特許第6166138号(P6166138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6166138-CpGメチル化を用いた同定方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166138
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】CpGメチル化を用いた同定方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20170710BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   C12Q1/68 Z
   C12N15/00 A
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-199919(P2013-199919)
(22)【出願日】2013年9月26日
(62)【分割の表示】特願2010-518558(P2010-518558)の分割
【原出願日】2008年7月29日
(65)【公開番号】特開2014-23534(P2014-23534A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2013年10月28日
【審判番号】不服2016-12889(P2016-12889/J1)
【審判請求日】2016年8月26日
(31)【優先権主張番号】60/952,815
(32)【優先日】2007年7月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】ヒグチ,ラッセル
【合議体】
【審判長】 中島 庸子
【審判官】 山本 匡子
【審判官】 瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0202490(US,A1)
【文献】 Genetics,120,1988年,p.621−623
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C12N15/00
C12Q 1/00-1/70
MEDLINE/CA/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者由来のサンプル中のゲノムDNAの特定部位においてメチル化DNAを検出する法であって、以下の:
上記ゲノムDNAを、メチル活性制限酵素で処理して、切断生成物を作成する工程、
上記切断生成物に平滑末端を作成する工程、
上記切断生成物の末端をライゲーションして、当該切断生成物の閉環を作成する工程、
上記切断生成物に対して、上記特定部位又はその付近のDNAに相補するプライマーを加える工程であって、上記増幅生成物が上記切断生成物のライゲーションされた閉環からのみ生じうるように、プライマーを配向させる工程、
上記サンプルをポリメラーゼ連鎖反応に供して、上記特定部位においてメチル化DNAが存在する場合に増幅生成物を取得する工程、及び
上記特定部位においてメチル化DNAの存在を示す増幅生成物の存在を検出する工程 を含む、前記方法。
【請求項2】
前記特定部位が、伝子のプロモーター領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メチル活性制限酵素が、大腸菌(E.coli)McrBCである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲノムDNAのサンプルにおけるメチル化されたヌクレオチドの同定に関する。本発明は、特定のメチル化ヌクレオチドを同定することによる、特定状態の診断方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトDNAにおける(通常はCpGジヌクレオチドでの)5メチルシトシンの検出は、診断的に重要である。なぜなら、特に遺伝子制御配列(例えば、プロモーター配列)におけるそのようなシトシンのメチル化は、癌の発症に関連することが多いからである。いわゆるDNAのエピジェネティック(通常の遺伝的意味ではない)修飾は、発達過程において重要であり、そして遺伝子サイレンシングを頻繁に引き起こす。癌では、エピジェネティック変化に異常があり、そして腫瘍形成の抑制に関わる遺伝子のサイレンシングをもたらすこともあるし、或いは癌遺伝子に関わる遺伝子の活性化をもたらすこともある。
【0003】
