(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0009】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の第1の態様は、下記(A)(成分(A))と下記(B)(成分(B))とを含むゴム成分、を含有する。
(A):ポリビニル芳香族化合物(I)と、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物(II)とを反応させて得られる重合開始剤(a1)を用いて、共役ジエン系化合物を重合してなる共役ジエン系重合体、又は前記共役ジエン系重合体を変性してなる変性共役ジエン系重合体。
(B):ランタン系列金属化合物の存在下で共役ジエン系化合物を重合してなる共役ジエン系重合体(b1)と、シリル基に結合したアルコキシ基及びエステル基を含有するアミノ化合物(b2)とを、反応させてなる変性共役ジエン系重合体。
【0010】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の第2の態様は、下記(A1)(成分(A1))と下記(B1)(成分(B1)とを含むゴム成分、を含有する。
(A1):重量平均分子量が30万以上〜200万以下であり、炭素原子を基点とする重合体鎖の3分岐点を1分子中に0.1〜4個有する共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体
(B1):下記式(5)で表される官能基を有し、シス結合量が90%以上である変性共役ジエン系重合体
【化12】
(式(5)中、R
101〜R
107は、各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基を表す。yは1〜3の整数である。)
【0011】
[(A)成分]
まず、本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の成分(A)について説明する。
本実施形態において、成分(A)は、ポリビニル芳香族化合物(I)と、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物(II)とを、反応させて得られる重合開始剤(a1)の存在下、共役ジエン系化合物を重合することによって得られる共役ジエン系重合体、又は、前記共役ジエン系重合体を変性することによって得られる変性共役ジエン系重合体である。
【0012】
<重合開始剤(a1)>
本実施形態において、重合開始剤(a1)は、ポリビニル芳香族化合物(I)と、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物(II)とを反応させて得られる。
重合開始剤(a1)は、共役ジエン系化合物の重合において、多官能アニオン重合開始剤として機能する。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、(A)成分の重合開始剤として、上記重合開始剤(a1)を用いることにより、転がり抵抗特性や磨耗特性に優れ、さらに、破断特性やウェットスキッド抵抗性にも優れる。
【0013】
(ポリビニル芳香族化合物(I))
本実施形態において、ポリビニル芳香族化合物(I)は、芳香族ビニル化合物の単量体を重合して得られるものである。前記単量体としては、特に限定されないが、例えば、o,m及びp−ジビニルベンゼン、o,m及びp−ジイソプロペニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,2−ビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,3,5−トリビニルナフタレン、2,4−ジビニルビフェニル、3,5,4’−トリビニルビフェニル、1,2−ジビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,5,6−トリビニル−3,7−ジエチルナフタレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
特に、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼンが好ましく、これらのo−、m−、及びp−の異性体の混合物であってもよい。
【0014】
(アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物(II))
本実施形態において、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物(II)としては、特に限定されないが、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物、1,4−ジリチオブタン、1,5−ジリチペンタン、1,6−ジリチオヘキサン、1,1,0−ジリチオデカン、1,1,−ジリチオフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4−ジリチオベンゼン、1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニルエタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリリチオ−2,4,6−トリエチルベンゼン等の多官能有機リチウム化合物等が挙げられる。特に、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が、反応性の観点から、好ましい。
【0015】
(重合開始剤(a1)の調製)
本実施形態において、重合開始剤(a1)は、ポリビニル芳香族化合物(I)と、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物(II)とを反応させることにより調製する。
本実施形態において、(I)と(II)の配合比は特に限定されないが、モル比(I/II)が0.01以上0.4以下の範囲内になるように調製されることが好ましい。モル比(I/II)が0.01以上であることにより、本実施形態の組成物は、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスが更に良好なものとなり、耐摩耗性が一層向上する。他方、混練り等の加工性の点から、モル比(I/II)は0.4以下が好ましい。
前記の理由は定かではないが、(A)成分が変性共役ジエン系共重合体である場合、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物(II)に対するポリビニル芳香族化合物(I)の使用量が多いほど、後述する共役ジエン系重合体の変性反応によって官能基を付与される分子鎖末端の割合が増加し、後述するシリカ系粒子との親和性や反応性の向上が図られ、変性共役ジエン系重合体組成物における低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスが更に良好なものとなり、耐摩耗性の向上も図られると考えられる。低ヒステリシスロス性の改善は、組成物のムーニー粘度の上昇、しいては加工性の悪化を招来するが、モル比(I/II)を、0.01以上0.4以下の範囲内とすれば、低ヒステリシスロス性と加工性とのバランスは良好となり、好ましい。モル比(I/II)は、0.02モル以上がより好ましく、0.03以上がさらに好ましい。また、0.3モル以下がより好ましく、0.25以下がさらに好ましい。
【0016】
ポリビニル芳香族化合物(I)と、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物(II)との反応方法は、特に限定されないが、例えば、炭化水素溶媒中で、(a)(I)と(II)とを反応させる方法;(b)(II)と共役ジエン化合物とを反応させた後に、(I)を反応させる方法;(c)(II)とモノビニル芳香族化合物とを反応させた後に、(I)を反応させる方法;(d)共役ジエン化合物及び/又はモノビニル芳香族化合物及び(I)の二者又は三者の存在下で、(II)を反応させる方法等が挙げられる。
特に、炭化水素溶媒中で、(I)と(II)とを反応させる方法、(II)と共役ジエン化合物とを反応させた後に、(I)を反応させる方法、共役ジエン化合物及び(I)の存在下で、(II)を反応させる方法が好ましい。
また、重合開始剤(a1)の生成の促進や安定化を図るために、調製の際に、系内に極性化合物を添加することが好ましい。
【0017】
本実施形態において、重合開始剤(a1)の調製に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0018】
本実施形態において、特に限定されないが、重合開始剤(a1)の調製工程中、系内にルイス塩基を添加することが有効である。
ルイス塩基としては、3級モノアミン、3級ジアミン、鎖状又は環状エーテル等が挙げられる。
3級モノアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、1,1−ジメトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリメチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミドジイソプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジシクロヘキシルアセタール等の化合物が挙げられる。
3級ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ジピペリジノエタン等の化合物が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレンジメチルエーテルが挙げられる。
環状エーテルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン、ビス(2−オキオラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、1,1−ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニルブタン)、2,2−ビス(5−メチル−2−オキソラニル)プロパン、2,2−ビス(3,4,5−トリメチル−2−オキソラニル)プロパン等の化合物が挙げられる。
前記ルイス塩基の中でも、3級モノアミンであるトリメチルアミン、トリエチルアミン、3級ジアミンであるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、及び環状エーテルであるテトラヒドロフラン、2,2−ビス(2−オキサソラニル)プロパンが重合開始剤(a1)の生成促進や安定化の観点から好ましい。
前記ルイス塩基は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
また、重合開始剤(a1)を調製する際にルイス塩基を添加する場合は、重合開始剤(a1)を調製するときに用いられる前記溶媒に対し、30〜50,000ppmの範囲内で添加することが好ましく、200〜20,000ppmの範囲内で添加することがより好ましい。
反応促進や安定化の効果を十分に発現するためには、30ppm以上が好ましく、後の重合工程でのミクロ構造調整の自由度を確保することや重合後の溶媒を回収し、精製工程における重合触媒との分離を考慮すると50,000ppm以下で添加することが好ましい。
【0020】
本実施形態において、重合開始剤(a1)を調製する際の温度は、特に限定されないが、生産上の観点から10℃以上、高温による副作用抑制の観点から140℃以下であることが好ましく、より好ましくは35〜110℃の範囲である。
【0021】
本実施形態において、重合開始剤(a1)を調製する反応時間は、特に限定されず、反応温度に左右されるが、5分〜24時間の範囲が好ましい。
【0022】
本実施形態において、重合開始剤(a1)のGPCで測定されるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、500〜20,000の範囲であることが好ましく、1,000〜10,000の範囲であることがより好ましい。
重合開始剤(a1)の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、1.2〜3.5の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.2〜2.5の範囲であり、さらに好ましくは1.2〜2.0の範囲である。前記分子量分布は、得られる変性共役ジエン系重合体組成物のムーニー粘度が低下し、低ヒステリシスロス性と、ウェットスキッド抵抗性のバランスが更に優れる加硫物を提供できる観点から好ましい。
【0023】
<共役ジエン系共重合体>
本実施形態において、(A)成分の共役ジエン系共重合体は、共役ジエン系化合物の単独重合体であっても、共役ジエン系化合物の共重合体であってもよい。
共役ジエン系重合体を重合するために用いられる共役ジエン化合物としては、重合可能な単量体であればよく、特に限定されず、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を併用してもよい。特に、1,3−ブタジエンが好ましい。
【0024】
共役ジエン系重合体が共重合体である場合、他の単量体は、共役ジエン系化合物と共重合可能であれば特に限定されないが、例えば、芳香族ビニル化合物が好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点からスチレンが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を併用してもよい。
【0025】
共役ジエン系重合体が共重合体である場合、その構造は特に限定されず、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
前記ランダム共重合体としては、以下に限定されないが、例えば、ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体等が挙げられる。共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、特に限定されず、例えば統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、組成がテーパー状に分布しているテーパー(勾配)ランダム共重合体等が挙げられる。共役ジエンの結合様式、すなわち1,4−結合や1,2−結合等の組成は、均一であってもよいし、分布があってもよい。
【0026】
前記ブロック共重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブロックが2個からなる2型ブロック共重合体、3個からなる3型ブロック共重合体、4個からなる4型ブロック共重合体等が挙げられる。
例えばスチレン等の芳香族ビニル化合物からなるブロックをSで表し、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン化合物からなるブロック及び/又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体からなるブロックをBで表すと、S−B2型ブロック共重合体、S−B−S3型ブロック共重合体、S−B−S−B4型ブロック共重合体等で表される。
上式において、各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。例えばブロックBが芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の場合、ブロックB中の芳香族ビニル化合物は均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。
また、ブロックBに、芳香族ビニル化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。
さらには、ブロックBに、芳香族ビニル化合物含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。 共重合体中にブロックS、ブロックBがそれぞれ複数存在する場合、それらの分子量や組成等の構造は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
本実施形態において、(A)成分の共役ジエン系重合体中の結合共役ジエン量は、特に限定されないが、50〜100質量%であることが好ましく、例えば、タイヤのサイドウォール用途に用いる場合、60〜80質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、(A)成分の共役ジエン系重合体中の結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、0〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。
結合共役ジエン量及び結合芳香族ビニル量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスにより優れ、耐摩耗性もより向上した加硫物を得ることができる。
ここで、結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、ここから結合共役ジエン量も求めることができる。
