特許第6166111号(P6166111)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166111
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】変速機のシフト操作装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   B60K20/02 A
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-129746(P2013-129746)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-3614(P2015-3614A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年7月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591050970
【氏名又は名称】津田工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000243700
【氏名又は名称】万能工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】奥本 隆一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 康則
(72)【発明者】
【氏名】西川 尚孝
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−131305(JP,A)
【文献】 特開平11−108045(JP,A)
【文献】 特開昭63−140107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレバーの基端部に設けられた外球面と、その外球面を受ける内球面シートが内部に設けられた筒形状の軸受部材と、その軸受部材が取り付けられる取付穴が形成されたベース部材と、を備える変速機のシフト操作装置において、
前記軸受部材は、複数のピースによって形成されており、
前記複数のピースにおける各ピース外面からは、同ピースの下端側を固定端とし、同ピースの上端側を自由端とする爪部が、同ピースに対して径方向に弾性変位可能に突出され、前記取付穴に対する前記軸受部材の固定が前記爪部により行われる
ことを特徴とする変速機のシフト操作装置。
【請求項2】
シフトレバーの基端部に設けられた外球面と、その外球面を受ける内球面シートが内部に設けられた筒形状の軸受部材と、その軸受部材が取り付けられる取付穴が形成されたベース部材と、を備える変速機のシフト操作装置において、
前記軸受部材は、複数のピースによって形成されており、
前記複数のピースにおける各ピース外面からは、同ピースの下端側を固定端とし、同ピースの上端側を自由端とする爪部が、同ピースに対して径方向に弾性変位可能に突出され、
前記爪部には、前記軸受部材の外周方向において前記ベース部材と当接するプレロード用当接部が設けられ、
前記プレロード用当接部における前記ベース部材との当接を通じて前記爪部が前記軸受部材の内周側に撓んだ状態で同軸受部材が前記取付穴に固定されてなる
ことを特徴とする変速機のシフト操作装置。
【請求項3】
前記爪部には、前記取付穴からの前記軸受部材の脱離方向において前記ベース部材と当接する抜け止め用当接部が設けられる
請求項2に記載の変速機のシフト操作装置。
【請求項4】
前記抜け止め用当接部は、前記プレロード用当接部に隣接して設けられる
請求項3に記載の変速機のシフト操作装置。
【請求項5】
前記抜け止め用当接部は、前記プレロード用当接部よりも前記軸受部材の外周側に位置されるとともに、前記プレロード用当接部に対して同軸受部材の径方向に弾性変位可能に設けられる
請求項3又は4に記載の変速機のシフト操作装置。
【請求項6】
前記シフトレバーの基端部の外球面には突起が形成されており
記軸受部材を形成するための複数のピースのうち、前記突起に対応して位置するピースには、前記シフトレバーの基端部を前記軸受部材の内球面シートに挿入する際の同突起との干渉を防止する逃げ部が形成されている
請求項1〜5のいずれか一項に記載の変速機のシフト操作装置。
【請求項7】
前記複数の爪部は、前記軸受部材の周方向について均等に位置しており、且つ、前記取付穴からの前記軸受部材の脱離方向において前記ベース部材と当接する抜け止め用当接部を備えている
請求項1〜6のいずれか一項に記載の変速機のシフト操作装置。
【請求項8】
前記軸受部材は、その周方向に並ぶ複数の第1ピース、及び、隣合う第1ピースの間に位置する一つの第2ピースによって形成されており、
前記複数の第1ピース及び前記一つの第2ピースにはそれぞれ前記爪部が少なくとも一つ形成されており、
前記複数の第1ピースにそれぞれ形成された爪部は、前記軸受部材の周方向について均等に位置し、且つ、前記取付穴からの前記軸受部材の脱離方向において前記ベース部材と当接する抜け止め用当接部を備えている
請求項6又は7記載の変速機のシフト操作装置。
【請求項9】
前記軸受部材の側周の外殻における前記取付穴の中心線方向についての一端に、その取付穴に対し締まり嵌めされる嵌合部が設けられている
請求項1〜8のいずれか一項に記載の変速機のシフト操作装置。
【請求項10】
前記軸受部材は、その周方向に並ぶ複数のピースを組み合わせることによって形成されており、
前記ベース部材の取付穴の内周面における前記複数のピースの境界に対応する部分には、同取付穴の中心線方向に延びるリブが形成されており、
前記ピースと前記リブとの当接面は、そのピースが内球面シートの中心から離間する方向に対し平行に形成されている
請求項1〜9のいずれか一項に記載の変速機のシフト操作装置。
【請求項11】
前記シフトレバーの基端部の外球面には突起が形成されており、
前記軸受部材には、前記シフトレバーの基端部を前記軸受部材の内球面シートに挿入する際の前記突起との干渉を防止する逃げ部が形成され、且つ、前記逃げ部の上方を覆うカバーが形成されている
