特許第6166342号(P6166342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6166342ホスホロチオエート基を含むオリゴヌクレオチドを用いる、ポリメラーゼ連鎖反応による検出システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166342
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】ホスホロチオエート基を含むオリゴヌクレオチドを用いる、ポリメラーゼ連鎖反応による検出システム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20170710BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170710BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   C12Q1/68 AZNA
   C12N15/00 A
   G01N21/78 C
【請求項の数】31
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-500972(P2015-500972)
(86)(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公表番号】特表2015-512251(P2015-512251A)
(43)【公表日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】GB2012050645
(87)【国際公開番号】WO2013140107
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】514238146
【氏名又は名称】エルジーシー・ジェノミクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・スティーブン・ロビンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ホルム
(72)【発明者】
【氏名】ニシャ・ジェイン
【審査官】 田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01726664(EP,A1)
【文献】 特開平09−107997(JP,A)
【文献】 特表平06−510428(JP,A)
【文献】 特表2009−517052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12N 15/00−15/90
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3'→5'エクソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼの存在下で産生される、プライマー伸長産物を検出するための方法であって、
a)少なくとも2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列を用意する工程であって、
前記少なくとも2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列が、一方または両方の配列と相補的な配列が導入されると、前記相補的な配列が前記少なくとも2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列のうちの一方とハイブリダイズする場合に、測定可能なシグナルを発生させる、蛍光消光対を形成するために、遊離溶液中で相互にハイブリダイズし、
前記オリゴヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有し、
ホスホロチオエート基を含有するオリゴヌクレオチド(複数可)の塩基のうちの30〜70%が、ホスホロチオエートである、工程と、
b)少なくとも1つのプライマーを用意し、前記少なくとも1つのプライマーからプライマー伸長反応を開始させ、これにより、前記単一標識オリゴヌクレオチド配列のうちの少な
くとも1つと相補的な配列を作り出す工程と、
c)前記相補的な配列が前記少なくとも2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列のうちの一方とハイブリダイズする場合に、発生する検出可能なシグナルを測定する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
3'→5'エクソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼの存在下で産生される、プライマー伸長産物を検出するためのキットであって、
前記キットが、少なくとも2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列を含み、
前記少なくとも2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列が、一方または両方の配列と相補的な配列が導入されると、前記相補的な配列が前記2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列のうちの一方とハイブリダイズする場合に、測定可能なシグナルを発生させる、蛍光消光対を形成するために、遊離溶液中で相互にハイブリダイズし、
前記オリゴヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有し、
ホスホロチオエート基を含有するオリゴヌクレオチド(複数可)の塩基のうちの30〜70%が、ホスホロチオエートである、キット。
【請求項3】
第1のオリゴヌクレオチド配列のTm(溶融温度)と、第2のオリゴヌクレオチド配列のTmとが異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のオリゴヌクレオチド配列および前記第2のオリゴヌクレオチド配列のうちの一方のTmが、前記プライマー伸長反応のTa(アニーリング温度)以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のオリゴヌクレオチド配列および前記第2のオリゴヌクレオチド配列のうちの一方のTmが、前記プライマー伸長反応のTaを上回る、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
3'→5'エクソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼの存在下で産生される、プライマー伸長産物を、PCRを使用して検出するための方法であって、
a)i) 第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列および
ii) 少なくとも第2の単一標識オリゴヌクレオチド配
であって、前記第1のオリゴヌクレオチド配列のTmと、前記第2のオリゴヌクレオチド配列のTmとが異なり、ここで、前記第1のオリゴヌクレオチド配列と、前記第2のオリゴヌクレオチド配列とが、遊離溶液中で相互にハイブリダイズして、蛍光消光対を形成する、第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列および少なくとも第2の単一標識オリゴヌクレオチド配列;ならびに
iii) 少なくとも1つのプライマー
を用意する工程であって、
前記第1のオリゴヌクレオチド配列および前記第2のオリゴヌクレオチド配列のうちの一方のTmが、PCRプロセスのTa以下であり、
前記オリゴヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有し、ホスホロチオエート基を含有するオリゴヌクレオチド(複数可)の塩基のうちの30〜70%が、ホスホロチオエートであり、
前記少なくとも1つのプライマーが、少なくとも1つの非標識のテイルドプライマーを含み、前記非標識のテイルドプライマーがテイル領域を有し、前記テイル領域が、前記第2の単一標識オリゴヌクレオチド配列のオリゴヌクレオチド配列と相補的なオリゴヌクレオチド配列を含み、
前記第2の単一標識オリゴヌクレオチド配列が、前記第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列とハイブリダイズすることがもはや可能でなくなり、これにより、測定可能なシグナルを発生させるように、前記第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列が、PCRプロセスにおいて前記第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列と相補的な配列が作り出されたら、そこからDNA合成を開始させるプライマーである、工程
b)前記少なくとも1つのプライマーからプライマー伸長反応を開始させ、これにより、前記第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列と相補的な配列を作り出す工程
c)前記相補的な配列が、前記第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列とハイブリダイズする場合に、発生する検出可能なシグナルを測定する工
を含む、方法。
【請求項7】
前記単一標識オリゴヌクレオチドのうちの一方が、他方より10塩基を超えて短い、請求項1及び3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記PCRプロセスを、各サイクルにおいて、または、そうでなく、反応が測定可能なシグナルを創出するのに十分な産物をいまだ産生していない場合は、反応の温度を下げて、ハイブリダイゼーションを生じさせることによる、多数のサイクルの後において、リアルタイムでモニタリングする、請求項6および7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記単一標識オリゴヌクレオチドのうちの前記他方のTmが、Taを上回る、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記単一標識オリゴヌクレオチドのうちの前記一方が、前記蛍光消光対の消光剤標識を有する、請求項1及び3から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ホスホロチオエート基を含有するオリゴヌクレオチド(複数可)の内部塩基のうちの少なくとも1つが、ホスホロチオエートである、請求項1及び3から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
対立遺伝子特異的PCRベースのSNPジェノタイピングにおける使用のための、請求項1及び3から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ハイブリダイゼーションだけの使用を介して、前記プライマー伸長産物をモニタリングする、請求項1及び3から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
PCR後のハイブリダイゼーションだけの使用を介して、前記プライマー伸長産物をモニタリングする、請求項6から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記蛍光消光オリゴ対が、10bp〜100bpの範囲にある、請求項1及び3から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記蛍光消光オリゴ対が、10bp〜100bpの範囲にあるが、長さが対応していない、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
フルオロフォア標識オリゴヌクレオチドの塩基のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有する、請求項1及び3から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記蛍光消光オリゴ対が、対のうちの一方はフルオロフォアで標識されており、他方は非蛍光消光分子で標識されている、請求項1及び3から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記蛍光消光オリゴ対を、ヌクレアーゼ分解に対して耐性となるように修飾する、請求項1及び3から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
第1のオリゴヌクレオチド配列のTm(溶融温度)と、第2のオリゴヌクレオチド配列のTmとが異なる、請求項2に記載のキット。
【請求項21】
前記第1のオリゴヌクレオチド配列および前記第2のオリゴヌクレオチド配列のうちの一方のTmが、前記プライマー伸長反応のTa(アニーリング温度)以下である、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記第1のオリゴヌクレオチド配列および前記第2のオリゴヌクレオチド配列のうちの一方のTmが、前記プライマー伸長反応のTaを上回る、請求項20または21に記載のキット。
【請求項23】
前記単一標識オリゴヌクレオチドのうちの一方が、他方より10塩基を超えて短い、請求項2及び20から22のいずれか一項に記載のキット。
【請求項24】
前記単一標識オリゴヌクレオチドのうちの前記一方が、前記蛍光消光対の消光剤標識を有する、請求項2及び20から23のいずれか一項に記載のキット。
【請求項25】
前記ホスホロチオエート基を含有するオリゴヌクレオチド(複数可)の内部塩基のうちの少なくとも1つが、ホスホロチオエートである、請求項2及び20から24のいずれか一項に記載のキット。
