特許第6166142号(P6166142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6166142脂環式(メタ)アクリレートの製造方法及び脂環式(メタ)アクリレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166142
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】脂環式(メタ)アクリレートの製造方法及び脂環式(メタ)アクリレート
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/04 20060101AFI20170710BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20170710BHJP
   C08F 20/12 20060101ALI20170710BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20170710BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170710BHJP
【FI】
   C07C67/04CSP
   C07C69/54 B
   C08F20/12
   C08F220/12
   !C07B61/00 300
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-207651(P2013-207651)
(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-88377(P2014-88377A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2016年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2012-221722(P2012-221722)
(32)【優先日】2012年10月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 教博
(72)【発明者】
【氏名】万木 啓嗣
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−120708(JP,A)
【文献】 特開平07−188397(JP,A)
【文献】 特開2012−072334(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/063716(WO,A1)
【文献】 米国特許第04435316(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/00
C07C 69/00
C08F 20/00
C08F 220/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
【化1】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)で表される脂環式ジエン化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させる工程を含む脂環式(メタ)アクリレートの製造方法であって、
該反応工程は、脂環式ジエン化合物に対して1モル%未満の有機化合物からなる超酸であるブレンステッド酸触媒の存在下で脂環式ジエン化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させる工程であり、
該脂環式(メタ)アクリレートは、下記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレート及び下記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする脂環式(メタ)アクリレートの製造方法。
【化2】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表す。式(2)における脂環式骨格と(メタ)アクリロイルオキシ基との間の波線は、(メタ)アクリロイルオキシ基の配置が異なる立体異性体が存在することを表す。)
【請求項2】
記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートと下記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートとを7.5/2.5〜2/8のモル比で含むことを特徴とする脂環式(メタ)アクリレート。
【化3】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表す。式(2)における脂環式骨格と(メタ)アクリロイルオキシ基との間の波線は、(メタ)アクリロイルオキシ基の配置が異なる立体異性体が存在することを表す。)
【請求項3】
記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレート下記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレート7.5/2.5〜2/8のモル比で含む脂環式(メタ)アクリレートを含む単量体成分の重合物であることを特徴とする脂環式(メタ)アクリレート重合体。
【化4】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表す。式(2)における脂環式骨格と(メタ)アクリロイルオキシ基との間の波線は、(メタ)アクリロイルオキシ基の配置が異なる立体異性体が存在することを表す。)
【請求項4】
下記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレート下記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレート7.5/2.5〜2/8のモル比で含むことを特徴とする硬化性樹脂用材料。
【化5】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表す。式(2)における脂環式骨格と(メタ)アクリロイルオキシ基との間の波線は、(メタ)アクリロイルオキシ基の配置が異なる立体異性体が存在することを表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式(メタ)アクリレートの製造方法に関する。より詳しくは、粘接着剤、塗料、インク、反応性希釈剤等の材料として好適に用いることができる脂環式(メタ)アクリレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂環式(メタ)アクリレートは、溶液重合系(粘接着剤、塗料等)や光硬化系(インク、反応性希釈剤、フォトレジスト、ハードコート剤等)において幅広く使用される重合性樹脂原料であり、工業的に重要な化合物である。
脂環式(メタ)アクリレートの製造方法としては、酸触媒を用いるノルボルネン類へのカルボン酸の付加反応が従来より知られており、特許文献、学術文献において多くの報告がある。このような製造方法で脂環式ジエン化合物と(メタ)アクリル酸から得られる脂環式(メタ)アクリレート(後述するETCHAとENBA)についても、1980年代アメリカにて香料として特許出願されている(特許文献1)。しかしながら、それ以外に当該脂環式(メタ)アクリレート(ETCHAとENBA)の製法や用途に関する文献は無く、中間体として使用された例が1件あるのみ(特許文献2)で、重合性樹脂材料として記載された文献も存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4435316号明細書
