(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166093
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】圧力センサ付きグロープラグ
(51)【国際特許分類】
F23Q 7/00 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
F23Q7/00 605E
F23Q7/00 V
F23Q7/00 605Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-89193(P2013-89193)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2013-257133(P2013-257133A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2016年2月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-110151(P2012-110151)
(32)【優先日】2012年5月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109298
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 昇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓之
(72)【発明者】
【氏名】土谷 先樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々 司光
【審査官】
藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−150570(JP,A)
【文献】
特表2008−525758(JP,A)
【文献】
特開2010−139150(JP,A)
【文献】
特開2011−144978(JP,A)
【文献】
特開2010−139147(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0005308(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 7/00
F02D 35/00
F02P 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる軸孔を有する筒状のハウジングと、
少なくとも自身の先端部が前記ハウジングの先端から突出した状態で前記軸孔に挿設されるとともに、前記ハウジングに対して前記軸線方向に沿って相対変位可能であり、少なくとも外表面がセラミックからなるセラミックヒータと、
前記ハウジングに直接又は間接的に固定されるとともに、前記セラミックヒータの相対変位に基づいて信号を出力する圧力センサとを備える圧力センサ付きグロープラグであって、
自身の内周に前記セラミックヒータが配置された状態で、前記セラミックヒータと固定される固定部材と、
前記固定部材の外周に溶接される被溶接部材とを有し、
前記固定部材のうち少なくとも前記被溶接部材が溶接される部位の内周面が、前記セラミックヒータの外表面から離間しており、
前記固定部材は、筒状の外筒であり、
前記被溶接部材は、一端側が前記外筒の外周に溶接されるとともに、他端側が前記ハウジングに固定され、前記軸線方向に沿って変形可能な可動部材であることを特徴とする圧力センサ付きグロープラグ。
【請求項2】
前記外筒は、前記軸線方向に沿って一定の外径を有することを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ付きグロープラグ。
【請求項3】
前記セラミックヒータは、絶縁性セラミックからなる基体、及び、当該基体内に設けられた発熱素子とを備えるとともに、
前記発熱素子は、前記基体の外表面に露出する電極取出部を有し、
前記固定部材は、前記電極取出部が内周に接触する筒状のリング部材であり、
