【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の発明者等は、意外なことに、そのようなプロセスが、シングルサイト触媒成分、触媒活性化剤および改質剤を含有する担体を含む、オレフィンの重合のための触媒組成物であって、改質剤が、一般式(1)
【0016】
のアルミニウム化合物を、一般式(2)
【0017】
のアミン化合物と反応させることにより得られた生成物であり、式中、
R1は、水素、もしくは1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖または直鎖の、置換または未置換炭化水素基であり、
R2およびR3は、同じかまたは異なり、1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖または直鎖の、置換または未置換炭化水素基から選択され、
R4は、水素または少なくとも1つの活性水素を有する官能基であり、
R5は、水素、もしくは1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基であり、
R6は、1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基である、触媒組成物を使用することによって行われるであろうことを発見した。
【0018】
本発明の重要な特徴は、シングルサイト触媒成分、触媒活性化剤および改質剤が、担体により収容されていることである。言い換えれば、本発明の触媒組成物において、シングルサイト触媒成分、触媒活性化剤および改質剤は全て担体上に存在し、改質剤と、シングルサイト触媒成分および触媒活性化剤を含有する担体とを別々に添加する必要がなくなる。
【0019】
本発明の触媒組成物は、触媒組成物に基づいて、0.01〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%、より好ましくは0.3〜2質量%の改質剤を含有してよい。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態において、アルミニウム化合物およびアミン化合物の量は、改質剤において、Al対Nのモル比が、1:3から5:1、好ましくは1:2から3:1、より好ましくは1:1.5から1.5:1の範囲にあるように選択される。本発明の発明者は、この範囲内で、本発明の技術効果の良好な組合せが得られることを発見した。Al対Nのモル比が1:3より低い場合、ファウリングおよび/またはシーティングが生じるかもしれず、一方で、Al対Nのモル比が5:1より高い場合、触媒の生産性が低下する、すなわち、触媒のグラム当たりに生成されるポリマーの量が減少する。最も好ましいモル比は1:1である。
【0021】
一般式(2)の化合物において、R4は、水素または少なくとも1つの活性水素を有する官能基であり、R5は、水素、もしくは1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基であり、R6は、1〜30の炭素原子(置換基の炭素原子を含む)を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基である。1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基は、1〜30の炭素原子を有するアルキル基であることが好ましく、例えば、1〜30の炭素原子を有するアルキル基、例えば、1〜30の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状アルキル、アラルキル基、または1〜30の炭素原子を有するアルカリル基である。
【0022】
改質剤を調製するための反応に使用されるアミン化合物は、ただ1つのアミン化合物または2種類以上の異なるアミン化合物の混合物であってよい。本発明の改質剤を調製するのに使用されるアミン化合物は、好ましくは少なくとも8の炭素原子、より好ましくは少なくとも12の炭素原子の炭化水素基、例えば、1から15の炭素原子のアルキル基を有する。アミン化合物は、第一級、第二級または第三級のアミンであってよい。アミン化合物が第一級アミンであることが好ましい。
【0023】
本発明の実施の形態において、アミン化合物は、オクタデシルアミン、エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ベンゼンジメタンアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンおよび6−アミノ−1,3−ジメチルウラシルからなる群より選択される。
【0024】
改質剤を調製するための反応に使用されるアルミニウム化合物は、ただ1つのアルミニウム化合物または2種類以上の異なるアルミニウム化合物の混合物であってよい。R1、R2およびR3の各々は、独立して、1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖または直鎖の、置換または未置換炭化水素基を表してよく、例えば、各々が独立して、アルキルを表してよく、R1、R2およびR3の全てがアルキルを表すことが好ましく、R1、R2およびR3が同じであることがより好ましい。
【0025】
本発明のアルミニウム化合物が、トリアルキルアルミニウム(R1=R2=R3=アルキル)または水素化ジアルキルアルミニウム(R1=水素、R2=R3=アルキル)であることが好ましい。本発明の実施の形態において、アルミニウム化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、または水素化ジメチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジプロピルアルミニウム、水素化ジブチルアルミニウム、水素化ジイソプロピルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムからなる群より選択される。これらの材料は、容易に入手でき、アミンと反応性が良好である。
【0026】
ここに用いたアルキルは、炭素原子および水素原子のみを含有し、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどのアルカンから得られる、炭化水素基を意味するものとして当業者に理解されるであろう。アルキルは、分岐鎖、直鎖または環状であってよい。R1、R2およびR3の各々が、独立して、直鎖または分岐鎖アルキルを表すことが好ましい。
【0027】
好ましい実施の形態において、アルミニウム化合物はトリアルキルアルミニウムであり、アミン化合物は第一級アミンであり、アミン化合物が、オクタデシルアミン、エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ベンゼンジメタンアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンおよび6−アミノ−1,3−ジメチルウラシルからなる群より選択されることが好ましい。
【0028】
本発明の触媒成分が、以下の一般式I
