特許第6166271号(P6166271)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6166271光活性樹脂、放射線硬化性組成物および放射線硬化性インク
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  • 特許6166271-光活性樹脂、放射線硬化性組成物および放射線硬化性インク 図000020
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166271
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】光活性樹脂、放射線硬化性組成物および放射線硬化性インク
(51)【国際特許分類】
   C08G 6/02 20060101AFI20170710BHJP
   C08F 283/00 20060101ALI20170710BHJP
   C08F 4/00 20060101ALI20170710BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20170710BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20170710BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20170710BHJP
   C08L 61/00 20060101ALI20170710BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20170710BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20170710BHJP
【FI】
   C08G6/02
   C08F283/00
   C08F4/00
   C08F2/50
   C08F2/44 C
   C08L33/08
   C08L61/00
   C09D11/101
   C09D11/102
【請求項の数】11
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-544877(P2014-544877)
(86)(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公表番号】特表2015-505870(P2015-505870A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(86)【国際出願番号】US2012067024
(87)【国際公開番号】WO2013082262
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年11月6日
(31)【優先権主張番号】61/564,421
(32)【優先日】2011年11月29日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507385165
【氏名又は名称】サン ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カイ−ウェ・ゴードル
(72)【発明者】
【氏名】ユエルゲン・ディーカー
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/085369(WO,A1)
【文献】 特開2007−056187(JP,A)
【文献】 特開2006−016510(JP,A)
【文献】 特開2011−052107(JP,A)
【文献】 特開2009−102637(JP,A)
【文献】 特開2008−247794(JP,A)
【文献】 特開2009−292900(JP,A)
【文献】 特開平03−174416(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/110634(WO,A1)
【文献】 特開2005−272728(JP,A)
【文献】 特開2012−197410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00− 11/54
C08F 2/44
C08F 2/50
C08F 4/00
C08F 216/36
C08F 261/10
C08F 283/00
C08G 6/02
C08L 33/08
C08L 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化性組成物およびインクの硬化特性を改善するための光活性樹脂であって:
ビフェニル部分を含む芳香族ケトン;ならびに
水素、メチロール基およびそれらの混合物から選択される鎖末端基
を含み、
式:
【化1】
式中、
R1は、水素、1〜12個の炭素原子を有する分枝アルキルラジカル、1〜12個の炭素原子を有する非分枝アルキルラジカル、1〜12個の炭素原子を有する分枝芳香族ラジカル、および1〜12個の炭素原子を有する非分枝芳香族ラジカルから選択され、
R2は、水素、1〜12個の炭素原子を有する分枝アルキルラジカル、1〜12個の炭素原子を有する非分枝アルキルラジカル、1〜12個の炭素原子を有する分枝芳香族ラジカル、および1〜12個の炭素原子を有する非分枝芳香族ラジカルから選択され、
R3は、1〜20個の炭素原子を有する置換された架橋芳香族ラジカル、1〜20個の炭素原子を有する置換された非架橋芳香族ラジカル、1〜20個の炭素原子を有する置換されていない架橋芳香族ラジカル、1〜20個の炭素原子を有する置換されていない非架橋芳香族ラジカル、1〜20個の炭素原子を有する置換された架橋脂肪族ラジカル、1〜20個の炭素原子を有する置換された非架橋脂肪族ラジカル、1〜20個の炭素原子を有する置換されていない架橋脂肪族ラジカル、および1〜20個の炭素原子を有する置換されていない非架橋脂肪族ラジカルから選択され、
Yは、水素、メチロール基およびそれらの混合物から選択される前記鎖末端基であり、
mは0〜50の整数であり、
nは1〜50の整数であ
を有する、樹脂。
【請求項2】
800〜2,000の重量平均分子量を有する請求項1記載の樹脂。
【請求項3】
前記芳香族ケトンが、4−フェニル−アセトフェノン、4−フェニル−プロピオフェノン、2−アセチルフルオレン、4’−メチル−4−アセチル−ビフェニル、4’−フェニル−4−アセチル−ビフェニルおよびそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の樹脂。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂;
アクリレート;および
アミン
を含む、放射線硬化性組成物。
【請求項5】
前記アクリレートが:1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノール−Aジアクリレート、エトキシ化ビスフェノール−A−ジアクリレート、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルジアクリレート、エトキシ化ビスフェノール−A−ジアクリレート、ポリ(エチレン)グリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびそれらの混合物から選択される、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記アクリレートが、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびそれらの混合物から選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記アミンが芳香族である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記アミンが、N,N−ジメチル−4−アミノ安息香酸メチルエステル、N,N−ジメチル−4−アミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチル−4−アミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチル−4−アミノ安息香酸エチルヘキシルエステル、オリゴマーアミノベンゾエート、およびそれらの混合物から選択される、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記オリゴマーアミノベンゾエートが式:
【化2】
を有する、請求項8記載の組成物であって、
式中、
R4は、1〜50個の炭素原子を有する一価、二価、三価、四価、五価、六価および多価アルキルラジカルから選択され、そしてエトキシ化(CH−CH−O)部分を含有し、
R5は、1〜12個の炭素原子を有し、酸素、窒素または硫黄によって置換され得る、直線状、分枝ラジカル;1〜12個の炭素原子を有し、酸素、窒素または硫黄によって置換され得る、直線状、非分枝ラジカル;および1〜12個の炭素原子を有し、酸素、窒素または硫黄によって置換され得る、環状ラジカルから選択され、そして
pは1〜50の整数である、
組成物。
【請求項10】
前記芳香族ケトンの前記アミンに対する比が約100:1〜1:10の範囲である、請求項4〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
