(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される人工芝の耐久性試験機は、各種スポーツ用スパイクシューズのスパイクをリムへ直接植設させたローラーを用いてより競技場の環境に近い耐久性試験を実施できるように設けているが、本発明はローラー部材へスパイク体を強固に取り付け可能な人工芝生試験機と、これに用いられる摩耗子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る人工芝生試験機は、人工芝生の耐摩耗性能を試験するための人工芝生試験機であって、
人工芝生の試験体へ擦り付けて該試験体の摩耗を促進する摩耗子を有し、
該摩耗子は、円周方向に回転可能で回転軸に直交する方向の断面が円形状の外周面を有する回転部と、
該回転部の外周面から外方へ突出する突起部を有するスパイク体を備え、前記回転部が回転しつつ該回転軸と直交する方向に移動して前記突起部が前記試験体へ連続的に擦り付けられるように設けられており、
前記回転部の外周面には底面が平面の凹形状に設けられた取付部が複数形成されると共に、該各取付部の前記底面へ下面を当接させて前記スパイク体が着脱可能に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る人工芝生試験機によれば、円周方向に回転可能で回転軸に直交する方向の断面を円形状の外周面を有する形状に形成させた回転部と、この回転部の外周面から外方へ突出する突起部を有するスパイク体を備える摩耗子を有し、前記回転部が回転しつつこの回転軸と直交する方向に移動して前記突起部を前記人工芝生の試験体へ連続的に擦り付けるように設けているので、前記スパイク体の形状や配置に応じた負荷を前記試験体へ与えて耐摩耗試験を行うことができる。
また、前記回転部の外周面に取付部を複数形成させ、前記スパイク体を前記各取付部へ着脱可能に取り付けるので、前記回転部へ取り付けるスパイク体の形状や本数を変更して、種々の競技に対応する耐摩耗試験を行うことができる。
また、前記各取付部を底面が平面の凹形状に設けると共に、この取付部の前記底面へ下面を当接させて前記スパイク体を取り付けるので、曲面状となされた回転部の外周面上へスパイク体の下面を当接させて取り付ける場合と比較して前記スパイク体の下面と回転部との間の隙間が小さくなされて、スパイク体を回転部へがたつきなく強固に取り付けることができる。
【0008】
また、前記突起部の幅の大きさ又は突出の大きさの少なくともいずれか一方が異なる複数のスパイク体を混在して前記各取付部にそれぞれ取り付ければ、幅や突出の大きさが異なるスパイク体が混在して取り付けられた競技用シューズに近い負荷を人工芝生の試験体へ与えるように前記摩耗子を設けることができるので、好ましい。
また、前記突起部の形状が異なる各スパイク体にそれぞれ異なるスパイク符号を標示させ、前記各取付部に前記各スパイク符号に対応する位置符号を標示させれば、取付部から各スパイク体を取り外した後で再度取り付けるときに、突起部の形状が異なる各スパイク体を以前と違う配置で前記回転部へ取り付けるような間違いを防止できるので、常に同じ試験条件で耐摩耗試験を実施でき、好ましい。
【0009】
また、本発明に係る人工芝生試験機に用いられる摩耗子は、人工芝生の耐摩耗性能を試験するための人工芝生試験機において、人工芝生の試験体へ擦り付けて該試験体の摩耗を促進するための摩耗子であって、
前記摩耗子は、円周方向に回転可能で回転軸に直交する方向の断面が円形状の外周面を有する回転部を備え、
前記回転部の外周面には、底面が平面の凹形状に設けられた取付部が複数形成されるとともに、内側に窪む溝部が軸方向に向かって形成され、
前記各取付部にスパイク体を取り付けて、前記回転部の外周面から外方に突出した該スパイク体の突起部を前記試験体へ擦り付ける場合と、
前記溝部の内側へ端部を挿入してシート状の摩擦体を前記回転部の外周面に巻着し、該シート状の摩擦体で前記試験体へ擦り付ける場合とを、選択できるようになされていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る人工芝生試験機の摩耗子によれば、円周方向に回転可能で回転軸に直交する方向の断面が円形状の外周面を有する回転部を備え、前記回転部の外周面に、底面が平面の凹形状に設けた取付部を複数形成させ、前記各取付部にスパイク体を取り付けて、前記回転部の外周面から外方に突出したこのスパイク体の突起部を前記試験体へ擦り付ける場合を選択できるので、前記スパイク体の形状や配置に応じた負荷を前記試験体へ与えて、競技用シューズにスパイクを備える野球などの種目における人工芝生の耐摩耗試験を行うことができる。
