(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166288
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】利用可能なネット支援なしで風力発電装置を制御する方法
(51)【国際特許分類】
F03D 13/30 20160101AFI20170710BHJP
F03D 17/00 20160101ALI20170710BHJP
F03D 80/40 20160101ALI20170710BHJP
【FI】
F03D13/30
F03D17/00
F03D80/40
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-561360(P2014-561360)
(86)(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公表番号】特表2015-510083(P2015-510083A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(86)【国際出願番号】EP2013054179
(87)【国際公開番号】WO2013135504
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】102012204239.3
(32)【優先日】2012年3月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ベークマン、アルフレート
【審査官】
鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0084070(US,A1)
【文献】
特表2007−538191(JP,A)
【文献】
特表2007−538190(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/001739(WO,A1)
【文献】
特表2004−523692(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0206603(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0056425(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0246943(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0013224(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0031761(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00 − 80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機と、補助エネルギ源(2)又は補助発電機(2)と、風力発電装置(1)を制御するための制御装置を含む風力発電装置(1)の制御方法であって、
風力発電装置(1)は電気供給ネット(6)に電力を給電するよう構成されているが、電気供給ネット(6)ないし電気供給ネット(6)の支線が風力発電装置(1)のために存在しておらずないし電気供給ネット(6)への接続がまだ全く存在しておらず、従って風力発電装置(1)がまだ電気供給ネット(6)には接続されていない状態にあり、
風力発電装置(1)が電気供給ネットにまだ接続されていない場合における水分防護のために、電気供給ネットへ接続が全くないため電気供給ネットへの電気エネルギの供給が不可能な状態で、風力発電装置(1)は運転開始され、
該制御方法は、更に、以下の工程:
・前記発電機により電力を生成する工程、及び
・風力発電装置(1)の電気的構成要素へ水分防護のために生成された電力を供給する工程、但し、該電気的構成要素は、電力を熱に変換するためのチョッパ抵抗装置と、電気供給ネット(6)には供給されないが、該チョッパ抵抗装置に供給される電力の電流信号を生成するためのインバータとを含み、
風力発電装置(1)は、電気供給ネット(6)に電力を給電することなく、運転開始され、
風力発電装置(1)が運転状態にありかつ電力を生成しているか否かが、予め設定可能な検査期間(複数)において検査され、否の場合、風力発電装置(1)ないし発電機は、補助エネルギ源(2)又は補助発電機(2)によって、運転開始が実行され、
風力発電装置(1)が運転状態にあるとき、補助エネルギ源(2)又は補助発電機(2)は風力発電装置(1)から再び分離され又は補助エネルギ源(2)又は補助発電機(2)は再びスイッチオフされ、風力発電装置(1)は、十分な風が存在する限り、運転状態が維持されるよう、それ自身のために風から電力を生成し、
発電機の運転開始のために十分な風が存在しない場合、前記電気的構成要素のうち少なくとも電力を熱に変換するためのチョッパ抵抗装置は、少なくとも一時的に、補助エネルギ源(2)又は補助発電機(2)から電力を供給される
方法。
【請求項2】
前記電気的構成要素は、更に、
・前記風力発電装置(1)を制御するための前記制御装置、
・前記風力発電装置(1)の風に対する配向を調整するための方位角調整装置、
・前記風力発電装置(1)の一部分を加熱するための加熱装置、及び、
・前記風力発電装置(1)の少なくとも一部分を通風するための通風装置
の少なくとも1つを含み、
該電気的構成要素の少なくとも1つは、発電機の運転開始のために十分な風が存在しない場合、少なくとも一時的に、補助エネルギ源(2)又は補助発電機(2)から電力を供給されること
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発電機の運転のために十分な風が存在しない場合、予め設定可能な運転時間後、該発電機は再びスイッチオフされ又は前記電気的構成要素への電力供給は再び遮断されること
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
風から電力を生成するための及び該生成した電力を電気供給ネット(6)に給電するための風力発電装置であって、
・風力発電装置(1)は、電気供給ネット(6)に電力を給電するための発電機と、風力発電装置(1)に電力を供給するための補助エネルギ源(2)又は補助発電機(2)であって前記風力発電装置(1)の始動のための十分な出力及びエネルギを供給する補助エネルギ源(2)又は補助発電機(2)と、風力発電装置(1)を制御するための制御装置と、電気的構成要素とを含み、
・該電気的構成要素は、電力を熱に変換するためのチョッパ抵抗装置と、電気供給ネット(6)には供給されないが、該チョッパ抵抗装置に供給される電力の電流信号を生成するためのインバータとを含み、
