(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オーステナイト系ステンレス鋼が、ニッケル含有量10.5%以上のオーステナイト系ステンレス鋼から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の遠心ポンプ。
前記オーステナイト系ステンレス鋼が、ニッケル含有量10.5〜16%のオーステナイト系ステンレス鋼から構成されていることを特徴とする請求項4に記載の遠心ポンプ。
前記オーステナイト系ステンレス鋼が、SUS305、SUS308、SUS309、SUS316、SUS317から選択したオーステナイト系ステンレス鋼から構成されていることを特徴とする請求項5に記載の遠心ポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の遠心ポンプでは、頑丈な気密構造ではない。例えば、内燃機関などの冷却水、エアコン・冷凍機などの冷媒循環回路などに用いられる冷媒などの流体、可燃性流体、毒性を有する流体などを閉回路内で循環させるためには、遠心ポンプの耐圧性・気密性に課題がある。
【0006】
また、従来の遠心ポンプの構造では、モーターステーターであるコイル部の脱着ができない。このため、耐圧性、気密性が求められる遠心ポンプに使用するために金属製のケース、配管などを使用しようとしても、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができない。
【0007】
さらに、羽根車部材の軸受が、羽根車部材の軸の片方側に配置した軸受からなり、不安定であり、耐久性、静音性に問題がある。
【0008】
さらに、このような従来の構造の遠心ポンプでは、軸受が流体中にあり、潤滑油を使用できないので、羽根車部材の回転によって軸部材と羽根車部材が摩耗損傷することになり、羽根車部材にガタツキや偏心が生じて、所期の目的とするポンプ性能を保持することが困難となってしまう。
【0009】
本発明は、このような現状に鑑み、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができ、気密性の高い金属ケースと配管が使用でき、例えば、冷媒、可燃性流体、毒性を有する流体などを閉回路内で循環させ、その耐圧性・気密性・耐腐食性が求められる遠心ポンプに使用することが可能で、ポンプ性能に優れた遠心ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の遠心ポンプは、
羽根車部材と羽根車部材の下方に設けられたロータマグネットとから構成される回転羽根部材と、
前記回転羽根部材を収容する金属製の本体ケースと、
前記ロータマグネットの周囲に位置するように配置され、回転羽根部材を回転させるコイル部とを備え、
前記本体ケースが、
上側本体ケースと、
前記上側本体ケースに固定された下側本体ケースとを備え、
前記下側本体ケースが、
前記下側本体ケースの外周から、内周側に水平に延びた羽根収容部と、
前記羽根収容部から下方に延びたロータマグネット収容部とを
備え、
前記羽根車部材に流体を導入するために、本体ケースに連通するように設けられた金属製の吸込側継手部材と、
前記羽根車部材の回転により流体を排出するために、本体ケースに連通するように設けられた金属製の吐出側継手部材と、
前記上側本体ケースと下側本体ケースとで形成された内部空間を仕切り、羽根ケースの上方に流体導入流路を形成するとともに、羽根ケースの下方に回転羽根部材を収容する回転部収容空間を形成する羽根ケースとを備え、
前記金属製の吸込側継手部材が、上側本体ケースの側周壁の開口部に固定され、
前記金属製の吐出側継手部材が、上側本体ケースの側周壁と羽根ケースの側周壁の開口部に固定され、
ていることを特徴とする。
【0011】
このように構成することによって、本体ケースが、上側本体ケースと、上側本体ケースに固定された下側本体ケースとを備え、下側本体ケースが、下側本体ケースの外周から、内周側に水平に延びた羽根収容部と、羽根収容部から下方に延びたロータマグネット収容部とを備えている形状である。
【0012】
従って、この上側本体ケースと、上側本体ケースに固定された下側本体ケースとの間に形成された空間内に、羽根車部材と羽根車部材の下方に設けられたロータマグネットとから構成される回転羽根部材をコンパクトに収容することができる。
【0013】
しかも、ロータマグネットの周囲に位置するように配置され、回転羽根部材を回転させるコイル部を備えるので、ロータマグネットの周囲に位置するように配置されたコイル部を起電することによって発生する磁路によって、下側本体ケースのロータマグネット収容部を介して、羽根車部材の下方に設けられたロータマグネットに作用することになる。
【0014】
これによって、安定的に回転羽根部材を回転させることが可能となる。従って、駆動モーター(コイル部とロータマグネット)の作動ロスを生じることがなく、ポンプ性能に優れた遠心ポンプを提供することができる。
【0015】
また、金属製の本体ケースを構成する上側本体ケースと、下側本体ケースとを、例えば、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができ、密封状態で固着することができる。
【0016】
すなわち、これらの接続部に、溶接やろう付などの高い気密性と保持強度を持った接合方法が可能な構造となっている。
【0017】
従って、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができるので、例えば、冷媒、可燃性流体、毒性を有する流体などを閉回路内で循環させその耐圧性・気密性・耐腐食性が求められる遠心ポンプを提供することができる。