具体的には、後述する実施例に従った方法により測定することができる。
また、共役ジエン系重合体の共役ジエン結合単位中のビニル結合量は、特に限定されないが、10〜75モル%であることが好ましく、25〜65モル%であることがより好ましい。ビニル結合量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスが更に優れ、耐摩耗性もより向上した加硫物を得ることができる。ここで、変性共役ジエン系重合体がブタジエンとスチレンの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)を求めることができる。
「芳香族ビニル単位」とは、単量体であるビニル芳香族化合物を重合した結果生ずる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、置換ビニル基に由来する置換エチレン基の二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
また、「共役ジエン結合単位」とは、単量体である共役ジエンを重合した結果生ずる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、共役ジエン単量体に由来するオレフィンの二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
ミクロ構造(変性共役ジエン系共重合体中の結合共役ジエン量、結合芳香族ビニル量、ビニル結合量)が上記範囲にあり、さらに変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度が−45〜−15℃の範囲にあるときに、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスにより一層優れた加硫物を得ることができる。ガラス転移温度については、ISO22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。
【0028】
本実施形態において、(A)成分の共役ジエン系重合体は、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの数が少ないか又は無いものであることが好ましい。
具体的には、共役ジエン系重合体がブタジエン−スチレン共重合体の場合、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により重合体を分解し、メタノールに不溶なポリスチレン量を分析する公知の方法において、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックが、変性共役ジエン系重合体の総量に対して好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0029】
本実施形態において、共役ジエン系重合体は、特に、(A)成分が変性共役ジエン系共重合体である場合には、変性工程により、高変性率の変性共役ジエン系重合体を得る観点から、リビングアニオン重合による成長反応によって得られる活性末端を有する共重合体であることが好ましい。
【0030】
(共役ジエン系重合体の製造方法)
本実施形態の共役ジエン系重合体は、前記の重合開始剤(a1)を用いるリビングアニオン重合により製造できる。
【0031】
本実施形態の共役ジエン系重合体を製造する際、特に限定されないが、重合に先立ち、前処理を行ってもよい。
例えば、重合反応後に変性反応を実施する場合などには、重合反応に供する前に、重合単量体において、不純物であるアレン類やアセチレン類を有機金属化合物で処理することは、高濃度の活性末端を有する重合体が得られる傾向にあり、更には高い変性率が達成される傾向にあるため好ましい。重合に供する共役ジエン化合物中に、アレン類、アセチレン類等が不純物として含有されている場合、変性共役ジエン系重合体を得るための変性反応を阻害するおそれがある。そのため、これらの不純物の含有量濃度(質量)の合計は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが更に好ましい。
前記アレン類としては、特に限定されないが、例えばプロパジエン、1,2−ブタジエン等が挙げられる。前記アセチレン類としては、特に限定されないが、例えばエチルアセチレン、ビニルアセチレン等が挙げられる。
【0032】
共役ジエン系重合体の重合反応は、特に限定されないが、溶媒中で行うことが好ましい。
前記溶媒としては、例えば飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。以下に限定されるものではないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素等が挙げられる。
【0033】
本実施形態の共役ジエン系重合体の重合反応においては、特に限定されないが、極性化合物を添加してもよい。極性化合物を用いることにより、芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合させることができ、当該極性化合物は、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる。また、重合速度の改善等にも効果がある。
極性化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミラート、カリウム−t−ブチラート、ナトリウム−t−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等を用いることができる。
これらの極性化合物は、それぞれ単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記極性化合物の使用量は、特に限定されず、目的等に応じて選択することができる。
通常、上述した重合開始剤1モルに対して0.01〜100モルであることが好ましい。このような極性化合物(ビニル化剤)は、重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望のビニル結合量に応じて、適量用いることができる。多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整や、スチレンブロック量の調整剤として用いることができる。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム化する方法としては、例えば特開昭59−140211号公報に記載されているように、極性化合物を用いた上で、さらに共重合の途中に1,3−ブタジエンの一部を断続的に添加する方法を用いてもよい。
【0034】
共役ジエン系重合体の重合工程における重合温度は、特に限定されないが、生産性の観点から、0℃以上であることが好ましく、重合終了後の活性末端に対する変性剤の反応量を充分に確保する観点から、120℃以下であることが好ましい。
【0035】
本実施形態の共役ジエン系重合体を製造する際の重合様式としては、特に限定されず、回分式、連続式等の重合様式で行うことができる。連続式においては、特に限定されないが、1個又は2個以上の連結された反応器を用いることができる。反応器も特に限定されず、攪拌機付きの槽型、管型などを使用できる。
【0036】
本実施形態の共役ジエン系重合体を製造する際、特に限定されないが、重合後、後述する変性共役ジエン系重合体で好適に実施できる「水素化」を適用してもよい。また、加工性等を改善するための、各種ゴム用安定剤を添加してもよい。
【0037】
<変性共役ジエン系重合体(A’)>
本実施形態においては、(A)成分として、前記共役ジエン系重合体に代えて、あるいは前記共役ジエン系重合体に加えて、前記共役ジエン系重合体を変性剤(a2)により変性されてなる変性共役ジエン系共重合体(A´)を含有してもよく、ウェットスキッド抵抗特性、転がり抵抗特性、磨耗特性の観点から、変性共役ジエン系共重合体(A´)を含有することが好ましい。ここで、変性する箇所は、特に限定されず、共役ジエン系重合体の末端でも、主鎖でもよいが、ウェットスキッド抵抗特性、転がり抵抗特性、磨耗特性の観点から、末端を変性することが好ましい。
【0038】
(変性剤(a2))
前記の場合、変性剤(a2)は、特に限定されないが、ウェットスキッド抵抗特性、転がり抵抗特性、磨耗特性の観点から、シリル基に結合したアルコキシ基を1個以上及び3級アミノ基を2個以上含有する化合物(a2−1)、又は、シリル基に結合したアルコキシ基を4個以上及び窒素原子を1個以上含有する化合物(a2−2)が好ましい。
【0039】
前記シリル基に結合したアルコキシ基を1個以上及び3級アミノ基を2個以上含有する化合物(a2−1)としては、特に限定されないが、具体的には、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(ジメトキシメチルシラニル)−エチル]−N−エチル−N’,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル] −N,N’,N’−トリメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル] −N−エチル−N’,N’−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−N,N’,N’−トリエチル−2−メチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル]−2,N,N’,N’−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−(2−ジメチルアミノエチル)−N’−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(ジエトキシプロピルシラニル)−エチル]−N’−(3−エトキシプロピル)−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N’−メトキシメチル−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’−ジメチル−N’−(2−トリメチルシラニルエチル)−エタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリエトキシシラニル)−エチル]−N,N’−ジエチル−N’−(2−ジブチルメトキシシラニルエチル)−エタン−1,2−ジアミン等が、1−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシラニル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(ジエトキシエチルシラニル)−プロピル]−3−エチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシラニル)−プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル]−1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル]−イミダゾリジン、(2−{3−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル]−テトラヒドロピリミジン−1−イル}−エチル)ジメチルアミン等が、2−(トリメトキシシラニル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(ジエトキシエチルシラニル)−1,3−ジエチルイミダゾリジン、2−(トリエトキシシラニル)−1,4−ジエチルピペラジン、2−(ジメトキシメチルシラニル)−1,4−ジメチルピペラジン、5−(トリエトキシシラニル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(ジエトキシエチルシラニル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、{2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(エチルジメトキシシラニル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル}−ジメチルアミン、5−(トリメトキシシラニル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、5−(エチルジメトキシシラニル)−1,3−ビス−トリメチルシラニルヘキサヒドロピリミジン等が挙げられ、好ましい化合物としては、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、1−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、2−(トリメトキシシラニル)−1,3−ジメチルイミダゾリジンが挙げられる。
【0040】
前記「シリル基に結合したアルコキシ基を1個以上及び3級アミノ基を2個以上含有する化合物」(a2−1)としては、ウェットスキッド抵抗特性、転がり抵抗特性、磨耗特性の観点から、例えば、下記式(1)が好ましい。
【化13】
(前記式(1)中、R
1〜R
3は、各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基を表す。R
4とR
5は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数1〜6の炭化水素基であって、隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなす。R
6は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、3つの炭化水素基で置換されたシリル基からなる群から選ばれる基のいずれかを表す。m
1は、2又は3の整数である。)
前記炭化水素基は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい。
前記(1)で表される化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N−[2−(トリアルコキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリアルキルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(アルキルジアルコキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリアルキルエタン−1,2−ジアミン、N−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−N,N’,N’−トリアルキルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−N,N’,N’−トリアルキルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−2,N,N’,N’−テトラアルキルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−2,N,N’,N’−テトラアルキルプロパン−1,3−ジアミン、1−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−4−アルキルピペラジン、1−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−4−アルキルピペラジン、1−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−3−アルキルイミダゾリジン、1−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−3−アルキルイミダゾリジン、1−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−3−アルキルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−3−アルキルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−1−アルキル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−1−アルキル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、2−(トリアルコキシシラニル)−1,3−ジアルキルイミダゾリジン、2−(アルキルジアルコキシシラニル)−1,3−ジアルキルイミダゾリジン、2−(トリアルコキシシラニル)−1,4−ジアルキルピペラジン、2−(アルキルジアルコキシシラニル)−1,4−ジアルキルピペラジン、5−(トリアルコキシシラニル)−1,3−ジアルキルヘキサヒドロピリミジン、5−(アルキルジアルコキシシラニル)−1,3−ジアルキルヘキサヒドロピリミジン等が挙げられ、好ましい化合物としては、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、1−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、2−(トリメトキシシラニル)−1,3−ジメチルイミダゾリジンが挙げられる。
