(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、カメラにより撮像された画像に基づき自車両前方の歩行者を検出する場合、顔の画像情報も含めたパターン認識により歩行者を検出することになるため、特許文献1のように、顔に前照灯からの光が照射されないと、歩行者の検出ができない場合がある。その結果、このように歩行者が検出されないと、歩行者の顔が前照灯により照射され、歩行者の顔が照射されると、歩行者が検出されて、歩行者の顔が照射されなくなるという状態が繰り返され、適切に歩行者に対する防眩を行うことが不可能となるおそれがある。即ち、カメラにより撮像された画像に基づく歩行者の検出と検出された歩行者に対する防眩とを両立できないおそれがある。
【0006】
一方、特許文献2のように、近赤外線の照射や可視光のパルス照射により、夜間において、歩行者に眩しさを感じさせることなく、車両前方の歩行者を検出することができるが、近赤外線や非常に短時間のパルス光を受光して撮像可能なカメラを用いる必要がある。即ち、カメラの基本性能を変更しなければ、カメラにより撮像された画像に基づく歩行者の検出と検出された歩行者に対する防眩とを両立することができない。
【0007】
そこで、上記問題に鑑み、カメラにより撮像された画像に基づき自車両前方の歩行者を検出し、検出された歩行者に対する防眩を行う際に、カメラの基本性能を変更することなく、歩行者の検出と歩行者に対する防眩とを両立して行うことが可能な車両用前照灯制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するため、一実施形態において、車両用前照灯制御装置は、
車両前方を照射する前照灯と、
前記車両前方を撮像するカメラと、
予め登録されたパターン画像に基づくパターン認識により、前記カメラで撮像された画像から前記車両前方の歩行者を検出する歩行者検出部と、
前記前照灯を制御する制御部であって、前記歩行者の目の位置に所定の形状の照射されない部分、又は、減光されて照射される部分が形成されるように、前記前照灯に前記歩行者を照射させる制御部と、を備え、
前記所定の形状で目を隠した歩行者の画像が前記パターン画像として予め登録されていることを特徴とする。
【0009】
また、他の実施形態において、車両用前照灯制御装置は、
車両前方を照射する前照灯と、
前記車両前方を撮像するカメラと、
前記カメラにより撮像された画像に基づき、前記車両前方の歩行者を検出する歩行者検出部と、
前記前照灯を制御する制御部であって、前記歩行者の目の位置にサングラス形状の照射されない部分、又は、減光されて照射される部分が形成されるように、前記前照灯に前記歩行者を照射させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、更に他の実施形態において、車両用前照灯制御装置は、
車両前方を照射する前照灯と、
前記車両前方を撮像するカメラと、
前記カメラにより撮像された画像に基づき、前記車両前方の歩行者を検出する歩行者検出部と、
前記前照灯を制御する制御部であって、前記歩行者の目の部分のうち、瞳孔を含む虹彩部分に照射されない部分、又は、減光されて照射される部分が形成されるように、前記前照灯に前記歩行者を照射させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記実施形態により、カメラにより撮像された画像に基づき自車両前方の歩行者を検出し、検出された歩行者に対する防眩を行う際に、カメラの基本性能を変更することなく、歩行者の検出と歩行者に対する防眩とを両立して行うことが可能な車両用前照灯制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る車両用前照灯制御装置1の構成の一例を示す構成図である。
【0015】
車両用前照灯制御装置1は、車両に搭載され、カメラ10、距離センサ20、ECU30、前照灯40、照明モード切替スイッチ50、照度センサ60、ヨーレートセンサ70、車速センサ80、舵角センサ90等を含む。
【0016】
カメラ10は、車両前方を撮像する撮像手段であり、画像処理部11を含む。カメラ10は、車両前方を撮像可能な任意の場所に車載されてよく、例えば、防塵、防水の観点からフロントウィンドウ上部の車室内に配置されてよい。なお、カメラ10は、その動作が停止されていない限り、例えば、1秒間に30フレームの画像を連続して撮像し、画像を撮像する度に当該画像を画像処理部11に送信する。
