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特許6166061地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法および地中熱利用システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166061
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法および地中熱利用システム
(51)【国際特許分類】
   F24J 3/08 20060101AFI20170710BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   F24J3/08
   E21B43/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-33285(P2013-33285)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-163554(P2014-163554A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 北海道中富良野役場敷地内 平成24年8月27日施工開始
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】小森 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 芳弘
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−182942(JP,A)
【文献】 特開2002−235957(JP,A)
【文献】 特開2009−63267(JP,A)
【文献】 特開2001−174073(JP,A)
【文献】 特開2011−149640(JP,A)
【文献】 国際公開第03/078905(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 3/08
E21B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲継手と前記湾曲継手の各端に接続される2つの直管とを有するU字管の内部を循環させた流体によって地中熱を採熱する地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法であって、
(a)地面に立抗を掘削するステップ、
(b)一方の湾曲継手に上向きの第1突部が形成されまたは他方の湾曲継手に下向きの第2突部が形成された2つのU字管を準備して、前記一方の湾曲継手の上に、各々の湾曲方向が直交するように前記他方の湾曲継手を重ね、前記第1突部または前記第2突部によって前記一方の湾曲継手と前記他方の湾曲継手の間に所定の間隔を保持して前記2つのU字管を配置するステップ、
(c)前記ステップ(b)で上下に重ねた湾曲継手どうしを固定して、埋設ユニットを構成するステップ、
(d)前記ステップ(c)で構成した埋設ユニットを前記立抗の底まで下降させるステップ、および
(e)前記ステップ(d)の後、前記立抗を埋め戻すステップを含む、地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法。
【請求項2】
前記湾曲継手のそれぞれには前記第1突部および前記第2突部が形成され、
前記ステップ(b)では、前記一方の湾曲継手の前記第1突部と前記他方の湾曲継手の前記第2突部とを突き当てることによって前記所定の間隔を保持する、請求項1記載の地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法。
【請求項3】
前記ステップ(c)では、上下に重ねた湾曲継手どうしを締め付け具を用いて固定する、請求項1または2記載の地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法。
【請求項4】
前記ステップ(c)では、前記締め付け具に錘を連結し、
前記ステップ(d)では、下方に前記錘を吊るした状態で前記埋設ユニットを下降させる、請求項3記載の地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法。
【請求項5】
