(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の位置関係は、前記第一の金属部材及び前記第二の金属部材のいずれか一方が他方を囲んで配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のX線発生装置。
前記所定の位置関係は、前記第二の金属部材の配置方向に沿って前記第一の金属部材が配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のX線発生装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
[第1実施形態]
図1を参照して、本実施形態に係るX線発生装置の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係るX線発生装置を示す概略構成図である。
【0018】
X線発生装置1は、開放型であり、使い捨てに供される密封型と異なり、真空状態を任意に作り出すことができ、ターゲット部Tや電子銃部3のカソード等の交換を可能にしている。X線発生装置1は、動作時に真空状態になり、導電性材料、例えばステンレスからなる円筒形状の筒状部(筐体)5を有している。筒状部5は、下側に位置する電子銃収容部5aと上側に位置するターゲット保持部5bとからなり、ターゲット保持部5bはヒンジ(不図示)を介して電子銃収容部5aに取り付けられている。従って、ターゲット保持部5bが、ヒンジを介して横倒しになるように回動することで、電子銃収容部5aの上部を開放させることができ、電子銃収容部5a内に収容されている電子銃部3(カソード)へのアクセスを可能にする。
【0019】
ターゲット保持部5b内には、集束レンズとして機能する筒状のコイル部7と、偏向コイルとして機能する筒状のコイル部(偏向部)9が設けられると共に、コイル部7,9の中心を通るよう、筒状部5の長手方向に電子通路11が延在している。電子通路11はコイル部7,9で包囲される。ターゲット保持部5bの下端にはディスク板13が蓋をするように固定され、ディスク板13の中心には、電子通路11の下端側に一致させる電子導入孔13aが形成されている。
【0020】
ターゲット保持部5bの上端は円錐台に形成され、頂部には、電子通路11の上端側に位置してX線出射窓を形成する透過型のターゲット部Tが装着されている。ターゲット部Tは、接地させた状態で電子通路11の上端部を真空封止するように、図示しない着脱構造によって着脱自在に固定されているため、消耗品であるターゲット部Tの交換も可能になる。
【0021】
電子銃収容部5aには真空ポンプ17が固定され、真空ポンプ17は筒状部5内を高真空状態にするためのものである。すなわち、X線発生装置1が真空ポンプ17を装備することによって、ターゲット部Tやカソード等の交換が可能になっている。
【0022】
筒状部5の基端側には、電子銃部3との一体化が図られたモールド電源部19が固定されている。モールド電源部19は、電気絶縁性の樹脂(例えば、エポキシ樹脂)でモールド成形させたものであると共に、金属製のケース内に収容されている。
【0023】
モールド電源部19内には、高電圧(例えば、−数十kV以下)を発生させるようなトランスを構成させた高圧発生部(不図示)が封入されている。モールド電源部19は、下側に位置して直方体形状をなすブロック状の電源本体部19aと、電源本体部19aから上方に向けて電子銃収容部5a内に突出する円柱状のネック部19bとからなる。高圧発生部は、電源本体部19a内に電気絶縁性の樹脂によって封入されている。ネック部19bの先端部には、電子通路11を挟むように、ターゲット部Tに対峙させるよう配置させた電子銃部3が装着されている。モールド電源部19の電源本体部19a内には、高圧発生部に電気的に接続させた電子放出制御部(不図示)が封入されている。電子放出制御部は、電子銃部3に接続されており、電子の放出のタイミングや管電流などを制御している。
【0024】
続いて、ターゲット部Tについて説明する。
図2は、ターゲット部を基板の第1主面側から見た図である。
図3は、
図2におけるIII−III線に沿った断面構成を示す図である。なお、以降のターゲット部T〜T10においては、図示を容易にするため、図示上における各構成の大きさや離間距離等は、実際の数値条件と必ずしも適合しない。すなわち、各図において、各構成の寸法比率は実際のものとは異なる場合があり、実際の構成と必ずしも一致していない。また、以下の説明においては、図に示す方向(X方向、Y方向)を説明に用いる。
【0025】
図2及び
図3に示すように、ターゲット部Tは、基板21と、ターゲット(第一の金属部材)23と、導電層25と、目印部(第二の金属部材)27と、を有しており、X線出射窓を兼ねた透過型ターゲットとなっている。基板21は、電子入射によるX線の発生が少なく、X線透過性及び放熱性に優れた電気的な絶縁材料、例えばダイヤモンドからなり、互いに対向する主面として、平面部である第1及び第2主面21a,21bを有した平板状部材である。第1主面21aが電子入射側の面、第2主面21bがX線出射側の面であって、第1及び第2主面21a,21bの対向方向Aに沿った方向における基板21の厚みは、例えば300μm程度に設定されている。
【0026】
ターゲット23は、基板21の第1主面21a側に位置している。ターゲット23は、基板21において対向方向Aに延びる孔部、具体的には第1主面21a側から有底状に形成された孔部Hに埋設されている。ターゲット23は、基板21とは異なる材料からなり、電子ビームEBの入射によってX線を発生する金属(例えば、タングステン、金、白金等)によって円柱状に形成されており、例えば対向方向Aから見た第1主面21a側の端面である電子入射面の外径(直径)D1が100nm〜2μm程度、対向方向Aに沿った方向の長さ(厚さ)L1が500nm〜4μm程度とされている。本実施形態では、ターゲット23の金属としてタングステンを採用し、ターゲット23の外径D1を例えば500nm、長さL1を例えば1μmとしている。
【0027】
