特許第6166285号(P6166285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166285
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】有機半導体組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/10 20060101AFI20170710BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20170710BHJP
   C08K 5/03 20060101ALI20170710BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20170710BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   C08G61/10
   C08L65/00
   C08K5/03
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250G
【請求項の数】21
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2014-558213(P2014-558213)
(86)(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公表番号】特表2015-513580(P2015-513580A)
(43)【公表日】2015年5月14日
(86)【国際出願番号】GB2013050458
(87)【国際公開番号】WO2013124683
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2016年2月25日
(31)【優先権主張番号】1203159.7
(32)【優先日】2012年2月23日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514215170
【氏名又は名称】スマートケム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス,ラッセル ジョン
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−530820(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0097938(US,A1)
【文献】 特表2012−530818(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0108731(US,A1)
【文献】 特表2009−534504(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0249802(US,A1)
【文献】 特表2009−524226(JP,A)
【文献】 特表2007−519227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/10
C08K 5/03
C08L 65/00
H01L 51/05
H01L 51/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(A)を有する少なくとも1つのポリアセンモノマー単位(A)と、下記の式(B)を有する少なくとも1つのモノマー単位(B)、及び下記の式(C)を有する少なくとも1つのモノマー単位(C)を含む、多環芳香族炭化水素コポリマー(PAHC)であって、
式(A)中、kとlは、独立して1または2であり;R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14は、表1に示したケース1〜7より選ばれ;ただし、R及びRとR及びR10のペアのうち一方は、別のモノマー単位との−*で表される結合であり;
前記式(B)中、n’は1〜3であり;R1’=R2’=C〜C14アルキル基かつR3’及びR4’はそれぞれ独立にH;C〜Cアルキル基;C〜Cアルコキシ基;シアノ基;またはシアノイソプロピル基であり;
前記式(C)中、R’a、R’b、R’c、R’d、R’eは、表2より選ばれる、PAHC。
【化1】
【化2】
【化3】
【表1】
【表2】
【請求項2】
前記コポリマー中のすべてのモノマー単位(A)および(B)の総計に対して、少なくとも20〜40%のモノマー(A)と、少なくとも60〜80%のモノマー(B)とを含む、請求項1に記載のPAHC。
【請求項3】
前記コポリマーは、1000Hz時の誘電率が1.5超である、請求項1または2に記載のPAHC。
【請求項4】
k=1かつl=1である、請求項1〜3のいずれかに記載のPAHC。
【請求項5】
モノマー単位(B)において、R1’=R2’=n−オクチル基である、請求項1〜4のいずれかに記載のPAHC。
【請求項6】
モノマー単位(C)において、C〜Cアルコキシ基がメトキシ基またはエトキシ基である、請求項1〜5のいずれかに記載のPAHC。
【請求項7】
モノマー単位(C)において、C〜Cアルコキシ基の全てがメトキシ基またはエトキシ基である、請求項6に記載のPAHC。
【請求項8】
前記コポリマーの数平均分子量(Mn)が350〜100,000である、請求項1〜7のいずれかに記載のPAHC。
【請求項9】
前記コポリマーは1000Hz時の誘電率が3.4〜8.0の半導体コポリマーである、請求項1〜8のいずれかに記載のPAHC。
【請求項10】
下記の1つ以上のモノマー(D)、(D’)、および/または(E)をさらに含む、請求項1〜のいずれかに記載のPAHC。
【化4】
【化5】
【化6】
(式中、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R6”、およびR7”の各々並びにR1’、R2’、R3’及びR4’の各々は、同一でも異なっていてもよく、独立して、水素;分枝もしくは非分枝の置換もしくは非置換C−C40アルキル基;分枝もしくは非分枝の置換もしくは非置換C−C40アルケニル基;分枝もしくは非分枝の置換もしくは非置換C−C40アルキニル基;随意に置換されたC−C40シクロアルキル基;随意に置換されたC−C40アリール基;随意に置換されたC−C40複素環基;随意に置換されたC−C40ヘテロアリール基;随意に置換されたC−C40アル
コキシ基;随意に置換されたC−C40アリールオキシ基;随意に置換されたC−C40アルキルアリールオキシ基;随意に置換されたC−C40アルコキシカルボニル基;随意に置換されたC−C40アリールオキシカルボニル基;シアノ基(−CN);カルバモイル基(−C(=O)NR1516);カルボニル基(−C(=O)−R17);カルボキシル基(−CO18);シアネート基(−OCN);イソシアノ基(−NC);イソシアネート基(−NCO);チオシアネート基(−SCN)もしくはチオイソシアネート基(−NCS);随意に置換されたアミノ基;ヒドロキシ基;ニトロ基;CF基;ハロ基(Cl、Br、F、I);−SR19;−SOH;−SO20;−SF;随意に置換されたシリル基;−SiH22基で置換されたC−C10アルキニル基、−SiHR2223基で置換されたC−C10アルキニル、または−Si(R22(R23(R24基で置換されたC−C10アルキニル部分を表し;
各R22基は、分枝または非分枝の置換または非置換C−C10アルキル基、分枝または非分枝の置換または非置換C−C10アルキニル基、置換または非置換C−C20シクロアルキル基、置換または非置換C−C10アルケニル基、および置換または非置換C−C20シクロアルキルアルキレン基からなる群より独立して選ばれ;
各R23基は、分枝または非分枝の置換または非置換C−C10アルキル基、分枝または非分枝の置換または非置換C−C10アルキニル基、置換または非置換C−C10アルケニル基、置換または非置換C−C20シクロアルキル基、および置換または非置換C−C20シクロアルキルアルキレン基からなる群より独立して選ばれ;
24は、水素、分枝または非分枝の置換または非置換C−C10アルキニル基、置換または非置換C−C20シクロアルキル基、置換または非置換C−C20シクロアルキルアルキレン基、置換C−C20アリール基、置換または非置換C−C20アリールアルキレン基、アセチル基、ならびに環中にO、N、S、およびSeのうち少なくとも1つを含む置換または非置換C−C20複素環からなる群より独立して選ばれ;
x=1または2であり;y=1または2であり;z=0または1であり;(x+y+z)=3であり;
15、R16、R18、R19、およびR20の各々は、独立して、Hを表すか、または1つ以上のヘテロ原子を随意に含む随意に置換されたC−C40カルビル基もしくはヒドロカルビル基を表し;
17は、ハロゲン原子もしくはHを表すか、または、1つ以上のヘテロ原子を随意に含む随意に置換されたC−C40カルビル基もしくはC−C40ヒドロカルビル基を表し;
Ar、Ar、およびArは、同一でも異なっていてもよく、その各々は、随意に置換されたC6−40芳香族基(単環または多環)を独立して表し;
n”=1〜3であり;
n’=1〜3である。)
【請求項11】
前記コポリマー中の全モノマー単位の総重量に対して、モノマー(A)は少なくとも20重量%の量で存在し、モノマー(B)は少なくとも60重量%の量で存在し、残り部分はモノマー(C)、(D)、(D’)、および/または(E)で構成される、請求項10記載のPAHC。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のPAHCと、ポリアセン小分子と、を含む有機半導体組成物であって、該PAHCの1000Hz時の誘電率は3.4〜8.0である、有機半導体組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載のPAHCと、ポリアセン小分子と、を含む有機半導体組成物であって、該PAHCの1000Hz時の誘電率は3.4〜4.5である、有機半導体組成物。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の多環芳香族炭化水素コポリマー(PAHC)を含み、1000Hz時の誘電率が3〜6.5である、有機半導体組成物。
【請求項15】
1000Hz時の誘電率が3.4〜8である有機結合剤を含む、請求項14に記載の有機半導体組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載のPAHCまたは有機半導体組成物を含む、有機半導体層。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載のPAHC、有機半導体組成物、または半導体層を含む、電子デバイス。
【請求項18】
有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、光検出器、有機光起電力(OPV)電池、センサー、レーザー、記憶素子、および論理回路から選ばれる、請求項17に記載の電子デバイス。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれかに記載のPAHCまたは有機半導体組成物を含む、インク。
【請求項20】
請求項1記載の多環芳香族炭化水素コポリマー(PAHC)の製造方法であって、下記の構造(A’)から選ばれる少なくとも1つのポリアセンモノマー単位と、下記の構造(B’)から選ばれる少なくとも1つのモノマー単位を含有する組成物を共重合させることを含む、製造方法。
【化7】
【化8】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14の各々は請求項1と同じであり
kとlは、独立して1または2であり;
1’、R2’、R3’、R4’請求項1と同じであり
n’=1〜3であり;
X’は、ハロゲン原子または環状ホウ酸エステル基(cyclic borate group)であり;
Y’は、ハロゲン原子である。)
【請求項21】
前記コポリマー中のすべてのモノマー単位(A’)および(B’)の総計に対して、少なくとも20〜40%のモノマー単位(A’)と、少なくとも60〜80%のモノマー単位(B’)とを含むコポリマーを製造する、請求項20記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機コポリマー、およびこの材料を含む有機半導体組成物(このような有機半導体組成物を含む層およびデバイスを含む)に関する。本発明は、このような有機半導体組成物および層の作製方法ならびにその使用にも関する。本発明は、プリンテッドエレクトロニクスの分野で応用性があり、特に、ディスプレイ用有機電界効果トランジスタ(OFET)バックプレーン、集積回路、有機発光ダイオード(OLED)、光検出器、有機光起電力(OPV)電池、センサー、記憶素子、および論理回路用の配合物に使われる半導体材料として有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のシリコン系半導体に代わる選択肢として、有機半導体材料への関心が高まっている。有機半導体材料には、シリコン系半導体材料に優る利点がいくつかある。例えば、比較的低コスト、比較的容易な製造、低温時の溶液加工性、柔軟性の増大、機械的堅牢性、多種多様なフレキシブル基板との良好な適合性、軽量、といった利点がある。このように、有機半導体材料は、より簡便な高性能電子デバイスを製造する可能性を提供する。
