(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダ、該シリンダに収容されるピストン、及び該ピストンがブレーキ作動方向に移動するように該ピストンを付勢する駐車用バネを有し、車両の駐車時に用いられる駐車バネブレーキ機構と、
前記ピストンの付勢力を、制動対象の被押圧部を押圧するブレーキ出力部へ伝達するブレーキ力伝達部と、
前記ピストンの付勢力を前記ブレーキ力伝達部に伝達又は遮断するように構成されたクラッチ機構と、
前記クラッチ機構側に進出した進出状態では先端部が前記クラッチ機構に係合する一方、前記クラッチ機構から退避する退避状態では前記先端部の前記クラッチ機構に対する係合が解除されるように構成され、前記進出状態で前記駐車バネブレーキ機構が作動すると前記ブレーキ力伝達部の前記ピストンに対する相対変位を規制する一方、前記駐車バネブレーキ機構の作動時に前記退避状態になると前記ブレーキ力伝達部の前記ピストンに対する相対変位を許容するラッチ部材と、
前記ラッチ部材の進出方向に突出するように該ラッチ部材に形成された突出部、の先端に当接するように配置された傾斜部を有し、前記ラッチ部材が退避状態になると前記ブレーキ作動方向に進出して前記傾斜部で前記ラッチ部材を該ラッチ部材の退避方向へ押圧するラッチロック部材と、
前記ラッチロック部材が進退可能なように該ラッチロック部材を案内するガイド部と、
前記ラッチロック部材が前記ガイド部に対して該ラッチロック部材の進退方向周りに回転するのを防止する回転防止部と、を備え、
前記クラッチ機構は、前記ピストンに対して前記クラッチ機構を前記ブレーキ作動方向へ付勢する位置調整バネを受けるバネ座部を有し、
前記回転防止部は、前記ラッチロック部材に設けられる切欠き部と、前記クラッチ機構から前記切欠き部側に延びる延出部とにより構成され、前記延出部は、前記ラッチロック部材の前記切欠き部に接触し得るように前記バネ座部に設けられることを特徴とする、ブレーキシリンダ装置。
シリンダ、該シリンダに収容されるピストン、及び該ピストンがブレーキ作動方向に移動するように該ピストンを付勢する駐車用バネを有し、車両の駐車時に用いられる駐車バネブレーキ機構と、
前記ピストンの付勢力を、制動対象の被押圧部を押圧するブレーキ出力部へ伝達するブレーキ力伝達部と、
前記ピストンの付勢力を前記ブレーキ力伝達部に伝達又は遮断するように構成されたクラッチ機構と、
前記シリンダに対して前記クラッチ機構を前記ブレーキ作動方向と反対方向へ付勢する第1位置調整バネと、
前記ピストンに対して前記クラッチ機構を前記ブレーキ作動方向へ付勢する第2位置調整バネと、
前記クラッチ機構側に進出した進出状態では先端部が前記クラッチ機構に係合する一方、前記クラッチ機構から退避する退避状態では前記先端部の前記クラッチ機構に対する係合が解除されるように構成され、前記進出状態で前記駐車バネブレーキ機構が作動すると前記ブレーキ力伝達部の前記ピストンに対する相対変位を規制する一方、前記駐車バネブレーキ機構の作動時に前記退避状態になると前記ブレーキ力伝達部の前記ピストンに対する相対変位を許容するラッチ部材と、
前記ラッチ部材の進出方向に突出するように該ラッチ部材に形成された突出部、の先端に当接するように配置された傾斜部を有し、前記ラッチ部材が退避状態になると前記ブレーキ作動方向に進出して前記傾斜部で前記ラッチ部材を該ラッチ部材の退避方向へ押圧するラッチロック部材と、
前記ラッチロック部材が進退可能なように該ラッチロック部材を案内するガイド部と、
前記ラッチロック部材が前記ガイド部に対して該ラッチロック部材の進退方向周りに回転するのを防止する回転防止部と、前記ラッチロック部材が前記ガイド部から脱落するのを防止する脱落防止部とを備え、
前記クラッチ機構は、前記第2位置調整バネを受けるバネ座部を有し、
前記バネ座部は、前記第2位置調整バネにおける前記クラッチ機構を付勢する側の端部を受ける受け部と、前記ラッチロック部材における退避方向側の端部に対向するように前記受け部から延出して前記脱落防止部として設けられる延出部とを有する
ことを特徴とする、ブレーキシリンダ装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されず、車両の駐車時に用いられる駐車バネブレーキ機構を有するブレーキシリンダ装置、及びそのブレーキシリンダ装置を備えるブレーキ装置に関して、広く適用することができるものである。
【0024】
尚、本実施形態のブレーキシリンダ装置及びブレーキ装置については、鉄道車両用として用いられる場合を例にとって説明する。また、本実施形態では、ブレーキ装置が踏面ブレーキ装置として構成された形態を例にとって説明するが、この通りでなくてもよい。即ち、本発明は、踏面ブレーキ装置以外のブレーキ装置、例えば、ディスクブレーキ装置として構成されたブレーキ装置に対しても適用することができる。
【0025】
(第1実施形態)
[全体構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係るブレーキ装置1の一部断面を含む図である。また、
図2は、
図1に示すブレーキ装置1の一部を拡大して示す図であって、ブレーキ装置1に設けられるブレーキシリンダ装置2を示す図である。