ターゲット23は、基板21に複数(ここでは8つ)配置されており、その配置に規則性を有している。ターゲット23は、後述する目印部27を中心とする仮想円Sの円周上に配置されており、目印部27を取り囲んでいる。ターゲット23は、目印部27を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。仮想円周上で隣り合うターゲット23同士は、等間隔とされている。ターゲット23だけで見ると、ターゲット23は、X方向に沿って一直線上に所定の間隔(等間隔)を有して配置されていると共に、Y方向に沿って一直線上に所定の間隔(等間隔)を有して配置されている。
【0028】
導電層25は、基板21の第1主面21a側に形成されており、電子ビームEBによる第1主面21aの帯電を抑制すると共に、電子ビームEBに対して第1主面21aを保護する。導電層25は、例えば、遷移元素(より好ましくは第一遷移元素)を含む導電性材料からなり、例えばチタンやクロム、及びそれらの導電性化合物からなる導電性薄膜であって、ここではチタン薄膜とする。導電層25の対向方向Aに沿った方向の長さ(厚さ)は、例えば50nm程度であり、ターゲット23の長さL1よりも小さい。導電層25は、例えば、第1主面21a上に物理蒸着(PVD)等の蒸着によって形成する。また、導電層25として、不純物(例えば、ボロン等)をドープしたダイヤモンドを用いてもよく、この場合、マイクロ波プラズマCVD法により、ダイヤモンド粒子を生成及び成長させてダイヤモンド層を形成し、形成したダイヤモンド層にボロンをドーピングして形成する。なお、本実施形態においては、導電層25はターゲット23の電子入射面を露出するように形成されているが、覆うように形成してもよい。
【0029】
目印部27は、基板21の第1主面21a側に位置し、導電層25上に配置されている。目印部27は、ターゲット23の位置を特定する際、基準となる位置情報を発生させる部分である。目印部27は、基板21の第1及び第2主面21a,21bの対向方向Aから見て、ターゲット23と重ならないように離間して配置されている。目印部27は、略円形形状を呈しており、複数(ここでは3つ)配置されている。目印部27は、ターゲット23に対して所定の位置関係を有して配置されている。具体的には、目印部27は、ターゲット23が配置されている位置を円周とする仮想円Sの中心にそれぞれ配置されており、ターゲット23に取り囲まれている。目印部27だけで見ると、目印部27は、その配置に規則性を有しており、X方向に沿って一直線上に所定の間隔(等間隔)を有して配置されている。なお、本実施形態においては、目印部27は導電層25上に形成されているが、導電層25で目印部27を覆ってもよい。
【0030】
目印部27とターゲット23との離間距離d(目印部27とターゲット23において対向する外縁同士間における最短距離)は、それぞれ、例えば10〜50μm程度である。なお、ターゲット23の外径D1が離間距離dと比較して十分に小さい場合には、仮想円Sの半径を離間距離dとして近似することもできる。目印部27は、基板21とは異なる材料からなる金属(例えば、タングステン、金、白金等)によって円盤状に形成されている。本実施形態では、目印部27の金属として、ターゲット23と同様に、タングステンを採用している。
【0031】
目印部27は、例えば対向方向Aから見た外径(直径)D2が3〜10μm程度、対向方向Aに沿った方向の長さ(厚さ)L2が50〜500nm程度の扁平な円柱状である。本実施形態では、目印部27の外径D2を例えば5μm、長さL2を例えば200nmとしている。目印部27の外径D2は、ターゲット23の外径D1よりも大きい(D2>D1)。すなわち、目印部27の表面積(基板21の第1及び第2主面21a,21bの対向方向Aにおける電子入射側から見た面積)は、ターゲット23の表面積よりも大きい。目印部27の長さL2は、ターゲット23の長さL1よりも短く(L2<L1)、また、導電層25の対向方向Aに沿った方向の長さよりは大きい。
【0032】
再び、
図1を参照する。X線発生装置1は、反射電子検出部(信号取得部)としての反射電子検出器31と、制御部としてのコントローラ33と、ターゲット部T(ターゲット23)の機械的な移動機構となるXYステージ34と、を備えている。反射電子検出器31は、図示しない経路を介して、又は電子通路11中における、ターゲット部Tに向かう電子ビームEBに対して互いに影響を受けないような位置に、ターゲット部Tを臨むようにターゲット保持部5bの上端側に配置されており、ターゲット部Tで反射された反射電子を検出し、それをターゲット部Tに入射した電子ビームEBに基づいて発生する入射信号として取得する。また、吸収電子検出部として、電流検出器(入射信号取得部)32を備えていてもよい。電流検出器32は、ターゲット部Tに電気的に接続され、ターゲット部Tに吸収された電子ビームEBの量を示す吸収電流(入射信号)を検出し、その情報を制御部であるコントローラ33に出力する。なお、電流検出部を別途設けることなく、コントローラ33が電流検出部を備えていてもよい。また、反射電子検出部と吸収電子検出部とを、両方備えていてもよいし、いずれか一方のみでもよい。また、制御部としては、単一のコントローラ33でX線発生装置1に関する制御を行ってもよいし、複数のコントローラ33を備え、それらの協働によってX線発生装置1に関する制御を行ってもよい。
【0033】
コントローラ33は、X線発生装置1に関する各種の制御を行い、例えばモールド電源部19の高圧発生部及び電子放出制御部を制御する。これにより、電子銃部3とターゲット部T(ターゲット23)との間に所定の電流・電圧が印加され、電子銃部3から電子ビームEBが出射する。電子銃部3から出射された電子ビームEBは、コントローラ33により制御されたコイル部7にて適切に集束されて、ターゲット部Tに入射してターゲット部T上に集束領域を形成する。この集束領域は、電子ビームEBのターゲット部T上における照射野Eであって、電子ビームEBがターゲット部T上に入射した際に電子入射形跡の生じる領域とほぼ等しい。そして、照射野Eは、
