特許第6166149号(P6166149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166149
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】熱量計及び熱量計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/30 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   G01N25/30
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-224329(P2013-224329)
(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公開番号】特開2015-87166(P2015-87166A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年12月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】五味 保城
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−351818(JP,A)
【文献】 特開昭53−089798(JP,A)
【文献】 特表平08−505468(JP,A)
【文献】 特開昭61−140848(JP,A)
【文献】 特開2005−321247(JP,A)
【文献】 特開平10−319006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00
G01K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して流入するガスの熱量(H)を計測する熱量計であって、
前記ガスが周囲に導入される第1酸化触媒と、
前記ガスが周囲に導入されない、前記第1酸化触媒と同仕様である第2酸化触媒と、
前記第1酸化触媒に設けられた第1抵抗器と前記第2酸化触媒に設けられた第2抵抗器を、電気回路の要素として含むブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路のブリッジ間電流を検出する電流計と、
前記ブリッジ回路に電圧が印加され、前記抵抗器によって前記第1酸化触媒及び前記第2酸化触媒が加熱され、前記ガスが前記第1酸化触媒の周囲に導入された際に、前記電流計によって検出された電流値に基づいて前記第1抵抗器と前記第2抵抗器の抵抗値を求め、当該抵抗値に基づいて前記第1酸化触媒と前記第2酸化触媒の温度差(td)を求め、当該温度差(td)に基づいて、下記(1)式により前記ガスの熱量(H)を求める演算部と、を有する
ことを特徴とする熱量計。
(1)H=F×w×td/V (ただし、Fは予め定められた定数であり、wは前記第1酸化触媒及び前記第2酸化触媒の質量であり、Vは前記ガスの流量である。)
【請求項2】
請求項1において、
前記ブリッジ回路は、ホイートストンブリッジ回路である
ことを特徴とする熱量計。
【請求項3】
請求項1あるいは2において、更に、
前記ガスを前記第1酸化触媒の周囲に導くガス導入管を有する
ことを特徴とする熱量計。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、更に、
空気を前記第1酸化触媒に導く空気管を有する
ことを特徴とする熱量計。
【請求項5】
請求項4において、
前記空気管の先端が前記第1酸化触媒の近傍で開口する
ことを特徴とする熱量計。
【請求項6】
請求項4において、
前記空気管の先端が前記ガス導入管の内部で開口する
ことを特徴とする熱量計。
【請求項7】
請求項3乃至6において、
前記第1酸化触媒は、多孔質体で構成され、
前記ガス導入管は、前記第1酸化触媒の前記第1抵抗器の近傍まで延びる
ことを特徴とする熱量計。
【請求項8】
連続して流入するガスの熱量(H)を計測する熱量計測方法であって、
前記ガスが周囲に導入される第1酸化触媒と、
前記ガスが周囲に導入されない、前記第1酸化触媒と同仕様である第2酸化触媒と、
前記第1酸化触媒に設けられた第1抵抗器と前記第2酸化触媒に設けられた第2抵抗器を、電気回路の要素として含むブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路のブリッジ間電流を検出する電流計と、が設けられ、