アクリレートの前記光活性樹脂と前記アミンとの合計に対する比が50:1〜1:10の範囲である、請求項4〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年11月29日付けで出願された米国特許仮出願第61/564,421号の恩恵を主張し、この出願は、本明細書中で完全に記載されているかのように、あらゆる目的に関して参照することによって本明細書中に組み込まれる。
【0002】
概して、本発明は新規光活性樹脂に関する。本発明はさらに、アミンおよびアクリレートと組み合わせて光活性樹脂を含む放射線硬化性組成物にも関する。本発明はさらに、顔料、放射線硬化性組成物および添加剤を含む放射線硬化性インクに関する。
【背景技術】
【0003】
放射線硬化性組成物は他の組成物とは異なる。すなわち、放射線硬化性組成物は、流体相から化学反応によって高度に架橋した固相へとほぼ即座に状態を変化させる能力を有する。化学反応は概して紫外線光または高エネルギー電子線などの放射線源によって開始される。
【0004】
商業的な事情から、放射線硬化性組成物が硬化する速度は重要である。例えば、包装の分野では、基体上での放射線硬化性組成物の硬化が速いほど、処理量が増加する。そのようにすることによって、製造時間および印刷時間の減少を考えると、重大なコスト削減が得られる。
【0005】
放射線硬化性組成物は、典型的には重合性化合物を含む。重合性化合物は概して、モノマー、例えばモノマー型、オリゴマー型またはポリマー型一官能性もしくは多官能性アクリレートなどを含む。例えば高速硬化用途などの放射線硬化性組成物の適用に応じて、添加剤は、アクリレートのフリーラジカル重合を開始するために1以上の光開始剤を含んでもよい。そのようにすることによって、放射線硬化性組成物を最終的に硬化させて、乾燥および固体フィルムにする。
【0006】
近年、放射線硬化性組成物およびインク中の成分の移行レベル(migration level)に関する先進国での規制はさらに厳しくなってきている。例えば、ある種類の光開始剤は、未反応および残留光開始剤量に起因する移行の傾向が高い。特に、500ダルトン未満の分子量を有する光開始剤は移行の影響を受けやすく、包装用途における臭気や毒性の問題をもたらす。移行は、例えば照射により開裂してさらに小さな分子を形成するアルファ−アミノアセトフェノンなどのタイプI光開始剤で一般的である。
【0007】
したがって、移行の傾向がある光開始剤成分を、たとえあったとしても少ししか含まない放射線硬化性組成物およびインクの必要性がある。
【0008】
改善された硬化特性を示す放射線硬化性組成物およびインクの必要性もある。
【発明の概要】
【0009】
本発明者は、放射線硬化性組成物およびインクで使用される本発明者らの新規光活性樹脂が硬化特性を改善することを意外にも見出した。これらの光活性樹脂はさらに、低分子量光開始剤の移行を低減する。特に、本発明の光活性樹脂は、アクリレートおよびアミンとともに放射線硬化性組成物を形成する。そのようにすることによって、本発明の放射線硬化性組成物は、架橋およびからみ合いによって構造を提供する。
【0010】
本発明の放射線硬化性組成物を、限定されないが、コーティング、接着剤、包装、および成形品をはじめとする多くの用途で使用することができる。例示的実施形態では、放射線硬化性組成物は食品包装用途での使用に適している。
【0011】
本発明の1つの態様にしたがって、新規光活性樹脂が記載される。樹脂は、ビフェニル部分を含む芳香族ケトンモノマーを含む。樹脂はさらに、水素、メチロール基およびそれらの混合物から選択される鎖末端基(chain ending group)も含む。
【0012】
本発明の別の態様にしたがって、上記光活性樹脂を含む放射線硬化性組成物が記載される。組成物はさらに、一官能性または多官能性アクリレートも含む。組成物はアミンをさらに含む。1つの実施形態で、放射線硬化性組成物は光開始剤を含む。別の実施形態では、インクは約1重量%未満の開裂型タイプI光開始剤(splitting, type I photoinitiator)を含有する。
【0013】
本発明のさらに別の態様にしたがって、上記光活性樹脂を含む放射線硬化性印刷インクが記載される。インクはさらに、一官能性または多官能性アクリレート、アミン、および着色剤も含む。1つの実施形態において、インクは光開始剤を含む。別の実施形態では、インクは約1重量%未満の開裂型タイプI光開始剤を含有する。
【0014】
本発明のさらなる態様は、基体の表面上に施用された前記エネルギー硬化性リソグラフ印刷インクを含むUV印刷製品を記載する。
【0015】
本発明のさらなる特徴や利点は以下の説明で記載され、一部は説明から明らかであるか、または本発明を実施することからわかる。本発明の利点は、明細書およびその特許請求の範囲ならびに添付の図面で特に指摘される構造によって理解され、達成されるであろう。
【0016】
本発明の理解が深まるように本明細書中に含められ、組み入れられ、そして本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を例示説明し、説明とあわせて本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による放射線硬化性組成物の三成分相図(tertiary phase diagram)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面で示す。
【0019】
本発明者らは意外にも、放射線硬化性組成物で使用することができる新規光活性樹脂を見出した。本出願に関して、放射線硬化性組成物はワニスとしても定義され、全体にわたって交換可能に使用される。特に、基体上に施用される放射線硬化性組成物で用いられる新規光活性樹脂は、包装用途に関して最適の硬化結果を得るために必要な硬化量(mJ/cm)がかなり少ない。硬化速度の改善が実現される。本発明者らによると、硬化速度の改善や本発明の組成物の少ないUV硬化量は、光活性樹脂中に存在するビフェニルケトン部分に起因し、これはUV光によって励起させることができ、アミンとともに非常に有効なラジカルを形成し、アクリレートの高速重合を促進する。重合は本明細書中では硬化と定義される。
【0020】
放射線硬化性組成物は、概して商業的包装用途で用いられる。例示的実施形態では、包装は食材を含む。少なくともこれらの理由のために、低移行性組成物(low migration composition)は、食材などの物品を臭気または毒性による汚染から保護するために望ましい。商業上の観点から、これらの欠点は製品の魅力に著しく影響を及ぼし、多くの場合、客がこれらの製品を購入するのを思いとどまらせる可能性がある。包装に起因する臭気または毒性の懸念が原因である。例示的実施形態では、本発明者らは、本発明の放射線硬化性組成物およびインクではモノマー光開始剤などの移行可能な成分がほとんどまたはまったく必要ないことを示す。本発明者らによると、本発明の光活性樹脂は高度に着色されたインクを十分硬化させ、したがって移行の傾向がある低分子量光開始剤を用いる必要性を排除する。
【0021】
別の実施形態では、放射線硬化性組成物を木材応用物上のコーティングとして用いることができる。接着剤組成物はさらに、様々な他の工業用途で用いることもできる。1つの実施形態において、接着剤は食品包装用途で使用される。別の実施形態では、接着剤は食品以外の包装用途で使用される。例示的実施形態では、接着剤は粘着ラベルで使用される。別の例示的実施形態では、接着剤は紙ラベルで使用される。さらなる例示的実施形態では、接着剤は薬剤包装用途で使用される。さらに別の例示的実施形態では、接着剤は化粧品包装用途で使用される。さらに別の例示的実施形態では、接着剤は高級品包装で使用される。別の例示的実施形態では、接着剤はホログラムまたはホログラムホイルで使用される。別の実施形態では、接着剤は包装紙、本の表紙、グリーティングカード、名刺または雑誌の表紙で使用される。
【0022】
硬化性官能基の重合および/または架橋を達成するために用いられるエネルギー源は、化学線、たとえばスペクトルの紫外または可視領域の波長を有する放射線、加速粒子、たとえば電子線放射、熱的、例えば熱または赤外線放射等であってよい。好ましくは、エネルギーは化学線または加速粒子である。なぜなら、そのようなエネルギーは重合および/または架橋の開始および速度を良好に制御するからである。さらに、化学線および加速粒子を比較的低い温度での硬化のために使用することができる。これによって、熱硬化技術を使用する場合にエネルギー硬化性基の重合および/または架橋を開始するために必要な比較的高い温度に対して感受性である可能性がある成分の分解または蒸発が回避される。好適な硬化エネルギー源としては、レーザー、電子線、水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、タングステン電球、日光、低強度紫外線光(ブラックライト)などが挙げられる。
【0023】
例示的実施形態では、本発明の放射線硬化性組成物は、たとえば高電圧水銀球、中電圧水銀球、キセノン球、カーボンアーク灯、ハロゲン化金属ランプ、UV−LEDランプまたは日光によって提供されるUV光などの化学光源によってUV硬化させることができる。適用される照射の波長は、約200〜500nm、さらに好ましくは約250〜350nmの範囲内である。UVエネルギーは、好ましくは約30〜3,000mJ/cmの範囲内であり、さらに好ましくは約50〜500mJ/cmの範囲内である。加えて、電球は、放射線硬化性組成物の吸収スペクトルにしたがって選択することができる。
【0024】
