特許第6166187号(P6166187)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166187
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】陰圧閉鎖用具
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20170710BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   A61M27/00
   A61F13/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-6323(P2014-6323)
(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公開番号】特開2015-134045(P2015-134045A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年11月2日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、研究成果最適展開支援プログラム、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅雄
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5246397(JP,B2)
【文献】 特表2010−515540(JP,A)
【文献】 特表2010−536495(JP,A)
【文献】 特表2002−524109(JP,A)
【文献】 特許第5322002(JP,B2)
【文献】 国際公開第2012/063725(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0150720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患部を含む体表面を陰圧にする陰圧閉鎖療法で用いる陰圧閉鎖用具であって、
前記体表面を覆うための気密性のカバー部材と
記カバー部材の開口部又は端部に設けられたシール手段と、
前記体表面を陰圧にするために、前記患部の近傍から前記カバー部材の開口部又は端部を経て前記カバー部材の外部に連通する吸引管と、を有し、
前記カバー部材の開口部又は端部において、前記吸引管の前記体表面側には、前記吸引管を固定するための両面テープが設けられており、
前記吸引管は前記シール手段と前記両面テープの間に設けられており、前記シール手段及び前記両面テープにより前記体表面を気密状態にする、
陰圧閉鎖用具。
【請求項2】
前記患部の近傍に洗浄液又は薬液を供給する供給管をさらに有し、
前記供給管が、前記吸引管と同様に、前記患部の近傍から前記カバー部材の開口部又は端部を経て前記カバー部材の外部に連通している、
請求項1記載の陰圧閉鎖用具。
【請求項3】
前記供給管の前記カバー部材の開口部又は端部からの挿入長さが、前記吸引管の挿入長さよりも長い、
請求項2記載の陰圧閉鎖用具。
【請求項4】
前記カバー部材は袋状の部材であり、
前記シール手段は袋状のカバー部材の開口部に設けられている、
請求項1乃至3いずれか記載の陰圧閉鎖用具。
【請求項5】
前記患部には、患部を保護するための被覆材が設けられている、
請求項1乃至4いずれか記載の陰圧閉鎖用具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患部(創傷、火傷、褥瘡等)周辺を気密状態にして陰圧にする陰圧閉鎖療法で用いる陰圧閉鎖器具に関する。
【背景技術】
【0002】
患部(創傷、火傷、褥瘡等)周辺を気密状態にして陰圧にする陰圧閉鎖療法が知られている。特許文献1〜3及び非特許文献1〜2に記載されているように、患部を気密性のカバー部材で覆い、吸引管及び吸引手段を用いて患部周辺を陰圧にすることにより、患部の治癒の促進を図るものである。
【0003】
図7は、従来技術の例を示すものである。手の患部に被覆材33を配置し、気密性のカバー部材31の中に手を入れて、吸引管34により吸引することにより患部を陰圧状態にする。この際、吸引管34はカバー部材31に設けられた気密性の接続部37を介して、カバー部材31内から外部に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5246397
【特許文献2】特許5322002
【特許文献3】特表2011-521743