【特許文献2】特開2012−72334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の文献に記載の、ルイス酸触媒を用いる脂環式ジエン化合物への(メタ)アクリル酸の付加反応による脂環式(メタ)アクリレートの合成では、多量の触媒が使用されていた。そのため、脂環式(メタ)アクリレートを取得するためには、反応後に塩基性化合物を添加して酸触媒を中和し、多量の中和塩を除去するために水洗を行い、水分を除くために乾燥を行い、乾燥剤をろ別して蒸留するという多段工程が必要であった。例えば、特許文献1では、5.9モルパーセントの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を使用し、重量比で3分の1以上のトルエンを添加して反応を実施し、6回もの水洗工程を経て乾燥工程を実施している。この製造方法では、工程数が多く煩雑であり、有機物を含む排水が大量に発生し、添加した溶媒を蒸留等によって分離する必要がある、といった課題があった。なお、当該化合物を含む脂環式(メタ)アクリレートは、1〜1.5程度の密度を有しており、粘度も3〜6センチポアズ程度で水層との分液性が悪いため、低密度かつ低粘度の溶媒で希釈せず水洗することは困難であった。例えば、特許文献2では5.6モルパーセントの三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体を使用し、溶媒を添加することなく反応と水洗を実施しているが、相分離に長時間を要するといった課題があった。更に三フッ化ホウ素を触媒とするこれらの製造方法により得られる脂環式(メタ)アクリレートは、後述する一般式(2)で表される構造のものと、一般式(3)で表される構造のものとのモル比が8/2前後の組成のもののみであった。
このように、従来の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法は、工程の煩雑さ、排水の多さ、及び、一定の異性体組成の脂環式(メタ)アクリレートしか得られないといった点において、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、煩雑な工程を経ることなく、また多量の排水を発生することなく、脂環式(メタ)アクリレートを製造することができ、様々な異性体組成の脂環式(メタ)アクリレートを製造することが可能な脂環式(メタ)アクリレートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上述した種々の課題を解決できる脂環式(メタ)アクリレートの製造方法について種々検討し、ブレンステッド酸触媒に着目した。しかしながら、トリフルオロメタンスルホン酸等の強力なブレンステッド酸を触媒として使用すると、上記特許文献1で好適とされる1モルパーセント以上の触媒量では、良好な収率で目的とする脂環式(メタ)アクリレートを得ることはできなかった。本発明者は、この低収率の原因究明に取り組み、ブレンステッド酸を触媒とする脂環式ジエン化合物のカチオン重合が副反応として進行していることを突き止めた。そこで、この反応におけるカチオン重合を抑制するため鋭意検討を行った結果、脂環式ジエン化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて脂環式(メタ)アクリレートを製造する反応において、脂環式ジエン化合物に対して1モル%未満のブレンステッド酸触媒の存在下で脂環式ジエン化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させることで、効率的な脂環式(メタ)アクリレートの生成が可能になることを見出した。このように低触媒量で反応させ、微量の中和剤で触媒の不活性化処理(もしくは吸着処理)を実施することで、水洗工程と乾燥工程を省略して脂環式(メタ)アクリレートを製造することに成功した。
なお、本発明者は、水洗工程を省略し工程を簡略化するため、三フッ化ホウ素の触媒量の低減も試みたが、脂環式ジエン化合物に対して1モルパーセント未満に減少させると、触媒活性が低下し反応の進行が遅くなり、0.5モルパーセント未満の触媒量では、脂環式ジエン化合物が完全に転化しないことを確認している。上記のように煩雑な工程を経ることなく、また多量の排水を発生することなく、高い収率で脂環式(メタ)アクリレートを製造することができる効果は、単に触媒の量を少なくすれば達成できるというものではなく、特定の触媒を選択し、当該触媒の最適な使用量を見出したことにより達成された効果である。更に本発明者は、この製造方法について検討し、酸触媒の種類、反応温度によって、生成する脂環式(メタ)アクリレートの組成が変化することを見出し、適切にこれらを選択することにより様々な異性体組成の脂環式(メタ)アクリレートを製造することに成功した。このように、上述した検討の結果、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、下記一般式(1);
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表す。)で表される脂環式ジエン化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させる工程を含む脂環式(メタ)アクリレートの製造方法であって、該反応工程は、脂環式ジエン化合物に対して1モル%未満のブレンステッド酸触媒の存在下で脂環式ジエン化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させる工程であり、該脂環式(メタ)アクリレートは、下記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレート及び下記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする脂環式(メタ)アクリレートの製造方法である。
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表す。式(2)における脂環式骨格と(メタ)アクリロイルオキシ基との間の波線は、(メタ)アクリロイルオキシ基の配置が異なる立体異性体が存在することを表す。)
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0012】
本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法は、上記一般式(1)で表される脂環式ジエン化合物と、(メタ)アクリル酸とを脂環式ジエン化合物に対して1モル%未満のブレンステッド酸触媒の存在下で反応させることで脂環式(メタ)アクリレートを製造するものである。本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法は、従来の方法に比べて以下のような種々の利点を有し、従来の方法よりも効率的かつ経済的に脂環式(メタ)アクリレートを製造することができる。なお、下記(V)の特徴については後述する。
(I)反応、水洗工程に溶媒を使用する必要がなく、溶媒の除去工程が不要である。
(II)水洗工程を省略することで有機物を含む排水が発生しない。
(III)乾燥工程が不要であり、乾燥剤およびろ過に必要な設備が不要である。
(VI)触媒費用低減と同時に、触媒が原因となる装置の腐食を抑えることも可能である。
(V)反応条件を選択することで様々な異性体組成の脂環式(メタ)アクリレートが製造できる。
【0013】
