特許第6166056号(P6166056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166056
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】アンカーボルト
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/41 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   E04B1/41 503F
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-28429(P2013-28429)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-156735(P2014-156735A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2016年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】397000160
【氏名又は名称】株式会社豊和
(72)【発明者】
【氏名】安藤 和明
(72)【発明者】
【氏名】柳井 徹
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭48−044535(JP,Y1)
【文献】 実開昭48−050760(JP,U)
【文献】 実公昭43−008848(JP,Y1)
【文献】 実公昭48−034424(JP,Y1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0238457(US,A1)
【文献】 米国特許第05846041(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/41
F16B13/04−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面(2)に設けた孔(3)に固定するアンカーボルト(1)であって、
先端部(7)の周方向の複数個所を切り欠くことで複数個の傾斜面(10)を形成している円柱形状のボルト本体(6)と、そのボルト本体(6)の各傾斜面(10)に臨ませて配置している複数個の当接部(8)とを有しており、
前記ボルト本体(6)の各傾斜面(10)は、当該ボルト本体(6)の先端側から基端側に向かうに従って前記ボルト本体(6)の中心軸に近づく傾斜平面状に形成していて、そのボルト本体(6)の各傾斜面(10)において当該ボルト本体(6)の基端側に水平面状の規制面(9)を形成しており、
前記各当接部(8)は、同一形状になっており、
前記当接部(8)の内周面(12)は、前記ボルト本体(6)の傾斜面(10)に沿って傾斜する傾斜平面状に形成してあって、当該当接部(8)の内周面(12)が前記ボルト本体(6)の傾斜面(10)に当接するようになっており、
前記各当接部(8)の外周面(11)は、円柱面状になっていて前記孔(3)の内周面(18)に面接触可能になっており、
前記当接部(8)の内周面(12)と、前記ボルト本体(6)の傾斜面(10)との当接状態を維持するための維持手段を有しており、
前記当接部(8)の外周面(11)に、当該当接部(8)の外方へ突出する突起(16)を設けており、
その突起(16)は、前記当接部(8)の外周面(11)において、前記ボルト本体(6)の先端側となる箇所から前記ボルト本体(6)の基端側となる箇所に向けて延びていて、当該突起(16)での前記先端側を断面円弧状に形成しているとともに、前記突起(16)での前記基端側の面を水平面状に形成していることで、前記突起(16)での先端側が前記アンカーボルト(1)を前記孔(3)へ差し込む際の抵抗になることが抑えられるとともに、前記アンカーボルト(1)を前記孔(3)へ差し込んだ際には、前記突起(16)での基端側の面の縁が前記孔(3)の内周面(18)に引っ掛かることを特徴とするアンカーボルト。
【請求項2】
前記維持手段が、全ての前記当接部(8)の外周面(11)に外嵌するとともに、前記各当接部(8)が前記ボルト本体(6)の外方へ移動することを許容する線条体(14)であることを特徴とする請求項1記載のアンカーボルト。
【請求項3】