【0041】
前記「シリル基に結合したアルコキシ基を4個以上及び窒素原子を1個以上含有する化合物」(a2−2)としては、特に限定されないが、例えば、下記式(2)又は(3)で合わされる化合物が挙げられる。
【0042】
【化14】
(式(2)中、R
11〜R
14、R
16は、各々独立して、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R
15は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、m
2は1又は2の整数であり、n
1は2又は3の整数である。)
前記炭化水素基は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい。
【0043】
【化15】
(式(3)中、X
1及びX
2は、各々独立して、炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、R
21及びR
22は、各々独立して、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、A
1及びA
2は、各々独立して、単結合又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、A
3は下記式(a)又は(b)で表される基を表す。複数の、X
1、X
2、R
21、R
22、A
1、A
2又はA
3が存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。r及びsは、各々独立して0〜3の整数である。tは0〜20の整数であり、tが2以上の場合、(A
1−A
3−A
2)で表される複数の繰り返し単位は、各々同一であっても異なっていてもよい。)
前記炭化水素基は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい。
【化16】
(式(a)中、R
23は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。なお、A
3が式(a)で表される場合、(r+s)は5又は6の整数である。)
炭化水素基は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい。
【化17】
(式(b)中、A
8は単結合又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、X
3は炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。R
24は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。複数のX
3又はR
24が存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。uは0〜3の整数である。なお、A
3が式(b)で表される場合、[r+(t×u)+s]は5以上の整数である。)
炭化水素基は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい。
【0044】
前記一般式(2)で表される化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジメトキシ−1−(5−トリメトキシシリルペンチル)−1−アザ−2−シラシクロヘプタン、2,2−ジメトキシ−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ,2−メチル−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ,2−エチル−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ,2−メチル−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ,2−エチル−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン等が挙げられる。
これらの中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点や、加工性の観点から、m
2が2、n
1が3であるものがより好ましい。
具体的には、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンがより好ましい。
【0045】
前記一般式(3)で表される化合物としては、A
3が一般式(a)の場合、以下に限定されるものではないが、例えば、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(トリメトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)プロピルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)プロピルアミン等が挙げられる。
【0046】
前記一般式(3)で表される化合物としては、A
3が一般式(b)の場合、以下に限定されるものではないが、例えば、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2−トリエトキシシリルエチル)アミン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン等が挙げられる。
これらの中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点や、加工性の観点から、r、s、及びuが3であるものがより好ましい。
具体的には、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(トリメトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)プロピルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)プロピルアミン、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2−トリエトキシシリルエチル)アミン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミンがより好ましい。
【0047】
本実施形態において、変性共役ジエン系重合体(A´)の官能基成分を有する重合体の含有量、すなわち変性率は、特に限定されないが、変性共役ジエン系重合体組成物を加硫物とした場合において、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスが更に良好なものとなり、実用上十分な耐摩耗性、引張特性を得る観点から、60質量%以上であることが好ましく、80質量%であることがより好ましく、90質量%であることが更に好ましい。
前記変性率は、官能基含有の変性部分と非変性部分を分離できるクロマトグラフィーによる測定方法にて求める。
このクロマトグラフィーによる測定方法は、官能基成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたゲルパーミエーショングロマトグラフィー(GPC)カラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法である。
【0048】
前記変性反応を経て得られる変性共役ジエン系重合体(A´)のGPCを使用して測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、特に限定されないが、変性共役ジエン系重合体組成物中に無機充填剤を十分に分散させ、引張特性、及び耐摩耗性の向上を一層効果的にする観点から、30万以上が好ましく、一方、加工性を実用的に十分なものとする観点から200万以下であるものとし、好ましくは、35万以上100万以下である。
また、回分式プロセスで共役ジエン系重合体の重合を行った場合には、GPCの分子量分布で複数のピークがみられる。その最も低分子側のピークは主に、重合開始剤(a1)中に混在している単官能成分により重合が開始して生成した成分であると考えられる。また、重合開始剤(a1)中の多官能成分に起因して生成する高分子側の量が多いほど低ヒステリシスロス性、耐摩耗性等の物性に優れる反面、加工性が悪化する。加工性を考慮して、最も低分子側のピーク面積が10〜70%であることが好ましい。
重合開始剤(a1)を調製する際のポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とのモル比と、変性剤の添加量とを、前述した範囲内で調整することで、上述のように最も低分子量側のピーク面積を10〜70%とすることが容易になる。
【0049】
(変性反応)
前記変性剤(a2)を用いて、共役ジエン系重合体を変性し、変性共役ジエン系重合体を得る変性反応について説明する。
尚、変性反応において、上述した変性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記変性剤(a2)と共役ジエン系重合体と反応させる際の、反応温度、反応時間などについては、特に限定されないが、0℃以上、120℃以下で30秒以上反応させることが好ましい。
【0051】
前記反応において、変性剤(a2)の添加量は、特に限定されないが、変性剤(a2)中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、上述した重合開始剤(a1)に含まれるリチウムの合計モル数の0.1〜3倍となる範囲となるように添加することが好ましく、0.2〜2倍となる範囲になるように添加することがより好ましく、0.2〜1倍となる範囲になるように添加することがさらに好ましい。
前記範囲とすることにより、加工性が良好となる。理由は定かではないが、重合開始剤(a1)を用いて重合して得られた共役ジエン系重合体1分子あたりの活性リチウム末端の数は、平均して1個を超えるため、4個以上のアルコキシ基と反応することで非常に高い分子量成分が生成すると考えられるが、変性剤(a2)を、変性剤(a2)中のアルコキシ基の合計モル数が、上述した重合開始剤(a1)に含まれる合計モル数の3倍以下とすることによって、前記高分子量成分を適正範囲に制御できることが理由の一つと考えられる。また、所定の変性率を得て、かつ、変性共役ジエン系分子末端部にアルコキシ基を残存させる観点から、変性剤(a2)は、変性剤(a2)中の「シリル基に結合したアルコキシ基」の合計モル数が、上述した重合開始剤(a1)に含まれるリチウムの合計モル数の0.1倍以上とすることが好ましい。
【0052】
本実施形態においては、主鎖変性共役ジエン系重合体及び末端変性共役ジエン系重合体のいずれにおいても、変性反応を行った後、共重合体溶液に、必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。
失活剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。中和剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸等のカルボン酸;無機酸の水溶液、炭酸ガス等が挙げられる。
【0053】
本実施形態においては、特に限定されないが、重合後の仕上げ工程におけるゲル生成を防止する観点や、加工時の安定性を向上させる観点から、主鎖変性共役ジエン系重合体及び末端変性共役ジエン系重合体のいずれにおいても、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。
前記ゴム用安定剤は、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピネート、2−メチル−4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等が好ましい。
また、変性共役ジエン系重合体の加工性を更に改善するために、主鎖変性共役ジエン系重合体及び末端変性共役ジエン系重合体のいずれにおいても、必要に応じて伸展油を変性共役ジエン系共重合体に添加することができる。
伸展油を変性共役ジエン系重合体に添加する方法としては、特に限定されないが、伸展油を重合体溶液に加え、混合して、油展共重合体溶液としたものを脱溶媒する方法が好ましい。伸展油としては、例えばアロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点や、オイルブリード防止及びウェットグリップ特性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。アロマ代替油としては、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)等が挙げられる。
伸展油の添加量は、特に限定されないが、通常は、変性共役ジエン系重合体100質量部に対し10〜60質量部であり、20〜37.5質量部が好ましい。
【0054】
変性共役ジエン系重合体を、重合体溶液から取得する方法としては、主鎖変性共役ジエン系重合体及び末端変性共役ジエン系重合体のいずれにおいても、公知の方法を用いることができる。例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押し出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等が挙げられる。
【0055】
(水素化)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体(A´)は、その二重結合の全部又は一部を飽和炭化水素に変換した水素化共役ジエン系重合体であってもよい。
変性共役ジエン系重合体が、前記変性後に共役ジエン系重合体の二重結合の全部又は一部を飽和炭化水素に変換した水素化共役ジエン系重合体であると、耐熱性、耐候性が向上し、高温で加工する場合の製品の劣化を防止することができる。その結果、自動車用途等種々の用途で一層優れた性能を発揮する。
共役ジエン系化合物に基づく不飽和二重結合の水素化率(すなわち「水添率」)は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。加硫ゴムとして用いる場合には、上述した性能バランスを良好にする観点から、共役ジエン部の二重結合が部分的に残存していることが好ましい。かかる観点から、重合体中の共役ジエン部の水添率は3〜70%であることが好ましく、5〜65%であることがより好ましく、10〜60%であることが更に好ましい。
なお、変性共役ジエン系重合体が共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体中である場合、芳香族ビニル化合物に基づく芳香族二重結合の水添率については、特に限定されないが、上述した性能バランスを良好にする観点から、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であるであることが更に好ましい。
前記水素化率は、核磁気共鳴装置(NMR)により求める。
本実施形態において用いる変性共役ジエン系重合体の二重結合の全部又は一部を水素化する方法及び芳香族基を水素化する方法としては、特に限定されず、公知の方法が利用できる。
特に好適な水素化方法としては、触媒の存在下、重合体溶液に気体状水素を吹き込む方法で水素化する方法が挙げられる。
触媒としては、貴金属を多孔質無機物質に担持させた触媒等の不均一系触媒;ニッケル、コバルト等の塩を可溶化し有機アルミニウム等と反応させた触媒、チタノセン等のメタロセンを用いた触媒等の均一系触媒等が挙げられる。
また、芳香族基の水素化は、貴金属の担持触媒を用いることによって行うことができる。
共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合を水素化する触媒の具体例としては、以下に限定されるものではないが、(a)Ni,Pt,Pd,Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(b)Ni,Co,Fe,Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(c)Ti,Ru,Rh,Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等が挙げられる。
また、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報、特開平8−109219号公報に記載された水素化触媒も使用できる。
好ましい水素化触媒としては、特にマイルドな水素化条件を選択できる観点から、チタノセン触媒が好ましく、具体的には、チタノセン化合物と還元性有機金属化合物との反応混合物が挙げられる。
【0056】
[成分(A1)]
本実施形態の第2の態様において、成分(A1)は、重量平均分子量が30万以上200万以下であり、炭素原子を基点とする重合体鎖の3分岐点を1分子中に0.1〜4個有する共役ジエン系重合体である。
前記共役ジエン系重合体は、特に限定されず、(A)成分と同様、共役ジエン系化合物の単独重合体であっても、共役ジエン系化合物の共重合体であってもよい。また、例えば、(A)成分で列記したものが適用できる。