前記被溶接部材は、前記リング部材の外周に溶接され、前記セラミックヒータの相対変位を前記圧力センサに伝達する伝達部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力センサ付きグロープラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関等に使用される圧力センサ付きグロープラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの始動補助等に用いられるグロープラグは、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状のハウジングや前記軸孔に挿通されたヒータ等を備えている。また、前記ヒータとしては、セラミックヒータが採用される場合があり、セラミックヒータとしては、絶縁性を有するセラミック製の基体の内部に、導電性を有するセラミック製の発熱素子が配置されてなるものなど、少なくとも外表面がセラミックにより形成されたものが知られている。
【0003】
また近年では、グロープラグに対して、燃焼圧等の圧力を検知するための機能を設けた圧力センサ付きグロープラグが提案されている。このような圧力センサ付きグロープラグにおいて、セラミックヒータは、ハウジングに対して相対変位可能な状態で取付けられており、その先端部がハウジングの先端から突出している。そして、燃焼圧等をセラミックヒータが受圧し、セラミックヒータが相対変位すると、その相対変位は、セラミックヒータに接続された金属製の伝達部材を介して圧力センサに伝達され、セラミックヒータの相対変位量(つまり、セラミックヒータに加えられた圧力)に応じた信号が圧力センサから出力される(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
加えて、ハウジングに対してセラミックヒータを相対変位可能とすべく、セラミックヒータは、軸線方向に沿って伸縮変形可能な筒状をなす金属製の可動部材を介してハウジングに取付けられている。ここで、セラミックヒータとして、外表面がセラミックにより形成されたものを用いる場合、レーザー溶接等により、セラミックヒータの外表面と可動部材とを直接的に溶接することはできない。そのため、筒状をなす金属製の外筒の内周にセラミックヒータを配置し、圧入等によりセラミックヒータと外筒とを固定した上で、レーザー溶接等により可動部材と外筒の外周とを溶接することにより、セラミックヒータと可動部材とが間接的に接続されることがある。すなわち、外筒を介してセラミックヒータと可動部材とが接続されることがある。
【0005】
また、可動部材と同様に、伝達部材もセラミックヒータの外表面と直接的に溶接することはできない。そのため、筒状をなす金属製のリング部材の内周にセラミックヒータを配置し、圧入等によりセラミックヒータとリング部材とを固定した上で、レーザー溶接等により伝達部材とリング部材の外周とを溶接することにより、セラミックヒータと伝達部材とを間接的に接続することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−144978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、セラミックヒータと外筒やリング部材(以下、これらを固定部材と称す)とを固定した上で、固定部材の外周に対して可動部材や伝達部材(以下、これらを被溶接部材と称す)を溶接すると、溶接時に発生する熱により、金属製の固定部材が比較的大きく膨張し、固定部材に引っ張られる形でセラミックヒータに対して大きな応力が加わってしまうおそれがある。その結果、セラミックヒータに割れ等の破損が生じてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、自身の内周にセラミックヒータが固定された固定部材と、固定部材の外周に溶接される被溶接部材とを有する圧力センサ付きグロープラグにおいて、固定部材に対する被溶接部材の溶接に伴うセラミックヒータの破損をより確実に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
【0010】
構成1.本構成の圧力センサ付きグロープラグは、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状のハウジングと、
少なくとも自身の先端部が前記ハウジングの先端から突出した状態で前記軸孔に挿設されるとともに、前記ハウジングに対して前記軸線方向に沿って相対変位可能であり、少なくとも外表面がセラミックからなるセラミックヒータと、
前記ハウジングに直接又は間接的に固定されるとともに、前記セラミックヒータの相対変位に基づいて信号を出力する圧力センサとを備える圧力センサ付きグロープラグであって、