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hand Surgery, Vol.16, No.1(2011), p.99-103, M.Fujiwara et al,“Negative pressure therapy with irrigation for an infected digit:…”
【非特許文献2】Hand Surgery, Vol.17, No.1(2012), p.71-75, Y.Matsushita, M.Fujiwaraet al, “Negative pressure therapy with irrigation for digits and hands…”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3には、患部周辺を気密性のカバー部材及びシール手段により気密状態にして、吸引管及び吸引手段により患部周辺を陰圧にする陰圧閉鎖療法用の陰圧閉鎖用具が記載されている。特許文献1〜3では、吸引管は、カバー部材に設けられた接続部(特許文献1の「コネクタ30」、特許文献2の「減圧接続部92」、特許文献3の「連通口41」)を介して陰圧密閉部から外部に導出されている。このような構成の陰圧閉鎖用具だと、カバー部材の端部の気密度を高めるほかに、カバー部材に設けられた吸引管の接続部の気密度を高める必要が生じる。カバー部材の設けられた接続部の気密度を高めようとすると、どうしても接続部の構造が複雑になってしまうため患者にとって邪魔になり、陰圧閉鎖用具を長期間着用する場合に生活活動に支障が生じる。さらに、吸引管のほか、洗浄液を供給する洗浄管や、薬液を供給する管などを設ける場合に、その都度、接続部を増設する必要があり、カバー部材の構造が複雑になるため、ますます長期着用に支障を生じてしまう。特に、手の創に用いた場合、用具装着下での手の運動は困難である。また、陰圧閉鎖療法においては、吸引管や洗浄管の先端をできるだけ患部に近い位置に導いた方が効果的であるが、カバー部材の接続部を介していると接続部の構造や位置が制約になり、吸引管や洗浄管の先端を患部近傍に導くのは難しい。
【0007】
非特許文献1〜2は、本願の発明者らの先行技術であり、カバー部材に接続部を設けずに、吸引管等をカバー部材と体表面との間を通して患部に導く技術が記載されている。非特許文献1〜2の技術では、カバー部材に特別に吸引管等の接続部を設ける必要がないため、全体の構造が簡単になり長期着用に適している。しかしながら、吸引管等の固定に一般の医療用片面テープを用いているため、吸引管等の固定に難があるとともに、吸引管等の周辺での気密性にも問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、カバー部材に吸引管等を接続する接続部を設けないで、装着性を向上させた陰圧閉鎖用具を提供することを目的とする。また、患部周辺の気密度を向上させることができる陰圧閉鎖用具を提供することを目的とする。また、装着時に吸引管等の位置決めや固定が容易にできる陰圧閉鎖用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
患部を含む体表面を陰圧にする陰圧閉鎖療法で用いる陰圧閉鎖用具であって、
前記体表面を覆うための気密性のカバー部材と
記カバー部材の開口部又は端部に設けられたシール手段と、
前記体表面を陰圧にするために、前記患部の近傍から前記カバー部材の開口部又は端部を経て前記カバー部材の外部に連通する吸引管と、を有し、
前記カバー部材の開口部又は端部において、前記吸引管の前記体表面側には、前記吸引管を固定するための両面テープが設けられており、
前記吸引管は前記シール手段と前記両面テープの間に設けられており、前記シール手段及び前記両面テープにより前記体表面を気密状態にする、
陰圧閉鎖用具。
【0010】
前記患部は、治療対象となるものであればどのようなものでも良く、例えば、創傷、火傷、褥瘡などがある。特に、患部が手に位置している場合に好適に用いられ得るが、手に限定されず、例えば、足などの他、背中や腹部など平坦な部分でも用いられ得る。
前記カバー部材の材質は、柔軟性を有し、患部及び患部周辺の体表面を気密状態にできるものであれば、特に限定されない。例えば、ポリ塩化ビニール、天然ゴムラテックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどが用いられ得る。また、患部近傍を視認しやすくするために、透明又は半透明のものが好ましい。
