特許第6166240号(P6166240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6166240燃料電池用のセパレーターと燃料電池およびセパレーターの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166240
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】燃料電池用のセパレーターと燃料電池およびセパレーターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0202 20160101AFI20170710BHJP
   H01M 8/0271 20160101ALI20170710BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20170710BHJP
【FI】
   H01M8/02 B
   H01M8/02 S
   H01M8/10
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-230339(P2014-230339)
(22)【出願日】2014年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-95961(P2016-95961A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2016年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】雫 文成
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 研二
(72)【発明者】
【氏名】栗原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】門野 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】板倉 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 公洋
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−220664(JP,A)
【文献】 特開2010−190237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0202
H01M 8/0271
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体に対向して配置される燃料電池用のセパレーターであって、
前記膜電極接合体における中央の発電領域と対向するセパレーター中央領域部と、
該セパレーター中央領域部から外縁に延びる外縁部と、
金型を用いて前記外縁部にゴム成形材料から型成形されるゴム製のゴム成形体と、
該ゴム成形体を前記外縁部に接着するために前記外縁部に形成される接着剤層とを備え、
該接着剤層は、前記外縁部において前記ゴム成形体が型成形される領域を含み該領域より広い接着剤層領域に亘って形成され、
前記ゴム成形体よりも前記セパレーター中央領域部の側の前記外縁部に、前記金型を用いて前記ゴム成形材料から型成形されるゴム製の中央領域部側ゴム成形体を備え、
該中央領域部側ゴム成形体は、
前記ゴム成形体の型成形時に前記金型と前記接着剤層との間から漏れ出る前記ゴム成形材料により、前記外縁部の表面からの前記ゴム成形体の高さより低い高さで型成形されて、前記接着剤層により前記外縁部に接着され、
前記漏れ出た前記ゴム成形材料から形成されるバリにより、前記接着剤層の表面で前記ゴム成形体と繋がっている、
燃料電池用のセパレーター。
【請求項2】
燃料電池であって、
発電単位となる燃料電池セルを複数積層したセルスタックを備え、
前記燃料電池セルは、電解質膜の両膜面に触媒電極層を接合した膜電極接合体に請求項1に記載の燃料電池用のセパレーターを対向して備える、
燃料電池。
【請求項3】
膜電極接合体に対向して配置される燃料電池用のセパレーターの製造方法であって、
