特許第6166282号(P6166282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン−ゴバン グラス フランスの特許一覧

<>
  • 特許6166282-照明ガラスパネル 図000002
  • 特許6166282-照明ガラスパネル 図000003
  • 特許6166282-照明ガラスパネル 図000004
  • 特許6166282-照明ガラスパネル 図000005
  • 特許6166282-照明ガラスパネル 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166282
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】照明ガラスパネル
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20170710BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20170710BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20170710BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20170710BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20170710BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20170710BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170710BHJP
【FI】
   F21S8/10 400
   C03C27/12 Z
   F21V19/00 170
   F21V19/00 150
   F21V29/503
   B32B17/10
   F21S2/00 439
   F21Y115:10
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-556125(P2014-556125)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公表番号】特表2015-517171(P2015-517171A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】FR2013050270
(87)【国際公開番号】WO2013121134
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2016年1月8日
(31)【優先権主張番号】1251330
(32)【優先日】2012年2月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−フィリップ ミュレ
(72)【発明者】
【氏名】マチュー ベラール
(72)【発明者】
【氏名】ファビエンヌ ピルー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ クレオ
(72)【発明者】
【氏名】アデル ブラ−ドゥ−バイユール
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ボール
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0267833(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/092419(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/092420(WO,A2)
【文献】 特開平10−086263(JP,A)
【文献】 特開平11−295743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
F21S 2/00
B32B 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・無機又は有機ガラス製で、第1の主面(11)、第2の主面(12)及び端面(13)を有する第1の板(1)、
・無機又は有機ガラス製で、第1の主面(21)、第2の主面(22)及び端面(23)を有する第2の板(2)、
・第1の板(1)の第2の主面(12)及び第2の板(2)の第1の主面(21)に接着して接触する積層中間層(5)であって、ガラス板のおのおのの面積よりも小さい面積を有し、こうして第1の板(1)の第2の主面(12)の端部と第2の板(2)の第1の主面(21)の端部との間に溝形の空間(8)を画定している積層中間層、