図2に示すように対向方向Aに沿った、ターゲット部Tに垂直な方向(電子入射方向)から見て、その範囲内にターゲット23が含まれると共に、その外縁はターゲット23と目印部27との離間領域内に含まれている。離間領域の外縁は、上述したターゲット23の中心と同心な仮想円Sと等しいため、照射野Eの外径(直径)EDは、ターゲット23の外径D1よりも大きく、仮想円Sの外径(直径)SDよりも小さくされている(D1<ED<SD)。なお、照射野Eの外径EDは、例えば10〜30μm程度である。
【0034】
このように、目印部27は、集束領域である照射野Eがターゲット23に位置するときに、照射野Eの領域外に配置されているため、目印部27によるノイズ成分が抑制された状態で所望の焦点径を持ったX線XRを取り出すことができる。換言すれば、ターゲット23へ電子ビームEBを照射してX線を取り出す際には、コントローラ33はコイル部7を、確実にターゲット23を含みつつ、目印部27を含まないような照射野Eとなるように制御することで、目印部27によるノイズ成分が抑制された状態で所望の焦点径を持ったX線XRを取り出すことができる。
【0035】
また、コントローラ33は、反射電子検出器31が検出する反射電子(電流検出器32が検出する吸収電子)の強度をリアルタイムに監視し、ターゲット部Tからの反射電子(吸収電子)の強度とターゲット部Tにおいて設定された位置情報に基づいて、コイル部9を制御する。このとき、コイル部9は、電子銃部3からの電子ビームEBを、電子ビームEBの照射野Eがターゲット部T上で二次元的に走査するように偏向する。コイル部9により走査される電子ビームEBのターゲット部T上の走査領域(範囲)は、例えば100〜150μm程度である。また、電子ビームEBのターゲット部T上への入射領域をさらに大きく移動させたい場合には、コントローラ33の制御に基づき、XYステージ34によってターゲット部T(ターゲット23)自体をターゲット保持部5bに対して移動させてもよい。このように、コイル部9による電子ビームEBの偏向と、XYステージ34によるターゲット部T(ターゲット23)自体の移動とを組み合わせることで、ターゲット23をより広範囲に活用することができる。
【0036】
電子ビームEBを物質に照射した時、物質の原子番号に依存する量の反射電子が放出される(原子番号が大きいほど、多くの反射電子を放出する)。本実施形態では、ダイヤモンドからなる基板21に、タングステンからなるターゲット23と、タングステンからなる目印部27とを配置しているので、より多くの反射電子を検出した場所をターゲット23又は目印部27と判定することができる。そこで、コントローラ33は、より多くの反射電子を得られるように電子ビームEBの偏向を制御する。
【0037】
一方で、電子ビームEBを物質に照射した時には、物質の原子番号に依存する量の電子の吸収も生じる。すなわち、原子番号が大きいほど吸収電流値は小さく、原子番号が小さいほど吸収電流値は大きい。本実施形態では、ダイヤモンドからなる基板21に、タングステンからなるターゲット23と、タングステンからなる目印部27とを設けているので、吸収電流値が小さい場所をターゲット23又は目印部27と判定することができる。そこで、コントローラ33は、吸収電流値がより小さくなるように電子ビームEBの偏向を制御する。なお、本実施形態においては、吸収電流はターゲット電流と等しい。
【0038】
ターゲット23の特定方法について、より詳細に説明する。
図4は、ターゲットの特定方法を示すフローチャートである。
【0039】
図4に示すように、まず、電子銃部3は、電子ビームEBを出力する(ステップS01)。続いて、コントローラ33は、偏向部であるコイル部9を制御し、電子ビームEBをターゲット部T上で走査させる(ステップS02)。そして、反射電子検出器31が検出する反射電子(電流検出器32が検出する吸収電子)の強度を監視して目印部27を検索し、目印部27が検出されたか否かを判定する(ステップS03)。ターゲット部Tにおいて、目印部27は、ターゲット23よりも表面積が大きいため、電子ビームEBの照射野Eに入った際の信号の変化(反射電子や吸収電子の強度変化)が、ターゲット23が電子ビームEBの照射野Eに入った際の信号の変化よりも大きくなる。そのため、ターゲット部Tにおける目印部27の位置情報はターゲット23と比較して確実に取得され得る。目印部27が検出されたと判定した場合には、ステップS04に進む。一方、目印部27が検出されない場合には、XYステージ34によりターゲット部Tを移動させる(ステップS06)。
【0040】
コントローラ33は、目印部27の位置情報を取得すると、目印部27が配置されている位置が複数のターゲット23の位置する仮想円の円周の中心であるとし、目印部27を中心とする仮想円を求める。コントローラ33は、仮想円を求めると、その円周上の位置情報とターゲット部Tにおいて設定されているターゲット23の位置情報、及び、信号の強度(反射電子や吸収電子の強度)に基づいて、ターゲット23の位置を検索し、ターゲット23が検出されたか否かを判定する(ステップS04)。ターゲット23が検出されたと判定した場合には、コントローラ33は、ターゲット23に電子ビームEBの照射野が位置するように、偏向部であるコイル部9を制御する(ステップS05)。または、目印部27の位置情報からターゲット23の位置を予測し、目印部27を起点に速度を落として精密に再走査を行うことで、ターゲット23の位置を特定してもよい。一方、ターゲット23が検出されない場合には、コイル部7を制御して電子ビームEBのフォーカスを調整する(ステップS07)。以上のように、X線発生装置1では、ターゲット部Tにおいてターゲット23の位置が特定され、ターゲット23に電子ビームEBを照射して所望の焦点径を持ったX線を発生させる。
【0041】
