特許第6166103号(P6166103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166103
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】尿素水噴射ノズル
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20170710BHJP
   B05B 7/06 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   F01N3/08 B
   B05B7/06
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-118011(P2013-118011)
(22)【出願日】2013年6月4日
(65)【公開番号】特開2014-234793(P2014-234793A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595055162
【氏名又は名称】一般社団法人日本舶用工業会
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−080437(JP,A)
【文献】 特開2009−041502(JP,A)
【文献】 特開2008−019773(JP,A)
【文献】 特開平09−310660(JP,A)
【文献】 特開昭57−194064(JP,A)
【文献】 特表平11−505168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B05B 7/00 − 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重管、空気ノズル、ナットを具備し、
前記二重管には、尿素水流路と気体流路とが構成され、前記二重管の尿素水と気体とが混合されて霧化され、前記空気ノズルの噴射口から噴射される尿素水噴射ノズルであって、
前記空気ノズルは、略円柱状の部材で、軸心上に噴射口を開口して形成され、
前記空気ノズルと二重管は、外周に螺装されるナットにより接続され、
前記空気ノズルとナットの接続部の間には、前記空気ノズルの外周表面に沿って、尿素水の噴射方向と同一の方向に気体が吐出されるように、前記気体流路に連通した側面吐出口であるスリットが構成され、
前記空気ノズルのスリットの下流側の側面表面は、前記噴射口に近接するにつれて、距離が徐々に短くなる砲弾状の表面が形成され、
前記噴射口を囲むように、前記噴射口を中心とする直径の範囲内に、一定の傾斜角の斜面を有する略円錐台状の表面が形成される
ことを特徴とする尿素水噴射ノズル。
【請求項2】
前記空気ノズルの表面には、撥水コーティング層が形成され、前記撥水コーティング層は、セラミックコーティング層であることを特徴とする請求項1に記載の尿素水噴射ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素水噴射ノズルに関する。特に、船舶用の排気浄化装置における尿素水噴射ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関から排出される排気に含まれるNOx(窒素酸化物)を低減させるために、排気管の内部に選択還元型のNOx触媒(DCR触媒)を配設し、アンモニアを還元剤として、NOxを窒素と水とに還元する排気浄化装置が知られている。排気管の内部に配置される尿素水噴射ノズルから尿素水を排気中に供給し、排気の熱によって尿素水からアンモニアを生成することでNOxを窒素と水に還元するものである。
【0003】
このような排気浄化装置においては、尿素水噴射ノズルの表面に残留している尿素水の水分が、排気の熱によって蒸発することで尿素が析出および成長し、排気管が閉塞されてしまう問題があった。そこで、尿素水噴射ノズルの先端に撥水コーティング層を形成して、尿素水噴射ノズルの表面に尿素水が付着し難くしたものが公知である。例えば特許文献1のごとくである。
【0004】
しかし、特許文献1に記載されているノズルは、尿素水をノズルの先端から積極的に除去するものではない。このため、ノズルの向きやノズルの形状によっては、尿素水がノズルの表面に残留して尿素の析出および成長を効果的に防止できない点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−41502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、係る課題を鑑みてなされたものであり、尿素水噴射ノズルにおける尿素の析出および成長を抑制することができる尿素水噴射ノズルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は、以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