・印刷回路基板(PCB)(41)と複数の発光ダイオード(LED)(42)とを含んでいて、該発光ダイオード(LED)(42)が該印刷回路基板(PCB)(41)により支持されてその一面上に位置し、該発光ダイオード(LED)(42)はその発光面(31)が第1の板(1)の端面(13)に面するように配置された、LED(42)の少なくとも1つのストリップ、及び、
・少なくとも第2の板(2)の端面(23)とLEDストリップとを封入する不透明ポリマー製の封入用エレメント(4)、
を含む照明グレージングユニットであって、PCB(41)が複数のスペーサー(6)により第2のガラス板(2)の第1の主面(21)にもたれて位置していること、そして空間(8)に封入用エレメント(4)の不透明ポリマーが充填されていることを特徴とする照明グレージングユニット。
【請求項2】
前記第2の板(2)が前記第1の板(1)よりも面積が大きいものであって、前記第2の板(2)は、少なくとも前記LEDのストリップが位置し前記空間(8)に前記不透明ポリマーが充填された当該グレージングユニットの端部において前記第1の板を越えて延在していることを特徴とする、請求項1記載の照明グレージングユニット。
【請求項3】
前記PCB(41)が前記第1及び第2の板の間の前記中間層(5)により画定された空間(8)の中に及んでいることを特徴とする、請求項1又は2記載の照明グレージングユニット。
【請求項4】
前記第2の板(2)の第1の主面(21)の端部に適用された不透明なエナメル(18)を更に含み、このエナメルが前記封入用エレメント(4)の不透明ポリマーが充填された空間(8)を隠すのに十分な面積のものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の照明グレージングユニット。
【請求項5】
前記封入用エレメントの不透明ポリマーが充填された空間(8)が、0.2mmと2mmの間、好ましくは0.3mmと1.5mmの間に含まれる厚さと、0.2cmと2cmの間、好ましくは0.3cmと1.0cmの間に含まれる深さとを有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の照明グレージングユニット。
【請求項6】
前記スペーサー(6)が単一の直線上のみに並ばないよう配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の照明グレージングユニット。
【請求項7】
前記スペーサー(6)が、互いに平行な、且つ好ましくは前記PCB(41)の端部と前記第2の板(2)の端部とに対して平行な、2つの直線に沿って並んでいることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の照明グレージングユニット。
【請求項8】
前記スペーサー(6)の高さが200μmと1000μmの間、好ましくは400μmと700μmの間に含まれることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の照明グレージングユニット。
【請求項9】
前記スペーサー(6)が、熱伝導率λが少なくとも200W/mKに等しい、好ましくは少なくとも230W/mKに等しい材料で製作されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載の照明グレージングユニット。
【請求項10】
前記スペーサー(6)が金属で製作されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1つに記載の照明グレージングユニット。
【請求項11】
前記スペーサー(6)が前記PCB(41)の不可分の部分であり、当該PCBと同じ材料で製作されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1つに記載の照明グレージングユニット。
【請求項12】
連続した以下の工程、すなわち、
(a)次のもの、すなわち、
・無機又は有機ガラスで製作されて、第1の主面(11)、第2の主面(12)及び端面(13)を有する第1の板(1)、
・無機又は有機ガラスで製作されて、第1の主面(21)、第2の主面(22)及び端面(23)を有する第2の板(2)、
・第1の板(1)の第2の主面(12)及び第2の板(2)の第1の主面(21)に接着して接触する積層中間層(5)であって、ガラス板(1、2)のおのおのの面積よりも小さい面積を有し、こうして第1の板(1)の第2の主面(12)の端部と第2の板(2)の第1の主面(21)の端部との間に溝形の空間(8)を画定している積層中間層(5)、
を含む積層グレージングユニットを用意する工程、