別の例示的実施形態では、本発明の放射線硬化性組成物およびインクを電子線(EB)によって硬化させることができる。EBドライヤーは、たとえばマサチューセッツ州ウィルミントンのEnergy Science, Inc.、またはマサチューセッツ州ウィルミントンのAdvanced Electron Beams Inc.から商業的に入手可能である。線量の別名でも知られる吸収エネルギーはキログレイ(kGy)の単位で測定され、1kGyは1,000ジュール/キログラムに等しい。通常、電子線量は硬化を完了させるために10kGy〜約40kGyの範囲内でなければならない。本発明の放射線硬化性組成物で、200ppm未満の酸素レベルで20〜30kGyの放射線量が乾燥耐溶剤性コーティングまたはインクを得るために十分である。
【0025】
光活性樹脂
本発明の第1の態様によると、光活性樹脂は、アルデヒドモノマーと組み合わせて芳香族ケトンモノマーを有すると特徴づけられる。本明細書中で用いられる場合、「モノマー」という用語は、比較的低分子量の材料、すなわち、約500g/モル未満の分子量を有し、1以上の重合性基を有すると定義される。「オリゴマー」は、約500g/モルから約10,000g/モルまでの分子量を有する比較的中程度の分子量の材料として定義される。「ポリマー」は、少なくとも約10,000g/モル、好ましくは10,000〜100,000g/モルの分子量を有する比較的高分子量の材料として定義される。本明細書全体にわたって用いられる「分子量」という用語は、特に明記されない限り、数平均分子量を意味する。
【0026】
一般式の化合物は、典型的にはケトンモノマーおよびアルデヒドモノマーから縮合によって作成される。縮合反応生成物の一例は、下記式Iとして提供される:
【0027】
【化1】
【0028】
式中、
【0029】
R1は、水素、1〜12個の炭素原子を有する分枝アルキルラジカル、1〜12個の炭素原子を有する非分枝アルキルラジカル、1〜12個の炭素原子を有する分枝アリールラジカル、および1〜12個の炭素原子を有する非分枝アリールラジカルから選択される。
【0030】
R2は、水素、1〜12個の炭素原子を有する分枝アルキルラジカル、1〜12個の炭素原子を有する非分枝アルキルラジカル、1〜12個の炭素原子を有する分枝アリールラジカル、および1〜12個の炭素原子を有する非分枝アリールラジカルから選択される。
【0031】
R3は、1〜20個の炭素原子を有する置換された架橋アリールラジカル、1〜20個の炭素原子を有する置換された非架橋アリールラジカル、1〜20個の炭素原子を有する置換されていない架橋アリールラジカル、1〜20個の炭素原子を有する置換されていない非架橋アリールラジカル、1〜20個の炭素原子を有する置換された架橋アルキルラジカル、1〜20個の炭素原子を有する置換された非架橋アルキルラジカル、1〜20個の炭素原子を有する置換されていない架橋アルキルラジカル、および1〜20個の炭素原子を有する置換されていない非架橋アルキルラジカルから選択される。
【0032】
Yは、水素またはメチロール基(CH−OH基)から選択される鎖末端基であり、
mは0〜50の整数であり、
nは1〜50の整数であり、そして
oは0、1または2の整数である。
【0033】
1つの実施形態において、アルデヒドおよびケトンの縮合は、通常、アルカリ性条件下で行われる。水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、メトキシカリウム、メトキシナトリウムなどの強アルカリ性塩基が最も一般的に用いられる。第4アンモニウム塩を特に高融点樹脂のために使用する。別の実施形態では、強酸、たとえば硫酸または脱水塩、たとえば塩化亜鉛が用いられる。
【0034】
縮合は、約25〜100℃の温度で行われ、それ以外は例えばJournal of Applied Polymer Science, Vol. 50 (1996)、577〜584ページおよびJournal of Applied Polymer Science, Vol. 60 (1996)、465〜476ページにおけるように文献に記載されている。必要とされるホルムアルデヒドは、通常、約30〜37重量%の水溶液またはパラホルムアルデヒドの形態で用いられる。過剰のホルムアルデヒドが使用されると、メチロール基(−CH−OH)が式I中でY基で示される末端基として生じる可能性がある。
【0035】
合成後、ポリマーを好ましくは精製して、好ましくは熱湯で洗浄することによるか、または蒸気で処理し、最終的に乾燥することによって、未反応モノマー、塩基およびホルムアルデヒドの残留物を除去する。
【0036】
一般式Iの得られた樹脂は、典型的には無色から黄色の固体であり、好ましくは約500〜5,000の範囲内の重量平均分子量(Mw)を示す。例示的実施形態では、範囲は800〜2,000である。樹脂は約20〜80℃の好ましいガラス転移温度(Tg)、約60〜140℃の好ましい軟化点を有し、好ましくはほとんどの一般的な溶剤およびアクリレート中に可溶性である。
【0037】
別法として、商業上あまり実際的ではないが、一般式1の化合物は、脂肪族および芳香族ビニルケトンを例えば過酸化ジベンゾイルなどのラジカル開始剤の存在下で重合させることによって作成することができる:
【0038】
【化2】
【0039】
ビニルケトンは、Alfred Claus, Dissertation ETH 6445, Eidgenoessische Technische Hochschule Zurich,1979によって説明されているようにして文献にしたがって作成することができる。
【0040】
前記開示の新規光活性樹脂を作成するためのケトンモノマーとしては、限定されないが、以下のモノマーが挙げられる:アセトン、メチルエチルケトン、ヘプタン−2−オン、ペンタン−3−オン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチル−シクロヘキサノン、アセトフェノン、2−メチル−アセトフェノン、3−メチル−アセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、4−エチル−アセトフェノン、Fプロピオフェノン、4−tert−ブチル−アセトフェノン、4−シクロヘキシル−アセトフェノン、2−フェニル−アセトフェノン、3−フェニル−アセトフェノン、4−フェニル−アセトフェノン、4−tert−ブチル−アセトフェノン、4−シクロヘキシル−アセトフェノン、2−フェニル−プロピオフェノン、3−フェニル−プロピオフェノン、4−フェニル−プロピオフェノン、2−アセチルフルオレン、3−アセチルフルオレン、4’−メチル−4−アセチル−ビフェニル、4’−フェニル−4−アセチル−ビフェニルおよびそれらの混合物。
【0041】
新規光活性樹脂で用いられるアルデヒドモノマーとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる:ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、ドデカナール、ベンズアルデヒドおよびそれらの混合物。例示的実施形態では、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0042】
本発明の第2の態様によれば、本明細書中で以下、実施例1と称される一般式Iのケトン樹脂の合成が記載される。具体的には、49.8g(0.25モル)の4−アセチルビフェニル、30g(0.25モル)のアセトフェノン、330ml(8.16モル)のメタノール、および15.0g(0.18モル)のホルムアルデヒド(水中37重量%)を四口フラスコに導入し、その中で撹拌しながら窒素雰囲気下で60〜65℃まで加熱する。その後、16gの水酸化ナトリウム溶液(25重量%)を添加し、そして反応混合物を67℃まで加熱する。30分以内に、26.8g(0.33モル)のホルムアルデヒド(水中37重量%)を添加し、反応混合物を次いで69〜75℃まで加熱し、還流下5時間放置する。82℃の還流媒体の内温まで相分離ヘッド(3滴除去/1滴残存)を使用した縮合によって過剰のメタノール/水を除去する(約320mlを収集)。得られた固体を真空中で乾燥する。
【0043】
さらなる精製のために、脆弱な灰黄色樹脂を次いで200mlの水中に懸濁させ、20分間撹拌し、濾過する。洗浄水が中性になるまで、この洗浄手順を繰り返す。乾燥した樹脂を少量の酢酸エチル(100gについて115ml)中に溶解させる。混濁した黄色溶液を再度ろ過する。溶液をメタノール(l00gについて1000mlのメタノール)に滴加することによって、透明なろ液を再沈殿させ、結果として白色沈殿を得る。得られた固体を濾過し、乾燥し、その結果、淡黄色透明で脆弱な樹脂を得る。
【0044】
樹脂は790の数平均分子量(Mn)および990の質量平均分子量(Mw)を有していた。これは、単分散ポリスチレン等分子量校正標準およびGPCカラム(PSS(Polymer Standards Service−USA, Inc)製造、適用カラムの組み合わせ:SDV 5μm 1000Å、SDV 5μm 500Å、SDV 5μm 100Å)を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。カラム中の流速は1.0ml/分であり、溶離剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃、示差屈折率検出器(RI)およびUV検出器(254nm)を使用した。分散性DISP=(Mw/Mn)は分子量平均および数平均の比率であり、測定結果から算出した。
【0045】
UV吸収:λmax(n−π*)=297nm:Unicam UV2UV/VIS分光光度計を使用してスペクトルを取得した。すべての吸収スペクトルは、1cmキュベットを使用し、200〜800nmの範囲内でスキャニングして得られた。10−4mol・dm−3のTHF中溶液を100cmのメスフラスコフラスコ中で調製し、そして必要ならばその後、最大吸収が1未満となるように10倍に希釈した。
