【実施例】
【0117】
実施例1
プロアントシアニジンポリマーのモノマーユニットの構造決定
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)によってプロアントシアニジンのモノマーユニットの構造を検出した。本検出方法では、固体の精製プロアントシアニジン(本発明者が精製した試料)を熱分解ガスクロマトグラフィーの中へ直接注入し、徐々に分解温度(50℃〜500℃)まで温めるか、または即座に単一温度の操作モードで温める。プロアントシアニジンポリマーのモノマーユニット構造は、質量分析法の検出により得られるスペクトルによって決定した。プロアントシアニジンポリマーのマススペクトルおよび構造解析を
図2aおよび
図2b〜
図2eに示す。
図2b〜
図2eの左部分は、
図2aのピークによって表されるm/z値と化学構造を示し、
図2b〜
図2eの右部分は、左部分のピークのモノマーユニット解析結果を示す。決定されたプロアントシアニジンポリマーのモノマーユニット構造の化学式は、以下の通りである。
【0118】
【化10】
【0119】
式中、R
1がOCH
3のとき、R
2はOHでR
3はHであり、R
1がOHのとき、R
2はHでR
3はHであるか、R
1がOHのとき、R
2はOHでR
3はHであるか、またはR
1がOHのとき、R
2はOHでR
3はOHである。
【0120】
測定した熱分解質量分析では、グリコシドシグナルのピークを示した。それゆえ、R
4は3−(α)−OH、3−(β)−OH、3−(α)−O−糖または3−(β)−O−糖と推定される。
【0121】
赤外吸収スペクトル解析
精製されたプロアントシアニジンの試料および塩化カリウムを混合し、錠剤にして送信赤外光によって検出した。この結果を
図3に示す。その中で、強い吸収ピークは3412.38nm、1610.57nm、1521.40nm、1441.14nm、1284.86および1100.88nmである。
【0122】
高速液体クロマトグラフィー質量分析法のスペクトル分析
精製されたプロアントシアニジンの試料を高速液体クロマトグラフィー質量分析法(エレクトロスプレイ(+/−)質量分析法 HPLC/ESI+、HPLC/ESI−)(Micromass Quattro/Waters 2690)で分析した。モノマーユニットおよび重合度が1〜6のポリマー並びに164グリコシド(例えば、モノマーユニットの分子量とグリコシドの分子量164)を検出した。精製されたプロアントシアニジンの高速液体クロマトグラフィー質量分析法(+/−)による質量分析結果を
図4aおよび
図4bに示す。
【0123】
13C−NMRと
1H−NMRのスペクトル分析
精製プロアントシアニジン試料を
13C−NMRおよび
1H−NMRにより分析した。
13C−NMRの分析結果を
図5a〜
図5cに示す。142〜145.7ppmに2重項−2重項のピークが現れているのに加えて他のピークは存在しない。この結果は、モノマーユニットがデルフィニジン(例えばそのB環に3つのOH基を有する)を除くアントシアニジンを有することを示す。この解析結果は、EGA/MSの結果と同様であった。
図5b中、R
1=HまたはOH、R
2=HまたはOHまたはOCH
3である。
【0124】
本発明において、
13C−NMRと
1H−NMRのスペクトル解析の結果、精製されたプロアントシアニジンポリマーのモノマーユニットは互いに主にC4−C8結合を介して結合している。C4−C8結合とC4−C6結合を
図6aと
図6bにそれぞれ示す。
【0125】
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析法のスペクトル分析
部分的に精製されたプロアントシアニジンの分子量分布をマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析法により分析した。この結果を
図7a〜
図7cに示す。この分析結果は部分的に精製されたプロアントシアニジンの分子量分布が500〜5,000であることを示す。分子量分布の分析結果では、ポリマーの重合度は2〜18であると推定される。
【0126】
実施例2
(1)プロアントシアニジン含有抽出物の調製
ナンバンカラムシ薬用材料の根に繋がる茎と根を水で洗浄し、自然環境の中で乾燥させた。乾燥させた薬用材料を約5mmの厚さにスライスし、4℃で保管した。保管したナンバンカラムシ薬用材料をすり棒ですり潰し、20メッシュのふるいに通した。得られた粉末を95%エタノール(10倍重量)(1:10、w/w)中に分散し、2時間加熱還流した(2回行った)。室温に冷却した後、抽出溶液を集めた。この抽出溶液を遠心分離機によって遠心分離し、ろ過した。ろ過溶液は40℃以下の温度で減圧濃縮機によって濃縮し、凍結乾燥機によって乾燥しプロアントシアニジン含有抽出物を得た。
【0127】
実施例3
(2)プロアントシアニジン含有抽出物の調製