図1及び
図2に示すブレーキ装置1は、図示が省略された制動対象としての車両(本実施形態における鉄道車両)に設置される。尚、
図1は、ブレーキ装置1が鉄道車両に設置された状態で、鉄道車両の車輪100の車軸方向からブレーキ装置1を見た図である。ブレーキ装置1は、踏面ブレーキ装置として構成されている。
【0026】
図1及び
図2に示すように、ブレーキ装置1は、ブレーキシリンダ装置2、ブレーキ出力部11、ロッド12、ロッド支持機構13、等を備えて構成されている。そして、ブレーキ装置1は、ブレーキシリンダ装置2が作動することで、ブレーキシリンダ装置2に対して相対移動可能に支持されたブレーキ出力部11がロッド12を介して駆動され、ブレーキ力を出力するように構成されている。
【0027】
尚、ロッド12は、車輪100の車軸方向に対して直交する方向に沿って延びるように設置されている。一方、ブレーキシリンダ装置2は、そのシリンダ本体23a及びカバー23bの軸方向が、ロッド12が延びる方向に対して略直交する方向に沿って延びるように、設置されている。そして、本実施形態では、ブレーキシリンダ装置2は、そのシリンダ本体23a及びカバー23bの軸方向が、車輪100が設けられる鉄道車両の上下方向に沿って延びるように、設置されている。
【0028】
ブレーキ出力部11は、制輪子として設けられ、ブレーキ出力部11は、ロッド12に連動して駆動されてブレーキ力を出力するように設けられている。そして、ブレーキ出力部11は、ライニング15、ライニング保持部16、等を備えて構成されている。
【0029】
ライニング15には、車輪100の踏面100a(被押圧部)に対して当接可能な制動面15aが設けられている。ブレーキ出力部11がロッド12によって駆動されることで、ライニング15の制動面15aが車輪100の踏面100aに当接して押し付けられる。そして、制動面15aが踏面100aに押し付けられることによって生じる摩擦により、車輪100の回転が制動される。
【0030】
ライニング保持部16は、ライニング15が固定され、ライニング15を保持する部材として設けられている。また、ライニング保持部16は、ロッド12の先端側の端部に対して、揺動自在に連結されている。尚、ロッド12の先端側は、ブレーキシリンダ装置2のシリンダ本体23aから突出した状態で配置されている。また、ライニング保持部16は、シリンダ本体23aに対して揺動自在に連結されたハンガー部材17に対しても揺動可能に連結されている。
【0031】
ロッド12は、ブレーキシリンダ装置2の作動に伴って駆動され、ブレーキシリンダ装置2からの出力をブレーキ出力部11に伝達する軸部材として設けられている。ロッド12は、ブレーキシリンダ装置2がブレーキ力を出力する際の作動に伴って、シリンダ本体23aから突出する方向(
図2の矢印A方向)に移動する。これにより、ロッド12は、ライニング15を車輪100に押し付けてブレーキ力を発生させる。また、ロッド12は、ブレーキシリンダ装置2がブレーキ力を解除する際の作動に伴ってシリンダ本体23aに退避する方向(
図2の矢印B方向)に移動する。これにより、ロッド12は、ライニング15を車輪100から離間させてブレーキ力を解除する。
【0032】
また、ロッド12は、ブレーキシリンダ装置2における後述の流体ブレーキ機構24の作動によって、
図2の矢印A方向に移動する。更に、ロッド12は、ブレーキシリンダ装置2における後述の駐車バネブレーキ機構25の作動に伴って付勢されることが可能に構成されている。尚、本実施形態のブレーキシリンダ装置2においては、駐車バネブレーキ機構25の作動は、流体ブレーキ機構24が作動したままの状態で行われる。そして、駐車バネブレーキ機構25が一旦作動した状態では、流体ブレーキ機構24の作動の状態によらず、ロッド12は、駐車バネブレーキ機構25からの付勢力によって付勢される状態が維持されることになる。
【0033】
ロッド支持機構13は、シリンダ本体23aの内部に設置されている。このロッド支持機構13は、ロッド12をシリンダ本体23aに対して揺動可能且つ変位可能に支持する機構として設けられている。そして、ロッド支持機構13には、外側ケース部18、内側ケース部19、固定ローラ20、可動ローラ21、戻しバネ22、等が備えられている。
【0034】
外側ケース部18は、筒状の部分を備えて構成されており、本実施形態では、2つの筒状の部材が直列に組み合わされて構成されている。外側ケース部18の内側には、内側ケース部19、ロッド12のブレーキ出力部11に連結される先端側と反対側の端部、等が収納されている。そして、外側ケース部18は、シリンダ本体23aに対して、ロッド12の軸方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。尚、ロッド12は、その軸方向が車輪100の車軸方向に対してほぼ直交する方向に沿って延びるように、配置されている。
【0035】