本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法は、上記一般式(1)で表される脂環式ジエン化合物と、(メタ)アクリル酸とを脂環式ジエン化合物に対して1モル%未満のブレンステッド酸触媒の存在下で反応させる工程(以下、本発明における反応工程とも記載する)を含むものであるが、この工程を含む限り、その他の工程を含んでいてもよい。
また、上記一般式(1)で表される脂環式ジエン化合物、(メタ)アクリル酸、及び、ブレンステッド酸触媒は、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また、ブレンステッド酸触媒を用いる限り、ブレンステッド酸に該当しないルイス酸を含んでいてもよい。
【0014】
本発明における反応工程に使用するブレンステッド酸触媒の量は、触媒の種類や反応温度等の条件により適宜選択すればよいが、好ましくは、脂環式ジエン化合物に対して0.00001〜0.2モル%である。このような割合で触媒を使用することで、反応後にブレンステッド酸触媒を除去する処理をより少量の塩基性化合物等により行うことが可能となる。より好ましくは、脂環式ジエン化合物に対して0.00002〜0.1モル%であり、さらに好ましくは、0.00005〜0.05モル%である。
【0015】
本発明における反応工程に使用するブレンステッド酸触媒は、脂環式ジエン化合物と(メタ)アクリル酸との反応条件においてブレンステッド酸として機能するものであれば特に制限されない。
ブレンステッド酸触媒としては、硫酸、過塩素酸等のオキソ酸、フッ化水素酸、フッ化ホウ素酸等の水素酸、りんタングステン酸等のヘテロポリ酸、フルオロスルホン酸、クロロスルホン酸等の無機スルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機スルホン酸、ピクリン酸等の強有機酸、カルボラン酸等の酸の他、反応系中にてこれらのブレンステッド酸を発生することが可能な前駆体を用いることができる。
【0016】
上記酸触媒の中でも、本発明における反応工程に使用するブレンステッド酸触媒は、超酸であることが好ましい。ブレンステッド酸触媒として超酸を用いることで、より少ない触媒量で脂環式ジエン化合物と(メタ)アクリル酸との反応を進行させることができるため、反応後の触媒の不活性化処理もより少量の中和剤により行うことが可能となる。
ここで、超酸とは、100%硫酸よりも酸性が強い酸のことである。超酸については、Olah George A. et al. “Superacid Chemistry” 2nd Ed. A John Willey & Sons, Inc., Publication 2009、超酸の酸性度については、Journal of American Chemical Society,1994,116,3047−3057を参考にすればよい。
【0017】
上記超酸としては、無機化合物からなる超酸、有機化合物からなる超酸のいずれも用いることができる。
無機化合物からなる超酸としては、フルオロスルホン酸、クロロスルホン酸、過塩素酸、フッ化水素酸、りんタングステン酸等のヘテロポリ酸等が挙げられる。
【0018】
有機化合物からなる超酸としては、下記一般式(4)〜(8)のいずれかで表される化合物及び/又はカルボラン酸、及び/又は、反応液中にてこれらを発生しうる前駆体、及び/又は、これらの活性点を含む部分構造を有する樹脂等を使用することができる。
【0019】
【化3】
【0020】
(式(4)〜(8)中、Rは、パーフルオロアルキル基を表す。Rは、水素原子又は電子求引性の有機基を表し、RやRが複数存在する場合には、複数のRやRは、同一であっても異なっていてもよい。mは、1〜2の数を表し、nは、1〜3の数を表す。)
上記一般式(4)〜(8)において、Rは水素原子又は電子求引性の有機基であれば特に限定されないが、具体的には、水素原子;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等の炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基;トリフルオロメチルカルボニル基、ペンタフルオロエチルカルボニル基、ヘプタフルオロプロピルカルボニル基、ノナフルオロブチルカルボニル基等の炭素数1〜10のパーフルオロアルキルカルボニル基(炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基が結合したカルボニル基);ペンタフルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルテトラフルオロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)トリフルオロフェニル基等のフッ素原子及び/又は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基で置換されたフェニル基;4−ピリジル基;テトラフルオロ−4−ピリジル基;シアノ基;3,5−ジシアノフェニル基、2,4,6,−トリシアノフェニル基等のシアノ基置換フェニル基;2,4,6,−トリニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基等のニトロ基置換フェニル基等が挙げられる。
【0021】
上記有機化合物からなる超酸の具体例としては、パーフルオロアルキルスルホン酸、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)アミン、トリス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタン、トリス(パーフルオロアルキルカルボニル)メタン、トリス(パーフルオロアルキルスルホニル)フェノール等が挙げられる。より具体的には、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、フェニルビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、ペンタフルオロフェニルビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)メタン、トリス(ペンタフルオロエタンスルホニル)メタン、フェニルビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)メタン、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)メタン、ペンタフルオロフェニルビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)メタン、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)アミン、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)メタン、トリス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)メタン、フェニルビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)メタン、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)メタン、ペンタフルオロフェニルビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)メタン、ノナフルオロブタンスルホン酸、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)アミン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)メタン、トリス(ノナフルオロブタンスルホニル)メタン、フェニルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)メタン、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)メタン、ペンタフルオロフェニルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)メタン、2,4,6−トリス(トリフルオロメタンスルホニル)フェノール、2,4,6−トリス(ペンタフルオロエタンスルホニル)フェノール、2,4,6−トリス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)フェノール、2,4,6−トリス(ノナフルオロブタンスルホニル)フェノール、カルボラン酸等が挙げられる。