請求項1においては、二重管、空気ノズル、ナットを具備し、前記二重管には、尿素水流路と気体流路とが構成され、前記二重管の尿素水と気体とが混合されて霧化され、前記空気ノズルの噴射口から噴射される尿素水噴射ノズルであって、前記空気ノズルは、略円柱状の部材で、軸心上に噴射口を開口して形成され、前記空気ノズルと二重管は、外周に螺装されるナットにより接続され、前記空気ノズルとナットの接続部の間には、前記空気ノズルの外周表面に沿って、尿素水の噴射方向と同一の方向に気体が吐出されるように、前記気体流路に連通した側面吐出口であるスリットが構成され、前記空気ノズルのスリットの下流側の側面表面は、前記噴射口に近接するにつれて、距離が徐々に短くなる砲弾状の表面が形成され、前記噴射口を囲むように、前記噴射口を中心とする直径の範囲内に、一定の傾斜角の斜面を有する略円錐台状の表面が形成されるものである。
【0009】
請求項2においては、前記空気ノズルの表面には、撥水コーティング層が形成され、前記撥水コーティング層は、セラミックコーティング層である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
本願に係る発明によれば、ノズル先端の撥水効果と、ノズル表面にそって吐出される気体の吐出力を利用して、尿素水噴射ノズルの側面に付着した尿素水が容易に除去される。
これにより、尿素水噴射ノズルにおける尿素の析出および成長を抑制することができる。
【0012】
本願に係る発明によれば、尿素水噴射ノズルの噴射口近傍に斜面が形成されるので噴射口の近傍に付着した尿素水が、容易に除去される。
これにより、尿素水噴射ノズルにおける尿素の析出および成長を抑制することができる。
【0013】
本願に係る発明によれば、高温の排気中でも撥水効果が維持される。
これにより、尿素水噴射ノズルにおける尿素の析出および成長を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置の構成を示す図。
図2】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置の尿素水噴射ノズルを示す一部断面図。
図3】(a)図2における尿素水噴射ノズルの先端部を示す側面視拡大図(b)図3(a)における尿素水噴射ノズルのA矢視図。
図4】(a)本発明の一実施形態に係る排気浄化装置の尿素水噴射ノズルから尿素水を排気管の内部に供給している状態を示す断面図(b)図4(a)における尿素水噴射ノズルのB矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図1および図2を用いて、本発明の一実施形態に係る舶用エンジンの排気浄化装置100について説明する。なお、本実施形態における「上流側」とは流体の流れ方向における上流側を示し、「下流側」とは流体の流れ方向における下流側を示す。本実施形態において、一のエンジン(例えば、舶用エンジンにおける主機もしくは補機)に対して排気浄化装置100を設ける構成としているがこれに限定されるものでない。複数のエンジン(例えば、舶用エンジンにおける補機)が設置されている場合において、複数のエンジンからの排気をまとめて一の排気浄化装置で浄化する構成や、エンジン毎に排気浄化装置を設ける構成でもよい。
【0016】
始めに、エンジン20の排気管21について説明する。図1に示すように、排気管21は、エンジン20からの排気を外部(大気)に排出するものである。排気管21には、排気浄化装置100が設けられている。また、排気管21には、排気浄化装置100の上流側に分岐管21aと排気の通過経路を切り替える排気切替弁21b・21cとが設けられている。分岐管21aは、排気管21に接続されている。排気切替弁21bは、排気浄化装置100の上流側であって分岐管21aの下流側の排気管21の内部に配置されている。排気切替弁21cは、分岐管21aの内部に配置されている。
【0017】