【0046】
ガラス転移温度(Tg)=54℃。示差走査熱量測定法(DSC)を用いて少量の試料(10〜20mg)のガラス転移温度Tgを測定した。加熱速度は窒素雰囲気下の密封パン中で10℃/分である。すべての試料を、室温から始まってTgより十分高い適切な温度まで2回スキャンした。ガラス転移温度の測定は、温度制御段階を備えたPerkin−Elmer製の示差走査熱量計DSC−7を使用することによって実施した。
【0047】
色:2ガードナー。樹脂の色を昼光色計測装置を有するLovibond 2000 Comparatorを用いて測定した。試料(50重量%のトルエン中溶液)は、試験ディスク中の較正された色安定性ガラス標準に対して視覚的に照合する。使用したスケールディスク色標準はGardner4/30AS(色1〜9)およびGardner4/30BS(色10〜18)であった。
【0048】
IR分光法:(cm−1):3058、2919、1672(vs)、1599、1444、1261、1217、844、756、744 686(vs)。フーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを、ATR反射率法(固体試料、Golden Gate単一反射ダイアモンド全反射減衰アクセサリ)を用いてBio−Rad Excalibur FTS3000分光光度計で記録した。シグナルピークを波数(cm−1)で提供する。(vs)という用語は、非常に強いシグナルを意味する。
【0049】
例示的実施形態では、光活性樹脂は次のようにして合成することができる:98.1g(0.5モル)の4−アセチルビフェニル、60.1g(0.5モル)のアセトフェノン、50mlのイソプロパノールおよび0.35gのベンジルトリエチルアンモニウムクロリドを四口フラスコに導入し、その中で撹拌しながら不活性雰囲気中で80℃まで加熱する。15ml(16.2g;0.2モル)ホルマリン(水中37%の強度)を添加し、混合物はしばらくして透明になる。25g(0.25モル)の水酸化ナトリウム溶液(水中40重量%)を滴加する。反応混合物は約85℃まで昇温する。30分にわたって、60ml(65g;0.8モル)のホルマリン(水中37%強度)を80〜85℃で添加する。反応混合物を次いで5時間還流加熱する。105℃の内温まで還流を分割する蒸留コントローラー(3滴除去/1滴残存)を使用する縮合によって溶剤を除去する。
【0050】
得られた固体を真空中で乾燥させる。脆弱な灰黄色樹脂を200mlの水中に懸濁させ、20分間撹拌し、フリットする。洗浄水が中性になるまで、洗浄手順を繰り返す。必要ならば、樹脂を少量の酢酸エチル(100gについて90ml)中に溶解させ、濾過し、メタノール(100gについて500mlのメタノール)に滴加することにより再沈殿させることによって白色沈殿を得、これを融解させ(D3)、真空中で揮発性構成成分から除去することによって、残留物を除去する。光活性樹脂は若干黄色がかった透明で脆弱な樹脂である。気相クロマトグラフィーによると、分子量は:Mn=1100g/モルおよびMw=1600g/モルである。
【0051】
放射線硬化性組成物
本発明の第3の態様にしたがって、放射線硬化性組成物が記載される。1つの実施形態では、本発明の放射線硬化性組成物は低移行性を示す。低移行特性は、少なくともその中の成分の分子量に依存する。低分子量、すなわち500ダルトン未満を有する成分、たとえばタイプI光開始剤は、さらに小さな分子に開裂する可能性があるので、移行の可能性がある。そのような成分は、したがって、移行、臭気および/または食材などの製品の汚染を防止するために、さらに少量で用いられるか、または本発明の放射線硬化性組成物から完全に除外される。
【0052】
さらに別の実施形態において、基体上に施用し、あるUV硬化量で硬化させた後に改善された硬化性能を示す放射線硬化性組成物が記載される。改善された硬化性能は、本明細書中でさらに詳細に論じられる標準試験プロトコルにしたがって、類似した線速度で完全に硬化される放射線硬化性組成物に必要な硬化量を比較することによって測定する。言い換えると、硬化性組成物が、より少量のUV硬化量(mJ/cm)によって硬化させることができる場合、さらに速い硬化速度が間接的に実現される。
【0053】
例示的実施形態では、放射線硬化性組成物は少なくとも前記新規光活性樹脂をアクリレートおよびアミンと組み合わせて含む。別の実施形態では、本発明の光活性樹脂は、1以上の従来型ケトン樹脂と組み合わせて使用することができる。例えば、用いられるケトン樹脂は、下記式IIIによる一般的構造を有していてもよい:
【0054】
【化3】
式中、nは3〜5の整数であり、*は水素またはメチロール基から選択される。
【0055】
本明細書で以下、実施例2と称される、式IIIの従来型ケトン樹脂の合成は次のように記載される:60.0g(0.5モル)のアセトフェノン、10.8ml(0.25モル)のメタノールおよび18.0g(0.18モル)のホルムアルデヒド(水中30%強度)を三口フラスコに導入し、その中で撹拌しながら窒素雰囲気下で50℃まで加熱する。16gの25%強度の水酸化ナトリウム溶液を添加し、反応混合物を75℃まで加熱した。90分の期間にわたって、33.0g(0.33モル)のホルムアルデヒド(水中30%強度)を添加し、反応混合物を次いで95℃まで加熱し、還流下で6時間保持する。水性相を樹脂相から分離し、樹脂を中性になるまで沸騰水で洗浄し、150℃で揮発性材料から真空中で乾燥する。
【0056】
従来型ケトン樹脂は黄色がかった透明で脆弱な樹脂をもたらす。これは、720の数平均重量(Mn)、1090の質量平均重量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)=39℃、4のカードナー色数、およびIR−分光法:n(cm−1):3059、2929、1672(vs)、1593、1444、1261、1217、756、および686(vs)を有することを特徴とする。
【0057】
別の例示的実施形態において、放射線硬化性組成物は一官能性アクリレートを含む。別の実施形態において、アクリレートは多官能性である。多官能性アクリレートのリストは、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノール−Aジアクリレート、エトキシ化ビスフェノール−A−ジアクリレート、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルジアクリレート、エトキシ化ビスフェノール−A−ジアクリレート、ポリ(エチレン)グリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートまたはそれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではなく、好ましいのは、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレートおよびプロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、当該技術分野で適用されるオリゴマーおよびポリマーアクリレート、たとえばエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリル化ポリウレタン、アクリル化ポリアクリレート、アクリル化ポリエーテル、アマニ油および大豆油ならびにそれらの混合物に基づくアクリル化エポキシ化油である。
【0058】
別の実施形態によれば、放射線硬化性組成物はアミンを含む。例示的実施形態では、アミンは第3級アミンである。第3級アミンの一例は式IIとして以下で提供される。
【0059】
【化4】
式中、
R4は、1〜50個の炭素原子を有する一価、二価、三価、四価、五価、六価または多価アルキルラジカルから選択され、エトキシ化(CH−CH−O)部分を含有し得る、
R5は、1〜12個の炭素を有し、酸素、窒素または硫黄で置換されている可能性がある直線状、分枝ラジカル;1〜12個の炭素原子を有し、酸素、窒素または硫黄で置換されている可能性がある直線状、非分枝ラジカル;および1〜12個の炭素原子を有し、酸素、窒素または硫黄で置換されている可能性がある環状ラジカルから選択され、
pは1〜50の整数である。
【0060】
一般式IIの化合物は、一部は市販されている。そのような化合物の例としては、N,N−ジメチル−4−アミノ安息香酸メチルエステル、N,N−ジメチル−4−アミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチル−4−アミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチル−4−アミノ安息香酸エチルヘキシルエステルおよびそれらの混合物から選択される前記アミンが挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【0061】
低移行性用途のために、一般式2のオリゴマーアミノベンゾエートが好ましい。これらのオリゴマーアミノベンゾエートは、たとえばエステル交換触媒の存在下、25〜200℃にてポリオールのN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステルでのエステル交換によって調製される。この反応の一例は以下のように示される:
【0062】
【化5】
【0063】
