(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
ところで、医療用針の使用においては、医療用針の胴体部(特許第3134920号公報では、保持筒)を指で摘み、針体を患者の皮膚に穿刺する。この場合、医療用針の胴体部が適度に細径であると、使用者が胴体部を摘み易いことから針先を安定させ易く、硬い血管や細い血管を正確に穿刺し易い。
【0005】
しかしながら、上述した特許第3134920号公報に開示された翼付留置針は、使用時の状態で、ハブの先端が保持筒の先端の位置まで挿入される構造であるため、胴体部である保持筒を細く構成することが困難である。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、胴体部を細くすることにより操作性を向上させることができる医療用針を提供することを目的とする。
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係る医療用針は、先端に針先を有する針体と、前記針体の基端に設けられたシャフトと、第1管部と、前記第1管部の基端に設けられ且つ内側に前記シャフトが軸線方向に変位可能に配置された第2管部とを有する収容筒と、前記シャフトに対して解除可能に係合する係合部と、前記収容筒に設けられた側孔を介して前記収容筒の外側に突出した係合解除部とを有し、前記収容筒の内部に固定され
、前記収容筒よりも変形し易い材料で構成されたロック部材と、を備え、前記シャフトは、前記収容筒に対して、前記針体の先端が前記収容筒から所定長突出し且つ当該シャフトの先端が前記第2管部内に配置される第1の位置から、前記針体の先端が前記収容筒内に収容される第2の位置までスライド可能であり、前記係合部が前記シャフトに係合することにより、前記シャフトが前記収容筒に対して前記第1の位置に係止され、前記係合解除部が内方に押圧されることに伴い前記係合部と前記シャフトとの係合が解除されることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、シャフトが可動範囲の最も先端側に来たときのシャフトの先端が、収容筒の第1管部よりも基端側の第2管部内にあるため、収容筒の第1管部を細く構成し易い。すなわち、収容筒の先端側を構成する第1管部には、シャフトが挿通されないため、その分、第1管部の外径を小さく設定することが可能である。このため、医療用針の胴体部を容易に細径化することができる。細径化した胴体部は、使用者が手指により摘み易いため、操作性に優れた医療用針を提供することができる。また、本発明では、ロック部材を、収容筒の基端ではなく、当該基端よりも先端側(収容筒の軸線方向の途中部位)に配置する構成を採用することにより、シャフトの先端が従来技術と比較して基端側にずれた位置に配置される構成であるにもかかわらず、医療用針の全長が長くなることが抑制される。このように、本発明に係る医療用針によれば、全長を長大化することなく、胴体部を細くすることにより操作性を向上させることができる。
ロック部材は、前記収容筒よりも変形し易い材料で構成されているため、ロック部材とシャフトとの係合解除操作に要する操作力を小さくすることができ、操作性を向上することができる。
【0009】
また、本発明に係る医療用針は、先端に針先を有する針体と、前記針体の基端に設けられたシャフトと、第1管部と、前記第1管部の基端に設けられ且つ内側に前記シャフトが軸線方向に変位可能に配置された第2管部とを有する収容筒と、前記シャフトに対して解除可能に係合する係合部と、前記収容筒に設けられた側孔を介して前記収容筒の外側に突出した係合解除部とを有し、前記収容筒の内部に固定されたロック部材と、を備え、前記シャフトは、前記収容筒に対して、前記針体の先端が前記収容筒から所定長突出し且つ当該シャフトの先端が前記第2管部内に配置される第1の位置から、前記針体の先端が前記収容筒内に収容される第2の位置までスライド可能であり、前記係合部が前記シャフトに係合することにより、前記シャフトが前記収容筒に対して前記第1の位置に係止され、前記係合解除部が内方に押圧されることに伴い前記係合部と前記シャフトとの係合が解除され、前記ロック部材は、前記収容筒の内面に係止状態で固定される基部と、前記基部から延出し弾性変形可能なアーム部とを有し、前記係合部と前記係合解除部は前記アーム部に設けられており、前記係合解除部が内方に押圧された際、前記係合部が前記シャフトから離間する方向に変位することにより、前記係合部と前記シャフトとの係合が解除され
