(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タッチパネル用基板上に、水接触角が9.2度以下の親水性層を設けてなる、水滴の付着に起因する誤作動を防止可能な静電容量式タッチパネルの製造方法であって、
基材フィルム上に下記条件(A)〜(E)をすべて具備する親水性層形成用組成物からなる塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥する工程と、
乾燥された前記塗膜を重合させ、親水性部材を調製する工程と、
前記親水性部材と前記タッチパネル用基板とを、前記親水性層が最表面となるように貼り合わせる工程と、
を有し、
前記塗膜を乾燥する工程における乾燥雰囲気の露点温度が、15℃以下であることを特徴とする前記製造方法。
条件(A):前記親水性層形成用組成物は、バインダー、親水モノマー、開始剤および溶媒を含む。
条件(B):前記バインダーは、1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなり、かつ、前記バインダー100質量部中、1分子内に5個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が50〜100質量部の範囲で含まれる。
条件(C):前記親水モノマーは、下記一般式(1)で表される。
【化1】
(式中、sは、1または2、lは、1または2、mは、0または1を表す。M1、M2は、同一または異なっていてもよい水素イオン、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを表す。Xは、下記一般式(1−1)〜(1−4)で示される親水基から選ばれる1種を表す。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(式中、J、J'は、同一または異なっていてもよいHまたはCH
3を表し、nは、0または1を示し、R、R'は、同一または異なっていてもよい炭素数1〜600の脂肪族炭化水素基であって、芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、またはエステル基を含んでいても良い。)
条件(D):前記開始剤は、アルキルフェノン系開始剤またはα-ヒドロキシアセトフェノン系開始剤であり、かつ、前記開始剤は、前記バインダー100質量部に対し、0.5〜10.0質量部の範囲で含まれる。
条件(E):前記溶媒は、炭素数1〜2のプロトン性極性溶媒50〜95質量%と、炭素数3以上のプロトン性極性溶媒および/または非プロトン性極性溶媒5〜50質量%とからなる混合溶媒であり、かつ、前記溶媒は、前記バインダー100質量部に対し、10〜100質量部の範囲で含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の静電容量式タッチパネルは、上記のように タッチパネル用基板の最表層に、親水性層を設けたもの;あるいは、タッチパネル用基板上に、親水性層を有する親水性部材が設けられ、前記親水性層が最表層を形成しているもの;であることを特徴とし、その他の部位については、従来から公知の静電容量式タッチパネルと同じ構成を採用することができる。
例えば、タッチパネル用基板としては、透明基板と、該透明基板の片面に設けられた透明導電性膜と、該透明導電性膜を覆う絶縁膜とから構成され、操作者の指先等の接触体がタッチパネルに接触すると、透明導電性膜が、接触位置で透明導電性膜と接触体との間の絶縁膜により形成された静電容量を介して接地され、接触位置に応じて変化した抵抗値を検出し、接触位置が検出されるようになっている。
透明基板としては、例えば、各種ガラス等の無機材料、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリイミド、ノルボルネン系樹脂、シロキサン系樹脂、エポキシアクリル樹脂などのプラスチック類)等の高分子材料などで形成された板状物やフィルム状物(シート状物を含む)等を用いることができる。また、透明導電性膜や絶縁膜についても、従来から公知の材料を適宜選択することができる。
【0008】
本発明の静電容量式タッチパネルは、形態(1)として、上記のようにタッチパネル用基板の最表層に、親水性層を設けたものである。
また本発明の静電容量式タッチパネルは、形態(2)として、上記のようにタッチパネル用基板上に、親水性層を有する親水性部材が設けられ、前記親水性層が最表層を形成している。
ここで本発明でいう最表層とは、操作者の指先等の接触体がタッチパネルに接触する面を意味する。
また、ここで本発明でいう親水性とは、水接触角が30度以下を意味し、好ましくは20度以下、さらに好ましくは10度以下である。
上記形態(1)において、親水性層は、例えば、光触媒機能を有する無機酸化物を含む塗膜や、アルコキシシリル基を有する親水性ポリマーと金属アルコキシド化合物とを含有する組成物から形成された塗膜等が挙げられ、これら塗膜は公知である。
上記形態(2)において、本発明に好適な親水性部材としては、例えば、基材フィルム上に光触媒機能を有する無機酸化物を含む親水性層を設けた機能性フィルムや、基材フィルム上にアルコキシシリル基を有する親水性ポリマーと金属アルコキシド化合物とを含有する組成物から形成された親水性層を設けたフィルム等が挙げられ、これら親水性部材は公知である。
【0009】
本発明においては、親水性層がハードコート性を兼ね備えたものであれば、耐擦傷性等の耐久性の観点から好ましいものとなる。