【0003】
特にポリアセン化合物とその類似体は、この技術分野において有望である。例えば特許文献1では、1000Hz時の誘電率(ε)が3.3以下の有機結合剤と、ポリアセン化合物と、を含む有機半導体層配合物を開示している。しかし、特許文献1に記載されているOFETの作製方法は、実際には制限があり、比較的チャンネル長の長い(典型的には50ミクロン超の)トップゲート型OFETの製造でのみ有用である。本発明では克服している、特許文献1のさらなる不利な点は、望ましくない塩素化溶媒を頻繁に使用することである。特許文献1に開示されている、移動度≧1.0cm−1−1を有する最高性能の半導体組成物は、溶媒として1,2−ジクロロベンゼンを組み込んでいる(54ページ表5ならびに実施例14、21、および25)。さらに、このような溶媒は、印刷プロセスにおいて工業的に容認可能な溶媒でないと考えられ、環境にも損害を与える。したがって、このような半導体組成物を製造するには、より無害性の溶媒を使用することが望ましいと考えられる。さらに、誘電率3.3以上のポリマーを使用するとOFETデバイスの移動度が著しく低下することから、誘電率3.3未満のポリマー結合剤のみ使用できると一般に考えられている。
【0004】
1000Hz時の比誘電率が3.3を超える絶縁ポリマーと、2,3,9,10−置換ペンタセン化合物との併用を開示している特許文献2でも、上記のような移動度の低下が見られる。この化合物が示す移動度は、工業的に有用となるには低すぎる値である10−2〜10−7cm−1−1であると報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/055248号
【特許文献2】国際公開第2007/078993号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、溶媒可溶性で、移動度が高く、柔軟性が高い多環芳香族炭化水素コポリマー、特に、調節可能な誘電率を有し高い移動度を示すポリアセンコポリマーおよびポリアセン類似体コポリマーを提供することにより、上記の問題を克服する有機半導
体組成物を提供することを追求する。
【0007】
本発明のコポリマーおよび組成物は、単に小分子化合物で作られた層とは異なり、堆積時に、フレキシブルで非脆性の層をもたらす溶解性材料を産出することが見込まれる。本発明のコポリマーは、プリンタブルエレクトロニクスの分野で使われる典型的な半導体結合剤、例えば、移動度が約10−6以下〜10−3cm/Vs程度のポリトリアリールアミンクラスの半導体結合剤と比べて、移動度が著しく高い。本発明のコポリマーは、丸めることのできるフレキシブルな電子デバイス、例えばディスプレイ用OTFTアレイ、大面積のプリンテッドセンサー、プリンテッドロジック等の製作において、工業的に有用となる。特に、本発明の半導体ポリマーは、電気泳動ディスプレイ、高解像度LCD、およびAMOLEDディスプレイ用のバックプレーン駆動体として使用可能な、チャンネル長の短い(30ミクロン以下、あるいは5〜10ミクロン以下)有機薄膜トランジスタ(OTFT)用の配合物において有用となる。
【0008】
本発明のコポリマーは、無害な非塩素化溶媒、例えば、印刷で通常使われる非塩素化溶媒に対して可溶性でもある。
【0009】
本発明は、高度にフレキシブルで非脆性の半導体膜も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
多環芳香族炭化水素コポリマー
本発明の多環芳香族炭化水素コポリマー(以下PAHC)は、式(A)を有する少なくとも1つのポリアセンモノマー単位と、式(B)を有する少なくとも1つのフルオレンモノマー単位との混合物を含む。
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14の各々は、同一でも異なっていてもよく、独立して、水素;分枝もしくは非分枝の置換もしくは非置換C−C40アルキル基;分枝もしくは非分枝の置換もしくは非置換C−C40アルケニル基;分枝もしくは非分枝の置換もしくは非置換C−C40アルキニル基;随意に置換されたC−C40シクロアルキル基;随意に置換されたC−C40アリール基;随意に置換されたC−C40複素環基;随意に置換されたC−C40ヘテロアリール基;随意に置換されたC−C40アルコキシ基;随意に置換されたC−C40アリールオキシ基;随意に置換されたC−C40アルキルアリールオキシ基;随意に置換されたC−C40アルコキシカルボニル基;随意に置換されたC−C40アリールオキシカルボニル基;シアノ基(−CN);カルバモイル基(−C(=O)NR1516);カルボニル基(−C(=O)−R17);カルボキシル基(−CO18シアネート基(−OCN);イソシアノ基(−NC);イソシアネート基(−NCO);チオシアネート基(−SCN)もしくはチオイソシアネート基(−NCS);随意に置換されたアミノ基;ヒドロキシ基;ニトロ基;CF基;ハロ基(Cl、Br、F、I);−SR19;−SOH;−SO20;−SF;随意に置換されたシリル基;SiH22基で置換されたC−C10アルキニル基、SiHR2223基で置換されたC−C10アルキニル、または−Si(R22(R23(R24基で置換されたC−C10アルキニルを表し;
各R22基は、分枝または非分枝の置換または非置換C−C10アルキル基、分枝または非分枝の置換または非置換C−C10アルキニル基、置換または非置換C−C20シクロアルキル基、置換または非置換C−C10アルケニル基、および置換または非置換C−C20シクロアルキルアルキレン基からなる群より独立して選ばれ;
各R23基は、分枝または非分枝の置換または非置換C−C10アルキル基、分枝または非分枝の置換または非置換C−C10アルキニル基、置換または非置換C−C10アルケニル基、置換または非置換C−C20シクロアルキル基、および置換または非置換C−C20シクロアルキルアルキレン基からなる群より独立して選ばれ;
24は、水素、分枝または非分枝の置換または非置換C−C10アルキニル基、置換または非置換C−C20シクロアルキル基、置換または非置換C−C20シクロアルキルアルキレン基、置換C−C20アリール基、置換または非置換C−C20アリールアルキレン基、アセチル基、ならびに環中にO、N、S、およびSeのうち少なくとも1つを含む置換または非置換C−C20複素環からなる群より独立して選ばれ;
x=1または2であり;y=1または2であり;z=0または1であり;(x+y+z)=3であり;
15、R16、R18、R19、およびR20の各々は、独立して、Hを表すか、または1つ以上のヘテロ原子を随意に含む随意に置換されたC−C40カルビル基もしくはヒドロカルビル基を表し;
17は、ハロゲン原子もしくはHを表すか、または、1つ以上のヘテロ原子を随意に
含む随意に置換されたC−C40カルビル基もしくはC−C40ヒドロカルビル基を表し;
kとlは、独立して0、1、または2であり;
、R、R、R、R、R、R10、およびR11のうち少なくとも2つは、式(A)または(B)を有する別のモノマー単位との−*で表される結合であり;R1’、R2’、R3’、およびR4’の各々は、同一でも異なっていてもよく、R、R、R、Rと同一の群から選ばれ;好ましくは、R1’基、R2’基、R3’基、R4’基のうちの少なくとも1つは、極性基または極性化性の基であり;モノマー基(B)に関して、−*は、式(A)または(B)を有する別のモノマー単位との結合を表し;
n’=1〜3である。
【0014】
好ましくは、k=l=0または1である。
【0015】
好ましくは、k=1であり、l=1である。
【0016】
好ましくは、x=2であり、y=1である。
【0017】
好ましくは、z=0のとき、R22とR23は一緒になって、(i)分枝または非分枝の置換または非置換C−Cアルキル基(複数可)と、(ii)分枝または非分枝の置換または非置換C−Cアルケニル基(複数可)との組み合わせを含む。
【0018】
好ましくは、R22、R23、およびR24のいずれも、ハロゲン原子で随意に置換されてよい。
【0019】
本発明の特に好適なPAHCを次表に示す。
【0020】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0021】
この表に指定されている有機半導体化合物が特に好適である理由は、(結合剤の)電荷輸送移動度が高いという有利な特性と、大面積印刷での使用に望ましい無害な非塩素化溶媒との適合性が高い極性とを組み合わせているからである。加えて、これらの化合物は、OSC層として堆積するか、あるいはOSC層の一成分として堆積すると、さらに極性が高くなるので、Cytop等の有機ゲート絶縁体(OGI)に使われる疎水性溶媒による再溶解に対して耐性を持つことが見込まれる。さらに、有極性の結合剤は、トップゲート型OTFTとボトムゲート型OTFTの両方、特にボトムゲート型OTFTに有用であることが見込まれる。
【0022】
本発明のコポリマーは、好ましくは350〜100,000の数平均分子量(Mn)を有し、より好ましくは1600〜20000、より好ましくは500〜10000、さらにより好ましくは450〜5000、さらにより好ましくは850〜5000の数平均分子量を有する。
【0023】
本発明のコポリマーは、好ましくは、式(A)を有する1〜100000のモノマー単位と、式(B)を有する1〜100000のフルオレンモノマー単位と、を有する。より好ましくは、本発明のコポリマーは、式(A)を有する1〜1000のモノマー単位と、式(B)を有する1〜1000のフルオレンモノマー単位と、を有する。より好ましくは、本発明のコポリマーは、式(A)を有する1〜100のモノマー単位と、式(B)を有する1〜100のフルオレンモノマー単位と、を有する。さらにより好ましくは、本発明のコポリマーは、式(A)を有する1〜10のモノマー単位と、式(B)を有する1〜10のフルオレンモノマー単位と、を有する。
【0024】
本発明の有機半導体組成物は、1000Hz時の誘電率が3.4未満の有機結合剤を、好ましくは10重量%未満含有し、より好ましくは5重量%未満含有し、より好ましくは1重量%未満含有し、より好ましくは実質的にまったく含有しない。
【0025】
本発明の好適なPAHCおよび組成物は、(コポリマー中または組成物中のすべてのモ
ノマー単位(A)および(B)の全体のうち)式(A)を有するポリアセンモノマー単位を少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも20〜40重量%含有し、式(B)を有するモノマー単位を少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも20〜80重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも60〜80重量%含有する。
【0026】
本発明の好適なPAHCおよび組成物は、(コポリマー中または組成物中のすべてのモノマー単位(A)および(B)の全体のうち)式(A)を有するポリアセンモノマー単位を少なくとも40重量%含有し、式(B)を有するモノマー単位を少なくとも40重量%、好ましくは60重量%含有する。好適なPAHCは、モノマー単位(B)を主成分として含有する。
【0027】
本発明のポリアセンコポリマーは、下記の概略合成レジームに従って作製することができる。簡単にするため、フルオレンモノマーとカップリングし、ビス(トリアルキル)シリルで置換されたペンタセンを表示している(さらなる置換は表示していない。当業者であれば、どうすればこれを上記構造に一般化できるかを理解している)。カップリング反応は、好ましくは、山本型カップリング(塩化ニッケル、亜鉛、2,2’−ビピリジル、トリフェニルホスフィン、およびジメチルアセトアミドを使用)であるが、鈴木カップリングも可能である。ただし、この場合、得られる半導体ポリマーからボロン酸エステル(boronic ester)を除去することが好ましい。
【0028】
【化3】
【0029】
式中、αとβは好ましくは1〜100000の整数であり;Rの定義はR25、R26、R27の下記定義と同一である。概略合成ルートではRとRはn−オクチル基で表されているが、下記にR、Rとして定義されるどの基であってもよい。ハロゲン末端基は、優先的に置換反応または水素添加反応(hydrogentation)を受ける。
【0030】
【化4】
【0031】
式中、αとβは好ましくは1〜100000の整数であり;Rの定義はR25、R26、R27の下記定義と同一である。概略合成ルートではRとRはn−オクチル基で表されているが、下記にR、Rとして定義されるどの基であってもよい。ハロゲン末端基は、優先的に置換反応または水素添加反応(hydrogentation)を受ける。
【0032】
カップリング反応の完了時に、好ましくは、ハロゲン末端基とボロン酸エステル(boronic ester)末端基は別の基で置換される(例えば、それぞれ水素添加および/または加