乾燥させて4℃で保管した実施例2の薬用材料を、すり棒ですり潰し、20メッシュのふるいを通した。得られた粉末を、逆浸透水(10倍重量)(1:10、w/w)中で分散させ、2時間加熱還流した(2回行った)。室温に冷却した後、抽出物溶液を集めた。50%〜95%エタノールを抽出溶液に加えて冷却し、沈殿させた。上澄みは遠心分離機によって遠心分離し、濾過した。ろ過溶液を40℃以下の温度で減圧濃縮機によって濃縮し、凍結乾燥機によって乾燥させてプロアントシアニジン含有抽出物を得た。
【0128】
実施例4
(1)プロアントシアニジン含有抽出物の精製
実施例2または3のプロアントシアニジン含有抽出物をn−ヘキサン(1:10、w/v)に加え、6時間加熱還流(ソックスレー抽出器を使用)し、抽出物中の脂質を取り除いた。得られた固体を70%メタノール溶液および/または0.3%ビタミンC水溶液に溶解し、40℃以下の温度で減圧濃縮機により濃縮し、溶媒を取り除いた。濃縮物をトリクロロメタンに加え(トリクロロメタン:濃縮物=1:1、v/v)、オシレーターを用いて30分間振動させた(抽出を複数回行った)。酢酸エチルを液相に加え(酢酸エチル:液相=1:1、v/v)、30分間振動させた(抽出を複数回行った)。次にこの液相を40℃以下の温度で減圧濃縮機を用いて濃縮した後、凍結乾燥機により乾燥させ部分的に精製されたプロアントシアニジンを得た。
【0129】
実施例5
(2)プロアントシアニジン含有抽出物の精製
実施例2または3のプロアントシアニジン含有抽出物を水/エタノール(1:10、w/v)に溶解した。次に、n−ヘキサンを加え(1:10、v/v)、抽出物中の脂質を取り除くために30分間オシレーターを用いて振動させた(抽出を複数回行った)。酢酸エチルを液相に加え(酢酸エチル:液相=1:1、v/v)、30分間振動させた(抽出を複数回行った)。この液相をn−ブタノールに加え(1:10、v/v)、オシレーターを用いて30分間振動させた(抽出を複数回行った)。液相を40℃以下の温度で減圧濃縮機によって濃縮し、凍結乾燥機を用いて乾燥させ、部分的に精製されたプロアントシアニジンを得た。
【0130】
実施例6
(3)プロアントシアニジン含有抽出物の精製
実施例4で得た部分的に精製されたプロアントシアニジンをモレキュラーシーブカラムクロマトグラフィー(ゲル透過クロマトグラフィーカラム、セファデックスLH−20、4cm直径×45cm長さ)を用いて再精製した。先ず不純物を取り除くために、様々な極性の溶液を用いて、溶出を行った。次に、部分的に精製されたプロアントシアニジン2.5gを0.5mL 95%エタノールに溶解した。溶解した試料をモレキュラーシーブカラムに注入し、引き続き一連の溶媒(溶離液)を用いて溶出した。様々な溶媒(溶離液)を通して溶出した溶出液を集めた。溶離液は順に300mL 95%エタノール、300mL 95%エタノール/メタノール(1/1、v/v)、300mLメタノール、300mLの50%メタノール水溶液と300mLの50%アセトン水溶液である。300mLの95%エタノール溶離液を通して溶出した溶出液を除いて、他の溶出した溶出液は減圧濃縮機により40℃以下の温度で濃縮した後、凍結乾燥機で乾燥して、部分的に精製されたまたは完全精製されたプロアントシアニジンを得た。乾燥物は−20℃で保管した。
【0131】
実施例7
肝臓がん誘発B型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウスの生存率に対する薬物(BEL−X)の効果
実験動物:実験に用いた動物の親の出所(parental provenance)はBBRC
12006に公開された雄のB型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウス(C57BL/6J−HBx(A0112系))である。
【0132】
実験のグルーピングおよび実験デザイン:マウスを、非遺伝子導入マウス(Non−Tg 模擬 9−20M)の1つの対照群;非遺伝子導入マウス(Non−Tg BEL−X処理 9−20M)の1つの薬物対照群;遺伝子導入マウス(Tg 模擬 9−20M)の1つの対照群;および遺伝子導入マウス(Tg BEL−X処理)の3つの薬物試験群;を含む6群に分け、BEL−X(本発明の医薬組成物)をそれぞれ9〜20月齢(Tg BEL−X処理 9−20M)、12〜20月齢(Tg BEL−X処理 12−20M)および15〜20月齢(Tg BEL−X処理 15−20M)のマウスに1日1回経口投与した。非遺伝子導入マウス(Non−Tg 模擬 9−20M)の対照群、および遺伝子導入マウス(Tg 模擬 9−20M)の対照群では、9〜20月齢のマウスに飲用水を1日1回経口投与した。非遺伝子導入マウス(Non−Tg BEL−X処理 9−20M)の薬物対照群では、9〜20月齢のマウスにBEL−X薬物を1日1回経口投与した。BEL−X薬物の量は1,000mg/kg/日である。
【0133】
結論:
1.