【0010】
ここで、本発明者らの検討によれば、上記形態(1)において、下記条件(A)〜(E)をすべて具備する親水性層形成用組成物により親水性層を形成してなる形態、および、上記形態(2)において、基材フィルム上に該親水性層形成用組成物により親水性層を形成してなる親水性部材(以下、特定親水性部材という)が、ハードコート性を有するとともに、本発明の効果、すなわち水滴の付着に起因する誤作動を防止できるという点からとくに好ましい。以下、特定親水性部材を例にとり説明する。
【0011】
(基材フィルム)
特定親水性部材で使用する基材フィルムは、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられ、中でも透明性を有するプラスチックフィルムが好ましく、とくに、親水性層との密着性の観点からポリエチレンテレフタレート(PET)がとくに好ましい。これらの基材フィルム表面(親水性層の形成面)は必要に応じてコロナ処理等の物理的または化学的処理を施したり、プライマー処理を施したりすることもできる。
【0012】
物理的処理としては、例えばコロナ処理、オゾン処理、酸素ガス、若しくは、窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理等が挙げられる。
化学的処理としては、例えば化学薬品等を用いて処理する酸化処理等が挙げられる。
プライマー処理としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物からなるコート剤を、基材フィルムに塗布し形成する処理が挙げられる。
コート剤としては、溶剤型、水性型のいずれも使用することができ、例えば、変性ポリオレフィン系、エチルビニルアルコール系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、ポリエステル系ポリウレタンエマルジョン、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ウレタンアクリルエマルジョン、シリコンアクリルエマルジョン、酢酸ビニルアクリルエマルジョン、アクリルエマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス、ポリブタジェンラテックスのゴム系ラテックス、ポリアクリル酸エステルラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス、ポリブタジエンラテックス、あるいはこれらのラテックスのカルボン酸変性物若しくはディスパージョン等が挙げられる。これらのコート剤の塗布法としては、例えば、グラビアコ−ト法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法等が挙げられ、塗布量としては、通常乾燥状態で、例えば0.05g/m
2〜5g/m
2である。
中でも、本発明の効果がさらに向上するという観点から、コート剤としては溶剤型のポリウレタン系、ポリエステル系、アクリル系が好ましい。
なお、特定親水性部材では基材フィルム上にプライマー処理を施した市販品を使用することができ、例えば三菱樹脂(株)から商品名T−600、T−680として市販されている易接着性PETを好適に使用することができる。
特定親水性部材で使用する基材フィルムの厚さは、例えば25〜300μmである。
【0013】
また、基材フィルムの親水性層形成面と反対の面に、粘着層を設けることもできるし、さらに粘着層の表面に剥離フィルムを設けることもできる。基材フィルムの他の片面に粘着層を積層しておくと、タッチパネル用基板に容易に貼付することができる。
【0014】
粘着層に用いる粘着剤や剥離フィルムの材質は特に制限はなく、公知のものを用いることができる。粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルエーテルポリマー系粘着剤やシリコーン粘着剤等が挙げられる。粘着層の厚さは通常2〜50μm、好ましくは5〜30μmの範囲である。
【0015】
特定親水性部材は、前記の基材フィルム上に、下記条件(A)〜(E)をすべて具備する親水性層形成用組成物からなる親水性層を形成してなる。
条件(A):前記親水性層形成用組成物は、バインダー、親水モノマー、開始剤および溶媒を含む。
条件(B):前記バインダーは、1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなり、かつ、前記バインダー100質量部中、1分子内に5個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が50〜100質量部の範囲で含まれる。
条件(C):前記親水モノマーは、下記一般式(1)で表される。
【0017】
(式中、sは、1または2、lは、1または2、mは、0または1を表す。M1、M2は、同一または異なっていてもよい水素イオン、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを表す。
Xは、下記一般式(1−1)〜(1−4)で示される親水基から選ばれる1種を表す。
【0022】
(式中、J、J’は、同一または異なっていてもよいHまたはCH
3を表し、nは、0または1を示し、R、R’は、同一または異なっていてもよい炭素数1〜600の脂肪族炭化水素基であって、芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、またはエステル基を含んでいても良い。))