また、本実施形態では、ターゲット23及び目印部27を共にタングステンとしているが、目印部27の対向方向Aにおける長さ(厚み)は、ターゲット23の対向方向Aにおける長さ(厚み)よりも短い。そのため、目印部27の反射電子(吸収電子)の強度は、ターゲット23の反射電子(吸収電子)の強度よりも小さい。これにより、ターゲット23及び目印部27を同じ材料によって形成しても、両者を区別することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、目印部27の表面積は、ターゲット23の表面積よりも大きい。これにより、X線発生装置1では、ターゲット部Tにおいて、基板21とは異なる物質の位置情報である目印部27の位置情報を確実に得ることができる。そして、ターゲット23が目印部27を囲んで配置されているため、ターゲット23の配置領域が明確になっている。したがって、X線発生装置1では、目印部27を基準としてターゲット23の位置を特定できる。その結果、X線発生装置1では、ターゲット部Tにおいてターゲット23を迅速且つ的確に特定し、偏向部であるコイル部9を制御することで電子ビームEBを入射させることができる。さらに、ターゲット23及び目印部27は、それぞれ、規則性を有して配置されているため、次のターゲット23及び目印部27への移動を容易に行うことができる。したがって、効率的にX線XRを発生させることができる。
【0043】
本実施形態では、ターゲット部Tにおいてターゲット23が複数配置されている。これにより、一のターゲット23が電子ビームEBの熱等により劣化した場合であっても、電子ビームEBをコイル部9により偏向させることにより、同じターゲット部Tに配置された他のターゲット23を用いることができる。したがって、一のターゲット23の劣化ごとにターゲット部Tをいちいち交換する必要がない。その結果、ターゲット23の交換頻度を下げることができるため、効率的にX線発生装置1を使用して、X線XRを発生させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、目印部27の長さL2は、ターゲット23の長さL1よりも短い。例えば、目印部27の厚みを大きくする(例えば、ターゲット23と同等程度になるように500nmよりも大きくする)と、以下のような問題が生じる可能性がある。すなわち、目印部27では、例えば40keV程度の電子ビームEBが照射されると、そのうちの0.3%はX線に変換され、99.7%は熱に変換される。ここで、目印部27が、基板21と底面のみで接触している場合、熱を外部に放出し難い。そのため、目印部27は、その厚みが大きい場合、電子ビームEBの照射による熱が蓄熱され、熱による破壊が生じ得る。つまり、ターゲット部Tの破損が生じ得るため、ターゲット部Tが使用不可能になってしまう可能性がある。対して、本実施形態では、目印部27の厚みをターゲット23よりも小さくしているため、目印部27の熱による破損を抑制することができる。
【0045】
本実施形態では、電子ビームEBの照射野が、目印部27とターゲット23との離間領域内に含まれている。すなわち、目印部27は、所望のX線を得るためにターゲット23に電子ビームEBが照射されたときの集束領域外に配置されている。これにより、X線発生装置1では、ターゲット23に電子ビームEBが照射されたときには目印部27に電子ビームEBが照射されない。したがって、X線発生装置1では、目印部27がX線に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0046】
なお、本実施形態においては、ターゲット23が基板21の孔部Hに埋設されると共に、目印部27が対向方向Aから見てターゲット23と重ならないように離間して配置された構造を備えている。このようなターゲット23を用いることで、入射する電子ビームEBの照射野Eではなく、ターゲット23の外径D1を支配的要素として、発生するX線の焦点径を決定するとともに、目印部27からのX線の影響を抑制することができる。
【0047】
一方、同様の構造として、大径なターゲットに対して、所望の焦点径領域を除いて、その周囲を電子遮蔽物で覆うことで、電子ビームに対して当該焦点径領域のみを露出させた構造(対向方向から見てターゲットと電子遮蔽部が重なった構造)も考えられる。しかしながら、電子遮蔽物は確実に電子を遮蔽するような材料で構成する必要があることから、電子遮蔽物へ電子ビームEBが入射すれば、X線が発生する可能性が高い。このようなX線はノイズ成分になることから望ましくはないが、電子遮蔽物で焦点領域を決めているため、ノイズ成分を抑制するために焦点径領域から電子遮蔽物を離間させることもできない。よって、ターゲットから所望の焦点径のX線を得るためには、結局、電子ビームEBの照射野E自体を焦点径に合わせて微小に絞り込む必要がある。しかしながら、電子ビームEBの照射野Eの微小化は、電子ビームEBを高度に制御する必要があり、ターゲットの微小化と比較して非常に困難である。よって、当該構造ではX線焦点の微小化への対応は不十分であると判断される。
【0048】
上記実施形態に加えて、目印部27は、以下のような構成を有していてもよい。
図5は、他の実施形態に係るX線発生装置のターゲットの対向方向に沿った方向での断面構成を示す図である。
図5に示すように、目印部27は、ターゲット23と同様、基板21に埋設されている。そして、目印部27は、位置情報を示すのみならず、電子ビームEBの入射によって発生するX線を利用するためのターゲットとしても利用することができる。そして、目印部27の表面積(基板21の第1及び第2主面21a,21bの対向方向Aにおける電子入射側から見た面積)は、ターゲット23の表面積よりも大きいため、より大きな焦点径を有するX線が必要な場合には、目印部27への電子ビームEBの入射によって発生するX線を利用することができる。つまり、目印部27(第二の金属部材)は、位置情報を提供するための部材に限らず、X線発生用のターゲットが位置情報を提供するための部材を兼ねるように構成されていてもよい。
【0049】
図6(a)は、他の実施形態に係るX線発生装置のターゲット部を基板の第1主面側から見た図であり、
図6(b)は、
図6(a)におけるb−b線に沿った断面構成を示す図である。
図6に示すように、目印部27a,27b,27c,27dは、それぞれ、対向方向Aに沿った方向の長さ(厚さ)が異なっている。詳細には、目印部27a〜27dは、図示左側から図示右側に向かって徐々に長さが小さくなっている。目印部27において、一番長さの大きい目印部27(図示左側)の長さは、ターゲット23の長さよりも小さい。これにより、目印部27のそれぞれは、ターゲット23と識別可能とされていると共に、反射電子の強度が異なるため識別可能とされている。