自身の内周に前記セラミックヒータが配置された状態で、前記セラミックヒータと固定される固定部材と、
前記固定部材の外周に溶接される被溶接部材とを有し、
前記固定部材のうち少なくとも前記被溶接部材が溶接される部位の内周面が、前記セラミックヒータの外表面から離間して
おり、
前記固定部材は、筒状の外筒であり、
前記被溶接部材は、一端側が前記外筒の外周に溶接されるとともに、他端側が前記ハウジングに固定され、前記軸線方向に沿って変形可能な可動部材であることを特徴とする。
【0011】
上記構成1によれば、固定部材のうち少なくとも被溶接部材が溶接される部位の内周面が、セラミックヒータの外表面から離間するように構成されている。従って、溶接時において、固定部材からセラミックヒータに対して応力が加わってしまうことを効果的に抑制できる。その結果、セラミックヒータの破損をより確実に防止することができる。
特に、上記構成1によれば、外筒と可動部材との溶接時において、外筒からセラミックヒータに応力が加わってしまうことを効果的に抑制でき、セラミックヒータの破損をより確実に防止することができる。
【0014】
また、外筒とセラミックヒータとを接触させた状態で、可動部材及び外筒を溶接した場合、外筒のセラミックヒータ側において熱損失が大きくなり、ひいては外筒が大きく変形してしまうおそれがある。その結果、外筒及びセラミックヒータ間の密着性が損なわれ、気密性の低下を招いてしまうおそれがある。この点、上記構成
1によれば、外筒のうち可動部材が溶接される部位の内周面はセラミックヒータの外表面から離間しているため、溶接時における外筒の変形を効果的に抑制することができる。その結果、良好な気密性を確保することができる。
【0015】
構成
2.本構成の圧力センサ付きグロープラグは、上記構成1において、前記外筒は、前記軸線方向に沿って一定の外径を有することを特徴とする。
【0016】
外筒のうち可動部材が溶接される部位の内周面をセラミックヒータの外表面から離間させる手法としては、例えば、前記部位をその他の部位よりも外周側に膨出させることが考えられる。この場合には、可動部材の一端側の外径を比較的大きなものとする必要があるが、可動部材の一端側の外径を大きくすると、可動部材におけるばね係数が増大してしまう。そのため、圧力を加えられた際におけるセラミックヒータの変位量が小さくなってしまい、圧力の検知精度が低下してしまうおそれがある。
【0017】
この点、上記構成
2によれば、外筒は軸線に沿って一定の外径を有するように構成されており、可動部材の一端側の外径を大きくする必要はない。従って、可動部材におけるばね係数の増大をより確実に防止することができ、良好な圧力の検知精度を実現することができる。
【0018】
構成
3.本構成の圧力センサ付きグロープラグは、上記構成1
又は上記構成2において、前記セラミックヒータは、絶縁性セラミックからなる基体、及び、当該基体内に設けられた発熱素子とを備えるとともに、
前記発熱素子は、前記基体の外表面に露出する電極取出部を有し、
前記固定部材は、前記電極取出部が内周に接触する筒状のリング部材であり、
前記被溶接部材は、前記リング部材の外周に溶接され、前記セラミックヒータの相対変位を前記圧力センサに伝達する伝達部材であることを特徴とする。
【0019】
上記構成
3によれば、伝達部材及びリング部材の溶接時において、リング部材からセラミックヒータに応力が加わってしまうことを効果的に抑制でき、セラミックヒータの破損をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、圧力センサ付きグロープラグ1(以下、単に「グロープラグ1」と称す)の一部破断正面図である。尚、
図1においては、図の下側をグロープラグ1の先端側、上側を後端側として説明する。
【0022】
図1に示すように、グロープラグ1は、ハウジング2、キャップ部材3、中軸4、セラミックヒータ5、圧力センサ6等を備えている。
【0023】
ハウジング2は、所定の金属材料(例えば、S45C等の鉄系素材)によって形成されるとともに、軸線CL1方向に沿って延びる軸孔7を有している。さらに、前記ハウジング2の外周には、グロープラグ1をエンジンのシリンダヘッド等に取付けるための雄ねじ部8が形成されている。併せて、ハウジング2の後端部外周には断面六角形状の工具係合部9が形成されており、前記シリンダヘッド等にグロープラグ1(雄ねじ部8)を取付ける際には、工具係合部9に使用される工具が係合されるようになっている。