前記膜電極接合体における中央の発電領域と対向する前記セパレーターのセパレーター中央領域部から外縁に延びる外縁部に、熱硬化型の接着剤を塗布して接着剤層を形成する工程と、
ゴム製のゴム成形体を型成形するためのキャビティーを有する金型に、前記接着剤層が形成済みのセパレーターをセットする工程と、
前記キャビティーにゴム成形材料を注入して、前記ゴム成形体を型成形する工程と、
前記接着剤層における前記接着剤の熱硬化による接着機能発揮と前記注入済みのゴム成形材料の硬化とを図る工程とを備え、
前記接着剤層を形成する工程では、
前記外縁部において前記ゴム成形体が型成形される領域を含み該領域より広い接着剤層領域に亘って前記接着剤を塗布し、
前記ゴム成形体よりも前記セパレーター中央領域部の側の前記外縁部に、前記金型を用いて前記ゴム成形材料から中央領域部側ゴム成形体を型成形し、
該中央領域部側ゴム成形体を、
前記ゴム成形体の型成形時に前記金型と前記接着剤層との間から漏れ出る前記ゴム成形材料により、前記外縁部の表面からの前記ゴム成形体の高さより低い高さで型成形し、前記接着剤層により前記外縁部に接着し、
前記漏れ出た前記ゴム成形材料から形成されるバリにより、前記接着剤層の表面で前記ゴム成形体に接続する、
セパレーターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用のセパレーターと燃料電池およびセパレーターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、発電単位となる燃料電池セルを複数積層したスタック構造とされ、各燃料電池セルは、セパレーターを備え、このセパレーターにて他のセルと区画されている。セパレーターは、燃料電池セルへの燃料ガス、酸素含有ガスおよび冷却水の給排に関与し、ガス・冷却水のシールのためのガスケットがセパレーターに設けられている。ガスケットは、ゴム状弾性材料の金型成形により形成される。金型成形では、成形用ゴム材料が往々にしてガスケット賦形用のキャビティーから漏れ出てバリが形成されるので、バリに対する何らかの対処が必要となる。こうしたバリ対処の一手法として、成形用ゴム材料の合流部において金型にエアーベント部を設け、このエアーベント部に余剰の成形用ゴム材料を積極的に行き渡らせて、エアーベント部にバリを集約し、このバリを裁断・除去する手法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−146986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した手法では、エアーベント部以外においてバリの形成を抑制できるものの、エアーベント部のバリの裁断の際に、ガスケットに損傷を与えることが危惧される。よって、位置精度の高いバリ裁断機構が必要となったり、慎重なバリ裁断作業が不可欠となり、煩雑であった。こうしたことから、ガスケット等のゴム状弾性材料の型成形品における簡便なバリ対処が要請されるに到った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題の少なくとも一部を達成するために、本発明は、以下の形態として実施することができる。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、燃料電池用のセパレーターが提供される。この燃料電池用のセパレーターは、膜電極接合体に対向して配置される燃料電池用のセパレーターであって、前記膜電極接合体における中央の発電領域と対向するセパレーター中央領域部と、該セパレーター中央領域部から外縁に延びる外縁部と、金型を用いて前記外縁部にゴム成形材料から型成形されるゴム製のゴム成形体と、該ゴム成形体を前記外縁部に接着するために前記外縁部に形成される接着剤層とを備える。そして、該接着剤層は、前記外縁部において前記ゴム成形体が型成形される領域を含み該領域より広い接着剤層領域に亘って形成される。
【0007】