【請求項26】
対立遺伝子特異的PCRベースのSNPジェノタイピングにおける使用のための、請求項2及び20から25のいずれか一項に記載のキット。
【請求項27】
前記蛍光消光オリゴ対が、10bp〜100bpの範囲にある、請求項2及び20から26のいずれか一項に記載のキット。
【請求項28】
前記蛍光消光オリゴ対が、10bp〜100bpの範囲にあるが、長さが対応していない、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
フルオロフォア標識オリゴヌクレオチドの塩基のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有する、請求項2及び20から28のいずれか一項に記載のキット。
【請求項30】
前記蛍光消光オリゴ対が、対のうちの一方はフルオロフォアで標識されており、他方は非蛍光消光分子で標識されている、請求項2及び20から29のいずれか一項に記載のキット。
【請求項31】
前記蛍光消光オリゴ対を、ヌクレアーゼ分解に対して耐性となるように修飾する、請求項2及び20から30のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッセイシステムにおいて核酸を検出するための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、標的の核酸配列を迅速かつ指数関数的に増幅するための強力な方法である。PCRは、PCR増幅されたDNAの直接的な配列決定、対立遺伝子変異の決定、ならびに感染性疾患および感染性障害ならびに遺伝子疾患および遺伝子障害の検出を含む、遺伝子特徴付け技術および分子クローニング技術の開発を容易にした。PCRは、標的配列を含有するDNA鋳型の熱変性サイクルの反復、対向するプライマーの、相補的なDNA鎖とのアニーリング、およびアニールされたプライマーのDNAポリメラーゼによる伸長により実施する。複数回のPCRサイクルは、隣接する増幅プライマーにより区画されたヌクレオチド配列の指数関数的な増幅をもたらす。熱安定性DNAポリメラーゼの、PCRプロトコールへの組込みは、酵素添加の反復に対する必要を排し、アニーリング温度およびプライマー伸長温度の上昇を可能とし、これは、プライマー:鋳型間会合の特異性を増強する。こうして、Taq DNAポリメラーゼは、PCRの特異性および簡素さの増大に役立つ。
【0003】
多くのPCRベースの反応では、シグナル発生システムを採用して、例えば、増幅された産物の産生を検出する。PCRベースの反応において使用されるシグナル発生システムの1つの種類は、核酸検出子が、蛍光ドナー基および蛍光アクセプター基を含む、蛍光エネルギー移動(FRET)システムである。FRET標識システムは、結合した標識核酸検出子と結合していない標識核酸検出子との分離工程が不要な均一系アッセイを実施できることを含め、他の標識システムを凌駕する多数の利点を含む。多くの先行技術による技法に関する主要な問題は、二重標識蛍光オリゴヌクレオチドの合成と連関する。欧州特許出願第EP1726664号は、遊離溶液中で相互にハイブリダイズして、蛍光消光対を形成し、これが、一方または両方の配列と相補的な配列が導入されると、測定可能なシグナルを発生させる、溶融温度(Tm)の異なる単一標識オリゴヌクレオチド配列であって、配列のうちの一方のTmがPCRプロセスのアニーリング温度(Ta)を下回るオリゴヌクレオチド配列を使用することにより、この問題を克服する検出システムについて開示している。
【0004】
標識核酸検出子を使用する検出システムでは、高忠実度の増幅が極めて重要である。PCRプロセスおよびTaq DNAポリメラーゼの性質に起因して、このような方法は、所望の重合化反応とは別の副反応を被る可能性がある。例えば、反応が周囲温度でアセンブルされる場合、PCRは、非特異的増幅を被る可能性がある。PCR温度未満において、Taqポリメラーゼは、その活性の一部を保持し、したがって、補完的にアニールされていないプライマーを伸長させ、これにより、所望されない産物の形成をもたらす可能性がある。次いで、新たに合成された領域は、プライマーによる所望されない増幅産物のさらなる伸長および合成のための鋳型として作用する。しかし、重合化が始まる前に、反応物を約50℃以上の温度まで加熱する場合、プライマーアニーリングの厳密性が増大し、所望されないPCR産物の合成が回避または低減される。
【0005】
プライマー二量体もまた、PCRに影響を及ぼす一般的な副反応である。プライマー二量体の蓄積は、プライマー同士のハイブリダイゼーションおよび伸長のために生じる。プライマー二量体の形成は、該試薬の欠乏をもたらし、ひいては、PCR効率の全体的な低減をもたらす。
【0006】
ホットスタートPCRとは、非特異的増幅を低減し、ひいては、プライマー二量体の形成を制限する方法であり、これを達成するための多くの異なる手法が開発されている(例えば、Moretti, T.ら、「Enhancement of PCR amplification yield and speciticity using AmpliTaq Gold DNA polymerase」、BioTechniques、25、716〜22頁(1998);および「Hot Start PCR with heat-activatable primers: a novel approach for improved PCR performance」、Nucleic Acids Res (2008)、36(20): e131頁を参照されたい)。しかし、このような技法は、このような問題の部分的な軽減を達成するに過ぎない。配列内の任意のエラー、非重合化ベースの反応、またはプライマー二量体化などのプライマーのミスプライミングは、特に、対立遺伝子特異的PCRにおける弱いシグナルまたは誤ったシグナルの発生を引き起こしうるので、これらの弱いシグナルまたは不正確なシグナルのさらなる改善が所望されるであろう。
【0007】
ホスホロチオエート(またはS-オリゴ)とは、非架橋酸素のうちの一方が硫黄により置きかえられた標準DNAの変異体である。ホスホジエステルヌクレオチド間連結およびホスホロチオエートヌクレオチド間連結の例を下記に示す。
【0008】
【化1】
【0009】
ホスホロチオエート結合は、硫黄原子で、オリゴヌクレオチドのリン酸骨格内の非架橋酸素を置換し、ヌクレオチド間連結を、ヌクレアーゼ分解に対して耐性とする。ホスホロチオエートは、エクソヌクレアーゼ分解を阻害するように、オリゴの5'端に導入することもでき、3'端に導入することもできる。アンチセンスのオリゴヌクレオチドにおいてもまた、ホスホロチオエートを内部に導入して、エンドヌクレアーゼによる攻撃を制限する。ホスホロチオエートを含有するオリゴヌクレオチドの合成は、例えば、Verma S.およびEckstein, F. (1998)、「MODIFIED OLIGONUCLEOTIDES: Synthesis and Strategy for Users」、Annu. Rev. Biochem.、1998、67:99〜134頁;ならびにCurr Protoc Nucleic Acid Chem.、2009年3月、4章:ユニット4.34、「DNA oligonucleotides containing stereodefined phosphorothioate linkages in selected positions」、Nawrot B、Rebowska Bにおいて記載されている。
【0010】
上記で言及した通り、ヌクレオチド間結合の硫化は、5'→3' DNA POL 1エクソヌクレアーゼおよび3'→5' DNA POL 1エクソヌクレアーゼ、ヌクレアーゼS1およびP1、RNアーゼ、血清ヌクレアーゼ、ならびに蛇毒ホスホジエステラーゼを含む、エンドヌクレアーゼおよびエクソヌクレアーゼの作用を低減する。エクソヌクレアーゼ+DNAポリメラーゼを採用した高忠実度PCRと共用するS-オリゴのヌクレアーゼ耐性は、実証されている(例えば、Nucl. Acids Res. (2003)、31 (3): e7. doi: 10.1093/nar/gng007を参照されたい)。Taq DNAポリメラーゼは、3'→5'エクソヌクレアーゼを保有しない(Kenneth R. Tindall、Thomas A. Kunkel、Biochemistry、1988、27 (16)、6008〜6013頁)。また、プルーフリーディングポリメラーゼの存在下における、ホスホロチオエート修飾による一塩基多型の弁別の増強についても報告されている。ホスホロチオエート化は、特異性を増大させ、プライマー二量体相互作用の発生率を低減するが、PCRの改善には3'ヌクレアーゼの機能性が要求されることが報告されており、対立遺伝子特異的PCRとの共用において、S-オリゴの使用は、Taq DNAポリメラーゼと共に使用した場合、有益とはならないことが実証されている(例えば、Zhang, J.およびLi, K. (2003)、「Single-Base Discrimination Mediated by Proofreading 3' Phosphorothioate-Modified Primers」、Molecular Biotechnology、25、223〜227頁を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願第EP1726664号
【特許文献2】国際特許出願第WO01/42505号
【特許文献3】国際特許出願第WO01/86001号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Moretti, T.ら、「Enhancement of PCR amplification yield and specificity using AmpliTaq Gold DNA polymerase」、BioTechniques、25、716〜22頁(1998)
【非特許文献2】Moretti, T.ら、「Hot Start PCR with heat-activatable primers: a novel approach for improved PCR performance」、Nucleic Acids Res (2008)、36(20): e131頁
【非特許文献3】Verma S.およびEckstein, F.(1998)、「MODIFIED OLIGONUCLEOTIDES: Synthesis and Strategy for Users」、Annu. Rev. Biochem.、1998、67:99〜134頁
【非特許文献4】Curr Protoc Nucleic Acid Chem.、2009年3月、4章:ユニット4.34、「DNA oligonucleotides containing stereodefined phosphorothioate linkages in selected positions」、Nawrot B、Rebowska B
【非特許文献5】Nucl. Acids Res.(2003)、31 (3): e7. doi: 10.1093/nar/gng007
【非特許文献6】Kenneth R. Tindall、Thomas A. Kunkel、Biochemistry、1988、27 (16)、6008〜6013頁
【非特許文献7】Zhang, J.およびLi, K. (2003)、「Single-Base Discrimination Mediated by Proofreading 3' Phosphorothioate-Modified Primers」、Molecular Biotechnology、25、223〜227頁
【非特許文献8】BraithwaiteおよびIto、Nucleic Acids Res. (1993)、21:787〜802頁
【非特許文献9】Proc. Natl. Acad. Sci USA (1994)、91:2216〜2220頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
例えば、均一系PCRアッセイにおいて、プライマー伸長産物を検出するときの使用のための、合成が容易で、廉価で、信頼できる特異的な検出システムであって、PCR用の既存の検出システムが遭遇する問題に取り組む検出システムが必要とされている。従来の科学的知識とは異なり、本発明は、核酸検出アッセイシステムにおいて、S-オリゴを首尾良く使用し、改善をもたらすことができるとの知見に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に従い、鋳型依存的プライマー伸長反応における非特異的増幅および/またはプライマー二量体の形成を低減するための方法であって、3'→5'ヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼの存在下で、プライマー伸長反応を実行する工程を含み、プライマーのうちの1つまたは複数が、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有する方法が提供される。
【0015】