内側ケース部19は、外側ケース部18の内側に収納されている。そして、内側ケース部19には、ロッド12の先端側と反対側の端部の外周に設けられた外周ねじ部12aに螺合するねじ溝が内周に形成されたねじ穴19aが設けられている。尚、ロッド支持機構13には、外周ねじ部12aのねじ穴19aに対する螺合位置を変位させることで、ロッド12の内側ケース部19に対する相対位置を変位させる、位置調整機構が設けられている。
【0036】
また、内側ケース部19には、その外周に、球面の一部を成すような球面状の外周曲面19bが設けられている。そして、外側ケース部18には、内側ケース部19の外周曲面19bに対して摺動自在な内周曲面18aが設けられている。内周曲面18aは、球面の一部を成すような凹み球面状の曲面として形成されるとともに、外周曲面19bの曲率に対応する曲率の曲面として構成されている。摺動する外周曲面19bと内周曲面18aとにより、内側ケース部19と外側ケース部18とにおいては、球面軸受が構成されている。この球面軸受により、内側ケース部19が外側ケース部18に対して揺動自在に支持され、ロッド12がシリンダ本体23aに対して揺動可能に支持されている。
【0037】
固定ローラ20は、シリンダ本体23aに対する相対位置が固定されるとともにシリンダ本体23aに回転自在に支持された円筒状のローラとして構成されている。固定ローラ20は、例えば、ロッド12の軸方向と平行な方向である外側ケース部18の軸方向に直交する方向において、外側ケース部18の両側に一対で設けられている。
【0038】
可動ローラ21は、外側ケース部18の壁部に対して外側で回転自在に支持された円筒状のローラとして構成されている。可動ローラ21は、例えば、外側ケース部18の軸方向に直交する方向において、外側ケース部18の両側に一対で設けられている。そして、各可動ローラ21は、その外周が各固定ローラ20に対向する位置で、各固定ローラ20に対して離間して配置されている。
【0039】
更に、可動ローラ21は、回転することで、シリンダ本体23aに対して転動して相対変位可能に支持されている。また、シリンダ本体23aには、ロッド12の軸方向とほぼ平行な方向に沿って可動ローラ21を転動させるガイド(図示省略)が設けられている。尚、可動ローラ21は、外側ケース部18に回転自在に支持されていなくてもよい。例えば、外側ケース部18に開口が設けられ、その開口を介して、可動ローラ21が内側ケース部19に対して回転自在に支持されていてもよい。
【0040】
戻しバネ22は、一端側の端部がシリンダ本体23aの内側の段部に対して当接し、他端側の端部が外側ケース部18の内側の段部に対して当接するコイルバネとして設けられている。そして、戻しバネ22は、圧縮された状態で設置されている。
【0041】
戻しバネ22は、上記のように設置されていることで、ロッド12の軸方向と略平行な方向に沿って、シリンダ本体23aに対して外側ケース部18を車輪100から離間する方向(
図2の矢印B方向)に付勢するように構成されている。戻しバネ22が、車輪100から離間する方向に外側ケース部18を付勢することで、外側ケース部18とともに、内側ケース部19及びこれに螺合するロッド12が、車輪100から離間する方向に付勢されることになる。この戻しバネ22の付勢力により、ブレーキシリンダ装置2がブレーキ力を解除する際の作動に伴う後述のロッド駆動部14の変位に伴って、ロッド12が、シリンダ本体23aに退避する方向に移動することになる。
【0042】
ブレーキシリンダ装置2のブレーキ力を出力する際の作動に伴って第1ピストン31及びロッド駆動部14がロッド支持機構13に向かって移動すると、固定ローラ20及び可動ローラ21は、以下のように動作する。具体的には、固定ローラ20は、シリンダ本体23aに対して同じ位置で回転する一方、可動ローラ21は、ロッド駆動部14の移動に伴って車輪100側に向かって(
図2の矢印A方向に向かって)付勢される。
【0043】
上記により、可動ローラ21は、回転しながら、シリンダ本体23aに対して転動しながら車輪100側に向かって相対移動する。即ち、ロッド駆動部14の移動に伴って、ロッド駆動部14の楔状部分14aによって、固定ローラ20と可動ローラ21との間の間隔が広がるように、可動ローラ21が駆動される。そして、可動ローラ21とともに、外側ケース部18、内側ケース部19及びロッド12が、車輪100側に向かって移動することになる。これにより、ロッド12とともに移動するブレーキ出力部11のライニング15が車輪100の踏面100aに当接し、車輪100の回転が制動されることになる。
【0044】
[ブレーキシリンダ装置]
次に、ブレーキシリンダ装置2について詳しく説明する。
図3は、
図2に示すブレーキシリンダ装置2の一部を拡大して示す図である。ブレーキシリンダ装置2は、ブレーキ装置1に組み込まれた状態で、鉄道車両に設置される。そして、
図1及び
図2等に示すように、ブレーキシリンダ装置2は、ロッド駆動部14、シリンダ23、流体ブレーキ機構24、駐車バネブレーキ機構25、軸部26、伝達機構27(クラッチ機構)、ロック機構28、等を備えて構成されている。ブレーキシリンダ装置2における上記の各機構等は、例えば、鉄系材料等の金属材料を素材とする構成要素を主要な構成要素として形成されている。
【0045】
