(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検査対象(O)内の限定された回転対称の励起プロファイル(EP)を励起するために、少なくとも2つの空間方向(x−y)において選択的に作用するパルス配列(PA,PA’,PA”)を有する磁気共鳴制御シーケンス(AS)の決定方法であって、
前記パルス配列(PA,PA’,PA”)のRF励起パルス(RFE,RFE’,RFE”)が一連の複数のRF部分パルス(RF1,RF2,RF3,…,RFn,…,RF8)を含み、それらの一連のRF部分パルス(RF1,RF2,RF3,…,RFn,…,RF8)に並列に両空間方向(x−y)の傾斜磁場パルス(GPx,GPy,GPx’,GPy’,GPx”,GPy”)は、異なるRF部分パルス(RF1,RF2,RF3,…,RFn,…,RF8)へのRFエネルギー導入が送信k空間(Sk)においてそれぞれ互いに同心の円形のk空間送信軌道(TR1,TR2,TR3,…,TR8)上で行われるように調整されて印加され、
前記RF部分パルス(RF1,RF2,RF3,…,RFn,…,RF8)のRF包絡線の振幅(b1)は、1つの円形のk空間軌道(TR1,TR2,TR3,…,TR8)の通過時間(T,T1,T2,T3,…,Tn,…,T8)の期間中に一定である、磁気共鳴制御シーケンスの決定方法。
先ず請求項1乃至10の1つに記載の方法において磁気共鳴制御シーケンス(AS)を決定し、次にこの磁気共鳴制御シーケンス(AS)を利用して磁気共鳴システム(1)を動作させる、磁気共鳴システム(1)の動作方法。
請求項11記載の方法を用いて傾斜磁場遅れ時間を複数回変更して磁気共鳴システム(1)を動作させて磁気共鳴画像データ(BD)が作成され、これらの磁気共鳴画像データ(BD)の解析に基づいて傾斜磁場遅れ時間に関して磁気共鳴システム(1)の調整および/または較正が行われる、磁気共鳴システム(1)の調整および/または較正方法。
検査対象(O)内において限定されて励起される回転対称の励起プロファイル(EP)の空間的な広がりを規定する励起プロファイルデータ(d)を取得する入力インターフェース装置(23)と、
前記励起プロファイル(EP)を励起するために、少なくとも2つの空間方向(x,y)に選択的に作用する少なくとも1つのパルス配列(PA,PA’,PA”)を決定するパルス配列決定ユニット(26)とを備え、磁気共鳴制御シーケンス(AS)を決定するための制御シーケンス決定装置(22)であって、
前記パルス配列(PA,PA’,PA”)のRF励起パルス(RFE,RFE’,RFE”)は、該RF励起パルス(RFE,RFE’,RFE”)が一連の複数のRF部分パルス(RF1,RF2,RF3,…,RFn,…,RF8)を含み、かつ、それらの一連のRF部分パルス(RF1,RF2,RF3,…,RFn,…,RF8)に並列に両空間方向(x,y)の傾斜磁場パルス(GPx,GPy,GPx’,GPy’,GPx”,GPy”)が、異なるRF部分パルス(RF1,RF2,RF3,…,RFn,…,RF8)へのRFエネルギー導入が送信k空間(Sk)においてそれぞれ互いに同心の円形のk空間送信軌道(TR1,TR2,TR3,…,TR8)上で行われるように調整されて印加されるように決定され、
前記RF部分パルス(RF1,RF2,RF3,…,RFn,…,RF8)の包絡線の振幅(b1)は、それぞれ1つの円形のk空間軌道(TR1,TR2,TR3,…,TR8)の通過時間(T,T1,T2,T3,…,Tn,…,T8)の期間中に一定である、制御シーケンス決定装置。
高周波送信装置(5,12)と、傾斜磁場システム(4)と、予め与えられた磁気共鳴制御シーケンス(AS)に基づいて所望の測定を実施するべく高周波パルスシーケンス(RFS)を送出すると共にそれに連系して傾斜磁場システムを介して傾斜磁場パルスシーケンス(GS)を送出するように構成されている制御装置(15)と、磁気共鳴制御シーケンス(AS)を決定してその磁気共鳴制御シーケンスを制御装置(10)に伝送するために請求項13記載の制御シーケンス決定装置(22)とを有する、磁気共鳴システム(1)。
プログラムが制御シーケンス決定装置(22)において実行される際に請求項1乃至11の1つに記載の方法の全てのステップを実行するためのプログラムコード部分を備え、制御シーケンス決定装置(22)の記憶装置に直接にロード可能であるコンピュータプログラム。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴装置とも呼ばれる磁気共鳴トモグラフィ装置においては、一般に被検体が、例えば1、5、3または7テスラの比較的高いできるだけ均一な静磁場(B
0磁場)に曝される。さらに傾斜磁場システムにより傾斜磁場が印加される。高周波送信システムを介して適切なアンテナ装置により、高周波励起信号(RF信号、またはRF励起パルスもしくは略してRFパルス)が送出され、これは、この高周波磁場(B
1磁場)により共鳴励起される特定の原子の核スピンを、静磁場の磁力線に対して定められたいわゆる「フリップ角」だけ傾けようとするものである。核スピンが緩和される際に高周波信号、いわゆる磁気共鳴信号が放射され、これが適切な受信アンテナにより受信されて、後処理される。このようにして取得された生データから、最終的に所望の画像データが再構成される。
【0003】
特定の測定のためには、送出されるべき高周波パルスシーケンスと、それに協調して切り替えられる傾斜磁場パルスシーケンス(スライス選択方向、位相エンコード方向および読み出し方向の適切な傾斜磁場パルスを含む)とを有するパルスシーケンスが送出されるべきである。画像化のためには、特にシーケンス内でのタイミングが重要である。即ち、どんな時間的間隔でどのパルスが相前後して続くかが重要である。一般には、多数の制御パラメータ値がいわゆる測定プロトコルにおいて規定されている。その測定プロトコルは、事前に作成しておき、特定の測定のために、例えば記憶装置から呼び出し、場合により操作者により現場で変更することができる。操作者は、例えば測定されるべきスライスのスタックの定められたスライス間隔、スライス厚等のような付加的なパラメータ値を予め設定することができる。これらの全ての制御パラメータ値に基づいて磁気共鳴制御シーケンス、つまりパルスシーケンスが算出される。
【0004】
古典的な方法では、対象内部の画像の取得がスライスごとに行われる。その都度選択的に1つのかなり薄い、一般には1〜5mmの扁平な断層(スライス)が励起される。このような選択励起は、高周波励起パルスに協調してスライス選択方向の傾斜磁場が印加されることによって行われる。励起する高周波パルスと付属の傾斜磁場とからなるこのようなパルス配列によって、共鳴条件がスライス選択方向に対して垂直な1つのスライスにおいてのみ満たされることが達成される。その際に、励起されたスライスの厚み(スライス厚)は、スライス選択傾斜磁場の振幅と、高周波パルスの周波数バンド幅とによって決定される。高周波磁場のキャリア周波数のシフト(ずらし)によって、励起されるスライスが、スライス選択方向に沿って移動される。この1次元選択性のRFパルスの選択ボリュームは、スライス平面に対して垂直な方向にのみ空間的に限定される。しばしば、このスライス選択方向は、いわゆるz軸に平行に、即ちトモグラフィ装置の長手軸に平行に向けられ、つまりトモグラフィ装置内にいる患者の長手軸にも平行に向けられている。1つのスライス内での空間エンコーディングは、第1の方向(大抵はy方向)の位相エンコーディングと、第2の方向(大抵はx方向)の読み出しエンコーディングとによって行われる。このようにして、生データが登録される2次元の空間周波数空間、いわゆるk空間が満たされる。それから2次元のフーリエ変換によって、そのスライスの画像が生じる。
【0005】
更に、そうこうするうちに多次元選択性のRFパルスが知られるに至った。2次元選択性のRFパルスは、例えば1つの長い棒または円筒を選択することができ、その棒または円筒は、棒軸に垂直な2つの方向においてもしくは円筒軸に垂直な半径方向において空間的に限定されている。3次元選択性のRFパルスは、例えば3つの全ての空間方向において限定されている1つの個別ボクセルを励起する。
【0006】
これらの多次元のRFパルスの第1の重要な適用例は、いわゆる「内部ボリュームイメージング」である。この場合には励起パルスとして多次元のRFパルスが使用される。その限定された励起ボリュームは、折り返しアーチファクト(エイリアシングアーチファクト)をもたらすことなく、視野(英語の“field of view”を略してFoV)を検査対象よりも小さく選ぶことを可能にする。多次元のRFパルスの第2の重要な適用例はいわゆる「ナビゲータ技術」である。この場合には、2次元選択性のRFパルスにより、例えばダイアフラムエッジによって円筒形の棒が励起され(いわゆるペンシルビーム励起)、これに続き呼吸運動を検出するために円筒軸に沿った1次元情報が読み出される。このために円筒形の棒の励起およびデータ取得が1つのイメージングシーケンス内の異なる時間部分において繰り返し行われる。これは、運動に同期してすぐさまデータ取得を行うためであり、あるいは生データもしくはそれから再構成された画像データを1つの運動位相または位置に割り当てるか、それらのデータを補正するかのいずれか一方または両方を行うためである。
【0007】
2次元選択性のRFパルスもしくはパルス配列は、RF照射の期間中に時間的に変化する選択傾斜磁場(即ち、適切な傾斜磁場パルス)をRFパルスの2つの選択方向に沿って印加することによって実現される。これらの選択傾斜磁場は送信k空間内の軌道を表し、その軌道は、以下において「送信k空間軌道」または略して単に「軌道」と呼ぶ。この送信k空間軌道は、RF励起エネルギーをどのk空間範囲に与えるかを決定する。送信k空間の選択された軌道に適合した時間関数としてRFパルスのB