請求項1〜10のいずれか一項に記載の変速機のシフト操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機のシフト操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に見られるような、球面滑り軸受によりシフトレバーを傾動可能に支持した構成の変速機のシフト操作装置が知られている。
図14に、こうした従来の変速機のシフト操作装置の構成を示す。同図に示すように、シフトレバー50の基端部分には、球形のボールスタッド51が設けられている。そして、このボールスタッド51の外球面を、軸受部材であるシートソケット52の内部に設けられた内球面シート53で受けることで、シフトレバー50が傾動可能に支持されている。なお、シートソケット52は、車両のフロア等に固定される、当該シフト操作装置のベース部材であるベースプレート54に形成された取付穴55に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−131305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした従来のシフト操作装置において、ベースプレート54に対するシートソケット52のがたつきを抑えるには、取付穴55に対してシートソケット52を強固に締め付け固定する必要がある。しかしながら、そうした場合には、シートソケット52には、周囲から常時押圧が加えられるようになり、その押圧が内球面シート53に伝わって、内球面シート53とボールスタッド51との摺動抵抗が増大してしまう。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、摺動抵抗の増大を抑えつつ、シフトレバー軸受部のがたつきを抑えることのできる変速機のシフト操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する変速機のシフト操作装置は、シフトレバーの基端部に設けられた外球面と、その外球面を受ける内球面シートが内部に設けられた筒形状の軸受部材と、その軸受部材が取り付けられる取付穴が形成されたベース部材と、を備える変速機のシフト操作装置において、前記軸受部材は、複数のピースによって形成されており、前記複数のピースにおける各ピース外面からは、同ピースの下端側を固定端とし、同ピースの上端側を自由端とする爪部が、同ピースに対して径方向に弾性変位可能に突出され、取付穴に対する軸受部材の固定をその爪部により行うようにしている。
【0007】
また、上記課題を解決するもう一つの変速機のシフト操作装置は、シフトレバーの基端部に設けられた外球面と、その外球面を受ける内球面シートが内部に設けられた筒形状の軸受部材と、その軸受部材が取り付けられる取付穴が形成されたベース部材と、を備える変速機のシフト操作装置において、前記軸受部材は、複数のピースによって形成されており、前記複数のピースにおける各ピース外面からは、同ピースの下端側を固定端とし、同ピースの上端側を自由端とする爪部が、同ピースに対して径方向に弾性変位可能に突出され、前記爪部には、前記軸受部材の外周方向において前記ベース部材と当接するプレロード用当接部が設けられ、更に前記プレロード用当接部における前記ベース部材との当接を通じて前記爪部が前記軸受部材の内周側に撓んだ状態で同軸受部材を前記取付穴に固定するようにしている。
【0008】
これらの変速機のシフト操作装置では、取付穴から軸受部材に加えられた締め付け荷重が、爪部の撓みによってある程度吸収される。そのため、軸受部材に対する締め付け荷重を大きくしたときの外球面、内球面シート間の摺動抵抗の増大が抑えられるようになる。したがって、摺動抵抗の増大を抑えつつ、シフトレバー軸受部のがたつきを抑えることができる。
【0009】
また、こうした変速機のシフト操作装置において、取付穴からの軸受部材の脱離方向においてベース部材と当接する抜け止め用当接部を爪部に設けるようにすれば、取付穴からの軸受部材の抜け止めをより確実に行うことが可能となる。
【0010】
さらに、そうした抜け止め用当接部を、プレロード用当接部に隣接して設けるようにすれば、それら当接部に対応するベース部材側の当接部も隣接して設けることが可能となり、ベース部材の構成がより簡易となる。
【0011】
なお、抜け止め用当接部が、プレロード用当接部よりも軸受部材の外周側に位置される場合には、プレロード用当接部に対して軸受部材の径方向に弾性変位可能に抜け止め用当接部を設けることで、軸受部材の取り付けに際しての爪部の変形を抑えることが可能となる。
【0012】
なお、変速機のシフト操作装置においては、次のような構成を採用することが考えられる。すなわち、上記シフトレバーの基端部の外球面に突起を形成する。更に、上記軸受部材を形成するための複数のピースのうち、上記突起に対応して位置するピースに、上記シフトレバーの基端部を軸受部材の内球面シートに挿入する際の同突起との干渉を防止する逃げ部を形成する。
【0013】
また、上記軸受部材の複数の爪部は、同軸受部材の周方向について均等に位置するように設け、且つ、ベース部材の取付穴からの軸受部材の脱離方向において同ベース部材と当接する抜け止め用当接部を備えるように構成することが考えられる。この場合、軸受部材に対しベース部材の取付穴からの離脱方向への荷重が作用したとき、その荷重を軸受部材の周方向について均等に位置する複数の爪部(正確には各爪部の抜け止め用当接部)で受けることができる。このため、上記荷重を複数の爪部によって均等に分担して受けることができ、それら複数の爪部による上記荷重の分担に偏りが生じることを抑制できる。そして、複数の爪部による上記荷重の分担に偏りが生じることにより、その荷重の分担の大きくなる爪部が生じること、ひいては同爪部の耐久性が低下することを抑制できる。更に、同爪部の耐久性低下に伴う軸受部材自体の耐荷重性低下も抑制できる。
【0014】