【0029】
のメタロセン触媒であることが好ましく、式中、
Mは、ランタニド系元素および元素の周期表の3、4、5または6族からなる群より選択される遷移金属であり、Mは、Ti、ZrおよびHfからなる群より選択されることが好ましく、Zrが最も好ましい;
Qは、Mに対する陰イオン配位子である;
kは、陰イオン配位子Qの数を表し、Mの価数から2を引いて、陰イオン配位子Qの価数で割ったものと等しい;
Rは、アルキルなどの炭化水素架橋基であり、Rは、インデニル基の2位に結合したsp2−混成軌道にある炭素原子少なくとも1つを含有することが好ましい;
ZおよびXは置換基である。
【0030】
別の好ましい実施の形態において、メタロセン触媒は、下記の一般式II
【0031】
のものであり、式中、
Mは、ランタニド系元素および元素の周期表の3、4、5または6族からなる群より選択される遷移金属であり、Mは、Ti、ZrおよびHfからなる群より選択されることが好ましく、Zrが最も好ましい;
Qは、Mに対する陰イオン配位子である;
kは、陰イオン配位子Qの数を表し、Mの価数から2を引いて、陰イオン配位子Qの価数で割ったものと等しい;
Rは、アルキルなどの炭化水素架橋基であり、Rは、インデニル基の2位に結合したsp2−混成軌道にある炭素原子少なくとも1つを含有することが好ましい;
ZおよびXは置換基である。
【0032】
上記の一般式IおよびIIのメタロセン触媒における架橋基Rが少なくとも1つのアリール基を含有することが好ましい。例えば、アリール基は、フェニレンまたはナフタレンなどのモノアリール基、またはビフェニリデンまたはビナフチルなどのビアリール基であってよい。架橋基Rがアリール基を表すことが好ましく、Rがフェニレンまたはビフェニリデン基を表すことが好ましい。架橋基Rは、sp2混成軌道にある炭素原子を介してインデニル基に連結されている、例えば、フェニレン基は、1位と2位を介して連結されてもよく、ビフェニレン基は、2位と2’位を介して連結されていてよく、ナフタレン基は、2位と3位を介して連結されていてよく、ビナフチル基は、2位と2’位を介して連結されていてよい。Rが、1位と2位を介してインデニル基に連結されたフェニレン基を表すことが好ましい。Rは、2,2’−ビフェニレンであってよい。
【0033】
上記式IおよびIIにおける置換基Xは、各々が別々に、水素、または1〜20の炭素原子を有する炭化水素基(例えば、アルキル、アリール、アリールアルキル)であってよい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルおよびデシルがある。アリール基の例には、フェニル、メシチル、トリルおよびクメニルがある。アリールアルキルの例には、ベンジル、ペンタメチルベンジル、キシリル、スチリルおよびトリチルがある。他の置換基の例には、塩化物、臭化物、フッ化物およびヨウ化物などのハロゲン化物、メトキシ、エトキシおよびフェノキシがある。また、2つの隣接する炭化水素ラジカルは、環系において、互いに連結されていてよい。Xは、炭素および/または水素の代わりに、またはそれに加え、元素の周期表の14、15または16族からのヘテロ原子を1つ以上含んでもよい、置換基であってよい。そのようなヘテロ原子含有置換基の例には、アルキル硫化物(MeS−、PhS−、n−ブチル−S−など)、アミン(Me2N−、n−ブチル−N−など)、SiまたはB含有基(Me3Si−、Et2B−など)もしくはP含有基(Me2P−、Ph2P−など)がある。X置換基が水素であることが好ましい。
【0034】
上記式IおよびIIにおける置換基Zは、各々が別々に、置換基Xについて先に定義したような置換基であってよい。Z1およびZ2置換基は、X1およびX4置換基と一緒に、インデニル化合物においてインデニル基をシクロペンタジエニル基と接続する第2の架橋を形成しても差し支えない。
【0035】
本発明に使用するためのメタロセン触媒の例には、[オルト−ビス(4−フェニル−2−インデニル)−ベンゼン]ジルコニウムジクロリド、[オルト−ビス(5−フェニル−2−インデニル)−ベンゼン]ジルコニウムジクロリド、[オルト−ビス(2−インデニル)−ベンゼン]ジルコニウムジクロリド、[オルト−ビス(2−インデニル)−ベンゼン]ハフニウムジクロリド、[オルト−ビス(1−メチル−2−インデニル)−ベンゼン]ジルコニウムジクロリド、[2,2’−(1,2−フェニルジイル)−1,1’−ジメチルシリル−ビス(インデン)]ジルコニウムジクロリド、[2,2’−(1,2−フェニルジイル)−1,1’−ジフェニルシリル−ビス(インデン)]ジルコニウムジクロリド、[2,2’−(1,2−フェニルジイル)−1,1’−(1,2−エタンジイル)−ビス(インデン)]ジルコニウムジクロリド、[2,2’−ビス(2−インデニル)ビフェニル]ジルコニウムジクロリドおよび[2,2’−ビス(2−インデニル)ビフェニル]ハフニウムジクロリドがある。
【0036】
メタロセン触媒成分が、金属基Mとしてジルコニウムを含有することが好ましい。前記触媒組成物中のジルコニウムの量が、触媒組成物に基づいて、0.02〜1質量%の範囲にあることが好ましく、0.15〜0.30質量%がより好ましい。
【0037】
特別な実施の形態において、本発明は、メタロセン触媒、好ましくは、ビフェニル(2−インデニル)
2ZrCl
2、(メチル)アルミノキサンまたは修飾メチルアルミノキサンおよび改質剤を含有する担体を含む、オレフィンの重合のための触媒組成物であって、改質剤が、オクタデシルアミン、2−エチルヘキシルアミンまたはシクロヘキシルアミンをトリイソブチルアルミニウムと反応させることによって得られる生成物である、触媒組成物に関する。
【0038】
本発明は、シングルサイト触媒成分、好ましくはメタロセン触媒、触媒活性化剤、好ましくはアルミノキサンおよび改質剤を含有する担体を含む、オレフィンの重合のための触媒組成物であって、改質剤が、一般式(1)
【0039】
のアルミニウム化合物を、一般式(2)
【0040】
のアミン化合物と反応させることによって得られる生成物であり、式中、
R1は、水素、もしくは1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖または直鎖の、置換または未置換炭化水素基であり、
R2およびR3は、同じかまたは異なり、1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖または直鎖の、置換または未置換炭化水素基から選択され、
R4は、水素または少なくとも1つの活性水素を有する官能基であり、
R5は、水素、もしくは1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基であり、
R6は、1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基であり、
前記触媒組成物が、
a)一般式(1)
【0041】
のアルミニウム化合物を、一般式(2)
【0042】
のアミン化合物と反応させることによって、改質剤を調製する工程であって、式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6がここに定義されたものである工程、