【0057】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、成分(A2)の重量平均分子量が30万以上であることにより、優れた引張特性、及び耐摩耗性を発揮できる。成分(A2)の重量平均分子量は、好ましくは、35万以上である。一方、成分(A2)の重量平均分子量が200万以下であることにより、加工性が良好となる。成分(A2)の重量平均分子量は、好ましくは、100万以下である。
前記重量平均分子量は、GPCを使用して測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。具体的な製造方法は、後述する実施例に記載のとおりである。
【0058】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、成分(A1)が、炭素原子を基点とする重合体鎖の3分岐点を1分子中に0.1〜4個有することにより、ゴムの加工性を損なわずに高分子量化を実現するという効果を奏する。前記3分岐点とは、3つの重合体鎖が結合している炭素原子をいい、原料の配合量から算出できる。具体的には、以下のとおり、平均値として算出される。
(ポリビニル芳香族化合物のビニル基数×ポリビニル芳香族化合物のモル数)÷{(アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物のモル数×(1−失活率)}
失活率=1−理論分子量/実際の分子量
理論分子量=仕込みのモノマーモル量/仕込みの触媒モル
前記重合体鎖とは、共役ジエン単位が180個以上連鎖しているものをいう。成分(A1)が共重合体である場合は、前記重合体鎖とは、芳香族ビニル単位等、共役ジエン単位以外の他の繰り返し単位が180個以上連鎖するものを包含する。
【0059】
本実施形態において、成分(A1)は、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及びや耐摩耗性の向上の観点から、下記式(6)又は式(7)で表される官能基を有する変性共役ジエン系重合体が好ましい。
下記構造を備えることは、例えば、使用する変性剤と変性率によって確認できる。
【0060】
【化18】
(式(6)中、R
201、R
202は、各々独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、共役ジエン系ポリマー残基のいずれかの基を表し、R
201、R
202のうち少なくとも1つは、炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、R
205は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R
206は、炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、3つの炭化水素基で置換されたシリル基からなる群から選ばれる基のいずれかを表すR
203及びR
204は、各々独立して、炭素数1〜6の炭化水素基を表し、かつ隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造を形成する。)
前記炭化水素基は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい。
特に限定されないが、前記R
201、R
202は、好ましくは、炭素数1〜20のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基である。R
205は、好ましくは、炭素数1〜20の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基である。R
203及びR
204は、好ましくは、各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基を表し、かつ隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造を形成し、より好ましくは各々独立して、炭素数1〜3の炭化水素基を表し、かつ隣接する2つのNとともに6員環以上の環構造を形成する。
R
201〜R
206の組み合わせは、特に限定されないが、好ましくはR
201、R
202は、炭素数1〜10のアルコキシ基であり、R
205は、炭素数1〜20の炭化水素基であり、R
203及びR
204は、好ましくは、各々独立して、炭素数1〜3の炭化水素基を表し、かつ隣接する2つのNとともに6員環以上の環構造を形成する。
【0061】
【化19】
(式(7)中、R
301〜R
305は、各々独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、共役ジエン系ポリマー残基のいずれかの基を表し、R
301〜R
305のうち少なくとも1つは、炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、A
4及びA
5は、各々独立して、単結合又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、A
6は下記式(c)又は(d)で表される基を表す。tは0〜20の整数であり、tが2以上の場合、(A
4−A
6−A
5)で表される複数の繰り返し単位は、各々同一であっても異なっていてもよい。)
前記炭化水素基は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい。
【化20】
(式(c)中、R
306は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
前記炭化水素基は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい。
【化21】
(式(d)中、A
7は単結合又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、X
4は炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。R
307は炭素数1〜20の単価水素基を表す。複数のX
4又はR
307が存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。uは0〜3の整数である。)
前記炭化水素基は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい。
特に限定されないが、前記R
301〜R
305は、好ましくは、各々独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、共役ジエン系ポリマー残基のいずれかの基であり、より好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基である。A
4及びA
5は、好ましくは、各々独立して、単結合又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、であり、より好ましくは各々独立して、単結合又は炭素数1〜10の炭化水素基である。R
306は、好ましくは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基である。R
307は、好ましくは、炭素数1〜20の単価水素基であり、より好ましくは炭素数1〜10の単価水素基である。uは、好ましくは、0〜3の整数であり、より好ましくは0〜2の整数である。
R
301〜R
305の組み合わせは、特に限定されないが、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基である。
【0062】
本実施形態において、成分(A1)のガラス転移温度は、特に限定されないが、優れた転がり抵抗特性とウェットスキッド抵抗性のバランスを得る観点から、−45℃〜−15℃が好ましい。ここで、ガラス転移温度については、ISO 22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
【0063】
<(A1)の製造方法>
本実施形態において、成分(A1)の共役ジエン系重合体の製造方法は、特に限定されないが、リビングアニオン重合反応により得ることが好ましく、前記の重合開始剤(a1)を用いたアニオン重合反応を行うことにより得ることがより好ましい。特に、成分(A1)が変性共役ジエン系共重合体である場合には、変性工程により、高変性率の変性共役ジエン系重合体を得る観点から、リビングアニオン重合による成長反応によって得られる活性末端を有する共重合体であることがより好ましい。
成分(A1)の共役ジエン系重合体の製造方法は、特に限定されないが、(A)成分の製造方法が好適に適用でき、成分(A1)が変性共役ジエン系共重合体である場合には、変性反応として、成分(A´)の変性反応が好適に適用できる。
【0064】
[成分(B)]
次に、本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物における変性共役ジエン系重合体(B)について説明する。
本実施形態において、成分(B)は、共役ジエン系重合体(b1)と、アミノ化合物(b2)とを反応させることによって得られる。
【0065】
<共役ジエン系重合体(b1)>
本実施形態において、共役ジエン系重合体(b1)は、ランタン系列金属化合物を開始剤とする、共役ジエン系化合物の重合により、製造される。ランタン系列金属化合物を開始剤として用いることにより、1,4−構造の割合が高い共役ジエン系重合体(b1)を得ることができる。
【0066】
(ランタン系列金属化合物)
本実施形態において、ランタン系列金属化合物は、共役ジエン系化合物の重合反応を開始させることができるものであればよく、特に限定されないが、ランタン系列元素の有機化合物(成分(i))、有機アルミニウム化合物(成分(ii))、及びハロゲン含有ルイス酸化合物(成分(iii))を含有する複合触媒であることが好ましい。
【0067】
成分(i)としては、特に限定されないが、例えば、式LnY
3(式中、Lnは、ランタン系列元素を表し、Yは酸の残基を表す。)で表される化合物が挙げられる。前記ランタン系列元素の有機化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0068】
成分(i)において、ランタン系列元素(Ln)は、原子番号が57〜71で、周期律表でランタン系列元素と称されているものであり、具体的には、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロジウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムが挙げられる。これらの中でも、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム及びガドリニウムが、重合活性の観点から好ましく、ネオジムが、重合活性及び工業的入手のし易さのバランスの観点からより好ましい。
【0069】
成分(i)において、酸の残基(Y)の酸は、特に限定されないが、例えば、アルコール、フェノール、チオアルコール、チオフェノール、アミン、カルボン酸、有機リン酸、有機亜リン酸のいずれかの塩が、有機溶剤への溶解性の観点から好ましい。
【0070】
ランタン系列元素のアルコール化合物(アルコキサイド)及びフェノール化合物(フェノキサイド)としては、特に限定されないが、例えば、式Ln−(OR
a)
3で表される化合物が挙げられる。ここで、R
aは、炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは炭素数1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキル置換若しくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキル置換若しくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐状、或いは環状であってもよい。アルコキサイド及びフェノキサイドに用いられる好ましいアルコール及びフェノールの具体例としては、2−エチル−ヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ノニルフェノール、ベンジンアルコール等が挙げられる。
【0071】
ランタン系列元素のチオアルコール化合物(チオアルコキサイド)及びチオフェノール化合物(チオフェノキサイド)としては、特に限定されないが、例えば、式Ln(SR
b)
3で表される化合物が挙げられる。ここで、R
bは、炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは炭素数1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキル置換もしくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキル置換若しくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐状、或いは環状であってもよい。
【0072】
ランタン系列元素のアミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、式Ln(NR
c2)
3で表される化合物が挙げられる。ここで、R
cは、炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは炭素数1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキル置換若しくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキル置換若しくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐状、或いは環状であってもよい。
【0073】
ランタン系列元素のカルボン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、式Ln(OCOR
d)
3で表される化合物が挙げられる。ここで、R
dは、炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキル置換若しくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキル置換若しくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐状、或いは環状であってもよい。カルボキシル基は、炭化水素に対して、第1級、第2級及び第3級のいずれの結合であってもよい。好ましいカルボン酸の具体例としてはオクタン酸、2−エチル−ヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸(2−(1,3,3−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチルオクタン酸)、安息香酸、ナフテン酸、炭素数10を中心とするバーサチック酸(市販品としては、例えば、シェル化学社製、商品名「バーサチック酸10」)が挙げられる。溶解性の観点からα位に分岐のあるカルボン酸が好ましく、具体例としては、2−エチル−ヘキサン酸、イソステアリン酸、2−イソプロピル−5−メチルヘキサン酸、バーサチック酸が挙げられる。
【0074】
ランタン系列元素の有機リン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、式Ln(OPOR
eR
f)
3で表される化合物が挙げられる。ここで、R
e、R
fは、各々独立して炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは1〜40の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキル置換若しくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキル置換若しくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基又はアルケニル基は直鎖状、分岐状、或いは環状であってもよい。重合活性の観点から、好ましい有機リン酸化合物の具体例として、トリス(リン酸ジ−2−エチルヘキシル)、トリス(リン酸ジノニルフェニル)が挙げられる。
【0075】
ランタン系列元素の有機亜リン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、式Ln(OPR
gR
h)
3で表される化合物が挙げられる。ここで、R
g、R
hは、各々独立して炭化水素基を表し、取り扱いの容易性の観点から、好ましくは炭素数1〜40のアルキル基、アルケニル基、アルキル置換若しくはアルケニル置換フェニル基、又はアルキルもしくはアルケニル置換ナフチル基である。アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状、分岐状、或いは環状であってもよい。重合活性の観点から、好ましい有機亜リン酸化合物の具体例として、トリス(亜リン酸ジ−2−エチルヘキシル)、トリス(亜リン酸ジノニルフェニル)が挙げられる。
【0076】
本実施形態において、成分(i)としては、上記したランタン系列元素の有機化合物のうち、有機溶剤への溶解性の観点から、カルボン酸化合物及び有機リン酸化合物が好ましく、カルボン酸化合物がより好ましい。前記有機化合物は、上記した化合物の2種以上の複合塩であってもよく、例えば、上記したカルボン酸化合物と有機リン酸化合物との複合塩であってもよい。