図8に示す通り、20月齢で雄の肝臓がん誘発B型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウスの100%に肝臓がんが生じ、生存率はおよそ64%(Tg 模擬 9−20M)であった。様々な月齢のBEL−X薬物投与マウスの生存率は、それぞれ70%(9−20月齢、Tg BEL−X処理 9−20M)、100%(12−20月齢、Tg BEL−X 処理 12−20M)および58%(15−20月齢、Tg BEL−X処理 15−20M)であった。
【0134】
2.カイ二乗統計量分析によれば、BEL−X薬物投与した雄の12〜20月齢のB型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウスの生存率は、驚くべきことに20月齢で100%であった。
【0135】
3.初期段階においてBEL−X薬物を雄のB型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウスに投与することにより生存率を改善することができる。
【0136】
実施例8
B型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウスにおけるHCCの遅延に対するBEL−X薬物の効果
実験動物:実験に用いた動物の親の出所はBBRC
12006に公開された雄のB型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウス(C57BL/6J−HBx(A0112系))である。
【0137】
実験のグルーピングおよび実験デザイン:マウスを、非遺伝子導入マウス(Non−Tg 模擬 9−20M)の1つの対照群;非遺伝子導入マウス(Non−Tg BEL−X処理 9−20M)の1つの薬物対照群;遺伝子導入マウス(Tg 模擬 9−20M)の1つの対照群;および遺伝子導入マウス(Tg BEL−X処理)の3つの薬物試験群;を含む6群に分け、BEL−X(本発明の医薬組成物)をそれぞれ9〜20月齢(Tg BEL−X処理 9−20M)、12〜20月齢(Tg BEL−X処理 12−20M)および15〜20月齢(Tg BEL−X処理 15−20M)のマウスに1日1回経口投与した。非遺伝子導入マウス(Non−Tg 模擬 9−20M)の対照群、および遺伝子導入マウス(Tg 模擬 9−20M)の対照群では、9〜20月齢のマウスに飲用水を1日1回経口投与した。非遺伝子導入マウス(Non−Tg 模擬 9−20M)の対照群、および遺伝子導入マウス(Tg 模擬 9−20M)の1つの対照群では、9〜20月齢のマウスに飲用水を1日1回経口投与した。非遺伝子導入マウス(Non−Tg BEL−X処理 9−20M)の薬物対照群では、9〜20月齢のマウスにBEL−X薬物を1日1回経口投与した。BEL−X薬物の量は1,000mg/kg/日である。
【0138】
肝臓重量と体重の比率の決定:肝臓(肝臓がんを含む)のサンプリングのために実験動物を屠殺し、解剖した。測定した肝臓重量をマウスの体重で除して、肝臓重量と体重の比率を得た。
【0139】
結論:
1.
