【実施例1】
【0029】
図1はこの発明による複合操作型入力装置の実施例1の外観を示したものであり、
図2及び3はその断面構造を示したものである。また、
図4及び5は各部に分解して示したものである。
【0030】
この例では複合操作型入力装置は金属プレート31と、両面テープ32と、フレキシブルプリント配線板33と、ドーム接点34と、カバーシート35,36と、プッシャ37と、接点部材38と、ベース39と、ダイヤルベース41と、ダイヤルトップ42と、ばね51と、両面テープ52と、押しボタン53とによって構成されている。まず、
図4及び5を参照して主要各部の構成を説明する。
【0031】
金属プレート31は方形状をなし、その4隅にはこの複合操作型入力装置の取り付け固定用の穴31aが形成され、さらに位置決め用の穴31b,31cが形成されている。また、各部の組み立てに使用する穴31d,31eが形成されている。
【0032】
フレキシブルプリント配線板33は円形部33aと、その円形部33aから延長形成されたケーブル部33bとよりなる。円形部33aの中央には円形パターンと環状パターンとよりなる中央固定接点33cが形成され、この中央固定接点33cを囲む円周上には中央固定接点33cと同様、円形パターンと環状パターンとよりなる周辺固定接点33dが形成されている。周辺固定接点33dはこの例では90°間隔で配列されて4つ形成されている。また、周辺固定接点33dが配列されている円周と中央固定接点33cとの間にはロータリエンコーダ用の電極パターン33eが円周に沿って配列されて形成されている。
【0033】
カバーシート35は円形をなし、カバーシート36はカバーシート35を囲むリング形状をなす。なお、これらカバーシート35,36、フレキシブルプリント配線板33及び両面テープ32には金属プレート31の穴31d,31eと対応する穴35a,36a,33f,33g,32a,32bが
図4,5に示したように形成されている。
【0034】
プッシャ37はリング形状とされ、90°間隔で配列された4つの固定部37aの各間に弾性変形可能な梁37bが設けられ、さらに各梁37bの中央に押圧部37cが設けられた形状とされている。4つの固定部37aの下面にはそれぞれボス37dが突出形成されている。
【0035】
接点部材38はリング形状をなし、その周方向3箇所には接触子38aが切り起こされて形成されている。また、穴38bが3箇所に形成されている。
【0036】
ダイヤルベース41は円筒状をなす軸受部41aと、軸受部41aの上端外周に突出形成された環状部41bと、環状部41bの外周に上方に向かって設けられた周壁部41cとを備え、さらにこの例では周壁部41cの上端外周にフランジ部41dが突出形成され、フランジ部41dの下面に環状押圧部41eが突出形成されている。
【0037】
環状部41bの下面にはボス41fが周方向に配列されて3つ突出形成され、上面にはボス41gが2つ突出形成されている。また、フランジ部41dには穴41hが周方向に配列されて3つ形成されている。なお、軸受部41aの内径は下方に向かって徐々に拡径されており(
図2参照)、軸受部41aの内面はテーパ形状をなすものとされている。
【0038】
ダイヤルトップ42は周壁部42aと、周壁部42aの上端に位置して中央開口42bを囲む環状をなす操作部42cと、周壁部42aの下端外周に突出形成されたフランジ部42dとを有する。操作部42cは周壁部42aの上端内周に突出するように形成されており、操作部42cの上面には突起42eが周方向に配列されて形成されている。また、フランジ部42dの下面にはボス42fが周方向に配列されて3つ突出形成されている。なお、中央開口42bは上端から下端に向かって径が増大するテーパ形状をなすものとされている。
【0039】
押しボタン53は上端が閉塞された円筒部53aと、円筒部53aの下端外周に突出形成されたフランジ部53bと、円筒部53aの閉塞された上端の裏面中央に突出形成された柱状部53cと、柱状部53cを挟んで円筒部53aの閉塞された上端の裏面に突出形成された一対の脚部53dとを有する。一対の脚部53dの下端には互いに外向きに爪53eが突出形成されている。なお、各脚部53dの上半部は連結部53fによって円筒部53aの内周面と連結一体化されている。柱状部53cは円柱の周面に軸方向に延びるキーが突出形成された形状とされている。キーは細い角柱状とされ、円柱の下端近くまで設けられている。
【0040】
ベース39は円筒状の軸部39aと、軸部39aの上端外周に突出形成された環状突出部39bとを有し、環状突出部39bは上方に延びる周壁を外周に備えている。環状突出部39bの外周面には凹凸39cが周方向に配列されて形成されており、環状突出部39bの下面には突条39d(
図2参照)が環状に形成されている。
【0041】
ベース39は中央に押しボタン53の柱状部53cが挿入される穴形状を有する筒状部39eを備え、筒状部39eはその軸方向中間部が軸部39aの上端に設けられた上板部39fによって支持されている。上板部39fには押しボタン53の一対の脚部53dが挿入される一対の穴39g(