また、前記回転部の外周面に、内側に窪む溝部を軸方向に向かって形成させ、前記溝部の内側へ端部を挿入してシート状の摩擦体を前記回転部の外周面に巻着し、このシート状の摩擦体で前記試験体へ擦り付ける場合を選択できるので、テニスなどスパイクを備えない競技用シューズを用いる種目における人工芝生の耐摩耗試験を好適に実施できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る人工芝生試験機及びこれに用いる磨耗子によれば、回転する摩耗子の回転部へスパイク体を強固に取り付けて人工芝生の耐摩耗試験を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
Tは人工芝生試験機である。
本実施形態の人工芝生試験機Tは、人工芝生の試験体としての試験片Pを載置して取り付ける架台部1と、摩耗子3を有し、前記架台部1に取り付けた人工芝生の試験片Pの上方から前記摩耗子3を擦り付ける台車部2とを備えている。
前記架台部1は、人工芝生の試験片Pを取り付ける上面が平面となされたテーブル12と、このテーブル12を支持する支持部11とを備えており、前記人工芝生の試験片Pの基布p2の下面をテーブル12の上面に載置させ、基布p2に植設された芝糸p1を上方に向けて、テーブル12に取り付けるように設けている。
【0014】
本実施形態の台車部2は、2個の摩耗子3、即ち、
図1における左側に配置した摩耗子3aと右側に配置した摩耗子3bを備え、この各摩耗子3a、3bを枠体21に取り付けている。
本実施形態の各摩耗子3a、3bは、円柱形状に形成された回転部5と、この回転部5の両端からそれぞれ突出する円柱形状の回転軸4とを備えており、前記回転部5はその中心からそれぞれ突出する前記各回転軸4を軸として円周方向へ回転できるように設けている。
前記各摩耗子3a、3bは、両端からそれぞれ突出させた各回転軸4を前記枠体21に軸支させてそれぞれ取り付けており、各回転軸4の軸方向を平行に配置させて並設させている。具体的には、
図1(イ)において、図中左右方向に並設させた各摩耗子3a、3bは、それぞれの回転軸4の軸方向を図中上下方向に向けている。
【0015】
前記台車部2は、前記各摩耗子3a、3bの各回転部5を、テーブル12上に取り付けた人工芝生の試験片Pの上に載置させて、前記架台部1の上方に取り付けられている。
前記台車部2は、枠体21を横方向に移動させることによって、前記各摩耗子3a、3bの回転部5を前記試験片Pの上で転がすように設けている。本実施形態の人工芝生試験機Tは、
図1(イ)において、図示しない駆動源により台車部2の枠体21を図中左右方向へ往復移動させるように設けている。
尚、各摩耗子3a、3bの各回転部5の外周面には、
図2以降の図面に図示するスパイク体8がそれぞれ取り付けられており、試験片Pの上で回転部5を転がすことによって前記試験片Pがスパイク体8に擦られるように設けている。
【0016】
前記磨耗子3a、3bの回転軸4には、歯車41をそれぞれ取り付けている。
具体的には、前記摩耗子3aには、回転部5から突出する一方の回転軸4に歯車41aを取り付けており、前記摩耗子3bには回転部5から突出する一方の回転軸4に歯車41bを取り付けている。
前記歯車41a、41bは、各摩耗子3a、3bを前記枠体21へ取り付けた状態で横方向に配置させており、並設させた歯車41a、41bの間に輪状の無端チェーンCを架け渡し、前記歯車41a、41bへそれぞれ巻回させている。
尚、前記磨耗子3a、3bや無端チェーンCには、磨耗子3a、3bを回転させるためのモーターなどの駆動源が接続されていない。前記磨耗子3a、3bは、台車部2の前記枠体21の往復移動によって、前記人工芝生の試験片P上で前記回転部5を転がし、円周方向へ回転するように設けている。
【0017】
前記歯車41aと、歯車41bは、それぞれの歯数が異なっており、具体的には、歯車41aは15個の歯数に形成され、歯車41bは21個の歯数に形成されている。