【0018】
また、本発明の遠心ポンプは、
前記下側本体ケースが、金属製のプレス成形品から構成されるとともに、
前記下側本体ケースが、非磁性金属から構成されていることを特徴とする。
【0019】
このように下側本体ケースが、金属製のプレス成形品から構成されているので、下側本体ケースの外周から、内周側に水平に延びた羽根収容部と、羽根収容部から下方に延びたロータマグネット収容部とを備える複雑な形状の下側本体ケース(ロータケース)を容易に、かつ、高品質で安価に作製することが可能である。
【0020】
また、下側本体ケースが、非磁性金属から構成されているので、ロータマグネットの周囲に位置するように配置されたコイル部を起電することによって発生する磁路が阻害されることなく、非磁性の下側本体ケースのロータマグネット収容部を介して、羽根車部材の下方に設けられたロータマグネットに作用することになる。これによって、安定的に回転羽根部材を回転させることが可能となる。
【0021】
従って、駆動モーター(コイル部とロータマグネット)の作動ロスを生じることがなく、ポンプ性能に優れた遠心ポンプを提供することができる。
【0022】
この場合、非磁性金属としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム、真鍮などが挙げられる。
【0023】
また、本発明の遠心ポンプは、前記非磁性金属が、オーステナイト系ステンレス鋼から構成されていることを特徴とする。
【0024】
このように、非磁性金属が、オーステナイト系ステンレス鋼から構成されていれば、金属製の本体ケースを構成する上側本体ケースと、下側本体ケースとを、例えば、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができ、密封状態で固着することができる。
【0025】
また、オーステナイト系ステンレス鋼であれば、絞り加工性、機械的強度に優れるので、下側本体ケースの外周から、内周側に水平に延びた羽根収容部と、羽根収容部から下方に延びたロータマグネット収容部とを備える複雑な形状の下側本体ケース(ロータケース)を、プレス加工によって容易に、かつ、高品質で安価に作製することが可能である。
【0026】
しかも、オーステナイト系ステンレス鋼は、絞り加工性に優れるので、下側本体ケースの厚さを薄くできるので、ロータマグネットの周囲に位置するように配置され、回転羽根部材を回転させるコイル部を起電することによって発生する磁路が、阻害されることがなく、非磁性の下側本体ケースのロータマグネット収容部を介して、羽根車部材の下方に設けられたロータマグネットに作用することになる。これによって、安定的に回転羽根部材を回転させることが可能となる。
【0027】
従って、駆動モーター(コイル部とロータマグネット)の作動ロスを生じることがなく、ポンプ性能に優れた遠心ポンプを提供することができる。
【0028】
しかも、オーステナイト系ステンレス鋼は、耐食性にも優れるので、例えば、冷媒、可燃性流体、毒性を有する流体などを閉回路内で循環させその耐圧性・気密性・耐腐食性が求められる遠心ポンプを提供することができる。
【0029】
また、本発明の遠心ポンプは、前記オーステナイト系ステンレス鋼が、ニッケル含有量10.5%以上のオーステナイト系ステンレス鋼から構成されていることを特徴とする。
【0030】
すなわち、下側本体ケースの外周から、内周側に水平に延びた羽根収容部と、羽根収容部から下方に延びたロータマグネット収容部とを備える複雑な形状の下側本体ケースを作製する場合、前述したように、下側本体ケースを、オーステナイト系ステンレス鋼から構成するのが、容易に、かつ、高品質で安価に作製するためには望ましい。い。
【0031】
しかしながら、例えば、18−8ステンレス鋼と呼ばれるNi含有量が8%であるSUS304などの通常のオーステナイト系ステンレス鋼では、絞り加工などのように塑性加工を行うと、応力誘起マルテンサイトが生じて、マルテンサイト化して磁性を帯びてしまうことがある。
【0032】
このため、ロータマグネットの周囲に位置するように配置され、回転羽根部材を回転させるコイル部を起電することによって発生する磁路が、磁性を帯びた下側本体ケースによって阻害されてしまうことになる。
【0033】
これによって、下側本体ケースのロータマグネット収容部を介して、羽根車部材の下方に設けられたロータマグネットへの作用が阻害されることになる。
【0034】
従って、駆動モーター(コイル部とロータマグネット)の作動ロスを生じることになって、ポンプ性能が低下することにもなってしまう。
【0035】
これに対して、本発明のように、ニッケル含有量10.5%以上のオーステナイト系ステンレス鋼から構成されていれば、絞り加工などのように塑性加工を行っても、応力誘起マルテンサイトが生じにくく、マルテンサイト化して磁性を帯びるのが避けられる。
【0036】
これによって、ロータマグネットの周囲に位置するように配置されたコイル部を起電することによって発生する磁路が阻害されることなく、非磁性の下側本体ケースのロータマグネット収容部を介して、羽根車部材の下方に設けられたロータマグネットに作用することになる。これによって、安定的に回転羽根部材を回転させることが可能となる。
【0037】
従って、駆動モーター(コイル部とロータマグネット)の作動ロスを生じることがなく、ポンプ性能に優れた遠心ポンプを提供することができる。
【0038】
また、本発明の遠心ポンプは、前記オーステナイト系ステンレス鋼が、ニッケル含有量10.5〜16%のオーステナイト系ステンレス鋼から構成されていることを特徴とする。
【0039】
このような範囲に、オーステナイト系ステンレス鋼のニッケル含有量があれば、絞り加工などのように塑性加工を行っても、応力誘起マルテンサイトが生じにくく、マルテンサイト化して磁性を帯びるのが避けられる。