前記ブリッジ回路に電圧を印加し、前記抵抗器によって前記第1酸化触媒及び前記第2酸化触媒を加熱し、前記ガスを前記第1酸化触媒の周囲に導入し、前記電流計によって検出された電流値に基づいて前記第1抵抗器と前記第2抵抗器の抵抗値を求め、当該抵抗値に基づいて前記第1酸化触媒と前記第2酸化触媒の温度差(td)を求め、当該温度差(td)に基づいて、下記(1)式により前記ガスの熱量(H)を求める
ことを特徴とする熱量計測方法。
(1)H=F×w×td/V (ただし、Fは予め定められた定数であり、wは前記第1酸化触媒及び前記第2酸化触媒の質量であり、Vは前記ガスの流量である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの熱量計測技術に関し、特に、ガスの熱量を連続して精度良く計測することが可能であり、比較的簡単な構造で且つ小型の熱量計等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ガスなどの熱量を計測する目的で種々の熱量計が用いられている。
【0003】
かかる従来の熱量計には、法定の測定方法であるユンカース式流水形ガス熱量計法、ガスクロマトグラフ法を用いたもの、速応形熱量計(下記特許文献1などに記載)、ガス密度式熱量計、熱伝導率式熱量計(下記特許文献2などに記載)などがある。
【0004】
また、下記特許文献3には、酸化触媒を用いた計測法について記載されている。当該方法では、熱した触媒にガスを流して触媒燃焼させ、温度変化等から熱量を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4844377号公報
【特許文献2】特許第4890874号公報
【特許文献3】特表平11−506537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したユンカース式流水形ガス熱量計法及びガスクロマトグラフ法では、連続計量が不可能であるという課題がある。
【0007】
また、上記速応形熱量計では、長時間の使用において測定値がドリフトするという課題があり、また、装置が大型であるという欠点もある。
【0008】
また、上述したガス密度式熱量計及び熱伝導率式熱量計には、密度及び熱伝導率は空気成分と可燃性ガス成分とで区別ができないため空気成分が混入すると精度が悪くなる、という問題がある。
【0009】
また、上記特許文献3に記載された方法及び装置では、基準ガスと試料ガスを交互に流す手順が用いられ、また、各ガス用のチャンバーが設けられるなど、測定方法及びそのための装置が比較的複雑であるという課題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、ガスの熱量計であって、ガスの熱量を連続して精度良く計測することが可能であり、比較的簡単な構造で且つ小型の熱量計、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、連続して流入するガスの熱量を計測する熱量計が、前記ガスが周囲に導入される第1酸化触媒と、前記ガスが周囲に導入されない第2酸化触媒と、前記第1酸化触媒と前記第2酸化触媒にそれぞれ設けられた抵抗器を、電気回路の要素として含むブリッジ回路と、前記ブリッジ回路のブリッジ間電流を検出する電流計と、前記ブリッジ回路に電圧が印加され、前記抵抗器によって前記第1酸化触媒及び前記第2酸化触媒が加熱され、前記ガスが前記第1酸化触媒の周囲に導入された際に、前記電流計によって検出された電流値に基づいて、前記ガスの熱量を求める演算部と、を有する、ことである。
【0012】
更に、上記の発明において、好ましい態様は、前記ブリッジ回路は、ホイートストンブリッジ回路である、ことを特徴とする。
【0013】
更に、上記の発明において、好ましい態様は、更に、前記ガスを前記第1酸化触媒の周囲に導くガス導入管を有する、ことを特徴とする。
【0014】
更にまた、上記の発明において、一つの好ましい態様は、更に、空気を前記第1酸化触媒に導く空気管を有する、ことを特徴とする。
【0015】
また、上記の発明において、一つの態様は、前記空気管の先端が前記第1酸化触媒の近傍で開口する、ことを特徴とする。
【0016】
また、上記の発明において、他の態様は、前記空気管の先端が前記ガス導入管の内部で開口する、ことを特徴とする。
【0017】
更に、上記の発明において、一つの態様は、前記第1酸化触媒は、多孔質体で構成され、前記ガス導入管は、前記第1酸化触媒の前記抵抗器の近傍まで延びる、ことを特徴とする。