また、本実施形態では、ブレーキシリンダ装置2は、圧力流体としての圧縮空気によって作動するように構成されている。即ち、流体ブレーキ機構24及び駐車バネブレーキ機構25は、圧力流体として圧縮空気の供給及び排出が行われることで作動するように構成されている。そして、ブレーキシリンダ装置2は、流体ブレーキ機構24及び駐車バネブレーキ機構25の両方が作動可能な装置として構成されている。
【0046】
シリンダ23は、シリンダ本体23a及びカバー23bを有する。シリンダ本体23aは、筒状に形成された部分を有し、内側に流体ブレーキ機構24、前述のロッド支持機構13、ロッド駆動部14、等を収納している。そして、シリンダ本体23aには、ロック機構28、前述のブレーキ出力部11、前述のロッド12、等が設置されている。また、シリンダ本体23aには、カバー23bが固定されている。尚、カバー23bの内側には、駐車バネブレーキ機構25、軸部26、伝達機構27、等が収納されている。
【0047】
また、シリンダ本体23aは、例えば、鉄道車両の台車に固定されて設置されている。尚、シリンダ本体23a及びカバー23bの軸方向と、後述する流体ブレーキ機構24の第1ピストン31の軸方向と、後述する駐車バネブレーキ機構25の第2ピストン35の軸方向と、後述する軸部26のスピンドル38の軸方向とは、一致する方向として又は互いに平行な方向として構成されている。
【0048】
また、シリンダ本体23aには、第1ポート37a及び第2ポート37bが設けられている。第1ポート37aは、圧力流体供給源としての第1の圧縮空気供給源(図示省略)に接続されている。第2ポート37bは、圧力流体供給源である第2の圧縮空気供給源(図示省略)に接続されている。
【0049】
第1の圧縮空気供給源から供給される圧縮空気(圧力流体)は、上位のコントローラ(図示省略)からの指令に基づいて作動するブレーキ制御装置(図示省略)を介して第1ポート37aに供給される。そして、第1ポート37aからシリンダ本体23a内に供給された圧縮空気は、上記のコントローラからの指令に基づいて上記のブレーキ制御装置を介して排出される。また、第2の圧縮空気供給源から供給される圧縮空気(圧力流体)は、上記のコントローラからの指令に基づいて作動する駐車バネブレーキ制御電磁弁(図示省略)を介して第2ポート37bに供給される。そして、第2ポート37bからシリンダ本体23a内に供給された圧縮空気は、上記のコントローラからの指令に基づいて上記の駐車バネブレーキ制御電磁弁を介して排出される。
【0050】
流体ブレーキ機構24は、圧力流体としての圧縮空気の給排によって作動する。この流体ブレーキ機構24は、鉄道車両の運転時のブレーキ動作のために用いられる常用ブレーキ機構として設けられている。そして、流体ブレーキ機構24は、第1圧力室29、第1バネ30、第1ピストン31、等を備えて構成されている。
【0051】
第1圧力室29は、シリンダ本体23a内において第1ピストン31によって区画されることで形成されている。そして、第1圧力室29は、第1ポート37aに連通しており、前述の第1の圧縮空気供給源からの圧縮空気が供給される。また、第1圧力室29に供給された圧縮空気は、第1ポート37aから排出される。
【0052】
第1バネ30は、シリンダ本体23a内において第1ピストン31によって区画された領域に配置されており、第1ピストン31を介して第1圧力室29に対向するように配置されている。第1バネ30は、本実施形態では、圧縮された状態でシリンダ本体23a内に配置されて第1ピストン31を付勢するコイルバネとして設けられている。そして、第1バネ30は、その一端側の端部が第1ピストン31に当接してこの第1ピストン31を付勢するように配置されている。また、第1バネ30は、その他端側の端部がシリンダ本体23aの内壁に固定されたバネ受けプレート32に当接して支持されている。
【0053】
第1ピストン31は、その軸方向と平行にシリンダ本体23a内で往復動自在に配置されるとともに、シリンダ本体23aの内壁に対して摺動自在に配置されている。そして、第1ピストン31は、第1ポート37aから第1圧力室29に圧縮空気が供給されることで、圧縮された第1バネ30の弾性回復による付勢力に抗して移動するように構成されている。従って、流体ブレーキ機構24は、第1圧力室29と第1バネ30とが対向して作用する第1ピストン31を有し、第1圧力室29に圧縮空気が供給されることで第1バネ30の付勢力に抗して第1ピストン31が所定のブレーキ作動方向(
図3の矢印C方向)に移動するように構成されている。
【0054】
また、第1ピストン31には、第1圧力室29側と反対側において、ロッド駆動部14が固定されている。これにより、第1ピストン31が上記のブレーキ作動方向に移動すると、ロッド駆動部14は、第1ピストン31とともに、そのブレーキ作動方向に移動する。そして、ロッド駆動部14が第1ピストン31とともにブレーキ作動方向に移動することで、前述のロッド支持機構13を介してロッド12が駆動される。これにより、ロッド12によって駆動されるブレーキ出力部11からブレーキ力が出力される。
【0055】