【0040】
これによって、下側本体ケースのロータマグネット収容部を介して、羽根車部材の下方に設けられたロータマグネットへの作用が阻害されるのを避けることができる。
【0041】
従って、駆動モーター(コイル部とロータマグネット)の作動ロスを生じることがなく、ポンプ性能が低下することもない。
【0042】
なお、ニッケル含有量が10.5%を下回れば、絞り加工などのように塑性加工を行うと、応力誘起マルテンサイトが生じて、マルテンサイト化して磁性を帯びてしまい、逆に、ニッケル含有量が16%を超えれば、ニッケルは高価であるので、コストが高くなるからである。
【0043】
このようなニッケル含有量10.5〜16%のオーステナイト系ステンレス鋼としては、特に限定されるものではないが、本発明の遠心ポンプの用途に応じて、耐腐食性、加工性、機械的強度などを考慮して、例えば、SUS305、SUS308、SUS309、SUS316、SUS317から選択したオーステナイト系ステンレス鋼から構成すればよい。
【0045】
このように構成することによって、金属製の本体ケース(上側本体ケース、下側本体ケースのいずれか、またはその両方)と、羽根ケースとの接合部を、例えば、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができ、密封状態で固着することができる。
【0046】
また、金属製の吸込側継手部材と本体ケースとの接合部、および、吐出側継手部材と本体ケースとの接合部を、例えば、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができ、密封状態で固着することができる。
【0047】
すなわち、これらの接続部に、溶接やろう付などの高い気密性と保持強度を持った接合方法が可能な構造となっている。
【0048】
従って、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができるので、気密性の高い金属ケースと配管が使用でき、例えば、冷媒、可燃性流体、毒性を有する流体などを閉回路内で循環させ、その耐圧性・気密性・耐腐食性が求められる遠心ポンプを提供することができる。
【0049】
また、上側本体ケースと下側本体ケースとで形成された内部空間を仕切り、上方に流体導入流路を形成するとともに、下方に回転羽根部材を収容する回転部収容空間を形成する羽根ケースを備えるので、流体の経路を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、本体ケースが、上側本体ケースと、上側本体ケースに固定された下側本体ケースとを備え、下側本体ケースが、下側本体ケースの外周から、内周側に水平に延びた羽根収容部と、羽根収容部から下方に延びたロータマグネット収容部とを備えている形状である。
【0051】
従って、この上側本体ケースと、上側本体ケースに固定された下側本体ケースとの間に形成された空間内に、羽根車部材と羽根車部材の下方に設けられたロータマグネットとから構成される回転羽根部材をコンパクトに収容することができる。
【0052】
しかも、ロータマグネットの周囲に位置するように配置され、回転羽根部材を回転させるコイル部を備えるので、ロータマグネットの周囲に位置するように配置されたコイル部を起電することによって発生する磁路によって、下側本体ケースのロータマグネット収容部を介して、羽根車部材の下方に設けられたロータマグネットに作用することになる。
【0053】
これによって、安定的に回転羽根部材を回転させることが可能となる。従って、駆動モーター(コイル部とロータマグネット)の作動ロスを生じることがなく、ポンプ性能に優れた遠心ポンプを提供することができる。
【0054】
また、金属製の本体ケースを構成する上側本体ケースと、下側本体ケースとを、例えば、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができ、密封状態で固着することができる。
【0055】
すなわち、これらの接続部に、溶接やろう付などの高い気密性と保持強度を持った接合方法が可能な構造となっている。
【0056】
従って、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができるので、例えば、冷媒、可燃性流体、毒性を有する流体などを閉回路内で循環させ、その耐圧性・気密性・耐腐食性が求められる遠心ポンプを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
(実施例1)
【0059】
図1は、本発明の遠心ポンプの縦断面図、
図2は、
図1の本発明の遠心ポンプの部分拡大断面図、
図3は、
図1の本発明の遠心ポンプの内部空間S1、流体導入流路84、回転部収容空間S2の配置を説明する概略断面図である。
なお、本明細書中、「上側」、「上部」、「上方」、「下側」、「下部」、「下方」などの上下方向を示す用語は、各図面において、上下方向を示すものであり、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0060】
図1〜
図2においては、符号10は、全体で本発明の遠心ポンプを示している。
なお、
図3中、説明の便宜上、本体ケース34、上側本体ケース36、下側本体ケース48、羽根ケース68と、吸込側継手部材42、吐出側継手部材46のみを示しており、その他の部材を省略して示している。
【0061】
図1〜
図2に示したように、本発明の遠心ポンプ10は、回転羽根部材12を備えている。この回転羽根部材12は、
図1〜
図2に示したように、円管状の軸受け部14の上部に、外周方向に放射状に延設された複数枚の羽根車部材16を備えている。