水分解により置換される)。
【0033】
本発明のコポリマーを形成する重合ステップの次に、コポリマーを架橋結合してよい。架橋結合は任意の公知の手法で実施してよい。例として、熱および/または水分の添加、エチレンオキシド処理、UV照射、ガンマ線滅菌、電子ビーム照射、オートクレーブ処理が挙げられる。
【0034】
したがって、本発明の別の態様に従って、多環芳香族炭化水素コポリマー(PAHC)
の製造方法が提供される。この製造方法は、構造A’から選ばれる少なくとも1つのポリアセンモノマー単位と、構造B’から選ばれる少なくとも1つのモノマー単位と、を含有する組成物を共重合させることを含む。
【0035】
【化5】
【0036】
【化6】
【0037】
式中、R基とR’基の各々およびkとlは、上記PAHCの定義に関して記載されている一般的かつ好ましい意味と同一の意味を有し;好ましくは、R1’、R2’、R3’、R4’のうちの少なくとも1つは、極性基またはより極性化性の基であり;
X’は、ハロゲン原子または環状ホウ酸エステル基(cyclic borate group)であり;
Y’は、ハロゲン原子である。
【0038】
あるいは、Y’が環状ホウ酸エステルであってもよく、X’はハロゲン原子である。
【0039】
好ましくは、環状ホウ酸エステル基は下記の通りである。
【0040】
【化7】
【0041】
好ましくは、この方法は溶媒中で実施され、好ましくは有機溶媒中、好ましくは芳香族有機溶媒中で実施される。
【0042】
本発明の組成物は、追加の硬化性モノマー(例えば希釈剤モノマー)を含んでよい。適切な材料の例として、ラジカル硬化性モノマー化合物(例えばアクリレートおよびメタクリレートモノマー化合物)が挙げられる。アクリレートモノマーおよびメタクリレートモ
ノマーの例として、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸イソデシル、メタクリル酸イソデシル、アクリル酸カプロラクトン、アクリル酸2−フェノキシエチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸ブチル、アルコキシル化アクリル酸ラウリル、エトキシ化アクリル酸ノニルフェノール、エトキシ化メタクリル酸ノニルフェノール、エトキシ化メタクリル酸ヒドロキシエチル、モノアクリル酸メトキシポリエチレングリコール、モノメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、およびこれらの混合物または組み合わせが挙げられる。
【0043】
加えて、反応性希釈剤として、かつ硬化組成物の架橋密度を高めることのできる物質として、多官能性のアクリレートおよびメタクリレートのモノマーおよびオリゴマーを組成物に含めてよい。適切な多官能性アクリレートおよびメタクリレートのモノマーおよびオリゴマーの例として、テトラアクリル酸ペンタエリトリトール、テトラメタクリル酸ペンタエリトリトール、ジアクリル酸1,2−エチレングリコール、ジメタクリル酸1,2−エチレングリコール、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジアクリル酸1,12−ドデカノール、ジメタクリル酸1,12−ドデカノール、トリアクリル酸イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)、プロポキシ化ジアクリル酸ネオペンチルグリコール、ジアクリル酸ヘキサンジオール、ジアクリル酸トリプロピレングリコール、ジアクリル酸ジプロピレングリコール、エトキシ化ジアクリル酸ビスフェノールA、エトキシ化ジメタクリル酸ビスフェノールA、アルコキシル化ジアクリル酸ヘキサンジオール、アルコキシル化ジアクリル酸シクロヘキサンジメタノール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール、トリアクリル酸イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)、アミンで修飾されたポリエーテルアクリレート(PO 83 F(登録商標)、LR 8869(登録商標)、およ
び/またはLR 8889として提供)(すべてBASF社から入手可能)、トリアクリ
ル酸トリメチロールプロパン、トリアクリル酸プロポキシル酸グリセロール(glycerol propoxylate triacrylate)、ペンタアクリル酸ジペンタエリトリトール、ヘキサアクリル酸ジペンタエリトリトール、エトキシ化テトラアクリル酸ペンタエリトリトール(サートマー社からSR494(登録商標)として提供)、ならびにこれらの混合物および組み合わせが挙げられる。本発明の組成物に反応性希釈剤を添加する場合は、所望される任意の量または有効量の反応性希釈剤が添加され、一実施形態では、少なくとも約1重量パーセントの担体、少なくとも約35重量パーセントの担体、約98重量パーセント以下の担体、約75重量パーセント以下の担体が添加されるが、希釈剤の量はこれらの範囲の外にあってよい。
【0044】
本発明のコポリマーは、1000Hz時の誘電率が1.5超であってよく、好ましくは2超、好ましくは3超である。特に好ましくは、本発明のコポリマーは、1000Hz時の誘電率が1.5〜8、より好ましくは3.4〜8の半導体コポリマーである。好適な一実施形態では、本発明のポリアセンコポリマーは、1000Hz時の誘電率が3.4〜7であり、より好ましくは3.4〜6.5、さらにより好ましくは3.4〜4.5、さらにより好ましくは3.4〜4.0である。本発明のコポリマーは、好ましくは半導体コポリマーであり、1000Hz時の誘電率が3.4超であってよく、例えば3.8超、4.0超、4.2超等であってよい。
【0045】
本発明の有機半導体組成物は、1000Hz時の誘電率が3.4未満のコポリマーを、好ましくは10重量%未満含有し、より好ましくは5重量%未満含有し、より好ましくは1重量%未満含有し、より好ましくは実質的にまったく含有しない。好適な一実施形態では、誘電率の測定は、国際公開第2004/102690号で開示されている方法、または本明細書に開示される方法を用いて行い、好ましくは、本明細書に開示される方法を用いて行う。
【0046】
好ましくは、本発明のコポリマーは、1000Hz時の誘電率が3.4〜8の半導体コポリマーである。好適な一実施形態では、本発明のコポリマーは、1000Hz時の誘電率が3.4〜7であり、より好ましくは3.4〜6.5、さらにより好ましくは3.4〜4.5である。コポリマーの誘電率を測定するには、当業者に知られている任意の標準の方法を用いてよい。好適な一実施形態では、誘電率の測定は、国際公開第2004/102690号で開示されている方法、または本明細書に開示される方法を用いて行い、好ましくは、本明細書に開示される方法を用いて行う。
【0047】
式(A)のモノマー単位
以下、(A)として上記で定義したポリアセンモノマー単位の好ましい特性をいくつか挙げる。
【0048】
好適な一実施形態では、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14基のうちの少なくとも1つ(より好ましくは2つ)は、トリ−C1−20ヒドロカルビルシリルC1−4アルキニル基である。
【0049】
好ましくは、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14基のうちの少なくとも1つ(より好ましくは2つ)は、トリヒドロカルビルシリルエチニル基である。
【0050】
好適な一実施形態では、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14基のうちの少なくとも1つ(より好ましくは2つ)は、(トリヒドロカルビルシリル)エチニル基、−C≡C−SiR222324である(式中、R22、R23、およびR24は、独立してC−CアルキルまたはC−Cアルケニルを表す)。より好適な一実施形態では、R22、R23、およびR24は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、1−プロペニル、および2−プロペニルからなる群より独立して選ばれる。
【0051】
好適な一実施形態では、RとR13は、トリアルキルシリルエチニル基、−C≡C−SiR222324である(式中、R22、R23、およびR24は、独立してC−CアルキルまたはC−Cアルケニルを表す)。より好適な一実施形態では、R22、R23、およびR24は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル1−プロペニル、および2−プロペニルからなる群より独立して選ばれる。
【0052】
さらに別の好適な一実施形態では、k=l=1のとき、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11は、独立してH、C−Cアルキル、またはC−Cアルコキシを表す。より好ましくは、R、R、R、およびR11は同一であり、H、C−Cアルキル、またはC−Cアルコキシを表す。さらにより好適な一実施形態では、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11は、同一であるか異なっており、水素、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、およびブチルオキシからなる群より選ばれる。
【0053】
好ましくは、R、R、R12、およびR14は水素である。
【0054】
好ましくは、R22、R23、およびR24は、水素と、随意に(例えばハロゲン原子で)置換されてよいC−C10アルキル基(好ましくはC−Cアルキル、最も好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、またはイソプロピル)と、からなる群より独立して選ばれる。
【0055】
22とR23は、好ましくは、随意に置換されたC1−10アルキル基と、随意に置換されたC2−10アルケニルと、からなる群より独立して選ばれ、より好ましくは、C−CアルキルまたはC−Cアルケニルである。この場合の好適なアルキル基は、イソプロピルである。
【0056】
上記シリル基−Si(R22(R23(R24の例として、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、ジメチルエチルシリル、ジエチルメチルシリル、ジメチルプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジプロピルメチルシリル、ジイソプロピルメチルシリル、ジプロピルエチルシリル、ジイソプロピルエチルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルイソプロピルシリル、ジイソプロピルフェニルシリル、ジフェニルエチルシリル、ジエチルフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニル等が挙げられるが、これらに限定されない。上記リストのどの例も、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基は随意に置換されてよい。
【0057】
本発明の第1の態様の好適な一実施形態では、本発明のPAHCは、下記の式(A1)を有する少なくとも1つのモノマー単位を含む。
【0058】
【化8】
【0059】
式中、R、R、R12、およびR14の各々は水素であり;
とR13は、トリアルキルシリルエチニル基、−C≡C−SiR222324であり、ここでR22、R23、およびR24は、独立してC−CアルキルまたはC−Cアルケニルを表し;
、R、R、R、R、R、R10、およびR11は、水素;分枝もしくは非分枝の非置換C−Cアルキル基;C−Cアルコキシ基;およびC−C12アリールオキシ基からなる群より独立して選ばれ;
ただし、R/RとR/R10の各ペアのうち少なくとも1つは、式(A)、(A1)、または(B)を有する別のモノマー単位との−*で表される結合であり;
kとlは、独立して0または1であり、好ましくは、kとlの両方とも1である。
【0060】
kとlの両方とも1であり;RとR13が(トリアルキルシリル)エチニル基、−C≡C−SiR222324(ここで、R22、R23、およびR24は、好ましくはエチル、n−プロピル、イソプロピル、1−プロペニル、または2−プロペニルから選ばれる)である、式(A1)のモノマー単位において、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11は、水素、メチル、エチル、およびメトキシからなる群より独立して選ばれる。ただし、R/RとR/R10の各ペアのうち少なくとも1つは、式(A)、(A1)、または(B)を有する別のモノマー単位との−*で表される結合で
ある。
【0061】