【0077】
本実施形態において、成分(ii)としては、特に限定されないが、重合活性の観点から、好ましくは式AlR
i(3-m)H
mで表される化合物である。ここで、R
iは、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜8の、脂肪族炭化水素基若しくは脂環族炭化水素基;又は炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12の、アルキル置換若しくはアルケニル置換芳香族炭化水素基を表す。mは0、1又は2であり、好ましくは0又は1であり、Hは水素原子を表す。また、有機アルミニウム化合物は、アルモキサン化合物(炭素とアルミニウムの直接結合及び酸素とアルミニウムの直接結合を有する化合物)であってもよい。
好ましい有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムジハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、ブチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、オクチルアルモキサン等が挙げられ、より好ましい具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、t−ブチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、オクチルアルモキサンが挙げられる。これらは1種単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0078】
本実施形態において、成分(iii)としては、特に限定されず、周期律表のIIIb族、IVb族又はVb族に属する元素のハロゲン化合物が挙げられ、重合活性の観点から、好ましくはアルミニウムのハロゲン化物及び有機金属ハロゲン化物が挙げられる。
【0079】
アルミニウムのハロゲン化物のハロゲン元素としては、重合活性の観点から塩素又は臭素が好ましい。アルミニウムのハロゲン化物の具体例としては、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、アルミニウムトリブロマイドが挙げられる。
【0080】
有機金属ハロゲン化物の具体例としては、ジブチル錫ジクロライド、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン及び四塩化錫が挙げられる。
これらの中でも、入手の容易さの観点から、アルミニウムのハロゲン化物が好ましく、その中でも、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド及びエチルアルミニウムジブロマイドがより好ましい。
【0081】
本実施形態において、ランタン系列金属化合物が前記複合触媒である場合、複合触媒の各成分量や組成比は、特に限定されず、その目的によって適宜選択することができる。
共役ジエン系化合物1モルに対する成分(i)の使用量は、例えば、0.005〜2.5ミリモルであり、好ましくは0.025〜0.5ミリモルの範囲である。
共役ジエン系化合物1モルに対する成分(ii)の使用量は、例えば、0.05〜25ミリモルであり、好ましくは0.25〜5ミリモルの範囲である。
共役ジエン系化合物1モルに対する成分(iii)の使用量は、例えば、その分子中に含まれるハロゲン原子数で異なるものとなり、ランタン系列元素(Ln)1モルに対するハロゲン原子数で表し、通常、ハロゲン原子/Ln=1〜6、好ましくは2〜4の範囲である。
【0082】
(共役ジエン系化合物)
本実施形態において、共役ジエン系重合体(b1)は、共役ジエン系化合物の重合によって製造される。前記重合は、特に限定されず、1種以上の共役ジエン系化合物の重合又は共重合、1種以上の共役ジエン系化合物と共役ジエン系化合物と共重合可能な他の単量体の1種以上との共重合を包含する。
【0083】
共役ジエン系化合物としては、重合可能な単量体であればよく、特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、1,3−ペンタジエン(ピペリレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等の炭素数4〜8の範囲の共役ジエン化合物あるいはその混合物が挙げられる。これらの中でも、重合活性及び得られるポリマー有用性の観点から、1,3−ブタジエンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
共役ジエン系化合物には、一般にアセチレン類、アレン類、アルデヒド類等の不純物が含まれる場合がある。アセチレン類としては、1−ブチン、ビニルアセチレン等があり、アレン類としては、プロパジエン、1,2−ブタジエン等がある。
本実施形態においては、共役ジエン系重合体(b1)の製造、すなわち共役ジエン系化合物の重合に先立ち、共役ジエン系化合物を精製する工程(精製工程)を行うことが好ましい。精製工程において、限定されないが、化合物中に不純物として含まれるアセチレン類及びアレン類の総量を、50ppm以下とすることがより好ましく、20ppm以下とすることがさらに好ましい。精製方法は、特に限定されず、例えば、水素化、蒸留等の方法を採用することができる。かかる精製工程によって重合体末端の活性率が一層高くなるとともに、変性反応の収率も一層高くなる。
【0085】
本実施形態において、共役ジエン系重合体(b1)は、共役ジエン系化合物と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。この場合、共役ジエン系化合物と他の単量体との配合量比は、特に限定されないが、得られるポリマーの有用性の観点から、共役ジエン系化合物が50〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。
【0086】
共役ジエン系化合物と共重合可能な他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、芳香族ビニル化合物が好ましい。芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
共役ジエン系化合物と共重合可能な他の単量体としては、上記した芳香族ビニル化合物以外に、例えば、イソプロピル(メタ)アクリレート、N−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン、ビニルシクロヘキサン等のオレフィン単量体;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体等が挙げられる。
【0088】
(共役ジエン系重合体(b1))
本実施形態において、共役ジエン系重合体(b1)は、共役ジエン系化合物の重合体であっても、共役ジエン系化合物の共重合体であってもよい。
共役ジエン系重合体(b1)が、共役ジエン系化合物と共重合可能な他の単量体との共重合体である場合、このような共重合体としては、特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン−スチレン−イソプロピル(メタ)アクリレート共重合体、1,3−ブタジエン−スチレン−N−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、1,3−ブタジエン−スチレン−t−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、1,3−ブタジエン−スチレン−エチレン共重合体、1,3−ブタジエン−スチレン−プロピレン共重合体、1,3−ブタジエン−スチレン−イソブチレン共重合体、1,3−ブタジエン−スチレン−ビニルシクロヘキサン共重合体、1,3−ブタジエン−スチレン−1,4−ペンタジエン共重合体、1,3−ブタジエン−スチレン−1,4−ヘキサジエン共重合体等が挙げられる。
【0089】
本実施形態において、変性共役ジエン系重合体(B)中の結合共役ジエン量は、特に限定されないが、50〜100質量%であることが好ましく、例えば、タイヤのサイドウォール用途に用いる場合、70〜100質量%であることがより好ましく、例えば、タイヤのトレッド用途に用いる場合、60〜100質量%であることがより好ましい。
【0090】
(共役ジエン系重合体(b1)の製造方法)
本実施形態において、共役ジエン系重合体(b1)の製造方法、すなわち共役ジエン系化合物の重合方法は、前記ランタン系列金属化合物を開始剤とすることを除き、特に限定はなく、例えば、塊状重合や溶液重合が好ましい。
溶液重合法の場合、重合溶媒としては、特に限定されないが、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン(イソヘキサン)、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ベンゼン、トルエン等の、沸点が200℃以下の直鎖状又は分岐状である、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素が好ましい。重合溶媒は、1種単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。さらには、メチレンクロライドやクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素や、ケトン化合物や、エーテル化合物や、トリアルキルアミン化合物等の非プロトン性の極性有機溶媒を含む混合溶媒を用いることも可能である。重合溶媒を、使用する触媒等に応じて適宜選択することにより、複合触媒等の重合開始剤の、重合溶媒への溶解性や重合活性を一層向上させることができる。
【0091】
本実施形態において、共役ジエン系重合体(b1)を製造する際の重合温度は、特に限定されず、例えば−30〜150℃であり、好ましくは10〜120℃であり、より好ましくは30〜100℃である。重合温度が高くなると、重合速度や重合率が高くなり、得られる重合体のミクロ構造はビニル結合量が増える傾向にある。一方、重合温度が低くなると、重合体末端の活性率が高くなり、後述する変性反応での変性率が高くなる傾向にある。
【0092】
本実施形態において、共役ジエン系重合体(b1)を製造する際の重合反応形式は、特に限定されず、回分法、連続法のいずれでもよい。
重合に先立って、共役ジエン系化合物の共存下あるいは非共存下に、重合開始剤の一部又は全てを予備反応又は熟成反応させてもよい。
前記予備反応や熟成反応は、特に限定されない。予備反応としては、例えば、プレポリマーやオリゴマーを作成してから重合する方法が挙げられる。
熟成反応としては、重合開始剤が、前記複合触媒である場合、例えば、不活性溶媒中で、重合すべき共役ジエン系化合物の共存下又は非共存下に、ランタン系列元素の有機化合物(成分(i))、有機アルミニウム化合物(成分(ii))、及びハロゲン含有ルイス酸化合物(成分(iii))の各成分を混合し、熟成温度で、所定時間(熟成時間)放置する方法が挙げられる。前記の場合、熟成温度は、特に限定されないが、好ましくは−50〜80℃、より好ましくは−10〜50℃であり、熟成時間は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜24時間、より好ましくは0.05〜5時間、特に好ましくは0.1〜1時間である。
【0093】
<アミノ化合物(b2)>
本実施形態において、変性共役ジエン系重合体(B)は、前記共役ジエン系重合体(b1)と、アミノ化合物(b2)とを反応させることによって得られる。
アミノ化合物(b2)は、シリル基に結合したアルコキシ基と、エステル基とをそれぞれ少なくとも1個有し、変性剤として作用する。
従来では、ランタン系列金属化合物を開始剤に用いて得られる共役ジエン系重合体(b1)は、リビング重合体(リビングポリマー)であるが、その活性末端の失活によりリビング率が十分でないことに加え、活性末端の周囲の配位化合物の影響により、変性工程で導入すべき官能基に対する反応性が十分でない。そのため、変性剤の官能基の種類が、変性反応の変性率に影響するという問題があった。しかし意外にも、変性工程において特定構造のアミノ化合物を変性剤として用いることにより、高変性率の変性共役ジエン系重合体を簡便に得ることができることを本発明者らは見出した。
【0094】
本実施形態の組成物は、変性剤として、アミノ化合物(b2)を使用することにより、アルコキシ基を含有することにより、シリカ系無機充填剤と高い親和性を示す。そのため、組成物としたときの無機充填剤の分散性がよく、省燃費性及び耐摩耗性に優れた組成物を提供できる。
【0095】
本実施形態の組成物は、アミノ化合物(b2)が、シリル基に結合したアルコキシ基を含有することにより、シリカ系無機充填剤と高い親和性を示す。そのため、組成物としたときの無機充填剤の分散性がよく、省燃費性及び耐摩耗性に優れた組成物を提供できる。
【0096】
アミノ化合物(b2)は、共役ジエン系重合体(b1)の重合活性末端と非常に反応性が高いエステル基を有する。このため、従来から用いられている変性剤と比べて、本実施形態のアミノ化合物(b2)と共役ジエン系重合体(b1)の活性末端とがより結合しやすいため、シリカ系無機充填剤と親和性の高いシリル基に結合したアルコキシ基を高変性率で導入した(B)変性共役ジエン系重合体Bを得ることができる。
したがって、本実施形態の(B)変性共役ジエン系重合体Bとシリカ系無機充填剤の組成物をタイヤ用の原料ゴム等として用いた場合、フィラーの分散性、省燃費性及び耐磨耗性に優れたものになる。その中でも特に、式(4)で表される変性剤が好ましい。
【0097】
アミノ化合物(b2)は、特に限定されないが、具体的には、1−[2−(メトキシカルボニル)エチル]−4−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1−[2−(エトキシカルボニル)エチル]−4−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1−[2−(メトキシカルボニル)エチル]−3−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1−[2−(エトキシカルボニル)エチル]−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン等が挙げられる。
【0098】
アミノ化合物(b2)は、耐磨耗性、フィラーの分散性等の観点から、式(4)で表される化合物が好ましい。式(4)で表される化合物を変性剤として用いることで、共役ジエン系重合体(b1)の活性末端と効率よく反応することができる。その結果、共役ジエン系重合体(b1)の末端に効率よく官能基の導入を行うことができ、変性率を増加させることができる。
【化22】
式(4)中、R
31〜R
37は、各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基を表す。vは1〜3の整数であり、m
3及びnは1〜3の整数である。
前記炭化水素基は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい。
【0099】
式(4)で表される化合物としては、特に限定されないが、例えば、N−(2−メトキシカルボニル)メチル−N−メチル−3−アミノメチルトリメトキシシラン、N−(2−メトキシカルボニル)メチル−N−メチル−3−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−メトキシカルボニル)メチル−N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−エトキシカルボニル)メチル−N−メチル−3−アミノメチルトリエトキシシラン、N−(2−エトキシカルボニル)メチル−N−メチル−3−アミノエチルトリエキシシラン、N−(2−エトキシカルボニル)メチル−N−メチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−エトキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、N−(2−エトキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリエトキシシランが、スチームストリッピング等による脱溶媒で重合体を回収することでN−トリメチルシリル基が加水分解して2級アミノ基が生成するため、得られる変性共役ジエン系重合体Bがシリカ系無機充填剤やカーボンとの相互作用が更に強くなるので好ましい。
【0100】
<共役ジエン系重合体(b1)とアミノ化合物(b2)との反応>
本実施形態において、前記共役ジエン系重合体(b1)と、前記アミノ化合物(b2)との反応(変性反応)は、特に制限がないが、前記共役ジエン系重合体(b1)を所定の重合率で製造した後、共役ジエン系重合体(b1)とアミノ化合物(b2)とを混合し、反応させることが好ましい。
前記所定の重合率は、所望する変性共役ジエン系重合体の物性に応じて適宜設定することができるが、分子量分布が狭い均一な重合体が得られる観点から、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
また、必要に応じ、重合率30〜90%の間で化合物(b2)を分割して又は連続して添加して反応させることもできる。その場合は分子量分布が広く、変性率は高い重合体が得られる傾向にある。