ロッド駆動部14は、第1ピストン31の進退に伴ってロッド支持機構13を介してロッド12を駆動する部材(ブレーキ力伝達部)として設けられている。ロッド駆動部14は、シリンダ本体23aの内部に収納されている。そして、ロッド駆動部14は、楔状に形成された楔状部分14aを有する楔体として設けられている。また、ロッド駆動部14は、楔状部分14aが突出する基端部14bにおいて、第1ピストン31に固定されている。
【0056】
楔状部分14aは、基端部14bからロッド支持機構13に向かって突出するように設けられている。そして、楔状部分14aは、基端部14b側からロッド支持機構13側に向かって先細り形状の楔状に形成されている。楔状部分14aの先端側、即ち、楔状部分14aにおける基端部14b側と反対側は、固定ローラ20と可動ローラ21との間に挿入された状態で配置されている。また、楔状部分14aにおける固定ローラ20と可動ローラ21との間に挿入された先端側は、固定ローラ20の外周と可動ローラ21の外周とに接触するように、配置されている。尚、楔状部分14aは、固定ローラ20及び可動ローラ21の各組合せに対応して複数設けられていてもよい。また、楔状部分14aは、固定ローラ20及び可動ローラ21の複数の組み合わせのうちのいずれか1つの組み合わせに対応して1つ設けられていてもよい。
【0057】
ブレーキシリンダ装置2のブレーキ力を出力する際の作動に伴って第1ピストン31及びロッド駆動部14がロッド支持機構13に向かって移動すると、楔状部分14aに接触する固定ローラ20は、シリンダ本体23aに対して同じ位置で回転する。一方、楔状部分14aに接触する可動ローラ21は、ロッド駆動部14の移動に伴って、楔状部分14aによって車輪100側に向かって(
図2の矢印A方向に向かって)付勢される。
【0058】
駐車バネブレーキ機構25は、鉄道車両の駐車時にブレーキ状態を維持するために用いられる駐車用のブレーキ機構として設けられている。そして、駐車バネブレーキ機構25は、第2圧力室33、第2バネ34(駐車用バネ)、第2ピストン35(ピストン)、等を備えて構成されている。
【0059】
第2圧力室33は、カバー23b内において第2ピストン35によって区画されることで形成されている。そして、第2圧力室33は、第2ポート37bに連通しており、前述の第2の圧縮空気供給源からの圧縮空気が供給される。また、第2圧力室33に供給された圧縮空気は、第2ポート37bから排出される。
【0060】
第2バネ34は、カバー23b内において第2ピストン35によって区画された領域に配置されており、第2ピストン35を介して第2圧力室33に対向するように配置されている。第2バネ34は、本実施形態では、圧縮された状態でカバー23b内に配置されて第2ピストン35を付勢するコイルバネとして設けられている。そして、第2バネ34は、その一端側の端部がカバー23bの端部の内壁に当接して支持されている。また、第2バネ34は、その他端側の端部が第2ピストン35に当接してこの第2ピストン35を付勢するように配置されている。また、本実施形態では、第2バネ34は、複数(2つ)設けられている。そして、複数の第2バネ34は、同一の中心軸線を中心とした同心状に配置されている。尚、上記により、カバー23bは、駐車バネである第2バネ34及び駐車ピストンである第2ピストン35を内部に収納するように設けられている。
【0061】
第2ピストン35は、その軸方向と平行にカバー23b内で往復動自在に配置されるとともに、カバー23bの内壁に対して摺動自在に配置されている。第2ピストン35は、第1ピストン31と同一の方向に移動可能に設けられている。そして、第2ピストン35は、第2ポート37bから第2圧力室33に圧縮空気が供給されることで、圧縮された第2バネ34の弾性回復による付勢力に抗して、前述のブレーキ作動方向とは反対方向のブレーキ解除方向(
図3の矢印D方向)に移動するように構成されている。一方、第2ピストン35は、第2圧力室33内に供給された圧縮空気が第2ポート37bを通じて排出されることで、第2バネ34の付勢力により所定のブレーキ作動方向(
図3の矢印C方向)に移動するように構成されている。
【0062】
上記のように、第2ピストン35は、第2圧力室33と第2バネ34とが対向して作用するように構成されている。そして、駐車バネブレーキ機構25は、第2圧力室33に圧縮空気が供給されている状態から排出される状態へと移行することで、第2バネ34の付勢力によって付勢された第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動することで作動するように構成されている。
【0063】
尚、第2ピストン35において第2圧力室33に対向する端部は、カバー23bの周方向に沿って延びるリング状の端部として形成されている。また、シリンダ本体23aには、第2ピストン35のリング状の端部の内側で周方向に沿って筒状に形成された内側筒状部36が設けられている。そして、第2ピストン35のリング状の端部は、カバー23bの内壁に対して摺動するとともに内側筒状部36の外周に対しても摺動するように配置されている。
【0064】