前記ステップ(c)では、上下に重ねた湾曲継手どうしを金具部品にボルト止めして固定する、請求項1または2記載の地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法によって熱交換装置が施工された、地中熱利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法および地中熱利用システムに関し、特にたとえば、熱交換装置の内部を循環させた流体と地中熱との間で熱交換して地中熱を採熱する地中熱利用システムを施工する際に適用可能な、地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法および地中熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、地中の温度は、年間を通してほぼ一定であり、外気温度に比べると、夏は低く、冬は高くなっている。そこで、地中と外気との温度差を利用して効率的に冷暖房、給湯および融雪などを行うために、熱交換器を地中に埋設し、その熱交換器の内部に不凍液や水などの流体(熱媒体)を循環させて流体と地中熱との間で熱交換し、それによって採熱した熱をヒートポンプの熱源として利用する(つまり、必要な温度領域の熱に変換する)地中熱利用システムが公知である。
【0003】
このような地中熱利用システムによれば、採熱した地中熱を、冬であれば高温エネルギとして暖房用熱源又は融雪用熱源のために利用することができ、また、夏であれば低温エネルギとして冷房用熱源等のために利用することができる。
【0004】
たとえば、特許文献1には、地面に掘削孔を形成して、その掘削孔に熱交換器としてU字管を建て込む技術が記載されている。特許文献1では、2つの(1対の)U字管を互いに側方に重ね合わせて、それらをユニット化した状態で掘削孔の内部に配設した掘削管の中に挿入するようにしている。
【特許文献1】特開2012−127116号[E21B 43/00]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、各U字管のU字継手部の曲率が大きく、単管どうしの距離がつまっているので、各単管を流れる流体の熱どうしが干渉することによって流体の熱損失が大きくなってしまい、熱交換効率の低下が懸念されていた。
【0006】
また、これに対し、各U字管のU字継手部の曲率を小さくすることが考えられるが、そうすると、2つのU字管を互いに側方に重ね合わせたユニットの外形寸法が大きくなってしまい、その分だけ地面に形成する掘削孔の大きさも大きくしなければならないので、掘削孔の形成に手間や時間がかかり、システムの施工性が悪くなってしまう。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法および地中熱利用システムを提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、地中熱利用システムの効率化を実現し、かつ施工性に優れた、地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法および地中熱利用システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0010】
第1の発明は、湾曲継手と湾曲継手の各端に接続される2つの直管とを有するU字管の内部を循環させた流体によって地中熱を採熱する地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法であって、(a)地面に立抗を掘削するステップ、(b)一方の湾曲継手に上向きの第1突部が形成されまたは他方の湾曲継手に下向きの第2突部が形成された2つのU字管を準備して、一方の湾曲継手の上に、各々の湾曲方向が直交するように他方の湾曲継手を重ね、第1突部または第2突部によって一方の湾曲継手と他方の湾曲継手の間に所定の間隔を保持して2つのU字管を配置するステップ、、(c)ステップ(b)で上下に重ねた湾曲継手どうしを固定して、埋設ユニットを構成するステップ、(d)ステップ(c)で構成した埋設ユニットを前記立抗の底まで下降させるステップ、および(e)ステップ(d)の後、立抗を埋め戻すステップを含む、地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法である。
【0011】
第1の発明によれば、2つのU字管を各々の湾曲方向が直交するように交差させて上下に重ねた埋設ユニットを立抗の中へ挿入するようにしているので、2つのU字管を互いに側方に重ね合わせてユニット化した場合などと比較して、立抗の外形寸法を小さくすることが可能であり、施工性を向上させることができる。
【0012】