1磁場の位相および包絡線(振幅)を選択することによって、画像空間、即ちジオメトリ空間において正確に規定された空間選択ボリューム(励起プロファイルとも呼ばれる)を実現することができる。
【0008】
実際には2次元選択性のRFパルスの設計時に従来は、(英語の“Echo Planar Imaging”を略してEPIと呼ばれるエコープラナー技術における読み出し傾斜磁場に応じた)EPI軌道と、同様にそれらの読み出し傾斜磁場から知られているスパイラル軌道とが使用される。好ましくは内部ボリュームイメージングのためのEPI軌道と、とりわけ前述のペンシルビーム励起のためのスパイラル軌道とが使用される。
【0009】
多次元RFパルスを実現する際における既知の実用上の問題は、いわゆる傾斜磁場遅れ時間(英語:gradient delay time)にある。これらの遅れ時間は、指令された傾斜磁場形状と実際に印加された傾斜磁場との間に時間的な偏差を生じる。従って、傾斜磁場印加と同時に照射される時間的に変化するRFパルス形状が、その傾斜磁場に適合せず、所望の励起ボリュームからのゆがみおよび偏差を生じる。これらの遅れ時間の原因は、傾斜磁場コイルシステムのシステム不完全性と、渦電流によって誘起される付加的な傾斜磁場とにある。一般に、少なくとも2つの関与する傾斜磁場コイルにとって遅れ時間は異なっている。より詳細な論議が刊行物記事に開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0010】
1次元選択性のRFパルスの場合に、選択傾斜磁場は一般に一定である。従って、遅れ時間によって、この場合には照射の開始および終端の部分でのみ、B
1パルス形状と実際に印加される傾斜磁場との間に偏差が生じる。これらの時間インターバルで導入されるRFエネルギーは通常どっちみち僅かであるので、この場合に傾斜磁場遅れ時間は、深刻さはなく、つまり選択プロファイルには僅かしか影響しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、回転対称の励起プロファイルの2次元選択励起時の傾斜磁場遅れ時間による上述の問題が回避または少なくとも低減できる冒頭に述べた形式の磁気共鳴制御シーケンスの決定方法およびこれに対応する制御シーケンス決定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、本発明によれば、検査対象内の限定された回転対称の励起プロファイルを励起するために、少なくとも2つの空間方向において選択的に作用するパルス配列を有する磁気共鳴制御シーケンスの決定方法であって、
前記パルス配列のRF励起パルスが一連の複数のRF部分パルスを含み、それらの一連のRF部分パルスに並列に両空間方向の傾斜磁場パルスは、異なるRF部分パルスへのRFエネルギー導入が送信k空間においてそれぞれ互いに同心の円形のk空間送信軌道上で行われるように調整されて印加され、
前記RF部分パルスのRF包絡線の振幅は、1つの円形のk空間軌道の通過時間の期間中に一定である、
磁気共鳴制御シーケンスの決定方法によって解決される(請求項1)。
前述の課題は、本発明によれば、検査対象内において限定されて励起される回転対称の励起プロファイルの空間的な広がりを規定する励起プロファイルデータを取得する入力インターフェース装置と、
前記励起プロファイルを励起するために、少なくとも2つの空間方向に選択的に作用する少なくとも1つのパルス配列を決定するパルス配列決定ユニットとを備え、磁気共鳴制御シーケンスを決定するための制御シーケンス決定装置であって、
前記パルス配列のRF励起パルスは、該RF励起パルスが一連の複数のRF部分パルスを含み、かつ、それらの一連のRF部分パルスに並列に両空間方向の傾斜磁場パルスが、異なるRF部分パルスへのRFエネルギー導入が送信k空間においてそれぞれ互いに同心の円形のk空間送信軌道上で行われるように調整されて印加されるように決定され、
前記RF部分パルスの包絡線の振幅は、それぞれ1つの円形のk空間軌道の通過時間の期間中に一定である、制御シーケンス決定装置によっても解決される(請求項13)。
なお、磁気共鳴制御シーケンスの決定方法に関する本発明の実施態様は次の通りである。
・異なるRF部分パルスについて円形のk空間軌道の通過時間が等しい長さである(請求項2)。
・異なるRF部分パルスについて円形のk空間軌道の通過時間がそれぞれ個別に決定される(請求項3)。
・傾斜磁場パルスが予め与えられた最大傾斜磁場上昇速度を上回らないように、円形のk空間軌道の通過時間が最大の大きさに選ばれる(請求項4)。
・時間的に隣接する2つのRF部分パルスに割り当てられる同心の円形のk空間送信軌道が送信k空間において逆向きに通過されるように、傾斜磁場パルスが構成されている(請求項5)。
・円形のk空間送信軌道が送信k空間において等間隔リングを形成するように、傾斜磁場パルスが構成されている(請求項6)。
・同心の円形のk空間送信軌道が、共通な中心方向に向かって互いに小さくなる半径方向間隔を有するリングを形成するように、傾斜磁場パルスが構成されている(請求項7)。
・同心の円形のk空間送信軌道の個数が、第1側部励起の間隔と励起プロファイルの直径との比に応じて選ばれる(請求項8)。
・円筒形の励起プロファイル内の目標フリップ角が、好ましくはガウス状に、円筒形の励起プロファイルの円筒軸からの半径方向間隔に関係するように、RF部分パルスの包絡線の振幅が決定される(請求項9)。
・円筒形の励起プロファイル内の目標フリップ角がほぼ一定であるように、RF部分パルスの包絡線の振幅が決定される(請求項10)。
さらに、本発明によれば、先ず本発明による磁気共鳴制御シーケンスの決定方法において磁気共鳴制御シーケンスを決定し、次にこの磁気共鳴制御シーケンスを利用して磁気共鳴システムを動作させる、磁気共鳴システムの動作方法が提案される(請求項11)。
さらに、本発明による磁気共鳴システムの動作方法を用いて傾斜磁場遅れ時間を複数回変更して磁気共鳴システムを動作させて磁気共鳴画像データが作成され、これらの磁気共鳴画像データの解析に基づいて傾斜磁場遅れ時間に関して磁気共鳴システムの調整および/または較正が行われる、磁気共鳴システムの調整および/または較正方法も提案される(請求項12)。
さらにまた、本発明によれば、高周波送信装置と、傾斜磁場システムと、予め与えられた磁気共鳴制御シーケンスに基づいて所望の測定を実施するべく高周波パルスシーケンスを送出すると共にそれに連系して傾斜磁場システムを介して傾斜磁場パルスシーケンスを送出するように構成されている制御装置と、磁気共鳴制御シーケンスを決定してその磁気共鳴制御シーケンスを制御装置に伝送するために本発明による制御シーケンス決定装置とを有する磁気共鳴システムが提案される(請求項14)。
さらに、プログラムが制御シーケンス決定装置において実行される際に本発明による磁気共鳴制御シーケンスの決定方法の全てのステップを実行するためのプログラムコード部分を備え、制御シーケンス決定装置の記憶装置に直接にロード可能であるコンピュータプログラムつまりコンピュータプログラム製品も提案される(請求項15)。
【0014】
本発明による方法においては、上述のように、検査対象内の限定された回転対称の励起プロファイル(「励起ボリューム」とも呼ばれる)を励起するために、少なくとも2つの特に互いに直交する空間方向において選択的に作用するパルス配列を有する磁気共鳴制御シーケンスが決定される。このパルス配列は、一連の複数の分離した、即ち時間的に互いに隔てられたRF部分パルスを含む2次元選択性のRF励起パルスを有する。このパルス配列は、所望の選択作用を得るために、それらの一連のRF部分パルスに並列に、次の如き傾斜磁場パルス、即ち、異なる部分RFパルスへのRFエネルギー導入(即ち、RFエネルギー付与もしくはRFエネルギーデポジション)が、送信k空間内で見て、それぞれ互いに同心の円形のk空間送信軌道上で行われるように調整されて両空間方向に印加される傾斜磁場パルスを含む。即ち、個々のRF部分パルスには、それぞれ1つの固有の円形の送信軌道(以下において「リング軌道」とも呼ぶ)が割り当てられており、これらのリング軌道は、傾斜磁場の空間方向に付属するk空間方向によって定められる1つの平面内で互いに同心である。(振幅変調された)RF部分パルスの包絡線の振幅(以下においてb
1振幅とも呼ぶ)は、それぞれ付属のリング軌道の通過時間の期間中(即ち、1つのRF部分パルスのRF照射の持続時間Tの期間中)に一定である。
【0015】
この軌道形状を得るために、静的な少なくともほぼ均一のB
0磁場には、時間インターバルT、即ち送信軌道の各円軌道上での回転時間もしくはRF部分パルスの送信時間の期間中に、その都度1つの第1の傾斜磁場部分パルス(つまり第1の傾斜磁場)と同時に、第2の傾斜磁場部分パルス(つまり第2の傾斜磁場)が重畳される。第1の傾斜磁場は、時間インターバルTの期間中に正弦波状に周期Tにて振動する振幅と、励起ボリュームのシステム軸に対して垂直な方向とを有する。第2の傾斜磁場は、時間インターバルTの期間中に余弦波状に周期Tにて振動する振幅と、システム軸および第1の傾斜磁場の方向に対して垂直な方向とを有する。
【0016】