このようなDNA修飾を検出するために現在広く用いられる方法は、DNAの化学的亜硫酸水素塩(bisulfite)処理を利用するものであり、そしてロバストな診断アッセイを行う点で欠点を有する。これらの欠点として、複雑性が高いこと、長時間が必要とされること、再現性がないこと、そして検出するDNAが有意に失われることが挙げられる。さらに、亜硫酸水素塩の使用は、PCR産物のキャリーオーバーコンタミネーションの調節におけるウラシル-n-グリコシラーゼの使用とは相容れない。これらの欠点を伴わない方法についての必要性が存在する。
【0004】
同時に、高い感度で、そして修飾されていない同じDNA配列が高いバックグランドレベルで存在する際にも、かかるDNA修飾を検出する方法について必要性が存在する。腫瘍において、全ての細胞が目的配列においてメチル化されたDNAを含む訳ではなく、大部分の細胞がそのようなDNAを含まないこともある。さらに、分布した腫瘍細胞又は血流中に見出すことができる腫瘍DNAのいずれかを用いて、早期に癌を検出する場合には、DNAの大部分は、目的配列においてメチル化されていない。多くとも、その配列の数パーセントのコピーしかメチル化されていないこともある。そのような配列の濃度は、サンプル体積の1mlあたり1コピーよりも少ないこともある。検出における高い感受性と高い特異性の両方についての必要性が明白であるが、従来の方法によっては得ることが難しかった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、サンプル中の特定部位におけるメチル化を検出する方法であって、
(a)上記サンプル中の特定部位におけるメチル化DNAが存在する際に一貫性のある部位でDNAを切断するメチル活性切断法でサンプルを処理し;
(b)上記特定部位又はその付近においてDNAに相補するプライマーを加え;
(c)上記サンプルをポリメラーゼ連鎖反応に供し、そして当該サンプル中の特定部位においてメチル化DNAが存在する場合、増幅産物を生成し;そして
(d)上記サンプル中の特定部位におけるメチル化DNAの存在を示す増幅産物の存在を検出する
を含む方法に関する。
【0006】
本発明の好ましい態様は、サンプル中の特定部位におけるメチル化DNAを検出する方法であって、以下の:
(a) 上記サンプル中の特定部位におけるメチル化DNAが存在する際に一貫性のある部位で塩基除去をもたらすメチル活性方法でサンプルを処理し;
(b) 切断部位又は塩基除去部位においてDNA配列を変化させ;
(c) 上記特定部位又はその付近においてDNAに相補するプライマー及び/又はプローブを加え、そしてそのうちの少なくとも1つが、変化したDNAを特異的に認識することができる;
(d) 上記サンプルをポリメラーゼ連鎖反応に供し、そしてサンプル中の特定部位においてメチル化DNAが存在する場合、増幅生成物及び/又はプローブシグナルを生成し;そして
(e)増幅生成物又はプローブシグナルが特異的に生成した場合、当該増幅産物の存在を検出し、上記サンプル中の特定部位におけるメチル化DNAの存在を示す
を含む、方法である。
【0007】
本発明は、ゲノムDNAサンプル中の特定部位においてメチル化シトシンの検出により、特定の状態を診断する方法をさらに含む。
【0008】
本発明は、サンプル中の特定部位においてメチル化DNAを検出する方法であって、
サンプル中の特定部位におけるメチル化DNAが存在する際に一貫性のある部位においてDNAを切断するメチル活性切断方法でサンプルを処理し;
上記特定部位又はその付近においてDNAに相補するプライマーを加え;
上記サンプルをポリメラーゼ連鎖反応に供し、そして上記サンプル中の特定部位においてメチル化DNAが存在する場合、増幅産物を生成し;そして
上記増幅産物の存在を検出し、上記サンプル中の特定部位においてメチル化DNAの存在を示す
方法にさらに関する。
【0009】
特定の実施態様では、サンプルはゲノムDNAを含む。
【0010】
好ましい実施態様では、特定部位は、既知遺伝子のプロモーター領域である。さらなる実施態様では、サンプルは患者に由来し、そして既知遺伝子のプロモーター領域におけるメチル化DNAの存在は、患者の癌細胞の存在を示す。
【0011】
さらに好ましい実施態様では、メチル化DNAが存在する際に一貫性のある部位でDNAを切断するメチル化活性切断方法は、メチル活性制限酵素である。さらなる実施態様では、メチル化DNAが存在する際に一貫性のある部位でDNAを切断するメチル活性切断方法は、5−メチルデオキシシチジン・グリコシラーゼで処理すること、5−メチルデオキシシチジングリコシラーゼで処理し、つづいて分離したプリン除去/ピリミジン除去リアーゼ(apurinic/apyrimidinic lyase)で処理すること、5−メチルデオキシシチジングリコシラーゼで処理し、続いてアルカリ加水分解することによる。