また、シリンダ本体23aに形成された上記内側筒状部36には、筒状に形成されたガイド部23cが形成されている。ガイド部23cは、内側筒状部36における周方向の一部を軸方向に貫通孔23dが貫通することにより形成される。この貫通孔23dは、軸直角断面形状が円形となるように形成される。この貫通孔23dには、詳しくは後述する略丸棒状のラッチロックピン51が収容される。また、シリンダ本体23aにおける上記ガイド部23cの下方の部分には、逃がし孔53が形成されている。逃がし孔53は、ラッチロックピン51が挿通可能な大きさに形成されている。
【0065】
軸部26は、スピンドル38、軸受39、等を備えて構成されている。そして、軸部26は、スピンドル38の端部において第1ピストン31に連結され、第1ピストン31とともに変位するように設けられている。
【0066】
スピンドル38は、第1ピストン31に対して、ロッド駆動部14がブレーキ作動方向に向かって突出するように固定される側と反対側であるブレーキ解除方向に向かって突出するように配置されている。このスピンドル38は、第1ピストン31とは別体に形成された軸状の部材として設けられている。そして、スピンドル38は、後述の伝達機構27とともに駐車バネブレーキ機構25からの付勢力を第1ピストン31に伝達するように構成されている。
【0067】
また、スピンドル38は、第1ピストン31に連結される側の端部において、外周に沿って周方向に延びる凸状の段部38aが設けられている。そして、第1ピストン31の径方向における中央部分には、凹み部分が設けられ、この凹み部分の内周には、段部38aに対して係合する縁状に形成されたスピンドル保持部31aが設けられている。第1ピストン31におけるスピンドル保持部31aは、第1ピストン31がブレーキ作動方向に移動するときに、スピンドル38の端部の段部38aと係合し、スピンドル38をブレーキ作動方向に付勢する。
【0068】
軸受39は、例えば、ボール状の部材として設けられ、駐車バネブレーキ機構25からの付勢力によってスピンドル38に作用するスラスト荷重を受ける軸受として構成されている。そして、軸受39は、第1ピストン31の中央部分に設けられた上記の凹み部分に配置され、スピンドル38の端部と第1ピストン31との間で両者に当接した状態で配置されている。駐車バネブレーキ機構25からの付勢力は、後述の伝達機構27、スピンドル38、及び軸受39を介して、第1ピストン31に伝達される。
【0069】
伝達機構27は、駐車バネブレーキ機構25における第2ピストン35のブレーキ作動方向の付勢力を第1ピストン31とともに変位する軸部26に伝達する機構として設けられている。伝達機構27は、ねじ部40、クラッチホイール41、クラッチスリーブ42、クラッチボックス43、等を備えて構成されている。
【0070】
尚、伝達機構27は、第2ピストン35の径方向における内側に配置されている。第2ピストン35には、径方向の内側において、流体ブレーキ機構24側と反対側が外部に対して閉じられた状態の筒状の領域を区画する内側筒状部35aが設けられている。そして、内側筒状部35aの内側の筒状の領域に、伝達機構27の一部が配置されている。
【0071】
ねじ部40は、スピンドル38における第1ピストン31に連結される側と反対側の部分の外周に形成されたおねじ部分として設けられている。クラッチホイール41は、内周に形成されためねじ部分にてねじ部40に螺合する筒状のナット部材として設けられ、スピンドル38に対して、同一の中心軸線を中心とした同心状に配置されている。また、クラッチホイール41は、筒状に形成されたクラッチボックス43の内側で、クラッチボックス43に対して一対の軸受44を介して回転自在に支持されている。これにより、クラッチホイール41は、スピンドル38とクラッチボックス43との相対移動に伴って、ねじ部40に対して螺合する相対位置を変えながら、スピンドル38に対して回転して軸方向に相対変位可能に構成されている。
【0072】
クラッチスリーブ42は、筒状に形成され、クラッチボックス43の内側で、クラッチボックス43に対して、スピンドル38の軸方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。クラッチスリーブ42のブレーキ作動方向における端部(第1ピストン31側の端部)は、クラッチホイール41のブレーキ解除方向における端部(第1ピストン31側と反対側の端部)に対して対向して配置されている。クラッチスリーブ42のブレーキ解除方向における端部、即ち、クラッチスリーブ42のクラッチホイール41に対向する側と反対側の端部は、スラスト軸受として設けられた軸受45を介して、第2ピストン35における内側筒状部35aの端部に対して支持されている。軸受45は、クラッチスリーブ42の端部を第2ピストン35に対してスピンドル38の中心軸線を中心として回転可能に支持している。
【0073】
クラッチスリーブ42及びクラッチホイール41には、凹凸歯46aと凹凸歯46bとで構成された回転止め機構46が設けられている。凹凸歯46aは、クラッチホイール41におけるクラッチスリーブ42に対向する側の端部に形成され、クラッチホイール41の端部の周方向に亘って設けられている。凹凸歯46bは、クラッチスリーブ42におけるクラッチホイール41に対向する側の端部に形成され、クラッチスリーブ42の端部の周方向に亘って設けられている。凹凸歯46a及び凹凸歯46bは、互いに対向するクラッチホイール41の端部とクラッチスリーブ42の端部とが当接することで、互いに噛み合う形状の歯として形成されている。