上記有機化合物からなる超酸を発生しうる前駆体としては、有機化合物からなる超酸の金属塩、有機化合物からなる超酸のほう素化合物、有機化合物からなる超酸のケイ素化合物、有機化合物からなる超酸のりん化合物、パーフルオロアルカンスルホン酸エステル、パーフルオロアルカンスルホン酸無水物等が挙げられる。
【0022】
また、上記有機化合物からなる超酸には、少量のルイス酸性化合物を添加し、触媒活性を向上させることもできる。たとえば、三フッ化ホウ素、五フッ化りん、五フッ化アンチモン、五フッ化タンタル、五フッ化ニオブ、ハロゲン化アルミニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボラン、トリフルオロメタンスルホン酸ほう素等の1種又は2種以上を使用することができる。
ルイス酸性化合物を添加する場合、有機化合物からなる超酸1モルに対して、ルイス酸性化合物を0.01〜1モル添加することが好ましい。
【0023】
本発明の反応工程において超酸を使用する場合、超酸は、有機化合物からなる超酸であることが好ましい。有機化合物からなる超酸を本発明の反応工程に用いることで、極めて少ない触媒量においても高収率で脂環式(メタ)アクリレートを製造することができる。
無機化合物からなる超酸を用いた場合よりも有機化合物からなる超酸を用いた場合に高収率で脂環式(メタ)アクリレートが得られる理由については、以下のように考えられる。
無機化合物からなる超酸の多くは、酸化力を有するオキソ酸であり、このオキソ酸の作用により、反応原料である脂環式ジエン化合物や(メタ)アクリル酸、生成物である脂環式(メタ)アクリレートのオレフィン部分を酸化する副反応がおこり、脂環式(メタ)アクリレートの収率が低下するおそれがあるが、有機化合物からなる超酸を用いた場合にはこのような副反応がおこらないため、より高い収率で脂環式(メタ)アクリレートを製造することができると考えられる。
無機化合物からなる超酸であっても、酸化力を有していないものであれば、好適に用いることができるが、設備の腐食防止の点からフッ化物イオンを生じないものであることが好ましい。
【0024】
本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法では、反応条件を調整することで、生成物中の異性体組成(上記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートと、上記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートとのモル比)を変化させることができ、反応に使用する触媒の種類は、生成する脂環式(メタ)アクリレートの異性体組成に影響する重要な要素の1つである。
反応により生成する脂環式(メタ)アクリレートのうちの上記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートの割合を多く得ようとする場合には、ブレンステッド酸触媒のうち、上記一般式(5)で表される超酸を用いることが好ましく、上記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートの割合を多く得ようとする場合には、酸触媒のうち、上記一般式(4)で表される超酸を用いることが好ましい。
【0025】
本発明の反応工程において使用される上記一般式(1)で表される脂環式ジエン化合物と(メタ)アクリル酸とのモル比としては、(脂環式ジエン化合物/(メタ)アクリル酸)=1/1〜1/2であることが好ましい。より好ましくは、1/1〜1/1.2である。脂環式ジエン化合物に対し(メタ)アクリル酸を過剰に用いることによって、副反応である脂環式アクリレートのカチオン重合を抑制することができる。
【0026】
本発明の反応工程において、反応原料および触媒の混合方法としては、脂環式ジエン化合物のカチオン重合やアクリロイル基のラジカル重合が開始しなければ特に制限されないが、触媒と(メタ)アクリル酸との混合液に脂環式ジエン化合物のみを滴下、もしくは触媒と(メタ)アクリル酸との混合液に(メタ)アクリル酸と脂環式ジエン化合物とを滴下する方法が好ましい。滴下速度は、実施する反応温度に合わせて制御され、30〜360分で全量を滴下することが好ましく、60〜240分で全量を滴下することがより好ましい。
【0027】
本発明の反応工程における反応温度は、20〜150℃が好ましいが、反応温度は、生成する脂環式(メタ)アクリレートの異性体組成に影響する重要な要素の1つであるため、得ようとする異性体の組成によって、適宜選択すればよい。例えば、反応により生成する脂環式(メタ)アクリレートのうちの上記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートの割合を多く得ようとする場合は、低い温度(例えば、20〜60℃)で反応を行うことが好ましく、上記一般式(3)で表わされる構造の脂環式(メタ)アクリレートの割合を多く得ようとする場合は、高い温度(例えば、80〜120℃)で反応を行うことが好ましい。
【0028】
本発明の反応工程における反応時間は、反応原料や触媒量、反応温度等に応じて適宜設定することができるが、1〜24時間であることが好ましい。より好ましくは、2〜12時間である。
また、本発明の反応工程における反応圧力は、常圧、減圧、加圧のいずれの条件であってもよいが、常圧であることが好ましい。
なお、本発明の反応工程はラジカル重合防止の観点から、分子状酸素の存在下で実施されることが好ましい。
【0029】
本発明の反応工程における反応時には、重合禁止剤を添加しても添加しなくても良いが、80℃以上で反応を実施する場合は重合禁止剤を添加することが望ましい。添加量としては、反応に用いる(メタ)アクリル酸に対して1〜100000ppmであればよい。
なお、反応原料として重合禁止剤が添加された(メタ)アクリル酸を用いる場合には、当該(メタ)アクリル酸に予め添加された重合禁止剤と、反応時に添加する重合禁止剤とを合わせて上記添加量となるようにすればよい。
【0030】