(b)印刷回路基板(PCB)(41)と複数のLED(42)とを含み、該LED(42)が該印刷回路基板(PCB)(41)により支持されその一面上の位置しているLED(42)の少なくとも1つのストリップを、LED(42)の発光面(31)が第1の板()の端面(13)に面するように、且つPCBが複数のスペーサー(6)を用いて第2のガラス板()の第1の主面(21)にもたれて位置するように配置する工程、及び、
(c)少なくとも第2の板の端面(23)とLEDのストリップとを封入する不透明ポリマー製の封入用エレメント(4)を作製し、第1の板(1)の第2の主面(12)の端部と第2の板(2)の第1の主面(21)の端部との間の前記空間(8)に充填する工程、
を含む、請求項1〜11のいずれか1つに記載の照明グレージングユニットの製造方法。
【請求項13】
工程(c)が、前記グレージングユニットの端部を取り囲む成形型の中に、熱硬化性モノマーの組成物、好ましくは少なくとも1種のポリイソシアネートとポリオールとを含む組成物を注入し、当該注入した組成物をそれを硬化させるための温度に十分な時間加熱することを含むことを特徴とする、請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードにより端面を介して光を照明されて、かなり単純であるがこれらのダイオードにより生じる寄生光をマスキングするのに有効なシステムを含む、グレージングユニット、好ましくは車両のグレージングユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)を用いて端面を介し光を照射されるグレージングユニット、特に自走車両のグレージングユニットは、公知である。積層グレージングユニットの場合、これらのLEDは2枚のガラス板のうちの少なくとも一方に光を投入し、そしてそれは導波路として機能して、その光を抽出するための手段(散乱素子)のところまで光を案内する。この手段はグレージングユニットの端部から一定の距離に位置する。
【0003】
LEDのランバート放射面を介して放射される光の強度は一般に非常に高く、光はそこから約180°にわたって放射される。美的理由から、LEDが近くの人々に見えないようにするためそれらを隠すことが一般に求められる。次のように、LEDからのこの直接の光を遮るためのいろいろな手段がある(この光を以下では寄生光と呼ぶ)。
【0004】
・不透明ポリマー(カーボンブラックを充填したポリウレタン)から一般に形成される封入手段でグレージングユニットの端部を覆い、それが十分に厚ければ、寄生光を効果的に遮断することができる。しかし、この手段は、封入材が板の端面を覆うけれども後者を有意に越えて延在しない「埋め込み型」グレージングユニットと称されるものでは使用することができない。
【0005】
・マスキング用エナメルを光を照射される板のへりか、あるいは光を照射される板に透明な積層中間層を介して接着結合される光を照射されない板のへりに適用することができる。しかし、このようなエナメルの厚みは数ミクロンに制限され、多くの場合これは効果的なマスキングのためには不十分である。
【0006】
・最後に、LEDが搭載される印刷回路基板で光を遮蔽することができる。しかし、その光遮断能力及び/又はその面積は、寄生光を完全に隠すのには一般に不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
下記でより詳しく説明する図1は、従来技術による埋め込み型積層グレージングユニットを示しており、それにおいては寄生光を封入エレメントにより内側で遮断し、外側に向けては十分に透明でないマスキングエレメントにより遮断している。結果として、図2に示したように、光の残留する点が外部から目に見える。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の背後にある考え方は、封入エレメントを形成する不透明ポリマーが2枚のガラス板の間に位置する比較的深い溝に入り込むのを可能にすることにより、寄生光を隠すことである。この溝は、接着結合した板のおのおのよりも面積が小さい積層中間層によって2枚のガラス板の間に画定される。積層中間層とガラス板との寸法差が大きくなればなるほど、溝は深くなる。
【0009】
不透明な封入用ポリマーがこの深い溝形の空間に容易に入り込んで空隙を形成することなくそれを満たすことができるように、2枚のガラス板のうちの一方にもたれて位置するLEDストリップは、注入工程中に液体の封入用組成物の流れを妨げてはならない。それゆえ、本発明では、印刷回路基板(PCB)がその端部にあるいはその表面に複数の「スペーサー」を含むようにしており、これを介してそれをガラス板にもたせて支持する。これらの「スペーサー」又はパッドはPCBとグレージングユニットとを多点接触させ、そして封入工程中において液体封入用組成物がPCBとガラス板との間を通過するのを可能にし、そのガラス板にもたれるようにしてPCBが位置する。