【0062】
なお、この羽根車部材16の枚数は、遠心ポンプ10の用途や、必要とするポンプ能力に応じて選択すれば良く、特に限定されるものではない。
【0063】
図1に示したように、羽根車部材16は、軸受け部14から上部外周方向に延設された基端部分18と、この基端部分18から上方に外周方向に拡径した拡径部20と、この拡径部20から外周方向に延設された外側羽根部22とから構成されている。
【0064】
羽根車部材16の形状をこのような形状とすることで、羽根車部材16の回転による外側羽根部22の作用によって、吐出能力を向上することができる。
【0065】
また、回転羽根部材12は、軸受け部14の外周に一定間隔離間して、また、基端部分18の外周にロータマグネット収容部24が形成されている。ロータマグネット収容部24は、基端部分18の下部から下方に延設されたフランジ部26と、フランジ部26の先端が拡径した支持部28を備えている。
【0066】
そして、これらのフランジ部26と支持部28とから構成される装着部30に、環状の永久磁石からなるロータマグネット32の嵌着孔32aが嵌着されている。これにより、拡径した支持部28によって、ロータマグネット32の抜け落ちが防止されるように構成されている。
【0067】
また、本発明の遠心ポンプ10は、
図1に示したように、回転羽根部材12を収容する金属製の本体ケース34を備えている。本体ケース34は、上側本体ケース36を備えており、上側本体ケース36は、頂壁38と、頂壁38の外周から下方に延設された側周壁40とから構成されている。
【0068】
そして、
図1に示したように、上側本体ケース36の側周壁40には、金属製の吸込側継手部材42を固定するための開口部40aが形成されたフランジ44が形成されている。
図1に示したように、このフランジ44に、吸込側継手部材(吸い込み側導管)42が、例えば、溶接・ろう付・溶着などによって、密封状態で固着されている。これにより、本体ケース34内に、吸込側継手部材42が連通するように構成されている。
【0069】
また、
図1に示したように、上側本体ケース36の側周壁40には、吸込側継手部材42を固定するための開口部40aと対向するように、金属製の吐出側継手部材(吐出側導管)46を固定するための開口部40bが形成されたフランジ50が形成されている。
【0070】
なお、この場合、フランジ44とフランジ50の位置は、限定されるものではなく、中心角度をずらして(例えば、45度中心角度をずらして)配置することもでき、ずらし角度は、特に限定されるものではなく、用途などに応じて設計変更することが可能である。
【0071】
図1に示したように、このフランジ50に、吐出側継手部材46が、例えば、溶接・ろう付・溶着などによって、密封状態で固着されている。これにより、本体ケース34内に、吐出側継手部材46が連通するように構成されている。
【0072】
また、
図1、
図2に示したように、本体ケース34は、下側本体ケース(ロータケース)48を備えている。そして、上側本体ケース36の側周壁40の下端51の内壁に、下側本体ケース48の外周フランジ52を、例えば、溶接・ろう付・溶着などによって、密封状態で固着されている。これにより、
図3(A)に示したように、本体ケース34内に、上側本体ケース36と下側本体ケース48で囲まれた内部空間S1が形成されている。
【0073】
この下側本体ケース48は、
図1に示したように、下側本体ケース48の外周フランジ52から、内周側に略水平に延びた羽根収容部54と、この羽根収容部54から下方に延びたロータマグネット収容部56とを備えている。さらに、このロータマグネット収容部56の下方に、有底筒状の下側軸受部材収容部58が形成されている。
【0074】
そして、下側軸受部材収容部58に、下側軸受部材60が、例えば、圧入などによって嵌着されている。この下側軸受部材60に形成された軸穴62に、軸部材64の下端部66が、例えば、圧入などによって、スラストワッシャー61を介して、軸支されるように固定されている。
【0075】
また、この回転羽根部材12の軸受け部14内に、回転羽根部材12が回転できるように軸部材64が挿通されている。
【0076】
さらに、
図1に示したように、本体ケース34は、羽根ケース68を備えている。この羽根ケース68は、吸込側継手部材42側において、この羽根ケース68の外周フランジ70が、上側本体ケース36の側周壁40のフランジ44の下方に、例えば、溶接・ろう付・溶着などによって、密封状態で固着されている。
【0077】
また、羽根ケース68の外周フランジ70は、上側本体ケース36の側周壁40のフランジ44の下方に固着するための固着部70aと、この固着部70aから上方に鉛直方向に屈曲するように延設された当接部70bを備えている。
【0078】
この当接部70bは、吸込側継手部材42の本体ケース34側の先端42aに当接する位置まで延設されている。また、この場合、当接部70bは、吸込側継手部材42の内径部分までは延設されておらず、吸込側継手部材42からの流体の流入が阻害されないように構成されている。
【0079】
これにより、吸込側継手部材42の本体ケース34側の先端42aが、この羽根ケース68の外周フランジ70の当接部70bに当接して、本体ケース34の側周壁40の吸込側継手側の開口部40aへの吸込側継手部材42の挿入位置が規定されることになる。
【0080】
従って、本体ケース34の側周壁40の吸込側継手側の開口部40aへの吸込側継手部材42の挿入位置代が不足して、フランジ44への吸込側継手部材42の固着の強度不足が発生しないように構成されている。
【0081】