排気切替弁21b・21cは、互いに連動して開閉可能に構成されている。具体的には、排気切替弁21b・21cは、排気切替弁21bが開状態のときに排気切替弁21cを閉状態になり、排気切替弁21bが閉状態のときに排気切替弁21cを開状態になるように構成される。これにより、排気切替弁21bが開状態かつ排気切替弁21cが閉状態の場合、排気管21は、排気が排気浄化装置100に供給される経路を構成する(図1の状態)。一方、排気切替弁21bが閉状態、かつ排気切替弁21cが開状態の場合、排気管21は、排気が排気浄化装置100で浄化されずに分岐管21aを通じて外部(大気)に放出される経路を構成する。
【0018】
また、別実施形態として、分岐管21aの接続部分に排気管21と分岐管21aとのいずれか一方を選択的に閉状態にする排気切替弁を分岐管21aの接続部分に設ける構成としてもよい。分岐管21aが閉状態の場合、排気管21は、排気が排気浄化装置100に供給される経路を構成する。一方、排気管21が閉状態の場合、排気管21は、排気が排気浄化装置100で浄化されずに分岐管21aを通じて外部(大気)に放出される経路を構成する。
【0019】
次に、排気浄化装置100について説明する。排気浄化装置100は、エンジン20からの排気を浄化するものである。排気浄化装置100は、尿素水噴射ノズル1、加圧空気供給ポンプ(コンプレッサ)6、加圧空気弁8、尿素水供給ポンプ9、切替弁11、NOx検出部12、制御部13、第一供給流路14、第二供給流路15、NOx触媒18等を具備する。
【0020】
尿素水噴射ノズル1は、尿素水を排気管21の内部に供給するものである。尿素水噴射ノズル1は、排気管21において排気切替弁21bの下流側に設けられる。尿素水噴射ノズル1は、管状部材から構成され、その一側(下流側)を排気管21の外部から内部へ挿通するようにして設けられる。この尿素水噴射ノズル1は、二重管2、液ノズル3、空気ノズル4、ナット5等を具備する(図2参照)。
【0021】
加圧空気供給ポンプ(コンプレッサ)6は、加圧空気をエアタンク7に供給するものである。加圧空気供給ポンプ6は、空気を加圧(圧縮)して供給する。加圧空気供給ポンプ6は、エアタンク7の圧力が所定の圧力を下回った場合、空気をエアタンク7に供給し、エアタンク7の圧力が所定の圧力に達すると停止する。
【0022】
加圧空気弁8は、加圧空気の流路を連通または遮断するものである。加圧空気弁8は、第二供給流路15に設けられる。加圧空気弁8は、スプールを摺動させることにより位置Vおよび位置Wに切り換えることが可能である。加圧空気弁8は、スプールが位置Vの状態にある場合、第二供給流路15は遮断される。従って、尿素水噴射ノズル1には、加圧空気が供給されない。加圧空気弁8は、スプールが位置Wの状態にある場合、第二供給流路15は連通される。従って、尿素水噴射ノズル1には、加圧空気が供給される。
【0023】
尿素水供給ポンプ9は、尿素水噴射ノズル1に尿素水を供給するものである。尿素水供給ポンプ9は、第一供給流路14に設けられる。尿素水供給ポンプ9は、尿素水タンク10内の尿素水を所定の流量で第一供給流路14を介して尿素水噴射ノズル1に供給する。
【0024】
切替弁11は、尿素水の流路を切り替えるものである。切替弁11は、第一供給流路14の尿素水供給ポンプ9の下流側に設けられる。切替弁11には、ドレンポット16が流路15aを介して接続されている。切替弁11は、スプールを摺動させることにより位置Xおよび位置Yに切り換えることが可能である。切替弁11は、スプールが位置Xの状態にある場合、第一供給流路14は遮断され、尿素水噴射ノズル1とドレンポット16とが連通される。切替弁11は、スプールが位置Yの状態にある場合、第一供給流路14は連通される。従って、尿素水噴射ノズル1には、尿素水が供給される。
【0025】
NOx検出部12は、エンジン20の排気に含まれるNOx排出量を検出するものである。NOx検出部12は、NOxセンサ等から構成され、排気管21の途中部であってNOx触媒18よりも上流側に配置される。
【0026】
制御部13は、尿素水供給ポンプ9、切替弁11、加圧空気弁8、排気切替弁21b・21c等を制御する。制御部13には、尿素水供給ポンプ9、切替弁11、加圧空気弁8、排気切替弁21b・21c等を制御するための種々のプログラムやデータおよび排気の規制海域マップM1が格納される。制御部13は、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLDI等からなる構成であってもよい。また、制御部13は、エンジン20を制御するECU22と一体的に構成することも可能である。
【0027】
