効果が薄まる恐れがあり、また、5重量%を超えると、生石灰の発熱反応に悪影響を与える可能性がある。
≪生石灰≫
生石灰は、石灰石(CaCO
3)を原料とし、900℃以上の高温で焼成することにより脱炭作用(脱CO)を起こして生成される。
【0029】
生石灰CaOは腐植土中の水分と消石灰Ca(OH)
2を生成する。この反応において、例えば生石灰10kgが消石灰になると土中の間隙水約4.3kgの水を結晶水に変える。また、発生する熱は間隙水の蒸発を促す。腐植土等の高含水比の土において、含水比の低下は強度発現に大きく寄与する。
【0030】
生石灰の含有量は、固化材の全重量に対して、30重量%〜35重量%の範囲内とすることが好ましい。生石灰の含有量が30重量%を下回ると、含水比を下げる力が弱くなり、強度発現が低くなる可能性があり、また、35重量%を超えると、生石灰が飽和し、改良土の強度が下がる可能性がある。
≪高炉スラグ≫
高炉スラグは、製鉄所の高炉で銑鉄を製造する際に副生されるスラグを微粉砕したものを意味する。高炉スラグは、セメント中の石膏との水和反応で生じた水酸化カルシウムに起因して、硬化する特性を有しており、これにより土壌の強度を向上させる。
【0031】
高炉スラグとしては、徐冷スラグや水砕スラグ等が挙げられるが、粒径が小さく他の成分と均一に混合させる観点から、水砕スラグを使用することが好ましい。
高炉スラグの含有量は、固化材の全重量に対して、30重量%〜35重量%の範囲内とすることが好ましい。高炉スラグの含有量が30重量%を下回ると、強度不足になる恐れがあり、35重量%を超えると、セメントの働きに悪影響を及ぼす可能性がある。
≪セメント≫
セメントは、石灰石、粘土、けい石等を含む原料を、乾燥、粉砕、混合したものをキルン内で焼成し、急冷してクリンカーとしたものを、石膏及びその他の材料を加えて微粉砕したものを言う。
【0032】
このセメント中に含まれる石膏は、硫酸カルシウムを主成分とする鉱物であり、前述した高炉スラグと反応して硬化することで、腐植土の強度を向上させる。石膏の種類としては、本発明においては限定されず、無水石膏、半水石膏、二水石膏等を使用することができる。
【0033】
使用可能なセメントの種類としては、特に限定されず、JIS R 5210で規定されるポルトランドセメント、JIS R 5211〜5213で規定される混合セメント、JIS R 5204で規定されるエコセメント等を使用できる。
【0034】
セメントの含有量は、固化材の全重量に対して、25重量%〜30重量%の範囲内とすることが好ましい。セメントの含有量が25重量%を下回ると、腐植土に対しての強度発現が低くなる可能性があり、また、30重量%を超えると、生石灰・高炉スラグとの反応に影響を及ぼし、強度不足になる可能性がある。
【0035】
なお、本実施形態においては、好ましい固化材の実施形態として、セメントを使用したが、セメントではなく石膏を使用してもいい。
【0036】
(実施例)
本実施形態に係る地盤改良工法の効果を確認するために、種々の固化材の種類を用いて、上述の方法で地盤改良した後の圧密した土壌について、土の一軸圧縮試験を実施した。なお、土の一軸圧縮試験は、JIS A 1216に準拠する方法で実施した。
【0037】
実施したブランク材と固化材の種類について、表1に示す。ブランク材は、全量、腐植土とした。なお、セメントは、JIS R 5210で規定される、普通ポルトランドセメントを使用した。
【0039】
なお、実施例1及び比較例1乃至3については、各々、3本の供試体を作製し、供試体の養生は20℃±2℃とし、養生日数は9日とした。
【0042】
表2に示すように、本実施形態に係る地盤改良工法は、硫酸アルミニウムを含む固化材を使用することにより、腐植土であっても十分に圧密することができる。
【0043】
また、本実施例については、ブランク材として、腐植土のみを用いて実施した。そのため、山砂等を含む地盤等で実施することで、更に地盤の改良効果が見込まれると思われる。
腐植土を含む地盤であっても、十分な地盤の圧密効果が得られる地盤改良工法を提供する。本発明の一実施形態に係る地盤改良方法は、アースオーガーを正転しながら所定深さの掘削孔を形成した後、地表部から前記掘削孔に腐植土を含む骨材と、硫酸アルミニウムを含む固化材とを投入し、前記アースオーガーを逆回転すると共に、垂直方向の軸力を加えることにより前記骨材及び前記固化材に水平方向の力を加えて掘削孔の周囲及び掘削孔内を圧密する工程を含む。