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、連続して流入するガスの熱量を計測する熱量計測方法において、前記ガスが周囲に導入される第1酸化触媒と、前記ガスが周囲に導入されない第2酸化触媒と、前記第1酸化触媒と前記第2酸化触媒にそれぞれ設けられた抵抗器を、電気回路の要素として含むブリッジ回路と、前記ブリッジ回路のブリッジ間電流を検出する電流計と、が設けられ、前記ブリッジ回路に電圧を印加し、前記抵抗器によって前記第1酸化触媒及び前記第2酸化触媒を加熱し、前記ガスを前記第1酸化触媒の周囲に導入し、前記電流計によって検出された電流値に基づいて、前記ガスの熱量を求める、ことである。
【0019】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用した熱量計の実施の形態例に係る構成図である。
図2】本熱量計1のより具体的な構成図である。
図3】変形形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0022】
図1は、本発明を適用した熱量計の実施の形態例に係る構成図である。図1に示す熱量計1が本発明を適用した熱量計であり、詳細は後述するが、計測対象であるガスを導入して触媒燃焼させる検知部3と、ガスを導入しない参照部4の温度差に基づいてガスの熱量を計測する。また、触媒燃焼のための加熱装置としては電圧が印加されるブリッジ回路を用い、ブリッジ間で検知される電流値に基づいて上記温度差を求める。当該熱量計1を用いることにより、比較的簡便な装置で連続的なガスの熱量計測が可能となる。
【0023】
図1では、熱量計1の大括りな機能構成を示している。本実施の形態例では、熱量計1は、都市ガスの工場や家屋への供給管(図中のガス管)に設置されて、供給管に流れるガスの熱量を連続して(随時)計測することを想定している。
【0024】
ガス流量計測部2は、ガス管から熱量計1に導入されるガスの量を計測する部分である。検知部3は、導入されたガスにより上述した触媒燃焼が行われる部分であり、参照部4は、ガスを導入せず、熱量計測のためのゼロ点補正を行うための値を計測する部分であり、ガスによる熱量分のみを計測するために参照される部分である。加熱回路部5は、検知部3及び参照部4に設けられる酸化触媒を加熱するための電気回路(上記ブリッジ回路)である。なお、検知部3、参照部4、及び加熱回路部5の具体的な構成(構造)については後述する。
【0025】
演算部6は、ガス流量計測部2及び加熱回路部5で検知された計測値からガスの熱量を求める部分である。具体的な方法については後述する。なお、当該演算部6は、いわゆるマイクロコンピューター等で構成することができ、図示していないが、CPU、RAM、ROM、ASIC、表示装置、入力装置等を備える。また、外部装置と通信するための通信インターフェースを備えるようにしてもよい。
【0026】
図2は、本熱量計1のより具体的な構成図である。図2に示すように、ガス流量計測部2には流量計21が設けられ、ガス管(上記供給管)から熱量計1に導入するガスの流量(例えば、Vリットル/秒)を、熱量の計測中、連続して計測する。計測された流量は演算部6に送信される。
【0027】
検知部3には、検知部加熱素子36(抵抗器)を内部に包含した検知部触媒35(第1酸化触媒)が設けられる。検知部触媒35は、例えば球状に固められた酸化触媒であり、Pt系触媒、Pd系触媒などを用いることができる。検知部加熱素子36は電気抵抗(第1抵抗器)であり、後述する加熱回路部5の電気回路(例えば、ホイートストンブリッジ回路)の一部を構成する。当該検知部加熱素子36に電気が印加されることによって検知部触媒35が加熱される。
【0028】
また、ガス導入管31は、流量計21で計測されたガスを検知部触媒35の近傍(周囲)に導入する管である。当該ガス導入管31の先端は、ガスが検知部触媒35に吹きかけられるような位置にすることが好ましい。
【0029】
エアー管32(空気管)は、ガスが燃焼するための酸素を供給する空気を吹き込む管であり、ガス導入管31と同様に、その先端が、検知部触媒35の近傍に位置するように設けられている。従って、空気が検知部触媒35の周囲に吹き込まれる。なお、図示していないが、エアー管32の上流には送風機などを設けることができる。
【0030】
次に、参照部4には、図2に示すように、参照部加熱素子46(抵抗器)を内部に包含した参照部触媒45(第2酸化触媒)が設けられる。なお、参照部加熱素子46及び参照部触媒45は、検知部加熱素子36及び検知部触媒35と同仕様とする。