【0010】
従って、本発明が対象とするものの一つは、
・無機又は有機ガラス製で、第1の主面、第2の主面及び端面を有する第1の板、
・無機又は有機ガラス製で、第1の主面、第2の主面及び端面を有する第2の板、
・第1の板の第2の主面及び第2の板の第1の主面に接着して接触する積層中間層であって、ガラス板のおのおのの面積よりも小さい面積を有し、こうして第1の板の第2の主面の端部と第2の板の第1の主面の端部との間に溝形の空間を画定している積層中間層、
・印刷回路基板(PCB)と複数の発光ダイオード(LED)とを含んでいて、LEDの発光面が第1の板の端面に面するように配置された、発光ダイオードの少なくとも1つのストリップ、及び、
・少なくとも第2の板の端面とLEDストリップとを封入する不透明ポリマー製の封入用エレメント、
を含む照明グレージングユニットであって、PCBが複数のスペーサーにより第2のガラス板の第1の主面にもたれて位置していること、そして溝形の空間に封入用エレメントの不透明ポリマーが充填されていることを特徴とする照明グレージングユニットである。
【0011】
本発明のグレージングユニットは、積層中間層を用いて周知の方法で互いどうし接着結合した少なくとも2枚の単一の板を含む積層グレージングユニットである。グレージングユニットの以下の説明において、「第1の板」という用語は常に、1以上の光源によって端面を介して光を照射されるガラス板を表すということに注目することが重要である。第1の板、あるいは光を照射される板は、好ましくは、車両又は建造物の内部と接触する板である。
【0012】
本発明のグレージングユニットの2枚の板のおのおのは、端面と2つの主面とを有する。車室又は建造物の内部の方に向けることを意図する面を第1の主面と称し、建造物又は車室の外部の方に向けることを意図する面を第2の主面と称することにする。
【0013】
第2の板は、好ましくは第1の板よりも大きな面積のものであり、少なくともグレージングユニットのLEDのストリップが位置する端部で第1の板を越えて延在する。本発明のこの好ましい実施形態では、ストリップは、スペーサーを用いて、第2の板の第1の主面にもたれて位置する。
【0014】
スペーサーは、図5に示した実施形態におけるように、PCBの端面に位置することができるが、それらは好ましくは、図3と4に示したように、LEDが固定されるのとは反対側のPCBの面に位置する。後者の場合、LEDストリップは側面放射ストリップであるのに対し、図4においてはそれらは上面放射LEDストリップである。
【0015】
封入用組成物を注入する工程の間に第2の板にPCBを確実にうまく配置するようにするため、またPCBボードがグレージングユニットの主平面に平行な方位を維持するのを保証するために、スペーサーは平面に配置するのが好ましく、すなわちそれらは単一の直線に沿ってのみ並べられるのではない。具体的に言えば、スペーサーをPCB上の単一の直線にだけ配置した場合には、PCBはこの支持軸線の周りを回転する可能性があり、これは第1の板に光が投入される方向が制御されず不所望に変更する原因となりかねない。
【0016】
互いに平行な、且つ好ましくはPCBの端部と第2の板の端部とに対して平行な、2つの直線に沿ってスペーサーを並べることによって、良好なPCBの安定性を得ることが可能である。
【0017】
好ましくは、スペーサーは、数の上でLEDに少なくとも等しく、PCBの上に一定間隔で分布し、各LEDはその直ぐ近くに位置する少なくとも1つのスペーサーと関連づけられるのが好ましい。スペーサー間の間隙の周期性は、LED間の間隔を反映するのが好ましい。特に、軟質のPCBの場合、それらを所定の位置に申し分なく保持するのを保証するために、スペーサーを各LEDの下に配置することが重要である。
【0018】
図3に示した、本発明の特に有利な実施形態では、PCBは第1及び第2の板の間の積層中間層によって画定される空間に及ぶ。具体的に言うと、この実施形態は、2枚のガラス板の間に収容されたPCBが可能性のある機械的応力から更に保護される特にコンパクトで安定な解決策に相当する。
【0019】
下記でより詳しく説明するように、熱硬化性モノマーの混合物により構成される液体の封入用組成物は、封入作業中に、PCBと第2の板の第1の主面との間にスペーサーによって作られる薄い空気層を通過することにより2枚の板の間の自由空間に浸透しなくてはならない。この注入工程中に当該材料の流れが妨げられないためには、PCBと第2の板の間の空気層は十分に厚くなくてはならない。この厚さはスペーサーの盛り上がりに、すなわちその高さに相当する。それは、200μmと1000μmの間に含まれるのが、特に400μmと700μmの間に含まれるのが好ましい。スペーサーは付随的に、LEDの発光面の位置を第1の板の端面に関して調整する役目を果たすことができる。この目的のためには、また必要ならば、それらは高さが1mmより大きくてもよい。