【0050】
そのため、例えば目印部27aを中心とする仮想円の円周上に配置された全てのターゲット23を使用した後、その目印部27aとは異なる目印部27b,27cを容易に特定でき、この目印部27b,27cに基づいてターゲット23を特定することができる。つまり、目印部27a〜27cを識別可能とすることにより、一度使用した目印部27a〜27cに基づくターゲット23の検索が行われない。したがって、ターゲット部Tに配置された全てのターゲット23を効率良く使用することが可能となる。その結果、X線発生装置1では、効率的にX線XRを発生させることができる。なお、目印部27a〜27cは、長さがそれぞれ異なっていればよく、その形状は略円形形状に限定されない。
【0051】
図7は、他の実施形態に係るX線発生装置のターゲット部を基板の第1主面側から見た図である。
図7に示すように、目印部27のそれぞれは、表示部28を有している。表示部28には、数字(ここでは、「1」〜「4」)が表記されている。これにより、目印部27のそれぞれは、識別可能とされている。そのため、目印部27を表示部28により識別可能とすることにより、一度使用した目印部27に基づくターゲット23の検索が行われない。したがって、ターゲット部Tに配置された全てのターゲット23を効率良く使用することが可能となる。その結果、X線発生装置1では、効率的にX線XRを発生させることができる。
【0052】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。
図8は、第2実施形態に係るX線発生装置のターゲット部を基板の第1主面側から見た図である。
図8に示すように、ターゲット部T1は、基板21と、ターゲット23と、導電層25と、目印部27と、を有している。ターゲット部T1は、基板21、ターゲット23、導電層25及び目印部27の構成は第1実施形態と同様であり、ターゲット23及び目印部27の配置が第1実施形態と異なっている。
【0053】
ターゲット23は、基板21に複数(ここでは3つ)配置されており、その配置は規則性を有している。具体的には、ターゲット23は、X方向に沿って一直線上に所定の間隔(等間隔)を有して配置されている。ターゲット23は、目印部27に取り囲まれている。
【0054】
目印部27は、基板21の第1及び第2主面21a,21bの対向方向から見て、ターゲット23と重ならないように離間して配置されている。目印部27は、ターゲット23の中心をその中心とする仮想円Sの円周上に複数(ここでは6つ)配置されている。ターゲット部T1には、ターゲット23を取り囲む複数の目印部27からなる群が複数(ここでは3つ)配置されている。目印部27は、ターゲット23を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。仮想円周上で隣り合う目印部27同士は、等間隔とされている。一対の目印部27の対向方向は、互いに略直交している。
【0055】
コントローラ33は、目印部27の位置情報を取得すると、目印部27が配置されている位置がターゲット23を中心とする仮想円Sの円周上であるとし、その仮想円Sの中心を求める。コントローラ33は、仮想円Sの中心を求めると、その中心の位置情報とターゲット部Tにおいて設定されているターゲット23の位置情報、及び、信号の強度(反射電子や吸収電子の強度)に基づいて、ターゲット23の位置を特定する。コントローラ33は、ターゲット23に電子ビームEBの照射野が位置するように、偏向部であるコイル部9を制御する。または、目印部27の位置情報からターゲット23の位置を予測し、目印部27を起点に速度を落として精密に再走査を行うことで、ターゲット23の位置を特定してもよい。以上のように、X線発生装置1では、ターゲット部Tにおいてターゲット23の位置が特定され、ターゲット23に電子ビームEBを照射して所望の焦点径を持ったX線を発生させる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、ターゲット部Tにおいてターゲット23を中心とする仮想円Sの円周上に複数の目印部27が配置されている。このような構成の場合でも、目印部27を基準としてターゲット23の位置を特定できる。したがって、ターゲット部Tにおいて検出し易く、ターゲット23との識別が可能な目印部27を備えているため、ターゲット部Tにおいてターゲット23を迅速且つ的確に特定できる。
【0057】
上記実施形態の構成の他に、ターゲット部T1は
図9に示すような構成であってもよい。
図9は、他の形態に係るX線発生装置のターゲット部を基板の第1主面側から見た図である。
図9に示すように、ターゲット部T1では、ターゲット23を中心とする仮想円S上に、複数(ここでは4つ)の目印部27が配置されている。目印部27は、一のターゲット23を中心とする仮想円Sと他のターゲット23を中心とする仮想円Sとのいずれの円周上にも位置し、それぞれのターゲット23の目印部として機能する。
【0058】
[第3実施形態]
続いて、第3実施形態について説明する。
図10は、第3実施形態に係るターゲット部を基板の第1主面側から見た図である。
図11は、
図10におけるX−X線に沿った断面構成を示す図である。
【0059】
図10及び
図11に示すように、ターゲット部T2は、基板21と、ターゲット23と、導電層25と、目印部35と、を有している。ターゲット部T2は、基板21、ターゲット23、導電層25の構成は第1実施形態と同様であり、目印部35の構成が第1実施形態と異なっている。
【0060】
目印部35は、導電層25上に配置されている。目印部35は、基板21の第1主面21a側の略全面に配置されており、ターゲット23を中心とする仮想円に沿って開口部35aが形成されている。開口部35aはその内部に1つのターゲット23を含むように、つまりターゲット23ごとに形成されている。目印部35の開口部35aは、内径が10〜50μm程度である。
【0061】