【0031】
次に、加熱回路部5には、上記検知部加熱素子36及び上記参照部加熱素子46に電流を流して発熱させるための電気回路が設けられている。当該電気回路は、ここでは、一例として、ホイートストンブリッジ回路を構成している。当該電気回路には、図2に示されるように、電源51によって所定の電圧が印加される、ブリッジ回路があり、その一方の経路には、直列に接続される第1抵抗器としての検知部加熱素子36と第2抵抗器としての参照部加熱素子46が設けられ、それとは並列に接続される他方の経路には、第3抵抗器53と第4抵抗器54が直列に接続されている。
【0032】
これら抵抗器の各抵抗値は、検知部3にガスが導入されていない状態、すなわちガスが燃焼していない状態において、ブリッジ間(検知部加熱素子36と参照部加熱素子46の間の出力端子と、第3抵抗器と第4抵抗器の間の出力端子の間)に電流が流れないような値に調整されている。当該ブリッジ間には、ブリッジ間に流れる電流を計測(検出)する電流計52が設けられ、ここで計測された電流値は演算部6に送信される。
【0033】
次に、このような構成を有する本熱量計1における熱量の計測方法について説明する。まず、加熱回路部5の電源51を投入し、検知部加熱素子36からの発熱により検知部触媒35を完全燃焼できる温度域、例えば400℃以上に加熱する。その後、ガス管から流量計21、ガス導入管31を介して概ね一定量の(Vリットル/秒が概ね一定の)ガスを、検知部触媒35の近傍に連続して導入する。導入されたガスは、上記熱せられた検知部触媒35(酸化触媒)及びエアー管32から導入される空気により触媒燃焼し、完全燃焼する。
【0034】
当該燃焼により検知部触媒35の温度が上昇する。その後も概ね同量のガスが連続して導入されて、上記燃焼が継続される。燃焼開始後、一定の時間が経過すると、検知部触媒35の状態は安定し温度は概ね一定の状態となる。この定常状態では、検知部触媒35への入熱と検知部触媒35からの放熱がバランスしている(入熱=放熱)。
【0035】
一方、参照部4では、上記電源の投入後、参照部加熱素子46からの発熱により参照部触媒45が加熱され、参照部触媒45の温度が上昇する。参照部4には、ガスは導入されないので、燃焼による温度上昇はなく、電源の投入後、一定の時間が経過すると、参照部触媒45の温度は概ね一定な状態となる。この定常状態では、参照部触媒45への入熱と参照部触媒45からの放熱がバランスしている(入熱=放熱)。
【0036】
このように、検知部触媒35と参照部触媒45の温度が概ね一定になり定常状態となると、演算部6は、流量計21から送信されるガス流量(V(リットル/秒))、電流計52から送信される電流値に基づいて、熱量を演算する。
【0037】
当該演算では、まず、演算部6は、電流計52から送信された電流値から検知部触媒35と参照部触媒45の温度差(td(℃))を求める。上述のとおり、加熱回路部5は、ホイートストンブリッジを形成しており、電流計52で検知された電流値は上記定常状態における検知部加熱素子36(第1抵抗器)と参照部加熱素子46(第2抵抗器)の抵抗値の差によるものである。また、検知部加熱素子36(第1抵抗器)と参照部加熱素子46(第2抵抗器)の温度と抵抗値の関係は、予め決定されて演算部に記憶されている。また、電源51によって印加される電圧値、第3抵抗器53及び第4抵抗器54の抵抗値は既知であり、演算部に記憶されている。従って、演算部6は、上記検知された電流値から検知部加熱素子36(第1抵抗器)と参照部加熱素子46(第2抵抗器)の抵抗値を求め、当該抵抗値から検知部加熱素子36(第1抵抗器)と参照部加熱素子46(第2抵抗器)の温度差、すなわち、検知部触媒35と参照部触媒45の温度差(td(℃))を求める。
【0038】
次に、演算部6は、ガス流量(V(リットル/秒))と求めた温度差(td(℃))から下記(1)式を用いて、導入されたガスの熱量(H1(kJ/m))を求める。
【0039】
H1=F1(w×td)/V (1)
なお、上記(1)式において、wは各酸化触媒部分(検知部触媒35、参照部触媒45)の質量(g)(既知)、F1は予め定められた定数である。
【0040】
演算部6は、求めた熱量の値を表示装置に表示すると共に熱量計1内のメモリに記録する。なお、それに代えて又はそれに加えて、演算部6は求めた熱量の値を外部の装置に送信するようにしてもよい。
【0041】
本熱量計1では、このような熱量の計測を所定の頻度で(例えば、1秒毎に)連続して実行する。