基本的に、このようなRF部分パルスは、米国特許第4812760号明細書に記載されている空間選択性の反転パルスもしくはリフォーカスパルス(「Πパルス」)と同様に構成されており、この反転パルスもしくはリフォーカパルスは、矩形の包絡線と、第1の傾斜磁場方向に沿った正弦波状の傾斜磁場波形ならびに第2の傾斜磁場方向に沿った余弦波状の傾斜磁場波形とを有する。もちろん、このような「Πパルス」によっては十分な空間的位置確定は達成できない。本発明に従って、1つの空間選択性のRFパルスを、互いに同心のリング軌道上における複数の、即ち少なくとも2つの、しかし格別に好ましくはそれよりも多い数のRF部分パルスから構成することによってはじめて、所望の円筒対称な励起プロファイルを選択的に励起することができる。
【0017】
本発明に従って選択励起のために、今やEPI軌道またはスパイラル軌道の代わりに、複数の同心のリング軌道が選択され、後で更に明らかにするように、その都度1つのリング軌道を通過する期間中はB
1振幅が一定であり得ることによって、1次元選択性のRFパルス(時間的に変化するB
1振幅の場合には一定の傾斜磁場振幅を有する)と同様に、傾斜磁場遅れ時間の存在にも拘わらず、選択プロファイルの際立ったロバスト性が達成される。
【0018】
ここで既に指摘しておくに、パルス配列は多数の他のRFパルスおよび傾斜磁場パルスを有することができ、選択励起するパルスであってもよい。従って、全ての部分パルスが同心のリング軌道上にある必要はない。例えば、空間選択的に作用するパルス列は、なおも付加的に、スパイラル軌道上にあるRFパルスを有することもできる。特に、例えば、(高速の)スパイラル軌道を用いてk空間の外側領域を励起し、(正確な)本発明による同心のリング軌道を用いてk空間の内側領域を励起することが可能である。
【0019】
このような磁気共鳴制御シーケンスを決定する本発明による制御シーケンス決定装置は、検査対象内において限定されて励起される回転対称の励起プロファイルを規定する励起プロファイルデータを取得するために少なくとも1つの入力インターフェース装置を必要とする。これらの励起プロファイルデータは、例えば、回転対称の励起プロファイルの位置データ、例えば回転軸の位置もしくは姿勢、ならびに励起されるボリュームの直径である。入力インターフェース装置は、例えば、このような位置データを手動入力するためのユーザインターフェースであってよいが、特に、所望の励起プロファイルを検査対象の表示された画像データ、例えばトポグラム内に記入するもしくは他の方法によりマーキングするためのグラフィカルユーザインターフェースであるとよい。代替または追加として、入力インターフェース装置は、検査対象のための(例えばナビゲータ適用のための)適切な励起プロファイルデータを自動的に発生する装置を有するか、または、適切な装置または記憶装置から呼び出すための装置を有するとよい。
【0020】
更に、制御シーケンス決定装置は、正確に規定かつ限定して入力インターフェース装置により予め与えられた励起プロファイルを励起するために、本発明に従って少なくとも2つの空間方向において選択的に作用する少なくとも1つのパルス配列を決定するためのパルス配列決定ユニットを必要とする。このパルス配列決定ユニットは、RF励起パルスが一連の複数のRF部分パルスを含み、かつ、異なるRF部分パルスへのRFエネルギー導入が送信k空間においてそれぞれ互いに同心の円形のk空間送信軌道(リング軌道)上で行われ、その際にRF部分パルスの包絡線の振幅がそれぞれ1つのリング軌道の通過時間の期間中に一定であるように前記一連のRF部分パルスに並列に両空間方向の傾斜磁場パルスが調整されて印加されるように、パルス配列のRF励起パルスを決定する。
【0021】
更に、制御シーケンス決定装置は、制御シーケンスを磁気共鳴トモグラフィシステムの他の制御ユニットに伝送するために、適切な制御シーケンス出力インターフェースを有する。この制御シーケンス出力インターフェースは、例えば、そのシーケンスを磁気共鳴制御部に伝送し、それにより直接に測定を制御するインターフェースであってよいが、しかしデータをネットワークにより送信するか、後での使用のために記憶装置に保存するかのいずれか一方または両方を行うインターフェースであってもよい。
【0022】
本発明による磁気共鳴システムは、RFパルスを送信する高周波送信装置のほかに、必要な傾斜磁場を印加する傾斜磁場システムと、制御装置とを有する。この制御装置は、予め与えられた磁気共鳴制御シーケンスに基づいて所望の測定を実行するために、高周波パルストレイン(即ち、複数のRFパルス)を送出し、これと協調をとって傾斜磁場システムを介して傾斜磁場パルストレイン(即ち、付属の複数の傾斜磁場パルス)を送出するように構成されている。更に、磁気共鳴システムは、本発明による方法にて制御シーケンスを決定してこれを制御装置に伝送するために、上述の制御シーケンス決定装置を有する。
【0023】
従って、本発明による磁気共鳴システムの動作方法では、上述の方法に基づいて制御シーケンスが決定され、その制御シーケンスの使用により磁気共鳴システムが動作させられる。
【0024】
付加的に、後で更に試験測定に基づいて説明するように、本発明による制御方法は、傾斜磁場遅れ時間に関して磁気共鳴システムの調整および/または較正を行う方法の範囲内でも有利に使用できる。このために、例えば本発明による方法により傾斜磁場遅れ時間を作為的に複数回変更することにより、即ち各個別の測定時にさまざまに設定される傾斜磁場遅れ時間で、磁気共鳴システムを制御し、すなわち動作させることができる。その都度、磁気共鳴画像データ、例えば特定の励起プロファイルの簡単な断層画像が生成される。その特定の励起プロファイルは、検査対象内、または、調整測定および/または較正測定に用いられるファントム等内の完全に特定された個所に存在しなければならない。この繰り返しの測定の際には、何度も繰り返して同じ励起プロファイルが励起されることが好ましい。これらの磁気共鳴画像データの解析に基づいて、傾斜磁場遅れ時間に関する磁気共鳴システムの所望の調整もしくは較正を行うことができる。この解析は、特に、例えば光学的に操作者によって、操作者が異なる撮像間で傾斜磁場遅れ時間を常に変更し、その際に画像データ内で光学的に、励起プロファイルが所望の個所に存在するか否かをチェックすることにより行うことができる。これらの調整測定および/または較正測定は、測定された励起プロファイルが正確に所望の位置に存在し、従って、システム内在性の(最初は既知でない)遅れ時間が正確に補償されるまで、傾斜磁場遅れ時間を変更しながら繰り返される。それによって決定された遅れ時間はプロトコル化され、例えば更なる測定時に考慮される。
【0025】
制御シーケンス決定装置の主要部分はソフトウェア構成要素として構成されるとよい。これは、特にパルス配列決定ユニットに関係する。同様に、上述のインターフェースは、少なくとも部分的にソフトウェアとして構成されているとよく、同様に既存のコンピュータのハードウェアインターフェースを使用できる。従って、本発明は、プログラムが制御シーケンス決定装置において実行される際に本発明による方法の全てのステップを実行するべく制御シーケンス決定装置の記憶装置内にロード可能であるプログラムコード部分を有するコンピュータプログラムつまりコンピュータプログラム製品も含む。このようなソフトウェアによる実現は、本発明による方法において最適化された制御シーケンスを決定するために、制御シーケンスの決定に使用される従来装置も、適切にプログラムを実行可能にすることによって部分変更できる利点を有する。
【0026】
従属請求項ならびに以下の説明は、格別に有利な本発明の発展形態および実施形態を含んでいる。特に、1つのカテゴリの請求項を他の請求カテゴリの従属請求項と類似させて発展的に構成することも可能であり、異なる実施例の特徴を他の実施例の構成に組み合わせることもできる。
【0027】
個々のリング軌道上でのRF部分パルスの正確な構成のために種々の可能性がある。この場合に考えられ得るパラメータは、1つのリング軌道を通過するに必要な時間である。
【0028】
第1の実施例では、1つの円形のリング軌道に沿って作用するRF励起パルスの少なくとも2つの異なるRF部分パルスについて、極端な場合には全てのRF部分パルスについて、円形のリング軌道の通過時間が等しい長さであるようにされる。これは非常に簡単に実現できる。この手法は、2次元のスパイラルパルスの場合(即ち、k空間内でのスパイラル軌道に沿ったRFパルスの送信の場合)の一定の角速度に類似する。
【0029】
代替実施例の場合、RF部分パルスおよび付属の傾斜磁場パルスは、少なくとも2つの異なるRF部分パルスについて円形のk空間軌道の通過時間がそれぞれ個別に決定されるように、すなわち異なるRF部分パルスが特に異なる長さであるように構成されている。動作時間の個別化によって、RFパルス励起パルスの全時間が最小化されかつそれにも拘らず、例えば傾斜磁場パルスの最大許容スルーレート(最大許容傾斜磁場上昇速度)および/または最大許容傾斜磁場振幅のような限界条件が確実に維持されるかぎり、シーケンスの最適化が可能である。
【0030】
これを達成するために、傾斜磁場パルスが予め与えられた最大スルーレートを(正に)上回らないように、好ましくは、各RF部分パルスの円形のk空間軌道の通過時間が短く選ばれるとよい。これは、一定の傾斜磁場上昇速度を有するスパイラル状の励起にほぼ類似する。
【0031】
異なるRF部分パルスのパルス時間が等しい長さであるかまたは個別に設定されるかに関係なく、RF部分パルスの包絡線の振幅(即ち、b
1振幅)は、円形の送信軌道の持続時間の期間中にそれぞれ一定に保たれて、個別に確定されているとよい。即ち、複数のRF部分パルスは特に異なるb
1振幅を有することができる。
【0032】
