特許第6166164号(P6166164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166164
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】屋根架構における採光構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/03 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   E04D13/03 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-249621(P2013-249621)
(22)【出願日】2013年12月2日
(65)【公開番号】特開2015-105557(P2015-105557A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 慎一
(72)【発明者】
【氏名】奥原 健悟
(72)【発明者】
【氏名】須都 信義
(72)【発明者】
【氏名】関 栄一
(72)【発明者】
【氏名】杉野 義人
(72)【発明者】
【氏名】加納 秀道
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大
(72)【発明者】
【氏名】坂田 克彦
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第01889512(US,A)
【文献】 特開平10−121673(JP,A)
【文献】 米国特許第04428358(US,A)
【文献】 特表平08−510861(JP,A)
【文献】 特開昭57−021655(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3104773(JP,U)
【文献】 特開昭63−044057(JP,A)
【文献】 米国特許第02380600(US,A)
【文献】 英国特許出願公告第00534173(GB,A)
【文献】 米国特許第02586934(US,A)
【文献】 英国特許出願公告第00478484(GB,A)
【文献】 米国特許第02290195(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平二方向に配列する柱に支持され、いずれか一方向の少なくとも一部の区間に、他の方向に連続する上に凸の箱形断面の越屋根が形成され、この越屋根の幅方向の両側面の屋外側に側面側仕上げ材が敷設された屋根架構において、
前記越屋根は、その幅方向に並列し、水平面に対して傾斜した面をなして配置され、上弦材と下弦材、及び両弦材間に架設されるラチス材を持つ平面トラスのトラス梁と、この両トラス梁間に架設され、前記両トラス梁をつなぐ上部つなぎ材とを備え、前記側面側仕上げ材の少なくとも一部に前記トラス梁の屋内側に太陽光を取り込む開口部が形成されており、
前記越屋根の幅方向に並列するトラス梁の前記上弦材間に、前記上部つなぎ材と共に、前記越屋根の幅方向を向く構面を形成するトラスを構成する斜材が対になり、下に凸となって架設され、この両斜材の上端部が前記上弦材と前記上部つなぎ材の接合部に接合され、前記両斜材の下端部が前記上部つなぎ材の下方位置で互いに接合されていることを特徴とする屋根架構における採光構造。
【請求項2】
対になった前記両斜材に通路が支持されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根架構における採光構造。
【請求項3】
前記開口部の上端部は想定される最大の入射角で入射する太陽光線が前記トラス梁の前記上弦材の下端部を通る線上にあり、前記開口部の下端部は想定される最小の入射角で入射する太陽光線が前記トラス梁の前記下弦材の上端部を通る線上にあることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の屋根架構における採光構造。
【請求項4】
前記屋根架構の内、前記越屋根の幅方向両側に位置する下面部の上に敷設された下面側仕上げ材の幅方向片側と前記側面側仕上げ材の交差部分から前記側面側仕上げ材としての立上り壁が形成され、前記立上り壁は前記開口部の下端部までの区間に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の屋根架構における採光構造。