・電気供給ネット(6)ないし電気供給ネット(6)の支線が風力発電装置(1)のために存在しておらずないし電気供給ネット(6)への接続がまだ全く存在しておらず、従って風力発電装置(1)はまだ電気供給ネット(6)には接続されていない状態にあり、
・風力発電装置(1)は請求項1〜3の何れかに記載の方法の実行により、風力発電装置(1)が電気供給ネットにまだ接続されていない場合における水分防護のために、電気供給ネットへ接続が全くないため電気供給ネットへの電気エネルギの供給が不可能な状態で、運転開始するために適合されており、かくして、
・前記発電機が電力を生成し、
・前記生成された電力が水分防護のために風力発電装置(1)の前記電気的構成要素に供給され、
・風力発電装置(1)は、電気供給ネット(6)に電力を給電することなく、運転開始され、
前記制御装置は、
・前記風力発電装置(1)が運転状態にありかつ電力を生成しているか否かを、予め設定可能な検査期間(複数)において検査し、否の場合、補助エネルギ源(2)又は補助発電機(2)によって、前記風力発電装置(1)ないし前記発電機の運転開始を実行し、
・前記風力発電装置(1)が運転状態にあるとき、前記補助エネルギ源(2)又は補助発電機(2)を該風力発電装置(1)から再び分離し又は前記補助エネルギ源(2)又は補助発電機(2)を再びスイッチオフし、但し、該風力発電装置(1)は、十分な風が存在する限り、運転状態が維持されるよう、それ自身のために風から電力を生成し、
・発電機の運転開始のために十分な風が存在しない場合、前記電気的構成要素のうち少なくとも電力を熱に変換するためのチョッパ抵抗装置に、少なくとも一時的に、補助エネルギ源(2)又は補助発電機(2)から電力を供給する
ために適合されている、
風力発電装置。
【請求項5】
前記電気的構成要素は、更に、
・前記風力発電装置(1)を制御するための前記制御装置、
・前記風力発電装置(1)の風に対する配向を調整するための方位角調整装置、
・前記風力発電装置(1)の一部分を加熱するための加熱装置、及び、
・前記風力発電装置(1)の少なくとも一部分を通風するための通風装置
の少なくとも1つを含み、
該電気的構成要素の少なくとも1つは、発電機の運転開始のために十分な風が存在しない場合、少なくとも一時的に、補助エネルギ源(2)又は補助発電機(2)から電力を供給されること
を特徴とする請求項4に記載の風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置の制御方法及びそのような風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置は一般的に既知であり、
図1に風力発電装置の一例が示されている。そのような風力発電装置は、風のエネルギを電気エネルギに変換し、電気供給ネット(これは以下において電気ネットワーク又は単にネットと称することもある)に給電するよう構成されている。
【0003】
風力発電装置が電力をネットに給電できるようになる前に、風力発電装置はまず建設(設置)されかつネットに接続される必要がある。風力発電装置は、実質的に建設された後、最終的にネットに接続されて運転されることができるようになる前に、機能検査が行われることがしばしばある。この検査期間の間、その他の点では場合によっては既に完全に建設されている風力発電装置であっても、規則(コード)に従って(ordnungsgemaess)運転することはできず、とりわけそもそも運転することができない。更に、建設場所(立地)によっては、風力発電装置が冷却され、水分がとりわけ空気から析着するという危険がある。更に、風力発電装置が雨による水分に曝されるという危険もある。風力発電装置は、確かに、建設された状態では、しばしば実質的に(外部に対して)閉じたナセル(ゴンドラ)と(外部に対して)閉じたタワーを有するが、それにも拘らず、雨は、例えば通気口を介して侵入することがある(なお、風力発電装置の運転時には、外部に向けられた通気装置の空気流のために雨は該通気口を介して侵入することはできない)。更に、風力発電装置の、とりわけ風力発電装置のナセルの、不利な配向のために、雨の侵入が助長されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US 2010/0013224 A1
【特許文献2】US 2012/0056425 A1
【特許文献3】US 7,394,166 B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この問題に対処するために、そのような通気スリットを閉鎖することが可能であり、又は、精密な(損傷し易い)装置部分を被覆したり(カバーを掛けたり)ケースに収めたりすることも可能である。しかしながら、そのような処置は極めて大がかりなものとならざるを得ず、しかも、風力発電装置が運転状態に移行する際、そのようなカバーやケースは全く又は完全には除去されないという危険も生じる。建設及び場合によっては機能検査も困難になる。
【0006】
他の方策として、析着ないし侵入する水分(湿気)による損傷
を阻止するために、相応の装置による加熱及び/又は空気乾燥を行うことも可能である。また、他の方策として、単純に、風力発電装置を可及的速やかに建設し、ネットに接続することを試みることも可能である。可能であれば、天候状態があまり危機的でないときに風力発電装置の建設を試みることも可能であるが、これは実際的ではないことが多い。
【0007】
部分的には、風力発電装置は、完全に建設されれば、ネットに接続はできるであろうが、それは当初は可能ではない。なぜなら、ネットないしネットの相応の支線は風力発電装置のために存在しないからである。場合によっては、風力発電装置の接続のための許可又は接続のためのネット支線の敷設の許可もなかなか得られない。この場合、ネットに接続されていないため、通気装置及び/又は乾燥装置に加えて加熱装置の運転も不可能であるか、極めて困難であろう。即ち、ネットへの接続は、しばしば、風力発電装置の電力をネットに給電するために必要とされるだけではなく、風力発電装置の始動のための及び/又は風力発電装置の付属装置の運転のための電力をネットから調達するためにも必要とされる。そのため、ネットへの接続がなければ、風力発電装置は運転することができず、また、上述した水分析着又は水分の侵入の危険も生じるが、これにより、部分的に、極めて迅速に、風力発電装置の部分、とりわけ風力発電装置の電気的付属装置が損傷し得る。
【0008】
なお、ドイツ特許商標庁は、本願の優先権の基礎出願において、以下の先行技術文献をサーチした:US 2010/0013224 A1;US 2012/0056425 A1;US 7,394,166 B2。
【0009】