特に高速のRF励起パルスを得るために、即ち全ての同心のリング軌道の全通過時間をできるだけ短くするために、傾斜磁場パルスは、2つの時間的に隣接するRF部分パルスに割り当てられた同心の円形のk空間送信軌道が送信k空間において逆方向に通過されるように構成されているのが好ましい。即ち、例えば第1のリング軌道が時計方向に通過され、次に隣接するリング軌道が反時計方向に通過され、次の次に隣接するリング軌道が時計方向に通過されるようにされる。更に後で示すように、この実施例の場合には、個々のRF部分パルスの前後のプリフェージング傾斜磁場とリフェージング傾斜磁場とを統合することによって、格別に多くの時間を節約することができる。
【0033】
同心のリング軌道を有するRF励起パルスを正確に構成する場合に重要である他のパラメータはリング軌道相互の間隔である。
【0034】
第1の実施例の場合、傾斜磁場パルスは、円形のk空間送信軌道が送信k空間において1つの共通な中心の周りに等間隔のリングを形成するように構成されている。従って、2つのリング軌道間の半径方向間隔は常に等しい。これにより、エネルギーをk空間内に格別に一様に導入することが達成される。
【0035】
代替実施例の場合、傾斜磁場パルスは、同心の円形のk空間送信軌道が互いに異なる半径方向間隔を有するリングを形成するように構成されている。格別に好ましい実施例の場合には、同心の円形のk空間送信軌道が、共通な中心に向かって狭くなる半径方向間隔を有するリングを形成する。k空間中心に向かって狭くなるリング軌道間隔によって、特に励起プロファイルに関する主要情報を有する重要な周波数範囲において十分なエネルギーが付与されるようにされる。このために必要な時間は、リング軌道相互の間隔を僅かにすることによって、k空間の重要性の低い周辺領域において節約することができる。
【0036】
他の調整可能なパラメータは、RF励起パルスのリング軌道の個数である。一方では、空間内で励起を十分に密に達成するためにはリング軌道を相対的に密に設定するのが有利である。他方ではリング軌道の個数が増すにともなって必然的にRF励起パルスの全時間も長くなる。
【0037】
このために、同心の円形のk空間送信軌道の個数が、第1側部励起の間隔と励起プロファイルの直径との比に応じて選ばれるならば、格別に有利である。第1側部励起の範囲内においては励起がもはや望まれず、従って励起プロファイルの対象軸からのその側部励起の間隔および(円筒対称の)励起プロファイルの直径は励起にとって重要なパラメータであるので、リング軌道の個数を、励起プロファイルの直径によって割り算されたこの第1側部励起の間隔の2倍値に応じて選ぶことで十分であることが明らかになった。それによって、リング軌道相互の間隔が少なくともナイキスト理論による走査の際の最小間隔に一致することが保証されている。
【0038】
他のパラメータは、励起の際に励起プロファイル内において達成されるべき目標フリップ角(目標励起プロファイル)もしくは目標フリップ角分布である。
【0039】
第1の実施例では、円筒形の励起プロファイル内の目標フリップ角がその円筒形の励起プロファイルの円筒軸からの半径方向間隔rに関係するように、RF部分パルスの包絡線の振幅が決定される。即ち、その目標フリップ角は内側から外側に向かって減少する。半径方向間隔の依存性がガウス状であると格別に好ましい。
【0040】
代替方法では、円筒形の励起プロファイル内の目標フリップ角がほぼ、即ち生じ得る許容誤差内で一定であるように、RF部分パルスの包絡線の振幅が決定される。従って、この実施例では、目標フリップ角分布は励起プロファイルにわたってできるだけ均一である。
【0041】
しかし、更に他の分布も可能であり、例えば内側領域においてほぼ一定もしくは均一な励起が行われ、この均一な領域の外側においてそれが低下すること、特にガウス状に低下することも可能である。
【0042】
ここで更にもう一度明確に指摘しておくに、リング軌道、リング軌道の間隔、B
1振幅またはフリップ角分布のような個々のパラメータに関する上述の種々の変形は任意に組み合わせることができる。
【0043】
以下において、添付図面を参照しながら実施例に基づいて本発明をもう一度更に詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1には、本発明による磁気共鳴装置1が大まかに模式的に示されている。この磁気共鳴装置は、一方では本来の磁気共鳴スキャナ2を含み、その磁気共鳴スキャナはその中にある検査空間8つまり患者用トンネルを有する。患者用テーブル7は患者用トンネル8の中に移動可能であるので、そのテーブルの上に横たわる患者Oまたは被検体は、検査中に、その磁気共鳴スキャナ2内の定められた位置に、その内部に配置された磁石システムおよび高周波システムに対して相対的に配置可能であり、もしくは測定中に異なる位置間での移動も可能である。
【0046】
磁気共鳴スキャナ2の構成要素には、ここでは静磁場磁石3と、x方向、y方向、z方向の傾斜磁場を発生するための傾斜磁場コイルを有する傾斜磁場システム4と、全身高周波コイル5とが属している。x方向、y方向、z方向(空間座標系)の傾斜磁場コイルは互いに独立に制御可能であるので、予め与えられた組合せによって、任意の論理的な空間方向、例えば、空間座標系の軸に対して必ずしも平行でないスライス選択方向、位相エンコード方向または読み出し方向に傾斜磁場を印加することができる。検査対象O内に誘導される磁気共鳴信号の受信は、全身高周波コイル5を介して行われ、その全身高周波コイル5により、通常は磁気共鳴信号を誘導するための高周波信号も送出される。しかし、一般に、この信号は、患者Oの例えば上または下に置かれる局所コイル(これらのコイルのうち1つのみが図示されている)を有する局所コイル装置6により受信される。これらの全ての構成要素は当業者に基本的に知られており、従って
図1では大まかに模式的にしか示されていない。
【0047】
磁気共鳴スキャナ2の構成要素は制御装置10によって制御可能である。この制御装置10は制御コンピュータであり、この制御コンピュータは、複数の(場合によっては空間的に分離され適切なケーブル等を介して互いに接続された)個別コンピュータから構成することもできる。この制御装置10はターミナルインターフェース17を介してターミナル20に接続されており、このターミナル20を介して操作者は磁気共鳴装置1全体を操作することができる。ここでの事例において、そのターミナル20は、キーボードと、1つまたは複数の画面と、例えばマウス等の他の入力装置とを備えたコンピュータ21を有する。つまり、このようなコンピュータ21として構成されていることにより、操作者はグラフィカルユーザインターフェースを自由に使用することができる。
【0048】
制御装置10は、とりわけ傾斜磁場制御ユニット11を有し、この傾斜磁場制御ユニット11も複数の部分構成要素から構成することができる。この傾斜磁場制御ユニット11を介して個々の傾斜磁場コイルが傾斜磁場パルスシーケンスGSに従って制御信号により切り替えられる。上述のように、測定中に正確に予め定められた時間的位置で投入されて正確に予め定められた時間経過に合わせられる傾斜磁場パルスが重要である。
【0049】
更に、制御装置10は、全身高周波コイル5にその都度高周波パルスを制御シーケンスASの予め与えられた高周波パルスシーケンスRFSに従って供給するために高周波送信ユニット12を有する。高周波パルスシーケンスRFSは上述の選択性の励起パルスを含む。磁気共鳴信号の受信は、局所コイル装置6により行われ、それによって受信された生データRDが高周波受信ユニット13によって読み出されて処理される。磁気共鳴信号は、ディジタル形式で生データとして再構成ユニット14に伝送される。再構成ユニット14は、生データから画像データBDを再構成し、それらを記憶装置16に保存するか、操作者が画像データBDを観察できるようにインターフェース17を介してターミナル20へ伝送するかのいずれか一方または両方を行う。画像データBDは、ネットワークNWを介して他の個所で保存および/または表示を行い、解析を行うこともできる。代替として、局所コイル装置を介する高周波パルスシーケンスの送出および/または全身高周波コイルによる磁気共鳴信号の受信を行ってもよい(図示されていない)。
【0050】
他のインターフェース18を介して、例えば患者用テーブル7または静磁場磁石3のような磁気共鳴スキャナ2の他の構成要素に制御指令が伝達され、または測定値もしくは他の情報が受信される。
【0051】
傾斜磁場制御ユニット11、高周波送信ユニット12および高周波受信ユニット13は測定制御ユニット15によってそれぞれ協調制御される。この測定制御ユニット15は、適切な指令によって、所望の傾斜磁場パルスシーケンスGSおよびそのパルスシーケンスの高周波パルスシーケンスRFSが送出されるようにする。更に、適切な時点で局所コイル装置6の局所コイルの磁気共鳴信号を高周波受信ユニット13によって読み出して後処理するようにしなければならない。即ち、例えば高周波受信ユニット13のADC(アナログディジタル変換器)を受信に切り替えることによって、読み出し時間枠を設定しなければならない。同様に測定制御ユニット15はインターフェース18を制御する。
【0052】
しかし、このような磁気共鳴測定の基本的な経過と制御のための上述の構成要素とは当業者には知られているので、ここではそれらの細部についてこれ以上言及しない。ところで、このような磁気共鳴スキャナ2および付属の制御装置10は、ここでは同様に詳細に説明しない多数の他の構成要素を有し得る。ここで指摘しておくに、磁気共鳴スキャナ2は、例えば横方向に開いた患者用空間を有するように、あるいは身体の一部のみが配置できる小型のスキャナとして構成することもできる。
【0053】