また、上記軸受部材は、その周方向に並ぶ複数の第1ピース、及び、隣合う第1ピースの間に位置する一つの第2ピースによって形成されるものとすることが考えられる。更に、上記複数の第1ピース及び上記一つの第2ピースにはそれぞれ上記爪部を少なくとも一つ形成する。そして、複数の第1ピースにそれぞれ形成された爪部を軸受部材の周方向について均等に位置するように設け、且つ、それら爪部にそれぞれ取付穴からの軸受部材の脱離方向においてベース部材と当接する抜け止め用当接部を設ける。この場合、軸受部材に対しベース部材の取付穴からの離脱方向への荷重が作用したとき、その荷重を軸受部材の周方向について均等に位置する各第1ピースの爪部(正確には各爪部の抜け止め用当接部)で受けることができる。このため、上記荷重を各第1ピースの爪部によって均等に分担して受けることができ、それら爪部による上記荷重の分担に偏りが生じることを抑制できる。そして、各第1ピースの爪部による上記荷重の分担に偏りが生じることにより、その荷重の分担の大きくなる爪部が生じること、ひいては同爪部の耐久性が低下することを抑制できる。更に、同爪部の耐久性低下に伴う軸受部材自体の耐荷重性低下も抑制できる。また、第2ピースの爪部については、上記荷重の分担を小さくなるようにして、上記軸受部材の側周の外殻に対し同軸受部材の径方向に同爪部の弾性による荷重を作用させる用途に特化することができる。その結果、軸受部材の側周の外殻に対し同軸受部材の径方向に第2ピースの爪部の弾性による荷重を作用させる際、その荷重を軸受部材のベース部材に対するがたつき抑制にとって効果的な値に調整しやすくなる。
【0015】
また、変速機のシフト操作装置において、上記軸受部材の側周の外殻における上記取付穴の中心線方向についての一端に、その取付穴に対し締まり嵌めされる嵌合部を設けることも考えられる。このように設けられた嵌合部により軸受部材が取付穴の中心線方向の一端にて同取付穴に対し締まり嵌めされ、それによって軸受部材の内球面シートに挿入されたシフトレバーの基端部の外球面と軸受部材の上記内球面シートとの隙間が小さくされる。このため、シフトレバーの基端部の外球面と軸受部材の内球面シートとの隙間を精度良く設定せずとも、その隙間をある程度大きく設定しておけば取付穴に対する軸受部材の上記嵌合部での締まり嵌めによって上記隙間を適正値まで小さくすることができる。従って、シフトレバーの基端部の外球面と軸受部材の内球面シートとの隙間の寸法管理が容易になるとともに、その隙間が過度に大きくなることによるシフトレバーの基端部の軸受部材に対するがたつきを防止することができる。また、上記嵌合部は上記軸受部材の側周の外殻における上記取付穴の中心線方向についての一端部に設けられるため、取付穴に対する軸受部材の上記嵌合部が締まり嵌めされる位置は、軸受部材の内球面シートに挿入されたシフトレバーの基端部の外球面の中心から離れた位置になる。このため、軸受部材における上記嵌合部での締まり嵌めにより、シフトレバーの基端部の外球面の中心が過度に締め付けられることはなく、その締め付けによりシフトレバーの操作にひっかかりが生じることを抑制できる。
【0016】
また、変速機のシフト操作装置においては、次のような構成を採用することも考えられる。すなわち、上記軸受部材は、その周方向に並ぶ複数のピースを組み合わせることによって形成されるものとし、上記ベース部材の取付穴の内周面における複数のピースの境界に対応する部分に同取付穴の中心線方向に延びるリブを形成する。更に、上記ピースと上記リブとの当接面を、そのピースが内球面シートの中心から離間する方向に対し平行となるように形成する。この場合、軸受部材を形成すべく組み合わされた複数のピースから所定のピースが外れたとすると、そのピースが内球面シートの中心から離間する方向に変位しようとするが、そのときの変位の方向が上記ピースと上記リブとの当接面と平行な方向となる。このため、上記ピースの変位に伴い上記ピースと上記リブとの当接面同士を滑らかに相対移動させることが可能になり、それら当接面間でひっかかりやがたつきが発生することを抑制できる。
【0017】
また、変速機のシフト操作装置においては、次のような構成を採用することも考えられる。すなわち、シフトレバーの基端部の外球面に突起を形成する。更に、上記軸受部材には、シフトレバーの基端部を軸受部材の内球面シートに挿入する際の上記突起との干渉を防止する逃げ部を形成し、且つ、その逃げ部の上方を覆うカバーを形成する。この場合、軸受部材における逃げ部の上方がカバーによって覆われるため、その逃げ部に上方からの異物が入り込むことを上記カバーによって抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】変速機のシフト操作装置の第1実施形態についてその斜視分解構造を示す斜視分解図。
図2】同実施形態のシフト操作装置に設けられるシフトゲートの構成を模式的に示す略図。
図3】同実施形態のシフト操作装置の軸受部材であるシートソケットの斜視構造を示す斜視図。
図4】同実施形態のシフト操作装置のシートソケットの平面構造を示す平面図。
図5】同実施形態のシフト操作装置のボールスタッドのシートソケットに対する取り付け状態を示す略図。
図6】同実施形態のシフト操作装置のシートソケットを形成する第1ピースに設けられた爪部の側部断面構造を示す断面図。
図7】同実施形態のシフト操作装置のシートソケットを形成する第2ピースに設けられた爪部の側部断面構造を示す断面図。
図8】同実施形態のシフト操作装置の取付穴に取り付けられたシートソケット及びその周辺の側部断面構造を示す断面図。
図9】シフトレバーに操作力を作用させて所定の操作量を得る際の操作量と操作力との関係を示すグラフ。
図10】同実施形態のシフト操作装置のシートソケット取付過程における爪部及びその周辺の側部断面構造を示す断面図。
図11】第2実施形態にかかる変速機のシフト操作装置の爪部及びその周辺の側部断面構造を示す断面図。
図12】同実施形態のシフト操作装置のシートソケット取付過程における爪部及びその周辺の側部断面構造を示す断面図。
図13】第3実施形態にかかる変速機のシフト操作装置のシートソケットの平面構造を示す平面図。
図14】従来の変速機のシフト操作装置の側部断面構造を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、変速機のシフト操作装置の第1実施形態を、図1図9を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のシフト操作装置は、車室に固定されて当該シフト操作装置の基部(ベース)となるベース部材としてのベースプレート10を備えている。ベースプレート10は、車室のフロア等にボルト等によって固定される。ベースプレート10には、略円筒形状の取付穴11が形成されている。そして、この取付穴11には、略円筒形状に形成されたシートソケット12が取り付けられている。
【0021】