【請求項5】
前記下面側仕上げ材の表面の少なくとも一部の区間と、前記上部つなぎ材上に敷設された上面側仕上げ材の背面の少なくとも一部の区間に反射板が使用されていることを特徴とする請求項に記載の屋根架構における採光構造。
【請求項6】
前記上部つなぎ材の下方の、隣接するトラス梁間に下に凸の天井材が架設され、この天井材の下面の少なくとも一部の区間に反射板が使用されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の屋根架構における採光構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋根面(屋根仕上げ材)上への積雪があった場合にも、屋内への採光を確保することを可能にする屋根架構における採光構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば工場や倉庫等のように機能上、広い無柱空間が要求される構造物では、屋根架構に剛性を付与する必要から、屋根架構を支持する梁の成を大きく取るために、図9に示すように上弦材と下弦材を持つ平面トラスを梁として使用することが多い。
【0003】
ここで、屋根面からの採光を確保するには、梁上に敷設される屋根仕上げ材(屋根葺き材)の一部に例えば上に凸の三角形の断面形状に屈曲した凸部を形成し、凸部の一部に開口部を形成することが必要になる。凸部の断面形状が三角形状である理由は、開口部を含む面がなす構面に対して太陽光が垂直に近い角度から入射する状態になることが、開口部の面積に対する採光の効率が高いことによる。
【0004】
しかしながら、積雪地では屋根仕上げ材上に降雪する結果、図9に二点鎖線で示すように積雪が開口部を覆う状態になることが見込まれるため、積雪があったときには開口部からの採光の機能が損なわれる。
【0005】
屋根架構を支持する平面トラス等、トラス構造の梁を屋根の平坦面より上に突出させることにより採光を確保することは以前より採用される手法であるが(特許文献1〜3参照)、特に積雪地での降雪を想定した採光に適した構造の例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−44057号公報(請求項1、第1図)
【特許文献2】特開2006−233420号公報(図1図3
【特許文献3】特開平5−86648公報(請求項1、段落0009〜0014、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3では採光を確保するための越屋根に積雪荷重を負担し得る強度を付与するために、越屋根内の柱上に束材を配置し、越屋根の幅方向を向く構面に斜材を架設することをしているが(請求項1、段落0011)、越屋根を含む屋根面全体に積雪があったときの採光を確保する方法は示されていない。
【0008】
本発明は上記背景より、屋根架構の一部に越屋根を形成した場合に、屋根面上に積雪があったときにも越屋根において採光の機能を確保する採光構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明の屋根架構における採光構造は、水平二方向に配列する柱に支持され、いずれか一方向の少なくとも一部の区間に、他の方向に連続する上に凸の箱形断面の越屋根が形成され、この越屋根の幅方向の両側面の屋外側に側面側仕上げ材が敷設された屋根架構において、
前記越屋根は、その幅方向に並列し、水平面に対して傾斜した面をなして配置され、上弦材と下弦材、及び両弦材間に架設されるラチス材を持つ平面トラスのトラス梁と、この両トラス梁間に架設され、前記両トラス梁をつなぐ上部つなぎ材とを備え、前記側面側仕上げ材の少なくとも一部に前記トラス梁の屋内側に太陽光を取り込む開口部が形成されており、
前記越屋根の幅方向に並列するトラス梁の前記上弦材間に、前記上部つなぎ材と共に、前記越屋根の幅方向を向く構面を形成するトラスを構成する斜材が対になり、下に凸となって架設され、この両斜材の上端部が前記上弦材と前記上部つなぎ材の接合部に接合され、前記両斜材の下端部が前記上部つなぎ材の下方位置で互いに接合されていることを構成要件とする。
請求項2に記載の発明の屋根架構における採光構造は請求項1に記載の発明において、対になった前記両斜材に通路が支持されていることを構成要件とする。