それゆえ、本発明の課題は、上述の問題の少なくとも1つに取り組むことである。とりわけ、風力発電装置が電気供給ネットにまだ接続されていない場合における水分の侵入又は析着を阻止又は少なくとも抑制する方策の創出が望まれる。少なくとも、代替的な方策の提案が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従って、請求項1の方法が提案される。即ち、上記の課題を解決するために、本発明の第1の視点により、発電機
と、補助エネルギ源又は補助発電機と、風力発電装置を制御するための制御装置を含
む風力発電装置の制御方法であって、
風力発電装置は電気供給ネットに電力を給電するよう構成されているが、電気供給ネットないし電気供給ネットの支線が風力発電装置のために存在しておらずないし電気供給ネットへの接続がまだ全く存在しておらず、従って風力発電装置がまだ電気供給ネットには接続されていない状態に
あり、
風力発電装置が電気供給ネットにまだ接続されていない場合における水分防護のために、電気供給ネットへ接続が全くないため電気供給ネットへの電気エネルギの供給が不可能な状態で、風力発電装置は運転開始され、
該制御方法は、更に、以下の工程:
・前記発電機により電力を生成する工程、及び
・風力発電装置の電気的構成要素へ
水分防護のために生成された電力を供給する工程、但し、該電気的構成要素は、電力を熱に変換するためのチョッパ抵抗装置と、電気供給ネットには供給されないが、該チョッパ抵抗装置に供給される電力の電流信号を生成するためのインバータとを含み、
風力発電装置は、電気供給ネットに電力を給電することなく、運転開始さ
れ、
風力発電装置が運転状態にありかつ電力を生成しているか否かが、予め設定可能な検査期間(複数)において検査され、否の場合、風力発電装置ないし発電機は、補助エネルギ源又は補助発電機によって、運転開始が実行され、
風力発電装置が運転状態にあるとき、補助エネルギ源又は補助発電機は風力発電装置から再び分離され又は補助エネルギ源又は補助発電機は再びスイッチオフされ、風力発電装置は、十分な風が存在する限り、運転状態が維持されるよう、それ自身のために風から電力を生成し、
発電機の運転開始のために十分な風が存在しない場合、前記電気的構成要素のうち少なくとも電力を熱に変換するためのチョッパ抵抗装置は、少なくとも一時的に、補助エネルギ源又は補助発電機から電力を供給される
方法が提供される(形態1・第1基本構成)。
更に、上記形態1の方法において、前記電気的構成要素は、更に、
・前記風力発電装置を制御するための
前記制御装置、
・前記風力発電装置の風に対する配向を調整するための方位角調整装置、
・前記風力発電装置の一部分を加熱するための加熱装置、及び、
・前記風力発電装置の少なくとも一部分を通風するための通風装置
の少なくとも1つを含
み、
該電気的構成要素の少なくとも1つは、発電機の運転開始のために十分な風が存在しない場合、少なくとも一時的に、補助エネルギ源又は補助発電機から電力を供給されることが好ましい(形態2)。
更に、上記形態
1の方法において、前記発電機の運転のために十分な風が存在しない場合、予め設定可能な運転時間後、該発電機は再びスイッチオフされ又は前記電気的構成要素への電力供給は再び遮断されることが好ましい(形態
3)。
更に、上記の課題を解決するために、本発明の第2の視点により、風から電力を生成するための及び該生成した電力を電気供給ネットに給電するための風力発電装置であって、
・風力発電装置は、電気供給ネットに電力を給電するための発電機と、
風力発電装置に電力を供給するための補助エネルギ源又は補助発電機であって前記風力発電装置の始動のための十分な出力及びエネルギを供給する補助エネルギ源又は補助発電機と、風力発電装置を制御するための制御装置と、電気的構成要素とを含み、
・該電気的構成要素は、電力を熱に変換するためのチョッパ抵抗装置と、電気供給ネットには供給されないが、該チョッパ抵抗装置に供給される電力の電流信号を生成するためのインバータとを含み、
・電気供給ネットないし電気供給ネットの支線が風力発電装置のために存在しておらずないし電気供給ネットへの接続がまだ全く存在しておらず、従って風力発電装置はまだ電気供給ネットには接続されていない状態にあり、
・風力発電装置は形態1〜
3の何れかの方法の実行
により、風力発電装置が電気供給ネットにまだ接続されていない場合における水分防護のために、電気供給ネットへ接続が全くないため電気供給ネットへの電気エネルギの供給が不可能な状態で、運転開始するために適合されており、かくして、
・前記発電機が電力を生成し、
・前記生成された電力が
水分防護のために風力発電装置の前記電気的構成要素に供給され
、
・風力発電装置は、電気供給ネットに電力を給電することなく、運転開始さ
れ、
前記制御装置は、
・前記風力発電装置が運転状態にありかつ電力を生成しているか否かを、予め設定可能な検査期間(複数)において検査し、否の場合、補助エネルギ源又は補助発電機によって、前記風力発電装置ないし前記発電機の運転開始を実行し、
・前記風力発電装置が運転状態にあるとき、前記補助エネルギ源又は補助発電機を該風力発電装置から再び分離し又は前記補助エネルギ源又は補助発電機を再びスイッチオフし、但し、該風力発電装置は、十分な風が存在する限り、運転状態が維持されるよう、それ自身のために風から電力を生成し、
・発電機の運転開始のために十分な風が存在しない場合、前記電気的構成要素のうち少なくとも電力を熱に変換するためのチョッパ抵抗装置に、少なくとも一時的に、補助エネルギ源又は補助発電機から電力を供給する
ために適合されている、
風力発電装置が提供される(形態
4・第2基本構成)。
更に、上記形態
4の風力発電装置において、前記電気的構成要素は、更に、
・前記風力発電装置を制御するための
前記制御装置、
・前記風力発電装置の風に対する配向を調整するための方位角調整装置、
・前記風力発電装置の一部分を加熱するための加熱装置、及び、
・前記風力発電装置の少なくとも一部分を通風するための通風装置
の少なくとも1つを含
み、
該電気的構成要素の少なくとも1つは、発電機の運転開始のために十分な風が存在しない場合、少なくとも一時的に、補助エネルギ源又は補助発電機から電力を供給されることが好ましい(形態5)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の方法では、電気供給ネットに電力を供給するよう構成されているが、まだ該電力供給ネットに接続されていない風力発電装置を出発点とする。これに関連して、発電機によって電力を生成すること、及び、風力発電装置の電気的構成要素に供給するために該生成された電力(生成電力)を使用することが提案される。換言すれば、風力発電装置は僅かな電力の生成を目的として運転開始(作動)され、その際、風力発電装置の電気的構成要素が運転開始され得る程度の電力が生成される。風力発電装置のこの運転開始は、電気エネルギの生成及び電気供給ネットへの給電に関しては、何の意味ももたらさない。なぜなら、ネットへの接続はまだ全く存在しないからである。風力発電装置の運転は、風力発電装置が水分(湿気)による損傷を受けないという理由かつその範囲でのみ実行される。簡単にいえば、風力発電装置は、これによって、その建設後であってネットへの接続前に劣化(腐食、カビ発生:Vergammeln)に対して保護される。