シートソケット12には、シフトレバー13の基端部分に設けられた、球形のボールスタッド14が係合される。そして、シフトレバー13は、ボールスタッド14を球軸とし、シートソケット12を軸受部材とする球面滑り軸受により、ベースプレート10に対して傾動可能に支持されている。なお、ボールスタッド14には、運転者後方に突き出すように突起15が設けられている。この突起15は、シフトレバー13の軸まわり方向についてのボールスタッド14のねじり回転を規制するためのものである。
【0022】
また、シフトレバー13には、コントロールレバー16が一体となって傾動可能に設けられている。コントロールレバー16には、シフトケーブル17が連結されている。そして、シフトレバー13は、そのシフトケーブル17を通じて自動変速機に連結されている。
【0023】
図2は、シフトレバー13の傾動を案内するシフトゲート18の一例を示している。同図に示されるシフトゲート18には、シフトレバー13を案内する操作路として、シフト操作路19、マニュアル操作路20、セレクト操作路21の3つの操作路が形成されている。シフト操作路19は、階段状に折れ曲がりつつ、運転者の前後方向(以下、シフト方向と記載する)に延伸されている。また、マニュアル操作路20は、シフト操作路19の図中右側方において、シフト方向に直線状に延伸されている。そして、シフト操作路19とマニュアル操作路20とは、運転者の左右方向(以下、セレクト方向と記載する)に延伸されたセレクト操作路21を通じて連結されている。
【0024】
シフト操作路19には、シフトレバー13の操作位置として、運転者の前方側から順に、パーキング操作位置(P)、リバース操作位置(R)、ニュートラル操作位置(N)、及びドライブ操作位置(D)の4つの操作位置が設定されている。また、マニュアル操作路20には、運転者の前方側から順に、アップシフト操作位置(+)、マニュアル操作位置(M)及びダウンシフト操作位置(−)の3つの操作位置が設定されている。そして、セレクト操作路21は、シフト操作路19のドライブ操作位置(D)とマニュアル操作路20のマニュアル操作位置(M)とを繋ぐように形成されている。
【0025】
以上のように構成された本実施形態のシフト操作装置では、シフト操作路19に沿ってシフトレバー13を操作すると、シフトケーブル17を通じてその操作が自動変速機に伝達される。そして、操作によって位置されたシフトレバー13の操作位置に応じて、自動変速機のシフト操作が行われる。
【0026】
一方、セレクト操作路21に沿ってドライブ操作位置(D)からマニュアル操作位置(M)にシフトレバー13を操作すると、運転者がより自由に自動変速機の変速操作を行うことが可能なマニュアル操作モードに遷移する。マニュアル操作モードでは、マニュアル操作路20に沿ってマニュアル操作位置(M)からアップシフト操作位置(+)にシフトレバー13が操作されると、そのときの車両の走行状況に鑑みて許容される限りにおいて、自動変速機の変速段が一段だけ上げられる。また、マニュアル操作位置(M)からダウンシフト操作位置(−)にシフトレバー13が操作されると、そのときの車両の走行状況に鑑みて許容される限りにおいて、自動変速機の変速段が一段だけ下げられる。
【0027】
こうしたマニュアル操作モードでのアップシフト操作位置(+)、ダウンシフト操作位置(−)へのシフトレバー13の操作は、それらの操作の際にシフトレバー13の所定部位が図示しないセレクトスイッチをプッシュ操作することで検知される。なお、アップシフト操作位置(+)、ダウンシフト操作位置(−)に操作されたシフトレバー13には、同レバー13をマニュアル操作位置(M)に自動的に復動させるための力が印加されるようにもなっている。
【0028】
次に、シフトレバー13の軸受部材を構成するシートソケット12の詳細を説明する。なお、以下では、シフトレバー13の突き出し方向におけるシートソケット12の端をシートソケット12の上端と記載し、その反対方向におけるシートソケット12の端をシートソケット12の下端と記載する。
【0029】
図3は、シートソケット12の斜視構造を示している。同図に示すように、シートソケット12の内部には、先の図1に示したシフトレバー13のボールスタッド14の外球面を受ける内球面シート22が形成されている。内球面シート22の図中上部には、円形状の開口23が形成され、この開口23からシフトレバー13が突き出されている。そして、こうした内球面シート22とボールスタッド14の外球面との摺接を通じて、シフトレバー13が内球面シート22の中心周りに傾動可能に支持されている。
【0030】
シートソケット12は、その周方向に並ぶ複数(この例では三つ)の第1ピース12a,12b,12c、及び、それら第1ピース12a,12b,12cよりも小型であって隣合う第1ピース12a,12bの間に位置する一つの第2ピース12dによって形成されている。上記複数の第1ピース12a,12b,12c及び一つの第2ピース12dにはそれぞれ、シートソケット12の側周の外殻に対して同シートソケット12の径方向に弾性変位可能な爪部24が少なくとも一つ形成されている。
【0031】
図4に示すように、このシフト操作装置では、複数の第1ピース12a,12b,12cにそれぞれ形成された四つの爪部24が、シートソケット12の周方向について均等に位置するように設けられている。この四つの爪部24は、運転者の左右斜め前方45度の位置、左右斜め後方45度の位置にそれぞれ設けられている。一方、第2ピース12dには一つの爪部24が運転者の前方に位置するように設けられている。シートソケット12を形成するための第1ピース12a,12b,12c及び第2ピース12dのうち、シートソケット12の内球面シート22に挿入されるボールスタッド14(図1)の突起15に対応して位置するピース(第1ピース12c)には逃げ部31が形成されている。この逃げ部31は、ボールスタッド14を内球面シート22に挿入する際の突起15と第1ピース12cとの干渉を防止するためのものである。
【0032】
図5は、シフトレバー13のボールスタッド14がシートソケット12の内球面シート22内に支持された状態を概略的に示している。この状態のもとでは、ボールスタッド14の突起15が第1ピース12cの逃げ部31に挿入されており、その突起15とベースプレート10(図1)との当接を通じてシートソケット12の外周方向についてのボールスタッド14のねじり回転が規制される。また、同図に示すように、第1ピース12cには逃げ部31の上方を覆うカバー32が形成されている。このカバー32は、第1ピース12cの逃げ部31(図4)におけるシートソケット12の外周方向両端部を繋いでいる。このようにカバー32を形成することにより、第1ピース12cにおける逃げ部31周りの強度が高められている。