また、一方のU字管の湾曲継手の上、すなわち直管どうしの間に他方のU字管の湾曲継手を交差させて配設ようにしているので、無駄なスペースを生じさせないようにしつつ、U字管の湾曲継手を一定以上の曲率半径で形成して、流体の熱損失を回避することが可能になる。しかも、各U字管の湾曲継手どうしを上下に所定間隔を保持した状態で配設しているので、各々のU字管の湾曲継手の内部を循環する流体の熱どうしが干渉することを回避することができる。したがって、効率が良い地中熱利用システムを実現することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に従属し、湾曲継手のそれぞれには第1突部および第2突部が形成され、ステップ(b)では、一方の湾曲継手の第1突部と他方の湾曲継手の第2突部とを突き当てることによって所定の間隔を保持する
【0014】
第2の発明では、たとえば、U字管(12)のそれぞれの湾曲継手(32)には、間隔保持手段として第1突部(40)および第2突部(42)が形成され、埋設ユニット(50)を構成する時には、この第1突部と第2突部を突き当てることによって上下の湾曲継手どうしの間に所定の間隔を保持する。
【0015】
第3の発明は、第1または2の発明に従属し、ステップ(c)では、上下に重ねた湾曲継手どうしを締め付け具を用いて固定する。
【0016】
第3の発明によれば、埋設ユニットの挿入時にU字管が位置ずれしてしまうことを防止することができる。
【0017】
第4の発明は、第3の発明に従属し、ステップ(c)では、締め付け具に錘を連結し、ステップ(d)では、下方に錘を吊るした状態で埋設ユニットを下降させる。
【0018】
第4の発明では、上下に重ねて配置した2つのU字管(12)の湾曲継手(32)どうしを固定している締め付け具(46)に錘(52)を連結して、その錘を埋設ユニット(50)の下方に吊るした状態で、埋設ユニットを立抗(104)の中に挿入する。
【0019】
第5の発明は、第1または2の発明に従属し、ステップ(c)では、上下に重ねた湾曲継手どうしを金具部品にボルト止めして固定する。
【0020】
第5の発明によれば、埋設ユニットの形状をより安定化させることができる。
【0021】
第6の発明は、第1ないし5の発明の地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法によって熱交換装置が施工された、地中熱利用システムである。
【0022】
第6の発明では、地中熱利用システム(10)は、熱交換装置としてU字管(12)を備えており、2つのU字管を各々の湾曲方向が直交するように交差させた状態で上下に重ねて配設したものが地中に埋設されている。そして、U字管にヒートポンプ(14)を接続し、U字管の内部とヒートポンプとに循環ポンプ(16)によって流体を循環させることによって、地中熱を採熱する。
【0023】
第6の発明によれば、効率が良く、かつ施工性に優れた地中熱利用システムを実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、2つのU字管を各々の湾曲方向が直交するように交差させた状態で上下に重ねてユニット化するようにしているので、地中熱利用システムの効率低下を回避しつつ、施工性を向上させることが可能である。
【0025】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の一実施例の背景となる地中熱利用システムの概略を示す図解図である。
図2図1のU字管を地中に埋設した様子を示す図解図である。
図3図2の湾曲継手を示す斜視図である。
図4図2の湾曲継手を示す平面図である。
図5】2つのU字管を上下に重ねて配設した様子を示す斜視図である。
図6】上下に重ねて配設した2つのU字管の垂直方向の投影面積を収容する円を示す図解図である。
図7】埋設ユニットに錘を吊るした様子を示す斜視図である。
図8】側方に重ねて配設した2つのU字管の垂直方向の投影面積を収容する円と、図6の上下に重ねて配設した2つのU字管の垂直方向の投影面積を収容する円とを比較した図解図である。
図9】この発明の別の実施例の地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法の埋設ユニットの要部を示す斜視図である。
図10図9の金具部品を示す斜視図である。
図11図9の金具部品を示す平面図である。
図12図9の埋設ユニットを側面視した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の一実施例である地中熱利用システムの熱交換装置の施工方法(以下、単に「施工方法」ということがある。)は、たとえば図1に示すような、熱交換装置が地中熱から取り出した熱を有効利用する地中熱利用システム10(以下、単に「システム」ということがある。)を住宅などの建物100に施工するために用いられる。
【0028】
以下には、この発明の施工方法の説明に先だって、システム10について説明する。
【0029】