このような方法における使用のためのキットおよび組成物もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1-1】本発明の方法を実施して、DNA配列を直接的に検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図1-2】本発明の方法を実施して、DNA配列を直接的に検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図1-3】本発明の方法を実施して、DNA配列を直接的に検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図1-4】本発明の方法を実施して、DNA配列を直接的に検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図1-5】本発明の方法を実施して、DNA配列を直接的に検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図2-1】本発明の方法を実施して、DNA配列を間接的に(リアルタイムで)検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図2-2】本発明の方法を実施して、DNA配列を間接的に(リアルタイムで)検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図2-3】本発明の方法を実施して、DNA配列を間接的に(リアルタイムで)検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図2-4】本発明の方法を実施して、DNA配列を間接的に(リアルタイムで)検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図2-5】本発明の方法を実施して、DNA配列を間接的に(リアルタイムで)検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図3-1】本発明の方法を実施して、SNPジェノタイピングにおいて、DNA配列を間接的に(終点で)を検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図3-2】本発明の方法を実施して、SNPジェノタイピングにおいて、DNA配列を間接的に(終点で)を検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図3-3】本発明の方法を実施して、SNPジェノタイピングにおいて、DNA配列を間接的に(終点で)を検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図3-4】本発明の方法を実施して、SNPジェノタイピングにおいて、DNA配列を間接的に(終点で)を検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図3-5】本発明の方法を実施して、SNPジェノタイピングにおいて、DNA配列を間接的に(終点で)を検出するための、簡略な反応図式を示す図である。
図4】下記の実施例1において記載されるアッセイを使用して作成したデータを示す図である。
図5-1】下記の実施例2において記載されている、ホスホロチオエート基を含有するオリゴヌクレオチド配列およびホスホロチオエートを含有しないオリゴヌクレオチドを使用するアッセイシステムにおいて作成したデータの比較を示す図である。
図5-2】下記の実施例2において記載されている、ホスホロチオエート基を含有するオリゴヌクレオチド配列およびホスホロチオエートを含有しないオリゴヌクレオチドを使用するアッセイシステムにおいて作成したデータの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に従い、鋳型依存的プライマー伸長反応における非特異的増幅および/またはプライマー二量体の形成を低減するための方法であって、3'→5'ヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼの存在下で、プライマー伸長反応を実行する工程を含み、プライマーのうちの1つまたは複数が、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有する方法が提供される。
【0018】
本発明の方法は、遊離溶液中で相互にハイブリダイズして、蛍光消光対を形成し、これが、一方または両方の配列と相補的な配列が導入されると、測定可能なシグナルを発生させる、少なくとも2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列であって、プライマーのうちの1つまたは複数を、少なくとも1つのホスホロチオエート基で修飾するオリゴヌクレオチド配列の使用を含むことが好ましい。
【0019】
本発明の一実施形態では、2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列のTmは異なる。オリゴヌクレオチド配列のTmが異なる場合、配列のうちの一方のTmは、プライマー伸長反応、例えば、PCRプロセスのTa以下のTmでありうる。他方のTmは、Ta以上のTmであることが適切であるが、好ましくは、Taを上回り、より好ましくは、Taを実質的に上回る。一実施形態では、消光剤オリゴヌクレオチドのTmは、Taを上回る。
【0020】
配列のTmを決定するために一般に使用される式は、Tm=4(G+C)+2(A+T)であり、したがって、レポーター対の一方の配列のTmの低減は、原理的に、レポーター対の他方の配列と比べた長さの短縮および/または(G+C)/(A+T)比の低減により達することができる。
【0021】
本発明のいくつかの態様では、単一標識オリゴヌクレオチド配列のうちの一方が、他方より10塩基を超えて長く、好ましくは、少なくとも15塩基長いことが好ましい。
【0022】
本発明はまた、3'→5'エクソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼの存在下で産生される、プライマー伸長産物を検出するための方法であって、
a)遊離溶液中で相互にハイブリダイズして、蛍光消光対を形成し、これが、一方または両方の配列と相補的な配列が導入されると、測定可能なシグナルを発生させる、例えば、Tmの異なる、少なくとも2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列であって、オリゴヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有する、少なくとも2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列を用意する工程と、
b)少なくとも1つのプライマーを用意し、プライマー伸長反応を開始させ、これにより、単一標識オリゴヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つと相補的な配列を作り出す工程と、
c)発生する検出可能なシグナルを測定する工程と
を含む方法も提供する。
【0023】
本発明のさらに好ましい態様では、方法は、3'→5'エクソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼの存在下で産生される、プライマー伸長産物を、PCRを使用して検出するための方法であって、
a)第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列および少なくとも第2の単一標識オリゴヌクレオチド配列を用意する工程であり、例えば、第1のオリゴヌクレオチド配列のTmと、第2のオリゴヌクレオチド配列のTmとが異なり、ここで、第1のオリゴヌクレオチド配列と、第2のオリゴヌクレオチド配列とが、遊離溶液中で相互にハイブリダイズして、蛍光消光対および少なくとも1つのプライマーを形成し、例えば、第1のオリゴヌクレオチド配列および第2のオリゴヌクレオチド配列のうちの一方のTmが、PCRプロセスのTa以下であり、この場合、オリゴヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有し、少なくとも1つのプライマーが、少なくとも1つの非標識のテイルドプライマーを含み、非標識のテイルドプライマーがテイル領域を有し、テイル領域が、第2の単一標識オリゴヌクレオチド配列のオリゴヌクレオチド配列と相補的なオリゴヌクレオチド配列を含み、第2の単一標識オリゴヌクレオチド配列が、第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列とハイブリダイズすることがもはや可能でなくなり、これにより、測定可能なシグナルを発生させるように、第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列が、PCRプロセスにおいて第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列と相補的な配列が作り出されたら、そこからDNA合成を開始させるプライマーである工程と、
b)プライマー伸長反応を開始させ、これにより、単一標識オリゴヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つと相補的な配列を作り出す工程と、
c)発生する検出可能なシグナルを測定する工程と
を含む方法を含む。
【0024】
本発明のさらに好ましい態様では、方法は、3'→5'エクソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼの存在下で産生される、プライマー伸長産物を、PCRを使用して検出するための方法であって、
a)第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列および少なくとも第2の単一標識オリゴヌクレオチド配列を用意する工程であり、例えば、第1のオリゴヌクレオチド配列のTmと、第2のオリゴヌクレオチド配列のTmとが異なり、ここで、第1のオリゴヌクレオチド配列と、第2のオリゴヌクレオチド配列とが、遊離溶液中で相互にハイブリダイズして、蛍光消光対および少なくとも1つのプライマーを形成し、例えば、第1のオリゴヌクレオチド配列および第2のオリゴヌクレオチド配列のうちの一方のTmが、PCRプロセスのTa以下であり、この場合、オリゴヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有し、少なくとも1つのプライマーが、少なくとも1つの非標識のテイルドプライマーを含み、非標識のテイルドプライマーがテイル領域を有し、テイル領域が、第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列のオリゴヌクレオチド配列と同一であるかまたは実質的に相同なオリゴヌクレオチド配列を含み、第2の単一標識オリゴヌクレオチド配列が、第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列とハイブリダイズすることがもはや可能でなくなり、これにより、測定可能なシグナルを発生させるように、第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列が、PCRプロセスにおいて第1の単一標識オリゴヌクレオチド配列と相補的な配列が作り出されたら、そこからDNA合成を開始させるプライマーである工程と、
b)プライマー伸長反応を開始させ、これにより、単一標識オリゴヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つと相補的な配列を作り出す工程と、
c)発生する検出可能なシグナルを測定する工程と
を含む方法を含む。
【0025】
本発明はまた、3'→5'エクソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼの存在下で産生される、プライマー伸長産物を検出するためのキットであって、遊離溶液中で相互にハイブリダイズして、蛍光消光対を形成し、これが、一方または両方の配列と相補的な配列が導入されると、測定可能なシグナルを発生させる、例えば、Tmの異なる、少なくとも2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列であって、オリゴヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有する、少なくとも2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列を含むキットも提供する。
【0026】
本発明に従うキットはまた、3'→5'エクソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼおよび/またはマグネシウム塩、dNTPなど、プライマー伸長反応における使用に適する他の成分も含有しうる。
【0027】
本発明では、方法において使用されるプライマーの全てまたは少なくとも1つは、ホスホロチオエート修飾された塩基を含有しうる。所与の任意のプライマーにおいて、ホスホロチオエートにより置きかえられたホスホジエステル連結の数は、ホスホロチオエートにより置きかえられるホスホジエステル結合のうちの1つ〜全ての範囲にわたりうる。プライマー(複数可)は、5'末端および/または3'末端においてホスホロチオエートを含有しうるが、このような末端修飾に対する代替または追加として、プライマーの内部塩基のうちの少なくとも1つは、ホスホロチオエートであることが好ましい。例えば、塩基のうちの10〜90%、20〜80%、30〜70%、または40〜60%は、ホスホロチオエートでありうる。一実施形態では、ホスホロチオエート修飾された塩基は、少なくとも1つの、例えば、1つ〜3つの非修飾(ホスホジエステル)塩基により隔てられている。好ましい実施形態では、プライマー(複数可)内の代替的な塩基は、ホスホロチオエートである。
【0028】
非修飾消光剤と併用された、フルオロフォアで標識されたプライマー(本明細書では、半S修飾と称する)の代替的な塩基におけるホスホロチオエート修飾の使用は、特に、PCRの弁別およびシグナル強度の増強を与えるので、本発明の好ましい実施形態を表す。
【0029】
本発明で使用しうる異なるホスホロチオエート修飾の例を、下記のフルオロフォアまたは消光剤で標識されたプライマーに例示する[配列中、*は、ホスホロチオエートを示す]。