より好適な一実施形態では、PAHCポリマー中のポリアセン部分は置換ペンタセンであり、この場合、各R22基は、分枝または非分枝の置換または非置換C−Cアルキル基、置換または非置換C−C12シクロアルキル基、および置換または非置換C−C12シクロアルキルアルキレン基からなる群より独立して選ばれ;各R23基は、置換または非置換C−Cアルケニル基、置換または非置換C−C12シクロアルキル基、および置換または非置換C−C12シクロアルキルアルキレン基からなる群より独立して選ばれ;R24は、水素、分枝または非分枝の置換または非置換C−Cアルキニル基、置換または非置換C−C12シクロアルキル基、置換または非置換C−C12シクロアルキルアルキレン基、置換C−C12アリール基、置換または非置換C−C14アリールアルキレン基、アセチル基、ならびに環中にO、N、S、およびSeのうちの少なくとも1つを含む置換または非置換C−C12複素環からなる群より独立して選ばれる。
【0062】
本発明の好適なPAHCおよび組成物は、(コポリマーまたは組成物中のすべてのモノマー単位(A)、(A1)、および(B)の全体のうち)式(A1)を有するポリアセンモノマー単位を少なくとも20重量%含有し、式(B)を有するモノマー単位を少なくとも20重量%、好ましくは20〜80重量%含有する。
【0063】
本発明の特に好適なポリアセンモノマー単位は、下記の式(A2)のモノマー単位である。
【0064】
【化9】
【0065】
式中、R、R、R、およびR11は、H、C−Cアルキル、およびC−Cアルコキシからなる群より独立して選ばれる。
【0066】
好ましくは、R、R、R、およびR11は、同一であるか異なっており、水素、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、およびブチルオキシからなる群より独立して選ばれ、より好ましくは、水素、メチル、プロピル、およびメトキシからなる群より独立して選ばれる。
【0067】
式(A2)のモノマー単位において、R、R、R、およびR10は、H、C−Cアルキル、およびC−Cアルコキシからなる群より独立して選ばれる。ただし、R/RとR/R10の各ペアのうち少なくとも1つは、式(A)、(A1)、(A2)、または(B)を有する別のモノマー単位との−*で表される結合である。好適な一実施形態では、R、R、R、およびR10は、同一であるか異なっており、水素、
メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、およびブチルオキシからなる群より独立して選ばれ、より好ましくは、水素、メチル、エチル、プロピル、およびメトキシからなる群より独立して選ばれる。ただし、R/RとR/R10の各ペアのうち少なくとも1つは、式(A)、(A1)、(A2)、または(B)を有する別のモノマー単位との−*で表される結合である。
【0068】
式(A2)のモノマー単位において、R25、R26、およびR27は、C−CアルキルとC−Cアルケニルからなる群より独立して選ばれ、好ましくは、R25、R26、およびR27は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、1−プロペニル、および2−プロペニルからなる群より独立して選ばれ、より好ましくは、エチル、n−プロピル、およびイソプロピルからなる群より独立して選ばれる。
【0069】
本発明の好適なPAHCおよび組成物は、(コポリマーまたは組成物中のすべてのモノマー単位の全体のうち)式(A2)を有するポリアセンモノマー単位を少なくとも20重量%含有し、式(B)を有するモノマー単位を少なくとも20重量%、好ましくは20〜80重量%含有する。
【0070】
さらに別の好適な一実施形態では、本発明のポリアセンモノマー単位は、下記の式(A3)および(A4)のモノマー単位である。
【0071】
【化10】
【0072】
式中、R25、R26、およびR27は、メチル、エチル、およびイソプロピルからなる群より独立して選ばれ;
、R、R、R、R、R、R10、およびR11は、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、およびC−C20アリールオキシからなる群より独立して選ばれる。好ましくは、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11は、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、およびブチルオキシ基からなる群より独立して選ばれ、式中−*は、式(A)、(A1)、(A2)、(A3)、(A4)、または(B)を有する別のモノマー単位との結合を表す。
【0073】
いくつかの好適な実施形態では、R、R、R、およびR11が同一であり、メチル基またはメトキシ基である場合、R25、R26、およびR27は同一であり、エチル基またはイソプロピル基である。好適な一実施形態では、R、R、R、およびR11がメチル基の場合、R25、R26、およびR27はエチル基である。さらに別の好適な一実施形態では、R、R、R、およびR11がメチル基の場合、R25、R26
、およびR27はイソプロピル基である。さらなる好適な一実施形態では、R、R、R、およびR11がメトキシ基の場合、R25、R26、およびR27はエチル基である。さらに別の好適な一実施形態では、R、R、R、およびR11がメトキシ基の場合、R25、R26、およびR27はイソプロピル基である。
【0074】
いくつかの好適な実施形態では、R、R、R、およびR10が同一であり、メチル基またはメトキシ基である場合、R25、R26、およびR27は同一であり、エチル基またはイソプロピル基である。好適な一実施形態では、R、R、R、およびR10がメチル基の場合、R25、R26、およびR27はエチル基である。さらに別の好適な一実施形態では、R、R、R、およびR10がメチル基の場合、R25、R26、およびR27はイソプロピル基である。さらなる好適な一実施形態では、R、R、R、およびR10がメトキシ基の場合、R25、R26、およびR27はエチル基である。さらに別の好適な一実施形態では、R、R、R、およびR10がメトキシ基の場合、R25、R26、およびR27はイソプロピル基である。
【0075】
本発明のさらにより好適な一実施形態では、ポリアセンモノマー単位は下記の(A5)〜(A8)単位から選ばれる。
【0076】
【化11】
【0077】
【化12】
【0078】
本発明の好適なPAHCおよび組成物は、(コポリマーまたは組成物中のすべてのモノマー単位(A)および(B)の全体のうち)式(A3)、(A4)、(A5)、(A6)、(A7)、または(A8)を有するポリアセンモノマー単位を少なくとも20重量%含有し、式(B)を有するモノマー単位を少なくとも20重量%、好ましくは20〜80重量%含有する。
【0079】
「R」置換基(すなわちR、R等)は、ペンタセンの慣例的命名法に従って、下記の位置にある置換基を表す。
【0080】
【化13】
【0081】
本発明のポリアセンモノマーの合成は、当業者の共通の一般知識の範囲内にある任意の公知の方法で行ってよい。好適な一実施形態では、米国特許出願公開第2003/0116755A号、米国特許第3,557,233号、米国特許第6,690,029号、国際公開第2007/078993号、国際公開第2008/128618号、およびOrganic Letters, 2004, Volume 6, number 10, pages 1609-1612で開示されている方法を、
本発明で使用するポリアセン化合物の合成に使用することができる。本発明のPAHCの高誘電率類似体は、国際公開第2012/160383号および国際公開第2012/164282号に従って作製することができる。
【0082】
モノマー単位(B)
以下、(B)として上記で定義したフルオレンモノマー単位の好ましい特性をいくつか挙げる。
【0083】
モノマー単位(B)において、好ましくは、R1’、R2’、R3’、R4’の各々は、同一でも異なっていてもよく、水素;分枝もしくは非分枝の置換もしくは非置換C−C10アルキル基;分枝もしくは非分枝の置換もしくは非置換C−C10アルケニル基;分枝もしくは非分枝の置換もしくは非置換C−C10アルキニル基;随意に置換されたC−C10シクロアルキル基;随意に置換されたC−C10アリール基;随意に置換されたC−C10複素環基;随意に置換されたC−C10ヘテロアリール基;随意に置換されたC−C10アルコキシ基;随意に置換されたC−C10アリールオキシ基;随意に置換されたC−C10アルキルアリールオキシ基;随意に置換されたC−C10アルコキシカルボニル基;随意に置換されたC−C20アリールオキシカルボニ
ル基;シアノ基(−CN);カルバモイル基(−C(=O)NR1516);カルボニル基(−C(=O)−R17);カルボキシル基(−CO18シアネート基(−OCN);イソシアノ基(−NC);イソシアネート基(−NCO);チオシアネート基(−SCN)もしくはチオイソシアネート基(−NCS);随意に置換されたアミノ基;ヒドロキシ基;ニトロ基;CF基;ハロ基(Cl、Br、F、I);−SR19;−SOH;−SO20;−SF;随意に置換されたシリル基;SiH22基で置換されたC−C10アルキニル基、SiHR2223基で置換されたC−C10アルキニル、または−Si(R22(R23(R24基で置換されたC−C10アルキニルから選ばれる(式中、x、y、z、およびR15、R16、R18、R19、R20、R22、R23、R24の各々は上記定義の通りである)。
【0084】
モノマー単位(B)において、好ましくは、R1’、R2’、R3’、R4’の各々は、同一でも異なっていてもよく、H、メチル、メトキシ、シアノ、シアノメチルであり、
好ましくはHである。
【0085】
好ましくは、モノマー単位(B)において、R1’、R2’、R3’、R4’のうちの少なくとも1つは極性基またはより極性化性の基であり、n=1〜100であり、好ましくは1〜50であり、好ましくは1〜20であり、さらにより好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5である(nはモノマー単位の数を指す)。好ましくは、R1’、R2’、R3’、R4’のうちの少なくとも1つ、より好ましくは、R1’、R2’、R3’、R4’のうちの少なくとも2つは、極性基または極性化性の基である。
【0086】
好適な一実施形態では、上記1つ以上の極性基または極性化性の基は、以下からなる群より独立して選ばれる:ニトロ基;ニトリル基;ニトロ基、ニトリル基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、またはチオイソシアネート基で置換されたC1−40アルキル基;ニトロ基、ニトリル基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、またはチオイソシアネート基で随意に置換されたC1−40アルコキシ基;ニトロ基、ニトリル基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、またはチオイソシアネート基で随意に置換されたC1−40カルボン酸基;ニトロ基、ニトリル基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、またはチオイソシアネート基で随意に置換されたC2−40カルボン酸エステル;ニトロ基、ニトリル基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、またはチオイソシアネート基で随意に置換されたスルホン酸;ニトロ基、ニトリル基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、またはチオイソシアネート基で随意に置換されたスルホン酸エステル;シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、チオイソシアネート基;およびニトロ基、ニトリル基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、またはチオイソシアネート基で随意に置換されたアミノ基;ならびにこれらの組み合わせ。
【0087】
より好適な一実施形態では、上記1つ以上の極性基または極性化性の基は、以下からなる群より独立して選ばれる:ニトロ基;ニトリル基;ニトリル基、シアネート基、またはイソシアネート基で置換されたC1−10アルキル基;C1−20アルコキシ基;C1−20カルボン酸基;C2−20カルボン酸エステル;スルホン酸エステル;シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、チオイソシアネート基、およびアミノ基;ならびにこれらの組み合わせ。
【0088】
より好ましくは、上記の極性基または極性化性の基は、C1−4シアノアルキル基、C1−10アルコキシ基、ニトリル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる。
【0089】
より好ましくは、上記の極性基または極性化性の基は、シアノメチル、シアノエチル、シアノプロピル、シアノブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ニトリル、NH、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる。好ましくは、R1’基、R2’基、R3’基、R4’基のうちの少なくとも1つは、極性基またはより極性化性の基であり、これらの極性基または極性化性の基は同一でも異なっていてもよい。