前記維持手段が、前記当接部(8)の先端側どうしを連結する連結部(23)であることを特徴とする請求項1記載のアンカーボルト。
【請求項4】
前記各当接部(8)の外周面(11)に、その周方向に延びる溝(15)を設けていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のアンカーボルト
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の天井や側壁などの壁面に設けた孔に固定するアンカーボルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1で示すように、既設のコンクリート製の天井や側壁などの壁面にドリルなどで孔を空け、その孔にアンカーボルトを差し込んで固定し、そのアンカーボルトに設備機器や配管などを取り付けるものが知られている。
【0003】
詳しくは、特許文献1のアンカーボルトは、底面(特許文献1の第1図では下側)に近づくに従って径が大きくなる円錐面形状のテーパー部片の周面に、内面を円錐面形状に勾配させた四個の滑動片(構成部品)をそれぞれ当接させた状態で、それらの滑動片を線状体によってテーパー部片の周面に保持しているとともに、前記テーパー部片の中心軸に沿って設けた雌ねじに鉄筋の雄ねじを螺合させている。
【0004】
そして、コンクリートの壁面に空けた孔へ前記アンカーボルトを差し込んだのちに、前記雄ねじを回転させて、テーパー部片に対して前記孔から引き抜く方向の引っ張り力を加える。それによってテーパー部片が孔の開口側へ動いて、そのテーパー部片の周面が滑動片を前記孔の内周面側に押し、滑動片の外周面が前記孔の内周面に押し付けられて、前記アンカーボルトがコンクリートの壁面に保持(固定)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭48−50760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のアンカーボルトでは、前記テーパー部片の底面側の径が前記雄ねじの径よりも大きいために、そのテーパー部片の底面側の径に合わせた径で前記コンクリートの壁面に孔を空けなければならないことになる。つまり、前記孔の径を前記雄ねじの径よりも大きくしなければならず、その分だけ前記孔を空けるための作業に時間がかかって作業効率の低下を招いてしまう。
【0007】
また、特許文献1のアンカーボルトでは、前記孔に差し込む際に前記滑動片における前記テーパー部片の底面側の端が孔の内周面に引っ掛かって、当該滑動片がその場に留まってしまい、その滑動片がテーパー部片から外れて孔から抜ける虞がある。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解決することを目的として提供されたものであり、土木構造物の天井などの壁面に設けた孔の径を小さくできるとともに、孔に差し込む際に構成部品が孔から抜けないアンカーボルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる不都合を解決するために、壁面2に設けた孔3に固定するアンカーボルト1であって、先端部7の周方向の複数個所を切り欠くことで複数個の傾斜面10を形成している円柱形状のボルト本体6と、そのボルト本体6の各傾斜面10に臨ませて配置している複数個の当接部8とを有しており、ボルト本体6の各傾斜面10は、当該ボルト本体6の先端側から基端側に向かうに従ってボルト本体6の中心軸に近づく傾斜平面状に形成していて、そのボルト本体6の各傾斜面10において当該ボルト本体6の基端側に水平面状の規制面9を形成しており、各当接部8は、同一形状になっており、当接部8の内周面12は、ボルト本体6の傾斜面10に沿って傾斜する傾斜平面状に形成してあって、当該当接部8の内周面12がボルト本体6の傾斜面10に当接するようになっており、各当接部8の外周面11は、円柱面状になっていて孔3の内周面18に面接触可能になっており、当接部8の内周面12と、ボルト本体6の傾斜面10との当接状態を維持するための維持手段を有していることを特徴とする。
【0010】