b)シングルサイト触媒成分に触媒活性化剤を添加することによって、シングルサイト触媒成分を活性化させて、活性化シングルサイト触媒成分を得る工程、
c)溶媒中において、担体材料、工程b)において得られた活性化シングルサイト触媒成分、および工程a)において得られた改質剤を組み合わせる工程、および
d)工程c)において得られた反応生成物を必要に応じて乾燥させる工程、
を含む方法によって調製されるものである、触媒組成物に関することが好ましい。
【0043】
ここに用いた「触媒活性化剤」という用語は、モノマー、特にオレフィンを重合することができるように、シングルサイト触媒成分を活性化させることのできる任意の化合物と理解すべきである。この触媒活性化剤は、アルミノキサン、ペルフルオロフェニルボランおよび/またはボラン酸ペルフルオロフェニルであることが好ましく、好ましくはアルミノキサン、より好ましくはメチルアルミノキサンおよび/または修飾メチルアルミノキサンである。
【0044】
本発明の触媒組成物における担体は、有機または無機材料であり得、多孔質であることが好ましい。有機材料の例には、架橋または官能化ポリスチレン、PVC、架橋ポリエチレンがある。無機材料の例には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、MgCl
2などの無機塩化物、タルクおよびゼオライトがある。これらの担体の2つ以上の混合物を使用してもよい。担体の好ましい粒径は、1から120マイクロメートル、好ましくは20から80マイクロメートルであり、好ましい平均粒径は40から50マイクロメートルである。好ましい担体はシリカである。担体の細孔体積は0.5から3cm
3/gであることが好ましい。担体材料の好ましい表面積は、50から500m
2/gの範囲にある。本発明に使用されるシリカは、触媒組成物を調製するために使用される前に、脱水されることが好ましい。
【0045】
ジルコニウム触媒成分の場合、担体に基づくジルコニウムの量は、例えば、0.05から3質量%の範囲にあってよい。
【0046】
本発明による触媒組成物は、チーグラー・ナッタおよび/またはクロム系触媒成分をさらに含んでもよい。本発明は、1種類の触媒成分を含む触媒組成物に関することが好ましく、その1種類の触媒成分がメタロセン触媒であることがより好ましい。本発明の好ましい実施の形態において、触媒成分はジフェニル(2−インデニル)
2ZrCl
2である。
【0047】
触媒組成物が、触媒組成物に基づいて、3〜20質量%、好ましくは7〜12質量%の範囲のアルミニウム含有量を有することが好ましい。
【0048】
本発明の触媒組成物は、
a)一般式(1)
【0049】
のアルミニウム化合物を、一般式(2)
【0050】
のアミン化合物と反応させることによって、改質剤を調製する工程、
b)好ましくはトルエンまたはキシレンなどの有機溶媒中において、シングルサイト触媒成分に触媒活性化剤を添加することによって、シングルサイト触媒成分を活性化させて、活性化シングルサイト触媒成分を得る工程、
c)溶媒中において、担体材料、工程b)において得られた活性化シングルサイト触媒成分、および工程a)において得られた改質剤を組み合わせる工程、および
d)工程c)において得られた反応生成物を必要に応じて乾燥させる工程、
を含む方法であって、式中、
R1は、水素、もしくは1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖または直鎖の、置換または未置換炭化水素基であり、
R2およびR3は、同じかまたは異なり、1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖または直鎖の、置換または未置換炭化水素基から選択され、
R4は、水素または少なくとも1つの活性水素を有する官能基であり、
R5は、水素、もしくは1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基であり、
R6は、1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基である、方法によって調製してもよい。
【0051】
実際的な実施の形態において、工程c)は、必要に応じて有機溶媒を含む、活性化シングルサイト触媒成分を担体に添加することによって、行ってよい。そのようにして得られた混合物は、少なくとも30分間、好ましくは1時間に亘り、20℃と80℃の間、好ましくは40℃と60℃の間の温度で、さらに反応し、その後、工程a)において得られた改質剤が添加される。
【0052】
触媒組成物を調製する方法における工程a)は、好ましくは0℃から50℃の温度で、より好ましくは10℃から35℃の温度で行われる。
【0053】
乾燥後に得られた触媒組成物は、粒径範囲が1から300マイクロメートル、より好ましくは5から90マイクロメートルの乾燥流動粉末である。
【0054】
本発明の触媒組成物は、窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気下で貯蔵されることが好ましい。
【0055】
本発明はさらに、ポリオレフィンを形成するのに効果的な反応条件下で、オレフィンを本発明による触媒組成物と接触させる工程を含む、オレフィンの重合方法に関する。オレフィンの重合は、溶液、スラリーおよび気相重合プロセスで、より好ましくはスラリーおよび気相プロセスで、特に、凝縮モードの気相プロセスで行ってよい。
【0056】
LDPE、HDPEおよびLLDPEの製造プロセスが、Handbook of Polyethylene by Andrew Peacock (2000; Dekker; ISBN 0824795466)の43〜66頁に要約されている。
【0057】
例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンおよびオクテンなどのオレフィンを重合または共重合するために、本発明の触媒組成物を使用してもよい。(共)重合できる他のモノマーとしては、ブタジエンおよびイソプレンなどの共役および非共役ジエン、ノルボルネンおよびスチレンが挙げられる。
【0058】
本発明の触媒組成物が、ポリエチレンまたはエチレン−アルファオレフィンコポリマー、例えば、直鎖低密度ポリエチレンを製造するために使用されることが好ましい。
【0059】
本発明の触媒組成物が、エチレンの直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)への重合に使用されることが好ましい。その程度まで、エチレンは、少量のコモノマー、例えば、3から10の炭素原子を有するアルファオレフィンと共重合されてもよい。例えば、エチレンは、重合がスラリー相中で行われる場合、オクテンと、重合が気相中で行われる場合、ブテンおよび/またはヘキセンと、共重合されてもよい。重合に使用すべき反応条件および設備は、当業者に公知である。
【0060】