【0024】
さらに、ハウジング2の先端部内周には、軸線CL1方向に沿って延びる筒状をなす金属製のセンサ固定部材10が挿入されている。センサ固定部材10は、その先端部がハウジング2の先端部に接合されるとともに、その後端部が圧力センサ6の後述するダイアフラム23に接合されている。これにより、圧力センサ6は、ハウジング2に対してセンサ固定部材10を介して間接的に固定された状態となっている。
【0025】
キャップ部材3は、筒状をなし、センサ固定部材10の先端部を介してハウジング2の先端部に接合されている。また、キャップ部材3の先端側外周面は、軸線CL1方向先端側に向けて先細るテーパ状とされており、グロープラグ1をエンジンに取付けた際には、前記テーパ状部分がエンジンの座面に圧接することで、燃焼室内の気密性が確保されるようになっている。
【0026】
中軸4は、前記軸孔7に挿入されており、金属製で軸線CL1に沿って延びる棒状をなしている。また、中軸4の先端部は、所定の金属(例えば、SUS等の鉄系素材)によって形成された円筒状の接続部材11の後端部に圧入されるとともに、接続部材11の先端部には、前記セラミックヒータ5の後端部が圧入されている。これにより、中軸4とセラミックヒータ5とは接続部材11を介して機械的かつ電気的に接続されている。尚、接続部材11に代えて、所定のリード線などにより中軸4とセラミックヒータ5とを電気的に接続することとしてもよい。
【0027】
セラミックヒータ5は、自身の先端部がハウジング2(キャップ部材3)の先端から突出した状態で、軸孔7に挿設されている。また、セラミックヒータ5は、軸線CL1方向に延び、先端部が閉塞した筒状をなす基体12と、当該基体12の内部に配置され、長細いU字状をなす発熱素子13とを備えている。基体12は、絶縁性セラミック(例えば、窒化珪素やアルミナ等)によって構成され、一方で、発熱素子13は、窒化珪素を主成分とし、導電性材料(例えば、モリブデンやタングステンの珪化物や窒化物、炭化物等)を含む導電性セラミックによって構成されている。
【0028】
また、発熱素子13は、セラミックヒータ5の先端部に配置されるU字状の発熱部14と、当該発熱部14のそれぞれの端部から後端側に向けて延びる一対の棒状のリード部15,16とを備えている。発熱部14は、いわゆる発熱抵抗体として機能する部位であり、曲面状に形成されたセラミックヒータ5の先端部分において、その曲面に沿うようにしてU字状をなしている。
【0029】
さらに、リード部15,16は、それぞれセラミックヒータ5の後端側に向けて互いに略平行に延設されている。そして、一方のリード部15の後端寄り位置には、電極取出部17が外周方向に突設されており、当該電極取出部17は、基体12の外周面に露出している。同様に、他方のリード部16の後端寄りの位置にも、電極取出部18が外周方向に突設されており、当該電極取出部18は、基体12の外周面に露出している。尚、前記一方のリード部15の電極取出部17は、軸線CL1方向に沿って、前記他方のリード部16の電極取出部18よりも後端側に位置している。
【0030】
加えて、
図2に示すように、電極取出部17の露出部分は、前記接続部材11の内周面に接触しており、接続部材11に接続された中軸4とリード部15との電気的導通が図られている。また、電極取出部18の露出部分は、ハウジング2と電気的に接続された後述するリング部材22の内周面に対して接触しており、ハウジング2とリード部16との電気的導通が図られている。すなわち、本実施形態では、中軸4とハウジング2とが、グロープラグ1において、セラミックヒータ5の発熱部14に通電するための陽極・陰極として機能するようになっている。
【0031】
また、本実施形態において、セラミックヒータ5は、他端側がハウジング2の先端部に接合された、軸線CL1に沿って伸縮変形可能な筒状の可動部材19(本発明の「被溶接部材」に相当する)を介して、ハウジング2に取付けられている。そのため、セラミックヒータ5は、その先端部に燃焼圧等の圧力が加えられた際に、ハウジング2に対して軸線CL1方向に沿って相対変位することが可能となっている。
【0032】