条件(D):前記開始剤は、アルキルフェノン系開始剤またはα-ヒドロキシアセトフェノン系開始剤であり、かつ、前記開始剤は、前記バインダー100質量部に対し、0.5〜10.0質量部の範囲で含まれる。
条件(E):前記溶媒は、炭素数1〜2のプロトン性極性溶媒50〜95質量%と、炭素数3以上のプロトン性極性溶媒および/または非プロトン性極性溶媒5〜50質量%とからなる混合溶媒であり、かつ、前記溶媒は、前記バインダー100質量部に対し、10〜100質量部の範囲で含まれる。
以下、各条件について説明する。
【0023】
条件(A)において、特定親水性部材は、基材フィルム上に親水性層形成用組成物からなる親水性層を形成してなるものであって、該親水性層形成用組成物は、バインダー、親水モノマー、開始剤および溶媒を含む。これら各成分は、下記で説明するようにいずれも特定化され、親水性、耐擦傷性、耐白化性、耐クラック性および防汚性のすべてを満足することができ、製品化する際に製品の性能のバラツキも抑制され、基材フィルムと親水性層との密着性も良好となる。
【0024】
条件(B)において、前記バインダーは、1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物からなり、かつ、前記バインダー100質量部中、1分子内に5個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が50〜100質量部の範囲で含まれる。前記バインダー100質量部中、1分子内に5個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が50質量部未満ではハードコート性が悪化する。
【0025】
1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の重合性官能基である(メタ)アクリロイル基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルチオ基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、これらの基のなかでは(メタ)アクリロイルオキシ基または(メタ)アクリロイルチオ基が好ましい。
【0026】
1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物中で、より好ましい化合物を挙げるならば、例えば、1分子内に1個以上の水酸基と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、1分子内に1個以上のエーテル結合若しくはチオエーテル結合と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、(メタ)アクリレート基以外に1分子内に1個以上のエステル結合と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、1分子内に1個以上の脂肪族または芳香族の環構造と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、1分子内に1個以上のヘテロ環構造と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物等が挙げられる。
【0027】
1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ}エタン、1,2−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ}プロパン、1,3−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ}プロパン、1,4−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ}プタン、1,6−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ}ヘキサン;
【0028】
ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジ(メタ)アクリレート;
【0029】
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル}エーテル、1,2−ポリプロピレングリコール−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル}エーテル;
【0030】
1,2−ポリプロピレングリコール−ビス{(メタ)アクリロイル−ポリ(オキシエチレン)}エーテル;
【0031】
1,3−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ポリブチレングリコール−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル}エーテル;
ビス{2−(メタ)アクリロイルチオ−エチル}スルフィド、ビス{5−(メタ)アクリロイルチオ−3−チアペンチル}スルフィド;
【0032】