ポリエチレンを製造するために、どのような従来のエチレン(共)重合反応を使用してもよい。そのような従来のエチレン(共)重合反応としては、以下に限られないが、気相重合プロセス、スラリー相重合プロセス、液相重合プロセス、および1つ以上の従来の反応器、例えば、並列、直列、および/またはその任意の組合せの、流動床気相反応器、ループ型反応器、撹拌槽型反応器、回分反応器を使用したそれらの組合せが挙げられる。別の方法では、高圧反応器内で直鎖低密度ポリエチレンを製造してもよい。例えば、本発明による(直鎖低密度)ポリエチレンは、ただ1つの気相反応器内で気相重合プロセスによって製造してもよい;しかしながら、本発明はそのように限定されず、上述した重合プロセスのいずれを使用してもよい。1つの実施の形態において、重合反応器は、直列、並列、またはその組合せの、2つ以上の反応器からなってもよい。重合反応器は、1つの反応器、例えば、流動床気相反応器であることが好ましい。別の実施の形態において、気相重合反応器は、1つ以上の供給流を含む直列重合反応器である。重合反応器において、1つ以上の供給流は一緒に組み合わされ、エチレンおよび必要に応じて1種類以上のコモノマー、例えば、1種類以上のアルファオレフィンを含むガスが、任意の適切な手段によって、重合反応器を連続的に流されるまたは循環される。エチレンおよび必要に応じて1種類以上のコモノマー、例えば、3から10の炭素原子を有するアルファオレフィンを含むガスは、連続流動化プロセスにおいて床を流動化させるために、分配プレートに通して供給してもよい。
【0061】
製造において、本発明の触媒組成物、エチレン、必要に応じての3から10の炭素原子を有するアルファオレフィン、水素、必要に応じての1種類以上の不活性ガスおよび/または液体、例えば、N
2、イソペンタン、およびヘキサン、および必要に応じての1種類以上の連続性添加剤(continuity additive)、例えば、エトキシル化ステアリルアミンまたはジステアリン酸アルミニウムまたはそれらの組合せが、反応器、例えば、流動床気相反応器に連続的に供給される。そのような流動床気相反応器は、1種類以上の排出タンク、サージタンク、パージタンク、および/またはリサイクル圧縮機と流体連通していてもよい。そのような反応器内の温度は、例えば、70から115℃、好ましくは75から110℃、より好ましくは75から100℃の範囲にあってよく、圧力は、15から30気圧(約1.5から3MPa)、好ましくは17から26気圧(約1.7から2.6MPa)の範囲にあってよい。流動床気相反応器内のポリエチレンの底に存在してよい分配プレートは、上向きに流れるモノマー、コモノマー、および不活性ガス流を均一に流す。固体粒子とコモノマーガス流との間の接触を提供するために、機械式撹拌機を設けてもよい。流動床の垂直円筒型反応器は、ガス速度の低減を促進するために、頂部にバルブ形状を有してよく、それゆえ、粒状ポリエチレンを上向きに流れるガスから分離することができる。次いで、未反応のガスは、重合の熱を除去するために冷却し、再び圧縮し、次いで、反応器の底部に再循環させてもよい。次いで、残留する炭化水素を除去し、製造されたポリエチレンを、窒素雰囲気下でパージ貯蔵部に輸送してもよい。また、ポリエチレンが酸素に曝露される前に、O
2との残留触媒反応を減少させるために、水分を導入してもよい。
【0062】
流動床反応器において、モノマー流を重合区画に通過させてよい。流動床反応器は、速度低減区域と流体連通した反応区域を含んでもよい。反応区域は、反応区域を通る、構成供給物と再循環流体の形態にある、重合性ガス状成分と改質ガス状成分の連続流により流動化された、成長しているポリエチレン粒子、形成されたポリエチレン粒子および触媒組成物粒子の床を含む。構成供給物が、エチレンおよび必要に応じての、3から10の炭素原子を有する1種類以上のアルファオレフィンを含み、また、当業者に公知の、例えば、米国特許第4543399号、同第5405922号および同第5462999号の各明細書に開示された、縮合剤も含んでよい。
【0063】
エチレンが、絶対圧で、160psi(1100kPa)、または190psi(1300kPa)、または200psi(1380kPa)、または210psi(1450kPa)、または220psi(1515kPa)以上の分圧で反応器内に存在することが好ましい。コモノマー、たとえば、3から10の炭素原子を有する1種類以上のアルファオレフィンは、重合反応器中に存在する場合、そのコモノマーをポリエチレン中に所望の質量パーセントで含ませられる任意のレベルで存在する。これは、ここに記載されたように、エチレンに対するコモノマーのモル比として表してよく、これは、循環ガス中のエチレンのモル数のガス濃度に対する、循環ガス中のコモノマーのモル数のガス濃度の比である。本発明のポリエチレン組成物の製造の1つの実施の形態において、コモノマーは、1モルのエチレンに対して0から0.1のコモノマーのモル比範囲で、例えば、1モルのエチレンに対して、0から0.05、例えば、0から0.04、例えば、0から0.03、例えば、0から0.02のモル比範囲で、循環ガス中にエチレンと共に存在する。
【0064】
重合反応器に水素ガスを加えてもよい。たとえば、循環ガス流中の全エチレンモノマーに対する水素の比(ppmのH
2/モル%のエチレン)は、0から60:1、たとえば、0.10:1から50:1、例えば、0から35:1、例えば、0から25:1、例えば、7:1から22:1の範囲にあるであろう。
【0065】
重合に使用すべき触媒成分の最適量は、日常的な実験によって、当業者により容易に決定できる。例えば、触媒成分の量は、生産性が、触媒グラム当たり1500から10000グラムのポリエチレンの範囲となるように選択してよい。
【0066】
重合中、反応器内の不純物が触媒を失活する、または汚染するのを防ぐために、アルキルアルミニウムなどの、少量の掃去剤を反応器に加えてもよい。典型的な掃去剤としては、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリエチルアルミニウムおよびトルメチルアルミニウム(TMA)が挙げられる。
【0067】
オレフィンの重合中、連続性支援剤(continuity aid agent)(CAA)も反応器に加えてもよい。その連続性添加剤は、
・ 元素の周期表のIIAまたはIIIA族からの金属の、少なくとも1種類のアルキル金属またはアルキル金属水素化物、および
・ 一般式R
mXR’
nの少なくとも1種類の化合物、
を反応させることによって、反応器に導入する前に、別個に調製され、式中、
・ Rは、1から50、好ましくは10〜40の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基であり、
・ R’は、水素、または少なくとも1つの活性水素を有する官能基、例えば、OH基であり、
・ Xは、O、N、PまたはSの基から選択されるヘテロ原子であり、
・ nおよびmの各々は、少なくとも1であり、前記式が正味荷電を持たないようなものであり、
・ アルキル金属化合物の金属対Xのモル比が、約2:1から約10:1である。
【0068】
連続性支援剤は、本発明による組成物中に存在する改質剤と同じかまたは異なり、一般式(1)
【0069】
のアルミニウム化合物を、一般式(2)