非修飾FAMフルオロフォア: 5'-FAM-GCGATTAGCCGTTAGGATGA 3' (配列番号1)
3'S FAMフルオロフォア: 5'-FAM-GCGATTAGCCGTTAGGATG*A 3' (配列番号2)
半S FAMフルオロフォア: 5'-FAM-G*CG*AT*TA*GC*CG*TT*AG*GA*TG*A 3' (配列番号3)
完全S FAMフルオロフォア: 5'-FAM-G*C*G*A*T*T*A*G*C*C*G*T*T*A*G*G*A*T*G*A 3' (配列番号4)

非修飾HEXフルオロフォア: 5'-HEX-GTCGGTGAACAGGTTAGAGA 3' (配列番号5)
3'S HEXフルオロフォア: 5'-HEX-GTCGGTGAACAGGTTAGAG*A 3' (配列番号6)
半S HEXフルオロフォア: 5'-HEX-G*TC*GG*TG*AA*CA*GG*TT*AG*AG*A 3' (配列番号7)
完全S HEXフルオロフォア: 5'-HEX-G*T*C*G*G*T*G*A*A*C*A*G*G*T**T*A*G*A*G*A 3' (配列番号8)

基準FAM消光剤: 5'CCTAACGGCTAATCGC-3'Dabsyl (配列番号9)
半S FAM消光剤V1.0: 5' C*CT*AA*CG*GC*TA*AT*CG*C-3'Dabsyl (配列番号10)
半S FAM消光剤V2.0: 5'CC*TA*AC*GG*CT*AA*TC*GC-3'Dabsyl (配列番号11)
完全S FAM消光剤: 5'C*C*T*A*A*C*G*G*C*T*A*A*T*C*G*C-3'Dabsyl (配列番号12)