る。
【0010】
上記の構成によれば、ロック部材をコンパクトに構成できるため、ロック部材を収容筒内に配置する構成を採用しながらも、収容筒の外径の増大を好適に抑制することができる。
【0011】
上記の医療用針において、前記ロック部材は、前記係合部、前記係合解除部及び前記アーム部を2つずつ備え、一方の前記係合部、前記係合解除部及び前記アーム部により第1の可動部が構成され、他方の前記係合部、前記係合解除部及び前記アーム部により第2の可動部が構成され、2つの前記係合部は、前記シャフトの両側から抱え込むように前記シャフトに係合してもよい。
【0012】
上記の構成によれば、シャフトの両側から抱え込むように係合部が係合するので、高い係合強度が得られ、係合解除部が内方に押圧されない限り、係合部とシャフトとの係合状態を確実に保持することができる。
【0013】
上記の医療用針において、前記シャフトは、外周面の長手方向に間隔をおいた位置に、第1係合溝及び第2係合溝を有し、前記第1の可動部の前記係合部は、その先端の係合端部において、前記第1係合溝と係合し、前記第2の可動部の前記係合部は、その先端の係合端部において、前記第2係合溝と係合してもよい。
【0014】
上記の構成によれば、シャフトに設けられた第1係合溝及び第2係合溝と、第1及び第2の可動部に設けられた係合部とがそれぞれ係合することにより、高い係合強度が得られる。
【0015】
上記の医療用針において、前記第1の可動部の前記係合端部は、前記シャフトを基準として、前記第1の可動部の前記係合解除部と反対側に位置し、前記第2の可動部の前記係合端部は、前記シャフトを基準として、前記第2の可動部の前記係合解除部と反対側に位置してもよい。
【0016】
上記の構成によれば、2つの係合解除部の内方への変位に伴って2つの係合端部がシャフトから離間する方向に移動する。よって、2つの係合解除部を内方に変位させるだけで、押圧移動シャフトとロック部材との係合を確実且つ迅速に解除することができる。
【0017】
また、本発明に係る医療用針は、先端に針先を有する針体と、前記針体の基端に設けられたシャフトと、第1管部と、前記第1管部の基端に設けられ且つ内側に前記シャフトが軸線方向に変位可能に配置された第2管部とを有する収容筒と、前記シャフトに対して解除可能に係合する係合部と、前記収容筒に設けられた側孔を介して前記収容筒の外側に突出した係合解除部とを有し、前記収容筒の内部に固定されたロック部材と、を備え、前記シャフトは、前記収容筒に対して、前記針体の先端が前記収容筒から所定長突出し且つ当該シャフトの先端が前記第2管部内に配置される第1の位置から、前記針体の先端が前記収容筒内に収容される第2の位置までスライド可能であり、前記係合部が前記シャフトに係合することにより、前記シャフトが前記収容筒に対して前記第1の位置に係止され、前記係合解除部が内方に押圧されることに伴い前記係合部と前記シャフトとの係合が解除され、前記収容筒は、上下に分割された半割れ状の第1部材と第2部材とから構成され、前記第1部材と前記第2部材のうち一方は、前記ロック部材を嵌合する固定部を有し、前記ロック部材は、
軸方向から見て、前記第1部材と前記第2部材の
前記一方の側に
向かって凸状となるように湾曲した形状を有
する。
【0018】
上記の構成によれば、シャフト、ロック部材、第1部材及び第2部材を上下方向に重ねることで、医療用針の胴体部を組み立てることができるため、組立作業性に優れ、生産性の向上に寄与する。
【0021】
上記の医療用針において、前記シャフトの基端には、使用者による操作がなされる操作部が設けられ、前記操作部は、先端方向に延出し且つ前記収容筒に対向して延在する弾性変形可能な板状の操作アームを有し、前記操作アームは、前記収容筒側に押圧操作された際、前記係合解除部を内方に押圧するとよい。
【0022】
上記の構成によれば、ロック部材とシャフトとの係合を解除する押圧操作と、収容筒に対してシャフトを基端方向に移動させる引っ張り操作とを、いずれも操作部に対する操作として連続的に行うことができるため、操作性に優れる。また、操作アームが板状に構成されることから、これを適度に長く設定することにより、ロック部材とシャフトとの係合を解除する際に必要な押圧操作力を容易に低減することができる。