【0012】
本発明は、患者由来のサンプル中の特定部位におけるメチル化DNAを検出することによる患者において癌を検出する方法であって、サンプル中の特定部位においてメチル化DNAが存在する際に一貫性のある部位でDNAを切断するメチル活性切断方法でサンプルを処理し、上記特定部位又はその付近のDNAに相補するプライマーを加え、上記サンプルをポリメラーゼ連鎖反応に供し、そして上記サンプル中の特定部位においてメチル化DNAが存在する場合増幅産物を生成し、増幅産物の存在を検出し、サンプル中の特定部位におけるメチル化DNAの存在を示し、そして上記増副産物の存在から患者における癌を検出するを含む方法をさらに含む。
【0013】
特定の実施態様では、当該サンプルはゲノムDNAを含む。ある実施態様では、特定部位は、既知の遺伝子のプロモーター領域である。特定の実施態様では、メチル化DNAの存在する際に一貫性のある部位でDNAを切断するメチル活性切断方法は、メチル活性制限酵素である。特定の実施態様では、メチル化DNAが存在する際に一貫性のある部位でDNAを切断するメチル活性切断方法は、5−メチルデオキシシチジングリコシラーゼ/リアーゼで処理すること、5−メチルデオキシシチジングリコシラーゼで処理し、続いて分離したプリン除去/ピリミジン除去リアーゼ(又は分離したプリン除去/ピリミジン除去エンドヌクレアーゼ)で処理すること、又は5−メチルデオキシシチジングリコシラーゼで処理して、続いてアルカリ加水分解することである。
【0014】
特定の実施態様では、本発明は、患者由来のサンプル中におけるゲノムDNAにおける特定部位のメチル化DNAを検出することにより、患者において癌を検出する方法であって、ゲノムDNAをメチル活性制限酵素で処理して切断産物を作成し、上記特定部位又はその付近のDNAに相補するプライマーを加え、上記サンプルをポリメラーゼ連鎖反応に供して特定部位においてメチル化DNAが存在する場合、増幅生成物を取得し、上記特定部位のメチル化DNAの存在を示す増幅産物の存在を検出し、そして上記増幅産物の存在を検出することにより患者において癌を検出することを含む方法を包含する。
【0015】
本発明の好ましい実施態様では、特定部位は、既知遺伝子のプロモーター領域であり、メチル活性制限酵素は、大腸菌(E.coli)のMcrBCであり、及び/又は当該方法はさらに、切断生成物上に平滑末端を作成し、切断生成物の末端をライゲーションして、切断生成物の閉環を作りだし、そしてプライマーは、増幅生成物が切断生成物のライゲーションされた閉環からのみ生じることができるように配向させた。
【0016】
特定の実施態様では、本発明は、患者由来のサンプル中のゲノムDNAにおける特定部位のメチル化DNAを検出することにより、患者において癌を検出する方法であって、上記ゲノムDNAをメチル活性制限酵素で処理して、切断生成物を生成し、当該切断生成物上で平滑末端を作り出し、切断生成物の末端をライゲーションして、切断生成物の閉環を生成し、上記特定部位又はその付近でDNAと相補するプライマーを加え、ここで当該プライマーは、増幅生成物が切断生成物のライゲーションされた閉じた閉環からのみ生じることができるように配向されており、上記サンプルをポリメラーゼ連鎖反応に供して増幅生成物を取得し、特定部位においてメチル化DNAの存在を指し示す増幅生成物の存在を検出し、そして増幅生成物の存在を検出することにより、患者において癌を検出するを含む方法を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、増幅検出方法を示す。図示された方法は、特異的リンカーのライゲーションを採用し、そしてリンカー及び切除されたDNAにハイブリダイズするプライマーを使用する。切除されたDNAの配列内のネスティドプライマーは、増幅及び検出の特異性を増加させる。
図2図2は、「インバース」PCRを用いた増幅及び検出方法を示す。切除されたDNA断片を環化し、そしてライゲーションの接続部上のアンプリコンを増幅するプライマーを使用して、DNAのうまくいった切断を増幅及び検出するために使用される。