【0101】
本実施形態において、アミノ化合物(b2)の使用量は、特に限定されないが、共役ジエン系重合体(b1)の活性末端1モルに対して、0.5〜1モルであることが、得られる変性共役ジエン系重合体(B)の分子量増加から、好ましい。もちろん、所望の変性割合に応じて、変性剤の添加量を適宜に調整することができる。
【0102】
本実施形態において、アミノ化合物(b2)は、単独で添加してもよいし、不活性炭化水素等に溶解させた溶液として添加してもよい。またアミノ化合物(b2)の添加方法は特に限定されず、一度に添加してもよいし、分割してあるいは連続的に添加してもよい。変性反応は、特に限定されないが、重合温度に近い温度で、数分間〜数時間行うことが好ましく、5分間〜2時間の反応時間がより好ましい。
【0103】
<変性共役ジエン系重合体>
本実施形態において、(B)成分の変性共役ジエン系重合体は、特に限定されないが、1,4−結合が主体であり、ビニル結合(すなわち1,2−結合及び3,4−結合)は少ない共役ジエン系重合体であることが好ましい。ここで、「1,4−結合が主体」とは、重合体中のビニル結合と1,4−結合量の和に対する1,4−結合量が多いことをいい、好ましくは80%以上であることをいい、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。すなわち、得られる共役ジエン系重合体のミクロ構造は、好ましくは、1,4−結合量は90%以上、ビニル結合量は10%以下である。ミクロ構造は開始剤の組成、重合温度等の条件で変化する。特に、ネオジムを含む開始剤を用いる場合、1,4−結合の内、シス結合の割合が多くなる傾向があるので、ネオジムを含む開始剤を用いる場合、得られる共役ジエン系重合体の1,4−結合量は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、更に好ましくは98%以上である。本実施形態において、ここで、ミクロ構造は赤外分光光度計を用いて測定される。
本実施形態において、(B)成分の変性共役ジエン系重合体Bは、ビニル結合量と1,4−結合量の和に対するシス結合量が90%以上であることが好ましく、上限は特にないが99%以下であることが好ましい。
【0104】
本実施形態において、変性共役ジエン系重合体は、高い変性率を有することが好ましい。ここで、変性率は、共役ジエン系重合体(b1)の活性末端に化合物(b2)を反応させた際に得られる反応性生物において、化合物(b2)に由来する成分を有する重合体の含有率をいい、シリカ系ゲルを充填剤としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)カラムに変性重合体が吸着する特性を利用して、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたGPCとの比較で測定される。
本実施形態において、成分(B)の変性共役ジエン系重合体の変性率は、特に限定されず、所望する物性に応じて適宜調整することができるが、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上とすることができる。
【0105】
(水素化)
本実施形態において、(B)成分の変性共役ジエン系重合体を、不活性溶剤中で更に水素化することによって、二重結合の全部又は一部を飽和炭化水素に変換することができる。その場合、耐熱性、耐候性が一層向上し、高温で加工する場合の製品の劣化を防止することができるので、好ましい。その結果、自動車用途等種々の用途で一層優れた性能を発揮する。
前記の場合、水添率は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。例えば、本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物を加硫ゴムとして用いる場合には、加硫性の観点から、変性共役ジエン系重合体の共役ジエン部の二重結合が部分的に残存していることが好ましい。この場合、重合体中の共役ジエン部の水添率は3〜70%であることが好ましく、5〜65%であることがより好ましく、10〜60%であることが更に好ましい。水素化率は、核磁気共鳴装置(NMR)により求めることができる。
水素化の方法としては、特に限定されず、公知の方法が利用できる。特に好適な水素化の方法としては、触媒の存在下、重合体溶液に気体状水素を吹き込む方法で水素化する方法が挙げられる。触媒としては、貴金属を多孔質無機物質に担持させた触媒等の不均一系触媒;ニッケル、コバルト等の塩を可溶化し有機アルミニウム等と反応させた触媒、チタノセン等のメタロセンを用いた触媒等の均一系触媒等が挙げられる。これらの中でも、特にマイルドな水素化条件を選択できる観点から、チタノセン触媒が好ましい。また、芳香族基の水素化は、貴金属の担持触媒を用いることによって行うことができる。
共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合を水素化する触媒の具体例としては、(a)Ni,Pt,Pd,Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(b)Ni,Co,Fe,Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(c)Ti,Ru,Rh,Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等が挙げられる。例えば、水素化触媒として特公昭42−008704号公報、特公昭43−006636号公報、特公昭63−004841号公報、特公平01−037970号公報、特公平01−053851号公報、特公平02−009041号公報、特開平08−109219号公報に記載された水素化触媒を使用することができる。上記の中でも好ましい水素化触媒としては、チタノセン化合物と還元性有機金属化合物との反応混合物が挙げられる。
【0106】
本実施形態において、成分(B)の変性共役ジエン系重合体は、脱溶媒工程前に、必要に応じてプロセスオイルを加え、油展重合体としてもよい。プロセスオイルとしては、特に限定されないが、相容性の観点から、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油、IP346法による多環芳香族成分が3質量%以下であるアロマ代替油等が好ましい。これらの中でも、多環芳香族成分が3質量%以下であるアロマ代替油を用いることが、環境安全上の観点とオイルブリード防止、さらにウェットグリップ特性の観点から好ましい。アロマ代替油としては、例えば、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTreated Distilled Aromatic Extract(TDAE)、Mildly or Medium Extracted Solvate(MES)等の他、Residual Aromatic Extract(RAE)、Safety or Special Residual Aromatic Extract(SRAE)等が挙げられる。これらの伸展油の使用量は、特に限定されず、通常は、変性共役ジエン系重合体100質量部に対し、10〜60質量部であり、製品のオイルブリード防止や加工性の観点から、20〜37.5質量部であることが好ましい。
【0107】
本実施形態において、(B)成分の変性共役ジエン系重合体は、必要により重合停止剤、安定剤を反応系に加え、共役ジエン系重合体の製造で用いられる公知の脱溶媒、乾燥操作、例えば、スチームストリッピングによる脱溶媒、スクリュー押出機式絞り脱水機等の圧縮水絞機、エキスパンダー脱水機、熱風乾燥機等の方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等により重合体を回収できる。重合停止剤は、水もしくはプロトン性の極性有機化合物等から選ぶことができる。後者の例としては、各種のアルコール、フェノール、カルボン酸化合物を挙げることができる。また安定剤は公知の共役ジエン系重合体の安定剤,酸化防止剤から選ぶことができる。これらの特に好ましい例としては2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール、N,N’−ジアルキルジフェニルアミン、N−アルキルジフェニルアミン等が挙げられる。得られる重合体は通常、ベールに成形される。
【0108】
[成分(B1)]
本実施形態の第2において、成分(B1)は、下記式(5)で表される官能基を有し、シス結合量が90%以上である共役ジエン系重合体である。
【化23】
(式(5)中、R
101〜R
107は、各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基を表す。yは1〜3の整数である。)
【0109】
成分(B1)は、シス結合量が90%以上であることにより、優れた機械強度と耐摩耗性を得るという効果を奏する。シス結合量は、赤外分光光度計を用いて測定される。詳細な方法は、実施例で示す。
前記のとおり、シス結合量は、開始剤の組成、重合温度等の条件で調整できる。特に、ネオジムを含む開始剤を用いる場合、1,4−結合の内、シス結合の割合が多くなる傾向があるため、ネオジムを含む開始剤を用いる場合、得られる共役ジエン系重合体の1,4−結合量は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、更に好ましくは98%以上である。本実施形態において、シス結合量は90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上であり、上限は特にないが99.9%以下であることが好ましい。
【0110】
本実施形態において、成分(B1)の変性共役ジエン系重合体は、下記式(5)で表される官能基を有する。これによって、シリカ系無機充填剤と高い親和性を示す。そのため、組成物としたときの無機充填剤の分散性がよく、省燃費性及び耐摩耗性に優れた組成物を提供できるという効果を奏する。
【0111】
下記構造を備えることは、例えば、使用する変性剤と変性率によって確認できる。
【化24】
(式(5)中、R
101〜R
107は、各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基を表す。yは1〜3の整数である。)
炭化水素基は、Si、O、またはNを含んでもよいし、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい。
特に限定されないが、前記R
101〜R
107は、好ましくは、各々独立して炭素数1〜20の炭化水素基であり、より好ましくは各々独立して炭素数1〜10の炭化水素基である。yは、好ましくは、1〜3の整数であり、より好ましくは1〜2である。
R
101〜R
107の組み合わせは、特に限定されないが、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基である。
【0112】
本実施形態において、成分(B1)のガラス転移温度は、特に限定されないが、優れた機械強度と耐摩耗性を得る観点から、−90℃〜−120℃が好ましい。ここで、ガラス転移温度については、ISO 22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
【0113】
<(B1)の製造方法>
本実施形態において、成分(B1)の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、特に限定されないが、前記(B)成分の製造方法が好適に適用できる。
【0114】
[変性共役ジエン系重合体組成物]
<ゴム成分>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物のゴム成分は、前記(A)成分(好適には前記成分(A´))及び前記(B)成分、又は前記成分(A1)及び前記(B1)を含有する。
前記二つの成分を用いることにより、二つの成分の相溶性が向上するため、耐摩耗性、及び破壊特性を損なうことなく、従来にも増して転がり抵抗特性、及びウェットスキッド抵抗性のバランスが向上する。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物のゴム成分において、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部における、上記(A)成分及び上記(B)成分の各含有量は、特に限定されないが、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、耐摩耗性、及び加工性の観点から、好ましくは(A)成分を20〜95質量部及び(B)成分を80〜5質量部であり、より好ましくは(A)成分40〜85質量部及び(B)成分60〜15質量部であり、更に好ましくは(A)成分60〜70質量部及び(B)成分30〜40質量部である。
【0115】
(他のゴム状重合体)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物のゴム成分は、本実施形態の特性を満たす範囲で、前記(A)成分及び前記(B)成分以外に、他のゴム状重合体を更に含んでいてもよい。
このような他のゴム状重合体としては、特に限定されず、例えば、共役ジエン系重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体又はその水素添加物、その他の共役ジエン系重合体又はその水素添加物、非ジエン系重合体等が挙げられる。
共役ジエン系重合体又はその水素添加物の具体例としては、ブタジエンゴム又はその水素添加物等が挙げられる。共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体又はその水素添加物の具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム又はその水素添加物等が挙げられる。共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体又はその水素添加物の具体例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物等のスチレン系エラストマーが挙げられる。その他の共役ジエン系重合体又はその水素添加物の具体例としては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水素添加物等が挙げられる。
また、非ジエン系重合体の具体例としては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー;ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
上述した各種ゴム状重合体は、水酸基やアミノ基等の極性を有する官能基を付与した変性ゴムであってもよい。またその重量平均分子量は、性能と加工特性のバランスの観点から、2,000〜2,000,000であることが好ましく、5,000〜1,500,000であることがより好ましい。また、低分子量のいわゆる液状ゴムを用いることもできる。これらのゴム状重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
<シリカ系無機充填剤>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、特に限定されないが、前記ゴム成分100質量部に対し、更に1〜300質量部の(C)シリカ系無機充填剤を含有するものが好ましい。
シリカ系無機充填剤の含有量は、変性共役ジエン系重合体組成物において無機充填剤の添加効果が十分に発現する観点から、1質量部以上が好ましく、一方、変性共役ジエン系重合体組成物中においてシリカ系無機充填剤を十分に分散させ、組成物の加工性や機械強度を実用的に十分なものとする観点から、300質量部以下が好ましい。ゴム成分100質量部に対する(C)シリカ系無機充填剤の含有量は、より好ましくは5〜200質量部、さらに好ましくは20〜100質量部である。
【0117】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物に用いられるシリカ系無機充填剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、SiO
2、又はSi
3Alを構成単位として含む固体粒子が好ましく、SiO
2、又はSi
3Alを構成単位の主成分とすることがより好ましい。ここで、主成分とは、好ましくは、シリカ系無機充填剤中に50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含有される成分をいう。
シリカ系無機充填剤として、特に限定されないが、具体的には、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質等が挙げられる。また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤や、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物も用いることができる。これらの中でも、強度や耐摩耗性等の観点から、シリカ及びガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。シリカとしては、特に限定されず、乾式シリカ、湿式シリカ等が挙げられる。これらの中でも、湿式シリカが好ましい。