上記ターゲット部T2においてターゲット23を特定する場合、コントローラ33は、目印部35の開口部35aを検索し、開口部35aのエッジ(開口端)を検出する。コントローラ33は、開口部35aのエッジを検出すると、開口部35aの中心を求める。コントローラ33は、開口部35aの中心を求めると、その中心の位置情報とターゲット部T2において設定されているターゲット23の位置情報、及び反射電子(吸収電子)の強度に基づいて、ターゲット23の位置を特定する。つまり、本実施形態においては、目印部35のうち、開口部35a及び開口部35aのエッジ(開口端)がターゲット23に対して所定の位置関係を有する。
【0062】
上記実施形態では、導電層25が基板21の第1主面21a上に配置され、導電層25上に目印部35が配置されている構成を一例に説明したが、導電層25は、基板21の第1主面21a、ターゲット23及び目印部35上に配置されていてもよい。すなわち、目印部35は、基板21の第1主面21a上に直接配置されていてもよい。なお、目印部35が基板21の第1主面21aの略全面を覆っている場合には、導電層25は開口部35aのみを覆っても良く、その際、ターゲット23の電子入射面を露出させてもよい。
【0063】
上記実施形態では、開口部35aを略円形形状としているが、開口部は多角形形状であってもよい。
【0064】
[第4実施形態]
続いて、第4実施形態について説明する。
図12は、第4実施形態に係るX線発生装置のターゲット部を基板の第1主面側から見た図である。
図12に示すように、ターゲット部T3は、基板21と、ターゲット23と、導電層25と、目印部37と、を有している。基板21、ターゲット23、導電層25の構成は第1実施形態と同様であり、目印部37の構成が第1実施形態と異なっている。
【0065】
ターゲット23は、目印部37の中心をその中心とする仮想円Sの円周上に複数(ここでは6つ)配置されている。ターゲット部T3には、目印部37を取り囲む複数のターゲット23からなる群が複数(ここでは3つ)配置されている。
【0066】
目印部37は、複数(ここでは6つ)配置されている。目印部37は、ターゲット23に対して所定の位置関係を有して配置されている。具体的には、目印部37は、ターゲット23が円周上に配置されている仮想円Sの中心にそれぞれ位置している。目印部37だけで見ると、目印部37は、X方向に沿って一直線上に所定の間隔(等間隔)を有して配置されていると共に、Y方向に沿って一直線上に所定の間隔(等間隔)を有して配置されている。
【0067】
目印部37は、アーチ形状を呈している。詳細には、目印部37は、平坦な平坦辺37aと、この平坦辺37aの両端部から互いに平行に延びる一対の側辺37b,37cと、一対の側辺37b,37cの端部同士を接続する円弧状(半円形状)の湾曲辺37dと、を有し、いわゆる砲弾型を呈している。このような形状により、目印部37は、方向性を有している。つまり、目印部37は、例えば円形形状を呈する目印部とは異なり、各辺の形状の相違を利用してその配置の仕方により方向が一義に設定される。例えば、
図12に示すように、目印部37は、平坦辺37aが向いている方向に目印部37が位置するように配置されている。つまり、目印部37を第1の目印部37と第2の目印部37とに区別すると、第1の目印部37は、隣接する第2の目印部37の位置情報を有している。なお、この目印部37の場合、平坦辺37aではなく湾曲辺37dを他の目印部37の位置を示すように配置してもよい。
【0068】
ターゲット部T3では、図中の矢印の方向に沿って目印部37が検索される。つまり、コントローラ33は、ある目印部37に基づいてターゲット23を特定し、その目印部37の仮想円Sの円周上に配置されたターゲット23が全て使用された場合、その目印部37の方向(平坦辺37aの向いている方向)から次の目印部37を取得してコイル部9を制御し、次の目印部37を検出する。
【0069】
以上説明したように、本実施形態では、目印部37がユニークな形状を呈しており、方向性を有している。これにより、ある目印部37を中心とする仮想円Sの円周上に配置された全てのターゲット23を使用した後、もう一度その仮想円Sの中心に位置する目印部37に戻ることにより、次の目印部37が配置されている方向を得ることができる。したがって、次の目印部37への移動を容易に行うことができ、効率的に次の目印部37を検出することができる。また、目印部37を確実に検出できるため、その目印部37の周りに配置された全てのターゲット23を使用することが可能となる。その結果、X線発生装置1では、効率的にX線XRを発生させることができる。
【0070】
上記実施形態では、目印部37の形状を砲弾型として目印部37に方向性を持たせる構成を一例に説明したが、方向性を有する目印部の形状はこれに限定されない。
図13は、他の実施形態に係るX線発生装置のターゲット部を基板の第1主面側から見た図である。
図13に示すように、ターゲット部T4は、基板21と、ターゲット23と、導電層25と、目印部39と、を有している。ターゲット部T4は、基板21、ターゲット23、導電層25の構成は第2実施形態と同様であり、目印部39の構成が第2実施形態と異なっている。
【0071】
目印部39は、導電層25上に配置されている。目印部39は、基板21の第1主面21a側の略全面に配置されており、ターゲット23を中心とする仮想円に沿って開口部39aが形成されている。つまり、本実施形態においては、目印部39のうち、開口部39a及び開口部39aのエッジ(開口端)がターゲット23に対して所定の位置関係を有する。開口部39aは、開口部39aのエッジから凹むように形成された凹部40を有している。凹部40は、隣接する目印部39の配置されている方向を向いて配置されている。これにより、目印部39は、方向性を有している。つまり、目印部39の開口部39aに設けられた凹部40を検出することにより、次の目印部39の配置されている方向を取得することができる。なお、凹部形状に限らず、開口部39aのエッジから突出するように形成された凸部形状でもよい。
【0072】
図14は、他の実施形態に係るX線発生装置のターゲット部を基板の第1主面側から見た図である。
図14に示すように、ターゲット部T5は、基板21と、ターゲット23と、導電層25と、目印部42と、を有している。ターゲット部T5は、基板21、ターゲット23、導電層25の構成は第1実施形態と同様であり、目印部42の構成が第1実施形態と異なっている。