上記重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ(t−アミル)ヒドロキノン等のハイドロキノン系重合禁止剤;メトキノン、6−t−ブチル−2,4−キシレノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤;セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシ−4−イル)(EC3314A)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−1−オキシル(4−H−TEMPO)等のN−オキシル化合物系重合禁止剤;デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)等のヒンダードアミン系安定剤;ジフェニルアミン等の芳香族アミン系酸化防止剤;トリフェニルホスファイト等のリン系酸化防止剤;3,3’−チオジプロピオン酸ジミリスチル等の硫黄系酸化防止剤;N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩(クペロン)等のN−ニトロソ化合物系重合禁止剤;有機酸銅塩やフェノチアジン等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法では、反応工程を行った後、中和剤によって酸触媒を不活性化処理することで、水洗工程と乾燥工程を省略することができる。
水洗工程と乾燥工程とを省略することは製造工程の簡略化、廃棄物の削減の点から好ましい。このように、水洗工程を行わないことや、乾燥工程を行わないことは本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法の好適な実施形態の1つである。
【0032】
上記酸触媒の不活性化処理に用いる中和剤としては、硫酸塩、りん酸塩、スルホン酸塩、シュウ酸塩、カルボン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、ほう酸塩、金属等の酸化物、三級アミン類等の1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、アルカリ金属の硫酸塩、アルカリ土類金属の硫酸塩、アルカリ金属のりん酸塩、アルカリ土類金属のりん酸塩、アルカリ金属のスルホン酸塩、アルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルカリ金属のシュウ酸塩、アルカリ土類金属のシュウ酸塩等である。
中和剤は、中和する酸触媒の種類や量に応じて、酸触媒の中和に必要な量を適宜使用すればよい。
【0033】
本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法は、上記反応工程の後に、得られた脂環式(メタ)アクリレートを精製する工程を含んでいてもよい。
精製工程において脂環式(メタ)アクリレートを精製する方法は特に制限されないが、蒸留が好ましい。
脂環式(メタ)アクリレートを蒸留により精製する場合、安定剤を添加して行ってもよい。安定剤としては、上記重合禁止剤と同じものを用いることができ、添加量も上記重合禁止剤と同様であることが好ましい。
なお、精製工程においてもラジカル重合防止の観点から、分子状酸素の存在下で実施されることが好ましい。
【0034】
本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法に反応原料として用いる脂環式ジエン化合物は、上記一般式(1)で表される構造のものである。上記一般式(1)で表される脂環式ジエン化合物は光学異性体を有する化合物である。本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法には、光学異性体のいずれか一方のみを用いてもよく、ラセミ体を用いてもよい。
【0035】
上記一般式(1)において、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表すが、1価の有機基としては、炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数3〜30の環状アルキル基、炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状アルケニル基、炭素数1〜30の環状アルケニル基、炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状アルキニル基、炭素数6〜30のアリール基等の炭素数1〜30の炭化水素基;炭素数1〜30のアルコキシ基又はアリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基又はアリールカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基又はアリールカルボニル基、シアノ基のいずれかによって置換された上記炭素数1〜30の炭化水素基;炭素数1〜20のオキシアルキレン基を繰り返し単位とするポリアルキレングリコール構造;炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基又はアリール基によって置換されたカルボニル基;炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基又はアリール基によって置換されたオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0036】
上記炭素数1〜30のアルコキシ基又はアリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基又はアリールカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基又はアリールカルボニル基、シアノ基のいずれかによって置換された上記炭素数1〜30の炭化水素基の具体例としては、炭素数1〜30のアルコキシ基又はアリールオキシ基によって置換された炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基又はアリール基;炭素数1〜30のアルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基又はアリールカルボニルオキシ基によって置換された炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基又はアリール基;炭素数1〜30のアルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基によって置換された炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基又はアリール基;炭素数1〜30のアルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基又はアリールカルボニル基によって置換された炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基又はアリール基;シアノ基によって置換された炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基又はアリール基等が挙げられる。
【0037】
上記炭素数1〜30の炭化水素基の中でも、炭素数1〜6の炭化水素基が好ましく、より好ましくは、炭素数1〜3の炭化水素基である。
、Rとしては、上述したものの中でも、エチル基、メチル基、水素原子が好ましい。より好ましくは、メチル基、水素原子である。
【0038】
上記一般式(1)で表される脂環式ジエン化合物の具体例としては、5−アルキリデンー2−ノルボルネン等が挙げられる。好ましくは、5−エチリデンー2−ノルボルネン、5−プロピリデンー2−ノルボルネン、5−イソプロピリデンー2−ノルボルネン、5−メチリデンー2−ノルボルネン等が挙げられる。
【0039】
上記一般式(1)で表される脂環式ジエン化合物と反応させる(メタ)アクリル酸は、アクリル酸であってもメタクリル酸であってもよく、これらの混合物であってもよい。
また、上記一般式(1)で表される脂環式ジエン化合物と反応させる(メタ)アクリル酸は、脂環式ジエン化合物との反応工程において重合反応が進行することを抑制するため、重合禁止剤を含んでいてもよい。