【0070】
のアミン化合物と反応させることによって得られた生成物であり、式中、
R1、R2、R3、R4、R5およびR6がここに定義されたものであり、
・ R1は、水素、もしくは1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖または直鎖の、置換または未置換炭化水素基であり、
・ R2およびR3は、同じかまたは異なり、1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖または直鎖の、置換または未置換炭化水素基から選択され、
・ R4は、水素または少なくとも1つの活性水素を有する官能基であり、
・ R5は、水素、もしくは1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基であり、
・ R6は、1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基である。
【0071】
連続性支援剤は、ファウリングおよび/またはシーティングを減少させるためのさらに別の加工助剤として反応器に添加される。その量は、一般に、触媒組成物のグラム当たり0.01〜0.1ミリモル程度である。
【0072】
したがって、本発明は、反応器内において、オレフィンを本発明による触媒組成物と接触させる工程を含む、オレフィンの重合方法にも関する。
【0073】
したがって、別の態様において、本発明は、反応器内における、エチレンおよび必要に応じての3から10の炭素原子を有する1種類以上のアルファオレフィンの重合プロセスであって、
i)エチレンおよび必要に応じての3から10の炭素原子を有する1種類以上のアルファオレフィンを反応器に加える工程、および
ii)本発明の触媒組成物を反応器に加えて、ポリエチレンを製造する工程、
を含むプロセスに関する。
【0074】
本発明が、反応器内における、エチレンおよび3から10の炭素原子を有する1種類以上のアルファオレフィンの重合プロセスであって、
i)エチレンおよび3から10の炭素原子を有する1種類以上のアルファオレフィンを反応器に加える工程、および
ii)本発明の触媒組成物を反応器に加えて、直鎖低密度ポリエチレンを製造する工程、
を含むプロセスに関することが好ましい。
【0075】
本発明の、エチレンおよび3から10の炭素原子を有する1種類以上のアルファオレフィンの重合プロセスを使用することによって、アミン化合物とアルミニウム化合物の反応生成物を反応器に別個に加える必要がもはやないことが分かった。
【0076】
したがって、本発明は、反応器内における、エチレンおよび必要に応じての3から10の炭素原子を有する1種類以上のアルファオレフィンの重合プロセスであって、
i)エチレンおよび必要に応じての3から10の炭素原子を有する1種類以上のアルファオレフィンを反応器に加える工程、および
ii)本発明の触媒組成物を反応器に加えて、ポリエチレン、好ましくは直鎖低密度ポリエチレンを製造する工程、
を含み、アミン化合物、例えば、式(1)のアミン化合物の、アルミニウム化合物、例えば、式(2)のアルミニウム化合物との反応生成物が、別個の成分として反応器に加えられないプロセスに関する。
【0077】
意外なことに、本発明のポリオレフィンの製造プロセスにより、反応器内のファウリングおよびシーティングが少なくなることが分かった。また、反応器内の微粒子の量も、本発明のポリオレフィンの製造プロセスによって減少するであろう。
【0078】
さらに、本発明のプロセスにより、ポリオレフィン、好ましくは加工性が非常に良好な直鎖低密度ポリエチレンを製造できることが分かった。
【0079】
本発明の重合プロセスが気相で行われることが好ましい。
【0080】
別の態様において、
i)エチレンおよび3から10の炭素原子を有する1種類以上のアルファオレフィンを反応器に加える工程、および
ii)本発明の触媒組成物を反応器に加えて、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を製造する工程、
を含む、反応器内における、エチレンおよび3から10の炭素原子を有する1種類以上のアルファオレフィンの重合によって得られたまたは得られる、直鎖低密度ポリエチレンにも関する。
【0081】
より詳しくは、本発明は、
i)エチレンおよび3から10の炭素原子を有する1種類以上のアルファオレフィンを反応器に加える工程、および
ii)本発明の触媒組成物を反応器、好ましくは気相反応器に加えて、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を製造する工程、
を含む、反応器内における、エチレンおよび3から10の炭素原子を有する1種類以上のアルファオレフィンの重合によって製造された直鎖低密度ポリエチレンであって、
オレフィンの重合のための触媒組成物が、シングルサイト触媒成分、好ましくはメタロセン触媒、触媒活性化剤、好ましくはアルミノキサンおよび改質剤を含有する担体を含み、この改質剤が、一般式(1)
【0082】
のアルミニウム化合物を、一般式(2)
【0083】
のアミン化合物と反応させることにより得られた生成物であり、式中、
R1は、水素、もしくは1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖または直鎖の、置換または未置換炭化水素基であり、
R2およびR3は、同じかまたは異なり、1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖または直鎖の、置換または未置換炭化水素基から選択され、
R4は、水素または少なくとも1つの活性水素を有する官能基であり、
R5は、水素、もしくは1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基であり、
R6は、1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基であり、前記触媒組成物が、
a)一般式(1)
【0084】
のアルミニウム化合物を、一般式(2)
【0085】
のアミン化合物と反応させることによって、改質剤を調製する工程であって、式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6がここに定義されたものである工程、
b)シングルサイト触媒成分に触媒活性化剤を添加することによって、シングルサイト触媒成分を活性化させて、活性化シングルサイト触媒成分を得る工程、
c)溶媒中において、担体材料、工程b)において得られた活性化シングルサイト触媒成分、および工程a)において得られた改質剤を組み合わせる工程、および
d)工程c)において得られた反応生成物を必要に応じて乾燥させる工程、
を含む方法によって調製されるものである、直鎖低密度ポリエチレンに関する。
【0086】
例えば、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)などのエチレン−アルファオレフィンコポリマーにおいて、3から10の炭素原子を有するアルファオレフィンは、エチレン−アルファオレフィンコポリマーの約5から約20質量%の量、例えば、エチレン−アルファオレフィンコポリマーの約7から約15質量%の量で存在してよい。