図1にシステム10の一例が図解される。図1に示すように、システム10は、建物100の周囲ないし床下の地面102に埋設されるU字管12、およびU字管12に接続されるヒートポンプ14を備えており、U字管12の内部とヒートポンプ14とに循環ポンプ16によって流体(熱媒体)を循環させ、流体が採熱した地中熱をエアコン等の室内機器18において暖房ないし冷房のための熱源として利用するものである。たとえば、流体としては、不凍液、水等が用いられる。
【0030】
このシステム10では、分散して埋設された各U字管12の往路用の直管(第1直管34)の上端に、第1ヘッダ22から分岐配管された流入分岐管20がそれぞれ接続され、その第1ヘッダ22には、ヒートポンプ14に繋がる流入本管24が接続される。そして、各U字管12の復路用の直管(第2直管36)の上端に、第2ヘッダ28から分岐配管された流出分岐管26がそれぞれ接続され、その第2ヘッダ28には、ヒートポンプ14に繋がる流出本管30が接続される。
【0031】
なお、ヒートポンプ14の構成は周知であるため、詳細な説明は省略するが、簡単に説明すると、システム10では、ヒートポンプ14において、U字管12の内部を循環して地中熱を採熱した流体から熱(熱エネルギ)を取り出して、その熱を第2の流体に熱移動させる。そして、それによって暖められた第2の流体が、ヒートポンプ14から室内機器18に送り込まれて、室内機器18において暖房のために利用することで熱が取り出され、冷却された第2の流体が再びヒートポンプ14に送り込まれ、流体と熱交換を行う。
【0032】
なお、ここでは、冬季などに、流体が地中で採熱した地中熱を室内機器18で暖房のための熱源として利用する場合について説明したが、そのような用途に限定されるものではないことに留意されたい。
【0033】
次に、U字管12について詳述すると、U字管12は、このシステム10において熱交換装置として利用され、地中から地表にかけて設けられる。具体的には、図2に示すように、建物100の周囲ないし床下の地面102には、立抗104が分散的に掘削され、各立抗104内に、2つのU字管12A,12Bが各々の湾曲方向が直交するように交差させた状態で上下に重ねて配設される。
【0034】
以下、U字管12をその配置位置などに応じて区別する場合には12に添え字A、Bを付した12A、12Bを用い、これらを包括して表現する場合には12を用いる。
【0035】
U字管12は、湾曲継手32と湾曲継手32の各端に接続される2つの直管34,36とを含み、上下(垂直方向)に延びるように配設される。
【0036】
湾曲継手32は、ポリエチレンンなどの合成樹脂によって形成される両受口の継手であって、U字状に湾曲した本体38を有している。本体38の曲率半径は、たとえば35mmである。また、本体38の両端部に形成された受口38aはともに上方に向けて開口しており、各受口38aには、各直管34,36の下端がそれぞれ熱融着等によって接続される。
【0037】
図3および4に示すように、本体38の上側の外周面には、受口38a,38aどうしの間の位置に、上方向に突き出す第1突部40が形成される。第1突部40は、略円筒状に形成され、その上下方向の長さ(高さ)は、たとえば15mmであり、その径は、たとえば15mmである。また、本体38の下端の外周面には、下方向に突き出す第2突部42が形成される。第2突部42は、略三角形の板状に形成され、その高さは、たとえば23mmであり、その厚みは、たとえば6mmである。第2突部42には、厚み方向に貫通する貫通孔42aが形成されている。たとえば、この実施例では、第1突部40と第2突部42とが協働して間隔保持手段として機能し、詳細は後に説明するように、2つのU字管12A,12Bを各々の湾曲方向が直交するように交差させた状態で上下に重ねた時には、この間隔保持手段によって湾曲継手32どうしの間に一定の間隔が保持されることとなる。
【0038】
また、本体38の湾曲方向の中央部には、窪み部44がそれぞれ形成される。窪み部44は、本体38の側方、つまり湾曲方向に直交する方向の外周面を曲面状に窪ませた窪みであって、U字管12の直管34の外周面に沿う形状に形成されている。たとえば、この実施例では、窪み部44が位置決め手段として機能し、詳細は後に説明するように、上側に配置したU字管12Bの湾曲継手32の各窪み部44に、下側に配置したU字管12Aの直管34,36をそれぞれ沿わせることによって、2つのU字管12A,12Bを各々の湾曲方向が直交するように交差させることができる。
【0039】
図2に戻って、直管34,36は、立抗104の深さに対応すべく十分な長さを有する長尺管であって、その径は、たとえば32mmである。直管34,36は、立抗104から外に突き出すように設けられ、往路用の直管(第1直管)32の上端は、流入分岐管20から流体を取り込む取入口となり、また、復路用の直管(第2直管)34の上端は、流出分岐管28へと流体を送り出す送出口となる。
