(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166186
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】温度検出装置
(51)【国際特許分類】
G01K 7/25 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
G01K7/25 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-3520(P2014-3520)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2015-132519(P2015-132519A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】込山 広紀
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−190895(JP,A)
【文献】
特開平5−1886(JP,A)
【文献】
米国特許第4300392(US,A)
【文献】
特開2003−57116(JP,A)
【文献】
実開昭62−176734(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0065540(US,A1)
【文献】
特開2006−284301(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第448414(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/24−7/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1サーミスタが接地側に接続されており、この第1サーミスタと電源側との間に調整用抵抗が接続されており、これら第1サーミスタと調整用抵抗との接続点の電圧を出力とする第1温度検出回路を備え、
第2サーミスタが前記電源側に接続されており、この第2サーミスタと前記接地側との間に調整用抵抗が接続されており、これら第2サーミスタと調整用抵抗との接続点の電圧を出力とする第2温度検出回路を備え、
前記第1温度検出回路及び第2温度検出回路の出力に対して演算を行う演算回路を備えたことを特徴とした温度検出装置。
【請求項2】
前記第1サーミスタもしくは前記第2サーミスタの少なくとも一方に対して、並列もしくは直列に他の調整用抵抗を少なくとも一つ接続したことを特徴とした請求項1記載の温度検出装置。
【請求項3】
前記第1サーミスタ及び前記第2サーミスタの温度係数がいずれも正,もしくは、いずれも負であることを特徴とした請求項1又は2記載の温度検出装置。
【請求項4】
前記演算回路の演算結果を示す電圧値を、アナログ信号からデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、
このA/Dコンバータによって変換されたデジタル信号に対してソフトウエアによる演算処理を行うコンピュータとを備えたことを特徴とした請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーミスタを使用して温度を検出する温度検出装置に関し、更に具体的には、その直線性の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーミスタを使用して温度を検出する場合、基準電圧を抵抗分圧で検出する方法が安価で一般的である。しかし、サーミスタは、その温度特性が、温度に対して必ずしもリニアな抵抗値変化とはならない。このため、サーミスタと抵抗の分圧回路で基準電圧を分圧して検出する方法では、検出される電圧が温度の変化に対して直線的に変化せず、リニアな特性が得られない。
【0003】
サーミスタの温度特性、すなわち温度変化に対する抵抗値の変化をリニア(直線状)とする背景技術としては、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。特許文献1(特開2005-277185号公報)の「リニアライズドサーミスタの製造方法」は、組成並びに抵抗―温度特性が異なる2種類以上のパターンサーミスタを並列に組合せ、各々のパターンサーミスタの抵抗―温度特性と、各々のパターンサーミスタの抵抗―温度特性曲線のすべての曲線と接する包絡線によって形成される温度領域をシミュレートする。これによってリニアとなる温度領域が得られたときは、選択された複数のパターンサーミスタのそれぞれと同じ組成のサーミスタ材料をもってサーミスタを製造する。得られたサーミスタは、抵抗―温度特性がリニアとなる温度領域を有するようになる。
【0004】
特許文献2(特開平9-21715号公報)の「センサ用温度補償回路」は、センサ回路がもつ非直線な温度特性と逆の温度特性を持つサーミスタと電気抵抗から構成される温度補償回路を組み合わせることで、センサ回路全体としての温度特性をリニア化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-277185号公報
【特許文献2】特開平9-21715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法では、所望の温度範囲にて温度特性が直線となるようにその都度サーミスタの材料組成を組み合わせて製造しなければならず、手間やコストがかかってしまう。一方、特許文献2の手法では、補正するセンサ回路の温度特性に対応した特性の温度補償回路を選択する必要があり、センサ回路の温度特性によっては、十分に温度補償できない場合がある。
【0007】