【0020】
スペーサーの盛り上がりを、グレージングユニットのへりで2枚のガラス板の間に形成される寄生光遮蔽層の全厚と混同してはならない。遮蔽層の厚さは、2枚のガラス板の間の隔たりによって、言い換えれば積層中間層の厚さによって、本質的に規定される。十分な不透明性をもたらすためには、封入用エレメントの不透明ポリマーが充填される2枚のガラス板の間の空間は、0.2mmと2mmの間に含まれる、特に0.3mmと1.5mmの間に含まれる厚さを有することが好ましい。
【0021】
封入用ポリマーの不透明ストリップの厚さだけでなく幅(これは積層中間層と2枚の板とによって画定される溝の深さに相当する)も規定することが重要である。この幅は、0.2cmと2.0cmの間、特に0.3cmと1.0cmの間に含まれるのが好ましい。グレージングユニットが大きさの異なる2枚の板を含み、少なくとも光源が位置する端部において一方が他方を越えて延在する場合には、溝の深さは小さい方の板の端部から中間層の端部を引き離す距離として定義される。
【0022】
本発明のグレージングユニットは、第2の板の第1の主面の端部、すなわち第2の板とPCBのスペーサーとの間の接触のゾーンのある面、に適用された不透明なエネメルを含むことが更に有利である。このエナメルには、この接触ゾーンを美観上隠すのとポリマーの封入層が比較的薄い場合にその光遮断能力を補強するという2つの機能がある。このエナメルコーティングは、もちろん、封入用エレメントの不透明ポリマーが充填される空間を隠すのに十分な程度のものでなければならず、また従って少なくとも積層中間層の端部のところまで、あるいは更にはそれを越えて、延在しなくてはならない。
【0023】
本発明のグレージングユニットにおいては、LEDストリップの表面の大部分は、一般的に言えばかなり良好な断熱材である封入用エレメントのポリマーと接触する。これは、LEDとPCBのその他の構成部品とによって動作中に発生する熱の放出を不所望に妨害しかねない。スペーサーは、場合によっては、PCBと一方のガラス板とを点接触させるだけでよく、この場合それらは熱の逃げ道として重要な役割を演じる。熱の放出を促進しPCBの加熱を制限するためには、スペーサーを良好な熱伝導体である材料で、特に熱伝導率λが少なくとも200W/mKに等しい、好ましくは少なくとも230W/mKに等しい材料で、製作するのが有利である。
【0024】
例として、スペーサーは金属、例えばアルミニウム及びアルミニウム合金など、で製作することができ、あるいは実際のところそれらはPCBの不可分の部分を形成し前者と同じ材料で製作することができる。
【0025】
初めに述べたように、本発明のグレージングユニットは「埋め込み型」グレージングユニットであるのが好ましく、これは、車両又は建造物の外部と接触させることを意図した第2の板の第2の主面が封入用エレメントにより覆われずにそれは第2のガラス板の端面を覆うだけであるということを意味する。
【0026】
本発明が対象とするもう一つは、上述したような照明グレージングユニットを製造するための方法である。この方法は、連続した少なくとも以下の工程、すなわち、
(a)次のもの、すなわち、
・無機又は有機ガラスで製作されて、第1の主面、第2の主面及び端面を有する第1の板、
・無機又は有機ガラスで製作されて、第1の主面、第2の主面及び端面を有する第2の板、
・第1の板の第2の主面及び第2の板の第1の主面に接着して接触する積層中間層であって、ガラス板のおのおのの面積よりも小さい面積を有し、こうして第1の板の第2の主面の端部と第2の板の第1の主面の端部との間に溝形の空間を画定している積層中間層、
を含む積層グレージングユニットを用意する工程、
(b)少なくとも印刷回路基板(PCB)と複数のLEDとを含むLEDの1つのストリップを、LEDの発光面が第1の板の端面に面するように、且つPCBが複数のスペーサーを用いて第2のガラス板の第1の主面にもたれて位置するように配置する工程、及び、
(c)少なくとも第2の板の端面とLEDのストリップトとを封入する、不透明ポリマー製の封入用エレメントを作製し、第1の板の第2の主面の端部と第2の板の第1の主面の端部との間の溝形の空間に充填する工程、
を含む。
【0027】
1つ以上のLEDストリップを接着結合によって所定の位置に固定することができる。LEDの発光面と第1の板の端面との光学的結合を、工程(c)の間に封入用組成物がLEDと第1の板の端面との間のゾーンを隠して暗くするのを防止するのを更に可能にする透明接着剤を用いて確実に行うことが、特に有利である。