このような歯車41a、41bに前記無端チェーンCを取り付けることで、前記摩耗子3a、3bが回転するときに各回転部5がそれぞれ異なる回転速度で回転するようになされる。
このように各摩耗子3a、3bを設けることで、架台部1へ取り付けた人工芝生の試験片P上で前記枠体21を横方向へ移動させたときに、前記摩耗子3a、3bの一方の回転部5が前記試験片Pの上を転がり、他方の回転部5が前記無端チェーンを介した駆動によって連動して回転するのでその外周面のスパイク体8を前記試験片Pの上面で滑るように擦り付けることができる。即ち、各摩耗子3a、3bの回転部5の外周面に取り付けたスパイク体8を人工芝生の試験片Pの上面へより効率良く擦り付けることができる。
本実施形態の摩耗子3a、3bは、回転軸4に取り付けた歯車41a、41bの歯数をそれぞれ15個と21個に形成させているが、これに限るものではなく、上記以外の歯数に設けてもよい。
【0018】
本実施形態の人工芝生試験機Tは、設定した任意の速度で、前記枠体21を往復移動させることができ、例えば、0.25m/sで移動できるように設けている。
【0019】
また、本実施形態の人工芝生試験機Tの架台部1は、支持部11の上方でテーブル12を移動させ、テーブル12を前記枠体21の往復移動方向に対し直交する横方向へ往復移動できるように設けている。
即ち、本実施形態の架台部1は、
図1(イ)において、テーブル12を図中上下方向へ往復移動するように設けている。
前記架台部1は、設定した任意の速度で前記テーブル12を前記のように図中上下方向に往復移動させることができ、例えば、0.015m/sで移動できるように設けている。
このようにテーブル12を設けることで、テーブル12に取り付けた人工芝生の試験片Pの上面へ、各摩耗子3a、3bのスパイク体8をより偏り無く擦り付けることができる。
【0020】
図2は
図1の摩耗子3aを示す平面図であり、
図3は
図2のA−A断面図である。
摩耗子3bは、回転軸4に取り付けた歯車41bの歯数のみが摩耗子3aと異なり、他は摩耗子3aと同一の構成を備えている。
【0021】
前記回転部5の外周面には、内側へ窪む溝部51を形成させており、円柱状の回転部5の軸方向に沿って回転部5の全長に亘って同一断面形状に前記溝部51を形成させている。
前記溝部51は、底面53と、この底面53の両端から開口側へ向かう2個の内側面52を備えた矩形の断面形状に形成させており、前記底面53から各内側面52の各開口縁54へ至るほど溝幅が大きくなる台形状の断面に形成させている。
尚、前記各開口縁54は各内側面52と回転部5の外周面とが接続する角部分を溝部51の全長に亘り角丸状に形成させている。また、各内側面52と底面53とが接続する角部分を溝部51の全長に亘り角丸状に形成させている。
【0022】
本実施形態の回転部5には、前記溝部51を4個形成させている。具体的には、溝部51a、51bを2個1組とし、溝部51c、51dを2個1組として、2組4個の溝部51を形成させている。
前記回転部5の外周面において、前記溝部51aと溝部51bは半周より若干小さな間隔で配置させており、前記溝部51cと溝部51dは、前記溝部51a、51bの間隔と同じ大きさの間隔をあけて形成している。
また、前記回転部5の外周面において、前記溝部51aと溝部51cを半周の間隔をあけて配置させており、前記溝部51bと溝部51dを半周の間隔をあけて配置させている。
即ち、前記各溝部51a〜51dは、2個1組に形成させた各溝部51間の間隔が、異なる組の溝部51間の間隔よりも大きくなるように形成させている。具体的には、2個1組に形成させた溝部51aと溝部51bとの間隔や溝部51cと溝部51dとの間隔が、溝部51aと溝部51dとの間隔や溝部51bと溝部51cとの間隔よりも大きくなるように配置させている。
【0023】
前記回転部5の外周面には、この外周面から外方へ突出する突起部81を有するスパイク体8を取り付けている。
本実施形態のスパイク体8は、突起部81を矩形板形状に形成させており、幅の大きさ又は突出の大きさが異なる9種類の突起部81が前記回転部5から突出するように取り付けられている。具体的には、前記回転部5の外周面には幅の大きさ又は突出の大きさの少なくともいずれか一方が異なる9種類の突起部81a、81b、81c、81d、81e、81f、81g、81h、81iを有するスパイク体8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g、8h、8iがそれぞれ間隔をあけて取り付けられており、形状が互いに異なる前記突起部81a〜81iが回転部5の外周面から突出するように設けている。