上記形態の燃料電池用のセパレーターは、膜電極接合体の発電領域と対向するセパレーター中央領域部から外縁に延びる外縁部に、接着剤層とゴム成形体とを形成するに当たり、ゴム成形体に先立って接着剤層を形成し、この接着剤層によりゴム成形体を接着する。ゴム成形体は金型を用いてゴム成形材料から型成形されるので、その型成形の際に、金型と接着剤層との間からゴム成形材料が漏れ出て、漏れ出たゴム成形材料からバリがゴム成形体に繋がって薄膜状に形成され得る。バリは、薄膜状であるので、ゴム成形体がもたらす機能、例えば外縁部におけるシール性や流体の整流作用に影響を及ぼさないものの、ゴム成形体から離脱すると、ゴム成形体がもたらす機能に悪影響を及ぼしかねない。ところが、上記形態の燃料電池用のセパレーターは、外縁部においてゴム成形体が型成形される領域を含み該領域より広い接着剤層領域に亘って接着剤層を形成しているので、ゴム成形体に繋がって形成された薄膜状のバリについても、接着剤層で外縁部に接着する。よって、上記形態の燃料電池用のセパレーターによれば、ゴム成形体からのバリの離脱や剥離を起こさないので、バリの裁断が無用となって、バリ裁断に伴うゴム成形体の損傷を回避できる他、バリ対処も簡便となる。
【0008】
(2)上記形態の燃料電池用のセパレーターにおいて、前記ゴム成形体よりも前記セパレーター中央領域部の側の前記外縁部に、前記金型を用いて前記ゴム成形材料から型成形されるゴム製の中央領域部側ゴム成形体を備え、該中央領域部側ゴム成形体は、前記ゴム成形体の型成形時に前記金型と前記接着剤層との間から漏れ出る前記ゴム成形材料により、前記外縁部の表面からの前記ゴム成形体の高さより低い高さで型成形されて、前記接着剤層により前記外縁部に接着され、前記漏れ出た前記ゴム成形材料から形成されるバリにより、前記接着剤層の表面で前記ゴム成形体と繋がっているようにしてもよい。こうすれば、次の利点がある。この形態の燃料電池用のセパレーターは、中央領域部側ゴム成形体を備えるとはいえ、ゴム成形体よりもセパレーター中央領域部の側に離した上で、外縁部の表面からの中央領域部側ゴム成形体の高さをゴム成形体より低くしている。よって、ゴム成形体がもたらすシール性や流体の整流作用といった機能に、大きな影響を及ぼさないようにできる。また、中央領域部側ゴム成形体は、ゴム成形体の型成形時に金型と接着剤層との間から漏れ出るゴム成形材料が金型に溜まって形成されたものとなる。よって、漏れ出たゴム成形材料は、中央領域部側ゴム成形体の形成箇所よりもセパレーター中央領域部の側に行きがたくなるので、中央領域部側ゴム成形体の形成箇所よりもセパレーター中央領域部の側においてバリの発生を抑制でき、セパレーター中央領域部と対向する膜電極接合体の発電領域がバリにより狭くなるような事態を回避できる。このことは、膜電極接合体の発電領域の確保、延いては、燃料電池の発電能力維持に寄与する。この他、中央領域部側ゴム成形体とゴム成形体とを繋ぐバリについても、これを接着剤層により外縁部に接着するので、バリの離脱や剥離を起こさない。
【0009】
(3)本発明の他の形態によれば、セパレーターの製造方法が提供される。このセパレーターの製造方法は、膜電極接合体に対向して配置される燃料電池用のセパレーターの製造方法であって、前記膜電極接合体における中央の発電領域と対向する前記セパレーターのセパレーター中央領域部から外縁に延びる外縁部に、熱硬化型の接着剤を塗布して接着剤層を形成する工程と、ゴム製のゴム成形体を型成形するためのキャビティーを有する金型に、前記接着剤層が形成済みのセパレーターをセットする工程と、前記キャビティーにゴム成形材料を注入して、前記ゴム成形体を型成形する工程と、前記接着剤層における前記接着剤の熱硬化による接着機能発揮と前記注入済みのゴム成形材料の硬化とを図る工程とを備える。そして、前記接着剤層を形成する工程では、前記外縁部において前記ゴム成形体が型成形される領域を含み該領域より広い接着剤層領域に亘って前記接着剤を塗布する。この形態のセパレーターの製造方法では、ゴム成形体に損傷の無いセパレーターを容易に製造できる。
【0010】
(4)本発明の他の形態によれば、燃料電池が提供される。この燃料電池は、発電単位となる燃料電池セルを複数積層したセルスタックを備え、前記燃料電池セルは、電解質膜の両膜面に触媒電極層を接合した膜電極接合体に上記形態の燃料電池用のセパレーターを対向して備える。この形態の燃料電池では、ゴム成形体に損傷の無いセパレーターを有するので、燃料電池としての耐久性の向上や電池寿命の長寿命化を可能とする。また、上記形態の燃料電池によれば、既存の燃料電池においてセパレーターを置き換えればよいので、その製造コストの低減が可能である。