ここでの壁面2には、トンネルなどの土木構造物や建築物の天井や側壁などの壁面が含まれる。ボルト本体6の規制面9は、ボルト本体6の径方向へ延びていて当接部8の下端が当接可能になっているものが該当し、その規制面9の水平面状には、ボルト本体6の軸方向へやや傾斜しているものや湾曲しているものなどが含まれる。当接部8の個数が多いほど、当接部8の外周面11と前記孔3の内周面18との接触面積を大きくできるが、アンカーボルト1の構造が複雑になるので、当接部8の個数は、前記接触面積とアンカーボルト1の構造などを考慮して設定されることになる。ここでの維持手段には、各当接部8の外周面11に外嵌する環状の板材や、環状のばねや、ワイヤーなどが該当する。
【0011】
具体的には、前記維持手段は、全ての当接部8の外周面11に外嵌するとともに、各当接部8がボルト本体6の外方へ移動することを許容する線条体14である。ここでの線条体14としては、伸縮可能な環状の合成ゴムや、鋼線(ばね鋼)をC字状に曲げ加工したリングばねや、全ての当接部8の外周面11に巻き付けられるコイルばねなどが該当する。
【0012】
また、前記維持手段は、前記当接部8・8の先端側どうしを連結する連結部23であるものとすることができる。当接部8と連結部23とは、一体成型したものであってもよく、当接部8と連結部23とをビスなどを用いて接続したものなどであってもよい。
【0013】
また、各当接部8の外周面11に、その周方向に延びる溝15を設けているものとすることができる。ここでの溝15には、当接部8の外周面11の周方向に斜めに延びる場合や、当接部8の外周面11の一部に設けている場合などが含まれる。
【0014】
また、当接部8の外周面11に、当該当接部8の外方へ突出する突起16を設けているものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアンカーボルト1は、各当接部8が壁面2の孔3内に入り込むように孔3内に差し込んで、例えば、ボルト本体6に装着(螺合)したナット21を回して、当該ナット21を孔3の開口の縁周辺に押し付け、さらにナット21を回すことにより、ボルト本体6が孔3の開口側へ引っ張られて、そのボルト本体6の傾斜面10によって各当接部8の内周面12が孔3の内周面18側へ押される。それにより、各当接部8の外周面11が孔3の内周面18にそれぞれ面圧接し(すなわち面接触した状態で押し付けられる。)、当接部8の外周面11と孔3の内周面18との面摩擦によってアンカーボルト1が孔3に固定される。その結果、アンカーボルト1が孔3から抜け出ることを確実に防止することができる。
【0016】
しかも、外力によってボルト本体6が孔3の外側へ引っ張られると、それに伴ってボルト本体6の傾斜面10が当接部8の内周面12をより強く押すので、各当接部8の外周面11が孔3の内周面18により強く面圧接される。それによって、アンカーボルト1が孔3から抜け出ることをより確実に防止することができる。
【0017】
かかる本発明のアンカーボルト1では、当接部8の内周面12が当接するボルト本体6の傾斜面10を、ボルト本体6の先端部7を切り欠いて形成しているので、その分だけ各当接部8をボルト本体6の中心軸側に寄せることができる。それにより、アンカーボルト1のボルト本体6の径方向への各当接部8の突出を抑えることができ、それに伴ってアンカーボルト1の径を小さくできる。その孔3の径を小さくできることによって、当該孔3を空けるための作業の手間を軽減でき、それによって作業効率が向上する。
【0018】
ボルト本体6の傾斜面10での当該ボルト本体6の基端側に水平面状の規制面9を形成しているので、アンカーボルト1を孔3内に差し込む際に、当接部8が孔3の内周面18との摩擦によってその場に留まろうとしても、前記規制面9によって当接部8は孔3の奥側へ押される。それによってアンカーボルト1を孔3内に差し込む際に、当接部8がボルト本体6の傾斜面10から外れることを確実に防止することができる。
【0019】
各当接部8が同一形状になっているので、その分だけアンカーボルト1の構成部品の種類を少なくすることができ、部品管理の手間などを軽減することができる。また、各当接部8がそれぞれ独立しているので、例えばボルト本体6の径が異なる種類のアンカーボルト1であっても、本発明の当接部8を装着することができ、それによっても部品管理の手間などを軽減することができる。
【0020】