【0010】
「いずれか一方向」と「他の方向」は構造物のスパン方向と桁行方向であるが、スパン方向と桁行方向は相対的な方向であるから、「一方向」と「他の方向」は共にスパン方向の場合と桁行方向の場合がある。「箱形断面の越屋根」とは、越屋根の上面側の部分が基本的に越屋根の長さ方向に見たときに方形状、またはそれに近い断面形状をしていることを言うが、越屋根の上面(上面部21)は平坦面である必要はなく、多角形状、または曲面状の場合もある。
【0011】
越屋根2は図1等に示すようにその幅方向に並列する梁としてのトラス梁3、3と、両トラス梁3、3の上端間に架設され、越屋根2の上面部21の骨組を構成する上部つなぎ材4を基本の構成要素として構成される。トラス梁3は上弦材31と下弦材32、及び両弦材31、32をつなぐラチス材33を基本の構成要素として備え、上弦材31と下弦材32間には図7に示すように束材34が架設されることもある。側面側仕上げ材6はトラス梁3の屋外側に敷設される。
【0012】
上部つなぎ材4は両トラス梁3、3の上弦材31、31間に架設され、上部つなぎ材4には水平ブレース5等が伴うこともある。越屋根2の幅方向両側に位置する梁(トラス梁3)が平面トラスで構成されることで、上弦材31と下弦材32間のラチス材33、またはラチス材33と束材34を除く領域に開口が形成されるため、トラス梁3を通じた採光が可能になっている。
【0013】
トラス梁3は材軸方向を前記他の方向(スパン方向、もしくは桁行方向)に向けて配置される。トラス梁3の構面は主に鉛直面等、「水平面に対して傾斜した面」をなすが、トラス梁3の構面に平行な面をなし、開口部7が形成される側面側仕上げ材6上への積雪を回避する上では鉛直面、もしくは鉛直面に近い面をなすことが合理的である。「鉛直面に近い」とは、側面側仕上げ材6上への降雪があっても雪が付着せずに落下する程度の角度を言う。開口部7を含め、側面側仕上げ材6にその表面への雪の付着が生じにくい加工が施されていれば、トラス梁3の、水平面に対する角度が45度程度であっても側面側仕上げ材6上への積雪は回避される。
【0014】
トラス梁3の下弦材32には屋根架構1の内、越屋根2を除く部分である下面部9を構成する下部つなぎ材10が接続(接合)される。下部つなぎ材10は越屋根2以外の屋根架構1の骨組を構成し、下部つなぎ材10には水平ブレース11等が伴うこともある。越屋根2は図8に示すようにその幅方向に間隔を置いて複数、配列することもある。その場合、越屋根2と下面部9は越屋根2の幅方向に交互に配列し、隣接する越屋根2、2の下弦材32、32間に下部つなぎ材10が架設される。下面部9も平坦面である必要はなく、多角形状、または曲面状の場合もある。
【0015】
越屋根2を含む屋根架構1の表面側には屋根仕上げ材が敷設されるが、その内、越屋根2の両側面側の、トラス梁3、3の表面側に敷設される側面側仕上げ材6、6の少なくとも一部に開口部7が形成される。開口部7は越屋根2を構成するトラス梁3の上弦材31と下弦材32間に形成される開口に直接、もしくは空隙を隔てて重なるため、図1に破線で示すように太陽光を開口部7とトラス梁3の開口を通じて屋内に導入する採光用の開口になる。越屋根2のトラス梁3、3をつなぐ上部つなぎ材4上には屋根仕上げ材としての上面側仕上げ材8が敷設される(請求項)。
【0016】
側面側仕上げ材6と上面側仕上げ材8、及び下面部9を構成する下部つなぎ材10上に敷設される下面側仕上げ材12の屋根仕上げ材は基本的にそれぞれトラス梁3、上面部21、下面部9の各骨組の屋外側に設置される下地材を介して敷設されるが、下地材の形態に応じ、骨組と屋根仕上げ材との間には図1に示すように空隙が形成される場合と図5に示すように実質的に空隙が形成されない場合がある。
【0017】
開口部7が開閉自在であれば、採光と同時に、開口部7を通じた通風も確保される。地域、または越屋根2の長さ方向の向きによっては太陽光が直接、取り込まれる開口部7に対向する開口部7からも太陽光が取り込まれることがあるが、太陽光が直接、差し込まない開口部7からも自然光は導入されるため、その開口部7も採光の機能を果たす。
【0018】
