【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明の屋根架構における採光構造は、水平二方向に配列する柱に支持され、いずれか一方向の少なくとも一部の区間に、他の方向に連続する上に凸の箱形断面の越屋根が形成され、この越屋根の幅方向の両側面の屋外側に側面側仕上げ材が敷設された屋根架構において、
前記越屋根は、その幅方向に並列し、水平面に対して傾斜した面をなして配置され、上弦材と下弦材、及び両弦材間に架設されるラチス材を持つ平面トラスのトラス梁と、この両トラス梁間に架設され、前記両トラス梁をつなぐ上部つなぎ材とを備え、前記側面側仕上げ材の少なくとも一部に前記トラス梁の屋内側に太陽光を取り込む開口部が形成されて
おり、
前記越屋根の幅方向に並列するトラス梁の前記上弦材間に、前記上部つなぎ材と共に、前記越屋根の幅方向を向く構面を形成するトラスを構成する斜材が対になり、下に凸となって架設され、この両斜材の上端部が前記上弦材と前記上部つなぎ材の接合部に接合され、前記両斜材の下端部が前記上部つなぎ材の下方位置で互いに接合されていることを構成要件とする。
請求項2に記載の発明の屋根架構における採光構造は請求項1に記載の発明において、対になった前記両斜材に通路が支持されていることを構成要件とする。
【0010】
「いずれか一方向」と「他の方向」は構造物のスパン方向と桁行方向であるが、スパン方向と桁行方向は相対的な方向であるから、「一方向」と「他の方向」は共にスパン方向の場合と桁行方向の場合がある。「箱形断面の越屋根」とは、越屋根の上面側の部分が基本的に越屋根の長さ方向に見たときに方形状、またはそれに近い断面形状をしていることを言うが、越屋根の上面(上面部21)は平坦面である必要はなく、多角形状、または曲面状の場合もある。
【0011】
越屋根2は
図1等に示すようにその幅方向に並列する梁としてのトラス梁3、3と、両トラス梁3、3の上端間に架設され、越屋根2の上面部21の骨組を構成する上部つなぎ材4を基本の構成要素として構成される。トラス梁3は上弦材31と下弦材32、及び両弦材31、32をつなぐラチス材33を基本の構成要素として備え、上弦材31と下弦材32間には
図7に示すように束材34が架設されることもある。側面側仕上げ材6はトラス梁3の屋外側に敷設される。
【0012】
上部つなぎ材4は両トラス梁3、3の上弦材31、31間に架設され、上部つなぎ材4には水平ブレース5等が伴うこともある。越屋根2の幅方向両側に位置する梁(トラス梁3)が平面トラスで構成されることで、上弦材31と下弦材32間のラチス材33、またはラチス材33と束材34を除く領域に開口が形成されるため、トラス梁3を通じた採光が可能になっている。
【0013】
トラス梁3は材軸方向を前記他の方向(スパン方向、もしくは桁行方向)に向けて配置される。トラス梁3の構面は主に鉛直面等、「水平面に対して傾斜した面」をなすが、トラス梁3の構面に平行な面をなし、開口部7が形成される側面側仕上げ材6上への積雪を回避する上では鉛直面、もしくは鉛直面に近い面をなすことが合理的である。「鉛直面に近い」とは、側面側仕上げ材6上への降雪があっても雪が付着せずに落下する程度の角度を言う。開口部7を含め、側面側仕上げ材6にその表面への雪の付着が生じにくい加工が施されていれば、トラス梁3の、水平面に対する角度が45度程度であっても側面側仕上げ材6上への積雪は回避される。
【0014】
トラス梁3の下弦材32には屋根架構1の内、越屋根2を除く部分である下面部9を構成する下部つなぎ材10が接続(接合)される。下部つなぎ材10は越屋根2以外の屋根架構1の骨組を構成し、下部つなぎ材10には水平ブレース11等が伴うこともある。越屋根2は