また、この構成によって、本体ケース34の側周壁40の吸込側継手側の開口部40aへ吸込側継手部材42を挿入し過ぎることにより、羽根ケース68の側周壁72との間の距離が小さくなって、後述するように、吸込側継手部材42からの流体の流入が阻害されることがない。
【0082】
一方、羽根ケース68は、吐出側継手部材46側において、その側周壁72に開口部72aが形成され、この側周壁72の開口部72aの周囲が、本体ケース34の側周壁40のフランジ50に、吐出側継手部材46とともに、例えば、溶接・ろう付・溶着などによって、密封状態で固着されている。
【0083】
また、羽根ケース68は、外周フランジ70から上方に延びた側周壁72と、側周壁72から、羽根車部材16の外側羽根部22に沿うように水平方向内側に延設された延設部74を備えている。
【0084】
このような形状とすることで、羽根ケース68と下側本体ケース48の羽根収容部54との間に、羽根車部材16を収容することができるようになっている。
【0085】
そして、上側本体ケース36の頂壁38の中央部分に下方に突出した突設部38aに、上側軸受部材78が、固定ホルダー71によって、羽根ケース68の延設部74の内周側開口部74a内に下方に突出するように固定されている。
【0086】
これにより、上側本体ケース36の頂壁38の突設部38aによって、上側軸受部材78が安定して支持され、回転羽根部材12の回転による偏心や振動を防止することができる。
【0087】
この上側軸受部材78に形成された軸穴80に、回転羽根部材12の軸受け部14内に挿通された軸部材64の上端部82が、例えば、圧入などによって、スラストワッシャー73を介して、軸支されるように固定されている。
【0088】
また、
図1に示したように、羽根ケース68の側周壁72の径は、上側本体ケース36の側周壁40の径より小さく形成されているとともに、羽根ケース68の側周壁72の高さは、上側本体ケース36の側周壁40の高さより小さく形成されている。
【0089】
これにより、
図3(B)に示したように、羽根ケース68によって、上側本体ケース36と下側本体ケース48とで形成された内部空間S1が仕切られて、上方に流体導入流路84が形成されるとともに、下方に回転羽根部材12を収容する回転部収容空間S2が形成されている。
【0090】
これにより、
図1の矢印Aで示したように、吸込側継手部材42から吸い込まれた流体が、羽根ケース68と上側本体ケース36によって形成された流体導入流路84から、羽根ケース68の延設部74の内周側開口部74aを通過する。そして、内周側開口部74aを通過した流体は、羽根ケース68と下側本体ケース48によって形成された回転部収容空間S2に導入されるようになっている。
【0091】
さらに、
図1に示したように、下側本体ケース48のロータマグネット収容部56の外周に、脱着手段を構成する金属製の本体ケース側固定金具96が、例えば、溶接・ろう付・溶着・圧入などによって固定されている。
【0092】
この本体ケース側固定金具96は、
図1に示したように、内周側に屈曲して突設するように係止部98が形成されている。
【0093】
また、
図1、
図2に示したように、本発明の遠心ポンプ10は、ロータマグネット32の周囲に位置するように、下側本体ケース48のロータマグネット収容部56の外周に配置され、回転羽根部材12を回転させるコイル部104を備えている。コイル部104は、ボビンケース106に巻かれた巻線108から構成される複数個のコイル110が、電子制御を行うための電子基板112の上に、図示しないが、周方向に一定間隔で離間して設けられている。
【0094】
そして、これらのコイル110が、略円筒形状のコイルカバー本体114の内部に形成されたコイル装着部114a内に嵌合されている、そして、コイル110が、電子基板112とともに、蓋形状のコイルカバー111によって、コイルカバー本体114内に固定されている。
【0095】
また、
図1に示したように、コイル部104の中央部分には、下側本体ケース48のロータマグネット収容部56と下側軸受部材収容部58とを収容するための収容用開口部118が形成されている。
【0096】
また、電子基板112の中央部分には、下側本体ケース48のロータマグネット収容部56の下側軸受部材収容部58を収容するための収容用開口部112aが形成されている。
【0097】
一方、コイルカバー本体114の中央部には、開口部114bが形成されており、この開口部114bを介して、下側本体ケース48のロータマグネット収容部56と下側軸受部材収容部58とを、コイル部104の収容用開口部118、電子基板112の収容用開口部112aに収容するように構成されている。
【0098】
さらに、
図1に示したように、コイルカバー本体114には、脱着手段を構成するコイル側固定突出部116を備えている。コイル側固定突出部116は、
図1に示したように、コイルカバー本体114の開口部114bから、上方に突出して外側に突出する係止片124が形成されている。
【0099】
これにより、本体ケース側固定金具96の係止部98と、コイル側固定突出部116の係止片124とを係合することによって、コイル部104を収容した、コイルカバー111で閉蓋されたコイルカバー本体114を、本体ケース34の下方に脱着自在に取り付けることができるように構成されている。
【0100】
なお、
図1中、符号126は、コネクター、128は、リード線、130は、ロータマグネット32の回転方向と回転位置を検知するための磁極センサーを示している。
【0101】
このように本発明の遠心ポンプ10によれば、コイル部104を収容しコイルカバー111で閉蓋されたコイルカバー本体114と、本体ケース34とが、脱着手段によって脱着自在である。この実施例の場合には、本体ケース側固定金具96の係止部98と、コイル側固定突出部116の係止片124との係合によって脱着自在な構成となっている。