図9に示す通り、通常の非遺伝子導入マウス(Non−Tg 模擬)の肝臓重量と体重の比率は約5%であった。雄のB型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウス(Tg 模擬)の肝臓重量と体重の比率は、20月齢で肝臓がんが発生したため約13%まで増加した。ANOVA統計分析では、遺伝子組み換えマウスと通常の非遺伝子組み換えマウスの肝臓重量と体重の比率の差は有意であった。
【0140】
2.通常の非遺伝子導入マウスにBEL−Xを1年間投与(9−20月齢、Non−Tg BEL−X処理 9−20M)した後では、肝臓重量と体重の比率は薬物非投与群と同様に5%であった。この結果より、この薬物は通常の動物に対しては何の影響も無いことを示す。
【0141】
3.様々な月齢の雄のB型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウスにBEL−X薬物を投与した結果、肝臓重量と体重の比率は3つの群で約8%まで低下した。薬物投与群の雄の9〜20月齢(Tg BEL−X処理 9−20M)のマウス、および12〜20月齢(Tg BEL−X処理 12−20M)のマウス、および薬物非投与群(Tg 模擬 9−20M)との肝臓重量と体重の比率差は統計的に有意であった。
【0142】
実施例9
(1)HCC誘発B型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウスの肝機能に対する薬物(BEL−X)の影響
【0143】
実験動物:実験に用いた動物の親の出所(parental provenance)はBBRC
12006に公開された雄のB型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウス(C57BL/6J−HBx(A0112系))である。
【0144】
実験のグルーピングおよび実験デザイン:マウスを、非遺伝子導入マウス(Non−Tg 模擬 9−18M)の1つの対照群;非遺伝子導入マウス(Non−Tg BEL−X処理 9−18M)の1つの薬物対照群;遺伝子導入マウス(Tg 模擬 9−18M)の1つの対照群;および遺伝子導入マウス(Tg BEL−X処理)の3つの薬物試験群;を含む6群に分け、BEL−X(本発明の医薬組成物)をそれぞれ9〜18月齢(Tg BEL−X処理 9−18M)、12〜18月齢(Tg BEL−X処理 12−18M)および15〜18月齢(Tg BEL−X処理 15−18M)のマウスに1日1回経口投与した。非遺伝子導入マウス(Non−Tg 模擬 9−18M)の対照群、および遺伝子導入マウス(Tg 模擬 9−18M)の対照群では、9〜18月齢のマウスに飲用水を1日1回経口投与した。非遺伝子導入マウス(Non−Tg BEL−X処理 9−18M)の薬物対照群では、9〜18月齢のマウスにBEL−X薬物を1日1回経口投与した。BEL−X薬物の量は1,000mg/kg/日である。
【0145】
肝機能ICGの検出:マウスにインドシアニン・グリーン(ICG)を静脈注射した。10分後に血中の残存ICGの濃度(mg/dL)を検出し、肝機能の指標とした。12〜18月齢のマウスで、この実験をそれぞれ2回行った。
【0146】
結論:
1.表1に示す通り、18月齢(Non−Tg 模擬 9−18M)の正常な非遺伝子導入マウスのICG代謝値は、2.25±0.89mg/dLであった。この結果と、18月齢(Non−Tg BEL−X処理 9−18M)のBEL−X投与群との間に有意差はなかった。
【0147】
2.18月齢での雄のB型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウス(Tg 模擬 9−18M)のICG代謝は肝臓がん発生のため低下し、値は4.46±1.17mg/dLまで上昇した。ノンパラメトリック統計分析では、遺伝子導入マウスと正常な非遺伝子導入マウスのICG代謝に有意差があった。
【0148】
3.各月齢の3群の雄のB型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウスにBEL−X薬物を投与した結果、3群のICG代謝値は非薬物投与群(Tg 模擬 9−18M)より下回った。9月齢からのBEL−X薬投与群(Tg BEL−X処理 9−18M)と非薬物投与群(Tg 模擬 9−18M)のICG代謝値には統計的な有意差があった。この結果は、BEL−XはHCC動物の肝機能を改善できることを示す。
【0149】
【表1】
【0150】
実施例10
(2)HCC誘発B型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウスの肝機能に対する薬物(BEL−X)の効果
【0151】
実験動物:実験に用いた動物の親の出所(parental provenance)はBBRC