【0074】
第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動してスピンドル38に対して相対移動すると、クラッチスリーブ42も第2ピストン35とともにスピンドル38に対して相対移動する。そして、クラッチスリーブ42は、スピンドル38に螺合したクラッチホイール41に当接し、凹凸歯46aと凹凸歯46bとが、噛み合う。クラッチスリーブ42は、クラッチボックス43に対して、軸方向にのみ変位可能で回転方向の変位が規制されている。このため、凹凸歯46aと凹凸歯46bとが噛み合うと、クラッチボックス43に対するクラッチホイール41の相対回転が規制されて止められることになる。
【0075】
クラッチボックス43は、ねじ部40、クラッチホイール41、及びクラッチスリーブ42が内側に配置される筒状の部材として設けられている。クラッチボックス43は、内側筒状部36の内周と内側筒状部35aの内周とに対して、スピンドル38の軸方向と平行な方向に沿って摺動して変位可能に支持されている。また、クラッチボックス43は、後述のロック機構28のラッチ部材49が係合していない状態では、内側筒状部36の内周と内側筒状部35aの内周とに対して、周方向にも摺動して回転変位可能に支持されている。
【0076】
また、クラッチボックス43は、内側に、内周に沿って延びる段部43aが設けられ、この段部43aに取り付けられた一対の軸受44を介して、クラッチホイール41を回転自在に保持している。また、クラッチボックス43は、内側において、クラッチスリーブ42をスピンドル38の軸方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に支持している。尚、クラッチボックス43の内周から内側に突出した突出部43bの端部が、クラッチスリーブ42の外周に形成された溝に対して摺動自在に嵌め込まれ、クラッチスリーブ42のクラッチボックス43に対するスライド移動方向がガイドされている。また、クラッチボックス43のシリンダ本体23a及び第2ピストン35に対する相対位置は、互いに逆方向にクラッチボックス43を付勢する2つの位置調整バネ47a,47bによって調整されている。また、クラッチボックス43の段部43aとクラッチスリーブ42の端部との間には、凹凸歯46aと凹凸歯46bとを互いに離間させる方向に付勢する離間用バネ48が設置されている。
【0077】
位置調整バネ47a,47bは、クラッチボックス43をブレーキ解除方向(
図3の矢印D方向)へ付勢する第1位置調整バネ47aと、クラッチボックス43をブレーキ作動方向(
図3の矢印C方向)へ向かって付勢する第2位置調整バネ47bとを有している。
【0078】
第1位置調整バネ47aは、一端側が内側筒状部36の内周におけるブレーキ作動方向側の部分から内方へ延出する円環部36aに当接する一方、他端側がクラッチボックス43の段部43aに当接している。これにより、第1位置調整バネ47aは、クラッチボックス43をシリンダ23に対してブレーキ解除方向へ付勢している。
【0079】
第2位置調整バネ47bは、一端側が内側筒状部35aにおける内周側に形成された段差部35bに当接する一方、他端側がクラッチボックス43の外周側に形成された段差部43dに取り付けられたバネ座部57に当接している。これにより、第2位置調整バネ47bは、クラッチボックス43を第2ピストン35に対してブレーキ作動方向へ付勢している。なお、内側筒状部35aの内周縁部には、面取り部35cが形成されている(
図4参照)。この面取り部35cは、第2位置調整バネ47bが座屈したときに内側筒状部35aの内周縁部に引っかかることに起因して、第2位置調整バネ47bが破損したりこじったりするのを防止するためのものである。
【0080】
図4は、
図3の一部を拡大して示す図である。上述のように、バネ座部57は、段差部43dに取り付けられている。バネ座部57は、受け部58及び延出部59を有し、これらが一体に形成されている。
【0081】
受け部58は、リング部58aと立設部58bとを有している。リング部58aは、内周縁部が段差部43dに嵌るリング状に形成されている。立設部58bは、リング部58aにおける外周縁部からブレーキ解除方向側へ延びる短い筒状に形成されている。受け部58におけるブレーキ解除方向側の面には、第2位置調整バネ47bにおけるブレーキ作動方向側の端部が当接している。延出部59は、立設部58bにおける先端部から径方向外方へ延びるフランジ状に形成されている。延出部59は、詳しくは後述する回転防止部5及び脱落防止部6として設けられる。
【0082】
ロック機構28は、
図1に示すように、シリンダ23から外側に一端側が突出するラッチ部材49を有している。そして、ロック機構28は、ラッチ部材49の他端側(先端部)が伝達機構27のクラッチボックス43に係合することで、駐車バネブレーキ機構25の作動時に軸部26の第2ピストン35に対する相対変位を規制して駐車バネブレーキ機構25を作動させたままロック状態とする機構として構成されている。また、ロック機構28は、更に、ラッチ付勢バネ50、ラッチロックピン51(ラッチロック部材)、等も備えて構成されている。