図8に示すようにその幅方向に間隔を置いて複数、配列することもある。その場合、越屋根2と下面部9は越屋根2の幅方向に交互に配列し、隣接する越屋根2、2の下弦材32、32間に下部つなぎ材10が架設される。下面部9も平坦面である必要はなく、多角形状、または曲面状の場合もある。
【0015】
越屋根2を含む屋根架構1の表面側には屋根仕上げ材が敷設されるが、その内、越屋根2の両側面側の、トラス梁3、3の表面側に敷設される側面側仕上げ材6、6の少なくとも一部に開口部7が形成される。開口部7は越屋根2を構成するトラス梁3の上弦材31と下弦材32間に形成される開口に直接、もしくは空隙を隔てて重なるため、
図1に破線で示すように太陽光を開口部7とトラス梁3の開口を通じて屋内に導入する採光用の開口になる。越屋根2のトラス梁3、3をつなぐ上部つなぎ材4上には屋根仕上げ材としての上面側仕上げ材8が敷設される(請求項
5)。
【0016】
側面側仕上げ材6と上面側仕上げ材8、及び下面部9を構成する下部つなぎ材10上に敷設される下面側仕上げ材12の屋根仕上げ材は基本的にそれぞれトラス梁3、上面部21、下面部9の各骨組の屋外側に設置される下地材を介して敷設されるが、下地材の形態に応じ、骨組と屋根仕上げ材との間には
図1に示すように空隙が形成される場合と
図5に示すように実質的に空隙が形成されない場合がある。
【0017】
開口部7が開閉自在であれば、採光と同時に、開口部7を通じた通風も確保される。地域、または越屋根2の長さ方向の向きによっては太陽光が直接、取り込まれる開口部7に対向する開口部7からも太陽光が取り込まれることがあるが、太陽光が直接、差し込まない開口部7からも自然光は導入されるため、その開口部7も採光の機能を果たす。
【0018】
太陽光が直接、取り込まれる開口部7においては、太陽光の開口部7への入射の方向と水平線とのなす角度を入射角とすれば、
図2−(a)に示すように想定される最大の入射角αで入射する太陽光線がトラス梁3の上弦材31の下端部を通る線上に開口部7の上端部を位置させ、(b)に示すように想定される最小の入射角βで入射する太陽光線がトラス梁3の下弦材32の上端部を通る線上に開口部7の下端部を位置させれば(請求項
3)、開口部7を通じての最大の入射量を確保することが可能である。開口部7の上端部と下端部はそれぞれ開口部7に収納される開口枠71の上枠71aの下端部と下枠71bの上端部を指す。
【0019】
入射角βで入射する太陽光線が下弦材32の上端部を通る線上に開口部7の下端部が位置した場合に、下面側仕上げ材12上に想定される積雪量がその開口部7の下端部のレベル以下であれば、下面側仕上げ材12上への積雪の影響を受けることなく、開口部7からの採光を確保することが可能である。
【0020】
以上のように越屋根2の幅方向両側に位置し、「水平面に対して傾斜した面」をなすトラス梁3の屋外側に敷設される側面側仕上げ材6に開口部7が形成されることで、屋根架構1上に降雪があり、上面側仕上げ材8と下面側仕上げ材12上に積雪があった場合にも、側面側仕上げ材6上に直接、積雪し、開口部7が積雪に塞がれる事態は回避される。下面側仕上げ材12上の積雪は開口部7の下端部寄りから上端部寄りに向かって進むことから、下面側仕上げ材12からの積雪量が開口部7の上端部にまで到達しない限り、開口部7の下方寄りの一部の区間が積雪に塞がれたときにも開口部7全体が完全に塞がれることはないため、積雪時にも採光は確保される。
【0021】
越屋根2の幅方向両側に位置する下面部9を構成する下部つなぎ材10上には屋根仕上げ材としての下面側仕上げ材12が敷設される(請求項
4)。降雪時には