乾式シリカとしては、特に限定されないが、例えば、精製された四塩化珪素を高温の炎の中で反応させて得られ、湿式に比べて純度が高く粒子が微細で水分が極めて低いものが挙げられ、一般に、シリコーンゴムの充填剤、樹脂の増粘剤、補強剤、あるいは粉体の流動化剤、セラミックスの原料として広く用いられる。
湿式シリカとしては、特に限定されないが、例えば、珪砂を原料とする珪酸ソーダを原料として、その水溶液を中和してシリカを析出し、ろ過・乾燥して得られる、外観上はふわふわとした軽い白色の粉末が挙げられ、一般に、合成ゴムの補強充填剤、農薬等液体の粉末化と固結防止、軽量紙の印刷インクの裏抜け防止、塗料、インクの増粘・たれ止め、断熱材、研磨剤に用いられる。
【0118】
変性共役ジエン系重合体組成物において、特に限定されないが、より優れた転がり抵抗特性を得る観点から、シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、100〜300m
2/gであることが好ましく、170〜250m
2/gであることがより好ましい。
【0119】
<カーボンブラック>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、特に限定されないが、前記ゴム成分100質量部に対し、更に0.5〜100質量部の(D)カーボンブラックを含有するものが好ましい。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用できる。これらの中でも、窒素吸着比表面積は、押し出し成形性の観点、及び転がり抵抗特性の観点で、50m
2/g以上、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が80mL/100gのカーボンブラックが好ましい。
上記ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、ドライグリップ性や導電性といったタイヤ等の用途に求められる性能を発現する観点から0.5質量%以上が好ましく、分散性の観点から前記ゴム成分100質量部に対し、100質量部以下が好ましく、より好ましくは3〜100質量部であり、更に好ましくは5〜50質量部である。
【0120】
<金属酸化物、及び金属水酸化物>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、特に限定されないが、ゴム成分、シリカ系無機充填剤及びカーボンブラック以外に、金属酸化物や金属水酸化物を含有させてもよい。
金属酸化物としては、例えば、式M
xO
y(Mは金属原子を表し、x及びyは各々独立して1〜6の整数である。)を構成単位の主成分とする固体粒子が挙げられ、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。また、金属酸化物と、金属酸化物以外の他の無機充填剤の混合物を用いることができる。
金属水酸化物としては、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム等が挙げられる。
含有量は、特に限定されないが、優れた機械強度を得る観点から、前記ゴム成分100質量部に対し、8質量部以下が好ましく、より好ましくは1.0〜4.0質量部である。
【0121】
<シランカップリング剤>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、特に限定されないが、シランカップリング剤を含有させてもよい。シランカップリング剤は、ゴム成分とシリカ系無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、ゴム成分及びシリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性及び/又は結合性を有する基を有している。このようなシランカップリング剤としては、一般的には、硫黄結合部分とアルコキシシリル基、シラノール基部分を一分子中に有する化合物が用いられる。具体的には、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド等が挙げられる。
シランカップリング剤の含有量は、上述したシリカ系無機充填剤100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましく、1〜15質量部であることが更に好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記範囲であると、シランカップリング剤による上記添加効果を一層顕著なものにできる。
【0122】
<ゴム用軟化剤>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、特に限定されないが、加工性の改良を図るために、ゴム用軟化剤を含有させてもよい。ゴム用軟化剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることもできる。ゴム用軟化剤としては、鉱物油、又は液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。ゴム成分の軟化、増容、加工性の向上を図るために使用されているプロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30〜45%のものがナフテン系、芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれている。ゴム用軟化剤としては、適度な芳香族含量を有するものが前記(A)成分、(A1)成分、前記(B)成分や(B1)成分との馴染みがよい傾向にあるため好ましい。
【0123】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物におけるゴム用軟化剤の含有量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部であることが好ましく、10〜90質量部であることがより好ましく、30〜90質量部であることが更に好ましい。ゴム用軟化剤の含有量がゴム成分100質量部に対して100質量部以下とすることで、ブリードアウトを抑制でき、組成物表面のベタツキを抑制することができる。
【0124】
<他の添加剤>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、本実施形態の目的を損なわない範囲内で、上述した以外のその他の軟化剤及び充填剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。
その他の軟化剤としては、公知の軟化剤を用いることができる。
その他の充填剤としては、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤としては、特に限定されず、それぞれ公知の材料を用いることができる。
【0125】
<混練方法>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法において、成分(A)又は成分(A1)、成分(B)又は成分(B1)、必要に応じて、その他のゴム状重合体、シリカ系無機充填剤、カーボンブラックやその他の充填剤、シランカップリング剤、ゴム用軟化剤等の添加剤等を混合する方法については、特に限定されるものではない。例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好ましい。また、変性共役ジエン系重合体と各種配合剤とを一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
【0126】
<加硫処理>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、特に限定されないが、加硫剤により加硫処理を施した加硫組成物としてもよい。
加硫剤としては、特に限定されないが、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。
加硫剤の使用量は、特に限定されないが、本実施形態の変性共役ジエン系重合体のゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜15質量部がより好ましい。
加硫方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、特に限定されないが、120〜200℃が好ましく、より好ましくは140〜180℃である。
また、加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤を用いてもよい。加硫促進剤としては、特に限定されず、従来公知の材料を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。また、加硫助剤としては、特に限定されないが、亜鉛華、ステアリン酸等を使用できる。加硫促進剤の使用量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜15質量部がより好ましい。
【0127】
[用途例]
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、転がり抵抗特性とウェットスキッド抵抗性のバランス、破断特性、及び耐摩耗性に優れ、それらの特性を生かした各種用途に使用できる。
<トレッド>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、特に限定されないが、トレッド用として好適に用いることができる。例えば、本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、自動車用タイヤのトレッドの材料として好適に用いることができる。特に、ベーストレッドとキャップトレッドの2重構造のトレッドとする場合、キャップトレッド用組成物として好適に用いることができる。この場合、本実施形態のトレッド用組成物を用いてキャップトレッドを作製し、他の部材とともに貼り合わせ、タイヤ成形機を使用して加熱加圧することにより、自動車用タイヤのトレッドを製造できる。本実施形態のトレッド用組成物には、上記した変性共役ジエン系重合体組成物の他に、ポリイソプレンゴム、ハイシスポリブタジエンゴム、その他の変性共役ジエン系重合体等を添加することができる。
【0128】
<サイドウォール>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、特に限定されないが、サイドウォール用組成物としても好適に用いることができる。本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物を含むサイドウォール用組成物は、自動車用タイヤのサイドウォールの材料として好適に用いることができる。本実施形態のサイドウォール用組成物には、上記した変性共役ジエン系重合体組成物以外に、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ハイシスポリブタジエンゴム、その他の変性共役ジエン系重合体等を添加することができる。
【0129】
<タイヤ>
上記したトレッド用組成物及び/又はサイドウォール用組成物を用いて得られるタイヤは、上記した物性に優れ、自動車用タイヤとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0130】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0131】
[分析方法、測定方法]
試料等の分析や評価は下記に示す方法により行った。
(1)分子量及び分子量分布
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結して用いたGPC(東ソー社製 型式HLC-8020)を使用して、クロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線により分子量(Mw、Mn)を求め、さらに全ピーク面積に対する最低分子量ピーク面積の比を計算して最低分子量ピーク面積比を計算した。
溶離液としてはテトラヒドロフラン(THF)を使用した。
カラムは、ガードカラム:東ソー TSKguardcolumn HHR−H、カラ
ム:東ソー TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TS
Kgel G4000HHRを使用した。
オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー製 H
LC8020)を用いて分子量の測定を行った。
試料は20mLのTHFに対して10mgを溶解し、200μL注入して測定した。
【0132】
(2)結合スチレン量
試料100mgをクロロホルムで100mLにメスアップし、クロロホルムに溶解させて測定サンプルとした。測定サンプルについて、スチレンのフェニル基によるUV254nmの吸収により結合スチレン量(質量%)を測定した(島津製作所社製、紫外可視分光光度計UV−2450)。
【0133】
(3)結合ブタジエン中部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)
試料50mgを10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600〜1000cm
−1の範囲で測定して所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法の計算式に従いブタジエン部分のミクロ構造を求めた(日本分光社製、フーリエ変換赤外分光光度計FT−IR230)。
【0134】
(4)シス結合量
シス結合量については、試料50mgを10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600〜1000cm−1の範囲で測定して所定の波数における吸光度によりモレロ法の計算式に従いシス結合量を求めた(日本分光社製、フーリエ変換赤外分光光度計FT−IR230)。
【0135】
(5)ガラス転移温度
ガラス転移温度については、ISO 22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
【0136】
(6)変性率
シリカゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用することにより測定した。
以下に示すようにして、試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系ゲルカラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し変性率を求めた。低分子量内部標準ポリスチレンとして市販の分子量5000の標準ポリスチレンを用いた。
<試料溶液の調製>
試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させて、試料溶液とした。
<ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件>
THFを溶離液として用い、試料溶液200μLを装置に注入して測定した。
カラムは、ガードカラム:東ソー社製 TSKguardcolumn HHR−H、カラム:東ソー TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TSKgel G4000HHRを使用した。
カラムオーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製 HLC8020)を用いて測定しクロマトグラムを得た。
<シリカ系カラムを用いたGPC測定条件>
THFを溶離液として用い、試料200μLを装置に注入して測定した。
カラムは、ガードカラム:DIOL 4.6×12.5mm 5micron、カラム:Zorbax PSM−1000S、PSM−300S、PSM−60Sを使用した。カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5mL/分で、東ソー社製 CCP8020シリーズ ビルドアップ型GPCシステム:AS−8020、SD−8022、CCPS、CO−8020、RI−8021で、RI検出器を用いて測定し、クロマトグラムを得た。
<変性率の計算方法>
ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(%)を求めた。
変性率(%)=[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100
【0137】
(7)変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度
ムーニー粘度計を使用し、JIS K6300−1に準じて、100℃、1分間の予熱を行った後に、ローターを毎分2回転で4分間回転させた後の粘度を測定した。値が小さいほど加工性に優れることを示す。
【0138】
(8)転がり抵抗特性(RR)
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。
各々の測定値は、各実施例及び比較例については、比較例1を100として指数化した。50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを転がり抵抗特性(省燃費性)の指標とした。値が小さいほど転がり抵抗特性が良好であることを示す。