測定を開始するために、操作者は、ターミナル20を介して、一般にこの測定のために用いられる制御プロトコルPを、種々の測定のために多数の制御プロトコルPが格納されている記憶装置16から選び出すことができる。この制御プロトコルPは、とりわけその都度の測定のための種々の制御パラメータ値SPを含む。これらの制御パラメータ値SPには、例えばシーケンス型、個々の高周波パルスの目標磁化、エコー時間、繰り返し時間、種々の選択方向等を含む。同様に、ここでは既にスライス厚、分解能、スライス数が設定され、あるいは3D励起の場合、任意の励起プロファイルのスラブ厚または他の寸法(即ち、励起プロファイルデータ)が予め与えられているとよい。更に、これらの制御パラメータ値SPは、その都度の測定がナビゲータを用いる測定であるか否かの情報も含み、ナビゲータを用いる測定である際には、場合により既にこのナビゲータ適用に必要とされる励起プロファイルEPのための励起プロファイルデータも含む。
図1に概略的に示されている適用例では、この励起プロファイルEPは患者Oの体内においてz方向に延びている円筒対称のいわゆる「ペンシルビーム」であり、これは患者Oの横隔膜9を貫通している。
【0054】
これらの全ての制御パラメータ値SPは、とりわけ制御シーケンス決定装置22に入力インターフェース24を介して提供され、それにより制御シーケンス決定装置22は適切な制御シーケンスASを決定する。同様に制御パラメータ値SPは先ずこのプロトコルの呼び出し時に操作者に伝達すべく提供され、操作者は、それらの値をユーザインターフェースによって任意に変更して実際の検査指令に適合させることもできる。特に、操作者は、付属のグラフィカルユーザインターフェースを有するターミナル20のコンピュータ21を介して、励起プロファイルデータ、例えば回転対称の励起プロファイルEPの対称軸の正確な位置等を確定し、あるいはプロトコルP内の制御パラメータ値SPによって既に規定された励起プロファイルデータを変更することができる。このことが
図1にはインターフェース装置23によって示されている。
【0055】
更に、操作者は、記憶装置16からの代わりにネットワークNWを介して、例えば磁気共鳴装置の製造者から、適切な制御パラメータ値SPを有するプロトコルを呼び出して、これらを以下において説明するように利用することができる。
【0056】
励起プロファイルデータを含めた制御パラメータ値SPに基づいて、制御シーケンスASが決定され、最終的にこの制御シーケンスASに従って残りの構成要素の制御が測定制御ユニット15によって行われる。この制御シーケンスは、とりわけ、選択された励起プロファイルEPを選択励起するためのパルス配列を含んでいる。制御シーケンスASは、既述のように、ターミナル20の一部である制御シーケンス決定装置22において算定され、制御シーケンス出力インターフェース25を介して磁気共鳴スキャナ2の制御装置10に伝送される。制御シーケンス決定装置22は、とりわけ(
図1には図を見易くするために、他の構成要素は図示していないが)パルス配列決定装置26を含み、このパルス配列決定装置26は、励起プロファイルEPを選択励起するために前述のパルス配列を決定する。制御シーケンス決定装置22全体およびそれの構成要素は、例えばソフトウェアとして1つまたは複数の適切なプロセッサ上で実現することができる。以下において、制御シーケンス決定装置22およびそれの個々の構成要素の詳細な動作態様を説明する。この場合に例として上述のペンシルビーム励起だけを前提としているが、本発明はこれに限定されない。
【0057】
円筒対称の励起プロファイルEPの位置空間において対称軸zに対して垂直に位置するx−y平面を励起するための2次元のRFパルスを設計するためには、この平面内における励起プロファイルのほかに、一般に先ず、k空間における付属のx−y平面において2次元のk空間送信軌道を選択しなければならない(k空間における時間に関係した座標(k
x(t),k
y(t))を以下において(k
x,k
y)と略記する)。この場合に、励起プロファイルは、座標値xおよびyを有する位置における関数P(x−y)によって決定される。関数P(x−y)は、平衡磁化の値に対する相対的な横磁化の所望値を指定し、従って単位を持っていない。この軌道のk空間の範囲(広がり)は、所望の選択プロファイルを実現することを可能にする空間分解能を決定する。k空間における軌道の走査密度は、FOV(撮像視野=スライス範囲)とも呼ばれる位置空間における励起の第1側波帯の間隔を決定する。このような側波帯は離散走査のために避けることができない。
【0058】
高周波照射の期間中の2次元の傾斜磁場(g
x(t),g
y(t))が、選択されたk空間軌道(k
x,k
y)と、
【数1】
もしくは
【数2】
により関連づけられている。式(1)におけるマイナス符号は、積分をRFパルスの終端で開始するという慣例の結果である(t=T)。従って、時間tはRFパルスの終端までの残りの時間を示す。
【0059】
RFパルスの付属のパルス形状b
1(t)は、所望の励起プロファイルP(x−y)に関して、所望の空間的な励起プロファイルP(x−y)の重み付け2次元フーリエ変換によって
【数3】
を生じる(b
1(t)は、時間に関係した振幅である)。
【0060】
この式は、(小角度励起の制限内での)ブロッホの方程式から導き出すことができる(例えば、1989年発行の雑誌「Magn.Res.81」第43〜56頁に掲載されたJ.Paulyetらの共著“A K-Space Analysis of Small-Tip-Angle Excitation”ならびに1990年発行の雑誌「Magn.Res.87」第639〜645頁に掲載されたC.J.Hardyらの共著“Correcting for Nonuniform k-Space Sampling in Two-Dimensional NMR Selective Excitation”参照)。
【0061】
式(3)において、第1の重み係数
【数4】
はk空間における横速度である。
【0062】
第2の係数は、k空間内の位置(k
x,k
y)におけるk空間走査の密度であり、次のとおり表される。
【数5】
【0063】
式(5)において、ΔA(k
x,k
y)はk空間点(k
x,k
y)の周辺におけるk空間の小さな面積であり、Δl(k
x,k
y)はその面積によって取り囲まれた軌道の長さである。具体的には、それらの式(4)および(5)による係数は、k空間が緩やかにもしくは高密度で走査される場所ではRF振幅が低減されること、そしてk空間が逆の状態で走査される場所ではRF振幅が逆に増大されることを意味する。
【0064】
本発明による方法によれば、励起プロファイルを選択励起するためには、少なくとも2つの同心のリング軌道を有するk空間軌道を選択しなければならない。k空間S
kの中心点の周りにそれぞれ等間隔の半径方向間隔Δkrで互いに点対称に広がる全部で8個の同心のリング軌道TR
1,TR
2,…,TR
8を有するこのようなk空間軌道が
図2に例示されている。
【0065】
同心のリング軌道は、両選択傾斜磁場(即ち、選択性のRFパルスの期間中に送出され選択のために使用される傾斜磁場パルス)がRF照射の期間中に次のようにsin関数もしくはcos関数によって変調されていることによって達成可能である。
【数6】
【0066】
上式において、nは1からNまでの値を取る励起インデックス(つまりリング軌道のインデックス)であり、Nは選択された軌道のリングの個数である(従って、
図2による例では、N=8が当てはまる)。A
nはn番目の励起の期間中の傾斜磁場振幅値であり、T
nはn番目の励起(即ち、n番目のリングへの高周波照射)の持続時間である。式(6)においてその式をできるだけ簡略化するために、有り得る共通な位相係数は、一般性を制限することなく省略することができる。
【0067】
従って、式(3)における第1の重み係数すなわちk空間横速度は、リング軌道の通過中一定である。
【数7】
【0068】
第2の重み係数すなわち密度補償係数
【数8】
は、等間隔のリング軌道について、k空間内の隣接するリング間の半径方向間隔Δkrの逆数によって評価される。このことは後で
図5により更に詳細に説明する。密度補償係数は、k空間がリング軌道により可変密度を割付けられる場合に、即ちリング軌道が等間隔でない場合に初めて重要となる。定められたリング軌道n(1<n<N)に関しては、密度補償係数として、2つの直近の隣接リングに対する平均の半径方向間隔によって、例えば1を使用することができる。
【0069】
所望の励起プロファイルP(x−y)は、本発明によれば回転対称であり、従って極座標において詳述するかぎり、半径方向の間隔r=(x
2+y
2)
1/2のみに関係し、極角または方位角φ
rに関係せず、即ちP(x−y)=P(r)が当てはまる。
【0070】
デカルト極座標から式(3)へのフーリエ変換という座標変換によって、先ず、
【数9】
が得られる。
【0071】
但し、φ
rは空間ベクトル(x−y)=(r,φ
r)の方位角であり、φ
kは波動ベクトル(k
x、k
y)=(k,φ
k)の方位角であり、J
mはm次のベッセル関数である。所望の励起プロファイルが回転対称であるという前提のもとでは、空間方位角にわたる積分を総計することができ、0次の項のみが残る。従って、式(3’)は、
【数10】
として、単純化して表記することができる。
【0072】
円軌道上における波動ベクトルk(t)=kの値は一定であるので、この表示から間接的に、右辺における積分は、特定の円軌道(励起)にとって一定であり、個々のリング軌道の間b
1振幅も一定であることが結論される。従って、最初に述べたように傾斜磁場コイルの切り替え遅れはもはや重要でない。
【0073】
本発明による2次元のRFパルスは、「合成」RFパルス(英語:“composite RF-Pulse”)として、このような複数の部分パルスで構成することができる。この場合に、各部分パルスは持続時間T