太陽光が直接、取り込まれる開口部7においては、太陽光の開口部7への入射の方向と水平線とのなす角度を入射角とすれば、図2−(a)に示すように想定される最大の入射角αで入射する太陽光線がトラス梁3の上弦材31の下端部を通る線上に開口部7の上端部を位置させ、(b)に示すように想定される最小の入射角βで入射する太陽光線がトラス梁3の下弦材32の上端部を通る線上に開口部7の下端部を位置させれば(請求項)、開口部7を通じての最大の入射量を確保することが可能である。開口部7の上端部と下端部はそれぞれ開口部7に収納される開口枠71の上枠71aの下端部と下枠71bの上端部を指す。
【0019】
入射角βで入射する太陽光線が下弦材32の上端部を通る線上に開口部7の下端部が位置した場合に、下面側仕上げ材12上に想定される積雪量がその開口部7の下端部のレベル以下であれば、下面側仕上げ材12上への積雪の影響を受けることなく、開口部7からの採光を確保することが可能である。
【0020】
以上のように越屋根2の幅方向両側に位置し、「水平面に対して傾斜した面」をなすトラス梁3の屋外側に敷設される側面側仕上げ材6に開口部7が形成されることで、屋根架構1上に降雪があり、上面側仕上げ材8と下面側仕上げ材12上に積雪があった場合にも、側面側仕上げ材6上に直接、積雪し、開口部7が積雪に塞がれる事態は回避される。下面側仕上げ材12上の積雪は開口部7の下端部寄りから上端部寄りに向かって進むことから、下面側仕上げ材12からの積雪量が開口部7の上端部にまで到達しない限り、開口部7の下方寄りの一部の区間が積雪に塞がれたときにも開口部7全体が完全に塞がれることはないため、積雪時にも採光は確保される。
【0021】
越屋根2の幅方向両側に位置する下面部9を構成する下部つなぎ材10上には屋根仕上げ材としての下面側仕上げ材12が敷設される(請求項)。降雪時には図1に二点鎖線で示すように下面側仕上げ材12上に積雪し、開口部7の下端部が下面側仕上げ材12のレベルにある場合には、積雪分、開口部7を通じた採光量が低減するため、開口部7の下端部は下面側仕上げ材12のレベルより上に位置し、開口部7の上端部はトラス梁3の上弦材31寄りに位置することが適切である。
【0022】
開口部7の下端部が下面側仕上げ材12より上に位置する場合、図1に示すように下面側仕上げ材12の幅方向片側と側面側仕上げ材6の交差部分から側面側仕上げ材6としての立上り壁61が形成され、立上り壁61は開口部7の下端部までの区間に形成される(請求項)。立上り壁61は側面側仕上げ材6の一部であり、下面側仕上げ材12から連続して立ち上がることで、下面側仕上げ材12と側面側仕上げ材6との間の水密性を確保し、降雪による水の屋内への浸入を阻止する働きをする。
【0023】
この場合、下面側仕上げ材12上に想定される最大積雪量が立上り壁61の高さ以下であれば、開口部7の全高の一部でも積雪に塞がれることがないため、開口部7の面積分の採光が常に確保される。また積雪が開口部7に及ぶことがないことで、開口部7に開閉自在な窓が収納されている場合の窓の開閉が阻害されることがない他、開口枠71の下枠71b及び横枠71cと側面側仕上げ材6との間の取合い部からの、積雪による水の浸入も回避される。
【0024】
越屋根2を通じた屋内への採光は太陽光の反射を利用することによっても確保することが可能である。例えば図3に示すように下面側仕上げ材12の表面の少なくとも一部の区間と、上部つなぎ材4上に敷設された上面側仕上げ材8の背面の少なくとも一部の区間に反射板13を使用することで(請求項)、側面側仕上げ材6の開口部7からの直接の採光と、下面側仕上げ材12と上面側仕上げ材8を反射した反射光の、間接の採光を得ることが可能になる。「反射板13を使用する」とは、下面側仕上げ材12と上面側仕上げ材8の少なくとも一部に反射板13を組み込む場合と、下面側仕上げ材12と上面側仕上げ材8の一部に反射板13を接合や接着等により付加する場合を含む趣旨である。反射板13には鏡、ガラス、アクリル等の合成樹脂板等が使用されるが、太陽光を反射させることができれば、反射板13の材料と形状は問われない。
【0025】
「少なくとも一部の区間」とは、図3に破線で示すように下面側仕上げ材12における反射板13を反射した太陽光が開口部7の上端部と下端部との間を通過して上面側仕上げ材8の背面に到達する範囲内の、下面側仕上げ材12と上面側仕上げ材8に反射板13が配置されればよいことを言う。下面側仕上げ材12においては必ずしも側面側仕上げ材6との交差部分から反射板13が配置される必要がなく、上面側仕上げ材8においても必ずしも側面側仕上げ材6との交差部分から反射板13が配置される必要がない。下面側仕上げ材12における反射板13に反射した太陽光が開口部7の上端部と下端部との間を通過して上面側仕上げ材8の背面に到達する太陽光が当たる範囲は太陽光の入射角(地域と時間帯)に応じて変化する。