各当接部8の内周面12と、ボルト本体6の傾斜面10との当接状態を維持する維持手段が、各当接部8がボルト本体5の外方へ移動することを許容する線条体14であると、維持手段が各当接部8の孔3の内周面18側への移動の抵抗になることが抑えられる。それにより、各当接部8の外周面11を孔3の内周面18へ確りと面圧接させることができる。また、前記維持手段が、当接部8・8の先端側どうしを連結する連結部23であると、前記線条体14を設けなくても、例えば連結部23が弾性変形して、当該連結部23が当接部8の孔3の内周面18側への移動の抵抗になることを抑えることができる。そのうえで、各当接部8が連結部23によって一体化するので、それらの当接部8を一まとめで扱え、その分だけアンカーボルト1の組み立て性が向上する。
【0021】
各当接部8の外周面11に溝15を設けていると、各当接部8の外周面11が孔3の内周面18に面圧接したときには、溝15の縁が前記孔3の内周面18に食い込み、それによってアンカーボルト1が孔3から抜けることをより確実に防止することができる。
【0022】
各当接部8の外周面11に突起16を設けていると、アンカーボルト1を孔3へ差し込んだ際に前記突起16が孔3の内周面18に引っ掛かって、当接部8が孔3から抜け落ちることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るアンカーボルトの第1実施例を示す側面図である。
図2図1のA―A線矢視断面図である。
図3図1のB―B線矢視断面図である。
図4】第1実施例のアンカーボルトを孔に装着する手順を説明するための断面図である。
図5】第1実施例のアンカーボルトを孔に装着する手順を説明するための断面図である。
図6】第1実施例のアンカーボルトを孔に装着する手順を説明するための断面図である。
図7】本発明に係るアンカーボルトの第2実施例を示す側面図である。
図8図7のC―C線矢視断面図である。
図9図7のD―D線矢視断面図である。
図10】第2実施例のアンカーボルトを孔に装着する手順を説明するための断面図である。
図11】第2実施例のアンカーボルトを孔に装着する手順を説明するための断面図である。
図12】第2実施例のアンカーボルトを孔に装着する手順を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るアンカーボルトの第1実施例を図1ないし図6に基づいて説明する。本発明のアンカーボルト1は、図6に示すように、例えばコンクリート製の天井の壁面2に空けた(設けた)孔3へ差し込んだ状態で固定するようになっている。
【0025】
そのアンカーボルト1は、図1ないし図3に示すように、先端部7(図1では上側)の周方向の四箇所を切り欠くことで四個の傾斜面10を形成している円柱形状のボルト本体6と、そのボルト本体6の各傾斜面10に臨ませて配置している四個の当接部8とを有している。
【0026】
詳しくは、ボルト本体6の傾斜面10は、当該ボルト本体6の周方向へ等間隔に形成しており、それに応じて各当接部8は、ボルト本体6の周方向へ等間隔に配置している。それにより、当接部8は二個一組でそれぞれ対向している。各当接部8は、同一形状になっている。ボルト本体6の下部側の周側面4には雄ねじ5を形成している。ボルト本体6には、不図示の設備機器や配管などが固定される。
【0027】
ボルト本体6の各傾斜面10は、当該ボルト本体6の先端側から基端側(図1では下側)に向かうに従ってボルト本体6の中心軸に近づく傾斜平面状に形成している。当接部8の内周面12は、ボルト本体6の傾斜面10に沿って傾斜する傾斜平面状に形成してあって、図6に示すように、当該当接部8の内周面12が、ボルト本体6の傾斜面10に当接(面接触)するようになっている。ボルト本体6の各傾斜面10の下側(当該ボルト本体6の基端側)には水平面状(ボルト本体6の径方向に延びる面)の規制面9を形成している(図4参照)。各当接部8の外周面11は、図3に示すように、ボルト本体6の周側面4と略同一の曲率を有する円柱面状になっている。ボルト本体6の傾斜面10と規制面9とは、例えばボルト本体6の中心軸に平行な垂直面などを介して繋がっていてもよい。
【0028】
アンカーボルト1には、各当接部8の内周面12と、ボルト本体6の傾斜面10との当接状態を維持するための線条体(維持手段)14を有している。その線条体14は、伸縮可能な環状の合成ゴムや、鋼線(ばね鋼)をC字状に曲げ加工したリングばねなどからなっていて、ボルト本体6の各傾斜面10に各当接部8の内周面12をそれぞれ当接させた状態で、そのボルト本体6の周側面4および全ての当接部8の外周面11に亘って外嵌している。線条体14は、ボルト本体5の外方への各当接部8の移動を許容するようになっている。