制御部13は、ECU22、加圧空気弁8、尿素水供給ポンプ9、切替弁11および排気切替弁21b・21cにそれぞれ接続される。また、制御部13は、GPS(全地球測位システム)装置23に接続される。
【0028】
制御部13は、ECU22からエンジン20に関する各種情報をそれぞれ取得することが可能である。制御部13は、NOx検出部12と接続され、NOx検出部12が検出するNOx排出量を取得することが可能である。制御部13は、GPS(全地球測位システム)装置23に接続され、GPS装置23が検出した排気浄化装置100の現在位置を取得することが可能である。また、制御部13は、加圧空気弁8、尿素水供給ポンプ9、切替弁11および排気切替弁21b・21cをそれぞれ制御することが可能である。
【0029】
NOx触媒18は、NOxの還元反応を促進させるものである。NOx触媒18は排気管21の内部であって、尿素水噴射ノズル1よりも下流側に配置される。NOx触媒18は、尿素水が熱・加水分解されて生成されるアンモニアが排気に含まれるNOxを窒素と水とに還元する反応を促進させる。
【0030】
このように構成される排気浄化装置100において、例えば船舶に搭載されている場合、制御装置13は、GPS装置23が検出した現在位置を取得し、規制海域マップM1から現在位置が排気の規制海域であるか否か判断する。制御装置13は、現在位置が排気の規制海域であると判断した場合、排気切替弁21bを開状態かつ排気切替弁21cを閉状態に制御する。すなわち、排気は、排気浄化装置100によって浄化された後に外部へ排出される。制御装置13は、現在位置が排気の規制海域でないと判断した場合、排気切替弁21bを閉状態かつ排気切替弁21cを開状態に制御する。すなわち、排気は、排気浄化装置で浄化されずに分岐管21aを通じて外部へ排出される。なお、制御装置13は、手動による排気切替弁21b・21cの開閉信号を取得し、開閉信号に従って排気切替弁21b・21cを制御することも可能である。
【0031】
次に、図2および図3を用いて、内部混合式の尿素水噴射ノズル1について具体的に説明する。なお、尿素水噴射ノズル1の方式は、本実施形態に限定されるものではなく、外部混合式の尿素噴射ノズルでもよい。
【0032】
図2に示すように、尿素水噴射ノズル1は、二重管2、液ノズル3、空気ノズル4、ナット5を具備する。
【0033】
二重管2は、尿素水噴射ノズル1の主たる構成部材であり、尿素水の流路と加圧空気の流路とを構成する。二重管2は、下流側が排気管21の内部に位置し、上流側が排気管21の外部に位置するように配置される。二重管2の下流側端部は、排気管21の内部に配置されるNOx触媒18の上流側に配置される。
【0034】
二重管2は、外管2bと、外管2bの内部に配置される内管2aとから構成される。内管2aには、尿素水の流路である尿素水流路2cが構成される。内管2aと外管2bとの隙間には、加圧空気の流路である気体流路2dが構成される。外管2bの外側の途中部には、排気管21と水密的に接続可能な図示しない接続部が構成される。内管2aの下流側端部および外管2bの下流側端部には、雌ネジ部2eおよび雄ネジ部2fが形成される。二重管2の上流側端部には、尿素水流路2cと連通される尿素水供給ポート2gと、気体流路2dと連通される気体供給ポート2hとが構成される。
【0035】
液ノズル3は、尿素水が噴射されるものである。液ノズル3は、略円筒状の部材から形成され、二重管2の下流側に配置される。液ノズル3の下流側端部は軸心部を中心として略円錐状に形成される。下流側端部の中心部には、略円柱状の凸部3aが軸方向に突出して形成される。液ノズル3の上流側端部には、雄ネジ部3bが軸方向に突出するように形成される。さらに、液ノズル3の軸心部には、尿素水流路3cが雄ネジ部3bから凸部3aまで液ノズル3全体を軸方向に貫通するように形成される。この尿素水流路3cは、途中部で下流側に向けて縮径され、尿素水流路3cの下流側端部の内径が尿素水流路3cの上流側端部の内径より小さくなるように形成される。
【0036】
液ノズル3は、雄ネジ部3bが二重管2の雌ネジ部2eに螺合される。これにより、二重管2と液ノズル3とが接続されて、尿素水流路3cと二重管2の尿素水流路2cとが連通される。こうして、尿素水流路3cに、二重管2の尿素水流路2cから尿素水が供給可能に構成される。
【0037】