【0017】
画像処理部11は、カメラ10により撮像された車両前方の画像に基づいて、車両前方の歩行者を検出する処理を行う。具体的には、予め登録された複数の歩行者の画像パターンに基づくパターン認識により歩行者を検出する。また、画像処理部11は、カメラ10により撮像された車両前方の画像に基づいて、検出された歩行者の位置(車両からの距離、方位等)を算出すると共に、検出された歩行者の顔、及び、目の位置を特定する。また、画像処理部11は、特定された歩行者の顔、目の位置に基づいて、歩行者の顔の向きを特定する。例えば、目が2つ検出された場合、歩行者の顔は、車両に対面していると特定し、目が1つ検出された場合、歩行者の顔は、車両に対して横向きであると特定し、目が検出されなかった場合、歩行者の顔は、車両の進行方向に向いていると特定してよい。また、歩行者の検出と同様、既知のパターン認識技術を用いて、より詳細な顔の向きを特定(例えば、角度方向で45度毎や22.5度毎に顔向きを分類して特定)してもよい。画像処理部11は、ECU30と車載LAN等を介して通信可能に接続され、歩行者の位置情報、歩行者の顔、目の位置情報、歩行者の顔の向きの情報等、検出された歩行者に関する情報(歩行者情報)をECU30に出力する。
【0018】
なお、画像処理部11から出力される歩行者の位置情報は、後述する距離センサ20から入力される位置情報に基づいて補正されたものであってよい。即ち、画像処理部11から出力される歩行者の位置情報は、カメラ10により撮像された画像に基づく位置情報と距離センサ20による位置情報とを、それぞれの精度等を考慮して融合(フュージョン)した位置情報であってよい。
【0019】
また、画像処理部11の機能の一部、又は、全部は、カメラ10の外部の処理装置により実現されてもよく、例えば、ECU30により実現されてもよい。この場合、後述する距離センサ20から出力される歩行者の位置情報は、ECU30に入力される。
【0020】
距離センサ20は、車両から車両前方の歩行者までの距離を検出する距離検出手段である。距離センサ20は、例えば、超音波センサ、レーザーレーダ、ミリ波レーダ等、検出波を車両前方に送信し、その反射波を受信することにより歩行者との距離を検出する手段であってよい。なお、当該手段では、反射波の強度、パターン等により反射波が歩行者から反射されたものであるか否かを判定することができる。距離センサ20は、画像処理部11と車載LAN等を介して通信可能に接続され、検出した車両から歩行者までの距離を含む歩行者の位置情報を画像処理部11(カメラ10)に出力する。
【0021】
なお、距離センサ20が車両から見た歩行者の方位を検出可能な場合、距離センサ20から出力される歩行者の位置情報には、検出された車両から歩行者までの距離に加えて、車両から見た歩行者の方位に関する情報が含まれてよい。
【0022】
ECU30は、前照灯40を制御する制御手段であり、例えば、マイクロコンピュータ等により構成され、ROMに格納された各種プログラムをCPU上で実行することで各種制御処理を実行してよい。後述するとおり、前照灯40は、照射範囲内において、照射(放射)方向毎に光量を異ならせることが可能な照明手段である。そのため、ECU30は、前照灯40の照射方向毎の光量の制御を行うことで、後述する前照灯40により照射された歩行者に眩しさを感じさせないための制御処理(防眩制御)を実行する。防眩制御処理の詳細については、後述する。
【0023】
前照灯40は、車両前方を照射する照明手段であり、車両前部の右側に配置されるヘッドライト40Rと車両前部の左側に配置されるヘッドライト40Lとを含む。各ヘッドライト40R、40Lは、いわゆるハイビームとして用いられるものであってもよいし、ロービームとして用いられるものであってもよく、後述するように、車両前方の歩行者の全身を照射可能であればよい。以下、ヘッドライト40R、40Lの区別を必要とする場合を除き、前照灯40としてまとめて説明を行う。
【0024】
また、前照灯40(ヘッドライト40R、40L)は、車両前方の任意の投影面に描画可能な照明手段であり、照射範囲内において、照射方向毎に光量を異ならせることが可能に構成される。即ち、前照灯40は、照射範囲内において、光軸に垂直な仮想平面上の各小領域における明るさ(照度)に陰影をつけることができる。ここで、前照灯40の構成例について簡単に説明をする。
【0025】