ビス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−エチル}燐酸、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−プロピル}燐酸、ビス{4−(メタ)アクリロイルオキシ−ブチル}燐酸、ビス{6−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキシル}燐酸;
【0033】
シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス{(メタ)アクリロイルオキシ−メチル}シクロヘキサン、ビス{7−(メタ)アクリロイルオキシ−2,5−ジオキサヘプチル}シクロヘキサン、ビス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)−メチル}シクロヘキサン;
【0034】
トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート;
【0035】
2−プロペノイックアシッド{2−(1,1,−ジメチル−2−{(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ}エチル)−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル}メチルエステル(日本化薬社製,商品名「KAYARAD R−604」);
【0036】
N,N’,N’’−トリス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−エチル}イソシアヌレート;
【0037】
キシリレンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス{7−(メタ)アクリロイルオキシ−2,5−ジオキサヘプチル}ベンゼン、ビス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)−メチル}ベンゼン;
【0038】
ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビス{(メタ)アクリロイル−オキシエチル}ビスフェノールA、ビス{(メタ)アクリロイル−オキシプロピル}ビスフェノールA、ビス{(メタ)アクリロイル−ポリ(オキシエチレン)}ビスフェノールA、ビス{(メタ)アクリロイル−ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)}ビスフェノールA、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル}ビスフェノールA、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル−オキシエチル}ビスフェノールA、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル−オキシプロピル}ビスフェノールA、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル−ポリ(オキシエチレン)}ビスフェノールA、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル−ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)}ビスフェノールA;
【0039】
ビス{(メタ)アクリロイル−オキシエチル−オキシプロピル}ビスフェノールA、ビス{(メタ)アクリロイルポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)}ビスフェノールA;
【0040】
ナフタレンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル−オキシ}ナフタレン;
【0041】
9,9−フルオレンジオールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシ−エチル−オキシ)}フルオレン、9,9−ビス{3−フェニル−4−(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}フルオレン;
【0042】
フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート(新中村化学製,商品名「NKオリゴ EA−6320,EA−7120,EA−7420」);
【0043】
グリセリン−1,3−ジ(メタ)アクリレート、1−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシ−プロパン、2,6,10−トリヒドロキシ−4,8−ジオキサウンデカン−1,11−ジ(メタ)アクリレート、1,2,3−トリス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル−オキシ}プロパン、1,2,3−トリス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−エチル−オキシ}プロパン、1,2,3−トリス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−プロピル−オキシ}プロパン、1,2,3−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}プロパン、1,2,3−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(1,2−プロピレンオキシ)}プロパン;