nの一定振幅b
1(n)を有する「矩形パルス」からなり、傾斜磁場は、照射時間T
nの期間中に、付属の励起k空間において円軌道(即ち付属のn番目のリング軌道)が通過されるように、正弦波状もしくは余弦波状に周期T
nにて振動する。
【0074】
具体的には、規定されたボリュームつまり励起プロファイルを励起するためには、個々の部分パルスを設計する前に先ずリング軌道を正確に確定しなければならない。以下において、例として再び、例えばナビゲータ技術において使用される直径dを有する円筒状の棒ボリュームから出発する。
【0075】
使用者にとって重要な、従って使用者によって指定されるパラメータは、棒の直径dおよび第1の側部励起SL(サイドローブ)の間隔S
SLである。側部励起はk空間の離散走査のために回避できない。使用者は第1側波帯SLの間隔S
SLを非常に大きく選ぶので、その第1側波帯SLはちょうど検査対象の外側にあり、従ってどの組織も励起されない。検査対象が成人である場合に、上述のナビゲータ適用例では、典型的な値が、励起直径についてはd=25mmであり、第1側波帯の間隔についてはS
SL=400mmである。
【0076】
式(7)から明らかのように、複素数値のb
1磁場および所望の励起プロファイルP(r)がフーリエ変換対を成す。
【0077】
r>S
SLに関する特性P(r)=0およびナイキスト定理から、
【数11】
に従って、k空間内での走査の最小間隔が生じる。
【0078】
指定された励起直径dは、走査されたk空間の直径2・kr
max=2・N・Δkrを介して、リング軌道の個数Nを決定する。
【数12】
【0079】
kr>kr
maxについては所望の励起プロファイルのフーリエ変換が0であるので、そのフーリエ変換の周波数スペクトルは制限されている。従って、ナイキスト定理が適用可能であり、関係(9)はそれからの直接的な結果である。
【0080】
式(8)および(9)から、リング軌道の最小個数Nが、指定されたパラメータd(励起プロファイルの直径)およびS
SL(第1側部励起の間隔)の関数として得られる。
【数13】
【0081】
図3は、明確化のために、直径dを有しかつ間隔S
SLにおける側部励起SLを伴う棒状の励起プロファイルEPの1つの断層(従って、1つの横断面)の位置空間画像を示す。位置空間画像は、240mmの直径を有する球形のファントムの画像である。FLASHシーケンスにおいて、従来の励起パルスが、同心のリング軌道を含む本発明による励起軌道を有する2次元選択性のRFパルスによって置き換えられた。リングの個数はN=8に設定され、第1側部リングの間隔が同時に64mmに設定された。これは、
図2に示された軌道に相当し、即ち、
図2および
図3は両フーリエ領域内の励起の関係(
図3における位置空間内での励起プロファイルおよび
図2における付属の励起k空間S
k)も具体的に示す。それゆえ、式(10)に基づいて、d=2・64/8mm=16mmなる中央の励起プロファイルの直径が見込まれた。
図3による測定で求められる寸法はこの計算と良好に一致する。第2側波帯は、128mmの半径つまり256mmの直径を持ち、既に球の外側にある。撮像時に読み出し方向および位相エンコード方向においてそれぞれ256個のピクセルを有する正方形のマトリックスが使用された。
図3における画像作成時における残りのパラメータは、TR=50ms、TE=6.3ms、そしてフリップ角30°、共鳴周波数=123MHzであった。
【0082】
励起プロファイルの直径dおよびサイドローブ間隔S
SLに基づいて、リング軌道の個数Nと、リング軌道n=1〜Nの半径kr
n=n・Δkrとを確定するならば、式(1)および(2)により、各リング軌道について最大傾斜磁場振幅A
nおよびパルス時間T
nを確定することができる。4分の1周期にわたる式(6)の積分によって、半径kr
n=n・Δkrと傾斜磁場振幅A
nの値とn番目のリング軌道の時間T
nとの間で、次の関係が得られる。
【数14】
【0083】
励起パルスの時間を最小にするために、式(11)におけるT
nは、例えば、指定された最大傾斜磁場振幅G
maxおよび指定された最大許容傾斜磁場上昇速度S
max(英語:“slew rate”)が超過されないように短く選定される。最大傾斜磁場振幅G
maxは一般に傾斜磁場システムの性能によって確定されているのに対して、最大許容傾斜磁場上昇速度S
maxを指定する際には、特に傾斜磁場システムの性能と被検者の起こり得る神経系刺激とが考慮される。
【0084】
図4は1つの個々のリング軌道のRF部分パルスRF
nの設計例を示す。ここでは制御ダイアグラムつまりパルスダイアグラムから抜き出された小さな部分の形で図示が行われている。このパルスダイアグラムには、通常のように、時間tに対して上方の時間軸上に高周波パルスが示され、その下にある時間軸上に高周波パルスに協調して印加されるべき傾斜磁場パルスが示されている。ここでは断層内の選択励起にとって重要なxおよびy方向の傾斜磁場パルス(傾斜磁場波形の振幅A
n)GP
x,n,GP
y,nだけが示されている。傾斜磁場の下には、当該傾斜磁場波形によってスピンに作用する蓄積0次モーメント(各傾斜磁場パルスの下にある面積の大きさ)F
1,F
2が、作用方向に応じて異なる符号で記入されている。
【0085】
時間軸の零点はRF部分パルスのRF
nの中心に一致し、x方向の傾斜磁場パルスGP
x,nは式(6)に応じて正弦波状の波形を有し、y方向の傾斜磁場パルスGP
y,nは式(6)に応じて余弦波状の波形を有し、両傾斜磁場パルスはそれぞれ周期T
n(即ち、リング軌道の時間長)を有する。この選択は、一般性の制限なしに任意に行うことができる。時点t=−T
n/2での高周波パルスの印加前に、両傾斜磁場方向においてそれぞれ1つのプリフェージングパルスVP
x,VP
yが示されている。時点t=T
n/2での高周波パルスRF
nの遮断後に、それぞれ1つのリフェージングパルスRP
x,RP
yが印加される。
【0086】
y方向のプリフェージングパルスVP
yは、傾斜磁場が時点t=−T
n/2で瞬時には0からA
0へ立ち上がることができないことから有意義である。従って、そのプリフェージングパルスVP
yは傾斜磁場コイルを流れる電流の立ち上げ(英語:“ramp up”)のために利用される。それに対して、y方向のリフェージング傾斜磁場RP
yは傾斜磁場電流を遮断するのに用いられる。両傾斜磁場パルスVP
y,RP
yの全モーメントは、各RF部分パルスについて、即ち各リング軌道について、0である(−F
2+F
2=0)。それによって、ある1つの前の部分パルス(プリフェージング傾斜磁場)によって、もしくはこの部分パルスまたはある1つの前の部分パルス(リフェージング傾斜磁場)によって横平面へ励起された(静的な)スピンが、これらの傾斜磁場によっていかなる位相も獲得しないことが達成される。
図4に示されている特別な実施形態では、プリフェージングもしくはリフェージング傾斜磁場VP
y、RP
yのために三角形(もしくは台形)波形が選択された。というのは、それにより、与えられた最大振幅G
maxおよび上昇速度(スルーレート)S
maxにおいて傾斜磁場の持続時間を最短にすることができるからである。しかし、ここでは大きな自由度がある。4分の3の正弦波により、例えば傾斜磁場騒音を低減することができるであろう。更に、y方向に流れるスピンに影響を及ぼさないために、1次モーメントも消えるような3つのカーブからなる傾斜磁場波形が選択されるとよい。
【0087】
x方向のプリフェージングパルスVP
xはk空間軌道の中心点を合わせるのに用いられる。x方向のプリフェージングパルスVP
xの0次モーメントF
1は、RF励起中の正弦波傾斜磁場GP
x,nの4分の3周期のもとでの0次モーメントF
1に等しい。x方向のリフェージング傾斜磁場RP
xは、それに等しい絶対面積と逆の符号を持つ。このリフェージング傾斜磁場RP
xはk空間軌道を原点に戻す。(RF照射の有る場合も無い場合も)x方向の傾斜磁場の全モーメントは0である。従って、既に前の部分パルスによって励起された(静的な)スピンは影響を及ぼされないままである。
図4に示されている実施形態では、必要な時間を最小限にするために、ここでも三角形波形が選択された。代替として、例えば台形波形または半正弦波形も可能である。例えば励起前の全てのスピンが縦方向にあるスポイラーグラジエントエコーシーケンスにおいて2次元選択性のRFパルスが励起パルスとして使用される場合には、例えば励起の1番目の部分パルスのためのx方向のプリフェージング傾斜磁場VP
xを省略することができる。というのは、傾斜磁場が縦方向整列を有するスピンに影響を及ぼさないからである。
【0088】
上述のように、個々の部分パルスのそれぞれにおいてb
1振幅は一定である。予め与えられた所望の回転対称の励起プロファイルP(r)の場合に、N個の部分パルスの値b
11,b
12,…,b
1Nの計算は式(7)により行われる。しかし、この式(7)は各部分パルスの相対的なb
1振幅もしくは比例性しか指定しない。しかし、これで十分である。b
1振幅(例えばμTでの)物理的な値は、次のようにして求められる。
【0089】
RF(部分)パルスのバンド幅内にある共鳴周波数を有するスピンの磁化は、そのパルスの終端において、
【数15】
なるフリップ角αだけ平衡位置から傾けられる。ただし、t
0は部分パルスの印加時刻であり、磁気回転比(英語:“gyromagnetic ratio”)γは励起された原子核に関係した物理定数である。プロトンに関しては、その値はγ=2π・42.57MHz/Tである。
【0090】
1つの部分パルスの期間中のb