【0026】
反射板13が配置されるべき範囲は下面部9の全幅の内、越屋根2寄りの一部の区間になるが、側面側仕上げ材6における高さ方向の開口部7の形成範囲に応じ、側面側仕上げ材6との交差部分から、下面部9の幅方向中間部寄りまでに配置される場合と、図3に示すように側面側仕上げ材6との交差部分から距離を置いた位置から下面部9の幅方向中間部寄りまでに配置される場合がある。
【0027】
下面側仕上げ材12における反射板13が少なくとも越屋根2寄り等の一部の区間に配置されればよいことで、上面側仕上げ材8の背面における反射板13も下面側仕上げ材12における反射板13に反射した反射光が当たる範囲内でよいことになる。具体的には開口部7の下端部を通過した反射光が当たる箇所から、開口部7の上端部、またはトラス梁3の上弦材31の下端部を通過した反射光が当たる箇所までの範囲内に上面側仕上げ材8の反射板13が配置されればよい。
【0028】
請求項では開口部7から直接、屋内に差し込む太陽光と2枚の反射板13、13を反射して屋内に間接的に差し込む反射光が屋内の照明として利用可能になるため、屋内の照度が高まる結果、人工照明数を削減することが可能であり、人工照明に要する費用の節減を図ることも可能になる。
【0029】
太陽光の屋内への、反射光としての間接的な取り込みは図4に示すように上部つなぎ材4の下方の、隣接するトラス梁3、3間に下に凸の天井材14を架設し、天井材14の下面の少なくとも一部の区間に反射板13を使用することによっても可能になる(請求項)。天井材14がなす下に凸の形状は問われず、多角形状の場合と曲面状の場合がある。天井材14は隣接するトラス梁3、3の上弦材31、31間、または束材34、34間等に架設される。
【0030】
この場合、側面側仕上げ材6の開口部7から入射した太陽光は天井材14の反射板13に反射し、間接的に屋内に差し込むことで、図4に破線で示すように入射角の大きさに応じ、太陽光を直接、取り込むことと、間接の反射光として取り込むことの2通りの取り込みが可能になる。すなわち、入射角の小さい時間帯には間接の反射光として太陽光を取り込み、入射角が大きい時間帯には太陽光を直接、取り込むことが可能であり、1日の内、直接と間接を合わせ、太陽光を採光として屋内に取り込める時間が長くなり、長時間に亘って太陽光を照明として利用することが可能である。太陽光は天井材14が平面である場合の天井材14の下面と平行になったときと、それより大きい入射角で入射するときに屋内に直接、差し込む。
【0031】
この場合も、開口部7から入射する太陽光が当たる天井材14の範囲内に反射板13が配置されればよい。具体的には開口部7の上端部を通過した太陽光が天井材14に当たる箇所から、開口部7の下端部を通過した太陽光が天井材14に当たる箇所までの範囲内に反射板13が配置されればよい。
【0032】
請求項では特に図4に示すように入射角が小さく、開口部7を通過する太陽光が対向するトラス梁3に到達し、屋内の床面にまで到達しないような場合に、太陽光を反射光として屋内に取り込み、床面にまで到達させることを可能にするため、入射角の小さい地域、または時間帯での採光に有効である。
【0033】
請求項では天井材14が隣接するトラス梁3、3の上弦材31、31間等の下に凸に架設されることから、両トラス梁3、3をつなぐ上部つなぎ材4と天井材14との間に空間が形成されるため、空間を越屋根2と側面側仕上げ材6、及び開口部7等の点検、メインテナンス等の作業をする目的で利用可能である。具体的には前記のように上部つなぎ材4と共に越屋根2の幅方向を向く構面を形成するトラスを構成する斜材15、15を対にして架設することで(請求項)、図4に示すように斜材15、15に点検等をするための通路16を支持させることが可能である(請求項2)
【0034】