加えて、A/D変換を行ってデジタル的にサーミスタの電圧を検出する方法を使用した場合、A/D変換の分解能が電圧値に対して一律であることから、温度によって検出誤差が異なるようになる。現状では、マイクロコンピュータなどを利用し、電圧−温度の測定範囲をある区間毎に区切り、区間毎に近似式を用いて電圧から温度への変換を行っているが、温度の測定精度を上げようとすると、前記区間数を多くする必要があり、コンピュータによるソフトウエア処理の負担が増大するといった不都合がある。
【0008】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、簡単な回路構成により温度特性をリニア化し、サーミスタを用いた温度測定の精度向上を図ることである。他の目的は、電圧−温度の測定範囲の区間分割数を低減し、コンピュータによるソフトウエア処理の負担を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の温度検出装置は、第1サーミスタが接地側に接続されており、この第1サーミスタと電源側との間に調整用抵抗が接続されており、これら第1サーミスタと調整用抵抗との接続点の電圧を出力とする第1温度検出回路を備え、第2サーミスタが前記電源側に接続されており、この第2サーミスタと前記接地側との間に調整用抵抗が接続されており、これら第2サーミスタと調整用抵抗との接続点の電圧を出力とする第2温度検出回路を備え、前記第1温度検出回路及び第2温度検出回路の出力に対して演算を行う演算回路を備えたことを特徴とする。
【0010】
主要な形態の一つによれば、前記第1サーミスタもしくは前記第2サーミスタの少なくとも一方に対して、並列もしくは直列に他の調整用抵抗を少なくとも一つ接続したことを特徴とする。他の形態の一つによれば、前記第1サーミスタ及び前記第2サーミスタの温度係数がいずれも正,もしくは、いずれも負であることを特徴とする。更に他の形態によれば、前記演算回路の演算結果を示す電圧値を、アナログ信号からデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、このA/Dコンバータによって変換されたデジタル信号に対してソフトウエアによる演算処理を行うコンピュータとを備えたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1サーミスタが接地側に接続されており、この第1サーミスタと電源側との間に調整用抵抗が接続されており、これら第1サーミスタと調整用抵抗との接続点の電圧を出力とする第1温度検出回路と、第2サーミスタが前記電源側に接続されており、この第2サーミスタと前記接地側との間に調整用抵抗が接続されており、これら第2サーミスタと調整用抵抗との接続点の電圧を出力とする第2温度検出回路とを備えることで、特性が反転した出力を得ることができる。このため、演算回路で前記第1温度検出回路及び第2温度検出回路の出力に対して演算を行うことで非直線な特性を打ち消すことができ、直線から外れる温度特性の傾きをキャンセルして温度特性の直線性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の温度検出装置の実施例の構成を示す回路図である。(A)は全体を示す図、(B)は第1及び第2の温度検出回路をブリッジ回路として表した図、(C)は温度検出回路の他の構成例を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1における温度−電圧の関係を示すグラフである。
【
図3】本発明の実施例2における温度と電圧の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1(A)は、本実施例の温度検出装置10が示されている。同図において、温度検出装置10は、第1温度検出回路100と、第2温度検出回路200を備えている。第1温度検出回路100は、第1サーミスタ102に直列に接続された第1固定抵抗104と、第1サーミスタ102に並列に接続された第2固定抵抗106によって構成されている。第1固定抵抗104には基準電圧が印加されており、その第1サーミスタ102との接続点が出力端子110となっており、第1サーミスタ102の他端は接地側(アースないしグランド)に接続されている。一方、第2温度検出回路200は、第2サーミスタ202に第3固定抵抗204が直列に接続された構成となっており、第2サーミスタ202には基準電圧が印加されており、その第3固定抵抗204との接続点が出力端子210となっており、第3固定抵抗204の他端は接地側に接続されている。
【0015】
第1温度検出回路100の出力端子110と、第2温度検出回路200の出力端子210は、加算回路(演算回路)20の入力端子にそれぞれ接続されており、加算回路20の出力側は、A/Dコンバータ30を介してマイコン(マイクロコンピュータ)40に接続されている。
【0016】
以上の各部のうち、第1及び第2温度検出回路100,200の各サーミスタ102,202は、同一の温度係数のものを使用する。すなわち、第1サーミスタ102の温度係数が正のときは、第2サーミスタ202の温度係数も正とし、逆に、第1サーミスタ102の温度係数が負のときは、第2サーミスタ202の温度係数も負とするという具合である。なお、温度特性は、同一でもよいし、異なっていてもよい。第1及び第2温度検出回路100,200の各固定抵抗104,106,204は、それらの抵抗値を調整することで、各温度検出回路100,200の出力端子110,210の加算結果がリニアになるようにするための調整用抵抗である。
【0017】
以上のような温度検出回路100,200は、同図(B)のように表現することができ、対角位置にサーミスタ102,202を設置したブリッジ回路であると考えることができる。
【0018】