【0033】
図6は、第1ピース12a,12b,12cの爪部24の側部断面構造を示している。なお、同図は、図4のA−A線に沿ったシートソケット12(第1ピース12c)の断面に対応している。
【0034】
同図に示すように、爪部24は、シートソケット12の下端側を固定端とし、シートソケット12の上端側を自由端とする片持ちの梁として、シートソケット12に一体形成されている。爪部24の先端には、シートソケット12の外周側に面するプレロード用当接部25と、取付穴11からのシートソケット12の上端側に面する抜け止め用当接部26とが設けられている。プレロード用当接部25と抜け止め用当接部26とは、隣接して設けられている。また、抜け止め用当接部26は、プレロード用当接部25よりもシートソケット12の外周側に位置されている。
【0035】
図7は、第2ピース12dの爪部24の側部断面構造を示している。この爪部24は、図6に示す第1ピース12a,12b,12cの爪部24とほぼ同じ形状を有している。ただし、第2ピース12dの爪部24(図7)では、第1ピース12a,12b,12cの爪部24(図6)における抜け止め用当接部26に相当する部位Bが、同抜け止め用当接部26と同じ用途(後述する抜け止め)に必ずしも用いられるわけではない。
【0036】
図8は、取付穴11に取り付けられたときのシートソケット12及びその周辺の断面構造を示している。シートソケット12の側周の外殻における上記取付穴11の中心線方向についての一端(この例では下端)には、その取付穴11の下端開口周縁に対し締まり嵌めされる嵌合部33が設けられている。また、取付穴11の上端開口周縁における爪部24に対応する位置には、固定部27が内周側に突き出すように形成されている。そして、その固定部27の先端部分の内周側、下端側はそれぞれ、シートソケット12の取付時に第1ピース12a,12b,12c(12a,12bのみ図示)における爪部24のプレロード用当接部25、抜け止め用当接部26にそれぞれ当接される、ベースプレート10側のプレロード用当接部28、抜け止め用当接部29となっている。なお、第2ピース12dの爪部24(図7)は、プレロード用当接部25が上記ベースプレート10側のプレロード用当接部28と当接する一方、部位Bは上記ベースプレート10側の抜け止め用当接部29と当接しないように形成されている。またベースプレート10側のプレロード用当接部28の径は、自然状態における第1ピース12a,12b,12c及び第2ピース12dの爪部24のプレロード用当接部25の径よりも小さくされている。そのため、取付穴11に取り付けられたときの爪部24は、それらの径の差分、その先端部分がシートソケット12の内周側に弾性変位するように撓んでいる。そして、それら爪部24及び上記嵌合部33により、シートソケット12が取付穴11に固定されている。
【0037】
図9は、シフトレバー13に操作力を作用させて同レバー13での所定の操作量を得る際の操作量と操作力との関係を示したグラフである。同図の破線は、シートソケット12の内球面シート22に挿入されたシフトレバー13のボールスタッド14の外球面と上記内球面シート22との隙間がほとんど存在しない状態のときの上記操作量と上記操作力との関係を示している。この場合、シフトレバー13の所定の操作量を得るための上記操作力が大きくなり、シフトレバー13の操作性に支障をきたすおそれがある。一方、同図の二点鎖線は、上記外球面と上記内球面シート22との隙間が比較的大きい状態のときの上記操作量と上記操作力との関係を示している。この場合、上記操作量が「0」から大きくなってゆく領域Aにてシフトレバー13の操作に伴うがたつきが生じる。従って、上記外球面と上記内球面シート22との隙間については、シフトレバー13の操作力を小さく抑えつつ、シフトレバー13の操作に伴うかたつき及び同がたつきによる異音の発生を抑制するうえで、上記操作量と上記操作力との関係が図中の実線で示す関係となる大きさに設定することが好ましい。この実施形態におけるシートソケット12の上記嵌合部33は、ベースプレート10の取付穴11に対し締まり嵌めされたとき、上記外球面と上記内球面シート22との隙間が図9の実線で示す上記操作量と上記操作力との関係を実現可能な大きさとなるよう設定されている。
【0038】
次に、以上のように構成された本実施形態の作用を説明する。
本実施形態のシフト操作装置では、その側周の外殻に対して同シートソケット12の径方向に弾性変位可能な複数の爪部24が内周側に撓んだ状態でシートソケット12がベースプレート10の取付穴11に固定される。こうした本実施形態では、そうした撓みに対する爪部24の弾性反発力により、径方向へのシートソケット12のがたつきを抑える締め付け力が発生される。こうした締め付け力による内周側への押圧は、爪部24の撓みによりある程度吸収されるため、その押圧の内球面シート22への伝達が抑えられる。そのため、がたつきを抑えるため、シートソケット12の締め付け力を大きくしても、ボールスタッド14の外球面と内球面シート22との摺動抵抗はあまり大きくならないようになる。さらに、本実施形態のシフト装置では、第1ピース12a,12b,12cの爪部24に設けられた抜け止め用当接部26とベースプレート10側の抜け止め用当接部29との当接により、取付穴11からのシートソケット12の抜け止めがなされるようになる。
【0039】
以上説明した本実施形態の変速機のシフト操作装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、シートソケット12の外周方向においてベースプレート10と当接するプレロード用当接部25を有するとともに、シートソケット12の側周の外殻に対して同シートソケット12の径方向に弾性変位可能な複数の爪部24が設けられている。そして、プレロード用当接部25におけるベースプレート10との当接により、シートソケット12の内周側に爪部24が撓んだ状態でシートソケット12が取付穴11に固定されている。そのため、がたつき抑制のためのシートソケット12の締め付け力を大きくしても、ボールスタッド14の外球面と内球面シート22との摺動抵抗はあまり大きくならないようになる。したがって、摺動抵抗の増大を抑えつつ、軸受部分のがたつきを抑えることができる。