【0011】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池用のセパレーターの製造方法や燃料電池の製造方法、或いは燃料電池用のセパレーターの型成形金型としての形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態としてのセル110を示す平面図である。
図2図1における2−2線に沿って第1のセパレーター20を破断して示す説明図である。
図3図1における3−3線に沿って第1のセパレーター20を破断して示す説明図である。
図4】第1のセパレーター20の製造手順を示すフローチャートである。
図5】接着剤層434の形成領域を示す説明図である。
図6図2に示すガスケットSL1やセンター側ゴム成形体432に対応した金型セットの様子を示す説明図である。
図7図3に示すリブ430やセンター側ゴム成形体432に対応した金型セットの様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。図1は本発明の実施形態としてのセル110を示す平面図、図2図1における2−2線に沿って第1のセパレーター20を破断して示す説明図、図3図1における3−3線に沿って第1のセパレーター20を破断して示す説明図である。燃料電池は、複数のセル110を図1に示されたZ方向に積層したスタック構造を備える。図1に表れているのは、第1のセパレーター20であり、セル110は、この第1のセパレーター20に、紙面奥側に向けて膜電極接合体と第2のセパレーターとを積層して構成される。膜電極接合体は、電解質膜の両膜面に触媒電極層を接合して構成され、その中央を発電領域とする。
【0014】
セル110は、冷却水マニホールド411〜416と、燃料ガスマニホールド511,512と、空気マニホールド611〜622とを備える。冷却水マニホールド411〜413、燃料ガスマニホールド511、及び空気マニホールド611〜616は供給用である。冷却水マニホールド414〜416、燃料ガスマニホールド512、及び空気マニホールド617〜622は、排出用である。
【0015】
図1に示されるように、第1のセパレーター20は、膜電極接合体の中央の発電領域と対向するセパレーター中央領域部20Cと、このセパレーター中央領域部20Cから外縁に延びる外縁部20Gとを備え、セパレーター中央領域部20Cに冷却水流路420を有する。外縁部20Gに形成された冷却水マニホールド411〜413は、冷却水を導き入れて冷却水流路420に冷却水を流し込む。こうして供給された冷却水は、リブ430によって整流され、冷却水流路420を流れて、冷却水マニホールド414〜416から排出される。
【0016】
図1に示すように、第1のセパレーター20は、ガスケットSL1〜SL5を備える。ガスケットSL1〜SL5のそれぞれは、冷却水と燃料ガスと空気とが混合しないように、互いの流路をシールする。ガスケットSL1〜SL5と既述したリブ430は、金型を用いてゴム成形材料から型成形されるゴム製の型成形品である。
【0017】
第1のセパレーター20は、図2および図3に示すように、外縁部20Gのほぼ全領域に接着剤層434を備え、この接着剤層434にて、ガスケットSL1〜SL5とリブ430およびセンター側ゴム成形体432を外縁部20Gに接着する。このセンター側ゴム成形体432にあっても、ガスケットSL1〜SL5やリブ430と同様に、金型を用いてゴム成形材料から型成形される。センター側ゴム成形体432は、ガスケットSL1〜SL5やリブ430よりもセパレーター中央領域部20Cの側に位置して外縁部20Gに形成される。ガスケットSL1〜SL5とリブ430およびセンター側ゴム成形体432は、ガス不透性と弾力性と耐熱性とを有する材料よって形成される。具体的にはゴムやエラストマなど、更に具体的はシリコン系ゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、天然ゴム、フッ素系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、スチレン系エラストマ、フッ素系エラストマなどの何れかを用いる。もちろん、他の材料を採用してもよい。
【0018】