【0044】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ−エチル−オキシ}エーテル、トリメチロールプロパン−トリス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−プロピル−オキシ}エーテル、トリメチロールプロパン−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}エーテル、トリメチロールプロパン−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(1,2−プロピレンオキシ)}エーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−エチル−オキシ}エーテル、ペンタエリスリトール−テトラキス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−プロピル−オキシ}エーテル、ペンタエリスリトール−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}エーテル、ペンタエリスリトール−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(1,2−プロピレンオキシ)}エーテル;
【0045】
ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−エチル−オキシ}エーテル、ジトリメチロールプロパン−テトラキス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−プロピル−オキシ}エーテル、ジトリメチロールプロパン−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}エーテル、ジトリメチロールプロパン−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(1,2−プロピレンオキシ)}エーテル、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール−ヘキサ{(メタ)アクリロイルオキシ−エチル−オキシ}エーテル、ジペンタエリスリトール−ヘキサ{2−(メタ)アクリロイルオキシ−プロピル−オキシ}エーテル、ジペンタエリスリトール−ヘキサ{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}エーテル、ジペンタエリスリトール−ヘキサ{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(1,2−プロピレンオキシ)}エーテル:
【0046】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、または4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアナートとのウレタン反応物、
同様にイソホロンジイソシアナートとのウレタン反応物、
同様にビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンとのウレタン反応物、
同様にノルビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタンとのウレタン反応物、
同様に1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとのウレタン反応物、
同様にm−キシリレンジイソシアナートとのウレタン反応物
等が挙げられる。
【0047】
なお、本発明の効果の向上の観点から、1分子内に5個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)が好ましい。
【0048】
条件(C)において、前記親水モノマーは前記親水モノマーは、下記一般式(1)で表される。
【0050】
一般式(1)において、sは、1または2、lは、1または2、mは、0または1を表す。
M1、M2は、同一または異なっていてもよい水素イオン、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、またはアルカリ土類金属イオンを表す。式(1)で示す式は電気的に中性である。
Xは、下記一般式(1−1)〜(1−4)で示される親水基から選ばれる1種を表す。Xの分子量は、50〜18、000、好ましくは100〜1,000、さらに好ましくは170〜500の範囲で用いられる。また、Xは、それ自体のオリゴマー(繰り返し単位が2〜20)を用いてもよく、該オリゴマーの分子量は100〜30,000、好ましくは200〜10,000、さらに好ましくは300〜5,000の範囲で用いられる。
【0055】
上記一般式(1−1)〜(1−4)において、J,J‘は、同一または異なっていてもよいHまたはCH
3を表し、nは、0または1を示し、R、R’は、同一または異なっていてもよい炭素数1〜600、好ましくは2〜100、さらに好ましくは2〜20の脂肪族炭化水素基を表し、なお且つ芳香環、脂肪族環状基、エーテル基、またはエステル基を含んでいても良い。
前記一般式(1)で表される化合物(I)として、下記一般式(1−1−1)および一般式(1−1−2)が好ましく挙げられる。