【0102】
従って、コイル部104を収容し、コイルカバー111で閉蓋されたコイルカバー本体114を、本体ケース34に固定する前に、本体ケース34に、例えば、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着、加熱を要する加工を行うことができ作業性が向上する。
【0103】
また、コイル部104を収容し、コイルカバー111で閉蓋されたコイルカバー本体114と、本体ケース34とが、脱着手段によって脱着自在に固定されているので、コイル部104が故障した際の交換も容易にできる。さらに、配線の引出し方向と継手方向(吸込側継手部材42と吐出側継手部材46)を任意に選ぶことができる。
【0104】
しかしながら、このような脱着手段としては、何ら限定されるものではなく、例えば、ネジ係合、凹凸による係合などその他の脱着手段を採用することができる。
【0105】
さらに、回転羽根部材12の軸部材64が、上側軸受部材78と下側軸受部材60とで軸支されているので、回転羽根部材12の軸受が、安定な構造であり、耐久性、静音性に優れた遠心ポンプ10を提供することができる。
【0106】
すなわち、回転羽根部材12の回転が安定し、回転時の騒音が低減され、回転羽根部材12の振動が低減することで、耐久性も向上する。
【0107】
また、回転羽根部材12の軸部材64が、上側軸受部材78と下側軸受部材60に固定され、回転羽根部材12が、軸部材64の外周を回転するので、回転羽根部材12と軸部材64の外周との間で回転摺動面積が増大し、接触面圧も低減することになる。
【0108】
これにより、回転羽根部材12の回転が安定し、回転時の騒音が低減され、回転羽根部材12の振動が低減することで、耐久性も向上する。
【0109】
この場合、回転羽根部材12と軸部材64との間の回転部分、すなわち、少なくとも回転羽根部材12の軸受け部14の内周と、軸部材64の外周が、摺動性のよい合成樹脂から構成されているのが望ましい。
【0110】
従って、回転羽根部材12の軸受け部14と、軸部材64自体を摺動性のよい合成樹脂から構成する他、回転羽根部材12の軸受け部14の内周と、軸部材64の外周の表面のみをこのような摺動性のよい合成樹脂で被覆することもできる。
【0111】
この場合、摺動性のよい合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、PPS、PTFEなどの耐薬品性の優れた樹脂を使用することができる。
【0112】
このように回転部分を、摺動性のよい合成樹脂を使用することで、軸受が流体中にある無潤滑条件においても、摺動性に優れ、回転羽根部材12の回転によって軸部材64と回転羽根部材12が摩耗損傷することがなく耐久性が向上するとともに、回転羽根部材12にガタツキや偏心が生じず、所期の目的とするポンプ性能を保持することが可能である。
【0113】
この場合、図示しないが、回転羽根部材12に軸部材64が固着され、上側軸受部材78と軸部材64との間、および、下側軸受部材60と軸部材64との間で、回転羽根部材12が回転するように構成することも可能である。
【0114】
このように構成することによって、回転羽根部材12の回転が安定し、回転時の騒音が低減され、回転羽根部材12の振動が低減することで、耐久性も向上する。
【0115】
さらに、この場合にも、同様に、上側軸受部材78と軸部材64との間、および、下側軸受部材60と軸部材64との間の回転部分を、摺動性のよい合成樹脂を使用することができる。
【0116】
このように構成される本発明の遠心ポンプ10は、以下のように作動される。
【0117】
先ず、コイル部104のコイル110に電流を流すことによって、コイル110が励磁され、これにより、回転羽根部材12のロータマグネット32に作用して、回転羽根部材12が軸受け部14に挿通された軸部材64の周りで回転できるようになっている。
【0118】
これにより、回転羽根部材12の羽根車部材16が回転して、
図1の矢印Aで示したように、吸込側継手部材42から吸い込まれた流体が、羽根ケース68と上側本体ケース36によって形成された流体導入流路84から、羽根ケース68の延設部74の内周側開口部74aを通過する。
【0119】
そして、内周側開口部74aを通過した流体は、羽根ケース68と下側本体ケース48によって形成された回転部収容空間S2に導入される。
【0120】
また、回転羽根部材12の羽根車部材16の回転力によって、回転部収容空間S2に導入された流体は、
図1の矢印Bで示したように、本体ケース34の回転部収容空間S2から、吐出側継手部材46を介して吐出されるようになっている。
【0121】
このように構成される本発明の遠心ポンプ10によれば、本体ケース34が、上側本体ケース36と、上側本体ケース36に固定された下側本体ケース(ロータケース)48とを備え、下側本体ケース48が、下側本体ケース48の外周から、内周側に水平に延びた羽根収容部54と、羽根収容部54から下方に延びたロータマグネット収容部56とを備えている形状である。
【0122】
従って、この上側本体ケース36と、上側本体ケース36に固定された下側本体ケース48との間に形成された内部空間S1内に、羽根車部材16と羽根車部材16の下方に設けられたロータマグネット32とから構成される回転羽根部材12をコンパクトに収容することができる。
【0123】
しかも、ロータマグネット32の周囲に位置するように配置され、回転羽根部材12を回転させるコイル部104を備えるので、ロータマグネット32の周囲に位置するように配置されたコイル部104を起電することによって発生する磁路によって、下側本体ケース48のロータマグネット収容部56を介して、羽根車部材16の下方に設けられたロータマグネット32に作用することになる。