12006に公開された雄のB型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウス(C57BL/6J−HBx(A0112系))である。
【0152】
実験のグルーピングおよび実験デザイン:マウスを、非遺伝子導入マウス(Non−Tg 模擬 9−20M)の1つの対照群;非遺伝子導入マウス(Non−Tg BEL−X処理 9−20M)の1つの薬物対照群;遺伝子導入マウス(Tg 模擬 9−20M)の1つの対照群;および遺伝子導入マウス(Tg BEL−X処理)の3つの薬物試験群;を含む6群に分け、BEL−X(本発明の医薬組成物)をそれぞれ9〜20月齢(Tg BEL−X処理 9−20M)、12〜20月齢(Tg BEL−X処理 12−20M)および15〜20月齢(Tg BEL−X処理 15−20M)のマウスに1日1回経口投与した。非遺伝子導入マウス(Non−Tg 模擬 9−20M)の対照群、および遺伝子導入マウス(Tg 模擬 9−20M)の対照群では、9〜20月齢のマウスに飲用水を1日1回経口投与した。非遺伝子導入マウス(Non−Tg BEL−X処理 9−20M)の薬物対照群では、9〜20月齢のマウスにBEL−X薬物を1日1回経口投与した。BEL−X薬物の量は1,000mg/kg/日である。
【0153】
肝機能の検出−アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST):全てのマウスは月に一度定期的に採血(顎または心臓から)を行った。全血は室温で30分以上エッペンドルフの中で静置した。血液凝固の後、血液試料を1,800xgで10分間遠心分離した。遠心分離後、血清をエッペンドルフチューブに移し、実験日まで−20℃で保管した。血清中のALTおよびASTの値は、液体血清生化学分析装置(日立社製 7080)によって決定した。肝臓障害と雄のB型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウスの月齢との間には相関関係があるため、各群の9〜20月齢のマウスについて測定した肝機能指標(ALTとAST)を、9月齢から、包括的に3月毎分析した。
【0154】
結論:
1.
図10および
図11に示す通り、正常な非遺伝子導入マウス(Non−Tg 模擬 9−20M)とB型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウス(Tg 模擬 9−20M)における、ALTとASTの相違は12月齢から生じた。BEL−X(Non−Tg BEL−X処理 9−20M)を投与した正常な非遺伝子導入マウス群と非投与群(Non−Tg 模擬 9−20M)との間の肝機能指標に有意差はなかった。
【0155】
2.様々な月齢のB型肝炎ウィルスX遺伝子導入マウスにBEL−X薬物を投与した結果、3つの群のALTとASTは非薬物投与群(Tg 模擬 9−18M)よりも低くなった。薬物投与群の9〜20月齢(Tg BEL−X処理 9−20M)、12〜20月齢(Tg BEL−X処理 12−20M)および非薬物投与群(Tg 模擬 9−20M)間のALTとASTの統計的な有意差はなかった。この結果は、BEL−XがHCC動物の肝機能を有効に改善できることを示す。
【0156】
実施例11
(1)化学物質DENによって引き起こされるラットの肝線維症に対する薬物(BEL−X)の効果
実験のグルーピングおよび実験デザイン:肝線維症と肝臓がんを誘発するために、8週齢のウィスター系ラットにジエチルニトロソアミン(DEN)(100ppm、水中添加)を6週間(D6群)および9週間(D9群)投与した。他の2群では、ラットにDENとBEL−X薬物(1000mg/kg体重)(餌に加え、6週間(D6H6群)と9週間(D9H9群)の間毎日給餌)を同時に与えた。ラットの肝臓がんの程度を様々な時点で分析した。対照群は全過程において、いずれの薬も投与しなかった。各実験群はラット10匹からなる。病理学的切片と染色の後、ヒドロキシプロリンの生化学分析によるアシストにより、肝線維症/肝臓がんの程度を判断した。肝臓のヒドロキシプロリン含有量の上昇を肝線維症の指標として用いた。ヒドロキシプロリン含有量を決定するために、各群のラットの肝臓を、様々な時点で集めた。次に、肝臓を薄片にし、α−SMA免疫染色分析を行った。α平滑筋アクチン(α−SMA)含有量の上昇も肝線維症の別の指標として用いた。9週目には、各群のマウスの肝臓を集め、α−SMA免疫染色を行った。肝細胞を、顕微鏡を使用して観察し、標識物を含む細胞の合計を計算した。
【0157】
結論:
1.
図12に示す通り、DENを連続して9週間投与した群(D9群)では、肝臓のヒドロキシプロリン含有量が有意に増加した。この結果は、DENが肝線維症を誘発したことを示す。しかし、BEL−Xを連続して給餌した実験群(D9H9群)では、ヒドロキシプロリン含有量が有意に減少した。この結果は、BEL−Xが化学物質DENによって誘発される肝線維症を予防したことを示す。
【0158】
2.