【0040】
(2)本実施形態では、取付穴11からのシートソケット12の脱離方向においてベースプレート10と当接する抜け止め用当接部26を第1ピース12a,12b,12cの爪部24に設けているため、取付穴11からのシートソケット12の抜け止めについてもより確実に行うことができる。
【0041】
(3)抜け止め用当接部26が、プレロード用当接部25から離れた位置に設けられていると、それらに対するベースプレート10側の当接部を別々に設けなければならなくなる。その点、本実施形態では、第1ピース12a,12b,12cの爪部24にプレロード用当接部25と抜け止め用当接部26とが隣接して設けられているため、それら当接部に対するベースプレート10側の当接部(28,29)も隣接して一体に設けることが可能となり、ベースプレート10側の構成をより簡易とすることができる。
【0042】
(4)本実施形態では、爪部24が内周側への押圧を常時受けた状態でシートソケット12が固定されている。こうした状態が長期に渡ると、爪部24にクリープ変形が発生するが、そのクリープ変形は、シートソケット12の締め付け力を低減する側に生じるため、経時変化により、ボールスタッド14の外球面と内球面シート22との摺動抵抗が増大することを、すなわち、シフトレバー13の操作力が増大することを回避できる。
【0043】
(5)製造のばらつきのため、シートソケット12の締め付け力が設計値よりも大きくなることがあっても、一定の時間が経過すれば、爪部24のクリープ変形により、締め付け力が低下してボールスタッド14の外球面と内球面シート22との摺動抵抗が低減される。そのため、製造のばらつきによるシフトレバー13の操作力の増大が生じても、その状態が一定の期間内に限られるようになる。
【0044】
(6)本実施形態では、爪部24が、シートソケット12の外周における運転者の前方、左右斜め前方45度の位置、左右斜め後方45度の位置にそれぞれ設けられている。そのため、シフトレバー13のシフト操作時、及びセレクト操作時にボールスタッド14に加わる操作反力が爪部24の撓みにより好適に吸収されるようになる。したがって、シフトレバー13の急操作時に軸受部に加わる衝撃を爪部24の撓みにより好適に減衰することが、さらにはその衝撃による打音を好適に低減することが可能となる。
【0045】
(7)第1ピース12a,12b,12cの各爪部24は、シートソケット12の周方向について均等に位置するように設けられている。このため、シートソケット12に対しベースプレート10の取付穴11からの離脱方向への荷重が作用したとき、その荷重をシートソケット12の周方向について均等に位置する上記爪部24(正確には各爪部の抜け止め用当接部26)で受けることができる。従って、上記荷重を各第1ピース12a,12b,12cの爪部24によって均等に分担して受けることができ、それら爪部24による上記荷重の分担に偏りが生じることを抑制できる。そして、各第1ピース12a,12b,12cの爪部24による上記荷重の分担に偏りが生じることにより、その荷重の分担の大きくなる爪部24の耐久性が低下することを抑制できる。
【0046】
(8)第2ピース12dに形成された爪部24については、シートソケット12に対しベースプレート10の取付穴11からの離脱方向への荷重が作用したとき、その荷重の分担分がほほ無いと言えるほど小さい。このため、第2ピース12dの爪部24を、シートソケット12の側周の外殻に対し同シートソケット12の径方向に同爪部24の弾性による荷重を作用させる用途に特化することができる。その結果、シートソケット12の側周の外殻に対し同シートソケット12の径方向に第2ピース12dの爪部24の弾性による荷重を作用させる際、その荷重をシートソケット12のベースプレート10に対するがたつき抑制にとって効果的な値に調整しやすくなる。
【0047】
(9)シートソケット12の側周の外殻における下端には、ベースプレート10の取付穴11に対し締まり嵌めされる嵌合部33が設けられている。このため、取付穴11に対する嵌合部33の締まり嵌めにより、シートソケット12の内球面シート22に挿入されたシフトレバー13のボールスタッド14の外球面と上記内球面シート22との隙間が小さくされる。従って、ボールスタッド14の外球面とシートソケット12の内球面シート22との隙間を精度良く設定せずとも、その隙間をある程度大きく設定しておけば取付穴11に対するシートソケット12の上記嵌合部33での締まり嵌めによって上記隙間を適正値まで小さくすることができる。このため、上記外球面と上記内球面シート22との隙間の寸法管理が容易になるとともに、その隙間が過度に大きくなることによるボールスタッド14のシートソケット12に対するがたつきを防止することができる。また、上記嵌合部33がシートソケット12の下端に設けられているため、その嵌合部33によって締まり嵌めされる位置は、内球面シート22に挿入されたボールスタッド14の外球面の中心から離れた位置になる。このため、シートソケット12における上記嵌合部33での締まり嵌めにより、ボールスタッド14の外球面の中心が過度に締め付けられることはなく、その締め付けによってシフトレバー13の操作にひっかかりが生じることを抑制できる。
【0048】
(9)取付穴11に対するシートソケット12の固定が、同シートソケット12の下端での嵌合部33の締まり嵌めによって行われる一方、同シートソケット12の上端での径方向に向けた爪部24の押圧によって行われる。これにより、シートソケット12によってシフトレバー13のボールスタッド14側を的確に位置決めして同シフトレバー13の操作時のがたつきを抑制しつつ、シートソケット12の開口23周りを径方向について爪部24の弾性分だけ適度に変位させてシフトレバー13の操作性を向上させることができる。
【0049】
(10)シートソケット12における逃げ部31の上方がカバー32によって覆われるため、その逃げ部31に上方からの異物が入り込むことを上記カバー32によって抑制することができる。
【0050】