前記カバー部材の形状は、患部が手の場合には手袋状のものが好適に用いられ得るが、これに限定されず、例えば身体の平坦部分にある患部の場合にはシート状のものも用いられ得る。
前記シール手段は、体表面とカバー部材との間を気密状態にできるものであれば、どのようなものでも構わない。例えば、カバー部材の開口部又は端部を外側から巻き付ける医療テープを用いても構わない。もしくは、カバー部材の開口部又は端部の体表面側に粘着層を設けて、この粘着層によりカバー部材を体表面に密着させても構わない。
前記吸引管は空気や体液などを吸引できるものであれば何でも良い。材質は限定されないが、柔軟性を有する材質で構成されていることが好ましく、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコンゴム、ポリ塩化ビニール、ポリエステル、ポリプロピレンなどが用いられ得る。
前記吸引管は、カバー部材の開口部又は端部と体表面との間を通って、カバー部材の外部に導出される。前記吸引管の他、別途、洗浄管や薬液供給管などを追加で設けても良い。この場合、これらの管もカバー部材の開口部又は端部と体表面との間を通って、カバー部材の外部に導出される。
前記患部の近傍とは、前記吸引管の先端から吸引を行うことにより前記患部を陰圧にできる範囲を意味している。
前記両面テープは、前記吸引管を体表面及びカバー部材に固定するためのものである。両面に粘着層を有しているテープであれば、材質は何でも構わず、厚さも限定されないが、一般の医療用片面テープと同等の材質及び厚さであることが好ましい。
前記陰圧閉鎖用具の装着手順は、前記両面テープを体表面に貼付け、前記両面テープに前記吸引管を固定し、前記カバー部材で患部を覆い、前記シール手段で前記カバー部材内を気密状態にする、という順番が好ましいが、この手順に限定されず、例えば、前記吸引管を予めカバー部材に固定してから装着しても構わない。
【0011】
本発明は、吸引管等をカバー部材の開口部又は端部から患部に導入しているため、カバー部材に吸引管等を通す接続部を別途設ける必要がない。また、カバー部材の開口部又は端部において吸引管等の体表面側に両面テープが設けられているため、吸引管等と体表面との接触性を向上させつつ、吸引管等の周辺での空気漏れを防ぐことができ、より高精度な陰圧を実現できる。さらに、吸引管等の体表面側に両面テープが設けられていることから、本発明の陰圧閉鎖用具の装着時に吸引管等を体表面に固定しておくこともでき、装着時間の短縮を実現できる。
【0012】
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記患部の近傍に洗浄液又は薬液を供給する供給管をさらに有し、
前記供給管が、前記吸引管と同様に、前記患部の近傍から前記カバー部材の開口部又は端部を経て前記カバー部材の外部に連通している。
【0013】
前記患部の近傍とは、前記供給管の先端から洗浄液又は薬液を供給することにより前記患部に洗浄液又は薬液を供給できる範囲を意味している。
前記供給管から供給されるのは、洗浄液又は薬液、若しくはその両方である。前記洗浄液は、患部を洗浄可能な液体であれば何でも良く、水などでも良い。
本発明は吸引管のみでも実施可能であるが、さらに供給管を設けることで、患部に洗浄液又は薬液、若しくはその両方を供給することができ、感染創などに適用可能になるとともに、治癒効果を向上させることができる。
【0014】
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記供給管の前記カバー部材の開口部又は端部からの挿入長さが、前記吸引管の挿入長さよりも長い。
【0015】
供給管の挿入長さを吸引管の挿入長さよりも長くすることで、供給管から吸引管への洗浄液や薬液の流れを形成することができ、より広範囲に洗浄液や薬液を供給することが可能になる。
【0016】
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記カバー部材は袋状の部材であり、
前記シール手段は袋状のカバー部材の開口部に設けられている。
【0017】
本発明のカバー部材の形状は特に限定されないが、袋状のもの、特に手袋状のものが好適に用いられ得る。本発明の陰圧閉鎖用具は、長期着用に向いているため、特に手の患部の治療に対して有効である。
前記カバー部材の開口部は、手袋状のカバー部材の場合は手首部分の開口部に相当し、前記両面テープは手首部分に貼付けられる。
【0018】
また、本発明は以下の好ましい実施態様を有する。
前記患部には、患部を保護するための被覆材が設けられている。
【0019】