【0087】
本発明のポリオレフィンの製造プロセス、好ましくは気相プロセスにより、加工性の優れた直鎖低密度ポリエチレンを製造することが可能であることが分かった。
【0088】
したがって、別の態様において、本発明は、
・ ISO1872−2を使用して決定された、約900kg/m
3から約940kg/m
3未満の範囲の密度を有し、
・ 2.5から3.5の範囲にある分子量分布(Mw/Mn)を有し、
・ 1,2−ジクロロベンゼンおよび1℃/分の加熱速度を使用した分析的昇温溶出分別分析(analytical temperature rising elution fractionation analysis)を使用して決定した、20から40℃の温度範囲、例えば、25から35℃の温度範囲におけるピークの下の面積であって、分析的昇温溶出分別分析により決定した全てのピークの下の面積の合計の5から20%の範囲にある面積を有する、
直鎖低密度ポリエチレンに関する。
【0089】
異なる態様において、本発明は、
・ ISO1872−2を使用して決定された、約900kg/m
3から約940kg/m
3未満の範囲の密度を有し、
・ 2.5から3.5の範囲にある分子量分布(Mw/Mn)を有し、
・ 1,2−ジクロロベンゼンおよび1℃/分の加熱速度を使用した分析的昇温溶出分別分析を使用して決定した、20から40℃の温度範囲、例えば、25から35℃の温度範囲におけるピークの下の面積であって、分析的昇温溶出分別分析により決定した全てのピークの下の面積の合計の5から20%の範囲にある面積を有する、
直鎖低密度ポリエチレンであって、その直鎖低密度ポリエチレンは、例えば、
i)エチレンおよび3から10の炭素原子を有するアルファオレフィンを反応器に加える工程、および
ii)本発明の触媒組成物を反応器、好ましくは気相反応器に加えて、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を製造する工程、
を含む、反応器内における、エチレンおよび3から10の炭素原子を有するアルファオレフィンの重合による、本発明のプロセスにより製造され、
オレフィンの重合のための触媒組成物が、シングルサイト触媒成分、好ましくはメタロセン触媒、触媒活性化剤、好ましくはアルミノキサンおよび改質剤を含有する担体を含み、この改質剤が、一般式(1)
【0090】
のアルミニウム化合物を、一般式(2)
【0091】
のアミン化合物と反応させることにより得られた生成物であり、式中、
R1は、水素、もしくは1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖または直鎖の、置換または未置換炭化水素基であり、
R2およびR3は、同じかまたは異なり、1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖または直鎖の、置換または未置換炭化水素基から選択され、
R4は、水素または少なくとも1つの活性水素を有する官能基であり、
R5は、水素、もしくは1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基であり、
R6は、1〜30の炭素原子を有する、分岐鎖、直鎖または環状の、置換または未置換炭化水素基であり、前記触媒組成物が、
a)一般式(1)
【0092】
のアルミニウム化合物を、一般式(2)
【0093】
のアミン化合物と反応させることによって、改質剤を調製する工程であって、式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6がここに定義されたものである工程、
b)シングルサイト触媒成分に触媒活性化剤を添加することによって、シングルサイト触媒成分を活性化させて、活性化シングルサイト触媒成分を得る工程、
c)溶媒中において、担体材料、工程b)において得られた活性化シングルサイト触媒成分、および工程a)において得られた改質剤を組み合わせる工程、および
d)工程c)において得られた反応生成物を必要に応じて乾燥させる工程、
を含む方法によって調製されるものである、直鎖低密度ポリエチレンに関する。
【0094】
ここに用いたように、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)の密度は、ISO1872−2を使用して決定される。例えば、LLDPEの密度は、少なくとも910、例えば、少なくとも915および/または例えば、多くとも940、例えば、多くとも930、例えば、多くとも925、例えば、多くとも920kg/m
3であってよい。例えば、本発明のLLDPEの密度は、915から925kg/m
3の範囲にあってよい。
【0095】
ここに用いたように、分子量分布により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の間の比を意味する。本発明の目的のために、MwおよびMnは、SEC(溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを使用したサイズ排除クロマトグラフィー)を使用して決定され、直鎖ポリエチレン基準を使用して校正される。
【0096】
例えば、本発明のLLDPEの分子量分布は、少なくとも2.6、例えば、少なくとも2.7、例えば、少なくとも2.8、例えば、少なくとも2.9、例えば、少なくとも3.0および/または例えば、多くとも3.5、例えば、多くとも3.4、例えば、多くとも3.3である。例えば、本発明のLLDPEの分子量分布は、3.0から3.5の範囲、例えば、2.8から3.3の範囲にある。
【0097】
本発明の直鎖低密度ポリエチレンは、1,2−ジクロロベンゼンおよび1℃/分の加熱速度を使用した分析的昇温溶出分別分析を使用して決定した、20から40℃の温度範囲、例えば、25から35℃の温度範囲におけるピークの下の面積であって、分析的昇温溶出分別分析により決定した全てのピークの下の面積の合計の5から20%の範囲にある面積を有することが好ましい。
【0098】
例えば、20から40℃の温度範囲におけるピークの下の面積は、全てのピークの下の面積の合計の少なくとも6%、例えば、少なくとも7%、および/または例えば、多くとも18%、例えば、多くとも15%、例えば、多くとも13%、例えば、多くとも10%、例えば、多くとも9%である。例えば、20から40℃の温度範囲におけるピークの下の面積は、全てのピークの下の面積の合計の5から10%の範囲にある。
【0099】
本発明のLLDPEにおいて、ジルコニウム(Zr)の量は、直鎖低密度ポリエチレンに基づいて、0.01から10ppmの範囲、例えば、少なくとも0.1、例えば、少なくとも0.2、例えば、少なくとも0.3、例えば、少なくとも0.4および/または例えば、多くとも8、例えば、多くとも5、例えば、多くとも3、例えば、多くとも1ppmであることが好ましい。
【0100】