また、前記回転部5には、前記スパイク体8a〜8iをそれぞれ4個づつ取り付けており、1個の回転部5の外周面全体に合計36個のスパイク体8を取り付けている。
【0024】
前記スパイク体8a〜8iの各突起部81a〜81iは、野球向け競技用シューズの靴裏に取り付けられて突出する9種類のスパイクと同形状に形成させている。具体的には、9種類のスパイクが1個の靴裏に取り付けられた野球向け競技用シューズの前記各スパイクと同形状に形成させている。
また、前記スパイク体8a〜8iは、回転部5の外周面において、前記突起部81a〜81iが前記野球向け競技用シューズの靴裏における各スパイクと同じ配置となされるように前記回転部5に取り付けられている。即ち、前記回転部5を1回転させて人工芝生の試験片Pへ擦り付けたときに、前記回転部5に取り付けた合計36個のスパイク体8a〜8iによって、2足4個の前記野球向け競技用シューズがそれぞれ1回づつ踏みつけたのと同等の負荷を前記試験片Pへ与えるように設けている。
【0025】
図6は
図2のスパイク体8aを示す(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図である。
本実施形態のスパイク体8aは、矩形板形状の突起部81aと、この突起部81aの下端から垂直方向へ延設される平板形状の基部82を備えるL字形状に形成させており、1枚の金属板を曲げ加工して形成させている。
また、前記基部82は略矩形板形状に形成させており、前記突起部81aが接続されている端とは逆側の端の2個の角部84a、84bのうち、一方の角部84aを角丸状に形成させている。また、前記角部84a、84bのうちの他方の角部84b付近に前記基部82を貫通する円形の貫通孔83を1個形成させている。
【0026】
また、前記スパイク体8aには、基部81aの上面にスパイク符号85が標示されるように設けている。
前記スパイク符号85は、基部81aの上面に刻印して設けており、突起部81aを備えるスパイク体8aに「1」の数字を刻印して標示させている。
【0027】
尚、前記スパイク体8a以外のスパイク体8b〜8iは、前記突起部81b〜81iの幅の大きさ又は上方への突出の大きさのいずれかが異なるという点以外はスパイク体8aと同様の形状に形成させている。
すなわち、前記スパイク体8b〜8iは、矩形板形状の突起部81b〜81iと、この突起部81b〜81iの下端から垂直方向へ延設される略矩形平板形状の基部82を備えるL字形状に形成させており、前記突起部81が接続されている端とは逆側の端の2個の角部84a、84bのうち、一方の角部84aを角丸状に形成させ、他方の角部84b付近に前記基部82を貫通する円形の貫通孔83を形成させている。
また、前記スパイク体8b〜8iの各基部82には、スパイク符号85を刻印して標示させており、それぞれ形状の異なる前記突起部81b〜81iを備える各スパイク体8b〜8iに、「2」〜「9」の数字をそれぞれ振り分けて標示させている。
【0028】
図4は
図2の摩耗子3aのスパイク体8a付近を拡大した図であり、
図5は
図4のA−A断面図である。
前記スパイク体8a〜8iは、前記回転部5の外周面に形成させた取付部56にそれぞれ取り付けている。取付部56は前記スパイク体8a〜8i1個に対してそれぞれ1個づつ設けており、回転部5に合計36個の取付部56を形成させている。
【0029】
前記各取付部56は、回転部5の外周面から内側へ窪む凹形状に形成させており、具体的には、平面状に形成させた4個の側面58a〜58dと、各側面58a〜58dの下端にそれぞれ接続する平面状の底面58eを有する矩形凹状に形成させている。
尚、前記各側面58a〜58dは、側面58aと側面58cとが相対し、側面58cと側面58dとが相対するように配置させている。
【0030】
また、前記底面58eには、内側に雌ねじを設けられたねじ孔57を形成させており、前記ねじ孔57は前記側面58cと、側面58dとが接続する角部付近に1個形成させている。
【0031】