【0058】
上記式(1−1−1)および(1−2−1)において、
Jは、HまたはCH
3を表す。
R
1及びR
2は、独立して、H、CH
3、エチル基を表し、合成の容易さからはHが好ましい。
nは、1〜20の整数を表し、同様に合成の容易さから2〜10がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。
mは、1〜2の整数を表す。
lは、2〜10の整数を表し、2〜6が比較的に好ましく、2〜4がさらに好ましい。
Mは、H、アミン類、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を表す。
【0059】
アミン類とは、アンモニア、1級アミン、2級アミン、3級アミンが挙げられ、これらの中では、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等が比較的に好ましい。
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム等が挙げられる。
H、アミン類、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属金属の中では、1価のアルカリ金属が好ましく、ナトリウム、カリウム、またはルビジウムであればさらに好ましい。
【0060】
一般式(1−1−1)および(1−1−2)で表される化合物の中でも、2−スルホニルエチル−(メタ)アクリレートとそのアルカリ金属塩及び3−スルホニルプロピル−(メタ)アクリレートとそのアルカリ金属塩は比較的に好ましい化合物である。これらの親水基を有する化合物(I)の分子量は168〜18,000、好ましくは180〜1,000、さらに好ましくは200〜500の範囲で用いられる。
【0061】
一般式(1)、(1−1−1)および(1−1−2)で表される化合物(I)は、単独で用いることができるが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、これら単量体化合物のオリゴマーでも良く、また単量体とオリゴマーの混合物であっても良い。
一般式(1)で表される化合物(I)は公知化合物であり、例えば、特公昭49−36214号公報、特公昭51−9732号公報、特開昭63−284157号公報、米国特許第3024221号明細書に記載された方法により製造することができる。より具体的には、一般式(1−1−1)で表される化合物は、アルカリ金属炭酸塩の存在下、(メタ)アクリル酸とプルパンスルトンを反応させる方法、また一般式(1−1−2)で表される化合物は、ポリオール化合物の一部の水酸基をハロゲン化水素でハロゲン化し、次いで置換されたハロゲンにアルカリ金属スルホネートを反応させて水酸基を有するアルカリ金属スルホネート化合物を合成し、最後に水酸基と(メタ)アクリル酸ハライドまたは(メタ)アクリル酸と反応させる方法等が挙げられる。
【0062】
前記親水モノマーの配合量は、前記の1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物とのモル比(前者:後者)として、例えば15:1〜1:30の範囲、好ましくは2:1〜1:20の範囲、さらに好ましくは1:1〜1:25の範囲、とくに好ましくは1:1〜1:15の範囲、最適には1:3〜1:23の範囲であるのがよい。
【0063】
条件(D)において、前記開始剤は、アルキルフェノン系開始剤またはα-ヒドロキシアセトフェノン系開始剤であり、かつ、前記開始剤は、前記バインダー100質量部に対し、0.5〜10.0質量部の範囲で含まれる。前記開始剤の配合量が前記バインダー100質量部に対し、0.5質量部未満では十分な硬化速度が得られず、また塗膜の硬度も低下し、逆に10.0質量部を超えると親水性が悪化する。
【0064】
アルキルフェノン系開始剤またはα-ヒドロキシアセトフェノン系開始剤としては、例えば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、アセトフェノン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルフォニルオキシ)アセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モリホニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられ、中でも本発明の効果の観点から、α-ヒドロキシアセトフェノン系開始剤、とくに2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュアー127)が好ましい。
【0065】
条件(E)において、前記溶媒は、炭素数1〜2のプロトン性極性溶媒50〜95質量%と、炭素数3以上のプロトン性極性溶媒および/または非プロトン性極性溶媒5〜50質量%とからなる混合溶媒であり、かつ、前記溶媒は、前記バインダー100質量部に対し、10〜100質量部の範囲で含まれる。前記混合溶媒における炭素数1〜2のプロトン性極性溶媒の質量比が50質量%未満では親水性が劣り、95質量%を超えると白化しやすくなる。また、前記混合溶媒の配合量が前記バインダー100質量部に対し、10質量部未満では表面のアニオン濃度と深部におけるアニオン濃度の差が生まれにくい為に十分な親水性が発現せず、逆に100質量部を超えると親水性能のばらつきが発生しやすくなる。中でも本発明の効果の観点から、炭素数1〜2のプロトン性極性溶媒としてメタノール、炭素数3以上のプロトン性極性溶媒および/または非プロトン性極性溶媒としてn−ブタノールが好ましく、溶媒量全体に占めるメタノールの割合は、60〜90質量%が好ましい。