【0012】
とりわけ、電力の供給がなければ水分曝露の危険を冒すような電気的構成要素に、全体として風力発電装置を水分の侵入又は析着から保護可能な電気的構成要素に、電力が供給される。
【0013】
有利には、風力発電装置を制御するための少なくとも1つの制御装置は、電力が供給される。これに関し、構成要素(複数)の更なる起動(Ansteuerungen)及び運転開始の制御が可能な制御システムを運転開始することは原理的に可能である。
【0014】
有利には、追加的に又は代替的に、風力発電装置の風に対する配向(方向)を調整するための方位角調整装置は、電力が供給され、相応に作動される。そのような方位角調整装置は、現在極めて頻繁に利用されているタイプのものでありかつ
図1にその一例が示されているいわゆる水平軸風力発電装置のために設けられる。この方位角調整装置の作動によって、第1に、当該装置自身が運転開始され、それによって水分の析着ないし侵入から保護される。更に、風力発電装置は風に対し配向調整(方位合わせ)されることができるが、これは、雨についても最適又は少なくとも有利であり得る通常の配向調整に相当し得る。たとえごく僅かしか電力が生成されない場合であっても、風力発電装置が風から電力を生成すべき場合には、風に対する風力発電装置の配向調整も好都合である。
【0015】
有利には、風力発電装置の一部分を加熱するための加熱装置(ヒータ)が運転開始される。例えば、そのような加熱装置は、例えば保守要員の滞在のためにナセルを加熱(加温)するナセル加熱装置であり得る。更に、この加熱装置には、風速計のような測定機器を着氷から保護するために該測定機器を加熱する加熱装置も含まれ得る。かくして、風条件の規則(コード)に従った(適正な)測定も保証されることができるが、この測定は風力発電装置の運転のために好都合であるか、更には不可欠でもある。
【0016】
加熱装置は、例えば、ロータブレードを着氷から保護するためにないしロータブレードの除氷を行うために、ロータブレードに設けることも可能である。このロータブレード加熱装置は、有利には、除氷の要求がなくても、作動することができる。ロータブレードのためのそのような加熱装置は、エネルギの要求が比較的大きいという特徴もある。これは、相応に大きな電力がこの水分防護運転(モード)のために必要とされることを意味する。ここで、水分防護運転(モード)とは、風力発電装置がネットに給電せずかつ自己防護(保護)のためにのみ即ち析着ないし侵入する水分に対する防護のためにのみ運転される、風力発電装置の運転のことである。従って、加熱装置がロータブレードの加熱のために使用される場合、電力に対する比較的大きな要求が生じる。この要求により、風力発電装置は相応に大きな電力を生成することが必要になるが、このため、通常(regulaer)運転(モード)においても使用されるすべての構成要素、又は少なくとも通常運転(モード)においても使用される多くの構成要素が原理的に正常運転(モード)(Normalbetrieb)の場合と同様に作動する。従って、風力発電装置の可及的多数の構成要素を正常運転(モード)において又は(それに)類似の状態において作動させることに成功すれば、完全に自動的に水分に対するその自己保護が行われることになる。
【0017】
尤も、電気供給ネットへの給電のために必要なインバータは、風力発電装置がネットに接続されていない場合、そのような水分防護運転(モード)の際、自動的には、正常運転状態又は(それに)類似の運転状態にはないであろう。従って、1又は複数の存在するインバータにも電力を供給することが、とりわけ提案される。有利には、インバータによって作動(活性化)される例えばチョッパ抵抗のような疑似負荷を設けることも可能である。従って、インバータは、ネットには供給されないがそのようなチョッパ抵抗の作動のために使用される1つの、たとえ小さくとも、電流信号を生成する。そのように生成される出力電流は熱に変換される。このため、これらのチョッパ抵抗は、とりわけ水分防護運転(モード)において加熱が要求される風力発電装置の部位に配置されるのが有利であり得る。尤も、インバータが作動すると、同時に、インバータ自身が損失熱を生成し、その熱によって自らを水分から防護(保護)することができる。一方では、インバータが運転状態において発熱していれば、インバータの構成要素には水分が全くないし殆ど析着しない。他方では、インバータは、同様に水分析着又は水分侵入に対抗作用するインバータの通風装置を運転開始させることもできる。チョッパ抵抗をインバータの構成要素とすることも可能である。
【0018】
可及的に多くの電力を上述のチョッパ抵抗で消費(熱変換)可能にするために、交代で(順次に)作動(活性化)される複数のチョッパ抵抗又は複数のチョッパ抵抗バンクが使用される。これは、非作動(非活性化)時に対応するチョッパ抵抗ないしチョッパ抵抗バンクの冷却を実行可能にすることにより、それらのオーバーヒートを回避するためである。
【0019】
そのようなチョッパ抵抗ないしチョッパ抵抗バンクは、原理的に、インバータ以外のものによっても作動(活性化)可能である。例えば、これらのチョッパ抵抗ないしチョッパ抵抗バンクを作動(活性化)するための、この目的のためにのみ使用される、作動(活性化)装置を設けることも可能である。また、(風力発電)装置の運転状態において安全装置として、即ち風力発電装置が突然スイッチオフされた場合に依然として生成される電力を消費するために、設けられるチョッパ抵抗ないしチョッパ抵抗バンクを使用することも可能である。
【0020】
発電機及び/又は風力発電装置が運転状態にありかつ電力を生成しているか否かが、予め設定可能な検査期間(複数)において検査されること、その際、該発電機ないし該風力発電機が運転状態になくかつ電力を生成していないことが判明した場合、該発電機ないし該風力発電装置は運転開始されることが、更なる一実施形態により提案される。原理的には、風力発電装置を一般的にネットに接続されていない場合であっても既述の水分防護運転で運転することは、有利である。その際、最早全く電力を生成できないほどに風が弱いこともあり得る。この場合、風力発電装置はまず停止するであろう。とりわけそのような状況は、提案した検査によって検出されることが望まれる。予め設定可能な検査期間は、例えば、1時間、30分又は2時間又は類似の値とすることができる。検査期間(複数)は、例えば建設地(立地)に依存して又は季節に依存してするように、個別に設定することも可能である。例えば、風力発電装置が温暖で乾燥した地域に夏季に建設される場合、更には雨を考慮しなくてもよければ、そのような検査期間は長時間のものとすることができる。これに対し、風力発電装置が寒冷湿潤の地域にかつとりわけ寒冷湿潤の季節に建設される場合、短時間の検査期間を選択することは有利であり得る。