重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤の含有量は(メタ)アクリル酸に対して、1〜10000ppmであることが好ましい。
重合禁止剤としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
【0040】
本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法では、反応温度や使用する触媒等の製造条件を調整することで、生成する脂環式(メタ)アクリレートにおける上記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートと上記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートとのモル比(異性体組成)を変化させることが可能となり、例えば、当該異性体組成が8/2〜2/8である脂環式(メタ)アクリレートを製造することが可能である。
これは、当該異性体組成が8/2前後のものしか得られない従来の製造方法との大きな相違点であり、本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法の有利な点の1つである。
このような、本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法によって製造される脂環式(メタ)アクリレートであって、該脂環式(メタ)アクリレートは、下記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートと下記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートとを8/2〜2/8のモル比で含むことを特徴とする脂環式(メタ)アクリレートもまた、本発明の1つである。
下記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートと下記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートとの好ましいモル比は、7.5/2.5〜2/8であり、より好ましくは7.2/2.8〜2/8であり、更に好ましくは7/3〜2/8である。
【0041】
【化4】
【0042】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表す。式(2)における脂環式骨格と(メタ)アクリロイルオキシ基との間の波線は、(メタ)アクリロイルオキシ基の配置が異なる立体異性体が存在することを表す。)
【0043】
本発明において、上記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートには、(メタ)アクリロイルオキシ基の配置が異なる立体異性体が存在する。これら立体異性体は、それぞれ下記一般式(2−1)、(2−2)で表される構造を有する。
【0044】
【化5】
【0045】
上記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートでは、(メタ)アクリロイルオキシ基が脂環式骨格のいずれの位置に結合していてもよく、下記式(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)のような構造のものがある。
【0046】
【化6】
【0047】
上記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートや一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基に由来する重合性二重結合を有しており、重合体の原料としても好適に用いることができる。
このような脂環式(メタ)アクリレートを含む単量体成分を重合して得られる脂環式(メタ)アクリレート重合体であって、該脂環式(メタ)アクリレートは、下記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレート及び/又は下記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする脂環式(メタ)アクリレート重合体もまた、本発明の1つである。
【0048】
【化7】
【0049】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表す。式(2)における脂環式骨格と(メタ)アクリロイルオキシ基との間の波線は、(メタ)アクリロイルオキシ基の配置が異なる立体異性体が存在することを表す。)
【0050】
上記脂環式(メタ)アクリレート重合体の原料となる単量体成分は、上記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレート及び/又は上記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートのみを含むものであってもよく、その他の単量体を含むものであってもよい。
その他の単量体としては、上記脂環式(メタ)アクリレートと共重合が可能なものであれば特に限定されないが、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。
上記単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(n=2.5)(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等が挙げられる。
上記3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0051】
上記脂環式(メタ)アクリレート重合体の原料となる単量体成分中の上記一般式(2)又は一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートの割合は、単量体成分全体100質量%に対して、10〜100質量%であることが好ましい。このような割合で脂環式(メタ)アクリレートを含むことで、得られる重合体が脂環式(メタ)アクリレートに由来する特性を充分に発揮することができる。より好ましくは、単量体成分全体100質量%に対して、20〜100質量%である。
【0052】
上記脂環式(メタ)アクリレート重合体の製造には、重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤のいずれも用いることができ、これらを併用してもよい。
上記熱重合開始剤としては、過酸化水素;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、4,4′−アゾビス−(4−シアノバレリン酸)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;過酢酸、過コハク酸、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド等の有機過酸化物等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0053】