【0139】
(9)ウェットスキッド抵抗性(WET)
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。
各々の測定値は、各実施例及び比較例については、比較例1を100として指数化した。0℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定したtanδをウェットスキッド抵抗性の指標とした。値が大きいほどウェッドスキッド抵抗性が良好であることを示す。
【0140】
(10)耐摩耗性
アクロン摩耗試験機(安田精機製作所製)を使用し、JIS K6264−2に準じて、荷重44.1N、3000回転の摩耗量を測定した。
各々の測定値は、各実施例及び比較例については、比較例1を100として指数化した。値が大きいほど、耐摩耗性に優れていることを示す。
【0141】
(11)破断特性
JIS K6251の引張試験法により、引張破断強度(TB)を測定した。
各々の測定値は、各実施例及び比較例については比較例1を100として指数化した。
数値が大きいほど耐破壊性に優れることを示す。
【0142】
[重合開始剤〕
以下の方法により調製した重合開始剤を使用した。
(重合開始剤a、b、cの調製)
内容積10Lの撹拌装置及びジャケットを具備するオートクレーブを洗浄乾燥し、窒素
置換を行った後、下記表1に示す条件に従い、乾燥処理を施した1,3−ブタジエン、シ
クロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジビニルベンゼンを加え、次いでn−ブチルリチウ
ムを加えて75℃で1時間反応することにより、重合開始剤a、b、cを調製した。
調製の際には、ジビニルベンゼンとして、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン等を含有し、ジビニルベンゼン濃度が57質量%であるジビニルベンゼン混合物(新日鐵化学製)を用いた。前記のとおり、使用したジビニルベンゼンが混合物であることから、表1中のジビニルベンゼン量は、不純物の含有量を除いて換算したジビニルベンゼン純量で示した。
【0143】
【表1】
【0144】
[共役ジエン系重合体]
(製造例1) 共役ジエン系重合体(A)(SBR2)
内容積10Lの撹拌装置及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄乾燥し、窒素置換を行った後、予め精製、乾燥しておいた1,3ーブタジエン592gとスチレン208g、シクロヘキサン5kgを加え、次いで、ビニル化剤として、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを1.47g添加し、さらに、重合開始剤(a1)として、前記重合開始剤bを加えて、52℃にて重合を開始した。重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は71℃に達した。
重合反応終了後、得られた重合体溶液に、酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;BHT)2.1gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、共役ジエン系重合体(A)(SBR2)を得た。
【0145】
(製造例2) 変性共役ジエン系重合体(A´)(SBR3)
内容積10Lの撹拌装置及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄乾燥し、窒素置換を行った後、予め精製、乾燥しておいた1,3ーブタジエン592gとスチレン208g、シクロヘキサン5kgを加え、次いで、ビニル化剤として、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを1.47g添加し、さらに、重合開始剤(a1)として、前記重合開始剤aを加えて、52℃にて重合を開始した。反応温度のピーク到達2分後、反応器に変性剤(a2)として、前記式(1)の構造を有する1−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−4−メチルピペラジンを4.00mmol添加し、75℃で5分間変性反応を実施した。
得られた重合体溶液に、酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;BHT)2.1gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性共役ジエン系重合体(A´)(SBR3)を得た。
【0146】
(製造例3) 変性共役ジエン系重合体(A´)(SBR4)
重合開始剤(a1)として、前記重合開始剤bを用いる以外は、製造例2と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A´)(SBR4)を得た。
【0147】
(製造例4) 変性共役ジエン系重合体(A´)(SBR5)
重合開始剤(a1)として、重合開始剤cを用いる以外は、製造例2と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A´)(SBR5)を得た。
【0148】
(製造例5) 変性共役ジエン系重合体(A´)(SBR6)
変性剤(a2)として、前記式(2)の構造を有する2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンを用いる以外は、製造例2と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A´)(SBR6)を得た。
【0149】
(製造例6) 変性共役ジエン系重合体(A´)(SBR7)
重合開始剤(a1)として、前記重合開始剤cを用いる以外は、製造例5と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A´)(SBR7)を得た。
【0150】
(製造例7) 共役ジエン系重合体(A)(SBR1)
内容積10Lの撹拌装置及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄乾燥し、窒素置換を行った後、予め精製、乾燥しておいた1,3ーブタジエン592gとスチレン208g、シクロヘキサン5kgを加え、次いで、ビニル化剤として、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを1.47g添加し、さらにn−ブチルリチウムを加えて、52℃にて重合を開始した。重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は71℃に達した。
重合反応終了後、得られた重合体溶液に、酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;BHT)2.1gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、共役ジエン系重合体(A)(SBR1)を得た。
【0151】
[変性共役ジエン系重合体(B)]
(製造例8) 変性共役ジエン系重合体(B)(BR2)
十分に乾燥した300mL耐圧ミニボンベの内部を乾燥窒素で十分に置換した。そこに、1,3−ブタジエン20gを含む20質量%のシクロヘキサン溶液130mL、及び、予めイソステアリン酸(和光純薬工業社製、2−(1,3,3−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチルオクタン酸)のナトリウム塩と塩化ネオジムを反応させて得られたイソステアリン酸ネオジム2.7mmolを含む30質量%のシクロヘキサン溶液11.7mLを挿入して、室温で5分間振とうした。続いて、ジイソブチルアルミニウムハイドライド22.5mmolを含む1モル濃度のヘキサン溶液22.5mLを更に加えて振とうした後、5分間静置した。エチルアルミニウムセスキクロライドの1モル濃度のヘキサン溶液8.1mLを、Cl/Nd(モル比)=3となるように加えて振とうした後、20分間静置することで、ランタン系列金属化合物を含有する重合開始剤溶液を調製した。
次に、十分に乾燥した内容積11Lの攪拌機付き耐圧オートクレーブの内部を乾燥窒素で十分置換した。そこに、900gの1,3−ブタジエンを含む6kgのシクロヘキサン混液をオートクレーブ内に仕込み、あらかじめ調製した重合開始剤溶液を170mL加えて,50℃で2時間重合を行い、共役ジエン系重合体(b1)を得た。重合反応後、アミノ化合物(b2)として、前記式(4)の構造を有するN−(2−エトキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリエトキシシランを3.8ミリモル添加し、50℃で1時間反応させた。その後、2,6−ビス(tert−ブチル)−4−メチルフェノール5gを含むメタノール/シロクヘキサン混合溶液(30/70)100mLを加えて反応を停止させた。ドラムドライヤーを用いて溶剤を除去し、変性共役ジエン系重合体(B)(BR2)を得た。
【0152】
宇部興産(株)社製の非変性ポリブタジエン「ウベポールU150」をBR1とした。
【0153】
前記製造例1〜8で得られた共役ジエン系重合体(A)(SBR1、2)、変性共役ジエン系重合体(A´)(SBR3〜7)、変性共役ジエン系重合体(B)(BR2)、BR1の各物性値を、表2及び表3に示す。
SBR2〜7は、炭素原子を基点とする重合体鎖の3分岐点を1分子中に0.1〜4個有する重合体であった。変性剤及び変性率により、SBR3〜7が、前記式(8)の構造を有すること、BR2が、前記式(7)の構造を有することを、各々確認した。
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
[実施例1]
以下に示す配合に従い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得た。
・SBR2(共役ジエン系重合体(A)):70質量部
・BR2(変性共役ジエン系重合体(B)):30質量部
・シリカ(エボニック デグサ社製、商品名「ウルトラジル7000GR」、窒素吸着比表面積:175m
2/g):75質量部
・シランカップリング剤(エボニック デグサ社製、商品名「Si75」(テトラエトキシシリルプロピルジスルフィド):6質量部
・プロセスオイルオイル(JX日鉱日石エネルギー社製、商品名「NC140」):42質量部
・カーボンブラック(東海カーボン社製、商品名「シーストKH(N339)」、ヨウ素吸着量90g/kg、CTAB比表面積95m
2/g):5質量部
・亜鉛華(三井金属鉱業社製、商品名「亜鉛華1号」):2.5質量部
・ステアリン酸:1.0質量部
・ワックス:(大内新興化学工業社製、商品名「サンノック」、帯黄白色粒状、凝固点65℃以上、比重0.93、:1.5質量部
・老化防止剤(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン):2.0質量部
・硫黄:2.2質量部
・加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド):1.7質量部
・加硫促進剤(ジフェニルグアニジン):2.0質量部
【0157】
上記した材料を下記の方法により混練して、未加硫ゴム組成物及び加硫ゴムシートを得た。
温度制御装置を具備するニーダー(内容量0.5L)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数50rpmの条件で、変性共役ジエン重合体(変性SBR1)、シリカ系無機充填剤(シリカ)、シランカップリング剤、プロセスオイルを4分混練した。このとき、ニーダーの温度を制御し、排出温度(配合物)は155〜160℃でゴム組成物を得た。
次に、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、カーボンブラック、亜鉛華、ステアリン酸、ワックス,及び老化防止剤を加え、上記ニーダーにて3分混練した。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を155〜160℃に調整した。そして、ニーダーより上記配合物を排出後、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状の未加硫ゴム組成物を作成し、冷却した後、加工性を評価した。
更に、オーブンを用いて未加硫組成物を70℃×30分加温した後,第三段の混練として、70℃に設定した10インチφオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を加えて混練し、組成物を得た。その後、組成物の残りを160℃×20分間、加硫プレスにて加硫成形して、成形体を得た。得られた成形体の転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、耐摩耗性、破断特性を評価した。
【0158】
[実施例2]
SBR2の代わりにSBR3を70質量部用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返し、未加硫ゴム組成物及び加硫ゴムシートを製造し、実施例1と同様にして、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、耐摩耗性、破断特性を評価した。
【0159】
[実施例3]
SBR2の代わりにSBR4を70質量部用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返し、未加硫ゴム組成物及び加硫ゴムシートを製造し、実施例1と同様にして、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、耐摩耗性、破断特性を評価した。
【0160】
[実施例4]
SBR2の代わりにSBR5を70質量部用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返し、未加硫ゴム組成物及び加硫ゴムシートを製造し、実施例1と同様にして、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、耐摩耗性、破断特性を評価した。
【0161】
[実施例5]
SBR2の代わりにSBR6を70質量部用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返し未加硫ゴム組成物及び加硫ゴムシートを製造し、実施例1と同様にして、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、耐摩耗性、破断特性を評価した。
【0162】
[実施例6]
SBR2の代わりにSBR7を70質量部用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返し、未加硫ゴム組成物及び加硫ゴムシートを製造し、実施例1と同様にして、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、耐摩耗性、破断特性を評価した。
【0163】
[参考例1]
SBR2の代わりにSBR1を70質量部用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返し、未加硫ゴム組成物及び加硫ゴムシートを製造し、実施例1と同様にして、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、耐摩耗性、破断特性を評価した。
【0164】
[比較例1]
BR2を用いずにSBR2を100質量部用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返し、未加硫ゴム組成物及び加硫ゴムシートを製造し、実施例1と同様にして、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、耐摩耗性、破断特性を評価した。
【0165】
[参考例2]
SBR2を用いずにBR1を100質量部用いた以外は、比較例1と同じ操作を繰り返し、未加硫ゴム組成物及び加硫ゴムシートを製造し、実施例1と同様にして、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、耐摩耗性、破断特性を評価した。
【0166】
[比較例2]
BR2の代わりにBR1を30質量部用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返し、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、耐摩耗性、破断特性を評価した。
実施例1〜6、及び比較例1〜2、参考例1〜2における転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、耐摩耗性、及び破断特性の評価結果を表4に示す。
【0167】
【表4】
表4より、各実施例の共役ジエン系重合体組成物は、耐摩耗性、及び破断特性を損なうことなく、転がり抵抗特性とウェットスキッド抵抗性のバランスに優れることがわかる。これに対し、共役ジエン系重合体(A)が本発明の範囲外である場合(比較例1、参考例1〜2)、変性共役ジエン系重合体(B)が本発明の範囲外である場合(比較例2)は、耐摩耗性、及び破断特性、転がり抵抗特性(RR)とウェットスキッド抵抗性(WET)のバランスに劣ることがわかる。