(11)カバー32は第1ピース12cの逃げ部31におけるシートソケット12の外周方向両端部を繋いでいるため、そのカバー32の形成によって第1ピース12cにおける逃げ部31周りの強度が高められる。このため、シフトレバー13の操作時にボールスタッド14からシートソケット12の第1ピース12c側への荷重が作用するとき、それによって第1ピース12cの逃げ部31が開いてしまい、その変形によって破損を招くことを抑制できる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、変速機のシフト操作装置の第2実施形態を、図10図12を併せ参照して詳細に説明する。なお本実施形態にあって、上記実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0052】
第1実施形態のシフト操作装置では、第1ピース12a,12b,12cにおける爪部24の抜け止め用当接部26は、同爪部24のプレロード用当接部25よりもシートソケット12の外周側に位置されている。シートソケット12の抜け止めをより確実とするには、抜け止め用当接部26の面積を大きくする必要がある。こうした場合、プレロード用当接部25から抜け止め用当接部26の最外縁までの距離が長くなる。
【0053】
図10に示すように、シートソケット12の取付穴11への取り付けに際しては、その途中で、ベースプレート10側の固定部27の内側に抜け止め用当接部26の最外縁を通す必要がある。ここで、プレロード用当接部25から抜け止め用当接部26の最外縁までの距離が長くなれば、その分、シートソケット12の取り付け中に、爪部24を内周側に大きく撓ませなければならなくなる。そのため、取り付けに際して、同図に点線円で示される爪部24の基端部分に多大な変形負荷がかかり、クリープ変形が生じる虞がある。そこで、本実施形態では、以下のように爪部24を構成することで、こうした取り付け時の変形負荷を低減するようにしている。
【0054】
図11は、本実施形態のシフト操作装置における第1ピース12a,12b,12cの爪部24近傍の断面構造を示している。同図に示すように、本実施形態のシフト操作装置では、爪部24の先端部分において、プレロード用当接部25と抜け止め用当接部26とを分離されている。そして、これにより、プレロード用当接部25に対して、シートソケット12の径方向に弾性変位可能に配設されている。
【0055】
図12を参照して、こうした本実施形態の作用を説明する。同図に示すように、本実施形態では、取付穴11へのシートソケット12の取り付け中、抜け止め用当接部26の最外縁が固定部27を通過する際に、プレロード用当接部25に対して抜け止め用当接部26が内周側に撓むようになる。そのため、このときの爪部24の先端の変位量が、その撓みの分だけ減少するようになり、同図に点線円で示される爪部24の基端部分の変形が低減されるようになる。
【0056】
本実施形態の変速機のシフト操作装置によれば、上記(1)〜(11)に記載の効果に加え、更に次の効果を奏することができる。
(12)本実施形態では、第1ピース12a,12b,12cの爪部24の抜け止め用当接部26を、同爪部24のプレロード用当接部25に対して、シートソケット12の径方向に弾性変位可能に設けられている。そのため、取付穴11へのシートソケット12の取り付けに際しての爪部24の変形を好適に抑えられる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、変速機のシフト操作装置の第3実施形態を、図13を併せ参照して詳細に説明する。なお本実施形態にあって、上記第1実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0058】
図13は、本実施形態のシフト操作装置におけるシートソケット12の平面構造を示している。このシートソケット12における第1ピース12a,12b,12c及び第2ピース12dはそれぞれ互いに対し分割可能となっている。そして、第1ピース12a,12b,12c及び第2ピース12dを組み合わせて結合することによって上記シートソケット12が形成されている。
【0059】
このシートソケット12が取り付けられるベースプレート10の取付穴11の内周面において、第1ピース12aと第2ピース12dとの境界に対応する部分、及び、第2ピース12dと第1ピース12bとの境界に対応する部分には、それぞれ取付穴11の中心線方向(図13の紙面と直交する方向)に延びるリブ34,35が形成されている。また、取付穴11の内周面において、第1ピース12bと第1ピース12cとの境界に対応する部分、及び、第1ピース12aと第1ピース12cとの境界に対応する部分にも、それぞれ取付穴11の中心線方向に延びるリブ36,37が形成されている。これらリブ34〜37は、第1ピース12a,12b及び第2ピース12dのいずれかが他の各ピースから外れたとき、その外れたピースの他のピースに対するシートソケット12の周方向についての相対位置を保持するためのものである。
【0060】
第1ピース12aとリブ34との当接面38,39、及び、第1ピース12aとリブ37との当接面40,41は、第1ピース12aが内球面シート22の中心から離間する方向(図13の矢印Y1方向)に対し平行に形成されている。また、第2ピース12dとリブ34との当接面42,43、及び、第2ピース12dとリブ35との当接面44,45は、第2ピース12dが内球面シート22の中心から離間する方向(図13の矢印Y2方向)に対し平行に形成されている。更に、第1ピース12bとリブ35との当接面46,47、及び、第1ピース12bとリブ36との当接面48,49は、第1ピース12bが内球面シート22の中心から離間する方向(図13の矢印Y3方向)に対し平行に形成されている。
【0061】
ここで、シートソケット12を形成すべく組み合わされた第1ピース12a,12b及び第2ピース12dのいずれかが他の各ピースから外れた場合、その外れたピースが内球面シート22の中心から離間する方向に変位しようとする。
【0062】
例えば、第1ピース12aが他のピースから外れた場合、その第1ピース12aが内球面シート22の中心から離間する方向(矢印Y1方向)に変位すると、その変位の方向が第1ピース12aとリブ34との当接面38,39及び第1ピース12aとリブ37との当接面40,41と平行な方向となる。このため、上記第1ピース12aの変位に伴い、同第1ピース12aとリブ34との当接面38,39同士を滑らかに相対移動させるとともに、同第1ピース12aとリブ37との当接面40,41同士を滑らかに相対移動させることが可能になり、それら当接面間でひっかかりやがたつきが発生することを抑制できる。