上記光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン(チバ・ガイギー社製「イルガキュア907」)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1173」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ガイギー社製「イルガキュア184」)等の分子内結合開裂型の光重合開始剤;ベンゾフェノン、ο−ベンゾイル安息香酸メチル及びο−ベンゾイル安息香酸アルキル、4−フェニルベンゾフェノン、等のベンゾフェノン系、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン等のチオキサントン系、ミヒラーケトン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤;トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等の光カチオン重合開始剤等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0054】
上記重合開始剤の使用量は、脂環式(メタ)アクリレート重合体の原料となる単量体成分100質量%に対して0.0001〜20質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.01〜10質量%である。
重合開始剤を2種以上用いる場合には、2種以上の重合開始剤の合計が上記割合であることが好ましい。
【0055】
本発明の脂環式(メタ)アクリレート重合体は、架橋されていても、架橋されていなくともよい。架橋されていない場合の重量平均分子量は、特に制限はないが、1000以上、10000000以下であることが好ましい。
上記重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC装置、展開溶媒;クロロホルム)によって以下の装置、及び、測定条件で測定することができる。
高速GPC装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
展開溶媒:クロロホルム
カラム:TSK−gel GMHXL ×2本
溶離液流量:1ml/min
カラム温度:40℃
【0056】
上述したように、重合性の(メタ)アクリロイル基を有し、重合体の原料となる一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートや一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートは、硬化性樹脂の原料としても好適に用いることができる。これらの脂環式(メタ)アクリレートを原料として得られる硬化性樹脂は、UV硬化性や塗膜の硬度、耐溶剤性、可とう性、密着性等の種々の特性に優れた樹脂となる。
このような下記一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレート及び/又は下記一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする硬化性樹脂用材料もまた、本発明の1つである。
【0057】
【化8】
【0058】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表す。式(2)における脂環式骨格と(メタ)アクリロイルオキシ基との間の波線は、(メタ)アクリロイルオキシ基の配置が異なる立体異性体が存在することを表す。)
【0059】
本発明の硬化性樹脂用材料は、一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレート、一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートの少なくとも一方を含むものであればよいが、一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートと一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートの両方を含むものであることが好ましい。これら両方を含むものである場合、硬化性樹脂用材料中におけるこれらの比率を変えることで、得られる硬化性樹脂の特性を変化させることができる。例えば、一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートの割合を増やすと、得られる硬化性樹脂が耐熱分解性、可とう性に特に優れたものとなり、一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートの割合を増やすと、塗膜硬度、耐熱性、耐溶剤性に特に優れたものとなる。硬化性樹脂用材料中における一般式(2)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートと一般式(3)で表される構造の脂環式(メタ)アクリレートとのモル比は、求められる特性に応じて調整すればよい。
上記脂環式(メタ)アクリレート重合体の原料となる脂環式(メタ)アクリレートや、上記硬化性樹脂用材料に含まれる脂環式(メタ)アクリレートとしては、本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法により得られた脂環式(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0060】
本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法は、上述の構成よりなり、少量の触媒かつ無溶媒で反応を行うことが可能であることから、従来の製造方法よりもより簡略な工程で、廃棄物(排水)を大幅に低減でき、触媒による装置の腐食も抑制することが可能な脂環式(メタ)アクリレートを製造することができる、効率的かつ経済的な製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0062】
反応収率、及び、脂環式(メタ)アクリレートの異性体の比率は、ガスクロマトグラフィー(Agilent社製、6850)により測定した。
【0063】
1.脂環式(メタ)アクリレートの合成
実施例1
ガラス製フラスコにトリフルオロメタンスルホン酸6mgとアクリル酸14.4gを仕込み、7体積%酸素含有窒素を10ml/minにて吹き込みながら、ボトムを80℃のオイルバスに浸け撹拌した。アクリル酸288g、5−エチリデン−2−ノルボルネン480g、2,5−ジ(t−ブチル)ヒドロキノン0.8gの混合液を徐々に滴下し、2時間かけて全量を加えた。滴下しながらオイルバス温度を徐々に上昇させ、1時間かけて100℃まで到達させた。滴下後5時間、100℃で撹拌を続けた後、反応液を40℃まで冷却した。反応収率は95mol%であった(ETCHA/ENBA=3/7(モル比))。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8gを添加し40℃で1時間撹拌し、EC3314A0.8gを添加し、7体積%酸素含有窒素を10ml/minで吹き込みながら1〜2kPa、120〜160℃にて蒸留を行った。得られた脂環式(メタ)アクリレートは691g、合計収率は90mol%であった(ETCHA/ENBA=3/7(モル比))。
なお、ETCHAとは、上記一般式(2−1)、(2−2)において、R、Rのどちらか一方がメチル基で他方が水素原子であり、Rが水素原子である構造の脂環式(メタ)アクリレートであり、ENBAとは、上記一般式(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)において、R、Rのどちらか一方がメチル基で他方が水素原子であり、Rが水素原子である構造の脂環式(メタ)アクリレートである。
【0064】
実施例2