【0073】
目印部42は、多角形形状を呈しており、ここでは六角形形状を呈している。目印部42の頂部(頂点)のそれぞれは、ターゲット23が配置されている方向に向いている。言い換えれば、ターゲット23は、目印部42の頂部の延長線上に配置されている。つまり、目印部42は、ターゲット23の配置されている方向を示す構成を有している。これにより、X線発生装置1では、目印部42の位置情報を取得した場合、目印部42の頂点の方向を走査することにより、ターゲット23をより迅速且つ的確に特定できる。更に、目印部42は、目印部42の一辺から突出するように形成された凸部43を有している。凸部43は、隣接する目印部42の配置されている方向を向いて配置されている。これにより、目印部42は、方向性を有している。つまり、目印部42の凸部43を検出することにより、次の目印部42の配置されている方向を取得することができる。なお、凸部形状に限らず、目印部42の一辺から凹むように形成された凹部形状でもよい。
【0074】
続いて、
図13におけるターゲット23の特定方法について説明する。
図15は、ターゲットの特定方法を示すフローチャートである。
【0075】
図15に示すように、まず、電子銃部3は、電子ビームEBを出力する(ステップS11)。続いて、コントローラ33は、偏向部であるコイル部9を制御し、電子ビームEBをターゲット部T上で走査させる(ステップS12)。そして、反射電子検出器31が検出する反射電子(電流検出器32が検出する吸収電子)の強度を監視して目印部42を検索し、目印部42が検出されたか否かを判定する(ステップS13)。目印部42が検出されたと判定した場合には、ステップS14に進む。一方、目印部42が検出されない場合には、XYステージ34によりターゲット部Tを移動させる(ステップS15)。
【0076】
コントローラ33は、目印部42の位置情報を取得すると、目印部42の頂部の延長線上にターゲット23が配置されているとして、その頂部の延長線上の位置情報とターゲット部Tにおいて設定されているターゲット23の位置情報、及び、信号の強度(反射電子や吸収電子の強度)に基づいて、ターゲット23の位置を特定し、ターゲット23に電子ビームEBの照射野が位置するように、偏向部であるコイル部9を制御する(ステップS14)。以上のように、X線発生装置1では、ターゲット部Tにおいてターゲット23の位置が特定され、ターゲット23に電子ビームEBを照射して所望の焦点径を持ったX線XRを発生させる。ターゲット23が劣化(消耗)した場合には、目印部42の凸部43に基づいて次の目印部42に移動し、上記の同様の手順によりX線XRを発生させる。
【0077】
上記実施形態では、目印部42の形状により、ターゲット23の配置されている方向を示しているが、目印部42にターゲット23の配置されている方向を示す表示(例えば、矢印等)を設けてもよい。
【0078】
[第5実施形態]
続いて、第5実施形態について説明する。
図16は、第5実施形態に係るX線発生装置のターゲット部を基板の第1主面側から見た図である。
図16に示すように、ターゲット部T6は、基板21と、ターゲット23と、導電層25と、目印部44a,44bと、を有している。基板21、ターゲット23、導電層25の構成は第1実施形態と同様であり、目印部44a,44bの構成が第1実施形態と異なっている。
【0079】
ターゲット23は、基板21に複数(ここでは11個)配置されており、その配置は規則性を有している。具体的には、ターゲット23は、X方向に沿って一直線上に所定の間隔(等間隔)を有して配置されている。
【0080】
目印部44a,44bは、ターゲット23を挟んで離間して配置されている。目印部44a,44bのそれぞれは、ターゲット23の配置方向(X方向)に沿って延在している。言い換えれば、ターゲット23は、目印部44a,44bの延在方向に沿って配置されている。目印部44a,44bのそれぞれは、テーパー形状を呈している。具体的には、目印部44aは、一端側(図示左側)から他端側(図示右側)に向かって先細りとなるテーパー形状を呈している。目印部44bは、他端側(図示右側)から一端側(図示左側)に向かって先細りとなるテーパー状を呈している。
【0081】
以上説明したように、本実施形態では、ターゲット23が目印部44a,44bの延在方向に沿って配置されている。これにより、ターゲット部T6では、ターゲット23の配置されている領域が明確になるため、効率的にターゲット23を特定することができる。また、目印部44a,44bは、テーパー形状を呈しているため、所定のターゲット23を含む電子ビームEBの照射野の範囲内に位置する面積が、ターゲット23ごとに異なる。換言すれば、目印部44a,44bはターゲット23ごとに対応した所定の位置関係を有する目印部の集合体であるとも言うことができる。そのため、電子ビームEBの移動に伴い目印部44a,44bの反射電子や吸収電子の強度が異なるので、目印部44a,44bの位置情報、ターゲット部T6において設定されているターゲット23の位置情報、及び、信号の強度(反射電子や吸収電子の強度)に基づいて、ターゲット23の位置を容易に特定できる。したがって、効率的にX線XRを発生させることができる。なお、目印部44a,44bのいずれか片方のみでも、同様の効果を得ることができる。
【0082】
[第6実施形態]
続いて、第6実施形態について説明する。
図17は、第6実施形態に係るX線発生装置のターゲット部を基板の第1主面側から見た図である。
図17に示すように、ターゲット部T7は、基板21と、ターゲット23と、導電層25と、目印部27と、を有している。基板21、ターゲット23、導電層25及び目印部27の構成は第1実施形態と同様であり、目印部27の配置が第1実施形態と異なっている。
【0083】
ターゲット23は、基板21に複数(ここでは11個)配置されており、その配置は規則性を有している。具体的には、ターゲット23は、X方向に沿って一直線上に所定の間隔(等間隔)を有して配置されている。
【0084】