【0063】
また、第2ピース12dが他のピースから外れた場合、その第2ピース12dが内球面シート22の中心から離間する方向(矢印Y2方向)に変位すると、その変位の方向が第2ピース12dとリブ34との当接面42,43及び第2ピース12dとリブ35との当接面44,45と平行な方向となる。このため、上記第2ピース12dの変位に伴い、同第2ピース12dとリブ34との当接面42,43同士を滑らかに相対移動させるとともに、同第2ピース12dとリブ35との当接面44,45同士を滑らかに相対移動させることが可能になり、それら当接面間でひっかかりやがたつきが発生することを抑制できる。
【0064】
更に、第1ピース12bが他のピースから外れた場合、その第1ピース12bが内球面シート22の中心から離間する方向(矢印Y3方向)に変位すると、その変位の方向が第1ピース12bとリブ35との当接面46,47及び第1ピース12bとリブ36との当接面48,49と平行な方向となる。このため、上記第1ピース12bの変位に伴い、同第1ピース12bとリブ35との当接面46,47同士を滑らかに相対移動させるとともに、同第1ピース12bとリブ36との当接面48,49同士を滑らかに相対移動させることが可能になり、それら当接面間でひっかかりやがたつきが発生することを抑制できる。
【0065】
本実施形態の変速機のシフト操作装置によれば、上記(1)〜(11)に記載の効果に加え、更に次の効果を奏することができる。
(13)シートソケット12を構成する第1ピース12a,12b,12c及び第2ピース12dから、第1ピース12a,12b及び第2ピース12dのうちの所定のピースが外れて内球面シート22の中心から離間する方向に変位するとき、そのピースに対し当接するリブと同ピースとの当接面が上記変位方向に対し平行な方向となる。このため、上記ピースの変位に伴い、そのピースと上記リブとの当接面同士を滑らかに相対移動させることが可能になり、それら当接面間でひっかかりやがたつきが発生することを抑制できる。
【0066】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・シートソケット12の外周に設ける爪部24の数や位置は、適宜に変更しても良い。爪部24の数や位置は、取付時にシートソケット12に加わる締め付け荷重のバランスやシフトレバー13の操作反力の吸収性、シートソケット12の形状などを考慮して適切な数、位置とすれば良い。
【0067】
・上記各実施形態では、第1ピース12a,12b,12cの爪部24の抜け止め用当接部26をプレロード用当接部25に隣接して設けていたが、これらを爪部24上の離れた位置に設けるようにしても良い。そうした場合にも、抜け止め用当接部26がプレロード用当接部25よりもシートソケット12の外周側に位置されているのであれば、爪部24の抜け止め用当接部26を、同爪部24のプレロード用当接部25に対してシートソケット12の径方向に弾性変位可能に設けることで、シートソケット取付時の爪部24の変形を好適に抑えられる。
【0068】
・上記各実施形態では、第1ピース12a,12b,12cの爪部24のプレロード用当接部25及び抜け止め用当接部26の双方を爪部24の先端に設けるようにしていたが、それらの一方又は双方を、爪部24の先端部分以外の部位に設けるようにしても良い。
【0069】
・上記各実施形態では、第1ピース12a,12b,12cの爪部24の抜け止め用当接部26をプレロード用当接部25と共に爪部24に設けるようにしていたが、抜け止め用当接部26をシートソケット12の爪部24以外の部位に設けるようにしても良い。また、プレロード用当接部25の撓みによる締め付け荷重で十分なシートソケット12の抜け止めが可能であれば、抜け止め用当接部26を割愛しても良い。
【0070】
・シフトゲート18のパターンやシフトレバー13と自動変速機との連結構造など、シフトレバー13の支持構造以外の構成は、任意に変更しても良い。いずれにせよ、シートソケット12の側周の外殻に対して径方向に弾性変位可能な複数の爪部24を設け、それらの爪部24によってシートソケット12を取付穴11に固定するようにすれば、摺動抵抗の増大を抑えつつ、シフトレバー軸受部のがたつきを抑えることが可能である。
【0071】
・上記各実施形態において、カバー32については必ずしも設ける必要はない。
・第2ピース12dの爪部24の部位Bを抜け止め用当接部26として機能するよう形成してもよい。この場合、第2ピース12dの爪部24及び第1ピース12a,12b,12cの爪部24における各爪部24の位置をシートソケット12の周方向について均等にすることが好ましい。
【0072】
・第2ピース12dに抜け止め用当接部26を形成する場合、その抜け止め用当接部26を爪部24の部位B以外の箇所に形成したり、第2ピース12dにおける爪部24以外の箇所に形成したりすることも可能である。
【0073】
・第2ピース12dについては、必ずしも第1ピース12a,12b,12cよりも小型である必要はなく、それらのうちのいずれかと同じ大きさとしたり、それらよりも大型にしたりしてもよい。
【0074】
・シートソケット12の複数のピースによる分割を上記各実施形態よりも更に細かく行ってもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…ベースプレート(ベース部材)、11…取付穴、12…シートソケット(軸受部材)、12a,12b,12c…第1ピース、12d…第2ピース、13…シフトレバー、14…ボールスタッド(外球面)、15…突起、16…コントロールレバー、17…シフトケーブル、18…シフトゲート、19…シフト操作路、20…マニュアル操作路、21…セレクト操作路、22…内球面シート、23…開口、24…爪部、25…プレロード用当接部(爪部側)、26…抜け止め用当接部(爪部側)、27…固定部、28…プレロード用当接部(ベースプレート側)、29…抜け止め用当接部(ベースプレート側)、31…逃げ部、32…カバー、33…嵌合部、34〜37…リブ、38〜48…当接面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14