図3図3は、ヌクレオチド切除及び変異誘導を用いる別の増幅及び検出方法を示す。5-メチルシチジンに特異的なグリコシラーゼを用いて、ヌクレオチド切除が開始される。切除されたヌクレオチドは、変異誘導アナログ(A)により、又は天然ヌクレオチドの取り込みミス(B)により置換することができる。いずれの場合でも、変更されたDNA鎖のDNAポリメラーゼによる複製が、例えばPCRにより特異的に増幅可能でかつ検出可能である配列変更をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
「アンプリコン」は、ポリメラーゼ連鎖反応などの増幅反応の結果として生成した二本鎖DNA分子を指す。
【0019】
本発明において使用される場合、「CpG部位」という語句は、シトシンとグアニシンジヌクレオチドのことを指し、当該部位はいくつかのゲノムDNA分子においてシトシンがメチル化されることがある。典型的に、CpGジヌクレオチドは、より長い核酸配列内に存在する。
【0020】
本発明における「メチル活性制限酵素」という語句は、メチル化シトシンがDNAに存在する場合にのみDNAを切断する制限酵素を指す。ことなるそのような酵素は、特定部位に存在するメチル化シトシンを必要とすることもある。
【0021】
本発明における「メチル活性切断」という語句は、メチル化核酸の存在する際にのみ生じる核酸の切断を指す。本発明では、メチル活性切断の方法は、非限定的に、メチル活性制限酵素の使用を包含する。
【0022】
本発明では、「5−メチルデオキシシチジングリコシラーゼ/リアーゼ」という語句は、酵素、グリコシラーゼ及びリアーゼの両方であって、5−メチルデオキシシチジンの存在する際に活性であるものを指す(Morales-Ruiz T, Ortega-Galisteo AP, Ponferrada-Marin MI, Martinez-Macias MI, Ariza RR, Roland-Arjona T. Proc Natl Acad Sci USA. (2006) 103 (18): 6853-8; Gehring M, Huh JH, Hsieh TF, Penterman J, Choi Y, Harada JJ, Goldberg RB, Fischer RL. Cell. (2006) 124 (3): 495-506)。5−メチルデオキシシチジングリコシラーゼ/リアーゼののグリコシラーゼ活性は、通常5−メチルデオキシシチジンとDNAのリボースとの間のN−グリコシド結合を破壊する。脱プリン/脱ピリミジン(AP)リアーゼとして知られているリアーゼ活性は、β除去反応によりDNA骨格の3’を塩基除去糖へと切断する。
【0023】
核酸−本発明では、「核酸」という語句は、任意の天然又は合成核酸を指し、非限定的に、一本鎖及び二本鎖核酸、DNA、RNA、zDNA、合成ヌクレオチドアナログ、及びペプチド結合合成ヌクレオチドを指しうる。
【0024】
目的遺伝子−本発明では、「目的遺伝子」という語句は、研究者又は医師が、メチル化について試験するゲノム配列に存在する任意のコード又は非コード領域を指しうる。
【0025】
プロモーター領域−本発明では、「コントロール領域」は、目的の遺伝子付近の核酸の任意の部分であってもよく、それは必ずしも遺伝子内に含まれない。制御領域は、目的遺伝子の発現について直接制御効果を有することもあるし、有さないこともある。制御領域は、特定の細胞においてメチル化5-デオキシシチジンを有し、目的遺伝子の発現が影響を受ける領域である。
【0026】
メチル活性切断
本発明は、メチル活性切断の幾つかの方法を包含する。メチル化CpGが存在する際にDNAを切断するが、メチル化DNAが存在しない際にDNAを切断できない任意の方法が、本発明において使用することができる。本発明の方法は、メチル活性制限酵素、例えばMcrBC(Stewart, F. J. and Raleigh E. A. (1998) Biol. Chem. 379: 611-616)及びリアーゼと組み合わせた5-メチルシチジングリコシラーゼを含むが、それらに限定されるものではない。
【0027】
増幅方法
様々な増幅方法が、本発明により想定されており、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応、及びローリングサイクル複製が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0028】
検出方法