基準HEX消光剤: 5'AACCTGTTCACCGAC-3'Dabsyl (配列番号13)
半S HEX消光剤V1.0: 5'AA*CC*TG*TT*CA*CC*GA*C-3'Dabsyl (配列番号14)
半S HEX消光剤V2.0: 5'A*AC*CT*GT*TC*AC*CG*AC-3'Dabsyl (配列番号15)
完全S HEX消光剤: 5'A*A*C*C*T*G*T*T*C*A*C*C*G*A*C-3'Dabsyl (配列番号16)
【0030】
本発明における使用のための少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有するオリゴヌクレオチド配列は、当業者に知られる方法により合成することができる。
【0031】
本発明は、様々な異なる適用において使用され、特に、SNP検出のための適用、対立遺伝子変異の検出のための適用、リアルタイムPCRなどを含むPCRベースの反応における使用に適する。
【0032】
上記で示した通り、本発明は、鋳型依存的プライマー伸長反応における非特異的増幅および/またはプライマー二量体の形成を低減し、プライマー伸長反応混合物中のプライマー伸長産物の産生を検出する、例えば、プライマー伸長産物が、プライマー伸長反応において産生されているのかどうかを決定するための方法を提供する。プライマー伸長産物とは、鋳型依存的なプライマー伸長反応から生じる核酸分子を意味する。鋳型依存的なプライマー伸長反応とは、ポリメラーゼにより、鋳型核酸分子へとハイブリダイズした核酸プライマー分子を伸長させ、プライマー核酸分子の末端へと付加された塩基の配列を、鋳型鎖内の塩基の配列により決定する反応である。鋳型依存的なプライマー伸長反応は、増幅プライマー伸長反応および非増幅プライマー伸長反応の両方を含む。主題発明のいくつかの実施形態では、プライマー伸長産物の産生が検出される鋳型依存的なプライマー伸長反応は、増幅反応、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。
【0033】
本発明では、プライマー伸長産物の産生が検出される鋳型依存的なプライマー伸長反応とは、3'→5'ヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼと共に、ホスホロチオエート基で修飾されたプライマーを含有する反応である。
【0034】
本発明の方法の実施において、第1の工程は、プライマー伸長混合物、例えば、プライマー伸長反応を生じさせるのに必要な要素の全てを含む組成物を作製する工程である。例えば、プライマー伸長混合物は、例えば、遊離溶液中で相互にハイブリダイズして、蛍光消光対を形成し、これが、一方または両方の配列と相補的な配列が導入されると、測定可能なシグナルを発生させる、Tmの異なる、少なくとも2つの単一標識オリゴヌクレオチド配列(「FETカセットプライマー対」)であって、例えば、配列のうちの一方のTmが、Ta以下であり、オリゴヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有する、オリゴヌクレオチド配列を含みうる。
【0035】
FETは、適する蛍光エネルギードナー部分と、エネルギーアクセプター部分とが、相互に近接する場合に生じる。ドナーにより吸収された励起エネルギーは、アクセプターへと移動し、次いで、フルオロフォアの場合は蛍光発光により、または消光剤の場合は非蛍光的手段により、このエネルギーをさらに散逸させうる。ドナー-アクセプター対は、スペクトルの重複する2つのフルオロフォアを含むが、この場合、励起されたフルオロフォアから対の他のメンバーへと、エネルギー移動がなされるように、ドナーによる発光は、アクセプターによる吸収と重複する。励起されたフルオロフォアが実際に蛍光発光することは不可欠でなく、励起されるフルオロフォアが、励起エネルギーを効率的に吸収し、それを、発光フルオロフォアへと効率的に移動させることが可能であれば十分である。主題法において採用されるFETカセット(複数可)はそれ自体、個別のオリゴヌクレオチド上に、蛍光エネルギードナー、すなわち、ドナーが配置されるフルオロフォアドメインと、蛍光エネルギーアクセプター、すなわち、アクセプターが配置されるアクセプタードメインを伴う第2のオリゴヌクレオチドとを含む核酸検出子である。上記で言及した通り、ドナーオリゴヌクレオチドは、ドナーフルオロフォアを含む。ドナーフルオロフォアは、核酸検出子内の任意の場所に配置しうるが、検出子の5'末端に存在させることが典型的である。
【0036】
アクセプタードメインは、蛍光エネルギーアクセプターを含む。アクセプターは、アクセプタードメイン内の任意の場所に配置しうるが、核酸検出子の3'末端に存在させることが典型的である。
【0037】
フルオロフォアドメインおよびアクセプタードメインに加えて、FETカセットのアクセプターオリゴヌクレオチドはまた、例えば、厳密なハイブリダイゼーション条件(下記で規定される)下で、反応物内に含まれる非標識のテイルドプライマーから創出される標的の核酸配列に結合する、標的核酸結合ドメインも含む。
【0038】
オリゴヌクレオチドおよびアッセイ自体の性質に応じて、標的結合ドメインは、プライマー伸長産物の領域とハイブリダイズしうる。例えば、アッセイが、例えば、ユニバーサルカセットレポーティングシステムが採用されるSNPジェノタイピングアッセイである場合、標的結合ドメインは、厳密な条件下で、プライマー伸長産物の標的結合部位とハイブリダイズする。FETオリゴヌクレオチド対のためのフルオロフォアは、シアニン色素、キサンテンなど、類似の化学的ファミリーまたは異なる化学的ファミリーに由来するように選択することができる。対象のフルオロフォアは、フルオレセイン色素(例えば、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、2',4',1,4,-テトラクロロフルオレセイン(TET)、2',4',5',7',1,4-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、および2',7'-ジメトキシ-4',5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE))、Cy5などのシアニン色素、ダンシル誘導体、ローダミン色素(例えば、テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、およびテトラプロパノ-6-カルボキシローダミン(ROX))、DABSYL、DABCYL、Cy3などのシアニン、アントラキノン、ニトロチアゾール、およびニトロイミダゾール化合物などを含むがこれらに限定されない。対象のフルオロフォアは、国際特許出願第WO01/42505号および同第WO01/86001号においてさらに記載されている。
【0039】
主題法の最初の工程で産生されるプライマー伸長反応混合物は、3'→5'エクソヌクレアーゼを欠損するプライマー伸長反応混合物であるので、3'→5'エクソヌクレアーゼ活性を有さない酵素をさらに含む。多くの実施形態では、採用されるポリメラーゼの組合せは、少なくとも1つのファミリーAを含み、ここで、「ファミリーA」および「ファミリーB」という用語は、BraithwaiteおよびIto、Nucleic Acids Res. (1993)、21:787〜802頁において報告された分類スキームに対応する。対象のファミリーAポリメラーゼは、自然発生のポリメラーゼ(Taq)ならびにKlentaq(Proc. Natl. Acad. Sci USA (1994)、91:2216〜2220頁において記載されている)など、その誘導体および相同体を含む、テルムス・アクァーティクス(Thermus aquaticus)のポリメラーゼ;自然発生のポリメラーゼ(Tth)ならびにその誘導体および相同体などを含む、テルムス・テルモフィルス(Thermus thermophilus)のポリメラーゼを含む。本発明における使用のためのポリメラーゼは、精製形態で使用することもでき、非精製形態で使用することもできる。
【0040】
方法の第1の工程で産生される反応混合物の別の成分は、鋳型核酸である。鋳型として用いられる核酸は、一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もあり、ここで、核酸は、典型的に、デオキシリボ核酸(DNA)である。鋳型核酸の長さは、50bpという短さでもありうるが、通常は少なくとも約100bpの長さであることが可能であり、より通常には少なくとも約150bpの長さであることが可能であり、10,000bp以上という長さであることが可能であり、例えば、ゲノムDNA抽出物またはその消化物などを含む、50,000bp以上の長さでありうる。核酸は、溶液中に遊離させることもでき、一方または両方の端部において非鋳型核酸を隣接させることもでき、例えば、プラスミドなど、ベクター内に存在させることもでき、唯一の基準は、核酸が、プライマー伸長反応への関与に利用可能なことである。鋳型核酸は、精製形態で存在させることもでき、他の非鋳型核酸との複合体混合物中、例えば、細胞内DNA調製物などの中に存在させることもできる。
【0041】
鋳型核酸は、PCRが実施される用途に応じて、様々な異なる供給源に由来してもよく、このような供給源には、核酸を含む生物、すなわち、ウイルス;原核生物、例えば、細菌、古細菌、および藍色細菌;ならびに真核生物、例えば、鞭毛虫、アメーバおよびそれらの類縁生物、アメーバ状寄生虫、繊毛虫類など、原生生物界のメンバー;粘菌、非細胞性粘菌、細胞性粘菌、水生菌、真正粘菌、接合菌、子嚢菌、ホウキタケ類、不完全真菌など、真菌界のメンバー;藻類、蘚類、苔類、ツノゴケ類、ヒカゲノカズラ、トクサ類、シダ類、裸子植物類および顕花植物類、単子葉植物類および双子葉植物類の両方などの植物;ならびに海綿動物類、刺胞動物門のメンバー、例えば、クラゲ、サンゴなど、有櫛動物類、蠕虫類、ワムシ類、回虫類、環形動物類、軟体動物類、節足動物類、棘皮動物類、キボシムシ類、ならびに爬虫類、魚類、鳥類、ヘビを含む脊椎動物、ならびに哺乳動物、例えば、齧歯動物、ヒトなどを含む霊長動物を含む動物が挙げられる。鋳型核酸は、その自然発生の供給源から直接に使用することもでき、かつ/または当技術分野で知られた多数の異なる方途で前処理することもできる。いくつかの実施形態では、鋳型核酸は、合成供給源に由来しうる。