前照灯40は、一例として、微小ミラー素子を用いたプロジェクタ型(ミラー素子プロジェクタ型)の照明手段として構成されてよい。具体的には、光源としてのランプ、ランプからの光の反射方向を制御する多数の微小ミラー素子を配列したミラーデバイス、及び、ミラーデバイスからの光を結像するレンズとを備える。そして、ミラーデバイス内の各微小ミラーは電気入力に応じて機械的に傾斜角度を変化させることができる。よって、各微小ミラーに入射する光は、選択的に変更可能な各微小ミラーの傾斜角度に応じて、反射方向が選択的に変調(遮蔽、減光等)が行われる。
【0026】
本例の場合、前照灯40は、微小ミラーを駆動する駆動装置を備える。そして、ECU30は、当該駆動装置を介して、ミラーデバイス内の各微小ミラー素子の傾斜角度を制御することができる。具体的には、ECU30が、制御指令として車両前方に投影する画像(照射画像)を駆動装置に送信し、当該照射画像が車両前方に投影されるように、駆動装置が各微小ミラー素子を駆動させてよい。
【0027】
また、前照灯40は、他の例として、液晶プロジェクタ型の照明手段として構成されてよい。具体的には、光源としてのランプ、ランプからの光の透過を制御する多数の液晶素子を配列した液晶パネル、及び、液晶パネルを透過した光を結像するレンズとを備える。そして、液晶パネル内の各液晶素子に印加する電圧を変化させることにより、光源から入射する光の反射・透過状態を変化させることが可能である。よって、液晶素子毎に印加電圧を異ならせれば、光源からの光を減光して照射したり、遮蔽したりすることができる。
【0028】
本例の場合、前照灯40は、液晶パネルを駆動する(液晶パネル内の各液晶素子に印加する電圧を制御する)駆動装置を備える。そして、ECU30は、当該駆動装置を介して、液晶パネル内の各液晶素子に印加される電圧を変化させることができる。具体的には、ECU30が、制御指令として車両前方に投影する画像(照射画像)を駆動装置に送信し、当該照射画像が車両前方に投影されるように、駆動装置が各液晶素子の印加電圧を変化させてよい。
【0029】
また、前照灯40は、更に他の例として、LEDマトリクス型の照明手段により構成されてよい。具体的には、LEDチップが多数配列されたLEDアレイとLEDアレイからの光を結像する多数のレンズとを備える。そして、各LEDチップに対する電流量や電流供給時間を変化させることにより、各LEDチップの光量を異ならせることができる。
【0030】
本例の場合、前照灯40は、LEDアレイを駆動する駆動回路を備える。そして、ECU30は、当該駆動回路を介して、LEDアレイ内の各LEDチップを制御することができる。具体的には、ECU30が、制御指令としてLEDアレイ内の各LEDチップ毎の光量を表す照射画像を駆動装置に送信し、各LEDチップの光量が照射画像通りとなるように、駆動装置が各LEDチップに対する電流量、電流供給時間を変化させてよい。
【0031】
前照灯40は、上述した例の何れの構成であってもよく、何れの構成であっても、照射範囲内において、照射方向毎に光量を異ならせることができる。また、前照灯40の構成は、上述した例には限られず、照射範囲内において、照射方向毎に光量を異ならせることができれば、任意の構成が適用されてよい。
【0032】
照明モード切替スイッチ50は、照明モードを切り替えるスイッチである。なお、照明モードとしては、車両前方の歩行者に対する防眩を行いながら、歩行者の全身に光を当てるように前照灯40を制御する防眩照明モードと、前照灯40のハイビーム、ロービーム等の切替が手動で行われ、歩行者に対する防眩も行わない通常照明モードを有する。照明モード切替スイッチ50からの信号(切替信号)は、直接、又は、切替信号が直接入力される他のECU等を経由して、ECU30に入力される。
【0033】
なお、本実施形態に係る車両用前照灯制御装置1は、防眩照明モードにおいて、歩行者の全身に光を照射することで、運転者による夜間の歩行者の視認性を向上させると共に、上記防眩制御により、歩行者に眩しさを感じさせないようにする。
【0034】
照度センサ60は、車両周辺の暗さ(照度)を検出する既知の検出手段である。具体的には、車室外から入射する光による照度を検出することで、車両周辺の照度を(代替して)検出することができるので、例えば、車室内のインストルメントパネル上部のフロントウインドウから入射した光が当たる場所に配置されてよい。照度センサ60からの検出された照度に対応する信号(照度信号)は、直接、又は、照度信号が直接入力される他のECU等を経由して、ECU30に入力される。