【0040】
以上で、この発明の施工方法によって施工されるシステム10を説明した。以下に、このようなシステム10を前提にして、必要に応じてそれらを援用しながら、この発明の一実施例の施工方法について説明する。
【0041】
ただし、この発明はシステム10の熱交換装置を施工する方法に特徴があるものであり、残余の部分を変更してもよいので、以下の実施例においてはいずれも、システム10のU字管12を配管する方法を中心に図解しかつ説明していることに留意されたい。
【0042】
図2を参照して、先ず、建物100の周囲ないし床下の地面102に分散させて複数の立抗104を形成する。すなわち、専用の削孔機(図示せず)などを利用して、先端に掘削刃(ビット)が設けられた掘削用のケーシングによって地面102を鉛直方向に掘削し、所定の深さの立抗104を形成する。たとえば、ケーシングには、金属管や合成樹脂管などを利用し得る。また、立抗104の外形寸法は、少なくともケーシングの内周側に後述する埋設ユニット50を挿入(配設)できるように、つまり埋設ユニット50の垂直方向の投影形状がケーシングの内周側に収まるように設定される。
【0043】
なお、地中熱は地表面から約15mまでは頻繁に温度が変化するが、約15mよりも深くなると年間平均気温付近で安定していることが知られているため、このシステム10においても、U字管12を地中熱が安定している領域に届くように立抗104の深さを適宜設定することが好ましい。たとえば、この実施例では、立抗104の深さを15−100mに設定するようにしている。
【0044】
次に、熱交換装置として用いるU字管12を準備する。たとえば、U字管12は、ドラム(図示せず)に巻き取った状態で施工現場に搬入される。そして、施工現場において、U字管12の内部に流体を充填して、直管部32,34の管端をキャップなどで封止する。それから、ドラムを周方向に回転可能なターンテーブルの上に載置するなどして、U字管12をドラムから引き出し可能な状態で設置する。なお、この実施例では、2つのU字管12A,12Bを組み合わせて立抗104の中に挿入するので、立抗104の周囲に2つのドラムを設置して、各ドラムからそれぞれU字管12A,12Bを引き出し可能なように設置するとよい。
【0045】
続いて、各ドラムから2つのU字管12A,12Bをそれぞれ引き出して、それらを組み合わせてユニット化して、埋設ユニット50を構成する。
【0046】
具体的には、先ず、ドラムから引き出した2つのU字管12A,12Bを上下に配置する。そして、図5に示すように、上側に配置したU字管12Bの湾曲継手32の窪み部44に、下側に配置したU字管12Aの各直管34,36の外周面を沿わせつつ、U字管12Bの湾曲継手32の第2突部42の先端(下端)をU字管12Aの湾曲継手32の第1突部40の先端(上端)に突き当てるようにして、2つのU字管12A,12Bを各々の湾曲方向が直交するように交差させた状態で上下に重ねて配置する。
【0047】
このとき、U字管12Aの第1突部40とU字管12Bの第2突部42とを突き当てて配設していることにより、各U字管12A,12Bの湾曲継手32どうしが間隔dを隔てて配置される(図2参照)。たとえば、この実施例では、間隔dが36mmに設定されている。また、図6に示すように、一方のU字管12Aの湾曲継手32の上に他方のU字管12Bの湾曲継手32を交差させて配設していることにより、U字管12A,12Bの垂直方向の投影形状は、半径R1の円内に収まる大きさになる。たとえば、この実施例では、円の半径R1が56mmに設定されている。
【0048】
そして、図7に示すように、2つのU字管12A,12Bの各湾曲継手32の第2突部42の挿通孔32aに締め付け具46を挿通させ、締め付け具46でひとまとめにして締め付けることによって、2つのU字管12A,12Bを固定した(ユニット化した)埋設ユニット50を構成する。たとえば、締め付け具46としては、番線やインシュロック等を利用し得るが、これに限定される必要はない。
【0049】
次に、埋設ユニット50の下方に、埋設ユニット50が挿入時に地下水などによって浮遊することを防止するための錘52を連結して、立抗104の中に挿入する。具体的には、錘52を締め付け具46に連結し、その錘52を埋設ユニット50の下方に吊るした状態で、埋設ユニット50を立抗104に挿入し、立抗104の中を下降させる。なお、図7以外では、図面の簡素化のため、締め付け具46や錘52の図示を省略している。
【0050】