空気ノズル4は、霧化された尿素水が噴射されるものである。空気ノズル4は略円柱状の部材から形成される。空気ノズル4は、上流側端が二重管2の下流側端部に当接するようにして液ノズル3の下流側に配置される。空気ノズル4の軸心部には、途中部で下流側に向かって縮径する略円錐状の縮径部を有する孔が、上流側端から下流側端に向けて、貫通するように形成される。孔の上流側端部は、液ノズル3の下流側端部を挿入しても圧縮空気が通過可能な空間が構成される程度の内径に形成される。縮径部の縮径側端の軸心部には、尿素水の混合流路4dが形成される。そして、空気ノズル4の下流側端部には、混合流路4dの開口部である噴射口4fが形成される。
【0038】
空気ノズル4の上流側端部の側面には、つば部4aが形成される。空気ノズル4の下流側は、噴射口4fを頂点とする略砲弾状に形成される。具体的には、図3に示すように、空気ノズル4の下流側の側面(表面)は、噴射口4fから側面視(空気ノズル4の軸線Cの側面方向)での所定の範囲L内において、噴射口4fに近接するにつれて混合流路4dからの距離が短くなる曲面からなる表面4bが形成される。さらに、空気ノズル4は、正面視(空気ノズル4の軸線C方向)での噴射口4fを中心とする所定の範囲D内において、表面4cが形成される。表面4cは、空気ノズル4の側面視での所定の範囲D内の輪郭線が軸線Cに対して一定の角度θになるように形成される。つまり、空気ノズル4の下流側は、噴射口4fを中心とした略円錐台状に形成される。これにより、空気ノズル4は、噴射口4fに隣接して囲むように一定の傾斜角θの斜面を有する。
【0039】
空気ノズル4の表面4bおよび表面4cには、撥水コーティング層4hが形成されている。撥水コーティング層4hは、液体である尿素水の付着を抑制するものである。撥水コーティング層4hは、300℃から350℃程度の排気温度中でも使用可能なセラミックコーティング層から構成される。排気温度は、エンジン20の負荷状態によって大きく変動する。従って、撥水コーティング層4hは、耐熱温度が250℃程度の一般的な耐熱性コーティングであるフッ素コーティングよりも耐熱性の高いセラミックコーティング層が適している。これにより、空気ノズル4は、容易に表面から尿素水を除去することができる。
【0040】
図2に示すように、空気ノズル4は、ナット5により二重管2に接続される。空気ノズル4の上流側の孔には、液ノズル3の下流側端部が挿入される。この際、空気ノズル4の孔と液ノズル3との間に隙間が形成される。当該隙間は、気体流路4eとして二重管2の気体流路2dと混合流路4dとに連通するように構成される。こうして、混合流路4dには、液ノズル3の尿素水流路3cから尿素水が供給され、気体流路4eから加圧空気が供給される。つまり、空気ノズル4は、二重管2に螺合されることで、噴射口4fから尿素水が噴射可能に構成される。
【0041】
空気ノズル4には、その側面から空気ノズル4の孔に連通するように一以上の分岐流路4gが形成される。つまり、分岐流路4gは、空気ノズル4の側面から気体流路4eに連通するように形成される。気体流路4eに加圧空気が供給されると分岐流路4gを介して空気ノズル4の側面に加圧空気の一部が吐出される。分岐流路4gは、空気ノズル4の側面に吐出させる加圧空気の量に応じて、分岐流路4gの数や、流路内径が決定される。
【0042】
ナット5は、二重管2と空気ノズル4とを締結する。ナット5の内径には、空気ノズル4のつば部4aに係合される段付部5aが形成される。段付部5aの上流側は、二重管2の雄ネジ部2fに螺合される雌ネジ部5bが形成される。段付部5aの下流側は、空気ノズル4が隙間無く挿入可能な程度の内径に形成される。また、段付部5aの下流側であって、空気ノズル4の分岐流路4gに対向する部分に拡径部が形成される。当該拡径部の下流側は、空気ノズル4の外径よりもわずかに大きい内径に形成される。
【0043】
ナット5は、空気ノズル4のつば部4aに段付部5aが係合するようにして二重管2の雄ネジ部2fに雌ネジ部5bを螺合して固定される。これにより、空気ノズル4の上流側端部が二重管2の下流側端部に密接して固定される。この際、ナット5の拡径部と空気ノズル4の側面とから気体が滞留する空間5cが構成される。これにより、空間5cは、空気ノズル4の分岐流路4gを介して加圧空気が供給可能に構成される。
【0044】
図2および図3に示すように、空間5cよりも下流側のナット5と空気ノズル4との間には、スリット5dが構成される。つまり、スリット5dは、空気ノズル4を囲むようにして側面に沿って構成される。さらに、スリット5dは、空間5cに連通されている。すなわち、空間5cに供給される加圧空気は、スリット5dから空気ノズル4の側面にそって尿素水の噴射方向と同一の方向である空間5cの下流側にむけて、加圧空気が吐出可能に構成される。このようにして、空気ノズル4の側面には、加圧空気が吐出される側面吐出口であるスリット5dが構成される。