また、前記底面58eには、位置符号59を1個設けて標示させている。
この位置符号59は、前記スパイク体8a〜8iに設けたスパイク符号85により標示させている「1」〜「9」の数字をそれぞれ標示させており、各スパイク体8a〜8iを取り付けるべき取付部56を示すように設けている。
即ち、スパイク符号85として「1」を標示させた前記スパイク体8aを、「1」の位置符号59が標示された取付部56へ取り付けるように設けている。
尚、本実施形態のスパイク符号85及び位置符号59は数字によって標示させているが、これに限るものではなく、数字以外の文字や記号などを選択又は組みあわせて標示させてもよい。
【0032】
前記スパイク体8aは、平面状に形成させた基部82の下面を前記底面58eに当設させ、貫通孔83に挿通させたねじN1を前記ねじ孔57へ螺結させて、取付部56へ取り付けている。
前記各取付部56は、標示させた位置符号59に対応するスパイク符号85を設けたスパイク体8a〜8iを取り付け可能に設けており、各スパイク体8a〜8iは各々の貫通孔83に挿通させたねじN1を取付部56のねじ孔57へ螺結させ、各基部82を前記各取付部85の内側に収納させると共に、各突起部81を回転部5の外周面から外方へ突出させて取り付けられる。
【0033】
各スパイク体8a〜8iは、平面状に形成させた基部82を平面状に形成させた底面58eに当接させて取り付けるので、スパイク体8a〜8iの基部82と、取付部56の底面58eとの間に隙間が生じにくく、スパイク体8a〜8iをより強固に取付部56へ取り付けることができる。
【0034】
また、各スパイク体8a〜8iをそれぞれ取付部56に取り付けたときに、突起部81a〜81iがそれぞれ取付部56の側面58a付近に配置され、基部82の3つの縁がそれぞれ取付部56の側面58b〜58d付近に配置されるように設けている。このような構成とすることで、スパイク体8a〜8iを取付部56へ取り付けるねじN1とねじ孔57との螺結が緩んだ場合でも、基部82の縁が取付部56の側面58bや側面58dに当接してスパイク体8a〜8iの回転が抑制され、突起部81a〜81iの向きが大きく変化しないようになされる。このため、人工芝生の耐摩耗試験中に突起部81a〜81iの向きが変動して試験条件が変化するような問題を抑制できる。
【0035】
前記各スパイク体8は、前記取付部56のねじ孔57からねじN1を螺脱させることで、取付部56から取り外すことができる。
本実施形態の摩耗子3a、3bは、回転部5の各取付部56へスパイク体8を着脱可能に取り付けるので、前記スパイク体8a〜8iとは異なる形状の突起部81を備える他のスパイク体を準備して前記各取付部56へ取り付けることで、人工芝生の試験片Pへ与える負荷を変更し、条件の異なる耐摩耗試験を容易に実施することができる。
【0036】
また、それぞれ形状の異なる前記突起部81a〜81iを備える各スパイク体8a〜8iに、「1」〜「9」の数字をそれぞれ振り分けてスパイク符号を標示させると共に、各取付部56に前記スパイク符号85に対応する「1」〜「9」の位置符号59を標示させるので、前記各スパイク体8a〜8iを取り外した場合でも、常に同じ配置でこれらを回転部5へ取り付けることができるので、摩耗子3a、3bによって行う耐摩耗試験の試験条件の変動が防止できる。
尚、本実施形態の各スパイク体8a〜8iは、基部82の前記角部84b付近に形成させた貫通孔83に挿通させたねじN1を取付部56のねじ孔57へ螺結させたときに、基部82の4個の縁がそれぞれ取付部56の側面58a〜58d付近に配置されるように設けているので、各スパイク体8a〜8iをそれぞれ取付部56へ取り付けたときに、突起部81a〜81iが常に各取付部56の側面58a付近に配置されるように設けている。即ち、各スパイク体8a〜8iを取付部56へ取り付けたときに、突起部81a〜81iが常に同じ配置となされるので、突起部81a〜81iの配置の変化による耐摩耗試験の試験条件の変動が防止できる。
【0037】
図7は
図1〜3の回転部5からスパイク体8を取り外し、摩擦体6を取り付けた状況を示す摩耗子3aの平面図であり、
図8は
図7のA−A断面図である。
図7に示す摩耗子3aは、ねじN1を螺脱させて回転部5から全てのスパイク体8を取り外し、その外周面にシート状の摩擦体6を巻回させて取り付けた状況を示している。
【0038】