【0023】
上記の医療用針において、前記医療用針は、前記第1管部を囲むウイング軸部と、前記ウイング軸部から互いに反対方向に突出した一対のウイングと、を有する翼状針として構成されてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、第1管部を細くできることから、第1管部を囲むウイング軸部も細く構成することが可能である。ウイング軸部が細いと、折り畳んだウイングの根元部を介してウイング軸部を摘み、針体を生体に穿刺する操作時に、針体の針先が安定し易い。従って、操作性に優れた医療用針を提供することができる。
【0025】
本発明の医療用針によれば、胴体部を細くすることにより操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る医療用針について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る医療用針10の構成を示す全体斜視図である。
図2は、当該医療用針10の分解斜視図である。
【0029】
本実施形態において、医療用針10は、採血、輸血、輸液等に際し、患者の皮膚に穿刺した状態で固定して使用される翼状針として構成されている。なお、本発明は、翼状針に限らず、他の種類の医療用針10、例えば、持続的な点滴静注を行う際に用いられる留置針等にも適用可能である。
【0030】
翼状針として構成された医療用針10は、針体12と、ハブ14と、収容筒16と、ロック部材18と、翼部材20とを備える。
【0031】
針体12は、採血、輸血、輸液等の処置を受ける患者の皮膚に穿刺される部分であり、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料で構成され、その先端部には、鋭利な針先12aが形成されている。この針体12は、血液等の体液或いは輸液等の流路となる中空部を有する円管状に構成されている。針体12の先端部には、液体の出入口として機能する開口12bが形成されている。
【0032】
医療用針10の使用前において、医療用針10にはキャップ22が装着されている。このキャップ22は、その内部に針体12を収納可能な中空筒状に構成され、基端側において翼部材20の先端側と嵌合することで、針体12を覆った状態で医療用針10に装着可能に構成されている。医療用針10を使用する際は、キャップ22を先端方向に引っ張ることで、翼部材20から離脱し、針体12を露出させることができる。
【0033】
ハブ14は、針体12の基端に連結され、針体12を支持するものである。本実施形態において、ハブ14は、針体12の基端に針体12と同軸状に接続されその中空部が針体12の内腔と連通する中空状のシャフト24と、シャフト24の基端近傍に固定された操作部26とを備える。針体12の基端は、シャフト24の先端に挿入され固定されている。シャフト24は、針体12よりも大径に構成される。
【0034】
シャフト24の先端近傍(先端よりもやや基端側の位置)には、周方向の一部において、軸線に対して直交する方向(図示例では、上下方向)に突出する突起部28、28が設けられている。当該突起部28、28は、シャフト24が収容筒16に対して後退位置(後述する第2の位置)に来たときに、収容筒16に設けられた弾性係合片30、30に係合する部分である。なお、突起部28、28に代えて、周方向に一周に渡って延在する環状の突起部が設けられてもよい。また、突起部28、28又は環状の突起部は、シャフト24の先端近傍ではなく、シャフト24の先端に設けられてもよい。
【0035】
シャフト24の上部及び下部にはそれぞれシャフト24の長手方向に沿ってガイド溝32が設けられている。このガイド溝32の長さは、収容筒16に対するシャフト24の摺動可能範囲に略対応している。
【0036】
図4に示すように、シャフト24の長手方向の途中部位(図示例では、長手方向の中央付近)の外周部には、2つの係合溝34a、34bが設けられている。2つの係合溝34a、34bは、互いに、シャフト24の長手方向に間隔をおいた位置に設けられ、且つ周方向に延在する。図示例の係合溝34a、34bは、ガイド溝32を横切って、シャフト24の周りを一周する範囲に形成されているが、ロック部材18の係合端部76a、76b(