【0035】
ヨーレートセンサ70は、車両のヨー方向(車両重心における上下方向の軸を中心とした回転方向)の回転角速度を検出する既知の検出手段である。ヨーレートセンサ70からの検出されたヨーレートに対応する信号(ヨーレート信号)は、直接、又は、ヨーレート信号が直接入力される他のECU等を経由して、ECU30に入力される。
【0036】
車速センサ80は、車両の速度(車速)を検出する既知の検出手段である。車速センサ80からの車速に対応する信号(車速信号)は、直接、又は、車速信号が直接入力される他のECU等を経由して、ECU30に入力される。
【0037】
舵角センサ90は、運転者によるハンドルの操舵角を検出する既知の検出手段である。舵角センサ90からの検出された操舵角に対応する信号(操舵角信号)は、直接、又は、操舵角信号が直接入力される他のECU等を経由して、ECU30に入力される。
【0038】
次に、本実施形態に係る車両用前照灯制御装置1による防眩制御の概要について説明をする。
【0039】
図2は、本実施形態に係る車両用前照灯制御装置1による歩行者に対する防眩手法の一例を説明する図である。具体的には、前照灯40により歩行者100の全身が照射された状態を表している。
【0040】
図2を参照するに、車両用前照灯制御装置1は、前照灯40から照射可能な全方向の光110のうち、所定の照射方向(範囲)の光120の光量を減らす。そして、歩行者100(の目)の位置における前照灯40の光軸に垂直な仮想平面130上において、歩行者100の目の位置にサングラス形状の影(照射されない部分、又は、減光されて照射される部分)140を形成する。即ち、前照灯40は、歩行者の目の位置にサングラス形状の影が形成されるように、歩行者の顔を含めて全身を照射する。よって、歩行者の目には、前照灯40からの光が照射されないので、歩行者に眩しさを感じさせることを防止することができる。
【0041】
また、カメラ10により撮像された画像から、予め登録された複数の歩行者の画像パターンに基づくパターン認識により歩行者を検出する場合、通常、登録された複数の画像パターン内にサングラスをかけた歩行者の画像パターンが含まれる。そのため、歩行者の目の位置にサングラス形状の影(照射されない部分、又は、減光されて照射される部分)140が形成されても歩行者100を検出することができる。即ち、カメラ10を赤外線やパルス光等を撮像可能な特殊なカメラに変更することなく、カメラ10により撮像された画像に基づく歩行者の検出と歩行者に対する防眩とを両立して行うことができる。
【0042】
なお、歩行者がヘッドライト40R、40Lの双方から照射可能な照射範囲に位置する場合は、各ヘッドライト40R、40Lが所定の照射方向の光120の光量を減らす。これにより、歩行者100の目の位置に、上述したサングラス形状の影(照射されない部分、又は、減光されて照射される部分)140を形成することができる。
【0043】
次に、本実施形態に係る車両用前照灯制御装置1による防眩制御の具体的な処理動作について説明をする。
【0044】
図3は、本実施形態に係る車両用前照灯制御装置1による処理動作の一例を示すフローチャートである。具体的には、
図3(a)が、カメラ10内の画像処理部11による歩行者検出処理の一例を示すフローチャートであり、
図3(b)が、ECU30による防眩制御処理の一例を示すフローチャートである。
図3(a)に示すフローチャートは、カメラ10により撮像された画像が入力される毎(例えば、カメラ10が1秒間に30フレームの画像を撮像する場合、1/30秒毎)に実行される。また、
図3(b)に示すフローチャートは、
図3(a)に示すフローチャートによって、車両前方の歩行者が検出される毎(画像処理部11から歩行者情報が入力される毎)に実行される。
【0045】
なお、
図3(b)に示すフローチャートでは、前照灯40が点灯されている(前照灯40を点灯させるスイッチがONにされている)ことを前提にする。
【0046】
まず、
図3(a)を参照するに、ステップS101では、カメラ10により撮像された車両前方の画像に基づき、歩行者検出処理が実行される。上述したとおり、予め登録された複数の歩行者の画像パターンに基づくパターン認識により、カメラ10により撮像された車両前方の画像から歩行者の検出を行う。
【0047】