1振幅は一定であるので、式(13)から、n番目の部分パルスのフリップ角値に対しては、直接的に
【数16】
がもたらされる。
【0091】
b
1nはn番目の部分パルスについて(比例符号の代わりに等号を有する)式(7)により計算される値であり、b
1n’=c・b
1nはn番目の部分パルスの最初は既知でない物理的なb
1振幅である。RFパルスの全持続時間が緩和時間に比べて短い(つまり、スピンがRF照射の期間中に当該範囲内では再び緩和しない)という前提のもとでは、合成されたパルスのフリップ角αはn番目の部分パルスのフリップ角値α
nの合計に等しく、即ち
【数17】
である。iは全ての部分パルスにわたる他の添字変数にすぎず、Nはここでも部分パルスの総数である。
【0092】
式(14)から、
【数18】
に従って、n番目の部分パルスのフリップ角値α
nが得られる。
【0093】
最後の等号は、b
1n’とb
1nとの間の比例定数c(b
1n’=c・b
1n)が部分パルスnに関係しないことから有効である。従って、分母における定数cは合計の前に移動することができ、約分することができる。
【0094】
式(15)の右辺における全ての項の計算は既に説明した。フリップ角α
nから、式(13b)により、n番目の部分パルスのb
1振幅の求められる物理的な値は、次のとおり算出することができる。
【数19】
【0095】
上述のように、部分パルスのb
1振幅は、所望の半径方向のプロファイルの1次元フーリエ変換であり、2つの係数、即ちk空間横速度および密度補償係数により重み付けされている。式(7)における積分は、所望の励起プロファイルに応じて解析的または数値的に算定することができる。実現された実施形態ではガウスの励起プロファイル
【数20】
が選ばれた。上式において、変数aは、所望の直径dにわたって、総面積の90%がその直径dの範囲内においてガウス関数のもとにあるように確定された。
【0096】
第1の重み係数、即ちk空間横速度は、傾斜磁場振幅の値A
nに等しく、
【数21】
である。
【0097】
傾斜磁場振幅の値A
nは、全リング軌道の間一定であり、式(8)〜(11)により、予め与えられたパラメータd,S
SLの関数として指定されている。
【0098】
以下において、第2の重み係数すなわち密度補償係数の算定を、等間隔のリング間隔を有する同心のリング軌道を例として説明する。
【0099】
式(5)によれば、k空間走査点(k
x,k
y)に関連した面積ΔA(k
x,k
y)と、この面積ΔAによって囲まれた軌道の長さΔl(k
x,k
y)とからなる商によって、密度補償係数を概算することができる。あらゆる実用的な実現ではRF振幅がディジタル化されている。M
nをn番目の部分パルスのRF走査点(英語:“samples”)の個数とする。各走査点に関連したn番目の軌道の長さΔl
nは、n番目のリング軌道の直径をその走査点の個数によって割算した値
【数22】
である。
【0100】
個別サンプルに関連した面積ΔAは、
図5(ハッチングされた面積)で理解できるように、まさにこの長さΔl
nに、2つの隣接するリング軌道の間の間隔Δkrを乗算した値
【数23】
である。
【0101】
従って、n番目のリング軌道についての密度補償係数ρ
nは、
【数24】
である。
【0102】
従って、
図2および
図5に示されている例(等間隔のリング間隔)では密度補償係数が全てのリング軌道について同一である。等間隔でないリング間隔の場合(例えば、
図10参照)には、1つのリング軌道について近似的に式(20)および(21)における半径方向のリング間隔Δkrを、隣接する両リング軌道に対する平均の間隔によって置き換えることができる。
【0103】
回転対称の励起プロファイルの中心は、瞬時傾斜磁場モーメントに直線的に比例する位相係数によりb
1磁場を変調することによって、傾斜磁場システムのアイソセンタから距離(δ
x,δ
y)だけずらすことができる。
【数25】
【0104】
b
1nはそのアイソセンタにおける励起のためのn番目の部分パルスの時間依存性のb
1振幅であり、(k
x,n(t),k
y、n(t))はn番目のリングを通過する際の時点tでの波動ベクトルである。これに関してRFパルスは従来技術における公知の2次元選択性のRFパルスとは相違する。
【0105】
2次元選択性のRFパルスがこのような上述の部分パルスの合成によって作成される本発明によるパルス配列の構成に関して、種々の可能性が存在する。
【0106】
最も簡単な実施形態では、部分パルスが簡単に時間的に相前後して照射される。個別パルス間の時間的間隔は原理的に自由に選ぶことができる。前の部分パルスの影響を受けるスピンの避けられないT
1緩和およびT
2緩和のために、また、例えば後の部分パルス照射の期間中におけるB
0不均一性による既に励起されたスピンの信号のディフェージングのために、大部分の場合においてパルス全体のできるだけ短い時間が好まれる。特に、RF照射が行われない時間を最小限にする努力をすることが好ましい。
【0107】
図6は、xおよびy方向の付属の傾斜磁場パルスGP
x,GP
yと一緒に、
図3における画像取得(これに加えて
図2のリング軌道も参照)に使用された本発明による2次元選択性のRFパルスRFEのシミュレーションのパルス配列PAのパルスダイアグラムを示す(
図4の場合と類似するが、しかしここでは完全な2次元選択性のRFパルスRFE)。上方の軸上にはRF部分パルスのb
1振幅が任意単位([a.u.])で示されている。その下にある軸上には傾斜磁場振幅が同様に任意単位([a.u.])で示されている。時間軸の単位はそれぞれμsである。選択性のRFパルスは、8個の部分パルスRF
1,RF
2,RF
3,…,RF
8に分割される。最大k空間半径kr
maxを有する1番目の部分パルスRF
1の持続時間Tは、与えられた最大許容傾斜磁場振幅G
maxおよび与えられた最大許容傾斜磁場上昇速度S
maxの際に可能であるように短く選ばれている。他の部分パルスRF
2,RF
3,…,RF
8の持続時間Tは傾斜磁場による制限をされていない。むしろ、全てのリング軌道TR
1,TR
2,TR
3,…,TR
8の通過時間T(従って、各矩形RFパルスRF
1,RF
2,RF
3,…,RF
8の持続時間T)は、全ての部分パルスについて等しく選ばれた。2次元選択性のスパイラルパルスの場合の専門用語に基づいて、ここでは一定の角速度(英語:“constant angular rate”)による実施形態が述べられた。
【0108】
個々の矩形の部分パルスRF
1,RF
2,RF
3,…,RF
8の(一定の)振幅b
1は上述のようにして算定された。
【0109】
図7は、xおよびy方向の付属の傾斜磁場パルスGP
x’,GP
y’と一緒に、本発明の他の実施例による2次元選択性のRFパルスRFE’を有するパルス配列PA’の対応する(シミュレーションされた)パルスダイアグラムを示す。
図6による実施例に対する主な相違は、ここでは各個別パルスRF
1,RF
2,RF
3,…,RF
8の持続時間T
1,T
2,T
3,…,T
8が個別に、しかも次のように算定されることにある。即ち、それぞれn番目のリング軌道TR
1,TR
2,TR
3,…,TR
8の与えられたk空間半径kr
n=(N−n+1)Δkrにおいて、与えられた最大許容傾斜磁場振幅G
maxおよび最大許容傾斜磁場上昇速度S
maxがまさに超過されないように算定される。ここでも2次元選択性のスパイラルパルスにおける専門用語に基づいて、これは一定の(傾斜磁場)上昇速度による実施形態である(英語:“constant slew rate”)。
【0110】
図6および
図7に示されている両実施形態では、それぞれn番目の部分パルスのリフェージング傾斜磁場がn+1番目の部分パルスのプリフェージング傾斜磁場と統合(合成)されている。2つの傾斜磁場のこのような統合(合成)は、両傾斜磁場を時間的に相前後して印加する代わりに、個別傾斜磁場の0次モーメントの和に等しい0次モーメントを有する1つのみの傾斜磁場(傾斜磁場パルス)を印加することを意味する。統合の目的は主に時間節約である。隣接する傾斜磁場パルスの統合の他の利点は、これによって傾斜磁場騒音、渦電流、傾斜磁場コイルおよび傾斜磁場増幅器の加熱が低減できることにある。
【0111】
図7による実施形態の場合には、RF照射が行われる時間インターバルT
1,T
2,T
3,…,T
8が最適である。これ以上のいかなる短縮も最大許容傾斜磁場上昇速度S
maxまたは最大許容傾斜磁場振幅G
maxの超過を招くことになる。従って、2次元選択性のRFパルスRFE’の全時間もしくは全パルス配列PA’のこれ以上の短縮は、RFパルスがなくリフェージング傾斜磁場およびプリフェージング傾斜磁場が印加されない時間を短縮することによってしか可能でない。
【0112】
これに対して
図8は、xおよびy方向の傾斜磁場パルスGP
x”,GP
y”と一緒に、本発明の他の実施例による2次元選択性のRFパルスRFE”を有するパルス配列PA”の対応する(シミュレーションされた)パルスダイアグラムを示し、この実施例ではRF照射を有するインターバルの間の時間がまたもや低減されている。これは、隣接するリング軌道がk空間において異なる回転方向にて通り抜けられることによって達成される。例えば、奇数のインデックスを有する部分パルスの回転方向が反時計方向にあり、偶数のインデックスを有する部分パルスの回転方向が時計方向にある。
【0113】
この変形実施例の利点を
図9に基づいて明らかにする。
図9は2つの隣接するRF部分パルスRF
n”,RF
n+1”およびy方向の傾斜磁場パルスGP
y”の部分の部分拡大図を示す(
図9に具体的に示された部分パルスRF
n”,RF
n+1”は、例えば