好適ポリオールの非限定的リストは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピラングリコール(dipropylane glycol)、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、エトキシ化ネオペンチルグリコールプロポキシル化ネオペンチルグリコールトリプロピレングリコール、ビスフェノール−Aエトキシ化ビスフェノール−A、トリメチロールプロパントリメチロールプロパンエトキシ化トリメチロールプロパンプロポキシル化トリメチロールプロパンプロポキシル化グリセロール、ペンタエリスリトール、エトキシ化ペンタエリスリトール、プロポキシル化ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ポリ(エチレン)グリコール、ポリテトラヒドロフラン,およびそれらの混合物である。
【0064】
エステル交換触媒として、酸、塩基などの当該技術分野で公知の典型的な触媒が好適であり、ジブチルスズオキシドおよびチタン酸テトラブチルなどのスズ有機化合物、チタンおよびジルコニウム化合物が好ましく、1つの実施形態によると、ポリオールは過剰(5〜50モル%)で使用され、反応を完了させるために、反応中に形成された低分子アルコールを蒸留によって除去する。Ν,Ν−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステルが完全に消費されたら、反応は完了し、生成物は通常、さらに精製することなく施用することができる。
【0065】
例示的実施形態では、本明細書中で以下、実施例3と称する一般式IIの化合物の合成を下に記述する。具体的には、55.0gのN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル(EDB)および45.0gのEO−TMP(Mw平均約450)を、温度計、機械的スターラー、窒素注入管、凝縮器および受容器を備えた250mlフラスコに装填した。窒素を3気泡/秒の速度で導入した。次いで、混合物を60℃まで加熱し、EDBが完全に溶液中に溶けるようにした。次いで、1.5gのイソプロピル酸チタン(Tyzor TPT)を添加し、混合物を150〜170℃まで加熱し、そしてエタノールを留去する。エタノール形成がおさまった後、反応をさらに3〜5時間170℃で再開して、EDBの残存量を最小限に抑えた。収量:87.8g。
【0066】
一般式IIによる化合物は、25℃で15.1Pasの粘度を有するとして特徴づけることができる。粘度は、Anton Parr GmbH製のPhysika 300円錐および平板レオメータでD=2〜100 1/sのせん断速度にて測定した。D=50 1/sの粘度値を記録した。カードナー色数は4であった。分子量は:Mn=950であり、Mw=1120である。
【0067】
例示的実施形態では、ビフェニルケトン基対アミン基の比は100:1〜1:10である。具体的には、ビフェニルケトン基対アミン基の比は、100対1;2;3;4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;21;22;23;24;25;26;27;28;29;30;31;32;33;34;35;36;37;38;39;40;41;42;43;44;45;46;47;48;49、50;51;52;53;54;55;56;57;58;59;60;61;62;63;64;65;66;67;68;69;70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;および99であり、1対1;2;3;4;5;6;7;8;9;および10である。
【0068】
さらに好ましい実施形態では、ビフェニルケトン基対アミン基の比は、50対1;2;3;4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;21;22;23;24;25;26;27;28;29;30;31;32;33;34;35;36;37;38;39;40;41;42;43;44;45;46;47;48;49、および50であり、1対1;2;3;4;および5である。
【0069】
さらに別の例示的実施形態では、ビフェニルケトン基対アミン基の比は、5対1;2;3;4;および5であり、1対1;および2である。
【0070】
別の実施形態によれば、放射線硬化性組成物中のアクリレートの、光活性樹脂とアミンとの合計に対する重量比は、50:1〜1:10の範囲である。言い換えれば、アクリレートの、光活性樹脂とアミンとの合計に対する比は、50対1;2;3;4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;21;22;23;24;25;26;27;28;29;30;31;32;33;34;35;36;37;38;39;40;41;42;43;44;45;46;47;48;49、および50であり、1対1;2;3;4;5;6;7;8;9および10である。
【0071】
1つの例示的実施形態において、放射線硬化性組成物中のアクリレートの、光活性樹脂とアミンとの合計に対する重量比は、25対1;2;3;4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;21;22;23;24;および25におよび、1対1;2;3;4;および5の範囲である。さらに別の例示的実施形態において、放射線硬化性組成物中のアクリレートの、光活性樹脂とアミンとの合計に対する重量比は、5対1;2;3;4;5、および1対1;および2の範囲である。
【0072】
本発明の第4の態様にしたがって、放射線硬化性組成物の合成が記載される。例示的実施形態では、本発明の硬化性組成物は、アクリレート、一般式1の光活性樹脂および一般式IIの第3級アミンを約25〜125℃で溶解、混合またはブレンドすることによって作成される。光活性樹脂および第3級アミンをアクリレート中に溶解させるために高温を使用する場合、成分を空気で脱気することができる。好ましくは約0.05〜2重量%での重合阻害剤の添加はさらに、温度60℃超で溶解させる場合、アクリレートの未成熟重合を回避するために有益であり得る。
【0073】
放射線硬化性組成物を合成するためのさらなる例示的実施形態にしたがって、680mlのエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(米国のEbecryl TMPOTA、Cytec companyの製品)を10.0gの重合阻害剤Genorad 18(スイス国のRahn−groupの製品)で溶解させ、そして室温で撹拌した。溶液に空気を散布し、80℃まで加熱した。250.0gの前記式Iの光活性樹脂の粉末化合物を1時間かけて等量ずつ添加した。混合物をさらに3時間80℃で撹拌した。70.0gの前記式IIの第3級アミンを添加し、150μmの真鍮製篩を通して熱時ろ過し、そして缶詰にした。
【0074】
硬化性組成物は、3〜4のカードナー色数および25℃で845mPasの粘度(剪断速度D=50 1/s)を有する黄色液体である。粘度は、Anton Parr GmbH製のPhysika300レオメータで測定した。
【0075】
放射線硬化性インク
本発明の第5の態様にしたがって、放射線硬化性インクが記載される。放射線硬化性インクは、放射線硬化性組成物、すなわちワニス、着色剤および添加剤を含む。ワニスは放射線硬化性組成物として詳細に上で記載した。
【0076】
1つの実施形態において、放射線硬化性インクは前述の光活性樹脂を含む。樹脂は、放射線硬化性インクの30重量%以下;29重量%以下;28重量%以下;27重量 %以下;26重量 %以下;25重量 %以下;24重量 %以下;23重量 %以下;22重量 %以下;21重量 %以下;20重量 %以下;19重量 %以下;18重量 %以下;17重量 %以下;16重量 %以下;15重量 %以下;14重量 %以下;13重量 %以下;12重量 %以下;11重量 %以下;10重量 %以下;9重量 %以下;8重量 %以下;7重量 %以下;6重量 %以下;5重量 %以下;4重量 %以下;3重量 %以下;2重量 %以下;および1重量 %以下の量で存在する。
【0077】
別の実施形態では、放射線硬化性インクは、ケトン樹脂と新規光活性樹脂である少なくとも1つとの混合物を含む。さらに別の実施形態において、放射線硬化性インクは、前記開示の式IIIによる標準ケトン樹脂と組み合わせた新規光活性樹脂の混合物を含む。例示的実施形態では、混合物は30:70〜70:30;40:70〜70:30;50:70〜70:30;60:70〜70:30である。別の例示的実施形態において、混合物は30:70〜60:40;30:70〜50:50;30:70〜40:60である。さらに別の例示的実施形態では、混合物は約50:50である。
【0078】
別の実施形態によれば、放射線硬化性インクは上述の1以上のアクリレートを含む。例示的実施形態では、アクリレートは多官能性アクリレートモノマーまたはアクリレートオリゴマーまたはそれらの混合物である。放射線硬化性インク中のアクリレートの総量は、約60重量%以下;59重量%以下;58重量%以下;57重量%以下;56重量%以下;55重量%以下;54重量%以下;53重量%以下;52重量%以下;51重量%以下;50重量%以下;49重量%以下;48重量%以下;47重量%以下;46重量%以下;45重量%以下;44重量%以下;43重量%以下;42重量%以下;41重量%以下;40重量%以下;39重量%以下;38重量%以下;37重量%以下;36重量%以下;35重量%以下;34重量%以下;33重量%以下;32重量%以下;31重量%以下;30重量%以下;29重量%以下;28重量%以下;27重量%以下;26重量%以下;25重量%以下;24重量%以下;23重量%以下;22重量%以下;21重量%以下;20重量%以下;19重量%以下;18重量%以下;17重量%以下;16重量%以下;15重量%以下;14重量%以下;13重量%以下;12重量%以下;11重量%以下;10重量%以下;9重量%以下;8重量%以下;7重量%以下;6重量%以下;5重量%以下;4重量%以下;3重量%以下;2重量%以下;および1重量%以下である。