【0090】
さらにより好ましくは、上記極性基または極性化性の基は、シアノイソプロピルシアノシクロヘキシル、メトキシ、エトキシ、ニトリル、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる。好ましくは、R1’、R2’、R3’、R4’のうちの少なくとも1つは、極性基またはより極性化性の基であり、これらの極性基または極性化性の基は同一でも異なっていてもよい。
【0091】
より好ましくは、上記極性基または極性化性の基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ、R1’、R2’、R3’
、およびR4’のうちの少なくとも1つは、1つまたは2つの極性基またはより極性化性の基であり、これらの極性基または極性化性の基は同一でも異なっていてもよい。
【0092】
より好ましくは、極性基または極性化性の基は、メトキシとエトキシからなる群より選ばれ、R1’、R2’、R3’、R4’のうちの少なくとも1つは、同一の1つまたは2つの極性基またはより極性化性の基である。
【0093】
好ましくは、R1’、R2’、R3’、R4’は、C1−2アルコキシ、C1−3シアノアルキル、CN、およびこれらの混合からなる群より独立して選ばれ、n=1〜10である。
【0094】
好ましくは、R1’、R2’、R3’、R4’は、C1−4アルコキシ、C3−20シクロアルキルシアノ、C1−4シアノアルキル、CN、およびこれらの混合からなる群より独立して選ばれ、n=1〜10である。
【0095】
好ましくは、R3’は1つのC1−4アルコキシからなる群より独立して選ばれ、n=1〜10である。
【0096】
好ましくは、R3’とR4’は、メトキシ、エトキシ、シアノメチル、シアノエチル、CN、およびこれらの混合からなる群より独立して選ばれ、n=1〜10である。
【0097】
好ましくは、R4’は1つのC1−4アルコキシからなる群より独立して選ばれ、n=1〜10である。
【0098】
好ましくは、R1’、R2’、R3’、R4’は、メトキシ、エトキシ、イソプロピルシアノ、シアノメチル、シアノエチル、CN、およびこれらの混合から独立して選ばれ、n=1〜10である。
【0099】
好ましくは、R1’、R2’、R3’、R4’は、メトキシ、エトキシ、シアノメチル、CN、およびこれらの混合から独立して選ばれ、n=1〜10である。
【0100】
好ましくは、R1’、R2’、R3’、R4’は、メトキシ、エトキシ、およびこれらの混合から独立して選ばれ、n=1〜10である。
【0101】
本発明のコポリマーは、複数の異なるモノマー単位のランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってよい。この場合、式(A)または(B)で定義されている任意のモノマー単位を、同一または異なるモノマー単位(A)または(B)と組み合わせてよい。ただし、少なくとも1つのモノマー単位(A)が少なくとも1つのモノマー単位(B)と結合することを条件とする。
【0102】
ホモポリマーに対する相対的な誘電率を調整できるように、多環芳香族炭化水素コポリマー中のモノマーの比率を変更してよい。さらに、好ましくは、組成物中の結合剤の平均誘電率が好ましくは3.4〜8.0となることを条件として、モノマー単位(A)または(B)を、(A)、(B)の定義に一致しないモノマー単位と混合してよい。この点について、他の適切なモノマー単位の例として、アリールアミンモノマー(例えば(C))、シス−およびトランス−インデノフルオレンモノマー(例えば、それぞれ(D)/(D’))、スロビフルオレンモノマー(例えば(E))が挙げられる。式中、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’、R6’、およびR7’の各々は、同一でも異なっていてもよく、上記ですでに定義されているR、R、R、R、R、R、およびRと同一の基から選ばれる。
【0103】
Ar、Ar、およびArは、同一でも異なっていてもよく、その各々は、随意に置換されたC6−40芳香族基(単環または多環)を独立して表す。好ましくは、Ar、Ar、およびArのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの極性基またはより極性化性の基で置換され、n=1〜20であり、好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5である。好ましくは、Ar、Ar、およびArのうちの少なくとも1つは、1つ、2つ、3つ、または4つ、より好ましくは1つ、2つ、または3つ、より好ましくは1つまたは2つ、好ましくは1つの極性基またはより極性化性の基で置換され;
n”=1〜3である。
【0104】
【化14】
【0105】
【化15】
【0106】
【化16】
【0107】
【化17】
【0108】
本発明のさらにより好適な一実施形態では、モノマー単位(B)/(B’)は、メトキシまたはシアノである少なくとも1つの置換基を含む。
【0109】
本発明のPAHCが1つ以上のモノマー(C)、(D)、(D’)、および/または(E)を含む場合、このPAHCは、コポリマー中の全モノマー単位の総重量に対して、少なくとも20重量%の量のモノマー(A)と、少なくとも60重量%の量のモノマー(B)と、モノマー(C)、(D)、(D’)、および/または(E)で構成される残り部分と、で構成される。
【0110】
有機半導体組成物
本発明の第1の態様による有機半導体組成物は、コポリマー組成物を含み、この組成物の1000Hz時の誘電率は、1.5超であり、より好ましくは3.4超、さらにより好ましくは1.5〜6.5、さらにより好ましくは3〜6.5、より好ましくは3.0〜5.0、さらにより好ましくは3.4〜4.5である。
【0111】
本発明の有機半導体組成物は、本明細書に開示される多環芳香族炭化水素コポリマーを含んでよい。好適な一実施形態では、有機半導体組成物は、本明細書に定義されるコポリマーを含んでよく、さらに、我々が出願した国際公開第2012/164282号に記載の多結晶ポリアセン小分子半導体を含み、この場合、PAHCの1000Hz時の誘電率は3.4〜8であり、好ましくは3.4〜6.5、より好ましくは4〜6.5、さらにより好ましくは3.4〜4.5である。好適な一実施形態では、本明細書に定義されるコポリマーを、ポリアセン小分子と組み合わせて使用してよく、この場合、「乾燥状態」の組成物は10〜50%のポリアセン小分子と10〜90%のPAHCを含有する。
【0112】
本発明の有機半導体組成物は、本明細書に開示される多環芳香族炭化水素コポリマーを含んでよい。好適な一実施形態では、有機半導体組成物は、本明細書に定義されるコポリマーを含んでよく、さらに有機結合剤を含み、この場合、有機結合剤の1000Hz時の誘電率は3.4〜8であり、好ましくは3.4〜6.5、より好ましくは4〜6.5、さらにより好ましくは3.4〜4.5である。
【0113】
特に好適な一実施形態では、本明細書に定義されるコポリマーを、有機結合剤と組み合わせて使用してよく、この場合、有機結合剤の1000Hz時の誘電率は3.4〜8.0であり、好ましくは3.6〜6.5、より好ましくは3.4〜4.5である。
【0114】
さらに別の好適な一実施形態では、好ましくは、本発明のコポリマーの1000Hz時の誘電率は3.4〜8.0であり、好ましくは3.4〜4.5である。
【0115】
組成物中に存在するコポリマーと溶媒の濃度は、望ましい溶液塗布方法によって異なる。例えば、インクジェット印刷する組成物の場合、低粘度、低固体含量(low solids loading)の組成物を必要とするのに対し、スクリーン印刷プロセスは、高粘度、高固体含量の組成物を必要とする。コポリマー組成物の堆積の後、好ましくは、組成物の総重量に対して(印刷状態または乾燥状態で)1〜99.9重量%の結合剤と0.1〜99重量%のコポリマーを有する半導体層が得られるように、好ましくは、25〜75重量%の小分子ポリアセンと25〜75重量%のコポリマーを有する半導体層が得られるように、溶媒を蒸発させる。
【0116】
堆積前の組成物中、好ましくは、上記コポリマー群のうちの1つ以上は、組成物の総重量に対して少なくとも0.1重量%の濃度で存在し、好ましくは0.5重量%の濃度で存在する。組成物中のコポリマーの濃度上限は、(例えば電子デバイスの製作において)基板に塗布されるときの組成物の温度における、特定の溶媒中の当該コポリマーの溶解限度近くであることが多い。本発明の典型的な組成物は、コポリマーのいずれか1つを、組成物の総重量に対して約0.1重量%〜約20.0重量%、好ましくは0.5重量%〜約20.0重量%の範囲の濃度で含み、より典型的には約0.5重量%〜約10.0重量%、より典型的には0.5〜5.0重量%、より典型的には1〜3重量%の濃度で含む。
【0117】
印刷後または乾燥した組成物中、好ましくは、上記コポリマーのうちの1つ以上は、組成物の総重量に対して少なくとも10重量%の濃度で存在し、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%、より好ましくは40〜60重量%の濃度で存在する。
【0118】
好適な一実施形態では、有機半導体組成物中に一種以上の溶媒が存在してよい。
【0119】
適切な溶媒の例として、テトラヒドロフラン、芳香族炭化水素、例えばトルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、ブロモメシチレン、アニソール、ブロモアニソール、ブロモベンゼン、テトラリン、o−キシレン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、モルホリン、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、デカリン、これらのうちの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、塩素化溶媒は一切使用しない。
【0120】
溶媒ブレンドを利用してもよい。適切な溶媒ブレンドの例として、上記溶媒と、溶媒類(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、ジクロロベンゼン、フルフリルアルコール、ジメトキシエタン、および酢酸エチル)、沸点の高いアルカン類(例えばn−ヘプタン)、ならびにアルコール類(例えばイソプロピルアルコール)とを併せた組成物が挙げられるが、これに限定されない。このような組成物(堆積前)は、好ましくは、組成物の総重量に対して50重量%超の量、好ましくは、組成物の総重量に対して60〜95重量%の量の適切な溶媒を含有する。
【0121】
さらに別の好適な一実施形態では、有機半導体組成物中に1つ以上の追加の組成物成分が存在してよい。適切な追加の組成物成分の例として、ポリマー添加剤、レオロジー調整剤、界面活性剤、コポリマーに対して一致する正孔輸送化合物である別の半導体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの代表的な実施形態では、組成物は、以下からなる群より選ばれるポリマー添加剤を含む:ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(ペンタフルオロスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(4−シアノメチルスチレン)、ポリ(4−ビニルフェノール)、または米国特許出願公開第2004
/0222412A1号もしくは米国特許出願公開第2007/0146426A1号で開示されている他の適切なポリマー。いくつかの望ましい実施形態では、ポリマー添加剤は、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(ペンタフルオロスチレン)、またはポリ(メチルメタクリレート)を含む。いくつかの代表的な実施形態では、組成物は、フッ素化界面活性剤またはフッ素系界面活性剤から選ばれる界面活性剤を含む。追加の組成物成分が存在する場合、各成分は、独立して、組成物総重量に対して0超〜約50重量%の量で存在する。好ましくは、追加の各組成物成分は、独立して、組成物総重量に対して約0.0001〜約10.0重量%の範囲の量で存在する。例えば、組成物中にポリマーが存在する場合、このポリマー添加剤は、組成物総重量に対して典型的には0超〜約5.0重量%の量で存在し、好ましくは約0.5〜約3.0重量%の量で存在する。例えば、組成物中に界面活性剤が存在する場合、この界面活性剤は、好ましくは組成物総重量に対して0超〜約1.0重量%の量で存在し、より典型的には約0.001〜約0.5重量%の量で存在する。
【0122】
本発明の有機半導体組成物は、好ましくは、少なくとも0.5cm−1−1の電荷移動度を有し、好ましくは0.5〜8.0cm−1−1、より好ましくは0.5〜6.0cm−1−1、より好ましくは0.8〜5.0cm−1−1、より好ましくは1.0〜5.0cm−1−1、より好ましくは1.5〜5.0cm−1−1、より好ましくは2.0〜5.0cm−1−1の電荷移動度を有する。半導体組成物の電荷移動度の測定は、当業者に知られている任意の標準の方法、例えばJ.