【0042】
主題法の第1の工程において産生される反応混合物の次の成分は、プライマー伸長反応において採用されるプライマー、例えば、PCRプライマー(幾何級数的増幅において採用されるフォワードプライマーおよびリバースプライマー、または線形的増幅において採用される単一のプライマーなど)である。各プライマー伸長反応ミックスは、少なくとも2つのプライマー(線形的増幅の場合)を含み、通常は3つのプライマーを含み、より通常には、SNPジェノタイピング反応の場合、5つまたは7つのプライマーを含むことになろう。プライマー伸長反応ミックスは、プライマーの一方または両方が、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有する線形的増幅の場合、少なくとも蛍光ドナー標識されたプライマー、相補的なアクセプター、消光剤標識されたプライマーを含むことになろう。
【0043】
より通常には、指数関数的な増幅の場合、プライマー伸長ミックスは、少なくとも蛍光ドナー標識されたプライマーおよび相補的なアクセプター、消光剤標識されたプライマー、ならびにリバース非標識プライマーを含み、ここで、プライマーのうちの1つまたはいずれかは、少なくとも1つのホスホロチオエート基を含有することになろう。最も通常には、ユニバーサルレポーターシステムを使用する指数関数的な増幅の場合、プライマー伸長ミックスは、少なくとも蛍光アクセプター標識されたプライマーおよび相補的なドナー、消光剤標識されたプライマー、リバース非標識プライマーおよびテイルドフォワードプライマーを含み、ここで、プライマーのうちの1つまたはいずれかは、少なくとも1つのホスホロチオエート修飾を含有することになろう。鋳型核酸(本明細書の以下では、便宜上鋳型DNAと称する)と接触させるオリゴヌクレオチドプライマーは、アニーリング条件下(下記でより詳細に記載される)では、相補的な鋳型DNAとのハイブリダイゼーションをもたらすのに十分な長さとなろうが、重合化条件下では、鋳型DNAと共に安定的なハイブリッド体を形成するのに不十分な長さとなろう。プライマーは、少なくとも10bpの長さ、例えば、少なくとも15bpまたは16bpの長さでありうる。プライマーは、30bp以上の長さであることが可能であり、例えば、プライマーの長さは、約20〜35bpの長さなど、18〜60bpの長さでありうる。鋳型DNAは、プライマー伸長が所望されるのか、鋳型DNAの線形的増幅が所望されるのか、鋳型DNAの指数関数的な増幅が所望されるのかに応じて、単一のプライマーと接触させることもでき、2つのプライマー(フォワードプライマーおよびリバースプライマー)のセットと接触させることもできる。単一のプライマーを採用する場合、プライマーは、鋳型DNAの3'端のうちの1つと相補的であることが典型的であり、2つのプライマーを採用する場合、プライマーは、二本鎖鋳型DNAの2つの3'端と相補的であることが典型的である。
【0044】
本明細書で使用される「核酸」とは、DNA、RNA、一本鎖または二本鎖、およびその任意の化学的修飾を意味する。修飾は、さらなる電荷、分極性、水素結合、静電相互作用、および官能基を核酸へと組み込む他の化学基を付与する修飾を含むがこれらに限定されない。このような修飾は、2'位の糖修飾、5位のピリミジン修飾、8位のプリン修飾、環外アミンにおける修飾、4-チオウリジンによる置換、5-ブロモ-ウラシルまたは5-ヨード-ウラシルによる置換;骨格修飾、メチル化、イソシチジンおよびイソグアニジンなどであるイソ塩基など、非標準塩基対合の組合せを含むがこれらに限定されない。修飾はまた、キャッピングなどの3'修飾および5'修飾もを含みうる。
【0045】
本明細書で使用される「相補的な」とは、水素結合によりピリミジンへと連結されたプリンからなる窒素性塩基の対であって、DNAまたはDNAとRNAとを接合するハイブリッド分子の相補的な鎖を結びつける対を指す。
【0046】
本明細書で使用される「蛍光基」とは、選択された波長を有する光により励起されると、異なる波長の光を発する分子を指す。蛍光基はまた、「フルオロフォア」とも称される場合がある。
【0047】
本明細書で使用される「蛍光修飾基」とは、蛍光基からの蛍光発光を任意の形で変化させうる分子を指す。蛍光修飾基は一般に、エネルギー移動の機構を介してこれを達成する。蛍光修飾基の素生に応じて、蛍光発光は、減衰、完全な消光、増強、波長のシフト、極性のシフト、蛍光寿命の変化を含むが、これらに限定されない多数の改変を受けることができる。蛍光修飾基の1つの例は、消光基である。
【0048】
本明細書で使用される「エネルギー移動」とは、蛍光基の蛍光発光が蛍光修飾基により改変されるプロセスを指す。蛍光修飾基が消光基である場合、蛍光基からの蛍光発光は減衰する(消光される)。エネルギー移動は、蛍光共鳴エネルギー移動を介して生じる場合もあり、直接的エネルギー移動を介して生じる場合もある。これらの2つの場合における正確なエネルギー移動の機構は異なる。本出願におけるエネルギー移動に対する任意の言及は、これらの機構的に顕著に異なる現象の全てを包摂することを理解されたい。本明細書では、また、エネルギー移動を、蛍光エネルギー移動またはFETとも称する。
【0049】
本明細書で使用される「エネルギー移動対」とは、エネルギー移動に関与する任意の2つの分子を指す。分子のうちの一方は、蛍光基として作用し、他方は、蛍光修飾基として作用することが典型的である。好ましい本発明のエネルギー移動対は、蛍光基および消光基を含む。場合によっては、蛍光基と蛍光修飾基との間の顕著な差違は、あいまいになりうる。例えば、ある状況下において、2つの隣接するフルオレセイン基は、直接的エネルギー移動を介して、互いの蛍光発光を消光させうる。この理由から、本出願におけるエネルギー移動対の個々のメンバーの素生に制限はない。必要なことは、個々のメンバー間の距離がある臨界量だけ変化すると、エネルギー移動対の分光学的特性が全体として、何らかで測定可能なように変化することだけである。
【0050】
「エネルギー移動対」とは、その中でエネルギー移動が生じる単一の複合体を形成する分子群を指すのに使用される。このような複合体は、例えば、相互に異なりうる2つの蛍光基および1つの消光基、2つの消光基および1つの蛍光基、または複数の蛍光基および複数の消光基を含みうる。複数の蛍光基および/または複数の消光基が存在する場合、個々の基は相互に異なりうる。
【0051】
本明細書で使用される「プライマー」とは、核酸鎖と相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下(例えば、厳密なハイブリダイゼーション条件下)に置かれると、合成の開始点として作用することが可能なオリゴヌクレオチドを指す。本明細書では、「オリゴヌクレオチド配列」という用語を、プライマーを指すのに使用する場合があり、この逆の場合もある。
【0052】
本明細書で使用される「消光基」とは、蛍光基により発せられる光を少なくとも部分的に減衰させうる任意の蛍光修飾基を指す。本明細書では、この減衰を「消光」と称する。よって、消光基の存在下における蛍光基の照明は、予測されるより小さな強度の発光シグナルをもたらすか、なおまたは発光シグナルの完全な消滅をもたらす。消光は、蛍光基と消光基との間のエネルギー移動を介して生じる。
【0053】
本明細書で使用される「蛍光共鳴エネルギー移動」または「FRET」とは、励起された蛍光基により発せられた光が、蛍光修飾基により、少なくとも部分的に吸収される、エネルギー移動の現象を指す。蛍光修飾基が消光基である場合、この基は、吸収された光を、異なる波長の光として放射する場合もあり、熱として散逸させる場合もある。FRETは、蛍光基の発光スペクトルと消光基の吸収スペクトルとの重複に依存する。FRETはまた、消光基と蛍光基との間の距離にも依存する。ある臨界距離を上回ると、消光基は、蛍光基により発せられる光を吸収することが不可能となるか、またはわずかに吸収しうるに過ぎなくなる。
【0054】
本明細書で使用される「テイルドプライマー」とは、一方は、対象の標的鋳型DNAに対して特異的であり、他方は、あらゆる異なるPCR反応内および顕著に異なるPCR反応内に存在するユニバーサルプライマーからの産物の産生のための鋳型として用いられる固有の配列である、2つのドメインを含有するオリゴヌクレオチドを指す。
【0055】
本明細書で使用される「直接的エネルギー移動」とは、蛍光基と蛍光修飾基との間の光子の移行が生じないエネルギー移動機構を指す。単一の機構に束縛されずに述べると、直接的エネルギー移動では、蛍光基と蛍光修飾基とが、電子構造において互いに干渉し合うことが考えられる。蛍光修飾基が消光基である場合、これは、消光基により、蛍光基が光を発することもなお阻止される結果をもたらすであろう。
【0056】
一般に、直接的エネルギー移動による消光は、FRETによる消光より効果的である。実際、FRETにより特定の蛍光基を消光させない(必要な蛍光基とのスペクトルの重複を有さないため)いくつかの消光基は、直接的エネルギー移動により、効果的な消光が可能となる。さらに、いくつかの蛍光基は、直接的エネルギー移動を引き起こすのに十分な程度に他の蛍光基に対して近接する場合、消光基自体としても作用しうる。例えば、これらの条件下で、2つの隣接するフルオレセイン基は、互いの蛍光を効果的に消光させうる。これらの理由で、本発明の実施に有用な蛍光基および消光基の性質には制限が存在しない。
【0057】
「厳密なハイブリダイゼーション条件」の例は、50℃以上および6.0×SSC(900mMのNaCl/90mMのクエン酸ナトリウム)におけるハイブリダイゼーションである。厳密なハイブリダイゼーション条件の別の例は、溶液: 50%のホルムアミド、6×SSC(900mMのNaCl、90mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、10%の硫酸デキストラン、および20ug/mlの変性処理およびせん断処理したサケ精子DNA中、42℃以上で、一晩にわたるインキュベーションである。厳密なハイブリダイゼーション条件とは、上記の代表的な条件と少なくとも同程度に厳密なハイブリダイゼーション条件であり、ここで、条件は、それらが、上記の具体的な厳密条件の少なくとも約80%厳密であり、典型的に、少なくとも約90%厳密である場合に、少なくとも上記の具体的な厳密条件と同程度に厳密であると考えられる。当技術分野で、他の厳密なハイブリダイゼーション条件が知られており、これらもまた、採用することができる。
