【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3には、患部周辺を気密性のカバー部材及びシール手段により気密状態にして、吸引管及び吸引手段により患部周辺を陰圧にする陰圧閉鎖療法用の陰圧閉鎖用具が記載されている。特許文献1〜3では、吸引管は、カバー部材に設けられた接続部(特許文献1の「コネクタ30」、特許文献2の「減圧接続部92」、特許文献3の「連通口41」)を介して陰圧密閉部から外部に導出されている。このような構成の陰圧閉鎖用具だと、カバー部材の端部の気密度を高めるほかに、カバー部材に設けられた吸引管の接続部の気密度を高める必要が生じる。カバー部材の設けられた接続部の気密度を高めようとすると、どうしても接続部の構造が複雑になってしまうため患者にとって邪魔になり、陰圧閉鎖用具を長期間着用する場合に生活活動に支障が生じる。さらに、吸引管のほか、洗浄液を供給する洗浄管や、薬液を供給する管などを設ける場合に、その都度、接続部を増設する必要があり、カバー部材の構造が複雑になるため、ますます長期着用に支障を生じてしまう。特に、手の創に用いた場合、用具装着下での手の運動は困難である。また、陰圧閉鎖療法においては、吸引管や洗浄管の先端をできるだけ患部に近い位置に導いた方が効果的であるが、カバー部材の接続部を介していると接続部の構造や位置が制約になり、吸引管や洗浄管の先端を患部近傍に導くのは難しい。
【0007】
非特許文献1〜2は、本願の発明者らの先行技術であり、カバー部材に接続部を設けずに、吸引管等をカバー部材と体表面との間を通して患部に導く技術が記載されている。非特許文献1〜2の技術では、カバー部材に特別に吸引管等の接続部を設ける必要がないため、全体の構造が簡単になり長期着用に適している。しかしながら、吸引管等の固定に一般の医療用片面テープを用いているため、吸引管等の固定に難があるとともに、吸引管等の周辺での気密性にも問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、カバー部材に吸引管等を接続する接続部を設けないで、装着性を向上させた陰圧閉鎖用具を提供することを目的とする。また、患部周辺の気密度を向上させることができる陰圧閉鎖用具を提供することを目的とする。また、装着時に吸引管等の位置決めや固定が容易にできる陰圧閉鎖用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
患部を含む体表面を陰圧にする陰圧閉鎖療法で用いる陰圧閉鎖用具であって、
前記体表面を覆うための気密性のカバー部材と
、
前記カバー部材の開口部又は端部に設けられたシール手段と、
前記体表面を陰圧にするために、前記患部の近傍から前記カバー部材の開口部又は端部を経て前記カバー部材の外部に連通する吸引管と、を有し、
前記カバー部材の開口部又は端部において、前記吸引管の前記体表面側には、前記吸引管を固定するための両面テープが設けられて
おり、
前記吸引管は前記シール手段と前記両面テープの間に設けられており、前記シール手段及び前記両面テープにより前記体表面を気密状態にする、
陰圧閉鎖用具。
【0010】
前記患部は、治療対象となるものであればどのようなものでも良く、例えば、創傷、火傷、褥瘡などがある。特に、患部が手に位置している場合に好適に用いられ得るが、手に限定されず、例えば、足などの他、背中や腹部など平坦な部分でも用いられ得る。
前記カバー部材の材質は、柔軟性を有し、患部及び患部周辺の体表面を気密状態にできるものであれば、特に限定されない。例えば、ポリ塩化ビニール、天然ゴムラテックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどが用いられ得る。また、患部近傍を視認しやすくするために、透明又は半透明のものが好ましい。
前記カバー部材の形状は、患部が手の場合には手袋状のものが好適に用いられ得るが、これに限定されず、例えば身体の平坦部分にある患部の場合にはシート状のものも用いられ得る。
前記シール手段は、体表面とカバー部材との間を気密状態にできるものであれば、どのようなものでも構わない。例えば、カバー部材の開口部又は端部を外側から巻き付ける医療テープを用いても構わない。もしくは、カバー部材の開口部又は端部の体表面側に粘着層を設けて、この粘着層によりカバー部材を体表面に密着させても構わない。