本発明のLLDPEは、クロム、チタンまたはハフニウムを実質的に含まないことが好ましい、すなわち、本発明のLLDPEは、クロム、チタンまたはハフニウムを含有しないか、または当業者により微量と考えられる、例えば、0.001ppm未満しかクロム、チタンまたはハフニウムを含有しない。
【0101】
本発明の目的に関して、ジルコニウム、クロム、チタンまたはハフニウムの量は、参照基準に対して校正される、蛍光X線(XRF)を使用して決定される。1ppm未満の濃度では、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)が、本発明のLLDPE中に存在する金属残渣を決定する好ましい方法である。
【0102】
13C NMRを使用して決定された1000の炭素原子当たりの総CH
3が、少なくとも15であることが好ましく、多くとも18であることが好ましい。1000の炭素原子当たりの総CH
3は、LLDPE中に含まれる、3から10の炭素原子を有するアルファオレフィンの量に関する尺度である。
【0103】
本発明のLLDPEが、エチレンのヘキセンとのコポリマーであることが好ましい。
13C NMRを使用して決定されたLLDPE中のヘキセンの量は、例えば、LLDPE中のエチレンのモル数に基づいて、少なくとも7モル%かつ多くとも10モル%である。
【0104】
本発明のLLDPEが、逆コモノマー組成分布を持たないことが好ましい。
【0105】
逆コモノマー組成分布は、ここに用いたように、ポリマーのより高い分子量の成分が、より低い分子量の成分よりも多くコモノマーを取り込んだポリマーを称する。逆コモノマー組成分布について、分子量が増加するにつれて、コモノマーの取込みが増える。本発明の目的に関して、逆コモノマー組成分布は、より高い分子量でのコモノマーの取込み量が、より低い分子量でのものよりも、少なくとも10%超、例えば、少なくとも20%超、例えば、少なくとも30%超、多いことを意味する。
【0106】
本発明のLLDPEが、チーグラー・ナッタ・コモノマー組成分布を持たないことが好ましい。チーグラー・ナッタ・コモノマー組成分布は、ここに用いたように、ポリマーのより低い分子量の成分が、より高い分子量の成分よりも、多くコモノマーを取り込んでいるポリマーを称する。チーグラー・ナッタ・コモノマー組成分布について、分子量が増加するにつれて、コモノマーの取込みが減少する。本発明の目的について、チーグラー・ナッタ・コモノマー組成分布は、より低い分子量でのコモノマーの取込み量が、より高い分子量でのものよりも、少なくとも10%超、例えば、少なくとも20%超多く、好ましくは少なくとも30%超多いことを意味する。
【0107】
本発明のLLDPEが、均一なコモノマー組成分布を有することが好ましい。本発明の目的について、均一なコモノマー組成分布は、コモノマーの取込みが、分子量が増加してもほぼ同じままであること、詳しくは、より低い分子量でのコモノマーの取込み量が、より高い分子量でのものよりも、多くとも30%、例えば、20%、例えば、10%多く、かつより高い分子量でのコモノマーの取込み量が、より低い分子量でのものより、多くとも30%、例えば、多くとも20%、例えば、多くとも10%多いことを意味する。
【0108】
コモノマー組成分布は、SEC−IR(サイズ排除クロマトグラフィー赤外検出器)を使用して決定することができる。
【0109】
本発明の直鎖低密度ポリエチレンが、長い分岐鎖を実質的に含まないことが好ましい。長い分岐鎖を実質的に含まないとは、ここに用いたように、1000の炭素原子当たり0.1未満しか長い分岐鎖で、より好ましくは1000の炭素原子当たり0.01未満しか長い分岐鎖で置換されていない直鎖低密度ポリエチレンを称する。本発明の直鎖低密度ポリエチレンが、長い分岐鎖を含まない、すなわち、本発明の直鎖低密度ポリエチレンは長い分岐鎖を含有しないことが最も好ましい。ここに用いたように、長い分岐鎖(LCB)は、当該技術分野で公知の方法、例えば、ゲル浸透クロマトグラフ−低角度レーザー光散乱検出器(GPC−LALLS)またはゲル浸透クロマトグラフ−示差粘度計(GPC−DV)により決定される。
【0110】
本発明の直鎖低密度ポリエチレンは、ASTM D−1238−10、条件E(190℃、2.16kg)を使用して決定された、0.5から100dg/分の範囲のメルトフローレートを有することが好ましい。例えば、本発明のLLDPEは、0.5から30dg/分の範囲、たとえば、0.5から20dg/分の範囲、例えば、0.5から5dg/分の範囲、例えば、0.5から3.5dg/分の範囲のメルトフローレートを有する。
【0111】
本発明のLLDPEが、ASTM D−1238−10、条件F(190℃、21.6kg)を使用して決定された、10から100dg/分の範囲、例えば、10から100dg/分の範囲、例えば、10から40dg/分の範囲、例えば、15から25dg/分の範囲、例えば、16から20dg/分の範囲にある高荷重メルトインデックスを有することが好ましい。
【0112】
本発明の直鎖低密度ポリエチレンは、ASTM D5227−01(2008)を使用して測定して、5.5質量%未満の、例えば、5質量%未満の、例えば、4質量%未満の、例えば、3質量%未満の、例えば、2.6質量%未満、例えば、1.5質量%未満の、例えば、1質量%未満の、ヘキサン中の溶解度を有することが好ましい。ヘキサン中の溶解度が低いために、本発明のLLDPEは、食品と接触する物品、および2.6質量%未満の場合には、調理中に食品をパックするまたは保持するための物品の調製に適したものとなる。
【0113】
本発明の直鎖低密度ポリエチレンは、10mgのサンプルについて10℃/分の走査速度および第2の加熱サイクルを使用する、ASTM D3418−08による示差走査熱量計を使用して測定して、100から140℃の範囲の結晶化温度(Tc)、例えば、100から120℃の範囲の結晶化温度を有することが好ましい。
【0114】
本発明は、本発明の直鎖低密度ポリエチレンを含み、かつ添加剤、例えば、ここに記載されたような添加剤をさらに含む組成物にも関する。
【0115】
必要に応じて、本発明の方法により得られたまたは得られるポリオレフィン、好ましくはLLDPEに、添加剤を加えてもよい。その添加剤は、例えば、溶融混合中に添加してもよい。適切な添加剤の例としては、以下に限られないが、ポリエチレンに通常使用される添加剤、例えば、酸化防止剤、核形成剤、酸掃去剤、加工助剤、滑剤、界面活性剤、発泡剤、紫外線吸収剤、消光剤、帯電防止剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、かぶり防止剤、顔料、染料および充填剤、並びに過酸化物などの硬化剤が挙げられる。それらの添加剤は、全組成に基づいて、0.001質量%から10質量%などの、当該技術分野で公知の典型的に効果的な量で存在してよい。
【0116】
したがって、本発明は、本発明のポリオレフィンを含み、かつ添加剤をさらに含む組成物、例えば、本発明のポリエチレンおよび添加剤からなる組成物にも関する。
【0117】
したがって、別の態様において、本発明は、本発明の組成物を調製するプロセスであって、
・ 本発明のポリオレフィンを随意的な添加剤と溶融混合する、
工程を含むプロセスにも関する。
【0118】