なお、上述したとおり、ECU30は、歩行者を検出した場合、更に、カメラ10により撮像された車両前方の画像に基づいて、検出された歩行者の位置(車両からの距離、方位等)を算出すると共に、検出された歩行者の顔、及び、目の位置を特定する。また、画像処理部11は、特定された歩行者の顔、目の位置等に基づいて、歩行者の顔の向きを特定する。
【0048】
ステップS102では、歩行者が検出されたか否かを判定する。歩行者が検出された場合、ステップS103に進み、歩行者が検出されなかった場合、今回の処理を終了する。
【0049】
ステップS103では、歩行者情報(歩行者の位置情報、歩行者の顔、目の位置情報、歩行者の顔の向きの情報等)をECU30に送信して、今回の処理を終了する。
【0050】
続いて、
図3(b)を参照するに、ステップS201では、防眩制御の作動条件が成立しているか否かが判定される。作動条件が成立する場合、ステップS202に進み、作動条件が成立しない場合、今回の処理を終了する。
【0051】
なお、作動条件には、照明モードが防眩照明モードであるか否かが含まれてよく、ECU30は、照明モード切替スイッチ50からの出力(信号)に基づいて、作動条件成立の有無を判定してよい。また、作動条件には、車両周辺の照度が所定値以下であるか否か(即ち、車両周辺が所定以上に暗くなっているか否か)が含まれてよく、照度センサ60からの照度信号に基づいて、作動条件成立の有無が判定されてよい。車両周辺が明るい場合、運転車の視認性を向上させるために、前照灯40により歩行者の顔を含む全身を照射する必要がないからである。
【0052】
ステップS202では、カメラ10内の画像処理部11から入力された歩行者情報に基づいて、照射画像を生成する。例えば、歩行者の位置情報、目の位置情報から上述したサングラス形状の位置、大きさを決定し、歩行者の顔の向きの情報からサングラス形状の向きを決定して、前照灯40内の駆動装置への制御指令である照射画像を生成する。
【0053】
なお、実際にカメラ10により車両前方の画像が撮像されてからECU30による制御により前照灯40が歩行者を照射するまでの経過時間で、車両が移動し、歩行者との相対関係が変化する。そのため、ステップS202では、ヨーレートセンサ70からのヨーレート信号、車速センサからの車速信号、及び、舵角センサ90からの操舵角信号に基づき、経過時間での車両の移動を加味して照射画像(サングラス形状の位置、大きさ、向き等)の補正を行ってよい。
【0054】
ステップS203では、照射画像を前照灯40内の駆動装置に送信し、今回の処理を終了する。即ち、駆動装置を介して、前照灯40を制御し、照射画像に基づいて、歩行者の目の位置に上述したサングラス形状の影(照射されない部分、又は、減光されて照射される部分)が形成されるように、歩行者を照射させる。
【0055】
なお、
図3(b)のフローチャートによる処理は、画像処理部11がカメラ10による画像に基づき歩行者を検出し、送信した歩行者情報をECU30が受信する毎に実行される。即ち、画像処理部11により歩行者が継続して検出されている場合、
図3(b)に示すフローチャートは、カメラ10の撮像周期毎にしか行われない。そのため、ECU30は、
図3(b)のフローチャートによる処理が終了し、
図3(b)のフローチャートによる次回の処理が行われるまでの間、車両の移動を考慮して、所定時間毎に照射画像の補正を行い、前照灯40内の駆動装置に出力する。具体的には、ヨーレートセンサ70からのヨーレート信号、車速センサからの車速信号、及び、舵角センサ90からの操舵角信号に基づき、照射画像(サングラス形状の位置、大きさ、向き等)の補正を行うとよい。また、この際、ECU30内の内部メモリ等にバッファリングされた歩行者情報の履歴等に基づいて、歩行者の移動を予測し、歩行者の移動も考慮して当該補正を行ってもよい。これにより、歩行者の顔に形成される影(照射されない部分、又は、減光されて照射される部分)が目の位置からずれることを防止することができ、歩行者が検出されている間、歩行者の目の位置にサングラス形状の影を形成し続けることができる。
【0056】
このように、本実施形態に係る車両用前照灯制御装置1は、前照灯40を制御して、歩行者の目の位置にサングラス形状の照射されない部分、又は、減光されて照射される部分が形成されるように、歩行者を照射させる。これにより、歩行者の目の位置には、光が照射されないか、照射されても減光されているので、歩行者が眩しさを感じることを防止することができる。
【0057】