Appl. Phys., 1994, Volume 75, page 7954および国際公開第2005/055248号に開示されている手法を用いて行ってよく、好ましくは国際公開第2005/055248号に記載の手法を用いて行う。
【0123】
本発明の有機半導体組成物は、当業者の共通の一般知識の範囲内にある任意の公知の方法で調製してよい。好適な一実施形態では、有機半導体組成物の調製は、国際公開第2005/055248号で開示されている方法、または本明細書に開示される方法を用いて行い、好ましくは、本明細書に開示される方法を用いて行う。
【0124】
好ましくは、本発明の有機半導体組成物は、1000Hz時の誘電率が1.5超、より好ましくは3.4超、さらにより好ましくは3.4〜8である半導体組成物である。好適な一実施形態では、本発明の組成物は、1000Hz時の誘電率が4.0〜7であり、より好ましくは4.0〜6.5、さらにより好ましくは4.0〜6、さらにより好ましくは3.4〜4.5である。
【0125】
有機半導体層
本発明の有機半導体組成物を様々な基板に堆積させて、有機半導体層を形成することができる。
【0126】
本発明の有機半導体層は、以下のステップを含む方法を用いて調製できる。
(i)本発明の有機半導体組成物と、溶媒とを混合して、半導体層配合物を形成すること。
(ii)上記配合物を基板に堆積させること。および
(iii)随意に溶媒を除去して、有機半導体層を形成すること。
【0127】
有用な基板材料として、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリケトン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリマー膜、およびシリカ、アルミナ、シリコンウエハ、ガラス等の無機基板が挙げられるが、これらに限定されない。所与の基板の表面特性を変更する目的で、例えば、基板表面に固有の化学官能性をシラン等の化学試薬と反応させる、基板表面をプラズマに曝露する、と
いった表面処理を行ってよい。
【0128】
堆積ステップを促進する目的で、有機半導体組成物を基板に堆積させる前に、この組成物を一種以上の溶媒と組み合わせてよい。適切な溶媒としては、コポリマーを溶解させることができ、かつ溶液ブレンドから蒸発したときに密着性で欠陥のない層をもたらす、任意の溶媒が挙げられる。ASTM方法D3132に記載の通り、混合物使用時の濃度で材料の等値線図(contour diagram)を作成することにより、コポリマーに適した溶媒を決
定することができる。このASTM方法に記載の通り、種々の溶媒に材料を添加する。
【0129】
適切な溶媒の例として、テトラヒドロフラン、芳香族炭化水素、例えばトルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、ブロモメシチレン、アニソール、ブロモアニソール、ブロモベンゼン、テトラリン、o−キシレン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、モルホリン、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、デカリン、これらのうちの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、塩素化溶媒は一切使用しない。
【0130】
本発明により、有機半導体層配合物中の固体含量のレベルも、OFET等の電子デバイスの移動度値を改善する一要因であることが見出された。配合物の固体含量は、一般に次式で表される。
【0131】
【数1】
【0132】
式中、a=ポリアセン小分子の質量、b=PAHCの質量、c=溶媒の質量である。
【0133】
配合物の固体含量は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0134】
適切な従来型堆積方法として、スピンコーティング、スプレーコーティング、ブレード/スロットダイコーティング、フレキソ印刷、グラビア印刷、ロールtoロールウェブ印刷、浸漬被覆のほか、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセットリソグラフィー等の印刷プロセスが挙げられるが、これらに限定されない。望ましい一実施形態では、得られる組成物は印刷可能な組成物であり、さらにより望ましくは、インクジェット印刷可能な組成物である。
【0135】
組成物を基板表面に堆積させた後は、溶媒を除去して有機半導体層を形成してよい。溶媒の除去には、任意の適切な方法を使用してよい。例えば、蒸発または乾燥により溶媒を除去してよい。典型的には、少なくとも約80パーセントの溶媒を除去して半導体層を形成する。例えば、少なくとも約85重量パーセント、少なくとも約90重量パーセント、少なくとも約92重量パーセント、少なくとも約95重量パーセント、少なくとも約97重量パーセント、少なくとも約98重量パーセント、少なくとも約99重量パーセント、または少なくとも約99.5重量パーセントの溶媒を除去する。
【0136】
多くの場合、任意の適切な温度で溶媒を蒸発させてよい。いくつかの方法では、周囲温度で溶媒混合物を蒸発させる。いくつか別の方法では、周囲温度より高温または低温で溶媒を蒸発させる。例えば、基板を支えるプラテンを周囲温度より高温または低温に加熱または冷却してよい。さらに別の好適な方法では、溶媒の一部または大部分を周囲温度で蒸
発させ、残りの溶媒部分を周囲温度より高温で蒸発させてよい。周囲温度より高温で溶媒を蒸発させる方法では、不活性雰囲気(例えば窒素雰囲気)中で蒸発させてよい。
【0137】
あるいは、真空の使用等により減圧(すなわち大気圧より低い圧力)を加えることにより、溶媒を除去してもよい。減圧を加える間、任意の適切な温度(例えば上記の温度)で溶媒を除去してよい。
【0138】
溶媒の除去速度は、得られる半導体層に影響を及ぼし得る。例えば、除去プロセスが急速すぎると、結晶化中に半導体分子のパッキング不良が発生し得る。半導体分子のパッキング不良は、半導体層の電荷移動度に悪影響を及ぼし得る。溶媒は、非制御方式で(すなわち時間的制約なしに)完全に自力で蒸発させてもよく、蒸発速度を制御する目的で条件を管理してもよい。パッキング不良を最少化する目的で、堆積層を覆うことにより蒸発速度を低下させながら溶媒を蒸発させてよい。このような条件から、比較的結晶化度の高い半導体層を得ることができる。
【0139】
所望の量の溶媒を除去して半導体層を形成した後は、半導体層を熱または溶媒蒸気に曝露することにより、半導体層をアニーリングしてよい(すなわち熱アニーリングまたは溶媒アニーリング)。
【0140】
本発明の有機半導体層は、好ましくは、少なくとも0.5cm−1−1の電荷移動度を有し、好ましくは0.5〜8.0cm−1−1、より好ましくは0.5〜6.0cm−1−1、より好ましくは0.8〜5.0cm−1−1、より好ましくは1〜5.0cm−1−1、より好ましくは1.5〜5.0cm−1−1、より好ましくは2.0〜5.0cm−1−1の電荷移動度を有する。半導体層の電荷移動度の測定は、当業者に知られている任意の標準の方法、例えばJ. Appl. Phys., 1994, Volume 75, page 7954および国際公開第2005/055248号に開示されている手法を用いて行ってよく、好ましくは国際公開第2005/055248号に記載の手法を用いて行う。
【0141】
好ましくは、本発明の有機半導体層は、1000Hz時の誘電率が3.4〜8の半導体層である。好適な一実施形態では、本発明の半導体層の1000Hz時の誘電率は4.0〜7であり、より好ましくは4.0〜6.5、さらにより好ましくは4.0〜6、さらにより好ましくは3.4〜4.5である。
【0142】
電子デバイス
加えて、本発明は、本発明の有機半導体組成物を含む電子デバイスを提供する。本発明の組成物を、例えば半導体層または半導体膜の形態で使用してよい。加えて、本発明は、好ましくは、本発明の有機半導体層を含む電子デバイスを提供する。
【0143】
半導体層または半導体膜の厚さは、0.02〜20ミクロン、0.2〜20ミクロンであってよく、好ましくは0.05〜10ミクロン、好ましくは0.5〜10ミクロン、0.05〜5ミクロン、より好ましくは0.5〜5ミクロン、さらにより好ましくは0.5〜2ミクロン、より好ましくは0.02〜1ミクロンであり得る。
【0144】
電子デバイスの例として、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、光検出器、有機光起電力(OPV)電池、センサー、レーザー、記憶素子、および論理回路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
本発明の代表的な電子デバイスは、上記の有機半導体組成物を基板に溶液堆積することにより製作できる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
図1】トップコンタクト/ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタ(OTFT)を表す図である。
図2】ボトムコンタクト/ボトムゲート型のOTFTを表す図である。
図3】トップコンタクト/トップゲート型のOTFTを表す図である。
図4】ボトムコンタクト/トップゲート型のOTFTを表す図である。凡例 A:基板、B:ゲート電極、C:誘電体層、D:半導体層、E:ソース電極、F:ゲート電極
図5】1,4,8,11−テトラメチルビス−トリエチシリルエチニルペンタセンおよび配合物(1)として記載されているPAHC(1)を用いた、TG 10ミクロンチャンネル長、500ミクロンチャンネル幅OTFTの伝達特性を示す図である。ドレイン電圧は−2Vである。
図6】1,4,8,11−テトラメチルビス−トリエチシリルエチニルペンタセンおよび配合物(1)として記載されているPAHC(1)を用いた、TG 30ミクロンチャンネル長、500ミクロンチャンネル幅OTFTの伝達特性を示す図である。ドレイン電圧は−2Vである。
【発明を実施するための形態】
【0147】
本発明の詳細な説明
一般
数値xに関連する「約」という用語は、例えばx±10%を意味する。
【0148】
「実質的に」という語は「完全に」を排除しない。例えば、「実質的にYがない」組成物は、Yがまったくない組成物であり得る。必要に応じて、本発明の定義から「実質的に」を省略してよい。
【0149】
ポリマー材料(モノマー材料およびマクロマー材料を含む)の「分子量」とは、本明細書で使用する場合、特に別段の注記がないか試験条件が別段の指示をしていない限り、数平均分子量をいう。
【0150】
「ポリマー」とは、1つ以上のモノマー、マクロマー、および/またはオリゴマーを重合および/または架橋結合することにより形成され、2つ以上の繰り返し単位を有する材料を意味する。
【0151】
本明細書で使用する「アルキル」基という用語は、表示されている数の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の飽和一価炭化水素ラジカルを指す。適切なアルキル基の非限定的な例として、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、およびドデカニルが挙げられる。
【0152】
本明細書で使用する用語「アルコキシ」基の例として、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、t−ブトキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
本明細書で使用する用語「アミノ」基の例として、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
「カルビル」という用語は、非炭素原子を含まずに少なくとも1つの別の炭素原子を含む(−C≡C)か、またはN、O、S、P、SI、Se、As、Te、Ge等の少なくとも1つの非炭素原子と随意に組み合わされた(例えばカルボニル等)、任意の一価または多価の有機ラジカル部分を指す。
【0155】
「炭化水素」基という用語は、さらに1つ以上のH原子を含有し、かつ随意に1つ以上のヘテロ原子を含有するカルビル基を表す。
【0156】
3つ以上の炭素原子を含むカルビル基またはヒドロカルビル基は、直鎖状、分枝状、および/または環状(スピロ環および/または縮合環を含む)であってよい。
【0157】
好適なカルビル基またはヒドロカルビル基の例として、それぞれ随意に置換され、1〜40個の炭素原子、好ましくは1〜18個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、これに加えて、随意に置換され、6〜40個の炭素原子、好ましくは6〜18個の炭素原子を有するアリール、アリール誘導体、またはアリールオキシ、これに加えて、それぞれ随意に置換され、7〜40個の炭素原子、より好ましくは7〜25個の炭素原子を有するアルキルアリールオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシ、およびアリールオキシカルボニルオキシが挙げられる。
【0158】
カルビル基またはヒドロカルビル基は、飽和または不飽和の非環式基であってよく、飽和または不飽和の環式基であってもよい。不飽和の非環式基または環式基が好ましく、特にアルケニル基とアルキニル基(特にエチニル)が好ましい。
【0159】