そして、埋設ユニット50の先端が立抗104の底まで到達すると、立抗104を掘削した際に生じた土などを立抗104の中に埋め戻しつつ、ケーシングを立抗104から抜き取る。このとき、ケーシングに振動を与えながら土を埋め戻すと、立抗104内に隙間なく土が充填されることとなり、好適である。
【0051】
その後、上述と同じ要領で、残りの全ての立抗104に埋設ユニット50を配設し、作業を終了する。
【0052】
以上のように、この実施例では、立抗104へのU字管12の施工時に、2つのU字管12A,12Bを各々の湾曲方向が直交するように交差させた状態で上下に重ねて配設し、そのようにして構成した埋設ユニット50を立抗104の中へ挿入するようにしている。
【0053】
このため、たとえば特許文献2のように、2つのU字管を互いに側方に重ね合わせてユニット化した場合と比較して、立抗104に必要な外形寸法を小さくすることができる。
【0054】
ここで、上述したように、2つのU字管12A,12Bを各々の湾曲方向が直交するように交差させた状態で上下に重ねてユニット化した場合には、U字管12A,12B(埋設ユニット50)の垂直方向の投影形状が半径R1の円内に収まるようになるので、立抗104の外形寸法を、挿入孔108が少なくとも半径R1の円形になる大きさに設定すればよいが、図8に示すように、2つのU字管を互いに側方に重ね合わせてユニット化した場合には、そのユニットの垂直方向の投影形状は半径R1よりも大きい半径R2(R2>R1)の円内に収まるものの、半径R1の円内には収まらない。よって、立抗104の外形寸法も、そのユニットを挿入可能なように、ケーシングの内周側が少なくとも半径R2の円形になる大きさに設定する必要がある。たとえば、円の半径R2は、63mmである。
【0055】
すなわち、この実施例によれば、2つのU字管12A,12Bを各々の湾曲方向が直交するように交差させた状態で上下に重ねてユニット化することにより、ケーシングの内周側の径をR3(R2−R1)だけ小さくすることが可能になって、その分だけ立抗104の外形寸法を小さくすることができる。したがって、より簡単にかつ低コストで立抗104を掘削する作業を行えるようになり、施工性を向上させることができる。
【0056】
また、この実施例では、一方のU字管12Aの湾曲継手32の上、すなわち直管34と直管36との間に他方のU字管12Bの湾曲継手32を交差させて配設していることにより、無駄なスペースを生じさせないようにしつつ、U字管12の湾曲継手32を一定以上の曲率半径で形成することができる。よって、流体の熱損失を回避することが可能になる。
【0057】
その上、2つのU字管12A,12Bの湾曲継手32どうしを上下に間隔dを隔てた状態で配設し、湾曲継手32どうしが離間して接触しないようにしているので、各々のU字管12A,12Bの湾曲継手32の内部を循環する流体の熱どうしが干渉することを回避して、それに起因した熱交換効率の低下も防止することができる。
【0058】
したがって、この実施例によれば、効率が良い地中熱利用システム10を実現することができる。
【0059】
なお、上述の実施例では、埋設ユニット50を構成する時に、上下に重ねて配設した2つのU字管12A,12Bの各湾曲継手32の第2突部42の挿通孔32aに締め付け具46を挿通し、締め付け具46でひとまとめにして締め付けることによって、U字管12AとU字管12Bとを固定したが、これに限定される必要はない。
【0060】
たとえば、図9に示す埋設ユニット50の変形実施例では、この実施例では、U字管12AとU字管12Bとを、各々の湾曲方向が直交するように交差させた状態で上下に重ねて配設し、それらを金具部品54にボルト60,62でボルト止めすることによって固定している。以下、図7に示す埋設ユニット50と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
【0061】
金具部品54は、図10および図11に示すように、鉄やステンレスなどの金属からなり、第1本体56および第2本体58を含む。第1本体56は、垂直方向に延びる平板であり、その長手方向つまり上下方向の長さは、たとえば100mmであり、その幅は、たとえば26mmであり、その厚みは、たとえば4mmである。第1本体56の上端部の所定位置には、厚み方向に貫通するボルト孔56aが形成されている。また、第1本体56の下端には、第2本体58が一体的に形成されている。
【0062】
第2本体58は、第1本体56の幅方向の一方側縁から第1本体56の幅方向に延びるとともに、第1本体56の中央付近で直角に屈曲して第1本体56の厚み方向に延びる略L字状の平板であり、その長手方向の長さは、たとえば35mmであり、その幅つまり上下方向の長さは、たとえば20mmであり、その厚みは、たとえば4mmである。第2本体58の先端部分、つまり第1本体56の厚み方向に延びる部分の所定位置には、厚み方向に貫通するボルト孔58aが形成されている。