図3参照)との係合に必要十分な周方向範囲に形成されてもよい。従って、シャフト24における、ロック部材18の係合端部76a、76bと対向する箇所にのみ係合溝34a、34bが設けられてもよい。シャフト24の基端には、輸液バッグ、血液バッグ等に連結された図示しないチューブと接続可能なチューブ接続部36が設けられている。
【0037】
シャフト24の基端近傍でチューブ接続部36よりも先端側には、径方向に膨出したフランジ部38が設けられている。シャフト24における、ガイド溝32とフランジ部38との間には、その前後部分よりも細い縮径部40が設けられている。この縮径部40に操作部26が嵌合することで、シャフト24と操作部26とが相互に固定される。
【0038】
操作部26は、使用者が手指で摘んで押圧操作及び後退操作する部分である。操作部26は、縮径部40に嵌合する切欠状の嵌合溝42が形成された基部44と、基部44の外端(図示例では、左右両端)から先端方向に延出し且つシャフト24の径方向(図示例では、左右方向)に弾性変形可能な一対の操作アーム46a、46bとを有する。操作アーム46a、46bは、それぞれ、収容筒16の外周面から離間した状態で、当該外周面に対向するように延在した板状部分であり、指で摘んで外側から押圧することにより、内方(一対の操作アーム46a、46bが互いに近づく方向)に弾性的に変位可能である。
【0039】
操作アーム46a、46bの各々は、その先端外面側に滑り止め用の溝が設けられ、その先端近傍の内面がロック部材18の係合解除部66a、66bに対向している。ロック部材18とシャフト24との係合を解除する操作(係合解除操作)において、操作アーム46a、46bは内方に押圧操作される。係合解除操作時に必要な押圧操作力は、操作アーム46a、46bの材質、板厚、幅、長さ等に関係する。そのため、操作アーム46a、46bの材質、板厚、幅、長さ等は、操作アーム46a、46bを押圧してロック部材18とシャフト24との係合を解除する際に、小さい操作力で係合解除できるように設定されるとよい。
【0040】
シャフト24及び操作部26の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)等が挙げられる。
【0041】
図1及び
図2に示すように、収容筒16は、先端側を構成する第1管部48と、第1管部48の基端に設けられ第1管部48よりも太く(大径に)構成され且つ内側にシャフト24が軸線方向に変位可能に配置された第2管部50とを有する。
図5に示すように、収容筒16は、シャフト24を収容筒16に対して所定位置まで後退させた際、針体12の針先12aを覆うように構成されている。すなわち、収容筒16は、医療用針10の使用後に、針体12の針先12aを覆うプロテクタとして機能する。
【0042】
収容筒16は、先端寄りの所定範囲において、翼部材20のウイング軸部88の内側に嵌合され固定されている。
図2に示すように、本実施形態において、収容筒16は、上下に分割された半割れ状の第1部材52aと第2部材52bとから構成され、第1部材52aと第2部材52bとが結合することにより、その内部に、軸線方向に貫通し針体12が挿通可能な内腔が形成される。
【0043】
第1管部48は、ウイング軸部88の内側に配置される比較的細い部分であり、その先端には、径方向外方に膨出する環状鍔部54が設けられている。環状鍔部54と、第1管部48と第2管部50との段差51(
図2参照)とにより、収容筒16がウイング軸部88に対して軸線方向に位置決めされている。収容筒16とウイング軸部88とは、図示しないスプライン構造により、相対回転が阻止されている。
【0044】
第2管部50には、第1管部48よりも太く(大径に)構成され、その内側にはシャフト24が軸線方向に変位可能に配置される。シャフト24は、収容筒16に対して、針体12の先端が収容筒16から所定長突出し且つ当該シャフト24の先端が第2管部50内に配置される第1の位置(
図1参照)から、針体12の先端が収容筒16内に収容される第2の位置(
図5参照)までスライド可能である。
【0045】