図13に示す通り、DENを連続して9週間投与した群(D9群)では、肝臓内のα平滑筋アクチン(α−SMA)含有量は有意に増加した。この結果は、DENが肝線維症を誘発したことを示す。しかし、BEL−Xを連続して投与した実験群(D9H9群)では、α平滑筋アクチン(α−SMA)含有量が有意に低下した。この結果は、BEL−Xが化学物質DENによって引き起こされる肝線維症を予防したことを示す。
【0159】
3.α平滑筋アクチン(α−SMA)含有量は、6週間投与した実験群(D6H6群)では有意に減少した。この結果は、BEL−Xは化学物質DENの誘発による初期段階の肝線維症を予防したことを示す。
【0160】
実施例12
(2)化学物質DENによって誘発されるラットの肝線維症に対する薬物(BEL−X)の効果
実験のグルーピングおよび実験デザイン:肝線維症と肝臓がんを誘発するためにジエチルニトロソアミン(DEN)(100ppm、水中添加)を8週齢のウィスター系ラットに投与した。他の3群では、ラットにDENとBEL−X薬物(1000mg/kg体重)を同時に投与した。3〜6週(DEN−BEL−X 3−6)、6〜9週(DEN−BEL−X 6−9)および9〜12週(DEN−BEL−X 9−12)の3つの異なる群それぞれにBEL−Xを投与した。ラットの肝臓がんの程度を適切な時点で分析した。対照群(DEN)では、DEN投与の全過程において薬物を投与しなかった。各実験群は、ラット10匹からなる。肝線維症/肝臓がんの程度は、ヒドロキシプロリンの生化学分析によるアシストにより、視覚的方法により判断した。肝臓のヒドロキシプロリン含有量の上昇を肝線維症の指標として用いた。ヒドロキシプロリン含有量を決定するために各群のラットの肝臓を、12週目に集めた。
【0161】
結論:
1.
図14に示す通り、DENを連続して9週間投与した非処理群(DEN)では、肝臓内のヒドロキシプロリン含有量は有意に増加した。この結果は、DENが肝線維症を誘発したことを示す。これに対して、BEL−X群(DEN−BEL−X 3−6とDEN−BEL−X 6−9)への投与初期段階ではヒドロキシプロリン含有量が有意に減少した。この結果は、BEL−Xが化学物質DENによって誘発される肝線維症を回復させたことを示す。
【0162】
実施例13
化学物質DENによって誘発される肝線維症のラットの生存率に対する薬物(BEL−X)の効果
実験のグルーピングおよび実験デザイン:8週齢ウィスター系ラットにジエチルニトロソアミン(DEN)(50ppm、水中添加)を10.5週間投与し、肝線維症と肝臓がん(B群)を誘発した。DENとBEL−X薬物(1000mg/kg体重)(餌に加え、それぞれ0〜10.5週(C群)、3〜10.5週(D群)、および6〜10.5週(E群)の間毎日給餌)を同時に与えた。DENの投与を止めて3週間後にBEL−Xを給餌した(F群)。ラットの肝臓がんの程度を適切な時点で分析した。対照群(A群)では、全過程において薬を投与しなかった。実験の間、死亡した動物を記録した。ノンパラメトリック統計により各群の生存率を分析した。
【0163】
結論:
1.
図15に示すように、各群の13.5週目(94日目)の生存率を分析した結果、DENのみ投与したB群において、生存率はわずか40%程度であった。これに対して、様々な時期にBEL−Xを投与したものの生存率は80%を超えていた。この結果は、BEL−Xが肝線維症と肝臓がんを発症したラットの生存率を効果的に改善したことを示す。
【0164】
2.