【0124】
これによって、安定的に回転羽根部材12を回転させることが可能となる。従って、駆動モーター(コイル部104とロータマグネット32)の作動ロスを生じることがなく、ポンプ性能に優れた遠心ポンプを提供することができる。
【0125】
また、金属製の本体ケース34を構成する上側本体ケース36と、下側本体ケース48とを、例えば、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができ、密封状態で固着することができる。
【0126】
すなわち、これらの接続部に、溶接やろう付などの高い気密性と保持強度を持った接合方法が可能な構造となっている。
【0127】
従って、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができるので、例えば、冷媒、可燃性流体、毒性を有する流体などを閉回路内で循環させ、その耐圧性・気密性・耐腐食性が求められる遠心ポンプを提供することができる。
【0128】
また、金属製の本体ケース34(上側本体ケース36のいずれか、またはその両方)と、羽根ケース68との接合部を、例えば、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができ、密封状態で固着することができる。
【0129】
また、金属製の吸込側継手部材42と本体ケース34との接合部、および、吐出側継手部材46と本体ケース34との接合部を、例えば、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができ、密封状態で固着することができる。
【0130】
すなわち、これらの接続部に、溶接やろう付などの高い気密性と保持強度を持った接合方法が可能な構造となっている。
【0131】
従って、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができるので、気密性の高い金属ケースと配管が使用でき、例えば、冷媒、可燃性流体、毒性を有する流体などを閉回路内で循環させ、その耐圧性・気密性・耐腐食性が求められる遠心ポンプを提供することができる。
【0132】
また、上側本体ケース36と下側本体ケース48とで形成された内部空間S1を仕切り、上方に流体導入流路84を形成するとともに、下方に回転羽根部材12を収容する回転部収容空間S2を形成する羽根ケース68を備えるので、流体の経路を容易に形成することができる。
【0133】
この場合、本体ケース34が、金属製のプレス成形品から構成されるとともに、吸込側継手部材42と吐出側継手部材46が、金属パイプによって構成されているのが望ましい。これにより、これらの接続部に、溶接やろう付などの高い気密性と保持強度を持った接合方法が可能で、しかも、コストを低減することができる。
【0134】
この場合、下側本体ケース48が、金属製のプレス成形品から構成されるとともに、非磁性金属から構成されているのが望ましい。
【0135】
このように下側本体ケース48が、金属製のプレス成形品から構成されているので、下側本体ケース48の外周から、内周側に水平に延びた羽根収容部54と、羽根収容部54から下方に延びたロータマグネット収容部56とを備える複雑な形状の下側本体ケース(ロータケース)48を容易に、かつ、高品質で安価に作製することが可能である。
【0136】
また、下側本体ケース48が、非磁性金属から構成されているので、ロータマグネット32の周囲に位置するように配置されたコイル部104を起電することによって発生する磁路(
図2の矢印C参照)が阻害されることなく、非磁性の下側本体ケース48のロータマグネット収容部56を介して、羽根車部材16の下方に設けられたロータマグネット32に作用することになる。これによって、安定的に回転羽根部材12を回転させることが可能となる。
【0137】
従って、駆動モーター(コイル部104とロータマグネット32)の作動ロスを生じることがなく、ポンプ性能に優れた遠心ポンプ10を提供することができる。
【0138】
この場合、非磁性金属としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム、真鍮などが挙げられる。
【0139】
また、このような非磁性金属が、オーステナイト系ステンレス鋼から構成されているのが望ましい。
【0140】
このように、非磁性金属が、オーステナイト系ステンレス鋼から構成されていれば、金属製の本体ケース34を構成する上側本体ケース36と、下側本体ケース48とを、例えば、溶接・ろう付・溶着など加熱による固着ができ、密封状態で固着することができる。
【0141】
また、オーステナイト系ステンレス鋼であれば、絞り加工性、機械的強度に優れるので、下側本体ケース48の外周から、内周側に水平に延びた羽根収容部54と、羽根収容部54から下方に延びたロータマグネット収容部56とを備える複雑な形状の下側本体ケース(ロータケース)48を、プレス加工によって容易に、かつ、高品質で安価に作製することが可能である。
【0142】
しかも、オーステナイト系ステンレス鋼は、絞り加工性に優れるので、下側本体ケース48の厚さを薄くできるので、ロータマグネット32の周囲に位置するように配置され、回転羽根部材12を回転させるコイル部104を起電することによって発生する磁路(
図2の矢印C参照)が、阻害されることがなく、非磁性の下側本体ケース48のロータマグネット収容部56を介して、羽根車部材16の下方に設けられたロータマグネット32に作用することになる。これによって、安定的に回転羽根部材12を回転させることが可能となる。
【0143】