図1に二点鎖線で示すように下面側仕上げ材12上に積雪し、開口部7の下端部が下面側仕上げ材12のレベルにある場合には、積雪分、開口部7を通じた採光量が低減するため、開口部7の下端部は下面側仕上げ材12のレベルより上に位置し、開口部7の上端部はトラス梁3の上弦材31寄りに位置することが適切である。
【0022】
開口部7の下端部が下面側仕上げ材12より上に位置する場合、
図1に示すように下面側仕上げ材12の幅方向片側と側面側仕上げ材6の交差部分から側面側仕上げ材6としての立上り壁61が形成され、立上り壁61は開口部7の下端部までの区間に形成される(請求項
4)。立上り壁61は側面側仕上げ材6の一部であり、下面側仕上げ材12から連続して立ち上がることで、下面側仕上げ材12と側面側仕上げ材6との間の水密性を確保し、降雪による水の屋内への浸入を阻止する働きをする。
【0023】
この場合、下面側仕上げ材12上に想定される最大積雪量が立上り壁61の高さ以下であれば、開口部7の全高の一部でも積雪に塞がれることがないため、開口部7の面積分の採光が常に確保される。また積雪が開口部7に及ぶことがないことで、開口部7に開閉自在な窓が収納されている場合の窓の開閉が阻害されることがない他、開口枠71の下枠71b及び横枠71cと側面側仕上げ材6との間の取合い部からの、積雪による水の浸入も回避される。
【0024】
越屋根2を通じた屋内への採光は太陽光の反射を利用することによっても確保することが可能である。例えば
図3に示すように下面側仕上げ材12の表面の少なくとも一部の区間と、上部つなぎ材4上に敷設された上面側仕上げ材8の背面の少なくとも一部の区間に反射板13を使用することで(請求項
5)、側面側仕上げ材6の開口部7からの直接の採光と、下面側仕上げ材12と上面側仕上げ材8を反射した反射光の、間接の採光を得ることが可能になる。「反射板13を使用する」とは、下面側仕上げ材12と上面側仕上げ材8の少なくとも一部に反射板13を組み込む場合と、下面側仕上げ材12と上面側仕上げ材8の一部に反射板13を接合や接着等により付加する場合を含む趣旨である。反射板13には鏡、ガラス、アクリル等の合成樹脂板等が使用されるが、太陽光を反射させることができれば、反射板13の材料と形状は問われない。
【0025】
「少なくとも一部の区間」とは、
図3に破線で示すように下面側仕上げ材12における反射板13を反射した太陽光が開口部7の上端部と下端部との間を通過して上面側仕上げ材8の背面に到達する範囲内の、下面側仕上げ材12と上面側仕上げ材8に反射板13が配置されればよいことを言う。下面側仕上げ材12においては必ずしも側面側仕上げ材6との交差部分から反射板13が配置される必要がなく、上面側仕上げ材8においても必ずしも側面側仕上げ材6との交差部分から反射板13が配置される必要がない。下面側仕上げ材12における反射板13に反射した太陽光が開口部7の上端部と下端部との間を通過して上面側仕上げ材8の背面に到達する太陽光が当たる範囲は太陽光の入射角(地域と時間帯)に応じて変化する。
【0026】
反射板13が配置されるべき範囲は下面部9の全幅の内、越屋根2寄りの一部の区間になるが、側面側仕上げ材6における高さ方向の開口部7の形成範囲に応じ、側面側仕上げ材6との交差部分から、下面部9の幅方向中間部寄りまでに配置される場合と、
図3に示すように側面側仕上げ材6との交差部分から距離を置いた位置から下面部9の幅方向中間部寄りまでに配置される場合がある。
【0027】
下面側仕上げ材12における反射板13が少なくとも越屋根2寄り等の一部の区間に配置されればよいことで、上面側仕上げ材8の背面における反射板13も下面側仕上げ材12における反射板13に反射した反射光が当たる範囲内でよいことになる。具体的には開口部7の下端部を通過した反射光が当たる箇所から、開口部7の上端部、またはトラス梁3の上弦材31の下端部を通過した反射光が当たる箇所までの範囲内に上面側仕上げ材8の反射板13が配置されればよい。