【0021】
有利には、補助エネルギ源によって、とりわけバッテリ及び/又はディーゼル発電機のような補助発電機によって、水分防護運転(モード)のために、風力発電装置の運転開始が実行される。これは、この水分防護運転(モード)のための第1の運転開始に関係し得るものであるが、(1つの)予め設定可能な検査期間後、発電機ないし風力発電装置が最早運転状態になくかつ最早電力を生成していないという検査結果が得られる場合に一実施形態により提案される運転開始にも関係し得る。そのような補助エネルギ源は、可搬式の補助エネルギ源であり得るが、少なくとも一時的に固定的に設置される(定置される)補助エネルギ源でもあり得る。後者は、とりわけ、ネット接続が一層より長時間形成されないことが見込まれ得る場合に、提案される。そのような補助(エネルギ)源は、風力発電装置が弱いネットに接続され又はネットへの弱い連結装置を介してネットと接続されておりかつ相応に将来において、風力発電装置がネットに接続される場合でさえも、より長時間のネットからの分離が見込まれ得る場合、現地に残置し得る。
【0022】
発電機が依然として運転状態にあるか否かの検査は、比較的少ないエネルギしか必要とせず、例えば従来の小型のバッテリ又はコンデンサ(キャパシタ)ユニットでも十分実行できるということを指摘する。検査自体は、原理的に、小型のマイクロプロセッサないしマイクロコンピュータを作動するためのエネルギしか必要としない。ネット接続を利用することも可能である。そのため、風力発電装置がまだネットに接続されておらず、場合によってはまだネットに接続されることができないが、水分防護運転(モード)の実行のためには十分な、少なくとも既述の検査のためには十分なネット接続が存在することもあり得る。水分防護運転(モード)の運転開始又は再運転開始(運転再開)を実行しなければならないという検査結果が得られてから初めて、顕著により多くのエネルギ及び顕著により多くの電力が必要となるが、この場合、補助(エネルギ)源によってスイッチオンすることができる。代替的又は追加的に、風が十分に存在するか否かを検査することができる。水分防護運転(モード)が例えば湿度及び/又は温度のような風力発電装置の内部又は外部の条件に依存して実行されることが、一実施形態により提案される。
【0023】
風力発電装置が運転状態にあるか否かを監視するために、緊急(非常時用)電源ユニットを設けることも可能である。
【0024】
有利には、風力発電装置の発電機の運転開始が風不足のために可能ではない場合、電気的構成要素の少なくとも1つが補助エネルギ源から直接的に電力を供給されることが、提案される。このために、例えば、気象条件もそのような水分防護を必要にする場合、ディーゼル発電機を持続的に運転することも可能である。
【0025】
更に有利には、風力発電装置が基本的に外部エネルギなしで起動するよう構成することができる。このために、ロータブレードは、フェザリング位置が90°と見なされる場合、凡そ60°の相応のピッチ角を有することができる。これは、自己起動と称することも可能である。
【0026】
発電機の運転のために風が十分に存在しない場合、予め設定可能な運転時間後、発電機が再びスイッチオフされること及び/又は電気的構成要素への電力供給が再び遮断されることが、更なる一実施形態により提案される。ここで、とりわけ、例えばディーゼル発電機又はその他の内燃機関が使用される場合の、補助エネルギ源のエネルギの消費、とりわけ燃料の消費と、(電気的)構成要素の水分防護の緊急性との間で比較考量(ないしトレードオフ)することが提案される。風力発電装置の始動が成功した場合、ディーゼル発電機は再び停止されるべきであろう。正常な装置運転(モード)に応じた少なくとも1つの配向調整(方位合わせ)が行われる(存在する)よう、風力発電装置を風の中に(風の方向に)回転するための補助エネルギのみをこの比較考量の際に使用することは有利でもあり得る。換言すれば、少なくとも風力発電装置の内部に雨が侵入しないように風力発電装置を配向調整(方位合わせ)することは、例えば半日又は一日のようなある程度の時間で十分であり得る。発電機が運転を開始することができないほど風が弱い場合であっても風向は存在し得ることを、念のために指摘しておく。
【0027】
更に、風から電力を生成し、該生成した電力を電気供給ネットに給電するための次のような風力発電装置が提案される。この風力発電装置は、上述の実施形態の何れかの方法が実行されることを特徴とする。とりわけ、上述の水分防護運転(モード)において風力発電装置を制御するための方法を有する風力発電装置が提案される。この風力発電装置は、上述したように、当該風力発電装置がまだ電気供給ネットに接続されていない場合であっても、水分に対して保護されることができる。
【0028】
有利には、風力発電装置は、補助エネルギ源、とりわけバッテリ、又は補助発電機を有する。補助エネルギ源は、この場合、風力発電装置の始動(運転開始)のための十分な出力(電力)及び十分なエネルギを供給(生成)できるような規模(容量)に構成される。ここで、とりわけ指摘することは、出力(電力)とエネルギ(の関係)である。例えば、選択されたディーゼル発電機は、過度に小型であっても、ディーゼルタンク(燃料タンク)が十分に大きければ、十分なエネルギを供給できるであろうが、十分な出力(電力)、即ち十分な時間当たりエネルギを供給することはできない。反対に、例えば、コンデンサバンクは十分な出力(電力)を供給できるが、当該コンデンサバンクが十分なエネルギを蓄積していなかった場合、十分な出力(電力)を十分な期間供給することはできない。
【0029】
ネット(系統)運用のために設けられる風力発電装置は、電気ネットワークへの接続のための相応の接続部(複数)を有するだけでなく、とりわけ(1つの)相応のインバータ及び電気供給ネットに給電するよう構成されたインバータを制御するための相応のプログラムを有するものであることが、補完的に、更に指摘される。この場合、電気供給ネットに給電する現代の風力発電装置は、相応のネット規則(これはドイツにおいても英語の概念「グリッドコード(Grid Code)」と称されるのが通常である)も遵守しなければならないことに留意すべきである。風力発電装置は、そのような条件を充足できる場合に初めて、電気供給ネットへの接続のために提供されるないし準備が整うことになる。風力発電装置が実際に電気供給ネットへの接続のために提供されている又は準備が整っているか否かは、究極的には、風力発電装置が最終的に電気ネットに接続されたか否かによって認識することができる。
【0030】
以下に、本発明の好ましい実施の態様を付記する。
(態様1)発電機を含み、電気供給ネットに電力を給電するよう構成されているが、まだ該電気供給ネットには接続されていない風力発電装置の制御方法であって、以下の工程:
・前記発電機により電力を生成する工程、及び
・前記風力発電装置の電気的構成要素へ前記生成された電力を供給する工程
を含む方法が有利に提供される。
(態様2)上記態様1の方法において、前記風力発電装置は、前記電気供給ネットに電力を給電することなく、運転開始されることが好ましい。
(態様3)上記態様1又は2の方法において、前記電気的構成要素は、少なくとも、
・前記風力発電装置を制御するための制御装置、
・前記風力発電装置の風に対する配向を調整するための方位角調整装置、
・前記風力発電装置の一部分を加熱するための加熱装置、
・前記風力発電装置の少なくとも一部分を通風するための通風装置、
・電力を給電するためのインバータ、及び/又は
・電力を熱に変換するためのチョッパ抵抗装置
を含むことが好ましい。
(態様4)上記態様1〜3の何れかの方法において、前記風力発電装置、とりわけ前記発電機、が運転状態にありかつ電力を生成しているか否かが、予め設定可能な検査期間(複数)において検査されること、及び
それ以外の場合、前記風力発電装置ないし前記発電機は運転開始されることが好ましい。
(態様5)上記態様1〜4の何れかの方法において、補助エネルギ源、とりわけバッテリ、及び/又は補助発電機、とりわけディーゼル発電機、によって、前記風力発電装置の運転開始が実行されることが好ましい。
(態様6)上記態様5の方法において、前記風力発電装置が運転状態にあるとき、前記補助エネルギ源は該風力発電装置から再び分離され及び/又は前記補助エネルギ源は再びスイッチオフされ、該風力発電装置は、十分な風が存在する限り、運転状態が維持されるよう、それ自身のために風から電力を得ることが好ましい。
(態様7)上記態様1〜6の何れかの方法において、前記発電機の運転開始のために十分な風が存在しない場合、前記電気的構成要素の少なくとも1つは、少なくとも一時的に、補助エネルギ源から電力を供給されることが好ましい。
(態様8)上記態様1〜7の何れかの方法において、前記発電機の運転のために十分な風が存在しない場合、予め設定可能な運転時間後、該発電機は再びスイッチオフされ及び/又は前記電気的構成要素への電力供給は再び遮断されることが好ましい。
(態様9)風から電力を生成するための及び該生成した電力を電気供給ネットに給電するための風力発電装置であって、上記態様1〜8の何れかの方法が実行される、風力発電装置が有利に提供される。
(態様10)上記態様9の風力発電装置において、補助エネルギ源、とりわけバッテリ、及び/又は補助発電機、とりわけディーゼル発電機、を前記風力発電装置への電力供給のために有すること、該補助エネルギ源は、前記風力発電装置の始動のための十分な出力及びエネルギを供給できるような規模(容量)に構成されることが好ましい。
以下に、本発明の実施例を例示的に添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、特許請求の範囲に付した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】補助発電機を有し、ネットから分離されている風力発電装置の一例の模式図。
【
図3】本発明の制御方法の一例の経過を示すフローチャート。
【実施例】
【0032】
図1は、タワー102とナセル(ゴンドラ)104とを有する風力発電装置100の一例を示す。ナセル104には、3つのロータブレード108とスピナ110とを有するロータ106が配されている。ロータ106は運転時風によって回転運動し、それによって、ナセル104内の発電機を駆動する。
【0033】
図2は、補助エネルギ源2ないし補助発電機2即ちそのような補助エネルギ源の可能な一実施例としてのディーゼル発電機2を有する風力発電装置1を示す。風力発電装置1は、原理的に、接続ライン4によって電気供給ネット6に接続することができる。尤も、詳述する本発明の基礎をなす状況は、風力発電装置1が電気供給ネット6に接続されていないことを出発点とするが、その様子は中断を示す障害矢印(Stoerungspfeil)8で象徴的に示されている。
【0034】
従って、風力発電装置1は、完全に又は少なくともほぼ完全に建設されているが、電気供給ネット6にはまだ接続されていない状態にある。ここで、風力発電装置1を水分の析着又は水分の侵入から保護するためにないし場合によっては風力発電装置から水分を除去するため、風力発電装置は、水分防護を目的とした自家需要のための電力を生成するために、運転開始される(運転状態にされる)ことができる。尤も、風力発電装置を運転開始するためにはエネルギを既に必要としているが、電気供給ネットへの接続がされていないため電気供給ネットからは獲得することができない。この目的のために、補助発電機2は、運転開始され、風力発電装置1を始動するために必要な電力を風力発電装置1に供給することができる。補助発電機2と風力発電装置1とのそのような接続は、
図2ではスイッチS10で示されているが、スイッチ10はこの目的のために閉じられる。かくして、風力発電装置は運転開始されることができ、次いで、そのコンポーネント(構成要素;複数)は、風力発電装置1が相応の運転状態になるとすぐに、風力発電装置自身から電力の供給を受けることができる。そして、補助発電機2は再びスイッチオフされることができ、他方、風力発電装置は更に運転を続行する。
【0035】
そのようなシーケンス(経過)の一例を
図3のフローチャートで説明する。
図3には、予め設定可能な検査間隔(インターバル)で即ち例えば一時間おきに実行されるシーケンスループ(Ablaufschleife)30が示されている。
【0036】
予め設定可能な検査間隔即ちシーケンスループ30の実行が反復される時点は、待機ブロックT(Warteblock)32に記憶される。この待機ブロック32はスタートブロック32と見なすことも可能である。この場合、シーケンスループ30は予め設定可能な検査間隔で夫々実行され、かくして、反復される。そのような予め設定可能な検査間隔ないし相応の待機時間(インターバル)が終了すると、照会ブロック34において、風力発電装置1が作動しているか否か、即ち運転状態にあるか否か、とりわけ電力も生成しているか、少なくとも運転の維持に必要とされる程度の電力を生成しているか否かについて照会が実行される。照会ブロック34でのこの照会が肯定(イエス)の場合、照会ブロック34は分岐して待機ブロックT32に戻る。
【0037】
照会ブロック34での照会の結果が否定(ノー)の場合、即ち、風力発電装置1が作動していない場合、シーケンスループ30は先に進み、まず、補助発電機2即ち例えば
図2のディーゼル発電機2の運転が開始される。このことは、補助発電機−オン−ブロック36に示されている。
【0038】
ブロック36に応じてスイッチオンされた補助発電機2が十分に電力を生成可能になるとすぐに、風力発電装置1はスイッチオンされるが、このことは運転開始ブロック38に示されている。
【0039】