患部に被覆材を設けることで、患部の保護ができる。被覆材は、浸透性や吸収性を持ち、患部を保護できるものであれば、材質は特に限定されず、ポリウレタン、ハイドロコロイド、不織布、ガーゼなどが用いられ得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記構成により、陰圧閉鎖用具のカバー部材に吸引管等を接続する接続部を設ける必要がないので、装着性を向上させることができる。さらに、吸引管等の体表面側に両面テープが設けられているため、吸引管等の近傍からの空気漏れを防止できるとともに、装着時に吸引管等の位置決めや固定を容易に行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態を表す図。
図2図1のA-A’断面の図。
図3図1のB-B’断面の図。
図4】本発明の第1実施形態の装着手順1の図。
図5】本発明の第1実施形態の装着手順2の図。
図6】本発明の第2実施形態を表す図。
図7】従来技術の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面とともに本発明に係る陰圧閉鎖用具の好適な実施形態の例について説明する。なお、図面は、説明を容易にするために強調して記載してあり、実際の寸法や外観とは異なることがある。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の陰圧閉鎖用具を表す図である。本陰圧閉鎖用具は、患部を含む手を覆う手袋1(カバー部材)と、医療用片面テープを巻き付けることにより手袋1の開口部を気密状態にするシール手段2と、患部を保護する被覆材3と、外部に設けられた吸引手段11に接続され患部周辺を陰圧にする吸引管4と、同じく外部に設けられた洗浄液供給手段12に接続され患部周辺に洗浄液を供給する洗浄管5(供給管)と、吸引管4及び洗浄管5と手首の体表面との間に設けられた両面テープ6から構成される。
【0024】
図2は、図1のA-A’断面の断面図である。体表面13のすぐ上には両面テープ6が配置され、その上には吸引管4及び洗浄管5が配置されている。吸引管4及び洗浄管5の上には、これらの管を包み込むように手袋1が配置され、手袋1の上には医療用片面テープからなるシール手段2が配置される。
【0025】
図3は、図1のB-B’断面の断面図である。図2と同様に、体表面13のすぐ上には両面テープ6が配置され、その上には吸引管4及び洗浄管5が配置されている。吸引管4及び洗浄管5の上には、これらの管を包み込むように医療用片面テープからなるシール手段2が配置される。
【0026】
手袋1は、柔軟性を有し、気密性を保持できる材質からなり、例えば、ポリ塩化ビニール、天然ゴムラテックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど用いられ得る。シール手段2としては市販の医療用片面テープが好適に用いられ得るが、手袋1の開口部を気密状態にできるものであれば何でも良い。患部を保護する被覆材3は、浸透性や吸収性を持ち、患部を保護できるものであれば、何でも良く、例えば、ポリウレタン、ハイドロコロイド、不織布、ガーゼなどが用いられ得る。吸引管4及び洗浄管5は、空気や体液などを吸引でき洗浄液を供給できるものであれば何でも良く、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコンゴム、ポリ塩化ビニール、ポリエステル、ポリプロピレンなどが用いられ得る。両面テープ6は、両面に粘着層を有しているテープであれば何でも良いが、一般の医療用片面テープと同等の材質及び厚さであることが好ましい。
【0027】
吸引管4に接続される吸引手段11は、医療用ポンプなどが用いられる。患部を陰圧にするための吸引は連続的に行っても良いし、必要に応じて間欠的に行っても構わない。洗浄管5に接続される洗浄液供給手段12は洗浄管5に洗浄液を供給するものであるが、患部周辺が陰圧になっているため、洗浄液タンクや洗浄液袋に接続しておくだけでも洗浄液の供給が可能である。また、洗浄管5は、洗浄液の他、薬液等を供給することもできる。
【0028】
吸引管4及び洗浄管5と体表面13との間に両面テープ6を用いることにより、吸引管4及び洗浄管5周辺での空気漏れが低減され、患部の気密度を向上することができる。例えば、図2における吸引管4及び洗浄管5と手袋1と両面テープ6との接触部14において、手袋1及び両面テープ6の柔軟性と両面テープ6の上部粘着層の効果により、手袋1内部を陰圧にすることで手袋1が両面テープ6に引きつけられ接触部14が気密的に塞がる。同様に、図3における吸引管4及び洗浄管5とシール手段2と両面テープ6との接触部15において、シール手段2及び両面テープ6の柔軟性と両面テープ6の上部粘着層の効果により、手袋1内部を陰圧にすることでシール手段2が両面テープ6に引きつけられ接触部15が気密的に塞がる。
