特許第6166095号(P6166095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6166095-土嚢状土木資材 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166095
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】土嚢状土木資材
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/04 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   E02B3/04 301
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-97701(P2013-97701)
(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-218810(P2014-218810A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】513112326
【氏名又は名称】株式会社九コン
(73)【特許権者】
【識別番号】504038284
【氏名又は名称】納冨 啓一
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】納冨 啓一
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−172679(JP,A)
【文献】 特開平07−166551(JP,A)
【文献】 特開2002−054117(JP,A)
【文献】 実開平07−012543(JP,U)
【文献】 特開平08−068060(JP,A)
【文献】 米国特許第03922832(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04〜 3/14
E02D 17/00〜 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋に中込材を詰めた土嚢状の土木資材であって、
前記袋が通水性を有しない袋本体に通水性を有する窓を形成するとともに窓に使用時に剥離される通水性を有しないカバーを着脱自在に設けられており、前記中込材に水硬性を有する粒子が含まれ、前記中込材に吸水性及び導水性を有する繊維状材料を添加したことを特徴とする土嚢状土木資材。
【請求項2】
前記中込材が水分と反応することで、重量が増大することを特徴とする請求項1に記載の土嚢状土木資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋に中込材を詰めた土嚢状の土木資材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、土木資材として、麻袋の中に土砂を詰め込んだ土嚢が土木現場などで広く利用されている。
【0003】
この土嚢は、雨水の浸入や土砂崩れなどを防止するために積み上げられて使用されるものであり、緊急時等に一時的に使用されるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−243042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の土木資材としての土嚢は、麻袋に土砂を詰め込んだ構成となっているために、変形が容易である程度の重量があることから、一時的に積み上げて暫定的に使用するには適したものであった。
【0006】
しかしながら、従来の土嚢は、長期間にわたって使用すると経時的に変形が進むことから、長期間にわたって恒久的に使用するには適していなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1に係る本発明では、袋に中込材を詰めた土嚢状の土木資材であって、前記袋が通水性を有しない袋本体に通水性を有する窓を形成するとともに窓に使用時に剥離される通水性を有しないカバーを着脱自在に設けられており、前記中込材に水硬性を有する粒子が含まれ、前記中込材に吸水性及び導水性を有する繊維状材料を添加することにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記中込材が水分と反応することで、重量が増大することにした。
【発明の効果】
【0011】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0012】
すなわち、本発明では、袋に中込材を詰めた土嚢状の土木資材において、袋が一部又は全部に通水性を有し、中込材に水硬性を有する粒子を含めることにしているために、設置後の自然な通水によって固化させることができ、長期間にわたって使用しても変形することがなくなり、恒久的に使用することができる。
【0013】
特に、中込材に繊維状材料を添加した場合には、固化する際に水分を内部に良好に導くことができるとともに、固化した際の強度を増大させることができる。
【0014】
また、中込材が水分と反応することで重量が増大する場合には、使用前の運搬作業や積み上げ作業を容易なものとすることができる。
【0015】
さらに、袋の通水性を有する部分を通水性を有しない素材で着脱自在に被覆した場合には、使用前に長期間にわたって備蓄しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る土嚢状土木資材を示す正面図。
図2】同側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る土嚢状土木資材の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、本発明に係る土嚢状土木資材1は、従来の土嚢と同様に上部に開口を有する袋2の内部に中込材3を詰め込んで、上部の開口4をミシンや溶着等で封止したものであり、外観上の形態は従来の土嚢と類似している。