【0063】
図9および図12を参照して、このような埋設ユニット50を構成する時には、先ず、2つのU字管12A,12Bを各々の湾曲方向が直交するように交差させた状態で上下に重ねて配設する。それから、下側に配置したU字管12Aの湾曲継手32を挟み込むように2つの金具部品52を配置して、一方の金具部品54の第1本体56のボルト孔56a、下側に配置したU字管12Aの第2突部42の貫通孔42a、および他方の金具部品54の第1本体56のボルト孔56aにボルト60を挿通してナット等によって固定するとともに、一方の金具部品54の第2本体58のボルト孔58a、上側に配置したU字管12Bの第2突部42の貫通孔42a、および他方の金具部品54の第2本体58のボルト孔58aにボルト62を挿通してナット等によって固定する。
【0064】
このような埋設ユニット50では、上下に重ねた2つのU字管12A,12Bの湾曲継手32どうしをそれぞれ金具部品54にボルト止めするようにしているので、各U字管12A,12Bの湾曲継手32を締め付け具46で締め付けて固定する場合と比較して、埋設ユニット50の形状をより安定化させることができる。したがって、埋設ユニット50を立抗104に挿入し、立抗104の中を下降させている時にも、U字管12A,12Bの湾曲継手32どうしに位置ずれなどが生じる心配がない。
【0065】
また、上述の各実施例ではいずれも、U字管12の湾曲継手32に第1突部40と第2突部42とを形成し、埋設ユニット50を構成する時には、U字管12Aの湾曲継手32の第1突部40の先端(上端)とU字管12Bの湾曲継手32の第2突部42の先端(下端)とを突き当てることによって、2つのU字管12A,12Bの湾曲継手32どうしが間隔dを隔てるようにしたが、これに限定される必要はない。
【0066】
たとえば、U字管12の湾曲継手32に第1突部40のみを形成し、埋設ユニット50を構成する時に、U字管12Aの湾曲継手32の第1突部40をU字管12Bの湾曲継手32の下側に突き当てるようにしてもよいし、また、U字管12の湾曲継手32に第2突部42のみを形成し、埋設ユニット50を構成する時に、U字管12Bの湾曲継手32の第2突部42をU字管12Aの湾曲継手32の上側に突き当てるようにしてもよい。
【0067】
さらに、たとえば、U字管12Aの湾曲継手32の第1突部40の先端(上端)に、第1嵌合部を形成するとともに、U字管12Bの湾曲継手32の第2突部42の先端(下端)に、第1嵌合部と嵌まり合う第2嵌合部を形成して、湾曲継手32どうしを上下に重ねた時に第1嵌合部と第2嵌合部とを嵌合させるようにしてもよい。このようにすれば、埋設ユニット50の形状をより安定化させることができる。
【0068】
さらにまた、たとえば、U字管12Aの湾曲継手32とU字管12Bの湾曲継手32との間に別部材を挟み込んで、それによって湾曲継手32どうしの間隔を保持するようにしてもよい。
【0069】
さらに、上述の実施例では、U字管12において間隔保持部として機能する第2突部42の挿通孔32aに締め付け具46やボルト60,62を挿通させるようにしたが、これに限定される必要はない。各湾曲継手32の本体38どうしを直接的に締め付け具46でひとまとめにして締め付けることによって、U字管12AとU字管12Bとを固定するようにしてもよいし、各湾曲継手32の本体38にボルト60,62を挿通させるための部位を別途形成し、そこに挿通させたボルト60,62によって金具部品54にボルト止めして、U字管12AとU字管12Bとを固定するようにしてもよい。
【0070】
また、必ずしも上下に重ねた2つのU字管12A,12Bの湾曲継手32どうしを締め付け具46で締め付けたり金具部品54にボルト止めするなどして固定する必要もない。それに代えて、2つのU字管12A,12Bの直管34,36どうしを適宜の固定手段で固定することによって、U字管12AとU字管12Bとを固定するようにしてもよい。また、これらの方法を併用するようにしてもよい。
【0071】
ところで、上述の実施例では、システム10を住宅に適用する場合を想定して説明するが、システム10は、住宅のみならず、冷暖房設備を備える倉庫や事務所などの建物全般に対して適用できることは言うまでもない。
【0072】
また、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 …地中熱利用システム
12 …U字管(熱交換装置)
14 …ヒートポンプ
16 …循環ポンプ
32 …湾曲継手
34,36 …直管
46 …締め付け具
50 …埋設ユニット
54 …金具部品
104 …立抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12