増幅生成物の特定種を検出する幾つかの方法が、本発明により検討される。検出方法としては、標識の取り込みと検出、プローブキャプチャー法、Taqmanアッセイ、電気泳動法、及びハイブリダイゼーション方法が挙げられるが、それらに限定されるものではない。標識は、放射性標識ヌクレオチド、フルオロフォア、量子ドット、ビオチンコンジュゲートヌクレオチド、及び発色酵素が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0029】
特定部位でのメチル化CpGの検出と、増幅とを組み合わせる種々の方法が使用されてもよい。例えば、メチル化CpGが存在する際に活性であるメチル活性酵素を通してゲノムサンプルが切断されてもよい。このような切断から生じたDNA断片は、酵素的に末端平滑化に供されて、それに既知配列のオリゴヌクレオチドアダプターがライゲーションされることがある。サンプルに2つのプライマーが加えられ、そのうちの1つは、特定部位の付近の領域にハイブリダイズし、そしてそれらのうちの第二プライマーはオリゴヌクレオチドアダプターの既知配列にハイブリダイズする。この例が、図1において以下に示される。
【0030】
好ましい実施態様では、本発明は、以下のように実施される:特異的に検出可能なDNA配列の変更は、DNAの2つの5-メチルシトシンの部位の付近で酵素的に生成する。以下の図1及び2に示されるように、制限酵素大腸菌(E. coli)McrBCは、dA又はdG(プリン=Pu)が前にある5-メチルdC残基の付近でdsDNAを特異的に認識し、そして切断する。これらは、dG残基の前にあり、CpGジヌクレオチド(哺乳動物DNAのメチル化の主要部位)を形成する5-メチルdCを含む。dC残基がメチル化されていない場合、切断は生じない。このため、McrBCは、「メチル感受性」とは反対に「メチル活性」と記載される。メチル感受性は、その意味が反対である制限酵素、すなわちメチル化されていない標的配列が切断される一方で、メチル化された標的が切断されない制限酵素のより多くの既知クラスを指す。
【0031】
厳格にいうと、DNAを切断するために、McrBCは、一般的に55bp〜最大で3kbp離れた2つのPumCを必要とする。切断部位は、2つのPumC部位のうちの1つから約30bpである。遺伝子制御に含まれるDNAメチル化の部位が、高密度のメチル化CpGジヌクレオチドを含むため、新規メチル化特異的DNA断片の生成をもたらす図1及び2に示される状況が起こる。切断が認識部位の間である必要はないが、一例としてそのように示される。切断が生じる場合、切断部位においてメチル化特異的配列変化の作成が可能である。例えば、添付の図1及び2の両方において、メチル化特異的DNA断片は、引用文献に記載されるように処理されて、ライゲーション可能な断片末端を生じる。図1に示される様に、DNA断片が、DNAリガーゼが存在する際に環化させる場合、共有結合的に閉じたDNA環が作成されうる。ライゲーションされた接続部位及び配列は、ヒト腫瘍に由来するDNAのメチル化標的遺伝子を含むサンプルを用いて実験的に決定することができる。これは、DNAクローニング及びシーケンスを用いて行われてもよい。ひとたび配列が既知になると、1のプライマーを新規接続配列に特異的にして、図示された特異的DNA生成物を増幅するPCR用に特異的DNAプライマーを設計し、そして合成することができる。DNA断片を環化した後に増幅することは、「インバース」PCRとも呼ばれる(Ochman H, Gerber AS, Hartl DL. Genetics. (1998) 120 (3): 621-623)。或いは、図2のように、「リンカー」又は「アダプター」として知られている合成dsDNA断片は、断片末端の一方又は両方にライゲーションすることができる。示された全ての配列が知られているので、メチル化-特異的断片とリンカーとの間の接続配列を特異的に標的とするPCR用のプライマーを設計することができる。(多くの異なる断片は、リンカー配列を含むので)特異性を高めるため、「ネスティド」PCRが図示されるように行われてもよい。
【0032】
PCRに適合する蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、Taqmanプローブ)で新規接続配列を標的化し、そしてフランキングPCR増幅プライマーを用いることが可能である。しかしながら、プローブの代わりに新規配列をPCRプライマーで標的化することは、メチル化特異的標的が、増幅可能な代替物のバックグランド中において少数の配列である場合に利点がある(診断適用が、血清又は血漿などの体液中に見られるDNAから早期癌を検出する場合、すなわちDNAの大部分が野生型であり、そしてメチル化されていない場合にそのような可能性がある。)。両者が増幅されるならば、プローブにより作成することができるシグナルが低下する。メチル化特異的標的のみが増幅されるならば、バックグランドに対するシグナルが増加する。