この場合、斜材15、15は対向する上弦材31、31間に、トラス梁3、3の対向する方向に対になって架設され、一端部において互いに接続(接合)されながら、他端部において上弦材31と上部つなぎ材4の接合部に接合(ピン接合)されることで、上部つなぎ材4と共に上部つなぎ材4を含む構面内のトラスを構成する。斜材15、15がトラスを構成することで、図4に示すように斜材15に通路16を支持させ、両側のトラス梁3、3に通路16の荷重を負担させることが可能になる。越屋根2の屋内側に通路16が配置されることで、越屋根2内の点検とメインテナンスの他、開口部7が開閉自在な窓である場合の開閉作業を開口部7単位で行うことも可能である。
【発明の効果】
【0035】
越屋根の幅方向両側に位置し、「水平面に対して傾斜した面」をなすトラス梁の屋外側に敷設される側面側仕上げ材に開口部を形成することで、屋根架構上に降雪があり、越屋根上の上面側仕上げ材と越屋根の幅方向両側の下面側仕上げ材上に積雪があった場合にも、側面側仕上げ材上に直接、積雪し、開口部が積雪に塞がれる事態を回避することができる。また下面側仕上げ材からの積雪量が開口部の上端部にまで到達しない限り、開口部が積雪に完全に塞がれることもないため、積雪時にも採光を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】越屋根の幅方向両側の側面側仕上げ材に形成された開口部を通じた採光の様子を示した越屋根の長さ方向の縦断面図である。
図2】(a)は開口部に最大の入射角で入射する太陽光線が開口部の上端部と上弦材の下端部を通るときの採光の様子を示した縦断面図、(b)は開口部に最小の入射角で入射する太陽光線が開口部の下端部と下弦材の上端部を通るときの採光の様子を示した縦断面図である。
図3】下面側仕上げ材の表面と、上面側仕上げ材の背面に反射板を使用した場合の、反射光の入射の様子を示した縦断面図である。
図4】隣接するトラス梁の各上弦材等の間に下に凸の天井材を架設し、天井材の下面に反射板を使用すると共に、天井材上に斜材を架設し、斜材に通路を支持させた場合の、太陽光と反射光の入射の様子を示した縦断面図である。
図5図4の詳細例を示した縦断面図である。
図6】越屋根とその幅方向両側の下面部を示した透視図である。
図7】越屋根を幅方向に見た様子を示した縦断面図であり、図5のx−x線断面図である。
図8】越屋根と下面部が幅方向に交互に配列した場合の屋根架構の構築例を示した縦断面図である。
図9】従来の屋根面からの採光を確保する場合の開口部の形成例を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は水平二方向に配列する柱20に支持され、いずれか一方向の少なくとも一部の区間に、他の方向に連続する上に凸の箱形断面の越屋根2が形成され、越屋根2の幅方向の両側面の屋外側に側面側仕上げ材6、6が敷設された屋根架構1において、側面側仕上げ材6の少なくとも一部に屋内側に太陽光を取り込む開口部7が形成された採光構造の構成例を示す。越屋根2は図8に示すように越屋根2の幅方向に間隔を置いて複数、配列する場合もあり、その場合、越屋根2の幅方向両側に位置する下面部9と越屋根2が交互に配列する。図8では柱20が越屋根2の幅方向に間隔を置いて配列している様子を示しているが、柱20は越屋根2の長さ方向にも間隔を置いて配列している。
【0038】
越屋根2は図6図7に示すようにその幅方向に並列し、水平面に対して傾斜した面をなして配置される平面トラスのトラス梁3、3と、両トラス梁3、3の上部間に架設され、両トラス梁3、3をつなぐ上部つなぎ材4とを備える。トラス梁3は上弦材31と下弦材32、及び両弦材31、32間に架設されるラチス材33を持ち、両弦材31、32間には上部つなぎ材4、または後述の斜材15を受けるための束材34が架設されることもある。上部つなぎ材4はトラス梁3、3の上弦材31、31間、または束材34、34間に架設され、上弦材31、31と上部つなぎ材4、4とで囲まれた領域内には図6に示すように水平ブレース5が架設されることもある。
【0039】
トラス梁3の屋外側に敷設される側面側仕上げ材6の少なくとも一部に採光用の開口部7が形成されることから、開口部7がトラス梁3の構面外方向に積雪することにより閉塞することがないようにする上では、トラス梁3は図示するように鉛直面をなすように配置されることが合理的である。但し、トラス梁3は付着による場合も含め、構面外方向に積雪が生じなければ降雪の影響を受けることがないため、トラス梁3の構面は鉛直面に対して45度程度まで傾斜している場合もある。
【0040】