【0029】
各当接部8の外周面11の下部には、図1に示すように、複数本の溝15を上下方向に等間隔で並べて形成しており、その溝15は、各当接部8の外周面11の周方向へ延びている。なお、各当接部8の最上段の溝15内に前記線条体14が嵌め込まれている。前記溝15は、当接部8の外周面11に対して上下方向に斜めに傾斜していてもよく、当接部8の外周面11の周方向の一部に形成してもよい。また溝15に代えて、または溝15と共に、当接部8の外周面11の周方向へ延びる凸条部(不図示)を設けてもよい。
【0030】
各当接部8の外周面11の下部には、図1および図3に示すように、突起16をそれぞれ設けている。その突起16は、当接部8の外周面11の上下方向の中央から下端に向けて溝15を介して延びており、その突起16の上端部(および溝15の下端に繋がる箇所)を断面円弧状に形成しているとともに下面(および溝15の上端に繋がる箇所)を水平面状に形成しており、アンカーボルト1を前記孔3へ差し込んだ際には、当接部8の突起16の前記下面の縁が孔3の内周面18に引っ掛かって、当該当接部8が孔3から抜け落ちることを防いでいる。なお、突起16は、前記上端部を断面円弧状に形成しているので、当該突起16がアンカーボルト1を孔3へ差し込む際の抵抗になることが抑えられる。アンカーボルト1のボルト本体6および各当接部8は、それぞれステンレススチールで形成してある。
【0031】
次に、第1実施例のアンカーボルト1の施工手順について説明する。まず、ボルト本体6の各傾斜面10に各当接部8の内周面12をそれぞれ当接させた状態に支え、そのボルト本体6および各当接部8に亘って線条体14を外嵌して、ボルト本体6および各当接部8を図1の状態に組み立てる(一体化させる)。
【0032】
その組み立て状態のアンカーボルト1を、ボルト本体6の先端部7を上にした状態(図4の状態)で前記コンクリートの壁面2の孔3へ差し込んで、その孔3の奥まで差し込む。その際、各当接部8の突起16が孔3の内周面18に引っ掛かり、それによって各当接部8の下方への移動が規制される。また、ボルト本体6を孔3の奥まで差し込む際には、各当接部8は孔3の内周面18との摩擦によって上方へ移動し難いが、その各当接部8がボルト本体6の規制面9によって孔3の奥側へ押されることで強制的に上昇し、それによって各当接部8がボルト本体6の各傾斜面10から外れることが防がれる。そのアンカーボルト1のボルト本体6の下部側に、図5に示すように、不図示の設備機器や配管などを固定するためのブラケット20を装着し、そのブラケット20の下側にナット21を螺合する(図5の状態)。
【0033】
そして、スパナ(レンチ)などの工具でナット21を回して、当該ナット21を、ブラケット20を介して孔3の下縁周辺(開口の縁周辺)に押し付ける。さらにナット21を回すことで、そのナット21によってボルト本体5が下方へ引っ張られて図5の位置から、例えば図6の位置まで下降する。その際、前述のように各当接部8は突起16によって下方への移動が規制されており、また各当接部8の前記溝15の縁が孔3の内周面18に引っ掛かるので、ボルト本体6の下降につられて各当接部8が下降することがない。また、前述のように各当接部8の突起16が孔3の内周面18に引っ掛かっているので、各当接部8がアンカーボルト1の周方向へ回ることが抑えられる。
【0034】
前記ボルト本体6の下降に伴って、ボルト本体6の各傾斜面10によって各当接部8の内周面12がそれぞれ外方(前記孔3の内周面18側)へ押される。それにより、各当接部8の外周面11が前記孔3の内周面18に面圧接し(すなわち面接触した状態で押し付けられる。)、各当接部8の外周面11と前記孔3の内周面18との面どうしの摩擦によってアンカーボルト1が前記孔3に確りと固定される。
【0035】
その結果、ボルト本体6の下端に固定した設備機器などの重量(外力)によってボルト本体6が下方に引っ張られても、アンカーボルト1が前記孔3から抜け落ちることが防がれる。しかも、ボルト本体6が下方に引っ張られると、ボルト本体6の各傾斜面10が各当接部8の内周面12を外方へ押す力がより増すので、アンカーボルト1が前記孔3から抜け落ちることがより確実に防がれる。
【0036】