ガラス製フラスコにビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミン112mgとアクリル酸7.2gを仕込み、7体積%酸素含有窒素を10ml/minにて吹き込みながら、ボトムを30℃のオイルバスに浸け撹拌した。アクリル酸288g、5−エチリデン−2−ノルボルネン480g、2,5−ジ(t−ブチル)ヒドロキノン0.8gの混合液を徐々に滴下した。滴下しながら、オイルバス温度を徐々に上昇させ、ボトム内温が35〜45℃の範囲を維持しながら、2時間かけて全量を加えた。滴下後5時間、40℃で撹拌を続けた。反応収率は90mol%であった(ETCHA/ENBA=7/3(モル比))。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8gを添加し40℃で1時間撹拌し、EC3314A0.8gを添加し、7体積%酸素含有窒素を10ml/minで吹き込みながら1〜2kPa、120〜160℃にて蒸留を行った。得られた脂環式(メタ)アクリレートは652g、合計収率は85mol%であった(ETCHA/ENBA=7/3(モル比))。
【0065】
実施例3〜7、比較例1〜7
触媒とアクリル酸とを反応器に仕込み、40℃で撹拌しながら脂環式ジエン化合物を1時間かけて滴下したのち、40℃に保持したまま所定の時間熟成した。使用した触媒の種類と量、熟成時間(反応時間)、及び、得られた脂環式(メタ)アクリレートの収率を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表の収率の欄で、「−」は、カチオン重合による高粘度化により収率の分析が不可能であったことを意味する。
表1に記載の触媒のうち、TfOH、TfNH、及び、TPAはそれぞれ以下のものである。
TfOH:トリフルオロメタンスルホン酸
TfNH:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミン
TPA:タングストリン酸
【0068】
実施例8
ガラス製フラスコにトリフルオロメタンスルホン酸3mgとメタクリル酸4.3gを仕込み、7%酸素含有窒素を2ml/minにて吹き込みながら、ボトムを80℃のオイルバスに浸け撹拌した。メタクリル酸43.0g、5−エチリデン−2−ノルボルネン60.1g、2,5−ジ(t−アミル)ヒドロキノン0.1gの混合液を徐々に滴下し、2時間かけて全量を加えた。滴下しながらオイルバス温度を徐々に上昇させ、2時間かけて100℃まで到達させた。滴下後2時間、100℃で撹拌を続けた後、反応液を60℃まで冷却した。反応収率は95mol%であった(ETCHMA/ENBMA=2/8)。りん酸二水素一ナトリウム24mgを添加し60℃で1時間撹拌し、EC3314A0.1gを添加し、7%酸素含有窒素を2ml/minで吹き込みながら1〜2kPa、120〜160℃にて蒸留を行った。得られた脂環式(メタ)アクリレートは92.6g、合計収率は90mol%であった(ETCHMA/ENBMA=2/8)。
なお、ETCHMAとは、上記一般式(2−1)、(2−2)において、R、Rのどちらか一方がメチル基で他方が水素原子であり、Rがメチル基である構造の脂環式(メタ)アクリレートであり、ENBMAとは、上記一般式(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)において、R、Rのどちらか一方がメチル基で他方が水素原子であり、Rがメチル基である構造の脂環式(メタ)アクリレートである。
【0069】
実施例9
ガラス製フラスコにビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミン14mgとメタクリル酸8.6gを仕込み、7%酸素含有窒素を2ml/minにて吹き込みながら、ボトムを30℃のオイルバスに浸け撹拌した。アクリル酸43.0g、5−エチリデン−2−ノルボルネン60.1g、2,5−ジ(t−アミル)ヒドロキノン0.1gの混合液を徐々に滴下した。滴下しながら、オイルバス温度を徐々に上昇させ、ボトム内温が30〜40℃の範囲を維持しながら、4時間かけて全量を加えた。滴下後2時間、50℃で撹拌を続けた。反応収率は82mol%であった(ETCHMA/ENBMA=6/4)。りん酸二水素一ナトリウム24mgを添加し60℃で2時間撹拌し、EC3314A0.1gを添加し、7%酸素含有窒素を2ml/minで吹き込みながら1〜2kPa、120〜160℃にて蒸留を行った。得られた脂環式(メタ)アクリレートは79.1g、合計収率は77mol%であった(ETCHMA/ENBMA=6/4)。
【0070】
実施例10〜11、比較例8〜9
触媒とメタクリル酸とを反応器に仕込み、40℃で撹拌しながら脂環式ジエン化合物を1時間かけて滴下したのち、40℃に保持したまま所定の時間熟成した。使用した触媒の種類と量、熟成時間(反応時間)、及び、得られた脂環式(メタ)アクリレートの収率を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
2.脂環式(メタ)アクリレート樹脂の物性評価
実施例12〜14、比較例10
上記実施例で合成した脂環式アクリレートを用いて、ETCHAとENBAの含有率(mol%)の異なる3種類の樹脂用材料1〜3を調製した。各樹脂用材料の異性体組成を表3に示す。これら樹脂用材料1〜3と、比較用に脂環式アクリレートの代表的化合物であるイソボルニルアクリレート(IBOA)とから以下の方法で樹脂を製造し、得られた樹脂の各種物性評価を行った。評価結果を表4に示す。なお、樹脂用材料1〜3から得られた樹脂をそれぞれ樹脂1〜3とし、IBOAから得られた樹脂を樹脂4とした。
評価方法:試料100部に光重合開始剤3部(イルガキュア184:BASF社製)と熱重合開始剤3部(カヤカルボBic−75:化薬アクゾ社製)を添加し、平均膜厚30μmの塗膜を作成し、UV照射(66J/cm)、ポストキュア(200℃、2時間)を行ったのち、硬化膜について各種物性を実施した。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
表4に示す各種物性の評価は以下の基準により行った。
UV硬化性:タックレスまでの照射時間 ○:10秒以内、△:30秒以内、×:30秒超
硬度:鉛筆硬度試験 ○:H以上、△:HB〜B、×:2B以下
耐熱分解性:5%重量減少温度 ○:300℃以上、△:280℃以上、×:280℃未満
耐熱性:Tg(DSC) ○:80℃以上、△:60℃以上、×:60℃未満
耐溶剤性:アセトン拭き取り ○:影響なし、△:白濁する、×:溶ける
可とう性:フィルム剥ぎ取り ○:やや脆い、△:脆い、×:非常に脆い
【0076】
実施例1〜11、比較例1〜9の結果から、本発明の脂環式(メタ)アクリレートの製造方法により製造することで、少量の触媒量で、水洗工程や乾燥工程を行うことなく高い収率で脂環式(メタ)アクリレートが得られることが確認された。中でも、有機化合物からなる超酸を触媒として少量用いた場合に特に高い収率で脂環式(メタ)アクリレートが得られることが確認された。
また、実施例1、2、8、9の結果から、使用する触媒や反応温度を変化させることで、生成する脂環式(メタ)アクリレートの異性体組成を変化させることが可能であることが確認された。
更に実施例12〜14、比較例10の結果から、イソボルニルアクリレート(IBOA)と比較して、本発明の脂環式アクリレートが優れた性能を有することが明らかになった。また、ETCHAを主成分とする樹脂用材料1から得られた樹脂では耐熱分解性と可とう性に優れた硬化物が得られ、ENBAを主成分とする樹脂用材料3から得られた樹脂では硬度、耐熱性、耐溶剤性に優れた硬化物が得られた。すなわち、ETCHAとENBAとは異なる特徴を有する重合性脂環式アクリレートであり、どちらかの成分に偏った組成の脂環式アクリレートを得る価値は大きいことが確認された。