セパレーター中央領域部20Cの側に位置するセンター側ゴム成形体432は、リブ430やガスケットSL1から離れているものの、後述の型成形時に金型と接着剤層434との間から漏れ出るゴム成形材料の到達範囲内に位置する。そして、このセンター側ゴム成形体432は、外縁部20Gの表面からのガスケットSL1やリブ430の高さより低い高さで型成形されて、接着剤層434により外縁部20Gに接着されている。本実施形態では、センター側ゴム成形体432は、ガスケットSL1〜SL5の10〜20%程度の高さとされ、リブ430に対しても30〜40%程度の高さとされている。また、接着剤層434は、センター側ゴム成形体432とガスケットSL1との間に延びるバリ436や、ガスケットSL1とガスケットSL4との間のバリ436、およびリブ430から冷却水マニホールド412に掛けて延びるバリ436についても、外縁部20Gに接着する。また、接着剤層434は、ガスケットSL2やガスケットSL3の周囲に延びるバリ436や、ガスケットSL4〜SL5のセパレーター端部(図1における上端・下端)の側で延びるバリ436についても、外縁部20Gに接着する。センター側ゴム成形体432をも接着する接着剤層434は、外縁部20Gのほぼ全領域に形成されていることから、外縁部20GにおいてガスケットSL1〜SL5とリブ430とセンター側ゴム成形体432が型成形される領域を含み該領域より広い領域に亘って形成される。なお、接着剤層434は、膜電極接合体の発電領域と対向するセパレーター中央領域部20Cには形成されない。
【0019】
次に、第1のセパレーター20の製造手順について説明する。図4は第1のセパレーター20の製造手順を示すフローチャート、図5は接着剤層434の形成領域を示す説明図、図6図2に示すガスケットSL1やセンター側ゴム成形体432に対応した金型セットの様子を示す説明図、図7図3に示すリブ430やセンター側ゴム成形体432に対応した金型セットの様子を示す説明図である。
【0020】
図4に示すように、まず、第1のセパレーター20を準備する(ステップS100)。準備する第1のセパレーター20は、冷却水マニホールド411等のガス・冷却水の給排マニホールドが形成済みであると共に、冷却水流路420についても既に形成済みである。或いは、ステップS100の準備工程において、これら給排マニホールドと冷却水流路420を形成する。
【0021】
次に、準備した第1のセパレーター20に未硬化の接着剤を塗布して接着剤層434を形成する。接着剤塗布には、スプレーやブラシが用いられ、図5に示すように、セパレーター中央領域部20Cから外縁に延びた外縁部20Gの領域に亘って接着剤が塗布され、接着剤層434が形成される。用いる接着剤は、エポキシ樹脂等の熱硬化性の接着剤であり、後述のゴム成形材料の注入後の硬化処理(ステップS130)において硬化して接着機能を発現する。
【0022】
次に、接着剤層434を形成する接着剤が未硬化の状態において、第1のセパレーター20を金型k0にセットする(ステップS120)。図6図7に示すように、金型k0は、ガスケットSL1、SL4を型成形するためのガスケットキャビティーk2〜k3等を備えるほか、センター側ゴム成形体432を型成形するためのキャビティーk1やリブ430を型成形するためのキャビティーk5を備える。そして、第1のセパレーター20は、この金型k0の金型端面が第1のセパレーター20に形成済みの接着剤層434に押し当てられるようにして、セットされる。なお、図6図7には図示されていないが、金型k0は、図1のガスケットSL2、SL3およびガスケットSL5を形成ためのキャビティーも備える。
【0023】
金型へのセットに続き、図6図7のキャビティーk1等に、既述したシリコン系ゴム等のゴム成形材料を注入する(ステップS130)。このゴム注入により、第1のセパレーター20には、詳しくは外縁部20Gには、ガスケットSL1〜SL5のガスケットの他、リブ430とセンター側ゴム成形体432も、未硬化の接着剤層434に重ねて形成される。その後、注入済みのゴム成形材料と未硬化の接着剤のそれぞれが硬化する温度まで金型k0を介して所定の温度を所定の時間保つ硬化処理を施す(ステップS140)。次いで、ゴム成形材料および接着剤の冷却がなされるまで養生して、離型することで(ステップS150)、ガスケットSL1〜SL5のガスケットとリブ430とセンター側ゴム成形体432とを備える図1に示す第1のセパレーター20が得られる。そして、得られた第1のセパレーター20では、ステップS140の硬化処理およびその後の冷却・養生の間において、接着剤層434の接着剤が硬化し、接着剤層434は、ガスケットSL1〜SL5のガスケットとリブ430とセンター側ゴム成形体432とを外縁部20Gに接着する。