尚、セラミックヒータ5は、その外表面がセラミックにより形成されているため、セラミックヒータ5と可動部材19とを直接的に溶接することはできない。そこで、本実施形態では、所定の金属(例えば、SUS630等)により形成された筒状の外筒20(本発明の「固定部材」に相当する)の内周にセラミックヒータ5を圧入し、セラミックヒータ5と外筒20とを固定した状態で、レーザー溶接や抵抗溶接により、外筒20に対して可動部材19の一端側(先端側)が溶接される構成となっている。すなわち、セラミックヒータ5は、外筒20を介して可動部材19に取付けられている。尚、外筒20は、キャップ部材3の内周面から離間した状態でキャップ部材3に挿通されており、外筒20の肉厚は、比較的小さなもの(例えば、0.6mm以下)とされている。
【0033】
また、可動部材19は、その一端側開口部が比較的小径に形成される一方で、その他端側開口部が比較的大径に形成されており、両開口部間に、複数(本実施形態では、2箇所)の折り曲げ部分を有している。そのため、可動部材19は、所定の金属(例えば、ステンレス鋼やニッケル合金等)により薄肉に形成されることと相俟って、軸線CL1に沿って伸縮変形可能となっている。
【0034】
尚、本実施形態において、可動部材19は、その一端側が全周に亘って外筒20に対して溶接されており、その他端側が全周に亘ってハウジング2の先端部に対して溶接されている。これにより、キャップ部材3と外筒20との間の隙間から侵入した燃焼ガスが、ハウジング2内へと侵入し、ひいては外部へと漏れてしまうことをより確実に防止できるようになっている。
【0035】
加えて、セラミックヒータ5の相対変位は、自身の後端部が圧力センサ6(ダイアフラム23)に接続された筒状の伝達部材21(本発明の「被溶接部材」に相当する)を介して圧力センサ6に伝達されるようになっている(
図1参照)。尚、セラミックヒータ5の外表面はセラミックにより形成されているため、可動部材19の場合と同様に、伝達部材21とセラミックヒータ5とを直接的に溶接することはできない。そこで、本実施形態では、所定の金属(例えば、SUS630等)からなる筒状のリング部材22(本発明の「固定部材」に相当する)にセラミックヒータ5を圧入し、セラミックヒータ5とリング部材22とを固定した状態で、レーザー溶接や抵抗溶接により、リング部材22の後端部外周に対して伝達部材21の先端部が溶接される構成となっている。すなわち、セラミックヒータ5は、リング部材22を介して伝達部材21に接続されている。尚、リング部材22は、センサ固定部材10の内周から離間した状態でセンサ固定部材10に挿通されており、リング部材22の肉厚は、比較的小さなもの(例えば、0.9mm以下)とされている。
【0036】
図1に戻り、圧力センサ6は、ハウジング2の軸線CL1方向中央部よりも先端側に設けられており、中軸4が貫通する貫通孔を中央に有する金属(例えば、ステンレス鋼)製のダイアフラム23と、当該ダイアフラム23の後端側の面に接合されたセンサ素子24(本実施形態では、ピエゾ抵抗体)とを備えている。ダイアフラム23には、前記伝達部材21の後端部が接合されており、燃焼圧等の受圧により、セラミックヒータ5に変位が生じた際には、セラミックヒータ5の変位量に応じた分だけダイアフラム23が撓み変形するようになっている。
【0037】
また、センサ素子24は、ダイアフラム23の撓み変形に伴い、自身の抵抗値が変化するものである。センサ素子24の抵抗値は、ハウジング2の内部に設けられた集積回路25により電圧値に変換・増幅され、変換・増幅された電圧値の信号(すなわち、セラミックヒータ5の受けた圧力を示す信号)が、図示しないケーブル等を介してECU等の外部回路(図示せず)へと出力される。
【0038】
次いで、本発明の特徴部分について説明する。上述の通り、外筒20は、可動部材19と溶接されているが、本実施形態では、
図2に示すように、外筒20のうち可動部材19が溶接される部位の内周面は、セラミックヒータ5の外表面から離間するように構成されている。具体的には、外筒20は、軸線CL1に沿って一定の外径を有する一方で、可動部材19が溶接される後端部に、自身の内径がその他の部位における内径よりも大きくされた薄肉部26を備えており、薄肉部26の内周面がセラミックヒータ5の外表面から離間している。尚、本実施形態では、外筒20のうち可動部材19が溶接される部位(薄肉部26)の内周面とセラミックヒータ5の外表面との間の距離が、所定の数値範囲内(例えば、0.1mm以上0.4mm以下)となるように設定されている。
【0039】