【0079】
別の実施形態によれば、放射線硬化性インクは、1以上の上述のアミンを含む。例示的実施形態では、アミンは第3級アミンである。放射線硬化性インク中のアミンの総量は、約20重量%以下;19重量%以下;18重量%以下;17重量%以下;16重量%以下;15重量%以下;14重量%以下;13重量%以下;12重量%以下;11重量%以下;10重量%以下;9重量%以下;8重量%以下;7重量%以下;6重量%以下;5重量%以下;4重量%以下;3重量%以下;2重量%以下;および1重量%以下である。
【0080】
放射線硬化性インクはさらに着色剤も含んでもよい。着色剤は顔料または染料であってよい。着色剤は有機または無機であってよい。染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、キサンテン染料、アジン染料、それらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
有機顔料は、例えばピグメントイエロー12、13、14、17、74、83、114、126、127、174、188;ピグメントレッド2、22、23、48:1、48:2、52、52:1、53、57:1、112、122、166、170、184、188、202、266、269;ピグメントオレンジ5、16、34、36;ピグメントブルー15、15:3、15:4;ピグメントバイオレット3、23、27;および/またはピグメントグリーン7などの、1つの顔料であってもよいし、または顔料の組み合わせであってもよい。
【0082】
顔料はさらに、ピグメントブラック7(カーボンブラック)または他の無機顔料、たとえばピグメントホワイト6(二酸化チタン)、ピグメントブラック11(黒色酸化鉄)、ピグメントレッド101(赤色酸化鉄)およびピグメントイエロー42(黄色酸化鉄)であってもよい。これらの顔料のうち、本発明で使用するのに好適なのは、従来型の有機顔料、たとえば:ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー37、ピグメントイエロー63、ピグメントイエロー65、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー75、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー98、ピグメントイエロー106、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー121、ピグメント26イエロー126、ピグメントイエロー136、ピグメントイエロー174、ピグメントイエロー176、ピグメントイエロー188、ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ13、ピグメントオレンジ16、ピグメントオレンジ34、ピグメントレッド2、ピグメントレッド9、ピグメントレッド14、ピグメントレッド17、ピグメントレッド22、ピグメントレッド23、ピグメントレッド37、ピグメントレッド38、ピグメントレッド41、ピグメントレッド42、ピグメントレッド112、ピグメントレッド146、ピグメントレッド170、ピグメントレッド188、ピグメントレッド196、ピグメントレッド210、ピグメントレッド238、ピグメントブルー15、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン36、ピグメントバイオレット23、またはピグメントブラック7を含むカーボンブラックなどである。
【0083】
無機顔料としては、酸化鉄、二酸化チタン、酸化クロム、フェロシアン化第2鉄アンモニウム、黒色酸化鉄、ピグメントブラック7および/またはピグメントホワイト6および7を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。他の有機および無機顔料および染料も、望ましい色を達成する組み合わせと同様に用いることができる。
【0084】
着色剤はエネルギー硬化性石版インク中で25重量%未満;24重量%未満;23重量%未満;22重量%未満;21重量%未満;20重量%未満;19重量%未満;18重量%未満;17重量%未満;16重量%未満;15重量%未満;14重量%未満;13重量%未満;12重量%未満;11重量%未満;10重量%未満;9重量%未満;8重量%未満;7重量%未満;6重量%未満;5重量%未満;4重量%未満;3重量%未満;2重量%未満;および1重量%未満の量で存在し得る。
【0085】
別の実施形態によれば、放射線硬化性インクはさらに1以上の光開始剤を含んでもよい。さらに別の実施形態によれば、エネルギー硬化性石版インクは光開始剤を含む。光開始剤は、光で照射することによって架橋反応または重合などの反応を誘導して、プレポリマーの分子量を増大させる。そのような場合、光開始剤が例えば、ベンゾインアルキルエーテル誘導体、ベンゾフェノン誘導体、a−アミノアルキルフェノン型、オキシムエステル誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、アシルホスフィンオキシ−50イド誘導体、グリオキシエステル誘導体、有機過酸化物型、トリハロメチルトリアジン誘導体またはチタノセン誘導体である可能性がある場合。具体的には、IRGACURE 651、IRGACURE 184、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE 2959、55 IRGACURE 754、IRGACURE 907、IRGACURE 369、IRGACURE 1300、IRGACURE 819、IRGACURE 819DW、IRGACURE 1880、IRGACURE 1870、DAROCUR TPO、DAROCUR 4265、IRGACURE 784、IRGACURE OXE0l、IRGACURE OXE02またはIRGACURE 250(60 Ciba Specialty Chemicals K.K.製造)、KAYACURE DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMSまたはKAYACURE 2−EAQ(Nippon Kayaku Co.、Ltd.製造)、TAZ101、TAZ−102、TAZ−103、TAZ−104、TAZ−106、TAZ−107、TAZ−108、TAZ−110、TAZ−113、TAZ−114、TAZ−118、TAZ− 65 122、TAZ−123、TAZ− 140 or TAZ−204(Midori Kagaku Co.、Ltd.製造)を例えば挙げることができる。
【0086】
光開始剤は単独で、または2以上の光開始剤の混合物として組み合わせで用いることができる。高感度開始剤が望ましい。なぜなら、低照射エネルギーによって硬化を実施することが可能であるからである。IRGACURE907(アルファ−アミノアルキルフェノン型)、IRGACURE369(アルファ−a−アミノアルキルフェノン型)、DAROCUR TPO(アシルホスフィンオキシド型)、IRGACURE OXE01(オキシムエステル誘導体)またはIRGACURE OXE02(オキシムエステル誘導体)が好ましく、DAROCUR TPO、IRGACURE OXE01またはIRGACURE OXE02が特に好ましい。
【0087】
光開始剤は、放射線硬化性石版インク中、約15重量%未満;14重量%未満;13重量%未満;12重量%未満;11重量%未満;10重量%未満;9重量%未満;8重量%未満;7重量%未満;6重量%未満;5重量%未満;4重量%未満;3重量%未満;2重量%未満;および1重量%未満、0.9重量%未満;0.8重量%未満;0.7重量%未満;0.6重量%未満;0.5重量%未満;0.4重量%未満;0.3重量%未満;0.2重量%未満;および0.1重量%未満の量で存在してもよい。
【0088】
放射線硬化性インクのさらに別の実施形態によると、インク組成物は本質的に光開始剤を含まないものであり得る。例示的実施形態では、光開始剤は、少量、好ましくは1.5重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満の量で存在してもよい。これらの光開始剤は、約500ダルトン未満の低分子量のもの、たとえベンゾフェノン、ベンジルケタール、ジアルコキシアセトフェノン、ヒドロキシアルキルアセトフェノン、アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシドおよびチオキサントン、たとえばベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4(メトキシチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−2−オン、ジフェニルアシルフェニルホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントンである。
【0089】
本発明のさらに別の例示的実施形態によると、放射線硬化性インクは、硬化したコーティングまたは印刷されたインクの流動、表面張力、光沢および耐摩耗性を修飾するための通常の添加剤を含有してもよい。インクまたはコーティング中に含まれるそのような添加剤は、典型的には表面活性剤、ワックス、またはそれらの組み合わせである。これらの添加剤は、均展剤、湿潤剤、スリップ剤、抗ミスティング剤(anti misting agnet)、分散剤および脱気剤として機能することができる。好ましい添加剤としては、フルオロカーボン界面活性剤、シリコーンおよび有機ポリマー界面活性剤ならびにタルクなどの無機材料が挙げられる。概して、添加剤の量は放射線硬化性インクの約10重量%未満;9重量%未満;8重量%未満;7重量%未満;6重量%未満;5重量%未満;4重量%未満;3重量%未満;2重量%未満;および1重量%未満である。