図3参照)が形成されており、一対の穴39gが形成されている位置にそれぞれ対応して軸部39aの内周面には溝39hが軸方向に形成されている。なお、軸部39aの下面にはボス39iが周方向に配列されて3つ突出形成されている。
【0042】
ばね51は両端が延ばされて、その先端にフック部51aが設けられたコイルばねとされている。
【0043】
各部の組み立ては以下のようにして行われる。
【0044】
フレキシブルプリント配線板33の円形部33aを両面テープ32により金属プレート31上に固定する。この時、金属プレート31の各穴31d,31eと、フレキシブルプリント配線板33の各穴33f,33g及び両面テープ32の各穴32a,32bの位置が一致される。
【0045】
フレキシブルプリント配線板33の中央固定接点33c上に中央可動接点をなすドーム接点34を配置して中央スイッチ61を構成し、4つの周辺固定接点33d上にそれぞれ周辺可動接点をなすドーム接点34を配置して周辺スイッチ62を構成する。中央スイッチ61上にはカバーシート35が被され、4つの周辺スイッチ62上にはカバーシート36が被される。これらカバーシート35,36によりドーム接点34は所定の位置に位置決め固定されると共に、中央スイッチ61及び周辺スイッチ62が保護される。なお、カバーシート35,36の穴35a,36aの位置は、フレキシブルプリント配線板33の穴33f,33gの位置と一致される。
【0046】
次に、プッシャ37をカバーシート36上に搭載する。プッシャ37の4つのボス37dはカバーシート36の穴36a及び穴36aの位置と一致されているフレキシブルプリント配線板33、両面テープ32、金属プレート31の各穴33g,32b,31eに挿入され、これによりプッシャ37はカバーシート36上に位置決め配置される。プッシャ37の各押圧部37cは周辺スイッチ62上に位置される。
【0047】
次に、ダイヤルベース41の環状部41bの下面に接点部材38を取り付け、環状部41bの上面にばね51を取り付ける。接点部材38の取り付けは環状部41bの下面に形成されている3つのボス41fを接点部材38の穴38bに挿入し、ボス41fの先端を熱かしめすることによって行われる。ばね51の取り付けは環状部41bの上面に形成されている2つのボス41gにばね51の両端のフック部51aを引っ掛けた後、ボス41gを熱かしめし、フック部51aを抜け止めすることによって行われる。
【0048】
次に、ダイヤルベース41の軸受部41aにベース39の軸部39aを挿入し、ダイヤルベース41内にベース39を位置させた状態で、ベース39の軸部39aの下面に形成されている3つのボス39iをカバーシート35の穴35a及び穴35aの位置と一致されているフレキシブルプリント配線板33、両面テープ32、金属プレート31の各穴33f,32a,31dに挿入する。3つのボス39iのうち、1つは位置決め用とされ、残る2つのボス39iの先端が熱かしめされることによってカバーシート35上にベース39が搭載固定される。
【0049】
ベース39の軸部39aは中央スイッチ61と電極パターン33eとの間の円周上に位置し、接点部材38の接触子38aはフレキシブルプリント配線板33の電極パターン33e上に位置する。ダイヤルベース41はベース39の軸部39a回りに回転可能とされる。なお、ダイヤルベース41の環状押圧部41eはプッシャ37の押圧部37c上に位置され、ばね51はベース39の凹凸39cに弾性変形可能に接触される。
【0050】
次に、押しボタン53の柱状部53c及び一対の脚部53dをそれぞれベース39の筒状部39e及び穴39gに挿入して押しボタン53をベース39に取り付ける。押しボタン53は一対の脚部53dの下端の爪53eがベース39の上板部39fに引っ掛かることによって抜け止めされる。押しボタン53の柱状部53cは中央スイッチ61上に位置される。
【0051】
次に、ダイヤルトップ42をダイヤルベース41に取り付ける。取り付けはダイヤルトップ42のフランジ部42dとダイヤルベース41のフランジ部41dを両面テープ52によって接着固定することによって行われる。この際、ダイヤルトップ42の3つのボス42fは両面テープ52の穴52aを介してダイヤルベース41の穴41hに挿入される。
【0052】
以上により組み立てが完了し、
図1〜3に示した複合操作型入力装置が完成する。押しボタン53はダイヤルトップ42の中央開口42bに位置される。
【0053】
上記のような構成とされた複合操作型入力装置ではダイヤルトップ42が回転操作されると、接触子38aが電極パターン33e上を移動し(接触摺動し)、この移動を電気的に検出することによってダイヤルトップ42の回転が検出される。なお、この際、ベース39の凹凸39cと接触しているばね51によって回転操作感触が得られるものとなっている。
【0054】