【0029】
図4及び図5を用いて本実施形態の陰圧閉鎖用具の装着手順の一例を説明する。図4に示すように、まずは患部に被覆材3を配置する。その後、両面テープ6を手首部に貼付ける。その後、吸引管4及び洗浄管5を両面テープ6に貼付けることで固定する。両面テープ6があることで、吸引管4及び洗浄管5の固定がしやすくなり、患部周辺への位置決めが容易になる。続いて、図5に示すように手袋1を装着する。その後、図1に示すように医療用片面テープからなるシール手段2を手袋1の開口部に巻き付けることで手袋1内を気密状態にする。その後、吸引手段11を駆動して吸引管4を通じて、手袋1内を陰圧にする。手袋1内が陰圧になることで、吸引管4から膿等の体液を排出されると共に、洗浄管5から洗浄液や薬液が供給され、陰圧閉鎖療法により患部の治癒が促進される。
【0030】
<第1実施形態の実施結果>
第1実施形態の実施結果について説明する。吸引管等の固定及び気密性向上に両面テープを用いた本実施形態と、一般の医療用片面テープのみを用いた従来技術(非特許文献1及び2)とを比較した。
【0031】
本陰圧閉鎖用具のセッティングを、10名の試行者で、本実施形態と従来技術とについてそれぞれ15回ずつ行い、セッティング時間を比較した。その結果、平均セッティング時間が、本実施形態では116.0秒、従来技術では146.6秒であり、本実施形態の方が約30秒短いことがわかった。このことから、本発明の構成を採用することで、装着までのセッティング時間が低減し、セッティングをする者の負担を低減できることがわかる。さらに、セッティングを繰り返して習熟度を高めることにより、セッティング時間を短縮できる。
【0032】
さらに、吸引管等の周辺での空気漏れ状態を確認するため、本実施形態と従来技術とで陰圧達成度を比較した。試行者数及び試行回数は、セッティング時間の比較と同じである。測定は高精度微差圧計(P26-50kPa, Halstrup-Walcher社製,ドイツ)を使用した。手袋1(カバー部材)と手の間にセンサーを挿入して吸引を行い、手袋内部の圧と大気圧との差圧を測定した。吸引圧の設定は、陰圧閉鎖療法の基準値として汎用されている-125mmHgとした。陰圧達成度-125mmHgは完全な気密状態を意味する。その結果、陰圧達成度が、本実施形態では平均-122.8mmHg、従来技術では平均-116.6mmHgであり、本実施形態の方が6.2mmHgだけ改善しており、目標値の-125mmHgにより近づいた。このことから、本発明の構成を採用することで、吸引管等の周辺での空気漏れを低減でき、陰圧達成度を向上させることができる。
【0033】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態の陰圧閉鎖用具を表す図である。本陰圧閉鎖用具は、腹部や背中などの平坦部分にある患部に用いられ得るものである。患部を含む体表面を覆うカバー部材21と、カバー部材21の端部の体表面側に設けられた粘着層からなるシール手段22と、患部を保護する被覆材23と、外部に設けられた吸引手段に接続され患部周辺を陰圧にする吸引管24と、同じく外部に設けられた洗浄液供給手段に接続され患部周辺に洗浄液を供給する洗浄管25(供給管)と、吸引管24及び洗浄管25と体表面との間に設けられた両面テープ26から構成される。
【0034】
動作及び装着手順は第1実施形態と同様である。第1実施形態と同様に、吸引管24及び洗浄管25と体表面との間に両面テープ26を用いることにより、吸引管24及び洗浄管25周辺での空気漏れが低減され、患部の気密度を向上することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態のいくつか例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1:手袋(カバー部材)、2:シール手段、3:被覆材、4:吸引管、5:洗浄管(供給管)、6:両面テープ、
11:吸引手段、12:洗浄液供給手段、13:体表面、14,15:接触部、
21:カバー部材、22:シール手段、23:被覆材、24:吸引管、25:洗浄管(供給管)、26:両面テープ、
31:カバー部材、33:被覆材、34:吸引管、37:接続部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7