【0058】
本明細書では、同一な配列に対する言及は、相互に同一であるかまたは実質的に相同な配列を意味すると解釈することができる。
【0059】
本発明の使用の例は、以下を含む。
【0060】
PCR産物の直接的な検出:
図1で例示されるこの実施形態は、オリゴヌクレオチドプライマーを利用してPCRプロセスを開始させる。この従来のプライマーは、対象の鋳型領域を指向し、したがって、反応の特異性を駆動する。このオリゴヌクレオチドにはまた、5'端における蛍光標識も施す。多数の適するフルオロフォアが存在し、一般的な選択は、FAM(フルオレセインの誘導体)である。最後に、反応物中には、FAM標識されたオリゴヌクレオチドに対してアンチセンスの3'消光剤標識されたオリゴヌクレオチドも含まれる。多数の適する標識が存在するが、それらの中では、Black Hole消光剤シリーズの標識が一般的な選択である。消光剤オリゴヌクレオチドの長さが、反応のTaを上回るTmをもたらすのに十分な程度に長いという条件で、任意のリアルタイムPCR測定器(ABI 7900 Prism測定器など)上のPCRプロセスの各サイクルにおける産物の生成を評価することができる。代替的に、Tmが反応のTaより低い消光オリゴヌクレオチドを採用することもできる。PCR後、反応物を室温まで冷却し、任意のこのようなリアルタイムの測定器上、および、これに加えて、任意の蛍光プレートリーダー(BMG Pherastarなど)上で、産物を評価することができる。
【0061】
2つの標識オリゴヌクレオチド(消光剤標識およびフルオロフォア標識されたオリゴヌクレオチド)の相補性に起因して、それらは、相互にハイブリダイズする。このハイブリダイゼーションにより、消光剤標識は、フルオロフォアに極めて近接し、これにより、488nm(FAMの最適の励起波長)で励起された場合の、FAM分子からの全ての蛍光シグナルを消光させる。
【0062】
反応物にはまた、PCRプライマー対を創出するための、従来のリバースプライマーも含まれる。次いで、PCRプロセスを開始させると、PCR産物の生成が始まる。
【0063】
PCRの最初の数サイクルの後、蛍光プライマーに対するアンチセンス配列を作り出す。このプロセスの間、消光剤オリゴヌクレオチドは、もはや結合しておらず、これにより、5'FAM分子を含有する単位複製配列が産生される。これが生じると、PCRプロセスにより、二本鎖の単位複製配列DNAが産生されるので、消光オリゴは、FAM標識されたオリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることがもはや可能でなくなる。消光オリゴヌクレオチドは、もはやFAMオリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることが可能でないので、次いで、作り出されたPCR産物の量と正比例するシグナルを発生させる。
【0064】
PCR産物の間接的(リアルタイムにおける)検出
図2で例示されるこの実施形態は、従来のオリゴヌクレオチド(プライマー)PCRを利用してプロセスを開始させる。この従来のプライマーは、対象の単位複製配列領域を指向しないDNA配列でテイリングされており、このため、このテイルは、本質的に不活性である。このテイル配列は、プライマーの5'部分に配置される。反応物にはまた、従来のプライマーのテイル配列領域と同一であるかまたは実質的に相同な、単一の蛍光標識オリゴヌクレオチドも含まれる。多数の適するフルオロフォアが存在し、一般的な選択は、FAM(フルオレセインの誘導体)である。最後に、反応物中には、FAM標識されたオリゴヌクレオチドに対してアンチセンスの3'消光剤標識されたオリゴヌクレオチドも含まれる。多数の適する標識が存在するが、それらの中では、Black Hole消光剤シリーズの標識が一般的な選択である。
【0065】
消光剤オリゴヌクレオチドの長さが、反応のTaを上回るTmをもたらすのに十分な程度に長いという条件で、任意のリアルタイムPCR測定器(ABI 7900 Prism測定器など)上のPCRプロセスの各サイクルにおける産物の生成を評価することができる。代替的に、Tmが反応のTaより低い消光オリゴヌクレオチドを採用することもできる。PCR後、反応物を室温まで冷却し、任意のこのようなリアルタイムの測定器上、および、これに加えて、任意の蛍光プレートリーダー(BMG Pherastarなど)上で、産物を評価することができる。
【0066】
2つの標識オリゴヌクレオチドの相補性に起因して、それらは、相互にハイブリダイズする。このハイブリダイゼーションにより、消光剤標識は、フルオロフォアに極めて近接し、これにより、488nm(FAMの最適の励起波長)で励起された場合の、FAM分子からの全ての蛍光シグナルを消光させる。次いで、PCRプロセスを開始させると、PCR産物の生成が始まる。PCRの最初の数サイクルの後、蛍光プライマーに対するアンチセンス配列を作り出す。次いで、PCRの間、蛍光PCRプライマーは、合成を開始させることが可能であり、合成を開始させる。これにより、5'FAM分子を含有する単位複製配列が産生される。これが生じると、PCRプロセスにより、二本鎖の単位複製配列DNAが産生されるので、消光オリゴは、FAM標識されたオリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることがもはや可能でなくなる。消光オリゴヌクレオチドは、もはやFAM オリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることが可能でないので、次いで、作り出されたPCR産物の量と正比例するシグナルを発生させる。
【0067】
作り出されたテイル領域のアンチセンス配列が、単一の蛍光標識オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする限りにおいて、テイルドプライマーのテイル領域は、単一の蛍光標識オリゴヌクレオチドと同一である必要がない。
【0068】
PCR産物の間接的な(終点における)検出(SNPジェノタイピング):
図3で例示されるこの実施形態は、図2で記載した同じフルオロフォアおよび消光剤で標識されたオリゴヌクレオチド対を利用する。反応図式は、少数の改変を除けば同一である。
【0069】
SNPジェノタイピングを達成するには、2つの蛍光標識プライマーおよび対応する消光剤標識されたオリゴヌクレオチドの使用が必要である。ここでもまた、各プライマーは、固有の配列でテイリングされており、反応物には、5'蛍光標識プライマーが含まれる。2つの適する色素は、FAMおよびHEXであり、これらは、互いからスペクトル分解可能である。2つのプライマー(非テイリング部分;一般にフォワードプライマーと称する)は、対象のDNAを指向する。プライマーのこの部分では、それらは、典型的に、それらの3'末端塩基において、単一のヌクレオチドだけ異なる。各プライマーは、対象のDNA内の多型塩基を指向する。PCRを実行し、2つのプライマーは、3'塩基が完全にマッチした場合に限り合成を開始させる。ミスマッチが生じる場合、合成は進行しない。
【0070】
反応の間、遺伝子型に応じて、特異的なテイルは、合成を開始させることが可能である(または、ヘテロ接合体の場合は、両方のオリゴヌクレオチドが、合成を開始させることが可能である)。ここでもまた、これにより、プライマーの蛍光テイル部分が、PCR産物へと組み込まれ、これにより、消光剤オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが妨げられる。したがって、シグナルは、オリゴヌクレオチドのうちのいずれが合成を開始させるのかに従い発生する。次いで、両方のフルオロフォアについて、蛍光プレートリーダー上の反応を読み取る。次いで、得られたそれらのデータをプロットし、1つのフルオロフォアのクラスタープロットを、他のクラスタープロットに重ねて作成する。次いで、クラスタープロットに基づき、得られた遺伝子型を決定することができる。
【0071】
Taqポリメラーゼの5'-3'ヌクレアーゼ活性の使用を伴うPCR産物の均一系検出における、フルオロフォア-消光剤対によるオリゴシステムのさらなる使用について記載する。
【0072】
本発明を採用して、特異性、および別途taqmanとしても知られる5'ヌクレアーゼアッセイにおいてもまた生じるプライマー二量体形成について改善することができる。
【0073】
本明細書および付属の特許請求の範囲では、単数形である「ある(a)」、「ある(an)」、および「その」は、文脈によりそうでないことが明確に指示されない限り、複数形の言及を含む。別途規定されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を有する。
【0074】
値の範囲が提示される場合は、その範囲の上限と下限との間の、文脈によりそうでないことが明確に指示されない限りにおいて、下限の単位の10分の1までの各介在値、およびその言明された範囲内の他の任意の言明された値または介在値が、本発明内に包摂されることが理解される。これらの小範囲の上限および下限は、その小範囲内に独立に含めることができ、これもまた、本発明内に包摂されるが、言明された範囲内で特異的に除外された任意の限界にも従う。言明された範囲が、限界の一方または両方を含む場合、これらの含まれた限界の一方または両方を除外する範囲もまた本発明に含まれる。
【0075】
本明細書で言及される全ての刊行物は、記載される本発明との関連で使用されうる刊行物において記載されている構成要素を記載および開示することを目的として、参照により可能な限り完全な程度で、本明細書に組み込まれる。
【0076】
ここで、例示を目的とするものであり、本発明の範囲の限定としてはみなされないものとする、以下の実施例を参照することにより、本発明について記載しよう。
【実施例1】
【0077】
略号:
FAM:6-カルボキシフルオレセイン
HEX:2',4',5',7',1,4-ヘキサクロロフルオレセイン
Dabsyl:非蛍光の暗色の消光剤
【0078】
7つのオリゴヌクレオチドをデザインしたが、それらの配列は、以下に見出すことができる[配列中、*は、S修飾の使用を示す]。