さらに、上述の通り、リング部材22は、伝達部材21と溶接されているが、本実施形態では、リング部材22のうち伝達部材21が溶接される部位の内周面が、セラミックヒータ5の外表面から離間するように構成されている。具体的には、リング部材22は、セラミックヒータ5を保持する小径部27と、自身の内径が小径部27の内径よりも大きくされ、伝達部材21が外周に溶接される大径部28とを備えており、大径部28の内周面がセラミックヒータ5の外表面から離間している。尚、本実施形態では、リング部材22のうち伝達部材21が溶接される部位(大径部28)の内周面とセラミックヒータ5の外表面との間の距離が、所定の数値範囲内(例えば、0.1mm以上1.2mm以下)となるように設定されている。
【0040】
以上、詳述したように、本実施形態によれば、外筒20と可動部材19との溶接時において、外筒20からセラミックヒータ5に応力が加わってしまうことを効果的に抑制できる。また、伝達部材21及びリング部材22の溶接時において、リング部材22からセラミックヒータ5に応力が加わってしまうことを効果的に抑制できる。これらの結果、セラミックヒータ5の破損をより確実に防止することができる。
【0041】
また、外筒20のうち可動部材19が溶接される部位の内周面と、セラミックヒータ5の外表面とを接触させた状態で、可動部材19及び外筒20を溶接した場合、外筒20のセラミックヒータ5側において熱損失が大きくなるため、外筒20が比較的大きく変形し、ひいては外筒20及びセラミックヒータ5間の密着性が損なわれ、気密性の低下を招いてしまうおそれがある。この点、本実施形態では、外筒20のうち可動部材19が溶接される部位の内周面は、セラミックヒータ5の外表面から離間しているため、溶接時における外筒20の変形を効果的に抑制することができる。その結果、可動部材19が外筒20やハウジング2に対して全周に亘って溶接されていることと相俟って、燃焼室内において良好な気密性を確保することができる。
【0042】
加えて、外筒20は軸線CL1に沿って一定の外径を有するように構成されており、可動部材19の一端側の外径を大きくする必要はない。従って、可動部材19におけるばね係数の増大をより確実に防止することができ、良好な圧力の検知精度を実現することができる。
【0043】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0044】
(a)上記実施形態では、外筒20のうち可動部材19が溶接される部位の内周面、及び、リング部材22のうち伝達部材21が溶接される部位の内周面の双方が、セラミックヒータ5の外表面から離間するように構成されているが、両者のうちの一方が、セラミックヒータ5の外表面から離間するように構成してもよい。
【0045】
(b)上記実施形態において、セラミックヒータ5は、外筒20やリング部材22に対して圧入されることにより、外筒20やリング部材22に固定されているが、セラミックヒータ5と外筒20等との固定手法は、特に限定されるものではない。従って、例えば、ロウ付け等により、セラミックヒータ5と外筒20等とを固定することとしてもよい。
【0046】
(c)上記実施形態における圧力センサ6の配置位置は例示であって、圧力センサ6の配置位置は、特に限定されるものではない。従って、例えば、ハウジング2の後端側内周に圧力センサを設けることとしてもよいし、ハウジング2の外部に圧力センサを設けることとしてもよい。
【0047】
(d)上記実施形態では、センサ素子としてピエゾ抵抗体を挙げているが、センサ素子として、圧電素子等を用いることとしてもよい。
【0048】
(e)上記実施形態において、セラミックヒータ5は、丸棒状、すなわち、断面円形状とされているが、必ずしも断面円形状である必要はなく、例えば、断面楕円形状や断面長円形状、断面多角形状であってもよい。また、板状の基体を複数形成し、その間に発熱素子を挟み込んだいわゆる板状ヒータに、本発明の技術思想を適用することとしてもよい。
【0049】
(f)可動部材19は、軸線CL1方向に沿って変形可能であればよく、その形状は、特に限定されるものではない。従って、例えば、可動部材として、軸線CL1方向に沿って延びる蛇腹状の筒状部を備えたものを用いることとしてもよい。また、軸線CL1と交差する方向に延び、軸線CL1方向に撓み変形可能な環状部材を用いることとしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…グロープラグ(圧力センサ付きグロープラグ)、2…ハウジング、5…セラミックヒータ、6…圧力センサ、7…軸孔、12…基体、13…発熱素子、18…電極取出部、19…可動部材(被溶接部材)、20…外筒(固定部材)、21…伝達部材(被溶接部材)、22…リング部材(固定部材)、CL1…軸線。