目印部27は、ターゲット23の配置方向に沿って複数(ここでは6つ)配置されている。言い換えれば、ターゲット23は、目印部27の配置方向に沿って配置されている。目印部27は、X方向に沿って一直線上に所定の間隔(等間隔)を有して配置されている。
【0085】
以上説明したように、本実施形態では、ターゲット23が目印部27の配置方向に沿って配置されている。これにより、ターゲット部T7では、ターゲット23の配置されている領域が明確になるため、効率的にターゲット23を特定することができる。したがって、効率的にX線XRを発生させることができる。
【0086】
[第7実施形態]
続いて、第7実施形態について説明する。
図18は、第7実施形態に係るX線照射装置のターゲット部を基板の第1主面側から見た図である。
図18に示すように、ターゲット部T8は、基板21と、ターゲット23と、導電層25と、目印部46と、を有している。ターゲット部T8は、基板21、ターゲット23、及び導電層25の構成は第1実施形態と同様であり、目印部46の構成が第1実施形態と異なっている。
【0087】
目印部46は、導電層25上に配置されている。目印部46は、基板21の第1主面21a側から見て、格子状を呈しており、開口部46aを複数有している。つまり、ターゲット23は、目印部46に取り囲まれており、開口部46aはその中心に1つのターゲット23を含むように、つまりターゲット23ごとに形成されている。目印部46とターゲット23との離間距離は、例えば10〜50μm程度である。目印部46の幅は、例えば3〜10μmである。
【0088】
上記ターゲット部T8においてターゲット23を特定する場合、コントローラ33は、目印部46の位置情報を取得すると、目印部46の開口部46aのエッジを検出する。コントローラ33は、目印部46の開口部46aのエッジを検出すると、目印部46の中心を求める。コントローラ33は、目印部46の中心を求めると、その中心の位置情報とターゲット部T8において設定されているターゲット23の位置情報、及び信号の強度(反射電子や吸収電子の強度)に基づいて、ターゲット23の位置を特定する。つまり、本実施形態においては、目印部46のうち、開口部46a及び開口部46aのエッジ(開口端)がターゲット23に対して所定の位置関係を有する。
【0089】
上記実施形態に加えて、
図19に示すように、ターゲット部T8には、表示部47が設けられていてもよい。詳細には、目印部46の開口部46aの内側には、それぞれ、表示部47が設けられている。表示部47には、数字(ここでは、「1」〜「16」)が表記されている。これにより、目印部46では、各開口部46aのそれぞれが識別可能とされている。そのため、表示部47に基づいてターゲット部T8に配置された全てのターゲット23を効率良く使用することが可能となる。その結果、X線発生装置1では、効率的にX線XRを発生させることができる。
【0090】
[第8実施形態]
続いて、第8実施形態について説明する。
図20は、第8実施形態に係るX線発生装置のターゲット部を基板の第1主面側から見た図である。
図20に示すように、ターゲット部T9は、基板21と、ターゲット23と、導電層25と、目印部48a,48b,48cと、を有している。ターゲット部T9は、基板21、ターゲット23、及び導電層25の構成は第1実施形態と同様であり、目印部48a〜48cの構成が第1実施形態と異なっている。
【0091】
目印部48a〜48cは、それぞれ、形状が異なっている。具体的には、基板21の第1及び第2主面21a,21bの対向方向から見て、目印部48aは、円形形状を呈しており、目印部48bは、三角形形状を呈しており、目印部48cは、矩形形状を呈している。これにより、目印部48a〜48cは、それぞれ、識別可能とされている。
【0092】
以上のように、本実施形態では、目印部48a〜48cの形状がそれぞれ異なっており、目印部48a〜48cが識別可能とされている。そのため、例えば目印部48aを中心とする仮想円の円周上に配置された全てのターゲット23を使用した後、その目印部48aとは異なる目印部48b,48cを容易に特定でき、この目印部48b,48cに基づいてターゲット23を特定することができる。つまり、目印部48a〜48cを識別可能とすることにより、一度使用した目印部48a〜48cに基づくターゲット23の検索が行われない。したがって、ターゲット部T9に配置された全てのターゲット23を効率良く使用することが可能となる。その結果、X線発生装置1では、効率的にX線XRを発生させることができる。
【0093】
[第9実施形態]
続いて、第9実施形態について説明する。
図21は、第9実施形態に係るX線発生装置のターゲット部を基板の第1主面側から見た図である。
図21に示すように、ターゲット部T10は、基板21と、ターゲット23と、導電層25と、目印部50a,50b,50cと、を有している。ターゲット部T3は、基板21、ターゲット23、及び導電層25の構成は第1実施形態と同様であり、目印部50a〜50cの構成が第1実施形態と異なっている。
【0094】
目印部50a〜50cは、文字とされている。具体的には、本実施形態では、目印部50a〜50cは、数字であり、それぞれ「1」、「2」、「3」と表記されている。これにより、目印部50a〜50cは、それぞれ、識別可能とされている。
【0095】
以上のように、本実施形態では、目印部50a〜50cが数字表記であり、目印部50a〜50cのそれぞれが識別可能とされている。そのため、例えば目印部50aを中心とする仮想円の円周上に配置された全てのターゲット23を使用した後、その目印部50aとは異なる目印部50b,50cを容易に特定でき、この目印部50b,50cに基づいてターゲット23を特定することができる。つまり、目印部50a〜50cを識別可能とすることにより、一度使用した目印部50a〜50cに基づくターゲット23の検索が行われない。したがって、ターゲット部T10に配置された全てのターゲット23を効率良く使用することが可能となる。その結果、X線発生装置1では、効率的にX線XRを発生させることができる。
【0096】
以上、本発明のX線発生装置の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。