(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166218
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】井戸底の堆積物吸上げ方法及び吸上げ装置
(51)【国際特許分類】
B08B 9/032 20060101AFI20170710BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20170710BHJP
E21B 43/00 20060101ALI20170710BHJP
E03B 3/15 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
B08B9/032 328
B08B3/02 F
E21B43/00 B
E03B3/15
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-98513(P2014-98513)
(22)【出願日】2014年5月12日
(65)【公開番号】特開2015-213883(P2015-213883A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2016年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】500231207
【氏名又は名称】VEEma株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭徳
【審査官】
梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭55−049494(JP,A)
【文献】
特開平05−311695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/02−9/057
B08B 3/02
E21B 43/00
E03B 3/15
E21C 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
井戸管の底部に溜まった堆積物を吸い上げる方法において、先端を傾斜して切断することで楕円形の開口を有すリフト管を井戸管内に挿入し、そしてリフト管の傾斜して長く延びている背面側に沿って取付けた高水圧管を先端から下方へ延ばし、高水圧管の先端に回転可能に軸支した逆円錐台形のノズル体の外側面及び下面に取付けたノズルから高圧水を噴射して上記堆積物を砕いて攪拌し、リフト管の途中に接続したエアー管にエアーコンプレッサーにて圧縮空気を送ってリフト管へ供給することで、リフト管先端の上記開口から水と共に土砂を吸い込んで地上に吸い上げることを特徴とする井戸管底部の土砂吸上げ方法。
【請求項2】
井戸管の底部に溜まった堆積物を吸い上げる装置において、先端を傾斜して切断することで楕円形の開口を有すリフト管と、該リフト管の傾斜して長く延びている背面側に沿って取付けた高水圧管を有し、該高水圧管はリフト管先端から下方へ延ばし、高水圧管の先端部をリフト管中心軸部に配置すると共に該高水圧管の先端にはノズルを外側面及び下面に取付けて回転可能に軸支した逆円錐台形のノズル体を備えた構造とし、リフト管の途中にはエアー管を接続してエアーコンプレッサーから圧縮空気を送ってリフト管へ供給することで、リフト管先端の開口から水と共に土砂を吸い込んで地上に吸い上げることを特徴とする井戸管底部の土砂吸上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸の底に沈殿する堆積物を吸上げる方法、及びその際に使用する吸上げ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
井戸を設置して長い年月が経過するならば、井戸管の内壁面には劣化した泥錆が固着し、底には泥や土砂が堆積する。井戸管内壁面に固着した泥錆を除去する為には、ノズルから高圧水を噴射しながら回転することで内壁面に当てて、固着した泥錆を洗い落とすことが出来る。
例えば、特開2009−18214号に係る「深井戸管内の洗浄方法及び洗浄装置」は、上部ガイドと下部ガイドの間に回転体を軸支し、回転体の外周には複数の噴射ノズルを取付け、噴射ノズルからは超高圧水が噴射するように超高圧水ホースと連通し、そして噴射ノズルは超高圧水を噴射すると共に噴射に伴って回転体と共に回転し、さらに、下部ガイドの下方には噴射する水によって洗い落とされた泥やその他の汚れを収容する網籠を取付けている。
【0003】