前記摩擦体6は、矩形の合成ゴムシートで形成させており、その表面に凹溝65を多数並設させて形成している。
尚、摩擦体6の材料は合成ゴムに限るものではなく、合成ゴム以外の合成樹脂や金属などの材料を適宜選択又は組み合わせて形成してもよく、凹溝や突起などを選択又は組み合わせてその表面に形成させてもよい。
【0039】
前記摩擦体6は、その表面を外側へ向け、裏面を回転部5へ当接させて巻回させ、回転部5の外周面へ被着させている。
本実施形態の回転部5には、2個の摩擦体6a、6bを周方向へ間隔をあけて並設させて取り付けている。
また、前記回転部5には、前記摩擦体6aと摩擦体6bを、回転部5の軸方向へそれぞれ5個並設させている。
即ち、本実施形態の回転部5には合計10個の摩擦体6を取り付けている。
【0040】
前記各摩擦体6a、6bは、前記回転部5の軸方向に沿う端部61、62を溝部51の内側へ挿入させて取り付けている。
具体的には、前記摩擦体6aは、一方の端部61を前記溝部51a内へ挿入させると共に、他方の端部62を前記溝部51aと2個1組に形成させた溝部51b内へ挿入させており、前記摩擦体6bは、一方の端部61を前記溝部51c内へ挿入させると共に、他方の端部62を前記溝部51cと2個1組に形成させた溝部51d内へ挿入させている。
前記摩擦体6a、6bの各端部61、62は、前記溝部51a〜51dの内側にそれぞれ取り付けた収納部材7と、前記溝部51a〜51dの内面との間に狭着されて、各溝部51a〜51dの内側から抜けないように取り付けられている。
【0041】
図9は
図7、8の収納部材を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図である。
本実施形態の収納部材7は、矩形の断面形状の長尺体に形成させており、上面74と、この上面74の両端にそれぞれ接続して下方へ延設される2個の外側面72と、各外側面72の下端に両端を接続させる下面73とを備えている。
【0042】
前記収納部材7は、2個の外側面72の間隔が、上面74から下面73へ至るほど幅狭となる台形状の断面形状に形成させている。
詳細には、前記各外側面72は、前記摩耗子3a、3bの回転部5に形成させた溝部51の2個の内側面52に対応する位置に形成させており、前記収納部材7を溝部51内に取り付けたときに、各外側面72が前記各内側面52に対してそれぞれ平行に配置されるように形成させている。
【0043】
前記収納部材7には、上面74から下面73へ貫通する円形の貫通孔71を形成させており、この貫通孔71へ挿通させたねじN2を前記溝部51の底面53へ螺入させて、
図8に示すように、収納部材7を溝部51へ取り付けるように設けている。
前記貫通孔71は、下部に小径部76を設け、上部に小径部76よりも孔の内径を大きく形成させた大径部75を設けており、前記小径部76へねじN2の雄ねじ部分を挿通可能に形成させ、前記大径部75の内側へ前記ねじN2のねじ頭部を収納可能に形成させている。
本実施形態の収納部材7には、長手方向に間隔をあけて2個の貫通孔71を形成させている。
【0044】
前記回転部5の各溝部51a〜51dの底面53には、前記ねじN2が螺入可能な雌ねじを備えたねじ孔55をそれぞれ形成させており、前記ねじ孔55は前記収納部材7に形成させた2個の貫通孔71に対応する配置で2個1組で形成させている。
尚、
図7に示すように、本実施形態の回転部5は、1個の溝部51に5個の収納部材7を取り付けるように設けている。前記ねじ孔55は、1個の溝部51に5組10個形成させており、4個の溝部51a〜51dを備える回転部5全体で合計20組40個のねじ孔55を形成させている。
【0045】
摩擦体6aは、一方の端部61を溝部51aへ挿入させた状態で、前記収納部材7を溝部51aへ挿入させ、この収納部材7の各貫通孔71へねじN2を挿通させて溝部51aのねじ孔55へそれぞれ螺入させることで、摩擦体6aの端部61を回転部5へ取り付けることができる。更に、2個1組で形成させた溝部51aと溝部51bとの間の回転部5の外周面に前記摩擦体6aを巻回させ、他方の端部61を前記溝部51bへ挿入させて取り付けるように設けている。
前記端部62の溝部51bへの取り付けは、前記端部61の溝部51aへの取り付けと同じ方法で行うものである。即ち、摩擦体6aの端部62を挿入させた溝部51bへ収納部材7を挿入させ、この収納部材7の各貫通孔71へねじN2を挿通させて溝部51bのねじ孔55へそれぞれ螺入させることで、端部62を回転部5へ取り付けることができる。