図2に示すように、第2管部50の軸線方向の途中部位には、ロック部材18を配置(収容)する配置部56が設けられている。配置部56は、その内側にロック部材18を配置すべく、その前後部位に対して大径に構成されている。配置部56は、ロック部材18を軸線方向に固定するための固定部58が設けられる。図示例の固定部58は、第2管部50を構成する管壁から内方に突出したリブ59a、59bを有する。当該リブ59a、59bは、第2管部50の軸線を挟んで互いに対向する位置に設けられている。
【0046】
図3及び
図4に示すように、ロック部材18は、収容筒16の内面に係止状態で固定される基部60と、基部60から延びて収容筒16の径方向(図示では、左右方向)に弾性変形可能なアーム部62a、62bと、シャフト24に対して解除可能に係合する係合部64a、64bと、収容筒16に設けられた側孔80を介して収容筒16の外側に突出した係合解除部66a、66bとを備え、第1部材52a側に開放した構成となっている。一方の係合部64a及び係合解除部66aは、一方のアーム部62aに設けられる。他方の係合部64b及び係合解除部66bは、他方のアーム部62bに設けられる。
【0047】
基部60は、底部68と、底部68の左右両側から上方に延在する側部70a、70bとを有し、下方(第2部材52b側)に向かって凸状となるように略U字状に湾曲している。側部70a、70bには、それぞれ、収容筒16に設けられたリブ状の固定部58と嵌合するスリット72a、72bが形成されている。固定部58と側部70a、70bとの嵌合により、ロック部材18が収容筒16に対して軸線方向に係止される。一方のアーム部62a、係合部64a及び係合解除部66aは、第1の可動部74aを構成し、他方のアーム部62b、係合部64b及び係合解除部66bは、第2の可動部74bを構成する。
【0048】
第1の可動部74aのアーム部62a及び係合解除部66aと、第2の可動部74bのアーム部62b及び係合解除部66bとは、収容筒16の軸線を挟んで互いに対向するように配置される。第1の可動部74aの係合部64aと、第2の可動部74bの係合部64bは、収容筒16の軸線方向に間隔をおいて配置される。
【0049】
第1の可動部74aの係合部64aは、その先端の係合端部76aにおいてシャフト24に設けられた一方の係合溝34aに係合するが、その他の部分ではシャフト24に接触及び係合しないように略U状に湾曲した形状を有する。具体的には、係合部64aは、下方(第2部材52b側)に向かって凸状となるように湾曲している。シャフト24が第1の位置にある状態で、第1の可動部74aの係合端部76aは、シャフト24を基準として係合解除部66aと反対側に位置する。
【0050】
第2の可動部74bのアーム部62bは、その先端の係合端部76bにおいてシャフト24に設けられた他方の係合溝34bに係合するが、その他の部分ではシャフト24に接触及び係合しないように湾曲した形状を有する。具体的には、係合部64bは、下方(第2部材52b側)に向かって凸状となるように湾曲している。シャフト24が第1の位置にある状態で、第2の可動部74bの係合端部は、シャフト24を基準として係合解除部66bと反対側に位置する。
【0051】
シャフト24が第1の位置にある状態(
図1参照)で、第1の可動部74aの係合端部76aと、第2の可動部74bの係合端部76bは、シャフト24を基準として互いに反対側に位置する。ロック部材18には、さらに、2つの係合解除部66a、66bの間に架け渡された弾性変形可能な連結部78が設けられる。連結部78は、下方(第2部材52b側)に向かって凸状となるように湾曲した形状を有する。
【0052】
シャフト24が収容筒16に対して第1の位置にあり且つロック部材18の係合部64a、64bとシャフト24の係合溝34a、34bとが係合した状態では、シャフト24の収容筒16に対する軸線方向の移動が阻止される。一方、係合端部が係合溝34a、34bから所定距離以上離間することにより係合部64a、64bと係合溝34a、34bとの係合が解除された状態では、シャフト24の収容筒16に対する軸線方向の移動が許容される。すなわち、本実施形態では、ロック部材18の係合部64a、64bと、シャフト24の係合溝34a、34bとにより、シャフト24を収容筒16に対して第1の位置に解除可能に係止させる第1ロック手段85(