【0042】
なお、上記(1)式は、上記定常状態になり、同じ仕様の検知部触媒35及び参照部触媒45への入熱(すなわち、各触媒からの放熱)の差が、導入され完全燃焼したガスの熱量に相当し、上記放熱量は、各触媒がその時点で有している熱量に依存するとの考えに基づくものである。なお、検知部触媒35及び参照部触媒45の比熱は既知である。
【0043】
また、F1は、熱量が既知である基準ガスを用いて同様の計測を行い、その計測から得られる計測値を上記(1)式に当てはめることによって予め決定しておく。なお、F1を定数ではなく温度の関数として決定してもよい。
【0044】
次に、本熱量計1の酸化触媒の劣化確認について説明する。酸化触媒(特に、検知部触媒35)の劣化を確認するために、定期的にガスを導入せずに電流計52の値をチェックするようにする。これにより、ゼロ点のドリフト状況を把握することができる。電流計52で検出された電流値がゼロでなければ、ゼロ点がドリフトしていると考えられ、その幅が増加傾向あるいは減少傾向であれば酸化触媒が劣化していると推察される。当該劣化確認は、演算部6が予め定められたタイミング(頻度)で自動で行うようにしてもよい。この場合、劣化していると判断されれば、その旨が表示装置や通信装置を用いて熱量計1の管理者へ報知される。
【0045】
また、検知部3と参照部4の触媒及び加熱素子を定期的に入れ換えて(互いに交換して)用い、当該交換による計測結果の変化から酸化触媒の劣化を把握する様にしてもよい。
【0046】
以上、本実施の形態例に係る熱量計1について説明したが、変形形態として、エアー管32を設けない形態としてもよい。この場合、ガスの燃焼に必要な空気は、検知部触媒35の周囲から自然に導入される。当該エアー管32を設けない形態では、エアー管自体、及び、空気を送る送風機等の装置を設ける必要がなく、装置の構造(構成)を簡略化することができる。
【0047】
また、他の形態として、エアー管32をガス導入管31に合流させるようにしてもよい。換言すれば、エアー管32の空気が放出される先端部(開口部)をガス導入管31の内部に設けるようにしてもよい。この場合、当該合流の位置は、流量計21の下流側で、ガス導入管31の先端部(開口部)までの間とする。このような形態とすることにより、検知部触媒35の周囲に、事前によく混合されたガスと空気が導入されることになり、より燃焼を完全なものにすることができる。
【0048】
また、他の変形形態として、検知部触媒35を多孔質体で構成し、ガス導入管31を検知部触媒35に挿入し、ガス導入管31のガスを噴き出す先端が検知部加熱素子36の近傍に達すように構成してもよい。図3は、当該形態を示した図である。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態例に係る熱量計1では、ガスの熱量を、定常状態における電流計52の検知値(電流値)に基づいて求めることができるので、熱量の連続計測が可能であり、また、熱量計1を比較的簡単な構造とすることができる。
【0050】
また、加熱回路としてホイートストンブリッジ回路が用いられ、上記電流値による熱量計測を容易に行うことができる。
【0051】
また、ガス導入管31が設けられ、ガスが酸化触媒(検知部触媒35)の近傍まで導かれるので、計測対象であるガスの完全燃焼がなされ、高い精度の計測が可能である。
【0052】
また、エアー管32が設けられ、酸素が確実に燃焼領域に導かれるので、ガスが完全燃焼され得る。
【0053】
さらに、エアー管32の先端を酸化触媒の近傍で開口するようにすることにより、良好な燃焼がなされる。
【0054】
また、エアー管32の先端をガス導入管31の内部で開口することにより、事前に良く混合されたガスと空気を酸化触媒の周囲に供給でき、燃焼をさらに完全なものにすることができる。
【0055】
更に、酸化触媒を多孔質体で構成し、その中にガス導入管31を挿入する形態とすることで、更に、ガスを確実に完全燃焼させることができる。
【0056】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【符号の説明】
【0057】
1 熱量計、 2 ガス流量計測部、 3 検知部、 4 参照部、 5 加熱回路部、 6 演算部、 21 流量計、 31 ガス導入管、 32 エアー管、 35 検知部触媒、 36 検知部加熱素子、 45 参照部触媒、 46 参照部加熱素子、 51 電源、 52 電流計、 53 第3抵抗器、 54 第4抵抗器
図1
図2
図3