【0046】
上記のように前記摩擦体6aは、溝部51aと溝部51bに取り付けた2個の収納部材7によってその両側の端部61、62を溝部51a、51b内から抜けないように取り付けられており、軸方向に沿って5個並設させた摩擦体6aを10個の収納部材7によって回転部5へ取り付けている。
【0047】
尚、摩擦体6bの端部61、62の溝部51c、51dへの取り付けは、前記摩擦体6aの溝部51a、51bへの取り付けと同じ方法で行うものであり、上記の方法で前記摩擦体6a、6bを回転部5へ取り付けて
図7に示す構成の摩耗子3a、及び摩耗子3bを形成するものである。
【0048】
図8に示すように、本実施形態の摩耗子3a、3bの回転部5は、外周面に巻回させて取り付けた摩擦体6の表面が径方向において最も外側に位置し、各溝部51a〜51dに取り付けた収納部材7やねじN2が前記摩擦体6の表面よりも内側に位置するように設けている。
このように摩耗子3a、3bを設けることで、人工芝生の試験片Pの上面への摩擦体6以外の部材の接触を抑制させ、人工芝生の試験片Pへ与える負荷の変動を抑制させている。
【0049】
また、本実施形態の摩耗子3a、3bの回転部5は、2個の内側面52間の間隔が開口縁54に至るほど大きくなるように配置させた台形状の断面に溝部51を形成させると共に、前記収納部材7の2個の外側面72を前記各内側面52に対応する位置に形成させている。このように設けることで、ねじN2を介して溝部51の内側に取り付ける収納部材7を底面53側から開口縁54側に近い位置に取り付けるほど、前記溝部51の内側面52と前記収納部材7の外側面72との隙間が大きくなるようになされるので、厚みの異なる種々の摩擦体6を前記収納部材7の外側面72と溝部51の内側面52との間に容易に狭着させて回転部5へ取り付け、試験を行うことができる。
【0050】
尚、本発明に係る人工芝生試験装置Tは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、
図1〜9に示す実施形態の摩耗子3a、3bは、回転部5とその両端からそれぞれ突出する各回転軸4とを金属製で一体的に形成させているがこれに限るものではない。例えば、回転部5を回転軸4とは別体の円柱形状や円筒形状に形成させ、回転部5へ回転軸4を取り付けて摩耗子3a、3bを形成させてもよい。
【0052】
また、
図1〜6に示す実施形態の摩耗子3a、3bは、回転部5に取り付けたスパイク体8の突起部81を矩形板状に形成させているが、これに限るものではなく、矩形以外の板状に形成させてもよく、板状以外の形状に形成させてもよい。
【0053】
また、
図7〜9に示す実施形態の摩耗子3a、3bは、摩擦体6a、6bの両方の端部61、62をそれぞれ異なる溝部51へ挿入させて収納部材7により取り付けているが、これに限るものではない。
例えば、回転部5に溝部51を1個だけ形成させ、外周面に巻回させた1個の摩擦体6の両端をこの溝部51へ挿入させて収納部材7により取り付けるように設けても良い。
しかしながら、前記摩耗子3a、3bは、人工芝生の試験片Pへ与える負荷の変動を低減するために、回転部5の外周面と摩擦体6との間にたるみによる隙間が生じないのが好ましい。
図7〜9に示す実施形態の摩耗子3a、3bのように、摩擦体6の両側の端部61、62をそれぞれ異なる溝部51へ挿入させて取り付けるように設けることで、一方の端部61を溝部51へ挿入させて収納部材7により取り付けた後、回転部5の外周面と摩擦体6との間に隙間が生じないように他方の端部62を引っ張り緊張させた状態で、他の溝部51へ挿入させて収納部材7により取り付けることができるので、摩擦体6をたるませずに容易に回転部5へ取り付けることができ、好ましい。
また、一方の端部61を溝部51へ取り付けた後、他方の端部62を他の溝部51へ挿入させて収納部材7を取り付ける作業において、収納部材7の貫通孔71へ挿入させ溝部51のねじ孔55へ螺入させたねじN2を締め付けることにより、ねじN2の締め付けによって移動する収納部材7と共に摩擦体6の端部62が溝部51の奥側へ引き寄せられて摩擦体6がより緊張するようになされ、摩擦体6のたるみを解消する効果が期待できる。