また、回転するブラシにて井戸管内壁面を擦るならば、固着した泥錆を除去することが出来る。
特開平8−209754号に係る「管内洗浄装置」は、上方より井筒管内に装入され、モータを内蔵したモータケースと、モータケースの外周面に拡縮自在に設けられ、井筒管内壁と接触して振れ止めとなるストッパと、モータケースの下端のモータ軸に直結される洗浄器本体とを備え、この洗浄器本体はモータ軸に連結される支持棒と、この支持棒の下端に固着されたスクリュと、スクリュの上部に支持棒を囲続するように設けられたチューブとを有し、このチューブの下部周辺には多数の水抜き孔を、同下部の外周には前記井筒管内壁と可及的近似した外径を有する上下2個のブラシを有している。
【0004】
そして、井戸管底に堆積した泥砂を除去する為には一般に「エアーリフト法」が用いられている。
図4(a)に示すように、泥砂を吸い上げるリフト管の途中にはエアー管を接続し、このリフト管を井戸底まで降下する。そして、
図4(b)に示すように地上からエアーコンプレッサーにて圧縮空気をエアー管から送る。空気がリフト管に入るならば、該リフト管内部の水は比重が小さくなり、井戸管内部の地下水に押されて空気と共に地上に噴出する。
【0005】
この際、井戸管内の地下水はリフト管の先端から該リフト管内へ急速に流入し、リフト管先端付近の土砂や砂利を巻き込んで急速度で地上に噴出することが出来る。土砂の噴出が少なくなったらリフト管を徐々に降下し、所定の深度まで土砂を回収することが出来る。しかし、井戸管底に堆積した泥や土砂が硬く固まってしまうとリフト管先端から吸い込むことが出来なくなる。
【0006】
該エアーリフト工法は、井戸管内部に溜まっている地下水を吸い上げることで、底に堆積している土砂を同時に吸い上げることが出来るが、地下水の水位が降下し過ぎると土砂の吸い上げは出来なくなる。
一方、井戸底に堆積した泥や土砂を取り除く方法に関しても、エアーリフト工法の他に色々な技術が開発されている。
【0007】
特開2004−353296号に係る「井戸修繕方法及び井戸修繕装置」は、有底筒状の回収ケースを井戸内に吊り下げ、回収ケースよりも下方に有する水噴射ノズルから下方と斜め上方に水噴射し、下方の噴射流で埋没土砂を飛散させ、斜め上方の噴射流で回収ケースの外側から上方に土砂を導いて回収ケース上側の口部から内部に土砂を水ごと取り込み、回収ケースの外面と底面の少なくとも一部に備わる透水フィルターによって外部に水を排出しつつ内部に土砂を溜める井戸修繕方法である。
【特許文献1】特開2009−18214号に係る「深井戸管内の洗浄方法及び洗浄装置」
【特許文献2】特開平8−209754号に係る「管内洗浄装置」
【特許文献3】特開2004−353296号に係る「井戸修繕方法及び井戸修繕装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来のエアーリフト工法には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、井戸管の底に硬く固まった堆積物であっても吸い上げることが出来、また井戸管内に溜まっている地下水が少なくても全ての堆積物を吸い上げることが出来る井戸底の堆積物の吸上げ方法及び吸上げ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る井戸底に沈殿する堆積物の吸上げ方法は、従来のエアーリフト工法を改良した技術である。その為にエアーリフト工法を構成する要件は全て備え、これに本発明の特徴が加わって構成している。そこで、リフト管の先端は一般に傾斜し、途中にはエアー管が接続し、地上のエアーコンプレッサーからエアー管へ供給される圧縮空気はリフト管へ流れるようになる。
【0010】
そして、リフト管の側面には高圧水管が取付けられ、高圧水管はリフト管の先端からさらに下方へ延びると共に湾曲して中心軸とほぼ同心を成すように配置している。高圧水管の先端にはノズル体が取付けられ、高圧水がノズル体のノズルから噴射することで該ノズル体は回転することが出来る。ノズル体には複数のノズルが取付けられ、各ノズルから高圧水を噴射することで井戸管底に堆積している土砂を攪拌し、リフト管の先端開口から吸い込むことが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る井戸底に堆積する堆積物の吸上げ方法は、従来のエアーリフト工法のように、リフト管の先端開口から井戸管底に堆積した堆積物を井戸水と共に吸上げることが出来るが、堆積物を吸上げ易くする為に本発明はリフト管の先端から下方へ高圧水管を延ばしている。そして、この高圧水管の先端に取付けたノズルから高圧水を噴射することで、硬く固まった堆積物を崩して攪拌し、この状態でリフト管先端の開口から水と共に泥や土砂を吸い込むことが出来る。