本発明のポリアセン類において、R〜R14等に対応する上記C−C40カルビル基またはヒドロカルビル基上の随意の置換基は、好ましくは以下から選ばれる:シリル、スルホ、スルホニル、ホルミル、アミノ、イミノ、ニトリロ、メルカプト、シアノ、ニトロ、ハロ、C1−4アルキル、C6−12アリール、C1−4アルコキシ、ヒドロキシ、および/または化学的に可能なこれらのすべての組み合わせ。これらの随意の置換基の中で、シリルとC6−12アリールがより好ましく、シリルが最も好ましい。
【0160】
「置換アルキル基」とは、1つ以上の置換基が結合しているアルキル基であって、この1つ以上の置換基の各々は、炭素と水素を除く1つ以上の原子を単独で含有する(例えばF等のハロゲン)か、炭素原子と組み合わせて含有し(例えばシアノ基)、かつ/または水素原子と組み合わせて含有する(例えばヒドロキシル基、カルボン酸基)一価部分を含む、アルキル基をいう。
【0161】
「アルケニル基」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する炭化水素であるアルケンのラジカルである、一価の基をいう。アルケニルは、直鎖状、分枝状、環状、またはこれらの組み合わせであってよく、典型的には2〜30個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、アルケニルは2〜20個、2〜14個、2〜10個、4〜10個、4〜8個、2〜8個、2〜6個、または2〜4個の炭素原子を含有する。代表的なアルケニル基として、エテニル、プロペニル、ブテニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
「置換アルケニル基」とは、(i)1つ以上のC−C二重結合を有し、(ii)1つ以上の置換基が結合しているアルケニル基であって、この1つ以上の置換基の各々は、炭素と水素を除く1つ以上の原子を単独で含有する(例えばF等のハロゲン)か、炭素原子と組み合わせて含有し(例えばシアノ基)、かつ/または水素原子と組み合わせて含有する(例えばヒドロキシル基、カルボン酸基)一価部分を含む、アルケニル基をいう。
【0163】
「アルキニル基」とは、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する炭化水素であるアルキンのラジカルである、一価の基をいう。アルキニルは、直鎖状、分枝状、環状、またはこれらの組み合わせであってよく、典型的には2〜30個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、アルキニルは2〜20個、2〜14個、2〜10個、4〜10個
、4〜8個、2〜8個、2〜6個、または2〜4個の炭素原子を含有する。代表的なアルキニル基として、エチニル、プロピニル、ブチニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0164】
「置換アルキニル基」とは、(i)1つ以上のC−C三重結合を有し、(ii)1つ以上の置換基が結合しているアルキニル基であって、この1つ以上の置換基の各々は、炭素と水素を除く1つ以上の原子を単独で含有する(例えばF等のハロゲン)か、炭素原子と組み合わせて含有し(例えばシアノ基)、かつ/または水素原子と組み合わせて含有する(例えばヒドロキシル基、カルボン酸基、シリル基)一価部分を含む、アルキニル基をいう。
【0165】
「シクロアルキル基」とは、環構造内は3個以上の炭素原子からなる環構造のラジカルである一価の基をいう(すなわち環構造内には炭素原子のみが存在し、環構造の炭素原子のうちの1つがラジカルである)。
【0166】
「置換シクロアルキル基」とは、1つ以上の置換基が結合しているシクロアルキル基であって、この1つ以上の置換基の各々は、1つ以上の原子を含有する一価部分(例えば、F等のハロゲン、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基)を含む、シクロアルキル基をいう。
【0167】
「シクロアルキルアルキレン基」とは、環構造内は3個以上の炭素原子からなる環構造の一価の基であって(すなわち環内には炭素原子のみが存在する)、この環構造は非環式アルキル基(典型的には炭素原子数1〜3、より典型的には炭素原子数1)に結合し、この非環式アルキル基の炭素原子のうちの1つがラジカルである、一価の基をいう。「置換シクロアルキルアルキレン基」とは、1つ以上の置換基が結合しているシクロアルキルアルキレン基であって、この1つ以上の置換基の各々は、1つ以上の原子を含有する一価部分(例えば、F等のハロゲン、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基)を含む、シクロアルキルアルキレン基をいう。
【0168】
「アリール基」とは、芳香族炭素環式化合物のラジカルである一価の基をいう。アリールは、1つの芳香環を有してよく、あるいは、この芳香環と結合または縮合した最大5個の炭素環構造を含んでよい。他の環構造は、芳香族、非芳香族、またはこれらの組み合わせであってよい。好適なアリール基の例として、フェニル、2−トリル、3−トリル、4−トリル、ビフェニル、4−フェノキシフェニル、4−フルオロフェニル、3−カルボメトキシフェニル、4−カルボメトキシフェニル、テルフェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、フルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
「置換アリール基」とは、環構造に1つ以上の置換基が結合しているアリール基であって、この1つ以上の置換基の各々は、1つ以上の原子を含有する一価部分(例えば、F等のハロゲン、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基)を含む、アリール基をいう。
【0170】
「アリールアルキレン基」とは、環構造内は6〜10個の炭素原子からなる芳香環構造の一価の基であって(すなわち環構造内には炭素原子のみが存在する)、この芳香環構造は、1つ以上の炭素原子(典型的には炭素原子数1〜3、より典型的には炭素原子数1)を有する非環式アルキル基に結合し、この非環式アルキル基の炭素のうちの1つがラジカルである、一価の基をいう。
【0171】
「置換アリールアルキレン基」とは、1つ以上の置換基が結合しているアリールアルキ
レン基であって、この1つ以上の置換基の各々は、1つ以上の原子を含有する一価部分(例えば、F等のハロゲン、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基)を含む、アリールアルキレン基をいう。
【0172】
「アセチル基」とは、式−C(O)CHを有する一価のラジカルをいう。
【0173】
「複素環」とは、環構造内にO、N、S、Seのうちの少なくとも1つを含む、飽和、部分的に飽和、または不飽和の環構造をいう。
【0174】
「置換複素環」とは、環構造の1員以上に1つ以上の置換基が結合している複素環であって、この1つ以上の置換基の各々は、1つ以上の原子を含有する一価部分(例えば、F等のハロゲン、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基)を含む、複素環をいう。
【0175】
「炭素環」とは、環構造内に炭素のみを含む、飽和、部分的に飽和、または不飽和の環構造をいう。
【0176】
「置換炭素環」とは、環構造の1員以上に1つ以上の置換基が結合している炭素環であって、この1つ以上の置換基の各々は、1つ以上の原子を含有する一価部分(例えば、F等のハロゲン、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基)を含む、炭素環をいう。
【0177】
「エーテル基」とは、−R−O−Rラジカルをいう(式中、Rは分枝または非分枝のアルキレン、アリーレン、アルキルアリーレン、またはアリールアルキレン炭化水素であり、Rは分枝または非分枝のアルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル炭化水素である)。
【0178】
「置換エーテル基」とは、1つ以上の置換基が結合しているエーテル基であって、この1つ以上の置換基の各々は、炭素と水素を除く1つ以上の原子を単独で含有する(例えばF等のハロゲン)か、炭素原子と組み合わせて含有し(例えばシアノ基)、かつ/または水素原子と組み合わせて含有する(例えばヒドロキシル基、カルボン酸基)一価部分を含む、エーテル基をいう。
【0179】
別段の定義がない限り、「置換基」または「随意の置換基」は、好ましくはハロ(I、Br、Cl、F)、CN、NO、NH、−COOH、およびOHからなる群より選ばれる。
【実施例】
【0180】
本発明の下記実施例は単なる代表例であり、本発明の範囲を制限するものとみなすべきではない。
【0181】
ポリマー結合剤の静電容量の測定
ポリマー結合剤の粘度を低下させ、1000〜2000rpmのスピン速度範囲でスピンコーティングしたときに1ミクロン未満の厚さの膜が得られるようにするため、ポリマー結合剤をテトラリンで希釈した。ITOがコーティングされた洗浄済みの1×1インチのガラス基板上に、ポリマー結合剤溶液を500rpmで10秒間スピンコーティングし、続いて1500rpmで30秒間スピンコーティングした。
【0182】
ITOがコーティングされた基板を洗浄するため、基板を3% DECon90溶液に
浸し、超音波浴(水温65℃超)に入れて脱イオン水で洗浄し、脱イオン水に浸し、超音
波浴(水温65℃超)に入れて再度、脱イオン水で洗浄し、イソプロピルアルコールに浸し、超音波浴(水温65℃超)に入れて、スピン乾燥させた。
【0183】
ポリマー結合剤を堆積させた後、基板を120℃のホットプレート上で5分間アニーリングした。
【0184】
次に、基板をキャパシタンスシャドウマスクで覆い、熱蒸着法を用いて金の蒸発によりトップ電極を堆積させた。ポリマー結合剤層の正確な厚さを測定するため、Dektak
3030表面形状測定器(ニューヨーク州プレーンビューのVeecoから入手可能)
を用いて3か所の厚さを測定し、平均値を求めた。続いて、この値を用いてポリマー結合剤の誘電率を算出した。
【0185】
次に、インピーダンスアナライザーAgilent 43961Aとプローブステーシ
ョンを用いて静電容量を測定した。ITO背面電極と外部プローブ電極間の電気接触を改善するため、導電性の銀ペーストを塗布した。外部環境の影響を確実に最小化するため、測定試料を金属板上の金属ボックスに入れた。
【0186】
各測定値群を取得する前に、43961Aインピーダンステストキットを用いてアナライザーを校正し、補償ルーチンを実施してアナライザーおよび試験器具の内部静電容量を明らかにした。開回路と短絡回路で測定キャリブレーションを行い、次式を用いて誘電率を算出した。
【0187】
[数2]
C=ε×ε×(A/d)
【0188】
式中、Cは静電容量(ファラド)、Aは面積(m)、dはコーティング厚さ(m)、εは誘電率、εは自由空間の誘電率(8.8854×10−12F/mとする)である。
【0189】
基準試料として、1μm厚さのポリスチレン試料(Mw350,000以下)を試験した。ポリスチレン基準に対して測定および算出された誘電率は10,000Hz時でε=2.55であり、報告されている値(ε2.5以下)と申し分なく一致した。J. R. Wunsch, Polystyrene-Synthesis, Production and Applications, Rapra Review Reports, 2000, Volume 10, No. 4, page 32を参照のこと。
【0190】
OTFTの製作方法
シャドウマスクを用いた熱蒸着プロセス、またはフォトリソグラフィにより、基板(ガラス基板またはPEN等のポリマー基板)にAuソースドレイン電極をパターニングする(Auを堆積させる前に、CrまたはTiの接着層を基板に堆積させる)。Oプラズマ洗浄プロセスを用いて、Au電極を随意に洗浄してもよい。次に、結合剤中の有機半導体溶液をスピンコーティングにより塗布する(試料を溶液で満たしてから、基板を500rmpで5秒間、さらに1500rpmで1分間回転させる)。次に、コーティングした基板をホットステージ上で風乾する。次に、誘電体材料(例えばFC−43に溶解した3重量%のPTFE−AF1600、シグマアルドリッチ カタログ番号469610)をス
ピンコーティングにより基板に塗布した(試料を満たしてから、500rpmで5秒間、さらに1500rpmで30秒間回転させる)。次に、基板をホットステージ上で風乾した(100℃で1分間)。次に、シャドウマスクを用いた蒸発により、ゲート電極(Au)をチャンネル領域上で画定する。
【0191】
Keithley SCS4200半導体アナライザーに接続した手動プローブステー
ションを設置することにより、結合剤に関するOTFTの移動度を特性評価する。ソースドレイン電圧(VDS)を−2V(線形)または−40V(飽和)に設定し、ゲート電圧(V)を+20Vから−60Vまで走査する。ドレイン電流を測定し、相互コンダクタンスから移動度を算出する。
【0192】
Keithley SCS 4200半導体アナライザーに接続した半自動プローブステーションを設置することにより、配合物に関するOTFTの移動度を特性評価する。ソースドレイン電圧を−2Vに設定し、ゲート電圧を+20Vから−40Vまで走査する。ドレイン電流を測定し、相互コンダクタンスから移動度を算出する。
【0193】