【0066】
上記条件(A)〜(E)をすべて具備する親水性層形成用組成物の調製方法としては、バインダー、親水モノマー、少量の炭素数1〜2のプロトン性極性溶媒を混合した後、残りの溶媒、開始剤の順番で混合する方法が好ましい。なお、親水性層形成用組成物には必要に応じて、触媒、重合促進剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、ラジカル補足剤、内部離型剤、酸化防止剤、重合禁止剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、色素、レベリング剤等の各種添加剤を添加することもできる。
また、耐白化性、耐クラック性、防汚性を向上させ、製品する際に製品の性能のバラツキも一層抑制し、かつ、基材フィルムと親水性層との密着性も向上させる観点から、親水性層形成用組成物の固形分濃度は、50〜80質量%が好ましい。なお本発明でいう固形分濃度とは、親水性層形成用組成物の合計質量に対する、バインダー、親水モノマー、開始剤およびその他の添加剤の合計の百分率を意味する。
【0067】
次に、特定親水性部材の製造方法について説明する。
特定親水性部材は、基材フィルム上に上記親水性層形成用組成物からなる親水性層が形成されてなる。
まず、基材フィルムを準備し、その少なくとも片面に上記親水性層形成用組成物を公知のコーターを用いて塗布し、塗膜を形成する。
次に、形成された塗膜を乾燥する。乾燥条件は、次の条件(1)〜(3)を満たすことにより、製品の性能のバラツキを一層抑制することができ、かつ、基材フィルムと親水性層との密着性も高めることができる。すなわち:
(1)乾燥温度は、例えば20〜50℃である。乾燥温度が低すぎると外観が悪化し、逆に高すぎると経時での親水性能の低下や白化による外観の低下が発生する。
(2)上記乾燥温度が達成されるように塗膜表面に対して温風を流し続ける。なおこの温風乾燥によって基材フィルムの急激な温度変化が避けられる。これにより、親水性層形成用組成物の各成分の相容性が安定し、外観、および性能に優れた特定親水性部材が得られる。
(3)乾燥時間は、例えば10〜120秒である。乾燥時間が短すぎると外観が悪化し、逆に長すぎると経時での親水性能の低下や白化による外観の悪化が発生する。
なお、乾燥雰囲気は大気下でも窒素下等の不活性ガス下でも構わない。また乾燥雰囲気の露点温度は、15℃以下が好ましく、12℃以下であればより好ましく、9℃以下であればさらに好ましい。乾燥時の圧力は特に限定されないが、外部からの影響による乾燥の不安定化を防ぐ為には常圧または加圧状態が比較的に好ましい。乾燥後の残存溶媒の量としては10%以下が好ましく、5%以下であればより好ましく、1%以下であればさらに好ましい。
【0068】
続いて、乾燥された塗膜(親水性層形成用組成物)を重合させる。重合方法としては、とくに制限されないが、例えば大気下または窒素等の不活性ガス雰囲気下、200〜450nmの範囲の紫外線を照射する方法が挙げられる。なお、重合は上記乾燥工程の完了と同時に行うのが好ましい。
【0069】
得られた特定親水性部材の親水性層は、アニオン性親水基を有する親水性の有機単層膜であり、該層の表面におけるアニオン濃度(Sa)と深部におけるアニオン濃度(Da)のアニオン濃度比(Sa/Da)は、1.1以上、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上である。また、該アニオン濃度比(Sa/Da)の上限は例えば20.0である。すなわち、親水性層中のアニオンが、基材フィルム側の膜深部から表面まで分布し、特に該層が外気と接する最表面に多く分布するように濃度差(アニオン濃度比(Sa/Da)>1.1)を有している。これは、親水性形成用組成物を重合した際に、親水性のアニオンが表面に自己集合して膜を形成するためと考えられる。なお、本発明において深部とは、単層膜の膜厚の1/2の地点を言う。このように、特定親水性部材の親水性層は、その表面に高親水性基のアニオンが高濃度で存在するので、防曇性、防汚性またはセルフクリーニング性、帯電防止性または埃付着防止性等に優れる。このように製造された親水性層の水接触角は、30度以下、好ましくは20度以下、より好ましくは10度以下である。
【0070】
特定親水性部材において、親水性層の厚さは、例えば0.5μm〜10μmが好ましい。親水性層の厚さが0.5μm以上であることにより、十分な耐擦傷性が得られる。また10μm以下であることにより、耐白化性に優れる。なお親水性層の表面の鉛筆硬度は2H以上が好ましい。
【0071】
特定親水性部材をタッチパネル用基板に貼り合わせるには、上記のように基材フィルムの親水性層形成面と反対の面に、粘着層を設け、該粘着層をタッチパネル用基板に貼着する方法が挙げられる。
【0072】
なお、上記形態(1)、すなわちタッチパネル用基板の最表層に、親水性層を設けるには、従来から公知の各種コーターを用いて容易に行うことができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0074】
実施例1
下記の配合により、親水性形成用組成物を調製した。
バインダー:
DPHA 100質量部
親水モノマー:
3−スルホニルプロピル−アクリレート・カリウム塩(下記式参照) 15質量部
【0075】
【化13】
開始剤:
2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(BASF社製イルガキュアー127)
3質量部
溶媒
メタノール80質量%とn−ブタノール20質量%との混合溶媒 50質量部
固形分濃度 70質量%
【0076】
続いて、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)を基材フィルムとし、その片面に上記親水性層形成用組成物をグラビアコーターを用いて塗布し、塗膜を形成した。
【0077】
次に、形成された塗膜を、大気雰囲気下、次の条件(1)〜(3)を満たす乾燥条件により乾燥した。
(1)乾燥温度=45℃。
(2)乾燥は上記乾燥温度が達成されるように、かつ基材フィルムの温度変化が生じないように、塗膜に対して温風を流し続けた。
(3)乾燥時間=30秒。
【0078】
続いて、上記乾燥工程の完了と同時に、塗膜に対し、積算光量300mJ/cm
2の紫外線を照射し、親水性層形成用組成物を重合させ、厚さ3μmの親水性層を形成した。該親水性層の表面におけるアニオン濃度(Sa)と深部におけるアニオン濃度(Da)のアニオン濃度比(Sa/Da)は、1.1以上であった。
【0079】
得られた特定親水性部材に対し、以下の評価を実施した。
<水接触角の測定>
水接触角の測定は、KRUSS社製自動接触角計DSA20を用いて、室温23±2℃、湿度50±5%環境下で、成膜後の水接触角を測定した。水接触角は、3箇所測定し、平均値を記載した。水接触角は、防汚性の観点から30度以下、セルフクリーニング性の観点から20度以下、防曇性の観点から10度以下がよい。
【0080】
<誤作動回数>
静電容量式タッチパネルを有する株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ 製T01C「REGZA PHONE」の該タッチパネル面上に、親水性層が最表面をなすように、上記特定親水性部材を貼り合わせた。続いて、該親水性層の表面に十分に水を流した後、親水性層を30回タッチし、誤作動回数をカウントした。なお、使用した検証ソフトは、Multi Touch Test GREENROBOT(フリーソフト、開発者:GREENROBOT)である。
【0081】
<鉛筆硬度>
JIS K 5400 8.4.2にしたがい、鉛筆[三菱鉛筆(株)、ユニ]を用いて塗膜のすり傷で評価した。
【0082】
その結果を以下に示す。
水接触角の測定結果は、5.4度であった。
誤作動回数は1回であった。
鉛筆硬度は、2Hであった。
【0083】
実施例2
親水モノマーを、下記式で表される化合物に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0084】
【化14】
【0085】
その結果:
水接触角の測定結果は、8.3度であった。
誤作動回数は1回であった。
鉛筆硬度は、2Hであった。
【0086】
実施例3
親水モノマーを、下記式で表される化合物に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0087】
【化15】
【0088】
その結果:
水接触角の測定結果は、9.2度であった。
誤作動回数は1回であった。
鉛筆硬度は、2Hであった。
【0089】
実施例4
実施例1において、特定親水性部材に替えて、株式会社きもと製グラステクトCVを使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。
なお、本実施例4は参考例である。
【0090】
その結果:
水接触角の測定結果は、21度であった。
誤作動回数は4回であった。
鉛筆硬度は、Hであった。
【0091】
比較例1
実施例1において、特定親水性部材を使用しなかっとこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0092】
その結果:
水接触角の測定結果は、40度であった。
誤作動回数は16回であった。
鉛筆硬度は、2Hであった。
【0093】
比較例2
実施例1において、特定親水性部材に替えて、親水性層をもたないハードコートフィルムである、リケンテクノス社製SS50T(N)を使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0094】
その結果:
水接触角の測定結果は、70度であった。
誤作動回数は27回であった。
鉛筆硬度は、2Hであった。
【0095】
比較例3
実施例1において、特定親水性部材に替えて、親水性層をもたない携帯用保護フィルム(耐指紋付着性タイプ)である、ELECOM社製PD−FT01FLFを使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0096】
その結果:
水接触角の測定結果は、105度であった。
誤作動回数は25回であった。
鉛筆硬度は、Hであった。
【0097】
比較例4
実施例1において、特定親水性部材に替えて、親水性層をもたない携帯用保護フィルム(反射防止タイプ)である、ELECOM社製液晶保護フィルムPD-FT01FGを使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0098】
その結果:
水接触角の測定結果は、70度であった。
誤作動回数は25回であった。
鉛筆硬度は、Hであった。