【0024】
本実施形態では、ゴム注入に際して、センター側ゴム成形体432を型成形するためのキャビティーk1については、キャビティー全域にゴム成形材料が行き渡らないようにした。つまり、図6図7に示すセンター側ゴム成形体432の形成用のキャビティーk1のキャビティー容積、ガスケットSL1、SL4形成用のガスケットキャビティーk2〜k3のキャビティー容積、金型端面からの溶融ゴム材料の漏出量、ガスケットSL2、SL3およびガスケットSL5を形成ためのガスケットキャビティーのキャビティー容積、金型内の注入経路容積等を考慮して、キャビティーk1が満充填されないように溶融ゴム材料を注入した。金型端面からの溶融ゴム材料の漏出は、金型k0への第1のセパレーター20の押圧圧力を調整することで起きるので、予め押圧圧力と溶融ゴム材料の漏出量と注入圧との関係を把握しておけば良い。そして、金型端面から漏出した溶融ゴム材料は、ステップS140での硬化処理とその後の冷却・養生を経ることで硬化し、バリ436を形成する。本実施形態では、このバリ436についても、接着剤層434にて第1のセパレーター20の外縁部20Gに接着する。
【0025】
以上説明したように、本実施形態のセル110が有する第1のセパレーター20は、膜電極接合体の発電領域と対向するセパレーター中央領域部20Cから外縁に延びる外縁部20Gに、接着剤層434とリブ430、センター側ゴム成形体432およびガスケットSL1〜SL5を備える。そして、接着剤層434とリブ430等のゴム成形体とを形成するに当たり、リブ430とセンター側ゴム成形体432およびガスケットSL1〜SL5に先立って接着剤層434を外縁部20Gに形成し、この接着剤層434により、リブ430とセンター側ゴム成形体432およびガスケットSL1〜SL5を外縁部20Gに接着する。リブ430とセンター側ゴム成形体432およびガスケットSL1〜SL5は金型k0を用いてゴム成形材料から型成形されるので、その型成形の際に、金型k0と接着剤層434との間からゴム成形材料が漏れ出て、漏れ出たゴム成形材料からバリ436がリブ430とセンター側ゴム成形体432およびガスケットSL1〜SL5に繋がって薄膜状に形成され得る。
【0026】
こうして形成されたバリ436は、薄膜状であるので、リブ430がもたらす冷却水の整流作用やガスケットSL1〜SL5がもたらすシール性に影響を及ぼさないものの、リブ430やガスケットSL1〜SL5から離脱すると、上記の整流作用やシール性に悪影響を及ぼしかねない。ところが、本実施形態のセル110の第1のセパレーター20は、外縁部20Gにおいてリブ430とセンター側ゴム成形体432およびガスケットSL1〜SL5が型成形される領域を含み該領域より広い接着剤層領域に亘って接着剤層434(図1図5参照)を形成しているので、リブ430とセンター側ゴム成形体432およびガスケットSL1〜SL5に繋がって形成された薄膜状のバリ436についても、接着剤層434で外縁部20Gに接着する。よって、本実施形態のセル110の第1のセパレーター20によれば、リブ430とセンター側ゴム成形体432およびガスケットSL1〜SL5からのバリ436の離脱や剥離を起こさないので、バリ436の裁断が無用となって、バリ裁断に伴うリブ430やガスケットSL1〜SL5の損傷を回避できる他、バリ対処も簡便となる。
【0027】
本実施形態のセル110の第1のセパレーター20は、リブ430やガスケットSL1〜SL5よりもセパレーター中央領域部20Cの側の外縁部20Gに、金型k0を用いてセンター側ゴム成形体432を形成する。その上で、本実施形態のセル110の第1のセパレーター20は、センター側ゴム成形体432を、リブ430やガスケットSL1〜SL5の型成形時に金型k0と接着剤層434との間から漏れ出るゴム成形材料の到達範囲内に、外縁部20Gの表面からのガスケットSL1〜SL5の高さより低い高さで型成形する。そして、本実施形態のセル110の第1のセパレーター20は、接着剤層434によりセンター側ゴム成形体432を、ガスケットSL1との間のバリ436やリブ430との間のバリ436と共に外縁部20Gに接着し、これらバリ436により、センター側ゴム成形体432を接着剤層434の表面でリブ430やガスケットSL1〜SL5と繋げている。よって、次の利点がある。