図16に示す通り、DEN(F群)によって肝臓がんを誘発した後、BEL−X薬物を3週間投与したラットの15週目(104日目)の生存率を分析した結果、ラットの生存率は、BEL−X投与の期間(74〜94日目)において100%であった。更にBEL−X薬物の投与の中止後5日間(95〜99日目)の死亡はみられなかった。15週目(104日目)の生存率は62%であり、DENのみを投与したB群の13.5週目(94日目)の生存率40%より高かった。この結果は、BEL−Xが、肝硬変と肝臓がんを有するラットの生存時間を効果的に延長でき、同時に生存率も改善できることを示す。
【0165】
実施例14
(1)DEN障害を受けた肝臓について肝切除後の再生に対する薬物(BEL−X)の効果
実験のグルーピングおよび実験デザイン:8週齢ウィスター系ラットにジエチルニトロソアミン(DEN)(100ppm、水中添加)を9週間投与し、肝線維症と肝臓がん(非薬物投与群)を誘発させた。処理ラットには6〜9週間、BEL−X薬物を同時に給餌した(高用量BEL−X群(1000mg/kg体重)と低用量BEL−X群(250mg/kg体重)に分類される)。薬物の投与完了後、9週目に肝葉の50%を切除した。2日後に、肝臓試料を集めて薄片化し、HE染色を行った。次に肝再生の根拠として、肝細胞の有糸分裂を顕微鏡で観察した。肝細胞の有糸分裂を以下のようにして計算した。各ラットから少なくとも3つの薄片を得た。各薄片は10の領域を含む。有糸分裂細胞の数を400X拡大顕微鏡で数えた。最後に、各群のラットの有糸分裂細胞の数の平均値を得た。
【0166】
結論:
1.表2に示す通り、化学物質DENによって肝線維症と肝臓がんを誘発した後、肝切除を行った結果、非薬物投与群のラットの肝臓の有糸分裂数(7.6±4.6)は、高用量または低用量のBEL−X薬物を3週間同時に投与したラットの肝臓の有糸分裂数(12±5.5または13.0±5.6)よりはるかに低かった。この結果は、化学物質DENの障害を受けた肝臓の肝再生を効果的に改善できることを示す。
【0167】
【表2】
【0168】
実施例15
(2)DEN障害を受けた肝臓について、肝切除後の再生に対する薬物(BEL−X)の効果
実験のグルーピングおよび実験デザイン:肝線維症と肝硬変(DEN群)を誘発するために、ジエチルニトロソアミン(DEN)(100ppm、水中添加)を8週齢ウィスター系ラットに9週間投与した。処理ラットにはBEL−X薬物(1000mg/kg体重)を6〜9週の間(BEL−X群)同時に投与した。対照群はDENとBEL−Xの非投与ラットである。薬物の投与完了後、核磁気共鳴画像法試験を行ない、9週目に肝葉の30%を切除した。DENとBEL−Xの非投与対照群で、同じ手術を行った。2週後に、第2回目の核磁気共鳴画像法試験を行い、ラットを屠殺した。実験の間、死亡した動物を記録した。手術後、各群のラットの摂餌時間および摂取量を観察した。各群のラットの生存率を計算した。
【0169】
結論:
1.
図17に示す通り、肝体積の再生率を判断した。対照群では、正常肝臓を有するラットの合計肝再生体積は、切除体積の92±11%であった。DEN群(肝硬変群)では、ラットの合計肝再生体積は切除体積の32±7%であった。BEL−X群(処理群)では、ラットの合計肝再生体積は切除体積の79±6%であった。BEL−X群(処理群)の肝再生の程度は、DEN群(肝硬変群)より有意に増加した。これに対して、対照群のものとは統計的差異はなかった。
【0170】
2.以下の表3に示すとおり、肝硬変ラットの肝切除後の摂餌時間(27時間)は対照群の摂餌時間(11時間)より有意に長かった。しかし、BEL−X群では、肝切除後の摂餌時間(16時間)は、DEN群(肝硬変群)よりも有意に短かった。更に、DEN群(肝硬変群)の摂餌量(42%)は対照群の摂餌量(91%)より低かった。BEL−X群の摂餌量(83%)は、DEN群(肝硬変群)の摂餌量より有意に高く、対照群と類似している。この結果は、BEL−X薬物は肝切除後のラットの肝硬変に対して良好な効果を及ぼしており、摂餌量が増加して摂餌時間を低下させることを示す。
【0171】
3.更に、肝硬変ラットの生存率は55%であった。しかし、BEL−Xを肝硬変ラットに投与すると、対照群と同様に生存率が100%に達した。この結果は、BEL−X薬物が生存率を確実に増加させることを示す。
【0172】
【表3】
【0173】
当業者には明らかであるように、本発明の実施態様には様々な改変と修正を行うことができる。明細書およびと実施例は例示として考慮されるに過ぎず、真の発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその均等な物で示される記載の範囲であることを意図している。