図4参照)が構成される。
【0053】
図5に示すように、収容筒16の左右両側には、収容筒16の軸線方向に延在する長孔状の側孔80が設けられ、当該側孔80を通して、ロック部材18の係合解除部66a、66bが収容筒16の外側まで突出している。側孔80は、第1部材52aに設けられた切欠状の凹部82a(
図2参照)と、第2部材52bに設けられた切欠状の凹部82b(
図2参照)とによって形成される。
【0054】
図2及び
図7に示すように、収容筒16の基端部近傍には、互いに対向する位置に、弾性係合片30、30が設けられる。具体的には、一方の弾性係合片30は第1部材52aに設けられ、他方の弾性係合片30は第2部材52bに設けられる。収容筒16の内側において、弾性係合片30、30は、それぞれ、基端方向に向かって収容筒16の内方に寄るように傾斜したテーパ面84を有する。収容筒16に対してシャフト24が第1の位置から第2の位置に向かって移動する際、シャフト24に設けられた突起部28が、弾性係合片30を外方に押圧することにより、弾性係合片30が外方に弾性変形し、これにより突起部28が弾性係合片30を乗り越える。
【0055】
シャフト24は、収容筒16に対して最も基端側に変位した第2の位置において、弾性係合片30、30と、当該弾性係合片30、30に対向する壁部31、31との間で、収容筒16に対して軸線方向の移動が阻止される。本実施形態では、弾性係合片30、30、壁部31、31及び突起部28、28により、シャフト24を収容筒16に対して第2の位置に実質的に解除不能に係止させる第2ロック手段86が構成される。
【0056】
収容筒16とロック部材18の構成材料としては、特に限定されず、例えば、上述したシャフト24及び操作部26の構成材料として例示したものから選択した一種以上の材料を採用し得る。また、ロック部材18は、収容筒16よりも変形し易い、すなわち軟質の材料(例えば、ポリアセタール等)で構成されると、ロック部材18のアーム部62a、62bが小さい力で弾性変形し易いため、ロック部材18とシャフト24との係合を解除する際の、操作アーム46a、46bに対する押圧操作力を低減でき、操作性を向上できる。
【0057】
図1に示すように、翼部材20は、中空状のウイング軸部88と、このウイング軸部88から左右にそれぞれ突出する一対のウイング90a、90bとを有する。ウイング90a、90bは、根元部においてウイング軸部88と結合し、根元部から外端に向かって幅広になる板状に形成されている。ウイング90a、90bは、可撓性を有し、根元部付近が屈曲又は湾曲することにより、開閉可能に構成されている。ウイング90a、90bの根元部付近には、開閉を容易にするため、ウイング軸部88の軸線方向に沿った薄肉部92a、92bが形成されている。
【0058】
一方のウイング90aの上面には、複数(図示例では2つ)の凸部94が設けられ、他方のウイング90bの上面には、凸部94と同数の複数(図示例で2つ)の凹部96が設けられており、一対のウイング90a、90bが閉じられた(畳まれた)際に、凸部94と凹部96とが嵌合するようになっている。凸部94と凹部96は、それぞれ1つずつ設けられてもよい。
【0059】
図示例のウイング軸部88とウイング90a、90bとは、一体的に形成されているが、ウイング軸部88とウイング90a、90bとを別々に形成し、それらを結合して翼部材20としてもよい。ウイング軸部88とウイング90a、90bの構成材料としては、特に限定されないが、例えば、上述した収容部等の構成材料として例示したものから選択した一種以上の材料を採用し得る。
【0060】
ウイング軸部88は、使用時に撓まないように剛性の高い材料で構成し、ウイング90a、90bは、根元部が屈曲して容易に開閉可能な適度の可撓性を有すように柔軟な材料で構成してもよい。ウイング軸部88とウイング90a、90bとが一体的に形成された翼部材20は、例えば、比較的剛性の高い樹脂材料と、比較的剛性の低い樹脂材料を用いた二色成型により製作できる。
【0061】
本実施形態に係る医療用針10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0062】