図8において2つの線によって示された期間内にあるパルスRF
3,RF
4に対応するが、しかしその原理は時間的に相前後する全てのその他の部分パルスRF
n”,RF
n+1”に対して正確に当てはまる)。
【0114】
図9において明確に分かるように、時間インターバルT
nと時間インターバルT
n+1との間のy方向傾斜磁場は、2つの三角形傾斜磁場からなる。第1の傾斜磁場は振幅A
nおよびランプ時間RT
nを持ち、第2の傾斜磁場は振幅A
n+1およびランプ時間RT
n+1を持つ。この場合に、
【数26】
が成り立つ。
【0115】
従って、両三角形傾斜磁場の面積の大きさ(即ち、0次傾斜磁場モーメントの大きさ)は等しい。従って、n番目の励起パルス後に横平面内にある(静的)スピンは、これらの傾斜磁場の結果、全く位相を取得しない。n番目のy方向リフェージング傾斜磁場のモーメントおよびn+1番目のy方向プリフェージング傾斜磁場のモーメントはそれぞれ0であるという本来の条件は、隣接するリング軌道がそれぞれ反対に経過する際に、振幅A
nおよびA
n+1の異なる符号のために、統合された傾斜磁場の全モーメント(式(23)参照)が消えるという弱められた条件によって置き換えられる。このことが、この方法変形例の場合における付加的な時間節約の理由である。
【0116】
図10には、(
図2と同様に)k空間S
k内に本発明により形成される送信軌道の他の実施例が示されている。この場合には送信軌道全体が同様にk空間中心の周りの同心のリング軌道からなる。しかし、個々のリング軌道TR
1,TR
2,TR
3,…は、
図1による実施例の場合のように一様な半径方向の間隔をもはや持っていない。その代わりに、リング間隔Δkr
1,Δkr
2,Δkr
3,…はk空間中心に向かって徐々に減少させられる。特に、k空間中心はオーバーサンプリングされ、即ち中心近くではリング間隔が式(8)の右辺によって与えられる値よりも小さく選ばれる。k空間中心のより高密度の走査によって、所望の励起プロファイルP(r)の外側での望ましくない励起が低減されることを期待することができる。k空間中心のより高密度の走査による全パルスの延長を避けるために、k空間周辺部がアンダーサンプリングされ、即ちリング間隔Δkr
1,Δkr
2,Δkr
3,…が式(8)によって要求されるよりも大きく選ばれるとよい。
【0117】
図11には、(
図2と同様に)k空間S
k内に本発明により形成される送信軌道の一実施例が示されている。この場合には、k空間S
kの内部領域(例えば、最大半径kr
maxの半分までの半径領域Δkr
i)における送信軌道だけが、k空間中心の周りの同心のリング軌道から構成される。その代わりに、k空間S
kの周辺半径領域Δkr
aにおいてはスパイラル軌道TR
sが使用される。従来のスパイラル軌道に比べた同心のリング軌道の利点は、既に説明しかつ以下に更に試験に基づいて証明するように、大きなロバスト性、特に傾斜磁場遅れに対する大きなロバスト性にある。しかし、スパイラル軌道の利点はそれの高速性にある。従って、両利点を利用するために、この変形実施例では、先ず1つの部分パルスにより励起k空間の周辺領域が1つの(完全でない)スパイラル軌道で進行させられ、続いてk空間の中心領域が、1つの同心のリング軌道をそれぞれ実現する複数の部分パルスで進行させられる。
【0118】
原理的にはもちろん逆の配置も可能であり、即ち外側に同心の複数のリング軌道を、内側に1つのスパイラル軌道を使用する配置も可能である。しかし、
図11に示されている変形例は、周辺のk空間領域における情報がk空間中心からの情報よりも重要性が低いことから有利である。このことが、図示の他の実施形態(
図2および
図10参照)の場合に何故常にk空間中心を対象とするかの理由でもある。
【0119】
上述のように、1つのリング軌道上に照射される各部分パルスのb
1振幅は一定であり、EPI軌道またはスパイラル軌道を有する公知の2次元選択性のRFパルスの場合とは異なっている。従って、照射されたRFパルスエネルギーと実際に印加された傾斜磁場との間の望ましくない遅れは、完全に部分パルスの始端と完全に部分パルス終端とでエラーを生じるだけである。このことが、傾斜磁場遅れ時間が存在する場合に選択プロファイルの際立ったロバスト性をもたらす。
【0120】
図12〜14は、このロバスト性の実験による検証を示す。このために、それぞれ2次元選択性のFLASHシーケンスにおいて、励起パルスが2次元選択性のRFパルスによって置き換えられた。この2次元選択性のRFパルスは、それぞれ3つの全ての
図12〜14の上段ではEPI軌道を有する従来のパルスであり、下段では本発明による同心のリング軌道を有する合成RFパルスである。
【0121】
中間および右側の列における画像は、それぞれ、照射されるRF磁場が印加される傾斜磁場に比べて付加的に作為的に15μsもしくは45μsだけ遅らされたことよって、左側の列における画像と異なる(遅れ時間はそれぞれDelにて示されている)。測定の際に使用されたファントムは、ファントム液体を充填された球体である。第1側波帯の間隔は全ての場合において128mmであり、従ってファントムの外側にある。
【0122】
所望の励起プロファイルは、それぞれ励起プロファイルの形状を軌道の幾何学的基本構造に適合させて比較可能性を保証するために、EPI軌道を有する全ての励起ではそれぞれ1つの正方形の棒であり、同心のリング軌道を有する全ての励起ではそれぞれ1つの円筒である。本発明による励起におけるリング軌道の個数Nは8であり、それに従って円筒の直径はほぼ32mmである。EPIパルスのパラメータは、正方形の棒の辺長は(少なくとも理論的に)同様に32mmである。
【0123】
読み出し視野(英語:“readout field of view”)は、全てのケースにおいて、それぞれ256mmであり、棒軸もしくは円筒軸に対して垂直に向けられている。画像はシーメンス社のMAGNETOM Verio 3Tで撮像された。
【0124】
図12においては、ファントムがMR装置のアイソセンタにある。
図13および
図14においては、ファントムならびに励起の所望位置がx方向もしくはy方向に50mmだけずらされた。棒軸もしくは円筒軸は、全てのケースにおいて、それぞれ磁石のz方向(従って、B
0磁場の方向)に向いている。
【0125】
3つの全ての実験において、EPI軌道のプロファイルは15μsの遅れ時間の場合に著しく乱れ、45μsの場合に完全に乱れるのに対して、同心のリング軌道のプロファイルは十分に維持されたままである。45μsの場合にやっと軽度のスミアが認識される。
【0126】
中心をはずれた励起(
図13および
図14)の場合には、遅れ時間が、(読み出し視野の中心にある)所望位置に対して軽度の励起ずれを生じさせる。しかし、このエラーは多くの適用例、特にナビゲータ適用例において無害である。というのは、この場合に例えば、呼吸運動を正しく検出するのに、励起されるべき棒状ボリュームを必ずしも肝臓頂点に位置決めしなくてもよいからである。
【0127】
更に、本発明による方法のこの特色は、遅れ時間の調整および/または較正にも有利に使用することができる。例えば、このために作為的に挿入される付加的な遅れ時間を、測定される励起プロファイルが正確に所望位置に存在し、従ってシステムに内在する(最初は既知でない)遅れ時間が正確に補償されるまで変更することも考えられ得る。この較正を一回限りまたは生体内で行う必要があるか否かは遅れ時間の原因に関係する。
【0128】
このための方法についての簡略化されたフローチャートを
図15に概略的に示す。ステップIにおいて、先ず本発明による方法により、正確に規定された励起プロファイルの2次元選択性の励起が行われる。次に、ステップIIにおいて、ステップIで行われたこの測定に基づいて再構成された画像データが操作者に示される。操作者は、励起プロファイルが正確に所望個所に存在するか否かを決定する。励起プロファイルが正確に所望個所に存在しない場合には、操作者はステップIIIにおいて作為的に傾斜磁場遅れ時間を変更する。その際に種々の空間方向に傾斜磁場を変更することができる。次に、ステップIにおいて新たな測定が同一の励起プロファイルにて行われ、そしてステップIIにおいて再び、その際に得られた画像が表示される。操作者がステップIIにおいて結果を満足した場合、磁気共鳴システムが調整され(もしくは値の適切なプロトコル化後に較正が行われ)、その後ステップIVにおいて本来の測定が行われる。操作者による光学的な監視の代わりに、より便利な実施形態においては、画像データの自動解析を行うこともできる。例えば、画像認識ソフトウェアにより画像データ内の励起プロファイルの位置を確定し、それに基づいて、最終的に画像データに従って遅れ時間が補償されるまでステップIIIにおける傾斜磁場遅れ時間の調整等を自動的に行うことができる。
【0129】
最後に更にもう一度指摘しておくに、以上に詳細に説明した方法および装置は実施例であって、請求範囲によって設定されている限りおいて、その基本原理は他の分野においても当業者によって本発明の範囲を逸脱することなく変更可能である。例えば、制御シーケンス決定装置22は、ターミナル上で実現する代わりに、制御装置10自体の一部としても実現することができる。同様に、制御シーケンス決定装置22は、例えばネットワークNWを介して磁気共鳴装置1に接続されている分離したコンピュータシステム上で実現されていてもよい。念のために指摘しておくに、「1つの」(独語の不定冠詞“ein”もしくは“eine”に対応)は、当該特徴が複数存在し得ることを除外するものではない。同様に、「ユニット」および「モジュール」なる用語は、これらが場合によっては空間的に分散され得る複数の構成要素からなることを除外するものではない。