かくして、風力発電装置1は起動(立上り)され、最終的にその運転を自ら維持することが可能になり、その運転に必要なすべての電力を自ら生成することが可能になる。
【0040】
これに応じて、補助発電機2は再びスイッチオフ可能になるが、このことは補助発電機−オフ−ブロック40に示されている。かくして、補助発電機2はスイッチオフされ、最早、風力発電装置1の運転ないし起動のために燃料又はその他の備蓄エネルギを更に消費する必要はない。
【0041】
ここで、風力発電装置1が運転状態にありかつ補助発電機2が再びスイッチオフされると、シーケンス(経過)はシーケンスループ30において待機ブロック32に戻る。待機時間ないし予め設定可能な検査間隔が終了すると、待機ブロック32はシーケンスループ30のシーケンスを新たに開始する。
【0042】
原理的に、風力発電装置は自ら運転状態を持続的に、理想的にはまだ形成されていない電気供給ネットとの接続を行うために最終的に保守要員が訪れるまで、維持することができる。尤も、その間に、風力発電装置が最早自ら運転状態を維持することができなくなる程に風速が低下すること、又は差し当たり更なる運転の妨げになる障害(事故)が発生することがあり得る。その場合、風力発電装置は自動的にスイッチオフ(シャットダウン)する。とりわけ、ロータブレードが風の方向に(風に対し平行に)旋回されると、風力発電装置は運転停止され、その際、そのようなロータブレード調整を最早制御することはできない。この場合、補助発電機を利用して再び風力発電装置を直ちに運転開始することは殆ど効果的ではないであろう。(なぜなら、)結局のところ、風力発電装置はまさに運転状態にあったのであり、水分は除去されているであろう。更に、風力発電装置は、まさに風不足によりスイッチオフ(シャットダウン)されたのであれば、十中八九、最早運転状態を維持することはできないであろう。
【0043】
この理由から、運転開始の試みが再び実行される前に、まず、所定の時間の間待機することが提案される。原理的には、この待機は、例えば1日以上のような、相当により長期のものとすることも可能である。例えば1日周期での運転開始は、風力発電装置の水分除去ないし乾燥維持のために十分であり得るであろう。尤も、1日後に運転開始を試みるまさにその時点において風が存在しない場合は問題が生じる。従って、そのような運転開始再試行を時間周期で実行することが提案される。
【0044】
風が存在しないために再運転開始(運転再開)が失敗する場合、とりわけ運転開始が複数回連続して失敗する場合、一実施例に応じ、電力の供給がなければ水分が風力発電装置に析着又は侵入する危険がある場合、風力発電装置の少なくとも2〜3のコンポーネント(構成要素)に電力を供給するために、補助発電機をより長時間運転させることが提案される。
【0045】
有利には、補助発電機は、風力発電装置の建設後風力発電装置の多数のコンポーネントの機能検査を実行するために使用されることができる。そのような補助発電機が存在する場合、風が僅かしか存在しない場合に機能検査を実行することは、場合によっては有効であり得る。
【0046】
かくして、本発明は、建設されているが未だ電気供給ネットに接続されていない風力発電装置を水分の侵入及び/又は析着から保護する簡単かつ合理的な方法を提供する。従って、風力発電装置は、それ自身が生成したエネルギが供給され、このようにして、とりわけ電子コンポーネントに対する水分及び対応する損傷が阻止される。これは、ネット接続を利用できない、とりわけネット接続をまだ利用できない風力発電装置に対して、又は、給電許可をまだ受けておらず、そのため何れにせよ電気供給ネットにまだ電気的に接続されていない風力発電装置に対して提案される。そのような運転によって種々の結果が達成されることが望まれる。
【0047】
1つの基本的(原理的)機能は、風力発電装置を、装置制御システムが給電されておりかつシステム(複数)即ち風力発電装置のコンポーネント(複数)の自己加熱が行われる正常運転類似状態にもたらすことである。これによって、風力発電装置における結露と多くの水分が回避されることが望まれる。水分は、電子的及び電磁的コンポーネントを損傷し、それらの機能を損なうことがあり得る。例えば、装置制御システムには、電子的構成要素を備えた回路基板が組み込まれているが、これらは水分によってその機能が損なわれる可能性があり、かくして、装置信頼性(安全性)が制限される可能性がある。物理的変量(パラメータ)の検出をその役割とする多くのセンサは、水の侵入によって損傷を受け又は故障する可能性がある。
【0048】
更なる1つの基本的機能は、装置配向(方位)制御即ち風の方向への風力発電装置の配向(方位)合わせを相応のアジマス(方位)調整モータによって可能にすることである。風の方向への風力発電装置の配向(方位)合わせは、風力発電装置のナセルの領域における水分侵入を回避するための、基本的前提条件であり得る。機械構造体は、正常運転(モード)に最適に適合するように開発されていることがある。従って、機械構造体は、基本的に、適切に運転されて、とりわけ適切に方向(方位)制御されて、電力を生成する風力発電装置を前提とする。そのような正常運転(モード)において、風力発電装置は風の方向に合わせられているため、装置の外装(外殻)及び密閉システムはこの方向からの水分侵入を阻止する。このことを前提とすると、他の方向から風や雨が吹き付けられる場合、ナセルの密閉性は不適切である可能性がある。水分侵入は、電子的及び電磁的コンポーネントの領域においては、障害を引き起こす可能性がある。
【0049】
更なる1つの基本的機能は、装置制御システムが給電されているように風力発電装置を正常運転類似状態で運転し、かつ、複数の装置コンポーネントの機能、とりわけ、給電に必要なコンポーネントに至るまでの、全ての装置コンポーネントの機能を検査することである。かくして、そのような局面において、保守要員によって、相応の装置制御システム(複数)の機能が検査され、故障があれば修理されることができる。これによって、ネットに接続されるまでの期間に故障が発見されて修理が可能である場合、更なる(次の)運転開始時に、時間的な利点を達成することができる。かくして、計画的保守(メンテナンス)は、ネット接続がなくても実行可能であり、従って、ネット接続の前に実行される場合は、保守(サービスの)投入時間を減じる。
【0050】
風力発電装置の運転は、装置内部において、とりわけ装置制御システム、電力(パワー)生成システム、電力(パワー)伝送システム及び給電システムの領域に、熱の放出による自己加熱を引き起こす。
【0051】
ナセルの内部の装置制御システムの領域には、調整モータの作動によって生じ及び制御盤への給電によって生じる熱生成(発熱)がある。ナセル内部の加熱(温度上昇)に対する本質的寄与(主因)は発電機によってもたらされる。ロータ回転モーメント及び回転数が電力に変換される際に、並びに、該電力が給電ユニットに伝送される際に、熱の形態で現れる損失が生じる。電力伝送システムのコンポーネントにおいて、存在する場合はとりわけ整流器において、同様に主として熱の形態で現れるないし熱に変換される付加的な損失が生じる。