【0090】
例示的実施形態によると、エネルギー硬化性リソグラフインクはワックスを含む。ワックスとしては、パラフィン系ワックス、カルナウバワックス、ミネラルワックス、モンタンワックスおよびその誘導体、石油ワックス、および合成ワックス、たとえばポリエチレンおよび酸化ポリエチレンワックスを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。例示的実施形態では、ワックスはエネルギー硬化性石版インク中、5重量%未満;4重量%未満;3重量%未満;2重量%未満;1重量%未満、0.9重量%未満;0.8重量%未満;0.7重量%未満;0.6重量%未満;0.5重量%未満;0.4重量%未満;0.3重量%未満;0.2重量%未満;および0.1重量%未満の量で存在してもよい。
【0091】
例示的実施形態によると、ラジカル重合阻害剤としては、ヒドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノールまたはTEMPOが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物に限定されず、そのような阻害剤には、キノンまたはヒドロキノン単位を有する化合物、特にベンゾキノンおよび置換ベンゾキノン、ヒドロキノンおよび置換ヒドロキノン、たとえば2,6−ジメチルヒドロキノン;ヒドロキノンのエーテル、特にヒドロキノンおよび置換ヒドロキノンのエーテル、たとえばヒドロキノンモノメチルエーテル(4−メトキシフェノール)、t−ブチルヒドロキノン(4−t−ブチルフェノール、TBHQ)、およびt−ブチルヒドロキシアニソール(BHA);レゾルシノール;ピロガロール;亜リン酸エステル;および立体的に遮蔽されたフェノールおよびビスフェノール、たとえば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2,6−ジ−t−ブチル−4メトキシフェノールおよび2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール;安定なフリーラジカル、たとえばジ−t−ブチルニトロキシドおよび2,2,6,6−テトラメチル−4ピリドンニトロキシド;ニトロ置換芳香族,;フェノチアジンおよび第2級ジアリールアミン、たとえば置換ジフェニルアミン、Ν,Ν’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンおよびN−フェニルナフチルアミン金属錯体または塩、たとえばビス(ジブチルジチオカルバマート)銅およびアルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンが含まれる。キノン、ヒドロキノン、ヒドロキノンのエーテルおよび立体的に遮蔽されたフェノールが好ましいフリーラジカル阻害剤である。さらに好ましいのは、ヒドロキノンのエーテル、特にヒドロキノンのエーテルおよび立体的に遮蔽されたフェノールである。ヒドロキノンモノメチルエーテル(4−メトキシフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノールビス(ジブチルジチオカルバマート)銅およびアルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンが好ましい化合物である。
【0092】
本発明の組成物のさらなる成分として、1以上の他の構成要素を慣例にしたがって本発明の組成物に組み入れてもよい。これらの任意の添加剤としては、1以上のさらなる溶剤;光沢改変剤(gloss modifier);スリップ改変剤(slip modifier);消泡剤;フローまたは他のレオロジー調節剤、油;可塑剤;結合剤;抗酸化剤;安定剤;殺真菌剤;殺菌剤;有機および/または無機充填粒子;均展剤;乳白剤;帯電防止剤;分散剤;などが挙げられる。
【0093】
本発明の第6の態様にしたがって、放射線硬化性インクの合成が記載される。本発明の放射線硬化性組成物の高い反応性のために、それらは、例えばUVフレキソインク、UVジェットインク、UVグラビアインクまたはUVオフセットインクなどの放射線硬化性印刷インクに特に適している。顔料および染料は通常、重合のためのラジカルを形成するために必要な光を吸収し、したがって非常に反応性に富む放射線硬化性組成物がインクのために好ましい。インクは通常、乾燥顔料をすりつぶすことによるか、または顔料プレスケーキ(press−cake)をフラッシュすることによって作成される。低移行性インクのためには、ミルビーズからの摩耗物質がインクを汚染する可能性があるので、乾式粉砕(dry grind)が好ましい。インクのための典型的な製造手順では、必要とされる量の乾燥顔料を本発明のケトン樹脂のアクリレート中溶液とミキサーで15〜30分間混合して、全ての顔料を湿らせる。分散された顔料を次いで所望の粉砕規格(grind specification)が満たされるまで、三本ロール練り機で粉砕する。モノマー、オリゴマー、および添加剤(複数可)、たとえばワックス、タルクなどを含有するレットダウンビヒクル(letdown vehicle)を次いでこの練り顔料に添加し、所望の粒子サイズおよび色強度が達成されるまで、三本ロール練り機に1回または2回通す。インクの粘着性および粘度をレオメータおよびインコメーター(inkometer)で試験し、適切な量のモノマー(複数可)を添加することによって調節して、完成インクを得る。
【0094】
例示的実施形態では、54.0重量%の本発明の放射線硬化性ワニスを混合容器中に入れ、15重量%のピグメントイエロー14と30分間混合した。放射線硬化性組成物の内訳は、50重量%のトリメチルプロパントリアクリレート、42重量%の式Iの光活性樹脂および8重量%の式IIの第3級アミンであった。他の添加剤およびモノマーを添加し、15分間撹拌した。混合物を三本ロール練り機に、5バールで1回、15バールで2回通した。インクは、Physika300レオメータを使用して前述のように測定して25℃にて42.1Pasの粘度(D=50 1/s)、4.8のショートネス比(shortness ratio)(D=2.5 1/sでの粘度をD=100 1/sでの粘度で割ったもの)および300rpmにてPriifbau Ink−o−matで16INKOの粘着性を示した。組成を下記表1で詳細に記載する。
【0095】
【表1】
【0096】
別の例示的実施形態にしたがって、乾式粉砕法によって調製されるオフセットインク配合物が記載される。配合物は25℃で20〜50Pasの粘度を示した(D=50 1/s)。インク配合物は表2に記載した成分を含む。
【0097】
【表2】
【0098】
別の実施形態にしたがって、練り顔料から調製されたUVフレキソ印刷インク配合物が記載される。配合物は25℃で0.5〜2Pasの粘度を示した(D=50 1/s)。配合物は下記表3で記載される成分を含む。
【0099】
【表3】
【0100】
別の実施形態にしたがって、三本ロール練り機から調製されたUVスクリーンインク配合物が記載される。配合物は25℃で15〜30Pasの粘度を示した(D=50 1/s)。配合物は下記表4で記載される成分を含む。
【0101】
【表4】
【0102】
印刷製品
本発明の第7の態様にしたがって、基体上に施用される本発明の放射線硬化性組成物またはインクを含む印刷製品が記載される。放射線硬化性組成物またはインクをUV放射などのエネルギー源で硬化させる。印刷される基体は、紙またはボール紙などのセルロース系材料、プラスチック、金属、および複合材料などの任意の典型的な基体材料から構成されていてもよい。基体は、出版のために典型的に用いられる印刷素材であってもよく、またはシートの形態の包装材料、瓶もしくは缶などの容器の形態であってもよい。ほとんどの場合、包装材料は、ポリオレフィン、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン、ポリエステル、たとえばポリエチレンテレフタレート、または金属、たとえばアルミ箔、金属化ポリエステル、または金属容器である。コールドホイルラミネーション(cold foil lamination)では、基体は金属箔とは違う可能性があると理解される。すなわち、基体および金属箔は異なる表面特性を有する。任意の種類の液体または固体材料、たとえば食品、飲料、化粧品、生物学的物質または標本、薬剤などを収容するために包装材料を使用することができる。
【0103】
結果および考察
分析試験のために、本発明の放射線硬化性組成物およびインクをボール紙基体上に12μmワイヤアプリケータでコーティングし、約500から約100mJ/cmまでUV線量を漸減させてUV硬化させた。
【0104】
1つの試験では、放射線硬化性組成物を、良、可、不良および不十分/未硬化という硬化評点に基づいて視覚的に試験した。良の硬化とは、表面が乾燥し、かつ非粘着性であると定義される。可の硬化とは、表面は乾燥しているが、あとまたは指紋が残っていると定義される。不良な硬化とは、べとべとして粘着性の表面により定義される。不十分/未硬化とは、湿ったままの表面によって定義される。
【0105】