【0045】
以上より、尿素水噴射ノズル1は、一側(下流側)端部に尿素水を噴射する液ノズル3、および空気ノズル4を具備し、NOx触媒18に向けて尿素水を噴射するように構成される。なお、尿素水噴射ノズル1の構成は、本実施形態において、液ノズル3と空気ノズル4とから尿素水流路3c、気体流路4e、および混合流路4dを構成しているが、特に限定するものではなく、尿素水流路3c、気体流路4e、および混合流路4dがそれぞれ構成されていればよい。
【0046】
以下では、図1図2、および図4を用いて、尿素水噴射ノズル1の動作態様について説明する。
【0047】
図1に示すように、排気管21の内部に尿素水の供給(噴射)が開始される場合、制御部13が切替弁11を位置Yとすることによって、尿素水が尿素水噴射ノズル1(二重管2)の尿素水供給ポート2gに供給される。図2、および図4(a)に示すように、尿素水は、図4(a)における黒塗り矢印の如く、所定の圧力で二重管2の尿素水流路2c、および液ノズル3の尿素水流路3cを介して、液ノズル3の凸部3aから空気ノズル4の混合流路4dに噴射される。
【0048】
この状態で、図1に示すように、制御部13が加圧空気弁8を位置Wとすることによって、加圧空気が尿素水噴射ノズル1(二重管2)の気体供給ポート2hに供給される。図2、および図4(a)に示すように、加圧空気は、図4(a)における白抜き矢印の如く、所定の圧力で二重管2の気体流路2d、空気ノズル4の気体流路4eを介して、空気ノズル4の混合流路4dに噴射される。この結果、尿素水は、空気ノズル4の混合流路4dの内部で加圧空気と衝突して霧化され、空気ノズル4の噴射口4fから噴射される。
【0049】
空気ノズル4の気体流路4eに供給された加圧空気の一部は、分岐流路4gを介して空間5cに供給される。空間5cに供給された加圧空気は、均一な圧力でスリット5dから空気ノズル4の下流側(噴射口4f側)に向けて吐出される。スリット5dから吐出された加圧空気は、その粘性によって空気ノズル4の側面にそって空気ノズル4を包み込むように進む。加圧空気は、砲弾状に形成されている空気ノズル4の側面である表面4bと表面4cとにそってその表面上を進むことで噴射口4fに到達する。これにより、噴射口4fから噴射された尿素水が空気ノズル4の表面4bと表面4cとに近づいてきても加圧空気によって吹き飛ばされる。また、空気ノズル4の表面4bと表面4cとに付着した尿素水は、撥水コーティング層4hの効果により加圧空気によって容易に吹き飛ばされる。
【0050】
図1に示すように、排気管21の内部への尿素水の供給(噴射)が停止される場合、制御部13が切替弁11のポジションを位置Xとすることによって、尿素水噴射ノズル1(二重管2)の尿素水供給ポート2gへの尿素水の供給が停止される。これに伴い、二重管2の尿素水供給ポート2gは、第一供給流路14、切替弁11、を介して大気開放される。空気ノズル4は、スリット5dからの加圧空気が停止した後に尿素水がその表面に付着しても、表面4bと表面4cと形成された撥水コーティング層4hの効果によりその表面から流れ落ちて尿素水の付着が抑制される。
【0051】
また、空気ノズル4の噴射口4fが上方に向くように尿素水噴射ノズル1が配置されている場合、空気ノズル4は、噴射口4fの周囲に尿素水が付着しても、表面4bと表面4cと形成された撥水コーティング層4hの効果に加え、噴射口4fを囲むようにして形成された表面4cの傾斜によって下方に流れ落ちて尿素水の付着が抑制される。
【0052】
以上のごとく、空気ノズル4先端の撥水効果と空気ノズル4の表面4bと表面4cとにそって吐出される気体である加圧空気の吐出力を利用して、尿素水噴射ノズル1の側面(表面)に付着した尿素水が容易に除去される。これにより、空気ノズル4における尿素の析出および成長を抑制することができる。
【0053】
また、尿素水噴射ノズル1の噴射口4fの近傍に斜面を有する表面4cが形成されるので噴射口4fの近傍に付着した尿素水が容易に除去される。これにより、空気ノズル4における尿素の析出および成長を抑制することができる。
【0054】
また、高温の排気中に配置されても撥水効果を維持することが出来る。これにより、空気ノズル4における尿素の析出および成長を抑制することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 尿素水噴射ノズル
2c 尿素水流路
3c 尿素水流路
2d 気体流路
4b 表面
4c 表面
4d 混合流路
4e 気体流路
4f 噴射口
5d スリット
図1
図2
図3
図4