【0052】
言及すべき更なる構成要素は風力発電装置のタワーに存在する。一実施形態では、パワーキャビネットに収容されているすべての給電ユニット、とりわけインバータは、標準的な態様で、チョッパ抵抗ないしチョッパ抵抗バンクが配される。これについては、単純化すれば、発電機の運転中に生成されるがネットには給電することができない過剰なエネルギを熱に変換するという目的を有する抵抗が想定される。これは、主として、いわゆるFRT特性の機能のために利用される。これは、電気供給ネットにおける障害発生時、たとえその際短時間でも電気ネットにエネルギを供給できないとしても、運転を継続することができる風力発電装置の特性として理解されるものである。このエネルギは、このチョッパ抵抗によって熱に変換されることができ、他方、風力発電装置はその他の点では、即ち給電以外については、実質的に正常に運転を継続することができる。これは、障害(系統擾乱)時運転継続特性ないし性能と称されるが、これについては、ドイツにおいても英語の用語“Fault Right Through”、略してFRTが定着している。
【0053】
電力限界(リミット)の検出は、相応の(対応する)インバータの直流中間回路の中間回路電圧の測定によって実行することができる。この中間回路電圧が予め設定可能な限界値を上回ると、チョッパ抵抗が活性化(作動)され、これに応じて電力が変換ないし消滅され、相応に設定された限界が守られる。この水分防護運転(モード)中にチョッパ抵抗の熱容量を超過しないようにするために、風力発電装置に全体として関与している複数のチョッパ抵抗を複数のグループに組分けし、順次的にオンオフ切り替えするよう構成することができる。これに応じて、加熱された抵抗は、それらの熱受容能を回復するために、そのような組分けに応じて、グループ毎に冷却することも可能である。そのような制御は、例えば、それとは別にFACTS電力制御システムの役割も受け持つ相応の電力制御システム制御盤によって監視することができる。
【0054】
このように生成される熱は、相応の(関連する)構成要素が配設されているタワーの下部領域において、周囲温度を上昇するために使用することができ、従って、電子的構成要素の結露を阻止する。
【0055】
上述の水分防護運転(モード)は、自己給電運転又は自己給電モード、英語では“Self-Supply-Mode”、と称することもできる。水分防護運転(モード)は(風力発電)装置の自己給電に役立つが、スイッチキャビネット内の加熱装置を含む可能な限りすべての装置部品(構成要素)が電圧印加(電力供給)される。従って、水分防護運転(モード)は、風力発電装置の運転停止時間がより長期に及ぶことによる電気的コンポーネントの損傷を予防(防止)するために役立つ。かくして、この“Self-Supply-Mode”は(風力発電)装置の自己給電に役立ち、従って、(風力発電)装置は、ネットに給電していないことを除き、正常運転状態にある。この場合、風力発電装置は、自立的(自給自足的)に作動し、それ自身が消費する程度のエネルギないし電力のみを生成する。
【0056】
すべての装置部品(構成要素)が可能な限り電圧印加(電力供給)される。これによって、スイッチキャビネット内の加熱装置も機能し、更に、発電機が加熱される。この発電機は、
図2にディーゼル発電機として例示された独立の補助発電機とは区別されるべきものである風力発電装置の発電機である。この自己給電モードが活性化(作動)されると、風力発電装置を運転状態に維持する機構も一層大がかりになり得る。なぜなら、例えば風不足又は事故(障害)の場合、上述の補助発電機のような電流(電力)生成装置によって、風力発電装置は新たに始動される必要があるからである。
【0057】
例えば、複数の風力発電装置が、例えば11kW以上の出力で、1つの比較的小型の緊急電源ユニットによって始動されることも可能である。これらの(風力発電)装置は、風不足又はその他の事象ないし状態のために再び停止及びスイッチオフされるまで、凡そ30kWの最大出力で運転状態を維持する。
【0058】
一実施形態により、スイッチキャビネットに設けることが可能であり、緊急電源分配(配電)システムに接続され、風力発電装置の装置制御システムにスイッチを介して電気供給ネットからの電圧(電力)を供給するスイッチ手段が設けられる。その限りにおいて、上述の他の実施形態とは異なり、まず、機能的な(funktionierend)ネット接続が存在するであろう。ネット電圧が不足(低下)すると、制御系統(Steuerstrang)への接続は分離(切断)され、他方、電圧が復旧すると、とりわけ電気供給ネットにおける相応の問題が解決されている場合、ネット電圧の再投入が実行される。更に、ディーゼル発電機、又は複数の風力発電装置のための中央ディーゼル発電ユニットとして構成されることも可能なディーゼル発電ユニットへの接続が実行される。かくして、ネット給電と補助給電との間の切換えが達成され、従って、電気供給ネットとディーゼル発電ユニットとの間の切換えが実行される。更に、パワースイッチ(Leistungsschalter)を備えた手動の(マニュアルの)遮断器(Abschaltvorrichtung)を備えることも可能である。更に、風力発電装置の他の構成要素と通信するための出力(アウトプット)インターフェースを含む上位の制御システムが設けられる。更に、制御に関連するデータを交換するためのいわゆるScadaシステムとの通信を形成することも可能である。そのような入出力インターフェースを介して、電気供給ネット又は例示したディーゼル発電ユニットによる給電の切換えを実行することができる。電気供給ネットを介しての(からの)給電は、風力発電装置が既にネットに接続されているが、給電の準備がまだできていないか、給電の許可がまだ得られていない場合、提供される。
【0059】
更に、一般的にUSVとも称される無中断電流(電力)供給(連続電力供給)を装置制御システムのために設けることが提案される。これは、自己給電運転(モード)ないしSelf-Supply-Modeのためにも使用することができる。このUSVは、装置制御システム即ち風力発電装置の制御システムに、短時間のネット障害(遮断)の際に、電圧(電力)を供給するものであり、従って、自己給電運転(モード)のためにも、提案される。この自己給電運転(モード)は、風力発電装置がスイッチオフされることなく当該USVが装置制御システムにも電圧(電力)を供給することが可能なものである。エネルギ蓄積装置としては、USVは、周期的に(定期的に)交換が必要な追加の蓄電装置を、たとえそれが可能である場合であっても、使用するのではなく、寧ろ、装置制御システムの相応のインバータの直流電圧中間回路をエネルギ供給システムとして使用する。