【0033】
隣接プライマーを用い、そしてインバースPCRを用いる場合、増幅可能な代替物が存在しなくてもよい。目的領域における有意なメチル化が存在しない場合、切断断片は、大きくなり、そして増幅プライマーは、メチル化が存在しない場合に、増幅生成物が大きすぎて効率的に増幅できないように配置されてもよい。他の核酸増幅法、例えばSDAは、同様にメチル化特異的配列の変化を検出するために適用可能である。
【0034】
別の好ましい実施態様では、本発明は、以下のように行われてもよい。図3に示される様に、酵素5-メチルデオキシシチジングリコシラーゼ/リアーゼは、dsDNAから(特にCpGジヌクレオチドから)5-メチルシトシンヌクレオチドを特異的に認識し、そして取り除くことができ、5’において3’リン酸又はα,β-不飽和アルデヒド(図示せず)を有するヌクレオチドが前方にある1のヌクレオチドギャップを残す。これらは大腸菌エンドヌクレアーゼIVを用いて取り除くことができ、DNAポリメラーゼによるヌクレオチド鎖伸張に適した遊離3’水酸基を残す。図3Aにおいて、かかる鎖伸張は、変異原性である単一のヌクレオチド三リン酸(dNTP)を用いて行われる。すなわち、dNTPは、当該部位において効率的に挿入することができ、変異原性ヌクレオチドを含むDNA鎖は、続いてDNAポリメラーゼによりコピーされ、元の塩基配列を改変するヌクレオチドが挿入される。唯一の例ではないがその一つの例は、特にdCTPが存在しない場合にDNAポリメラーゼによりdG残基の向かいに効率的に挿入することができる5-ブロモデオキシウラシルヌクレオチド三リン酸(5-BrdUTP)である。しかし4つの天然dNTPの存在下で複製される場合、dC残基よりはむしろdA残基が好ましくは挿入される(Lasken RS, Goodman MF. J Biol Chem. (1984) 259 (18): 11491-5)。1度取り込まれたアナログの除去を予防するために、ポリメラーゼは、3’エキソヌクレアーゼプルーフリーディング活性を欠くことができる。アナログがひとたび取り込まれると、アナログはギャップにおいて5’リン酸にライゲーションすることができる。或いは、dNTPアナログを取り除くことができ、そして取り込まれたヌクレオチドアナログの3’OHからの鎖の伸張は、(3’エキソヌクレアーゼを欠く)DNAポリメラーゼ、及び既に存在するアニール済みDNA鎖の標準置換を伴う4つの天然dNTPを伴って生じうる。
【0035】
これに続き、例えば熱変性により2つのDNA鎖を分離し、変異原性ヌクレオチドアナログを含む鎖のコピーのDNAポリメラーゼによるプライム合成が行われる。アナログのため、変更されたヌクレオチド塩基配列を有するコピーが作成される。ゲノムメチル化部位及び周囲の配列がひとたび同定されると、この方法により産生される特異的配列変化を同定するために、モデル実験を行うことができる。このような変更された配列は、プライマー指向DNA増幅(例えばPCR)により効率的かつ感受性高く検出することができる。PCRは、1塩基ミスマッチに対して、特にプライマーの3’末端でのミスマッチを識別することが知られており、そのようなミスマッチは、所定のアッセイについて作成されるプライマーの中に設計されうる。
【0036】
或いは、図3Bに示される様に、(3’エキソヌクレアーゼプルーフリーディング活性を欠く)DNAポリメラーゼ、及びdGTP、dATP、又はdTTPのみを提供することができる。dCTPが存在しない場合に、ミスマッチヌクレオチド塩基は、相補部にdGを取り込みを強いることができる。これは、Mn++の存在により、そして取り込みミスの傾向を有するポリメラーゼ、例えばウイルスのリバーストランスクリプターゼの使用により促進することができる。提供される単一のdNTPは、5-メチルdC置換の1塩基上流に取り込まれることを予期される塩基であるべきではない。なぜなら、この部位でのニック又はギャップは、置換部位を翻訳し、擬陽性結果を与えうるからである。dGに対してミスマッチしたヌクレオチド塩基の効率的酵素媒介性のライゲーションが生じるようにできる(Lu J, Tong J, Feng H, Huang J, Afonso CL, Rock DL, Barany F, Cao W. Biochimbiophys Acta. (2004) 1701 (1-2): 37- 48)。或いは、ライゲーションが生じる代わりに、取り込みミスが生じると、残りの3の天然dNTPが与えられ、そして3’エキソヌクレアーゼプルーフリーディング活性が存在しない場合に、取り込まれたミスマッチヌクレオチドからの効率的な伸張が生じさせることができる。上記の通り、これは、特異的に知ることができ、増幅可能かつ検出可能な配列変化をもたらす。