【0028】
請求項
5では開口部7から直接、屋内に差し込む太陽光と2枚の反射板13、13を反射して屋内に間接的に差し込む反射光が屋内の照明として利用可能になるため、屋内の照度が高まる結果、人工照明数を削減することが可能であり、人工照明に要する費用の節減を図ることも可能になる。
【0029】
太陽光の屋内への、反射光としての間接的な取り込みは
図4に示すように上部つなぎ材4の下方の、隣接するトラス梁3、3間に下に凸の天井材14を架設し、天井材14の下面の少なくとも一部の区間に反射板13を使用することによっても可能になる(請求項
6)。天井材14がなす下に凸の形状は問われず、多角形状の場合と曲面状の場合がある。天井材14は隣接するトラス梁3、3の上弦材31、31間、または束材34、34間等に架設される。
【0030】
この場合、側面側仕上げ材6の開口部7から入射した太陽光は天井材14の反射板13に反射し、間接的に屋内に差し込むことで、
図4に破線で示すように入射角の大きさに応じ、太陽光を直接、取り込むことと、間接の反射光として取り込むことの2通りの取り込みが可能になる。すなわち、入射角の小さい時間帯には間接の反射光として太陽光を取り込み、入射角が大きい時間帯には太陽光を直接、取り込むことが可能であり、1日の内、直接と間接を合わせ、太陽光を採光として屋内に取り込める時間が長くなり、長時間に亘って太陽光を照明として利用することが可能である。太陽光は天井材14が平面である場合の天井材14の下面と平行になったときと、それより大きい入射角で入射するときに屋内に直接、差し込む。
【0031】
この場合も、開口部7から入射する太陽光が当たる天井材14の範囲内に反射板13が配置されればよい。具体的には開口部7の上端部を通過した太陽光が天井材14に当たる箇所から、開口部7の下端部を通過した太陽光が天井材14に当たる箇所までの範囲内に反射板13が配置されればよい。
【0032】
請求項
6では特に
図4に示すように入射角が小さく、開口部7を通過する太陽光が対向するトラス梁3に到達し、屋内の床面にまで到達しないような場合に、太陽光を反射光として屋内に取り込み、床面にまで到達させることを可能にするため、入射角の小さい地域、または時間帯での採光に有効である。
【0033】
請求項
6では天井材14が隣接するトラス梁3、3の上弦材31、31間等の下に凸に架設されることから、両トラス梁3、3をつなぐ上部つなぎ材4と天井材14との間に空間が形成されるため、空間を越屋根2と側面側仕上げ材6、及び開口部7等の点検、メインテナンス等の作業をする目的で利用可能である。具体的には
前記のように上部つなぎ材4と共に
越屋根2の幅方向を向く構面を形成するトラスを構成する斜材15、15を対にして架設することで(請求項
1)、
図4に示すように斜材15、15に点検等をするための通路16を支持させることが可能である
(請求項2)。
【0034】
この場合、斜材15、15は対向する上弦材31、31間に、トラス梁3、3の対向する方向に対になって架設され、一端部において互いに接続(接合)されながら、他端部において上弦材31と上部つなぎ材4の接合部に接合(ピン接合)されることで、上部つなぎ材4と共に上部つなぎ材4を含む構面内のトラスを構成する。斜材15、15がトラスを構成することで、
図4に示すように斜材15に通路16を支持させ、両側のトラス梁3、3に通路16の荷重を負担させることが可能になる。越屋根2の屋内側に通路16が配置されることで、越屋根2内の点検とメインテナンスの他、開口部7が開閉自在な窓である場合の開閉作業を開口部7単位で行うことも可能である。