なお、各当接部8の外周面11が前記孔3の内周面18に面圧接したときには、各当接部8の前記溝15の上下の縁が前記孔3の内周面18に食い込み、それによってもアンカーボルト1が前記孔3から抜け落ちることがより防がれる。また、ブラケット20に代えて座金(不図示)をナット21の上側に装着してもよい。その場合、例えばボルト本体5の下端(基端)側に、設備機器や配管などが固定される。
【0037】
続いて、本発明のアンカーボルト1の第2実施例を図7ないし図12に基づいて説明する。第2実施例では、図7ないし図9に示すように、二個の当接部8・8を対面状に配置しており、第1実施例の線条体14に代えて、それらの当接部8・8の上端側(先端側)どうしを長板形状の連結部23によって連結している。詳しくは、前記連結部23は、図7に示すように、その両端部23a・23aをそれぞれ下方に折り曲げていて、当該両端部23a・23aの下端に当接部8・8をそれぞれ連結している。
【0038】
前記連結部23はボルト本体6の先端部7よりも上側に位置しており、ボルト本体6の先端部7には、図9に示すように、連結部23の各端部23a・23aを通すための切り欠き24・24を形成している。連結部23の各端部23a・23aの外周面は、ボルト本体6の周側面4(先端部7)と略同一の曲率を有する円柱面状になっている。
【0039】
なお、連結部23と二個の当接部8・8とは、一体成形したものであってもよく、別体で形成して連結部23の両端部23a・23aの下端に当接部8・8をそれぞれ溶接やビスなどで連結したものであってもよい。その他の構成は、第1実施例と同様であるので説明を省略する。
【0040】
第2実施例のアンカーボルト1では、当接部8・8を連結している連結部23を、例えばボルト本体6の側方からボルト本体6の先端部7に外嵌して当接部8・8の内周面12・12をそれぞれボルト本体6の各傾斜面10に当接させて、図7の状態に組み立てる。
【0041】
その組み立て状態のアンカーボルト1を、連結部23を上にした状態(図10の状態)で前記孔3へ差し込んで、その孔3の奥まで差し込む。その際には、第1実施例で説明したように、各当接部8がボルト本体6の規制面9によって孔3の奥側へ押される。その状態で、各当接部8の突起16は孔3の内周面18に引っ掛かっている。そのボルト本体6の下部側にブラケット20を装着し、そのブラケット20の下側にナット21を螺合する(図11の状態)。
【0042】
そして、ナット21を回してブラケット20を孔3の下縁部分に押し付け、さらにナット21を回すことで、ボルト本体6がねじ作用で下方へ引っ張られて、ボルト本体6の各傾斜面10が各当接部8の内周面12をそれぞれ外方へ押す。すると、各当接部8の外周面11が前記孔3の内周面18に面圧接し、各当接部8の外周面11と孔3の内周面18との面どうしの摩擦によってアンカーボルト1が孔3に固定される(図12の状態)。
【0043】
このように、第2実施例では、第1実施例の線条体14に代えて、当接部8・8を連結部23に連結しているので、その連結状態の連結部23や当接部8・8を、例えば片手で持ってボルト本体6の先端部7に外嵌させることができる。従って、第1実施例のように各当接部8を支えながら線条体14を外嵌しなくても済み、その分だけアンカーボルト1の組み立て性が向上する。
【0044】
なお、第2実施例において、第1実施例と同様に四個の当接部8をボルト本体6の周方向へ等間隔に配置し、その四個の当接部8の上端側(先端側)どうしを、例えば四つ又の連結部23によって連結してもよい。
【0045】
第1実施例において、当接部8を二個だけ対面状に配置するものであってもよく、第1実施例や第2実施例において、当接部8を三個または五個以上配置するものであってもよい。その当接部8の個数に合わせてボルト本体6の先端部7の傾斜面10や連結部23を形成することになる。前記突起16は、アンカーボルト1を孔3へ差し込んだ際に孔3の内周面18に引っ掛かるものであれば、前記第1実施例や第2実施例で示した形状であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 アンカーボルト
2 壁面
3 孔
4 ボルト本体の周側面
5 雄ねじ
6 ボルト本体
7 ボルト本体の上端部
8 当接部
9 規制面
10 ボルト本体の傾斜面
11 当接部の外周面
12 当接部の内周面
14 線条体
15 溝
16 突起
18 孔の内周面
23 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図12