次に、加算回路20は、入力に対して所定の演算を行うためのオペアンプで、例えば、入力A,Bに対して、(A+B)×KA+KBの演算が行われるようになっている。KA,KBは係数である。演算結果は、A/Dコンバータ30によってアナログ信号からデジタル信号に変換され、これがマイコン40に供給されるようになっている。上述した加算回路20の演算における係数KAは、例えば1/2に設定される。係数KBは、A/Dコンバータ30において演算結果をA/D変換する際に、検出可能な電圧値とするためのオフセットである。
【0019】
上述した各回路素子の一例を示すと、次のようになる。
第1サーミスタ102:SEMITEC社製,型番「104JT」
第2サーミスタ202:SEMITEC社製,型番「104JT」
第1固定抵抗104:18kΩ
第2固定抵抗106:100MΩ
第3固定抵抗204:2. 2MΩ
基準電圧:4.096V(A/D変換するために、2の11乗に設定した電圧値が必要)
【0020】
なお、上記例は、温度特性がリニアになる温度範囲を、-20℃〜70℃の範囲に設定した場合である。この温度範囲は、例えばリチウムイオン電池[Ishida1]の使用温度範囲に対応しており、リチウムイオン電池の温度検出に好適である。
【0021】
次に、本実施例の動作について、
図2も参照しながら説明する。
図2には、本実施例における出力端子110,210の電圧変化が示されている。例えば、第1サーミスタ102及び第2サーミスタ202の温度係数が負であるとすると、温度の上昇とともに抵抗値は低下する。すると、第1温度検出回路100では、第1サーミスタ102が接地側に接続されているため、グラフG110で示すように、温度の上昇とともに、出力端子110の電圧は低下するようになる。一方、第2温度検出回路200では、第2サーミスタ202が基準電圧側に接続されているため、グラフG210で示すように、温度の上昇とともに、出力端子210の電圧は上昇するようになる。
【0022】
加算回路20では、グラフG110,G210の電圧に対して、上述した加算及びオフセット付加の演算処理が行われる。その結果、加算回路20の出力は、グラフG20で示すように、ほぼリニアな特性となっている。この加算回路20の演算結果は、A/Dコンバータ30でデジタル信号に変換され、マイコン40に供給される。マイコン40では、グラフG20に対して、グラフG40で示す直線近似のソフトウエア処理が施される。
【0023】
このように、本実施例によれば、温度係数が一致するサーミスタを基準電圧側と接地側にそれぞれ設けた(別言すれば、ブリッジ回路の対辺位置にサーミスタを設置した)温度検出回路の出力を利用することで、温度特性が反転した電圧出力を得ることができ、サーミスタのノンリニアな温度特性を打ち消すことができる。このため、簡単な回路構成で温度特性をリニア化し、サーミスタを用いた温度測定の精度が向上する。また、電圧−温度の測定範囲の区間分割数が低減でき、ソフトウエア処理の負担が軽減される。
【実施例2】
【0024】
次に、
図3を参照しながら、本発明の実施例2について説明する。上述した実施例1では、温度特性が同一のサーミスタを使用したが、本実施例では、温度特性が異なるサーミスタが使用される。基本的な構成は前記実施例1と同様であり、各回路素子の値を示すと、次のようになる。
第1サーミスタ102:SEMITEC社製,型番「103JT」
第2サーミスタ202:SEMITEC社製,型番「103AP2」
第1固定抵抗104:18kΩ
第2固定抵抗106:100MΩ
第3固定抵抗204:47kΩ
基準電圧:4.096V[Ishida2]
【0025】
本実施例における特性は、
図3に示すようになる。すなわち、第1温度検出回路100の出力端子110の電圧はグラフH110で示すようになり、第2温度検出回路200の出力端子210の電圧はグラフH210で示すようになる。また、加算回路20の演算結果はグラフH20のようになり、マイコン40の直線近似はグラフH40で示すようになる。なお、本実施例における第1温度検出回路100は、前記実施例実施例と同じ特性のサーミスタを使用しており、固定抵抗値も同じなので、グラフH210は、前記実施例におけるグラフG210と同じである。本実施例のように、異なる温度範囲の仕様に適したサーミスタを組み合わせても、広い範囲で温度特性をリニア化でき、記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0026】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得る。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例では、調整用抵抗として、第1及び第2温度検出回路100,200において固定抵抗104,106,204を設けたが、調整用抵抗は、必要に応じて増減してよい。例えば、前記実施例の第1温度検出回路100を、
図1(C)に示す温度検出回路300のように構成してもよい。同図の温度検出回路300は、上述した第1及び第2固定抵抗104,106に加えて、第3固定抵抗302を第1サーミスタ102に直列に接続した構成となっている。
(2)前記実施例では、マイコン40を使用して、デジタル的に信号処理を行って温度検出を行ったが、アナログ的に信号処理を行って温度検出を行うことを妨げるものではない。
(3)前記実施例は、リチウムイオン電池[Ishida3]の温度検出に好適な例であるが、本発明は何らそれに限定されるものではなく、各種の温度検出に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、温度特性が良好にリニアに改善されるので、各種の温度計測に好適である。
【符号の説明】
【0028】
10:温度検出装置
20:加算回路
30:A/Dコンバータ
40:マイコン
100:第1温度検出回路
102:第1サーミスタ
104:第1固定抵抗
106:第2固定抵抗
110:出力端子
200:第2温度検出回路
202:第2サーミスタ
204:第3固定抵抗
210:出力端子
300:温度検出回路
302:第3固定抵抗