越屋根3の上面部21の骨組となる上部つなぎ材4上には上面側仕上げ材8が敷設され、越屋根3の幅方向両側に位置する下面部9の上には下面側仕上げ材12が敷設される。上面側仕上げ材8と側面側仕上げ材6の交差部分、及び下面側仕上げ材12と側面側仕上げ材6の交差部分は連続する。
【0041】
開口部7の下端部が下面側仕上げ材12のレベルより上に位置する場合には、図1に示すように下面側仕上げ材12の幅方向片側と側面側仕上げ材6の交差部分から側面側仕上げ材6としての立上り壁61が下面側仕上げ材12に連続して形成される。立上り壁61は開口部7の下端部までの区間(開口部7は立上り壁61の上端部までの区間)に形成される。開口部7の下に立上り壁61が形成される場合、下面側仕上げ材12上への積雪により開口部7が塞がれないよう、立上り壁61の下面側仕上げ材12の上面からの高さには想定される積雪量(積雪高さ)以上の大きさが与えられる。積雪により開口部7が塞がれないようにすることには、例えば開口部7に開閉自在な窓が収納されている場合に、下面側仕上げ材12上に積雪があっても窓の開閉の機能が損なわれないようにする意味がある。
【0042】
開口部7には主に採光と雨水の浸入防止のための窓が収納されるが、開口部7に通風の機能も併せ持たせる場合には、開閉自在な形態の窓が収納される。採光と雨水の浸入防止の機能のみでよければ、嵌め殺しの窓が収納される。いずれの窓の場合にも開口部7の内周には上枠71aと下枠71b、及び横枠71cからなる開口枠71が収納される。開口部7が開放状態でも差し支えなければ、必ずしも窓を収納する必要はない。
【0043】
図1は積雪時における開口部7からの太陽光の屋内への入射の様子を示している。ここでは高さ方向に開口部7の上端部である上枠71aの下端部から、開口部7の下端部である下枠71bの上端部までの区間を通過する太陽光がトラス梁3の上弦材31と下弦材32間の開口を通じて屋内に取り込まれ、床面に直接、もしくは間接的に差し込む。図1において太陽光を採光中の左側の開口部7に対向する側に位置する右側の開口部7からも時間帯によっては太陽光を採光中の開口部7に入れ替わって太陽光が差し込むことがあるが、太陽光の採光中でない開口部7からも天候に拘わらず、日中の自然光は屋内に取り込まれる。
【0044】
ここで、トラス梁3の開口を採光のために有効に利用する上では、図2−(a)に示すように最大の入射角αになるときの太陽光が上枠71aの下端部を通り、上弦材31の下端部を通過する線上に上枠71aを配置することが合理的である。同様に(b)に示すように最小の入射角βになるときの太陽光が下枠71bの上端部を通り、下弦材32の上端部を通過する線上に下枠71bを配置することが合理的である。
【0045】
図3は下面側仕上げ材12の表面の少なくとも一部の区間と、上部つなぎ材4上に敷設された上面側仕上げ材8の背面の少なくとも一部の区間に反射板13を使用し、反射板13を反射した反射光を屋内に取り込む場合の採光の様子を示す。「下面側仕上げ材12の少なくとも一部の区間」は下面側仕上げ材12の表面(反射板13)を反射した反射光が開口部7(開口枠71)の内周側を通過する範囲であり、「上面側仕上げ材8の少なくとも一部の区間」は開口部7(開口枠71)の内周側を通過した反射光が上面側仕上げ材8の背面(反射板13)に到達する範囲である。
【0046】
図3の例では側面側仕上げ材6の開口部7(開口枠71)の内周側を通過して直接、屋内に差し込む太陽光と、下面側仕上げ材12の反射板13と上面側仕上げ材8の反射板13を反射し、屋内に間接的に差し込む反射光が同時に屋内の照明として利用可能になるため、直接光と間接光が同時に屋内に差し込む時間帯の照度が上昇する利点がある。
【0047】
図3中、越屋根2の幅方向両側の開口部7、7から反射光の取り込みが可能である場合には、反射板13は越屋根2の幅方向両側に位置する下面側仕上げ材12と上面側仕上げ材8の一部にも使用される。但し、その場合、反射板13が使用される下面側仕上げ材12と上面側仕上げ材8の区間は越屋根2の幅方向の中心を通る鉛直面に関して対称な位置になるとは限らない。
【0048】