|V|>|VDS|であるときの線形領域では、ソースドレイン電流はVに応じて線形に変化する。したがって、電界効果移動度(μ)は、方程式1で与えられるIDS対Vの勾配(S)から算出できる(式中、Cは単位面積あたりの静電容量、Wはチャンネル幅、Lはチャンネル長である)。
【0194】
【数3】
【0195】
飽和領域では、IDS1/2対Vの勾配を求め、移動度について解くことにより、移動度が決定する(方程式2)。
【0196】
【数4】
【0197】
以下の実施例は、本発明を制限することなく本発明を説明することを意図している。本明細書に記載の方法、構造、および特性も、実施例には明示的に記載されていないが本発明の請求項に記載の材料に適用できる。
【0198】
化合物(1):4−ブロモベンゼン−1,2−ジメタノールの調製
【0199】
【化18】
【0200】
リチウムアルミニウム無水物(シグマアルドリッチ593702、2M THF溶液、
100mL、200mmol)のTHF(シグマアルドリッチ401757、300mL)溶液を、氷水浴中で冷却した。4−ブロモフタル酸無水物(Fluorochem 0
09065、45.40g、200mmol)のTHF(200mL)溶液を4時間かけて滴下添加した。次に、反応混合物を6時間撹拌させた。次に、氷水浴を除去し、混合物を一晩静置して室温まで温めた。次に、混合物を氷水浴中で冷却した。水(7.6mL)を滴下添加した。次に、15% NaOH溶液(7.6mL)を滴下添加した。さらに、
水(22.8mL)を加えた。氷水浴を除去し、反応混合物を1時間撹拌させた。次に、混合物をろ過し、ろ過ケークをTHF(3×200mL)で洗浄した。ろ過液を合わせ、
MgSO上で乾燥させ、ろ過し、濃縮して、淡黄色の静置固化した油(31.48g)を得た。この粗生成物をジクロロメタンからの再結晶化により精製して、無色の固体状の生成物(1)を得た(23.50g,108mmol,54%)。H NMR(600
MHz,DMSO−d6)10.52(1H,s),10.46(1H,s),8.11−8.10(1H,m),7.92−7.84(2H,m)
【0201】
化合物(2):4−ブロモ−1,2−ベンゼンジカルボキサルデヒドの調製
【0202】
【化19】
【0203】
塩化オキサリル(シグマアルドリッチO8801、24.0g、176mmol)のジクロロメタン(200mL)溶液を−78℃で撹拌した。ジメチルスルホキシド(29.92g、384mmol)とジクロロメタン(50mL)の混合物を60分かけて滴下添加した。ジクロロメタン(10mL)およびジメチルスルホキシド(10mL)中の4−ブロモベンゼン−1,2−ジメタノール(1)(17.36g、80.0mmol)溶液を、30分かけて滴下添加した。反応混合物を30分間撹拌した。トリエチルアミン(シグマアルドリッチT0886、200mL、1438mmol)を80分かけて添加した。次に、反応混合物を撹拌しながら一晩置いて、室温まで温めた。次に、水(400mL)を添加した。有機層を分離し、水層をジクロロメタン(2×200mL)で抽出した。有機層を合わせ、MgSO上で乾燥させ、ろ過し、真空中で濃縮して、淡オレンジ色の固形物(19.12g)を得た。この物質をドライカラムクロマトグラフィー(勾配溶出:ヘプタン:10%酢酸エチル(ethyl actate):ヘプタン)で精製して、薄茶色の固体状の生成物(2)(14.98g、70.3mmol、88%)を得た。H NMR(
600MHz,CDCl)10.52(1H,s),10.46(1H,s),8.11−8.10(1H,m),7.92−7.84(2H,m)
【0204】
化合物(3):2,9−ジブロモ−6,13−ペンタセンジオン/2,10−ジブロモ−6,13−ペンタセンジオン
【0205】
【化20】
【0206】
4−ブロモ−1,2−ベンゼンジカルボキサルデヒド(2)(14.87g、698mmol、2当量)と1,4−シクロヘキサンジオン(アルドリッチ125423、3.91g、349mmol、1当量)を、2Lの丸底フラスコに投入した。変性アルコール(methylated spirit)(74 O.P.、フィッシャー11482874、1000mL)を添加して、混合物を室温で撹拌した。次に、5%水酸化ナトリウム溶液(22.0mL、275mmol)を添加した。暗褐色の沈殿物が急速に形成された。次に、反応混合物を60℃まで加熱し、この混合物を60℃で1時間撹拌した。次に、混合物を18℃以下まで冷却した。次に、吸引ろ過により固形物を回収した。ろ過ケークを水(200mL)、変性アルコール(74 O.P.、400mL)、およびジエチルエーテル(400m
L)で連続的に洗浄した。次に、固形物を真空オーブン内で乾燥させて、オレンジ色/茶色の固体状の生成物(3)を得た(13.56g、82%)。MS(ASAP)m/z
466(M,100%)
【0207】
化合物(4):2,9−ジブロモ−6,13−ビス(トリイソプロピルシリルアセチレン)ペンタセンジオン/2,10−ジブロモ−6,13−ビス(トリイソプロピルシリルアセチレン)ペンタセン
【0208】
【化21】
【0209】
イソプロピルマグネシウム塩化物(THF中2M、アルドリッチ230111、50.25mL、100mmol、6.2当量)のTHF(シグマアルドリッチ401757、150mL)溶液に、トリイソプロピルシリルアセチレン(フルオロケムS18000、22.5g、100mmol、6.2当量)を室温で滴下添加した。次に、この溶液を60℃まで加熱し、この温度で45分間撹拌した。次に、混合物を20℃まで冷却した。次に、2,9−ジブロモ−6,13−ペンタセンジオン/2,10−ジブロモ−6,13−ペンタセンジオン(3)(7.50g、16.1mmol、1当量)を添加し、反応混合物を60℃まで加熱して、一晩撹拌した。次に、反応混合物を20℃まで冷却した。塩化スズ(II)二水和物(シグマアルドリッチ208256、36.30g)の10% H
Cl(165mL)溶液を滴下添加した。次に、反応混合物を50℃まで加熱し、1時間撹拌した。次に、反応混合物を10℃未満まで冷却し、ろ過により固形物を回収した。ろ過ケークをアセトン(2×100mL)で洗浄して、灰色の固形物(6.58g)を得た。次に、固形物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(勾配溶出:ヘプタン;10%−50% DCM:ヘプタン)により精製し、2つの収穫物を得た。この後、一方の収穫物
をDCM(50mL)に溶解させ、アセトン(200mL)を添加して、ろ過により生成物(4)を回収した(2.15g)。第2の収穫物は、上記のようにフラッシュカラムクロマトグラフィーと沈降により精製し、青色の固体状の生成物(4)を得た(1.70g;全質量=3.85g、4.27mmol、27%)。H NMR(500MHz,C
DCl)9.26(2H,s),9.25(2H,s),9.19(2H,s),9.17(2H,s),8.13(4H,s),7.83(4H,d,J=9.1Hz),7.45(4H,d,J=9.1Hz),1.46−1.35(84H,m)
【0210】
化合物(5):2,7−ビス[(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)]−9,9−ジ−n−オクチルフルオレンの調製
【0211】
【化22】
【0212】
2,7−ジブロモ−9.9−ジ−n−オクチルフルオレン(TCI D3934、5.
00g、9.12mmol、1当量)のTHF(シグマアルドリッチ401757、20mL)溶液を、N下において−75℃で撹拌した。n−ブチルリチウム(Acros
10181852、2.5Mヘキサン溶液、8.75mL、21.9mmol、2.4当量)を滴下添加した。反応混合物を−75℃で1時間撹拌させた後、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(シグマアルドリッチ417149、4.41g、23.71mmol、2.6当量)を添加した。次に、反応混合物を撹拌しながら一晩置いて、室温まで温めた。水(30mL)とDCM(60mL)を添加し、有機層を分離し、水層をDCM(3×30mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO上で乾燥させ、ろ過し、真空中で濃縮して、無色の固形物(5.62g)を得た。この生成物をドライカラムクロマトグラフィー(勾配溶出:20%−50%
DCM:ヘプタン)で精製して、無色の固体状の生成物を得た(4.20g、6.54
mmol、71%)。H NMR(500MHz,CDCl)7.82−7.70(
6H,m),2.01−1.97(4H,m),1.39(24H,s),1.20−1.01(20H,m),0.81(6H,t,J=7.1Hz),0.55−0.53(4H,m)
【0213】
例1、PAHC(1):TIPSペンタセン−9,9−ジ−n−オクチルフルオレンのコポリマーの調製
2,9−ジブロモ−6,13−ビス(トリイソプロピルシリルアセチレン)ペンタセンジオン/2,10−ジブロモ−6,13−ビス(トリイソプロピルシリルアセチレン)ペンタセン(4)(0.15g、0.19mmol、0.5当量)、2,7−ジブロモ−9.9−ジ−n−オクチルフルオレン(0.10g、0.19mmol、0.5当量)、2,7−ビス[(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)]−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン(5)(0.24g、0.38mmol、1当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Acros 12
065360、0.013g、0.01mmol、0.03当量)、2M KCO
1.1mL、2.23mmol、6当量)、およびトルエン(20mL)中のAliquat(登録商標)336(5滴)の混合物を、窒素流を30分間溶液に通すことにより脱ガスした。次に、混合物を加熱環流した。3時間後、HPLCによりオリゴマーの存在を確認した。反応混合物を静置して50℃まで冷ました。反応混合物を撹拌しながらMeOH(60mL)に注いだ。30分後、沈降した固形物をブフナー漏斗を用いて吸引ろ過して、濃い緑色の粉末(0.25g)を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン)により、この固形物を精製した。生成物を含有する画分を真空中で濃縮して、濃い緑色の固形物(0.25g)を得た。この固形物をトルエン(10mL)に溶かし、メタノール(30mL)に注いだ。沈殿した固形物を、ブフナー漏斗を用いた吸引ろ過により回収した。次に、得られた固形物を真空オーブン内で乾燥させて、濃い緑色の粉末状の生成物(0.25g)を得た(75% ジ−n−オクチルフルオレン:25% TIPSペンタセン)。この生成物の特性は次のように評価された:GPC Mn=8184
ダルトン、Nav=18。
【0214】
TIPSペンタセン−9,9−ジ−n−オクチルフルオレンのコポリマー(1)の誘電率は2.84であった。
【0215】
(比較として、ハイフォースリサーチ社(High Force Research Ltd)から購入した市
販の2,4−ジメチルポリトリアリールアミン(ハイフォースリサーチ社の2,4−ジメチルポリトリアリールアミンポリマーのコードはPE3)を我々の誘電率試験で測定したところ、結合剤PE3の誘電率は2.98であった。)
【0216】
配合物1
TIPSペンタセン−9,9−ジ−n−オクチルフルオレンのコポリマーであるPAHC(1)と、ポリアセン1(1,4,8,11−テトラメチル−6,13−ビス(トリエチルシリルエチニル)ペンタセン)(重量比70:30)を、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン中で全固形物1.7重量%で溶解させた。これを、上記の方法に従ってOTFTの有機半導体層としてコーティングした。この配合物をパターニング済みAuソース/ドレイン電極(イソプロピルアルコール中の10mMペンタフルオロベンゼンチオール溶液で処理された50nm厚Au)にスピンコーティングした(500rpmで5秒、次いで1500rpmで60秒)。上部にフルオロポリマー誘電体Cytop(Asahi Chemical Co.)をスピンコーティングした(500rpmで5秒、次いで1500rpmで20秒)。最後に、シャドウマスク蒸発によりAuゲート電極を堆積させた。
【0217】
OTFT内の移動度は、チャンネル長L=10μmで2.6cm−1−1であった(線形移動度)。
【0218】
OTFT内の移動度は、チャンネル長L=30μmで4.5cm−1−1であった(線形移動度)。
【0219】
本発明の特に好適なPAHCを次表に示す。
【0220】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0221】
この表に指定されている有機半導体化合物が特に好適である理由は、(結合剤の)電荷輸送移動度が高いという有利な特性と、大面積印刷での使用に望ましい無害な非塩素化溶媒との適合性が高い極性とを組み合わせているからである。加えて、これらの化合物は、OSC層として堆積するか、あるいはOSC層の一成分として堆積すると、さらに極性が高くなるので、Cytop等の有機ゲート絶縁体(OGI)に使われる疎水性溶媒による再溶解に対して耐性を持つことが見込まれる。さらに、有極性の結合剤は、トップゲート型OTFTとボトムゲート型OTFTの両方、特にボトムゲート型OTFTに有用であることが見込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6