【0012】
そして、井戸底部にはノズルから水が噴射する為に水が無くなることはなく、この水と共に底に堆積している土砂は残ることなくリフト管にて吸上げることが出来る。ここで、高水圧管はリフト管の背面側(傾斜して延びている側)から中心軸と同心を成すように取付けられ、その為に、傾斜したリフト管の開口からは土砂が水と共に吸い込まれ易く成っている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る土砂吸上げ装置を示す実施例で、(a)は正面図、(b)は側面図。
【
図2】土砂吸上げ装置を井戸管の底部へ降ろして土砂を吸い上げる方法を示す正面図。
【
図3】土砂吸上げ装置を井戸管の底部へ降ろして土砂を吸い上げる方法を示す側面図。
【
図4】エアーリフト工法で、(a)はリフト管を井戸管の底部へ降ろした場合、(b)はリフト管を用いて土砂を吸い上げる方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る土砂の吸上げ装置を示す実施例であり、同図の1はリフト管、2は高水圧管、3はノズル体をそれぞれ表している。リフト管1の先端は中心軸に対して傾斜して切断され、その為に円形断面のリフト管1の開口は楕円形と成っている。楕円形の開口4は円形のリフト管断面より大きくなり、該開口4から水と共に堆積物である泥や土砂を吸上げることが出来る。
【0015】
高圧水管2はリフト管1の背面側5に取付けられ、そして傾斜した開口4の先から湾曲して延び、高水圧管2の先端部はリフト管1の中心軸と同心を成して配置される。高水圧管2の先端に取付けたノズル体3は回転出来るように軸支され、そして、ノズル体3は逆円錐台形を形成し、その外側面6には複数のノズル7,7・・・が取付けられ、下面9にもノズル8が取付けられている。
【0016】
高水圧管2を流れる水は上記ノズル7,7・・・、及びノズル8から噴射し、外側面6に取付けたノズル7,7・・・から噴射する水の反力にてノズル体3は回転するように成っている。その為に、ノズル7,7・・・から噴射する水はノズル体3の半径方向に対して円周方向へ傾斜している。従って、これら各ノズル7,7・・・、8から水はノズル体3の周囲に噴射し、井戸の底部に堆積した土砂に当たることになる。
【0017】
図2、
図3はリフト管1を井戸に挿入して降下し、底部に堆積している土砂を吸い込む場合を示し、
図2は正面図、
図3は側面図をそれぞれ表わしている。同図の10は井戸管で、この井戸管10の底には土砂11が堆積している。勿論、井戸管10の内壁面12はサビ付き、このサビに泥が付いて固着するが、本発明に係る土砂吸上げ装置はこの内壁面12の洗浄を対象とする装置ではない。
【0018】
リフト管1は鋼管13に接続されて井戸管10の底部に降下し、底部に堆積している泥や土砂11をリフト管1の先端開口4から吸い込むことが出来る。該リフト管1の途中にはエアー管14が接続し、エアーコンプレッサーからエアー管14を流れる空気はリフト管1に入ることで、リフト管内部の水の比重は小さくなって、井戸管内部の地下水に押されて空気と共に地上に噴出する。
【0019】
そこで、井戸管内の地下水はリフト管の先端開口から該リフト管内へ急速に流入するが、リフト管先端付近の土砂や砂利を巻き込むことが出来るように、硬くなって堆積した土砂11はノズル7,7・・・、及びノズル8から噴射する水によって崩されて攪拌される。同図に示すように、堆積した土砂11の中央部にはノズル体3が降下することで凹部15が作られ、該ノズル体3の周囲の土砂11はリフト管1の開口4に吸い込まれる。
【0020】
ところで、上記高水圧管2はリフト管1の背面側5の所々に溶接又は止め金具にて固定され、そして、地上から延びる高圧ホース16と接続具17を介して繋がれている。ノズル体3はノズル7,7・・・、及びノズル8から高圧水を噴射しながら回転し、周囲の堆積物を細かく砕き、地下水と共に土砂11はリフト管1にて吸い込まれて地上に吐き出すことが出来る。
ところで、上記ノズル7,7・・・から高圧水が噴射することで、井戸管10の内壁面に付着している泥錆を除去することが出来る。
【符号の説明】
【0021】
1 リフト管
2 高水圧管
3 ノズル体
4 開口
5 背面側
6 外側面
7 ノズル
8 ノズル
9 下面
10 井戸管
11 土砂
12 内壁面
13 鋼管
14 エアー管
15 凹部
16 高圧ホース
17 接続具