上記のように構成された医療用針10を用いて採血、輸血、輸液等を行うには、先ず、医療用針10からキャップ22を取り外し、針体12を露出させる。次に、一対のウイング90a、90bを指で摘んで閉じた(畳んだ)状態とする。具体的には、両ウイング90a、90bの根元部を屈曲させて一方のウイング90aと他方のウイング90bを重ね合わせるようにして閉じる。このとき、一方のウイング90aに設けられた凸部94と他方のウイング90bに設けられた凹部96とが嵌合し、互いのずれが防止される。
【0063】
ウイング90a、90bを閉じた状態としたら、次に、閉じられたウイング90a、90bを指で摘んで保持しつつ、針体12を生体に対して穿刺する。このとき、
図4に示すように、ロック部材18の係合部64a、64bと、シャフト24に設けられた係合溝34a、34bとが係合しているため、収容筒16に対するシャフト24の軸線方向の移動が阻止された状態となっている。すなわち、収容筒16及びこれに固定された翼部材20に対して針体12が後退することが阻止された状態となっている。このため、翼部材20を指で摘んで針体12を生体に対して穿刺する際の穿刺抵抗で針体12が収容筒16に対して後退することがない。
【0064】
針体12を生体に対して穿刺した状態で留置する際には、ウイング90a、90bを開いた状態に戻し、ウイング90a、90bを粘着テープ等により皮膚に固定する。
【0065】
採血、輸血、輸液等が終了したら、粘着テープ等による皮膚に対するウイング90a、90bの固定を解除し、針体12を生体から抜き取る。このようにして、医療用針10の使用が終わったら、当該医療用針10を廃棄する者等の医療従事者が針体12に不用意に触れることを防止するために、プロテクタとして機能する収容筒16により針体12を覆って収納する「収納操作」を行う。
【0066】
この収納操作では、第1ステップとして、係合部64a、64bと係合溝34a、34bとの係合を解除し、シャフト24が収容筒16に対して基端方向に移動可能な状態とする。具体的には、操作部26の2つの操作アーム46a、46bを内方(収容筒16側)に押圧する。操作アーム46a、46bを内方に押圧操作すると、その内側に対向するロック部材18の係合解除部66a、66bが操作アーム46a、46bにより内方に押圧されることにより、アーム部62a、62bに弾性変形が生じることで、係合解除部66a、66bがシャフト24側に向かって変位する。係合解除部66a、66bの変位に伴い、各々に対応する係合部64a、64bが、係合解除部66a、66bと一体的に変位することにより、係合端部76a、76bが、シャフト24から離間する方向に変位し、係合部64a、64bと係合溝34a、34bとの係合が解除されるに至る。
【0067】
次に、収納操作の第2ステップとして、操作アーム46a、46bを内方に押圧した状態を保持したまま、すなわち、係合部64a、64bと係合溝34a、34bとの係合を解除したまま、操作部26を収容筒16に対して基端方向に引っ張る。そうすると、ハブ14の先端に固定された針体12が、収容筒16に対して基端方向に変位する。ハブ14を収容筒16に対して最も基端側に移動させた状態では、針体12は収容体の内部(具体的には、第1管部48の内部)に位置する。
図5及び
図6に示すように、シャフト24が所定の後退位置(第2の位置)まで移動すると、上述した第2ロック手段86の作用により、収容筒16に対するシャフト24の前方への移動が阻止される(
図7参照)。従って、針体12が再び収容筒16の先端から突出することはない。また、第2ロック手段86の作用により、収容筒16に対するシャフト24の後方への移動も阻止されるため、針体12が収容筒16の基端から抜き取られることが有効に防止される。
【0068】
上述したように、本発明に係る医療用針10によれば、シャフト24が可動範囲の最も先端側に来たときのシャフト24の先端が、収容筒16の第1管部48よりも基端側の第2管部50内にあるため、収容筒16の第1管部48を細く構成し易い。すなわち、収容筒16の先端側を構成する第1管部48には、シャフト24が挿通されないため、その分、第1管部48の外径を小さく設定することが可能である。このため、医療用針10の胴体部を容易に細く構成することができる。細い胴体部は、使用者が手指により摘み易いため、操作性に優れた医療用針10を提供することができる。
【0069】