本出願で用いられる別の試験は「親指ツイスト(Thumb Twist)」試験である。親指ツイスト試験は、乾燥放射線硬化性組成物、すなわちワニス、および放射線硬化性インクにも使用することができる。具体的には、一方の面上に硬化したインク層を有する基体の反対面を硬質表面上に置く。次いで、親指1本を基体に押し付け、約90度回転させる。親指に移行したインクの量およびインク表面の外観に応じて、インクの硬化を(優秀1←→5不良)と採点する。1〜3の評点は:(i)親指に移行するフィルムはほとんどなく、(ii)フィルムは視覚的に破壊されていないようである、と定義される。4の評点は、表面にあとまたは指紋が残っていることによって定義される。5の評点は、不十分な硬化度として定義され、表面はべとべとしているかまたは粘着性である。「親指ツイスト」試験は、C Lowi, G. Webster, S. Kellse and I. McDonald’s “Chemistry & Technology for UV & EB Formulation for Coatings, Inks & Paints” volume 4, p. 54, published in 1997 by John Wiley & Sons Ltd. in association with SITA Technology, Ltd., ISBN 0 947798 54 4, and in C. Lowe and R.Kでさらに記載されている。
【0106】
硬化したインク表面をイソプロピルアルコールに浸した綿布でこすることによるIPA耐溶剤性試験を用いる。インクが影響を受けないダブルラブ(double−rubs)(往復擦り)の回数を記録する。我々のインクで、評点は次の通りであった:1優(20超のダブルラブ)、2秀(10超のダブルラブ)、3良(約5のダブルラブ)、4可(2〜3のダブルラブ)、不良(1〜2のダブルラブ)。ASTM D5402−06はこの試験の手順をさらに記載する。
【0107】
さらに別の実施形態では、US2012/0171434A1で段落[0039]に開示されているセットオフ試験を用いて、10トンの圧力を5秒間かけた際の基体の反対側に移る放射線硬化性組成物の移行の程度を決定する。まず、インクをボール紙基体の表面上にIGTプリントプルーファー(IGT5)で施用する。直後に、インクを200ワットのFusion H−電球で400フィート(約122m)/分の線速度にてUV硬化させ、板紙基体(インカダ・エクセル(incada exel)または絹−3×3cm)の反対面を硬化インク試料上に施用する。両者をプレスに導入し、10トンの圧力を5秒間加える。圧力が到達したらすぐにプリントをはずす。板基体上の裏移り(set off)材料をデンシトメーターで測定し、標準と比較する。理想的な場合、インクは移行せず、デンシトメーターの読みは0(優)である。同じ硬化条件下および印刷密度で競合インクと比較することによって、デンシトメーターの数値が低いインクほど良好に硬化する。異なる色のインクの光学密度は次のとおりである:黄色については1.25〜1.3、マゼンタについては1.4〜1.45、シアンについては1.5〜1.55および黒色については1.75〜1.80。
【0108】
図1は、放射線硬化性組成物の三成分相図を示す。上の角は式Iと記載され、左の角はアクリレートと記載され、右の角は式IIと記載される。図1中の凡例は、前記定義の「良の硬化」評点を示す乾燥および硬化面を得るために必要なUV線量をmJ/cmで提供する。
【0109】
以下に示す表5により、そしてさらに図1を参照して、1、2、4、5、8および9の点に位置する放射線硬化性組成物は「良の硬化」評点を示す。すなわち、約400mJ/cm未満のUV線量が必要である。3、6および7の点の放射線硬化性組成物は、「良」の硬化評点を得るために400mJ/cmを超えるUV線量を必要とし、高速硬化の目的に理想的でないと考えられる相図の部分に位置する。本発明者らによると、概してアクリレートの式IおよびIIの合計に対する比が高い方が望ましい。しかしながら、3の点の放射線硬化性組成物によって示されるように、アクリレートの式IおよびIIの合計に対する比が低すぎる場合、組成物はアクリレート硬化しない。一方、6の点で示されるように、アクリレートの量が式IおよびIIの合計と比べて多すぎる場合、この場合も硬化結果が減少し、式Iの量が式IIに対して放射形成(radial formation)を有効に引き起こすには低すぎるためである。したがって、高いアクリレート含有量にかかわらず、硬化は抑制される。
【0110】
加えて、式IIよりも多量の式Iが好ましいが、必要ではない。例えば、4の点に位置する放射線硬化性組成物は約400mJ/cm未満の硬化量で依然として「良の硬化」結果を示す。しかしながら、7の点に位置する放射線硬化性組成物におけるように、式Iの量が式IIよりも大幅に少ない場合、400mJ/cmを超えるUV硬化量が必要である。
【0111】
【表5】
【0112】
表6で示されるように、本発明の光活性樹脂の有効性を従来型のケトン樹脂と比較する。各実施例で、トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer SR351)は、成分Aとして表されるアクリレートである。各実施例において、オリゴマーアミノベンゾエート、たとえばGenopol AB−1を成分Cと表した。成分Bと表されるケトン樹脂を別に溶解させ、成分Cと混合した。表6は、一般式Iのケトン樹脂(エントリー1)を含有する本発明の放射線硬化性組成物が市販のケトン樹脂(エントリー2〜5)と比較して優れた硬化を示すことを示す。これは、500mJ/cmで「良」の硬化評点および250mJ/cmで「可」の硬化評点によって観察される。エントリー2〜5の放射線硬化性組成物はどれも500mJ/cm以下の量で硬化することができなかった。このデータに基づいて、エントリー1に関してさらに速い硬化速度が間接的に実現される。なぜなら、乾燥として定義される「良」の硬化の評点を得るために必要な硬化量が少ないからである。
【0113】
【表6】
【0114】
表7に記載される実験は、同じアクリレートおよび樹脂成分を維持しつつ、異なるアミン(成分C)を用いる場合の硬化データに関するものである。トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer SR351)が成分Aであり、実施例1の樹脂が成分Bである。成分AおよびBを溶解させ、そしていくつかの異なるアミン(成分C)と別に混合する。放射線硬化性組成物をボール紙上に12μmワイヤアプリケータでコーティングし、UV線量を500mJ/cmから100mJ/cmまで漸減させてUV硬化させた。UV硬化後、上述のように、硬化したコーティングを表面の状態に応じて評価した。表7は、一般式IIのアミンを含有する本発明の放射線硬化性組成物(エントリー1および6)が、他のアミンを含有する放射線硬化性組成物(エントリー3、4、5および7)と比較して優れた硬化を示すことを明示する。すなわち、エントリー3、4、5および7は500mJ/cm以下の硬化量で硬化することができない。
【0115】
【表7】
【0116】
表8の実験に関して、成分Aであるトリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer SR351)中で、異なる芳香族ケトン樹脂(成分B)を溶解させ、オリゴマー芳香族アミン(成分C)と混合した。放射線硬化性組成物をボール紙上に12μmワイヤアプリケータでコーティングし、そしてUV線量を250から165mJ/cmまで漸減させてUV硬化させた。UV硬化後、硬化したコーティングを上述のように表面の状態に応じて採点した。
【0117】
【表8】
【0118】
表8は、一般式1のケトンを含有する本発明の放射線硬化性組成物(エントリー1)が、他の芳香族ケトン樹脂を含有する放射線硬化性組成物(エントリー2および3)と比較して優れた硬化を示すことを示す。
【0119】
以下で示す表9にしたがって、約10重量%の本発明の改変ケトン樹脂を含むオフセットインクの増強した反応性を、UVドライヤーを備えたDiddeリソグラフ印刷機でのプレス試験で使用した。Sun Chemical標準低移行性シアンプロセスインクを本発明の低移行性インクと比較する。本発明のインクは同じ量の光開始剤でより良好な硬化を示す。この試験では、約1.2重量%のタイプI光開始剤および5.2重量%のタイプII光開始剤を使用する。200ワットの電球を用いて400フィート/分で硬化させると、本発明のインクは親指ツイスト試験およびIPA溶剤試験に基づいてより良好な耐溶剤性を示し、高い印刷速度でフィードバックが少なく、高い印刷速度でパイリングが少ない。
【0120】
【表9A】
【表9B】
【0121】
下記表10中の本発明の黒色低移行性インク対Sun Chemicalの標準低移行性黒色インクの実験室評価。本発明のインクは、開裂型タイプI光開始剤を有さないで同じ効果レベルを示す。残存する開裂型タイプI光開始剤およびそれらの開裂生成物は、通常、移行の主原因とみなされる。これらの成分は、包装基体中に包まれた食材製品の臭気およびまずい味の原因となる。したがって、本発明のインクは改善された移行特性を示す。
【0122】
【表10】
粘着性:較正された「Tack−o−scope」で測定
(1mlインクを30℃、50rpmで90秒間、次いで300rpmで30秒間保持。次いで粘着性値を150rpmで取得する)
粘度:25℃(D=2〜100 1/s)にてCone & plate Physika 300レオメータ
【0123】
本発明を、その好ましい実施形態を含めて詳細に記載した。しかしながら、本開示を考慮すると、本発明が本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの変更、置換、部分の再配列および/または改善が可能であることは、当業者には明らかであろう。
図1