【実施例】
【0037】
実施例
以下の記載は予言的であり、実際の実験を表すものではない。
実施例1
液体サンプルを患者から採取することができる。ゲノムDNAが、既知の方法を用いて患者サンプルから抽出することもできる。
【0038】
抽出されたゲノムDNAを、次にCpG部位のメチル化シトシンが存在する際に活性である制限酵素で処理して、酵素処理されたサンプルをもたらす。酵素処理されたサンプルを次に、制限酵素により切断される分子の末端にライゲーションするリンカーと組み合わせる。
【0039】
目的の遺伝子のプロモーター領域の付近の配列にハイブリダイズするプライマー、及び制限酵素により切断される分子の末端にライゲーションするリンカーにハイブリダイズする第二プライマーと混合物を合わせる。当該プライマーと第二プライマーを用いて、混合物を次にPCRなどの増幅反応に供してもよい。特異的CpG部位がメチル化される場合、ゲノムDNA分子を切断し、リンカーをライゲーションし、そして特異的アンプリコンを、増幅反応から生成する。特異的メチル化CpGが存在しない場合、特異的アンプリコンは生成しない。
【0040】
特異的アンプリコンは、次に、様々な既知の方法をとおして検出されてもよい。特異的アンプリコンが検出される場合、特異的CpG部位のメチル化状態を示し、そして特異的新生物状態が、示唆され、そして診断されうる。
【0041】
実施例2
さらなる実施例では、固形腫瘍生検を患者から取得する。確立された技術を用いて、固形腫瘍生検からゲノムDNAを抽出して、サンプルを生成する。
【0042】
次にCpG部位におけるメチル化シトシンが存在する際に活性である制限酵素でゲノムDNAサンプルを処理し、酵素処理されたサンプルを生成する。次に酵素処理されたサンプルを、平滑末端化された二本鎖DNAを作成する条件で処理してもよい。このサンプルは、続いてリガーゼで処理されてもよく、短い断片のDNAからの環状DNAを作成する。この例は、添付の図2に示される。
【0043】
次にサンプルを、目的のゲノム配列の付近の配列にハイブリダイズするプライマーセットと混合してもよい。当該プライマーセットは、目的のゲノム配列の付近のある部位を切断し、そしてある環状DNAにライゲーションした場合に、特定の環状DNAが存在する場合にのみ可能なアンプリコンを作り出す。
【0044】
特定のアンプリコンを検出することができ、生検の取得元の固形腫瘍が、目的のゲノム配列付近のCpG部位のメチル化により示される特定のタイプの腫瘍であることを示す。
【0045】
実施例3
さらなる実施例では、固形腫瘍生検は、患者から得ることができる。確立された技術を用いて、固形腫瘍生検からゲノムDNAを抽出し、サンプルを生成する。
【0046】
次にゲノムDNAサンプルを、CpG部位におけるメチル化シトシンの存在下で活性である5-メチルシトシングリコシラーゼ/リアーゼ、又はCpG部位におけるメチル化シトシンの存在下で活性である5-メチルシトシングリコシラーゼで処理して、続いて分離したAPリアーゼ又はAPエンドヌクレアーゼで処理し、二本鎖DNAにギャップを有する酵素処理されたサンプルをもたらす。次に酵素処理されたサンプルを、dCとは異なる塩基対特異性を有するヌクレオチドにより埋められる様式で処理されてもよい。
【0047】
サンプルを、目的の癌関連遺伝子の配列にハイブリダイズするプライマー、そして第一プライマー付近の現在変異された配列に特異的にハイブリダイズする第二プライマーと混合する。ある実施態様では、PCRにおける高い特異性のため、第二プライマーの3’ヌクレオチド又は3’の二番目のヌクレオチドが、変異された塩基とは反している。上記プライマーと第二プライマーを用いて、次に混合物を増幅反応、例えばPCRにかけてもよい。特異的CpG部位がメチル化された場合、特異的増幅は、増幅反応から生じる。特異的メチル化CpGが存在しない場合、特異的アンプリコンは生成しない。
【0048】
特異的アンプリコンは、様々な既知の方法を通して検出されてもよい。特異的アンプリコンが検出される場合、特異的CpG部位のメチル化状態を示し、特異的新生物状態が、示され、そして診断される。
図1
図2
図3