1)半S FAM蛍光標識オリゴヌクレオチド:
5'-FAM-G*CG*AT*TA*GC*CG*TT*AG*GA*TG*A3' (配列番号3)

2)半S HEX蛍光標識オリゴヌクレオチド: 5'-HEX-G*TC*GG*TG*AA*CA*GG*TT*AG*AG*A3' (配列番号7)

3)基準FAM消光剤: 5'CCTAACGGCTAATCGC-3'Dabsyl (配列番号9)

4)基準HEX消光剤: 5'AACCTGTTCACCGAC-3'Dabsyl (配列番号13)

5)対立遺伝子特異的なプライマー1: 5'GCGATTAGCCGTTAGGATGACTGAGTGCAGGTTCAGACGTCC3' (配列番号17)

6)対立遺伝子特異的なプライマー2: 5'GTCGGTGAACAGGTTAGAGACTGAGTGCAGGTTCAGACGTCT3' (配列番号18)

7)一般的なリバースプライマー: 5'CTCCCTTCCACCTCCGTACCAT3' (配列番号19)
【0079】
この実施例では、FAM標識消光プライマーは、16マーのオリゴヌクレオチド配列を有し、FAM標識プライマー/レポータープローブより2ヌクレオチドを超えて短く、同様に、HEX標識消光プライマーは、15マーのオリゴヌクレオチド配列を有し、HEX標識プライマー/レポータープローブより2ヌクレオチドを超え短いことに注意されよう。したがって、より長いFAM標識またはHEX標識プライマー/レポータープローブは、PCRプロセスのアニーリング工程のTaである57℃以上のTmを有し、プロセスにおいて鋳型とアニールするのに対し、より短い消光プライマーは、アニーリング工程のTaである57℃以下であり、鋳型とアニールしないであろう。
【0080】
全てのオリゴヌクレオチドは、10mMのトリス/HCl pH8.0中に200μMの初期濃度まで希釈した。全てのさらなる希釈は、この希釈剤中で実行した。以下の成分を含むアッセイミックスを創出した。

(1)0.16uMの対立遺伝子特異的なプライマー1
(2)0.16uMの対立遺伝子特異的なプライマー2
(3)0.41uMのリバース(一般的な)プライマー
(4)0.1uMのFAM標識オリゴヌクレオチド
(5)0.1uMのHEX標識オリゴヌクレオチド
(6)0.5uMの消光剤標識されたオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド4に対してアンチセンス)
(7)0.5uMの消光剤標識されたオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド5に対してアンチセンス)
(8)30〜90単位/mLのN末端切断型Taqポリメラーゼ
(9)10mMのトリス/HCl pH8.3
(10)10mMのKCl
(11)1.8mMの塩化マグネシウム
(12)165.2uMのdNTP
(13)212.5nMの5-カルボキシ-X-ローダミン、SE (5-ROX、SE)
【0081】
384ウェルのマイクロタイタープレートのウェルA1〜B24へと、44例の白人個体に由来する10ngずつのゲノムDNAを添加した。残りの4ウェルは、空のままとされ、陰性対照ウェルとして用いられた。次いで、このプレートを50℃で1時間にわたり乾燥させた。
【0082】
乾燥させたプレートのウェルA1〜B24へと、5μLずつのアッセイミックスを添加し、Fusion transmission diode laser plate sealer (KBioscience UK Ltd)を使用して、プレートを密封した。次いで、プレートを、Hydrocycler (KBioscience UK Ltd)内の以下の条件下でサーマルサイクリングにかけた。

94℃で15分間にわたる、ホットスタートの起動

94℃で20秒間
61〜55℃で60秒間(1サイクル当たり0.8℃ずつ降下させる)
上記による10サイクル

94℃で20秒間
55℃で60秒間
上記による26サイクル
【0083】
サーマルサイクリングの後、BMG Pherastarプレートリーダーを使用して、各ウェルと関連する蛍光を決定した。各ウェルは、以下の波長の組合せで、3回にわたり読み取った。
FAM励起: 485nm、FAM発光: 520nm
HEX励起: 535nm、HEX発光: 556nm
ROX励起: 575nm、ROX発光: 610nm
【0084】
次いで、得られたデータを、X軸上に、ROXで除したFAMシグナルとしてプロットし、Y軸上に、ROXで除したHEXシグナルとしてプロットした。
【0085】
得られた図4の散布図から分かる通り、各々の遺伝子型と関連する、3つの明確に識別可能な群を見ることができ、検出技術の有効性を明確に示している。
【実施例2】
【0086】
実施例1で記載したプロトコールと類似のプロトコールに従い、アッセイを実行して、(i)非S修飾、(ii)半S修飾(代替的なホスホロチオエート)、および(iii)完全S修飾の各配置の蛍光標識オリゴヌクレオチドの使用を比較した。作成されたデータを、図5に示す。アッセイ1について示すデータは、配置(i)、(ii)および(iii)(上記)の使用を明示し、アッセイ2についてのデータは、配置(i)および(ii)を明示している。いずれのアッセイでも、消光剤オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート修飾を有していなかった。
【0087】
ホスホロチオエート修飾されたフルオロフォアの全ての変異体について、特異性の増強および鋳型制御を伴わない増幅の低減(散布図の下方左側を参照されたい)が観察された。蛍光標識オリゴヌクレオチドの全ての塩基におけるホスホロチオエート修飾の使用は、PCR速度およびシグナル強度に対してある程度の効果を及ぼした。非修飾消光剤を伴う、フルオロフォア標識されたプライマー(半S修飾と称する)の代替的な塩基におけるホスホロチオエート修飾の使用は、PCRの弁別およびシグナル強度を増強するために最適であることが判明し、よって、これは、本発明の好ましい実施形態を表す。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図4
図5-1】
図5-2】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]