【0028】
本実施形態のセル110の第1のセパレーター20は、センター側ゴム成形体432を備えるとはいえ、このセンター側ゴム成形体432を、リブ430やガスケットSL1〜SL5よりもセパレーター中央領域部20Cの側に離した上で、外縁部20Gの表面からのセンター側ゴム成形体432の高さをリブ430やガスケットSL1〜SL5より低くしている。よって、センター側ゴム成形体432を備えても、リブ430やガスケットSL1〜SL5がもたらすシール性や流体の整流作用といった機能に、大きな影響を及ぼさないようにできる。また、センター側ゴム成形体432は、リブ430やガスケットSL1〜SL5の型成形時に金型k0と接着剤層434との間から漏れ出るゴム成形材料の到達範囲内に形成されていることから、漏れ出たゴム成形材料が金型k0のキャビティーk1(図6図7参照)に溜まって形成されたものとなる。よって、漏れ出たゴム成形材料は、センター側ゴム成形体432の形成箇所よりもセパレーター中央領域部20Cの側に行きがたくなるので、センター側ゴム成形体432の形成箇所よりもセパレーター中央領域部20Cの側においてバリ436の発生を抑制でき、セパレーター中央領域部20Cと対向する膜電極接合体の発電領域がバリにより狭くなるような事態を回避できる。こうしたことから、膜電極接合体の発電領域を確保して、燃料電池の発電能力を維持できる。この他、センター側ゴム成形体432とリブ430やガスケットSL1〜SL5とを繋ぐバリ436についても、これを接着剤層434により外縁部20Gに接着するので、バリ436の離脱や剥離を起こさない。
【0029】
本実施形態の第1のセパレーター20では、センター側ゴム成形体432をガスケットSL1〜SL5の10〜20%程度の高さとし、リブ430に対しても30〜40%程度の高さとした。よって、第1のセパレーター20を有するセル110を積層した際に、この第1のセパレーター20のセンター側ゴム成形体432が、隣り合うセル110における他のセパレーター(第2のセパレーター)に接触してしまうことを、確実に回避できる。
【0030】
本実施形態では、発電単位となる燃料電池セルたるセル110を複数積層した上で、それぞれのセル110において、第1のセパレーター20を備える。よって、本実施形態によれば、第1のセパレーター20を組み込むことで、ガスケットSL1〜SL5やリブ430に損傷が無いようにできるので、燃料電池としての耐久性の向上や電池寿命の長寿命化を可能とする。また、本実施形態によれば、既存の燃料電池におけるセパレーターを第1のセパレーター20に置き換えればよいので、その製造コストを低減できる。
【0031】
本実施形態では、第1のセパレーター20の外縁部20Gにおいて、ガスケットSL1等の型成形に先立って接着剤層434を形成し、この接着剤層434の接着剤が未硬化の内に、ガスケットSL1等を金型k0にて型成形する。その上で、接着剤層434の接着剤塗布領域を、ガスケットSL1等が型成形される領域を含み該領域より広い領域とする。よって、本実施形態のセパレーター製造方法によれば、ガスケットSL1等に損傷の無い第1のセパレーター20を容易に製造できる。
【0032】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、或いは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
20…第1のセパレーター
20C…セパレーター中央領域部
20G…外縁部
110…セル
411〜416…冷却水マニホールド
420…冷却水流路
430…リブ
432…センター側ゴム成形体
434…接着剤層
436…バリ
511〜512…燃料ガスマニホールド
611〜622…空気マニホールド
k0…金型
k1〜k5…キャビティー
SL1〜SL5…ガスケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7