また、本発明では、ロック部材18を、収容筒16の基端ではなく、当該基端よりも先端側に配置する構成を採用することにより、シャフト24の先端が従来技術と比較して基端側にずれた位置に配置される構成であるにもかかわらず、医療用針10の全長が長くなることが抑制される。このように、本発明に係る医療用針10によれば、全長を長大化することなく、胴体部を細くすることにより操作性を向上させることができる。
【0070】
本実施形態の場合、ロック部材18が、基部60、アーム部62a、62b、係合部64a、64b及び係合解除部66a、66bから構成され、係合解除部66a、66bが内方に押圧された際、係合部64a、64bがシャフト24から離間する方向に変位することにより、係合部64a、64bとシャフト24との係合が解除される。このようなロック部材18は、コンパクトに構成できるため、ロック部材18を収容筒16内に配置する構成を採用しながらも、収容筒16の外径の増大を好適に抑制することができる。
【0071】
本実施形態の場合、ロック部材18は、収容筒16内に設けられている。このような構成によれば、シャフト24を後方へ移動しても、ロック部材18がむき出しになることはなく、操作の邪魔にならない。
【0072】
本実施形態の場合、ロック部材18は、係合部64a、64b、係合解除部66a、66b及びアーム部62a、62bを2つずつ備え、一方の前記係合部64a、係合解除部66a及びアーム部62aにより第1の可動部74aが構成され、他方の係合部64b、係合解除部66b及びアーム部62bにより第2の可動部74bが構成され、2つの係合部64a、64bは、シャフト24の両側から抱え込むようにシャフト24に係合する。このように、シャフト24の両側から抱え込むように係合部64a、64bが係合するので、高い係合力が得られ、係合解除部66a、66bが内方に押圧されない限り、係合部64a、64bとシャフト24との係合状態を確実に保持することができる。
【0073】
本実施形態の場合、収容筒16は、上下に分割された半割れ状の第1部材52aと第2部材52bとから構成され、基部60は第1部材52aに設けられた固定部58に嵌合し、ロック部材18は第2部材52b側に開放した形状を有する。この構成によれば、第1部材52a、ロック部材18、シャフト24及び第2部材52bを順に重ねていくことで、医療用針10の胴体部を組み立てることができるため、組立作業性に優れ、生産性の向上に寄与する。従って、組立作業性に優れ、生産性の向上に寄与する。
【0074】
なお、本実施形態では、第1部材52aにロック部材18の配置部56が設けられたが、変形例として、第2部材52b側にロック部材18の配置部56が設けられてもよい。この場合、ロック部材18は、
図1に示した向きとは上下逆向きに配置される。また、変形例として、ロック部材は、
図1に示した向きとは前後逆に配置されてもよい。
【0075】
本実施形態の場合、ロック部材18は、収容筒16よりも変形し易い材料で構成されるため、ロック部材18とシャフト24との係合解除操作に要する操作力を小さくすることができ、操作性を向上することができる。
【0076】
本実施形態の場合、ロック部材18とシャフト24との係合を解除する押圧操作と、収容筒16に対してシャフト24を基端方向に移動させる引っ張り操作とを、いずれも操作部26に対する操作として連続的に行うことができるため、操作性に優れる。また、操作アーム46a、46bが板状に構成されることから、当該操作アーム46a、46bを適度に長く設定することにより、ロック部材18とシャフト24との係合を解除する際に必要な押圧操作力を容易に低減することができる。
【0077】
本実施形態の場合、医療用針10は、ウイング軸部88と一対のウイング90a、90bとを有する翼状針として構成される。上述したように、第1管部48を細くできることから、第1管部48を囲むウイング軸部88も細く構成することが可能である。ウイング軸部88が細いと、折り畳んだウイング90a、90bの根元部越しにウイング軸部88を摘み、針体12を生体に穿刺する操作時に、針体12の針先12aが安定し易い。従って、操作性に優れた翼状針を提供することができる。
【0078】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。