前記吸引管は空気や体液などを吸引できるものであれば何でも良い。材質は限定されないが、柔軟性を有する材質で構成されていることが好ましく、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコンゴム、ポリ塩化ビニール、ポリエステル、ポリプロピレンなどが用いられ得る。
前記吸引管は、カバー部材の開口部又は端部と体表面との間を通って、カバー部材の外部に導出される。前記吸引管の他、別途、洗浄管や薬液供給管などを追加で設けても良い。この場合、これらの管もカバー部材の開口部又は端部と体表面との間を通って、カバー部材の外部に導出される。
前記患部の近傍とは、前記吸引管の先端から吸引を行うことにより前記患部を陰圧にできる範囲を意味している。
前記両面テープは、前記吸引管を体表面及びカバー部材に固定するためのものである。両面に粘着層を有しているテープであれば、材質は何でも構わず、厚さも限定されないが、一般の医療用片面テープと同等の材質及び厚さであることが好ましい。
前記陰圧閉鎖用具の装着手順は、前記両面テープを体表面に貼付け、前記両面テープに前記吸引管を固定し、前記カバー部材で患部を覆い、前記シール手段で前記カバー部材内を気密状態にする、という順番が好ましいが、この手順に限定されず、例えば、前記吸引管を予めカバー部材に固定してから装着しても構わない。
【0011】
本発明は、吸引管等をカバー部材の開口部又は端部から患部に導入しているため、カバー部材に吸引管等を通す接続部を別途設ける必要がない。また、カバー部材の開口部又は端部において吸引管等の体表面側に両面テープが設けられているため、吸引管等と体表面との接触性を向上させつつ、吸引管等の周辺での空気漏れを防ぐことができ、より高精度な陰圧を実現できる。さらに、吸引管等の体表面側に両面テープが設けられていることから、本発明の陰圧閉鎖用具の装着時に吸引管等を体表面に固定しておくこともでき、装着時間の短縮を実現できる。
【0012】
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記患部の近傍に洗浄液又は薬液を供給する供給管をさらに有し、
前記供給管が、前記吸引管と同様に、前記患部の近傍から前記カバー部材の開口部又は端部を経て前記カバー部材の外部に連通している。
【0013】
前記患部の近傍とは、前記供給管の先端から洗浄液又は薬液を供給することにより前記患部に洗浄液又は薬液を供給できる範囲を意味している。
前記供給管から供給されるのは、洗浄液又は薬液、若しくはその両方である。前記洗浄液は、患部を洗浄可能な液体であれば何でも良く、水などでも良い。
本発明は吸引管のみでも実施可能であるが、さらに供給管を設けることで、患部に洗浄液又は薬液、若しくはその両方を供給することができ、感染創などに適用可能になるとともに、治癒効果を向上させることができる。
【0014】
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記供給管の前記カバー部材の開口部又は端部からの挿入長さが、前記吸引管の挿入長さよりも長い。
【0015】
供給管の挿入長さを吸引管の挿入長さよりも長くすることで、供給管から吸引管への洗浄液や薬液の流れを形成することができ、より広範囲に洗浄液や薬液を供給することが可能になる。
【0016】
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記カバー部材は袋状の部材であり、
前記シール手段は袋状のカバー部材の開口部に設けられている。
【0017】
本発明のカバー部材の形状は特に限定されないが、袋状のもの、特に手袋状のものが好適に用いられ得る。本発明の陰圧閉鎖用具は、長期着用に向いているため、特に手の患部の治療に対して有効である。
前記カバー部材の開口部は、手袋状のカバー部材の場合は手首部分の開口部に相当し、前記両面テープは手首部分に貼付けられる。
【0018】
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記患部には、患部を保護するための被覆材が設けられている。
【0019】
患部に被覆材を設けることで、患部の保護ができる。被覆材は、浸透性や吸収性を持ち、患部を保護できるものであれば、材質は特に限定されず、ポリウレタン、ハイドロコロイド、不織布、ガーゼなどが用いられ得る。