【0028】
封入用エレメントは、グレージングユニットの端部を取り囲む成形型の中に液体の封入用組成物を注入することにより作製される(工程(c))。この封入用組成物は、熱硬化性モノマーの組成物、好ましくは少なくとも1種のポリイソシアネートとポリオールとを含む組成物(ポリウレタンを生成する)であることができ、そして前記注入した組成物をそれを硬化させるための温度にそのために十分な時間加熱する。
【0029】
この組成物は溶融した状態では熱可塑性であってもよい。その後、ポリマーを加熱によらずそれを冷却することにより硬化させる。
【0030】
封入用組成物の注入と硬化の条件は周知であり、様々な熱硬化性又は熱可塑性封入用組成物の配合が知られている。当業者はそれらを選ぶことができ、そして必要ならば、2枚のガラス板の端部の間の空間を申し分なく満たして十分に不透明なポリマーストリップを作り、いかなる寄生光も隠すためにそれらを適合させることができる。
【0031】
次に、図面に示したいくつかの実施形態を用いて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】従来技術のLEDで照射される積層グレージングユニットの端部の横断面図である。
図2図1のグレージングユニットについて観測した残留光点(寄生光)を示す、ビデオ測光器で撮影した写真のネガ画像である。
図3】本発明によるグレージングユニットの第1の実施形態の端部の横断面図である。
図4】本発明によるグレージングユニットの第2の実施形態の端部を示す図である。
図5】本発明によるグレージングユニットの第3の実施形態の端部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1の積層グレージングユニットは、第1の主面11、第2の主面12及び端面13を持つ第1のガラス板1を含み、PCB 41により支持されたLED 42が端面13を介してこの第1の板に光を投入する。第2の板の第1の主面21及び第1の板の第2の主面12と接着して接触する積層中間層5は、これら2枚のガラス板1、2よりも面積が小さく、こうしてこれら2枚の板の間の溝形の空間8を画定している。LED 42の発光面31は、任意選択的に、透明接着剤15によって第1の板の端面13に連結している。PCB 41は、第2の板の第1の主面に直接接着結合している。従って、封入用エレメント4は、2枚の板の間の空間8に入り込むことができず、第2の板の端面23、LED 42の一部、接着剤15、及び第1の板の第1の主面11と接触しているだけである。
【0034】
第1の板の第1の主面11と接触する封入用エレメント4は、内部に向かって放射される傾向のある寄生光を遮断する。
【0035】
第2の板の第1の主面21に適用された不透明なエナメル18は、PCBと板2とのこの接触ゾーンを外部に対して覆い隠す。このエナメル18とPCB 41との組み合わされた光遮断能力は、LEDから外部へ向けての直接光の放射を遮断するのに十分である。しかし、PCB 41の範囲を越えると、エナメル単独での光遮断能力は寄生光を遮蔽するには不十分である。
【0036】
図2は、外部から見た図1のグレージングユニットのビデオ測光器で撮影した写真のネガ画像を示している。この図における各暗い点が、エナメル18を通り抜けたLEDからの寄生光の点に対応している。
【0037】
図3は、本発明によるグレージングユニットの第1の実施形態を示している。図1との比較から、このグレージングユニットの本質的な違いは、第2の板の第1の主面21から特定の距離のところにPCB 41を保持するスペーサー6が存在していることにある。PCB 41と第2の板2との間にこうして画定される空間のおかげで、封入用エレメント4を形成する液体組成物は、封入工程中に、この空間を通って2枚の板1、2と中間層5とにより画定される溝形の空間8の中に浸透することができる。封入用エレメントのポリマーがこの空間8を充填することで、寄生光を効果的に抑制する追加レベルの不透明さがもたらされる。
【0038】
図4は、PCB 41が2枚のガラス板1、2と中間層5とによって画定される溝形の空間8の中に及んでいない点で図3に示したものと異なる、本発明によるグレージングユニットの第2の実施形態を示している。この実施形態は、例えば、PCB 41の厚さが中間層の厚さより大きいかそれと等しい場合、及び該PCB 41を空間8に挿入することが不可能である場合に有用である。
【0039】
最後に、図5は、図3と4の側面発光LEDストリップが上面発光LEDストリップで置換されている本発明によるグレージングユニットの第3の実施形態を示している。ここでの断面図にその1つだけを見ることができるスペーサー6は、PCB 41の主面ではなくてその端面に位置している。
図1
図2
図3
図4
図5