【0019】
しかしながら、本発明に係る土嚢状土木資材1では、従来の土嚢とは異なり、袋2の内部に詰め込まれた中込材3が、土砂ではなく、セメント等の水硬性を有する粒子を含んでいる。
【0020】
袋2は、一部又は全部に通水性を有している。すなわち、袋2が麻袋等のように織成された袋で、全部に通水性を有しているものでもよく、また、図1及び図2に示すように、ビニール袋等のように通水性を有していない素材で形成した袋本体5に矩形貫通状の窓6を形成し、窓6に網7を袋本体5の内側から張設(貼着)して、一部に通水性を有するように構成したものでもよい。
【0021】
袋2の内部に詰め込む中込材3は、水分と反応して硬化(固化)する水硬性を有する物質の粒子を含有させている。たとえば、中込材3として、粉末状のスラグ100重量部と粉末状のセメント30重量部との混合物を袋2の内部に詰め込んでいる。なお、袋2の内部には、重金属の流出を防止するために重金属固化材を添加してもよく、スサやセルロースなどの繊維状材料や有機材料を添加してもよく、さらには、使用済みの土嚢状土木資材1で固化した中込材3を破砕又は粉砕したものを骨材や増量材として添加してもよい。なお、中込材3としては、0.01μm以上0.5mm以下の粒体であって0.5μm以下の微粒子を5重量%以上含まれているものを用いている。
【0022】
袋2の内部にスラグとセメントを詰め込んだ場合には、100重量部〜500重量部の水と反応することで固化し、重量が倍以上に増大する。
【0023】
本発明に係る土嚢状土木資材1は、袋2と水硬性を有する粒子を含んだ中込材3を設置現場にそれぞれ運搬し、設置現場において袋2の内部に中込材3を詰め込み、袋2の開口4を紐等で結んでから、所定位置に設置していってもよく、予め袋2に水硬性を有する粒子を含んだ中込材3を詰め込んで開口4を風刺した状態の物(完成品)を設置現場に運搬してもよい。
【0024】
完成品は、保管できるようにするために、袋2の通水性を有する部分を通水性を有しない素材で着脱自在に被覆しておき、通水性を有しない素材を剥離して使用するようにしてもよい。たとえば、図1及び図2に示すように、通水性を有しない袋本体5に形成した窓6に、ビニール等の通水性を有しない素材からなるカバー8を袋本体5の外側から着脱自在に張設(貼着)する。これにより。保管時には、袋2の通水性を有する部分(窓6)を通水性を有しないカバー8で被覆することで、袋2の全体の通水性を有していない状態となり、袋2の内部に水分が浸入するのを防止し、使用時には、カバー8を剥離することで、袋2の通水部(窓6)から水分が内部に浸入して中込材3が硬化する。
【0025】
なお、袋2は、麻袋等の通水性を有する内側の袋をビニール袋等の通水性を有しない外側の袋で完全に被覆してもよく、複数個の通水性を有する袋2をシート状のビニール等の通水性を有しない素材で包装してもよい。
【0026】
以上に説明したように、上記土嚢状土木資材1は、袋2に中込材3を詰めた土嚢状の土木資材であり、袋2が一部又は全部に通水性を有し、中込材3に水硬性を有する粒子を含めることにしたものである。
【0027】
そのため、上記土嚢状土木資材1は、設置後の自然な通水や強制的な通水によって袋2の内部の中込材3を硬化(固化)させることができ、長期間にわたって使用しても変形することがなく、恒久的に使用することができる。
【0028】
また、上記土嚢状土木資材1では、中込材3に吸水性及び導水性を有する繊維状材料を添加している。
【0029】
そのため、上記土嚢状土木資材1では、中込材3に含有された繊維状材料によって、固化する際に水分を内部に良好に導くことができ、袋2の内部の中込材3を均一に硬化(固化)させることができるとともに、水の分散が適当となるために水和反応の速度や固化反応による内部ストレスの発生を抑制することができてクラックの発生がなく、固化した際の強度を増大させることができる。
【0030】
また、上記土嚢状土木資材1では、中込材3が水分と反応して水和体を生成することで重量が増大するようにしている。
【0031】
そのため、上記土嚢状土木資材1では、使用前(硬化前)においては重量が軽く、使用前の運搬作業や積み上げ作業を容易なものとすることができる。
【0032】
さらに、上記土嚢状土木資材1では、袋2の通水性を有する部分を通水性を有しない素材で着脱自在に被覆している。
【0033】
そのため、上記土嚢状土木資材1では、袋2の内部に水分が浸入するのを防止することができ、使用前に長期間にわたって備蓄しておくことができる。
【0034】
また、上記土嚢状土木資材1は、袋体で外装の自由性があると同時に不必要な強度を要しないために、積み上げ時に必要に応じて差筋等ができる。
【0035】
また、上記土嚢状土木資材1は、袋2を自然素材(麻や綿など)とすることで積石と同様の排水性を有することから、壁内側からの自然な排水が可能となる。特に、長期間後に袋2が自然に分解されて石積状態となる。
【0036】
さらに、従来の土嚢を仮設した場合には土嚢袋が劣化してしまい除去作業を円滑に行うことができないのに対して、上記土嚢状土木資材1は、内部の中込材が安定した固化体となっている上に積み上げた土嚢状土木資材同士が相互に接合されていないために、各土嚢状土木資材1を取外すことができるとともに、必要に応じてクラッシャー等で破砕することで砕石の代用品や次の土嚢状土木資材1の混合材として再利用することができ、ビニール混じりの残土として処理する必要がある従来の土嚢と比較して遥かに使用後のリサイクル性に優れている。
【符号の説明】
【0037】
1 土嚢状土木資材
2 袋
3 中込材
4 開口
5 袋本体
6 窓
7 網
8 カバー
図1
図2