溶融混合の前に、本発明のポリオレフィンおよび随意的な添加剤は、ミキサ、例えば、ドライブレンダー(Henschell社から購入したような)内で予混してもよい。このポリエチレンおよび添加剤は、粉末または顆粒の形態で予混および/または溶融混合されてもよいが、ペレットの形態で溶融混合されてもよい。
【0119】
溶融混合後、溶融混合により得られた組成物をペレット化してもよい。
【0120】
溶融混合により、ポリオレフィンと添加剤が、ポリオレフィンのTmまたはTcを超える温度で混合されることを意味する。溶融混合は、例えば、押出機内で、例えば、一軸スクリューまたは二軸スクリュー押出機、好ましくは二軸スクリュー押出機内で、当業者に公知の技法を使用して行われるであろう。
【0121】
押出機が使用される場合、温度、圧力、剪断量、スクリュー速度およびスクリュー設計などの溶融混合に関する適切な条件は、当業者に公知である。
【0122】
押出機を使用する場合、二軸スクリュー押出機などの従来の押出機を使用してもよい。温度は、必要とされる通りに押出機の異なる区域を通じて変わってもよい。例えば、温度は、供給区域における180℃からダイでの300℃まで変わってもよい。押出機内の温度が165℃から250℃まで変わることが好ましく、同様に、押出機のスクリュー速度も、必要に応じて変えてもよい。典型的なスクリュー速度は、約100rpmから約400rpmまでの範囲にある。
【0123】
本発明のポリオレフィンおよびそのポリオレフィンを含む組成物は、物品の製造にうまく使用されるであろう。例えば、本発明のポリオレフィンおよび組成物は、例えば、押出し、フイルムブロー法またはキャスト法および例えば、一軸または二軸延伸を行うための全てのフイルム形成法によって、フイルムに製造されるであろう。フイルムの例としては、共押出し(多層フイルムを形成するため)または積層により形成されるインフレートまたはキャストフイルムが挙げられ、それらは、包装用フイルム、例えば、シュリンクフイルム、ラップ、ストレッチフイルム、シール用フイルム、延伸フイルム、スナック用フイルム、丈夫な袋、買い物袋、焼いた食品と冷凍食品用の包装、医療用包装、工業用裏地、食品接触および非食品接触用途における膜など、農業用フイルムとシートとして有用であろう。
【0124】
したがって、本発明は、本発明のポリオレフィンを含む物品、例えば、本発明のLLDPEを含む物品にも関する。
【0125】
したがって、別の態様において、本発明は、本発明のポリオレフィンを含むフイルム、特に、本発明のLLDPEまたは本発明の組成物を含むフイルムにも関する。
【0126】
本発明のLLDPEは、改善された光学的性質、例えば、低いヘイズおよび/または高い光沢度を有するフイルムの調製にうまく使用できることが分かった。さらに、本発明のLLDPEは、改善された高温粘着力および/またはシール強度の特性および/またはより低いシール開始温度を有するフイルムの調製に使用してもよい。
【0127】
したがって、別の実施の形態において、本発明は、本発明の直鎖低密度ポリエチレンまたは本発明の組成物を含むフイルムに関する。
【0128】
前記フイルムが、少なくとも80質量%の本発明のLLDPEを、例えば、少なくとも85質量%、例えば、少なくとも90質量%、例えば、少なくとも95質量%、例えば、少なくとも96質量%、例えば、少なくとも97質量%、例えば、少なくとも98質量%、例えば、少なくとも99質量%の本発明のLLDPEを含むことが好ましい。例えば、前記フイルムは、本発明のLLDPEからなる、またはLLDPEと添加剤を含む組成物からなる、例えば、本発明のLLDPEと添加剤からなる組成物からなる。
【0129】
本発明によるフイルムは、ASTM D−2457−08を使用して測定した45度の光沢度が、少なくとも50、例えば、少なくとも60、例えば、少なくとも70、例えば、少なくとも75であることが好ましい。
【0130】
本発明によるフイルムは、ASTM D−2457−08を使用して測定した60度の光沢度が、少なくとも80、例えば、少なくとも90、例えば、少なくとも100、例えば、少なくとも110であることが好ましい。
【0131】
本発明によるフイルムは、ASTM D−1003−11を使用して測定したヘイズが、10未満、例えば、9未満、例えば、8未満、例えば、7未満、例えば、6未満であることが好ましい。
【0132】
本発明によるフイルムは、105から140℃の温度範囲において、ASTM F88−06を使用して測定した平均シール強度が、少なくとも10N/24mm、例えば、少なくとも10.5N/24mm、および例えば、多くとも15N/24mm、例えば、多くとも14N/24mmであることが好ましい。
【0133】
本発明によるフイルムは、105から120℃の温度範囲において、ASTM F1912−98を使用して測定した平均高温粘着力が、少なくとも1.5N/15mm、例えば、少なくとも1.7N/15mm、および例えば、多くとも4N/15mm、例えば、多くとも3N/15mmであることが好ましい。
【0134】
本発明のフイルムは、当業者に公知のどのような方法によっても、例えば、インフレーション法(a blown film extrusion process)によって調製してもよい。フイルムの厚さは、任意の範囲、例えば、1から500μmの範囲、例えば、5から100μmの範囲、例えば、20から50μmの範囲で選択してよい。
【0135】
本発明のフイルムは、物品、例えば、包装物品を製造するためにヒートシールしてもよい。ヒートシールは、例えば、米国特許第3753331号明細書に開示された圧縮包装機などの密封装置によって、行われてもよい。
【0136】
したがって、別の態様において、本発明は、本発明の直鎖低密度ポリエチレン、本発明の組成物、または本発明のフイルムを含む物品に関する。
【0137】
例えば、その物品は、パッケージへとヒートシールされるフイルムであってよい。別の態様において、本発明は、物品の調製、例えば、パッケージの調製のための、本発明によるフイルムの使用に関する。別の態様において、本発明は、本発明によるフイルムを調製するプロセスであって、そのフイルムがインフレーション法により調製されるプロセスに関する。
【0138】
本発明を、説明を目的として詳細に記載してきたが、そのような詳細は、その目的のためだけであり、特許請求の範囲に定義された本発明の精神および範囲から逸脱せずに、当業者により変更を行えることが理解されよう。
【0139】
本発明は、ここに記載された特徴の全ての可能な組合せに関し、特に、特許請求の範囲に提示された特徴の組合せが好ましいことにさらに留意されたい。
【0140】
「含む(comprising)」という用語は、他の要素の存在を排除するものではないことにさらに留意されたい。しかしながら、ある要素を含む製品についての記載が、これらの要素からなる製品も開示することも理解すべきである。同様に、ある工程を含むプロセスが、これらの工程からなるプロセスも開示するも理解すべきである。
【0141】
ここで、本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、それらに制限されない。