また、カメラ10により撮像された画像から、予め登録された複数の歩行者の画像パターンに基づくパターン認識により歩行者を検出する場合、通常、登録された複数の画像パターン内にサングラスをかけた歩行者の画像パターンが含まれる。そのため、歩行者の目の位置にサングラス形状の照射されない部分、又は、減光されて照射される部分が形成されても歩行者を検出することができる。
【0058】
即ち、本実施形態に係る車両用前照灯制御装置1により、カメラ10の基本性能を変更することなく、カメラ10で撮像された画像に基づく歩行者の検出と前照灯40により歩行者を照射する際の歩行者に対する防眩とを両立して行うことができる。
【0059】
なお、本実施形態では、歩行者の目の位置にサングラス形状の影(照射されない部分、又は、減光されて照射される部分)を形成したが、歩行者のいわゆる黒目部分(目の瞳孔を含む虹彩部分)と照射されない部分、又は、減光されて照射される部分を略一致させてもよい。即ち、歩行者の目の瞳孔を含む虹彩部分に照射されない部分、又は、減光されて照射される部分が形成されても、もともと暗い色(黒、茶等)である歩行者も多いので、パターン認識による歩行者の検出に影響がない。そのため、カメラ10の基本性能を変更することなく、カメラ10で撮像された画像に基づく歩行者の検出と前照灯40により歩行者を照射する際の歩行者に対する防眩とを両立して行うことができる。この場合、画像処理部11は、カメラ10により撮像された画像に基づいて、黒目部分(目の瞳孔を含む虹彩部分)の位置を特定し、黒目部分の位置情報を歩行者情報の一部として、ECU30に出力する。
【0060】
また、画像処理部11による歩行者検出を行う場合のパターン画像の中に、サングラス形状以外の所定の形状で目の位置を隠す歩行者の画像が予め登録されていれば、当該所定の形状の影が歩行者の目の位置に形成されるように、歩行者を照射してもよい。この場合も、同様に、カメラ10の基本性能を変更することなく、カメラ10で撮像された画像に基づく歩行者の検出と前照灯40により歩行者を照射する際の歩行者に対する防眩とを両立して行うことができる。
【0061】
また、顔の輪郭、鼻、口等、歩行者の目以外の特徴に基づく、歩行者検出が可能な態様であれば、上記パターン画像の中に登録のない形状で目の位置に影(照射されない部分、又は、減光されて照射される部分)が形成されるように、歩行者を照射してもよい。
【0062】
ここで、
図4は、本実施形態に係る車両用前照灯制御装置1による歩行者に対する防眩手法の他の例を説明する図である。具体的には、カメラ10により撮像された画像に基づく歩行者検出を阻害しないように、歩行者の目の位置を含む顔に形成される影(照射されない部分、又は、減光されて照射される部分)の例を示す。
図4(a)は、(カメラ10から見た)歩行者の顔の輪郭部分を除く顔全体に影(照射されない部分、又は、減光されて照射される部分)が形成される例を示す。
図4(b)は、歩行者の口、鼻は照射されるように、目の位置に任意の形状(図中では方形)の影(照射されない部分、又は、減光されて照射される部分)が形成される例を示す。
【0063】
なお、
図4(a)、(b)では、歩行者の顔が当該車両に対して正対している場合と当該車両に対して横向き(右向き)の場合のそれぞれに対する影(照射されない部分、又は、減光されて照射される部分)が示されている。
【0064】
図4(a)に示す例では、目を含む顔全体に影(照射されない部分、又は、減光されて照射される部分)が形成されるが、顔の輪郭部分が照射されているため、カメラ10により撮像された画像に基づき画像処理部11は、歩行者を検出できる可能性が高い。
【0065】
また、
図4(b)に示す例では、目の位置に任意の形状で影(照射されない部分、又は、減光されて照射される部分)が形成されるが、口、鼻は照射されているため。、カメラ10により撮像された画像に基づき画像処理部11は、歩行者を検出できる可能性が高い。
【0066】
即ち、歩行者の目の位置に照射されない部分、又は、減光されて照射される部分が形成され、かつ、歩行者の鼻、口、耳、(カメラ10から見た)顔の輪郭等、歩行者の顔(頭)の特徴要素のうち、少なくとも一つが照射されるように、歩行者を照射する。これにより、目以外の顔(頭)の特徴に基づく、歩行者検出が可能となり、カメラ10の基本性能を変更することなく、カメラ10で撮像された画像に基づく歩行者の検出と前照灯40により歩行者を照射する際の歩行者に対する防眩とを両立して行うことができる。
【0067】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。