従って、駆動モーター(コイル部104とロータマグネット32)の作動ロスを生じることがなく、ポンプ性能に優れた遠心ポンプ10を提供することができる。
【0144】
しかも、オーステナイト系ステンレス鋼は、耐食性にも優れるので、例えば、冷媒、可燃性流体、毒性を有する流体などを閉回路内で循環させ、その耐圧性・気密性・耐腐食性が求められる遠心ポンプを提供することができる。
【0145】
さらに、この場合、オーステナイト系ステンレス鋼が、ニッケル含有量10.5%以上のオーステナイト系ステンレス鋼から構成されているのが望ましい。
【0146】
すなわち、下側本体ケース48の外周から、内周側に水平に延びた羽根収容部54と、羽根収容部54から下方に延びたロータマグネット収容部56とを備える複雑な形状の下側本体ケース(ロータケース)48を作製する場合、前述したように、下側本体ケース48を、オーステナイト系ステンレス鋼から構成するのが、容易に、かつ、高品質で安価に作製するためには望ましい。
【0147】
しかしながら、例えば、18−8ステンレス鋼と呼ばれるNi含有量が8%であるSUS304などの通常のオーステナイト系ステンレス鋼では、絞り加工などのように塑性加工を行うと、応力誘起マルテンサイトが生じて、マルテンサイト化して磁性を帯びてしまうことがある。
【0148】
このため、ロータマグネット32の周囲に位置するように配置され、回転羽根部材12を回転させるコイル部104を起電することによって発生する磁路(
図2の矢印C参照)が、磁性を帯びた下側本体ケース48によって阻害されてしまうことになる。
【0149】
これによって、下側本体ケース48のロータマグネット収容部56を介して、羽根車部材16の下方に設けられたロータマグネット32への作用が阻害されることになる。
【0150】
従って、駆動モーター(コイル部104とロータマグネット32)の作動ロスを生じることになって、ポンプ性能が低下することにもなってしまう。
【0151】
これに対して、ニッケル含有量10.5%以上のオーステナイト系ステンレス鋼から構成されていれば、絞り加工などのように塑性加工を行っても、応力誘起マルテンサイトが生じにくく、マルテンサイト化して磁性を帯びるのが避けられる。
【0152】
これによって、ロータマグネット32の周囲に位置するように配置されたコイル部104を起電することによって発生する磁路(
図2の矢印C参照)が阻害されることなく、非磁性の下側本体ケース48のロータマグネット収容部56を介して、羽根車部材16の下方に設けられたロータマグネットに作用することになる。これによって、安定的に回転羽根部材12を回転させることが可能となる。
【0153】
従って、駆動モーター(コイル部104とロータマグネット32)の作動ロスを生じることがなく、ポンプ性能に優れた遠心ポンプ10を提供することができる。
【0154】
また、この場合、オーステナイト系ステンレス鋼が、ニッケル含有量10.5〜16%のオーステナイト系ステンレス鋼から構成されているのが、より望ましい。
【0155】
このような範囲に、オーステナイト系ステンレス鋼のニッケル含有量があれば、絞り加工などのように塑性加工を行っても、応力誘起マルテンサイトが生じにくく、マルテンサイト化して磁性を帯びるのが避けられる。
【0156】
これによって、下側本体ケース48のロータマグネット収容部56を介して、羽根車部材16の下方に設けられたロータマグネット32への作用が阻害されるのを避けることができる。
【0157】
従って、駆動モーター(コイル部104とロータマグネット32)の作動ロスを生じることがなく、ポンプ性能が低下することもない。
【0158】
なお、ニッケル含有量が10.5%を下回れば、絞り加工などのように塑性加工を行うと、応力誘起マルテンサイトが生じて、マルテンサイト化して磁性を帯びてしまい、逆に、ニッケル含有量が16%を超えれば、ニッケルは高価であるので、コストが高くなるからである。
【0159】
このようなニッケル含有量10.5〜16%のオーステナイト系ステンレス鋼としては、特に限定されるものではないが、本発明の遠心ポンプ10の用途に応じて、耐腐食性、加工性、機械的強度などを考慮して、例えば、SUS305、SUS308、SUS309、SUS316、SUS317から選択したオーステナイト系ステンレス鋼から構成すればよい。
【0160】
なお、上側本体ケース36については、特に、非磁性金属から構成する必要はなく、また、下側本体ケース48のように複雑な形状でないので、絞り加工などのように塑性加工を考慮する必要がないので、本発明の遠心ポンプ10の用途に応じて、耐腐食性、加工性、機械的強度などを考慮して、金属材料を適切に決定すればよい。
【0161】
また、金属製の吸込側継手部材42と、吐出側継手部材46についても、特に、非磁性金属から構成する必要はなく、また、下側本体ケース48のように複雑な形状でないので、絞り加工などのように塑性加工を考慮する必要がないので、本発明の遠心ポンプ10の用途に応じて、耐腐食性、加工性、機械的強度などを考慮して、金属材料を適切に決定すればよい。例えば、銅管からなる導管から構成することができる。
【0162】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、上記実施例では、コイル部104をコイルカバー本体114に収容し、コイルカバー111で閉蓋したが、コイル部104をモールド樹脂でモールドして、これを、本体ケース34の下方に脱着自在に取り付けるようにすることもできる。
【0163】
さらに、上記実施例では、吸込側継手部材42、吐出側継手部材46の数をそれぞれ1個としたが、吸込側継手部材42、吐出側継手部材46の数を複数個設けることも可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。