図4は上部つなぎ材4の下方の、隣接するトラス梁3、3の各上弦材31、31間等に下に凸の天井材14を架設し、天井材14の下面の少なくとも一部の区間に反射板13を使用し、反射板13を反射した反射光を屋内に取り込む場合の採光の様子を示す。天井材14は太陽光が当たる範囲は主に平坦面に形成されるが、必ずしもその必要はなく、天井材14全体が曲面状に形成されることもある。天井材14、14はトラス梁3、3間に越屋根2の幅方向に対になって架設され、一端部において上弦材31、31等、トラス梁3のいずれかの部位に接合され、他端部において互いに接合、もしくは連結される。
【0049】
天井材14の反射板13には図4に破線で示すように小さい入射角度で入射した太陽光が反射し、角度を変えて屋内の床面側へ差し込む。反射板13に反射する入射角より大きい入射角で入射する太陽光は直接、屋内に差し込むため、反射板13に反射する入射角から反射しない入射角の範囲までの太陽光が屋内に取り込まれることになる。
【0050】
図4はまた、天井材14上の、隣接するトラス梁3、3の上弦材31、31間に、上部つなぎ材4と共に、越屋根2の幅方向を向く構面のトラスを構成する斜材15、15を対にして架設し、斜材15、15を越屋根2の屋内側を点検等するための作業用の通路16を支持するために利用した場合の例を示している。対になる斜材15、15はそれぞれの一端部において上部つなぎ材4の長さ方向の端部に、もしくは上部つなぎ材4が接続(ピン接合)される上弦材31に接続(ピン接合)され、他端部において互いに接続される。上部つなぎ材4の両端部はトラス梁3、3の上弦材31、31に接続されているため、斜材15の一端部は上部つなぎ材4に接続されても上弦材31にも接続される形になる。
【0051】
通路16は対になる斜材15、15の交差部分上に敷設され、両斜材15、15に均等に支持される。通路16の自重と通路16上の積載荷重は両斜材15、15を通じて上部つなぎ材4に伝達され、トラス梁3、3で負担される。
【0052】
図5図4の詳細例を示す。ここでは越屋根2の幅方向両側に位置する下面部9、9の骨組を構成する下部つなぎ材10、10間に、図6に示すように上部つなぎ材4と上下に対になる下部つなぎ材41を架設し、下部つなぎ材10、10を越屋根2の内部を通して連続させることで、下面部9、9の連続性を確保し、下面部9、9の面内剛性を高めている。この場合、下部つなぎ材41が越屋根2の上面部21の基本の骨組となる上部つなぎ材4と上下で対になることで、下部つなぎ材41は越屋根2の幅方向の剛性を確保しながら、下面部9、9との一体性も確保する。
【0053】
下面部9においてトラス梁3の下弦材32とそれに水平方向に対向し、下弦材32と平行に架設される水平材、及び下部つなぎ材10、10とで囲まれた領域内には図6図7に示すように水平ブレース11が架設されることもある。水平ブレース11は越屋根2内の対向するトラス梁3、3の下弦材32、32と下部つなぎ材41、41とで囲まれた領域内にも架設されることもある。
【0054】
図5では図7に示すように各斜材15の上端部を例えば各トラス梁3の上弦材31と上部つなぎ材4との接合部に配置されたガセットプレート35にピン接合し、下端部を両斜材15、15間に跨って配置されたガセットプレート17にピン接合している。天井材14は例えば斜材15の下部フランジに接合されることにより斜材15に支持されるが、図5では上部つなぎ材4と対になる下部つなぎ材41が下部つなぎ材10、10間に架設されているため、天井材14を下部つなぎ材41に支持させることもできる。その場合、ガセットプレート17は下部つなぎ材41にも接合される。
【0055】
図6図5に示す越屋根2を見上げた様子を、図7は越屋根2の内部を幅方向に見た様子を示している。図8は越屋根2と下面部9が幅方向に交互に配列した屋根架構1を越屋根2の長さ方向に見た様子を示している。
【符号の説明】
【0056】
1……屋根架構、20……柱、
2……越屋根、21……上面部、
3……トラス梁、31……上弦材、32……下弦材、33……ラチス材、34……束材、35……ガセットプレート、
4……上部つなぎ材、41……下部つなぎ材、
5……水平ブレース、
6……側面側仕上げ材、61……立上り壁、
7……開口部、71……開口枠、71a……上枠、71b……下枠、71c……横枠、
8……上面側仕上げ材、
9……下面部、12……下面側仕上げ材、
13……反射板、14……天井材、15……斜材、16……通路、
17……ガセットプレート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9