押しボタン53が押し下げ操作されると、その柱状部53cによって中央スイッチ61のドーム接点34が押されて中央スイッチ61がONとなる。押し下げ操作が解除されると、ドーム接点34の復元力によって押しボタン53は元の位置に復帰し、中央スイッチ61はOFFとなる。
【0055】
一方、ダイヤルトップ42を押し、傾倒操作することにより、ダイヤルベース41の環状押圧部41e及びプッシャ37の押圧部37cを介して傾倒側の周辺スイッチ62のドーム接点34が押されて周辺スイッチ62がONとなる。
図6はこの様子を示したのである。ダイヤルトップ42の傾倒操作はベース39の軸部39a回りに位置するダイヤルベース41の軸受部41aの内面がテーパ形状とされていることによって可能となっている。
【0056】
ダイヤルトップ42への傾倒操作が解除されると、ドーム接点34、プッシャ37の梁37bの復元力によって押圧部37c、ダイヤルベース41及びダイヤルトップ42は元の位置に復帰し、周辺スイッチ62はOFFとなる。
【0057】
次に、この複合操作型入力装置の防塵性能について説明する。
図2,3中、矢印はダイヤルトップ42と押しボタン53との間の隙間から侵入する塵等の異物の侵入経路を示したものであり、異物はダイヤルベース41内に侵入する。
【0058】
しかしながら、この例では、ダイヤルベース41はその環状部41bの上面がベース39の環状突出部39bの下面に設けられている突条39dと摺動接触する構造となっており、即ち
図2,3中に破線で囲んで示した摺動接触部aを有するものとなっている。
【0059】
この摺動接触部aは異物侵入方向に対して直交する方向に設けられているため、この摺動接触部aには異物は侵入しにくく、よってこのような摺動接触部aの存在により、この例では接触子38aが電極パターン33eと摺動接触する摺動接点部分に異物が侵入しにくいものとなっている。
【実施例3】
【0064】
次に、この発明による複合操作型入力装置の実施例3の構成について説明する。
【0065】
図8は外観を示したものであり、
図9は断面構造を示したものである。実施例1と対応する部分には同一符号を付してある。
【0066】
この例では押しボタン53’に小径のフランジ部53bに替え、ダイヤルトップ42’の操作部42cの内面と対向する大径の環状の平板部53gが一体形成され、操作部42cの内面と平板部53gに環状をなす突部42g,53hが互い違いになるように形成される。突部42g,53hは同心円をなし、この例ではそれぞれ2つ形成されている。
【0067】
このような突部42g,53hを設けることにより、ダイヤルトップ42’と押しボタン53’との間の隙間から侵入する異物の侵入経路を極めて長くすることができ、よってダイヤルベース41’、さらには摺動接点部分に至る異物を大幅に低減することができる。
【0068】
一方、プッシャ37’はこの例では
図10に示したような形状を有するものとされ、環状固定部37’eと、環状固定部37’eの外周に90°間隔で突出形成された4つの支持部37’fと、隣接する支持部37’fに弾性変形可能な梁37’bを介して支持された4つの押圧部37’cとよりなる。環状固定部37’eの上面には全周に渡って溝37’gが形成され、下面には周方向に配列されて4つのボス37’dが突出形成されている。
【0069】
環状固定部37’eは
図9に示したように、周辺スイッチ62とフレキシブルプリント配線板33のロータリエンコーダ用接点をなす電極パターンとの間の円周上に配置され、両面テープ54によってカバーシート36上に接着固定される。各押圧部37’cは周辺スイッチ62上に位置される。
【0070】
ダイヤルベース41’の周壁部41cはダイヤルトップ42の周壁部42aより小径とされ、フランジ部41dにはプッシャ37’の環状固定部37’eの溝37’gに入り込む環状突部41iが形成されている。なお、プッシャ37’の押圧部37’c上に位置される環状押圧部41eはフランジ部41dの外周に1段下がって設けられた段部41jに形成され、段部41jの外周には周壁41kが下方に突出して形成されている。
【0071】
異物はダイヤルトップ42’と押しボタン53’との間の隙間から特に侵入しやすく、複合操作型入力装置において機器の筐体内等に収容される部分からの侵入は一般的には少ない。しかしながら、この例では上述したようなプッシャ37’とダイヤルベース41’の形状を採用し、かつプッシャ37’の環状固定部37’eをカバーシート36上に接着固定したことにより、複合操作型入力装置の側方からの異物の侵入を低減することができるものとなっており、その点でより信頼性に優れた複合操作型入力装置を得ることができる。
【0072】
以上、この発明の各種実施例について説明したが、ダイヤル(ダイヤルトップ)の傾倒操作によって操作される周辺スイッチはない構成であってもよい。
【0073】
ベース39は環状突出部39bの下面に環状の突条39dを1本備えているが、突条39dを複数本設けてもよく、また突条39dがない構成としてもよい。但し、摺動接触部aの摺動抵抗を低減する上で突条39dを設けるのが好ましい。