【0083】
ラッチ部材49は、その長手方向が、シリンダ23の軸方向に直交する方向に沿って、即ち、シリンダ23の径方向に沿って延びるように配置されている。そして、ラッチ部材49は、シリンダ23の径方向に沿ってスライド移動可能なように、シリンダ23に対して支持されている。ラッチ部材49は、シリンダ23の径方向に沿ってスライド移動し、伝達機構27側へ進出する方向(進出方向)へ移動した進出状態と、伝達機構27から退避する方向(退避方向)へ移動した退避状態と、に切替可能となっている。
【0084】
また、ラッチ部材49は、退避方向側の端部がシリンダ23から外側に突出した状態で、配置されている。尚、ラッチ部材49における退避方向側の部分は、シリンダ23に取り付けられてラッチ部材49のシリンダ23の外部への脱落を防止する抜け止め部材52によって、支持されている。
【0085】
また、ラッチ部材49は、進出方向側の端部の先端部に、クラッチボックス43に設けられたラッチ刃43cに対して係合する係合刃49aが設けられている。ラッチ刃43cは、ラッチ部材49の係合刃49aに噛み合って係合する刃として設けられている。そして、ラッチ刃43cは、クラッチボックス43のブレーキ作動方向における端部の外周に沿って多数並んで設けられている。
【0086】
また、ラッチ刃43c及び係合刃49aは、刃先がスピンドル38の軸方向と平行な方向に沿って延びるように構成されている。そして、ラッチ刃43cのいずれかに係合刃49aが係合していることで、シリンダ23に対するクラッチボックス43の相対回転が止められた状態が維持されることになる。即ち、スピンドル38の中心軸線を中心とするクラッチボックス43のシリンダ23内での回転が、ラッチ刃43cと係合刃49aとの係合によって規制される。そして、ラッチ刃43cと係合刃49aとの係合が解除されない限り、そのクラッチボックス43の回転が止められた状態が維持されることになる。
【0087】
ラッチ付勢バネ50は、ラッチ部材49をシリンダ23の内側に向かって付勢するバネとして設けられる。ラッチ付勢バネ50は、ラッチ部材49の長手方向(進退方向)において圧縮された状態でラッチ部材49の周囲に配置されたコイルバネとして設けられている。そして、ラッチ付勢バネ50は、進出方向側の端部が、ラッチ部材49の進出方向側に配置され、退避方向側の端部が、ラッチ部材49の退避方向側に配置されている。より詳細には、ラッチ付勢バネ50の退避方向側の端部が、シリンダ23に取り付けられた抜け止め部材52に対して当接して支持されている。そして、ラッチ付勢バネ50の退避方向側の端部が、ラッチ部材49の段部49bに当接して支持されている。
【0088】
上記により、ラッチ付勢バネ50は、シリンダ23に対して、ラッチ部材49をクラッチボックス43側(進出方向側)に向かって付勢するように構成されている。即ち、ラッチ付勢バネ50は、ラッチ部材49の係合刃49aをクラッチボックス43のラッチ刃43cに係合させる方向に付勢するように構成されている。
【0089】
また、ラッチ部材49における退避方向側の端部には、駐車バネブレーキ機構25の作動を手動で解放するために用いられる引き輪60が設けられている(
図1を参照)。引き輪60が作業者によって、外側に向かって引っ張り操作されることで、ラッチ付勢バネ50の付勢力に抗してラッチ部材49が外側に向かって引き出され、係合刃49aとラッチ刃43cとの係合が解除される。
【0090】
ラッチロックピン51は、ピン状の部材として設けられ、ガイド部23cの貫通孔23dに収容されている。これにより、ラッチロックピン51は、ガイド部23cに対して、スピンドル38の軸方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。尚、本実施形態では、シリンダ23の軸方向、スピンドル38の軸方向、及びラッチロックピン51の長手方向は、上下方向、即ち鉛直方向を向くように設定されている。なお、これに限らず、シリンダ23の軸方向、スピンドル38の軸方向、及びラッチロックピン51の長手方向は、どのような向きに設定されてもよい。
【0091】
また、ラッチロックピン51は、ブレーキ作動方向における端部側、即ち、下端側が、ラッチ部材49に設けられた貫通孔49cに挿入されている。ラッチ部材49の貫通孔49cは、ラッチ部材49の進出方向側において、スピンドル38の軸方向と平行な方向に沿ってラッチ部材49を貫通するように形成されている。
【0092】
また、ラッチ部材49には、貫通孔49cの内壁における退避方向側の部分から該ラッチ部材49の進出方向へ突出する突起状の押し上げ部49d(突出部)が設けられている。そして、ラッチロックピン51のブレーキ作動方向における端部には、スピンドル38の軸方向に対して斜めの方向に広がったテーパ面51a(傾斜部)が設けられている。ラッチ部材49は、このテーパ面51aが斜め下方(ラッチ部材49の退避方向且つ下方)を向くように、ガイド部23c内に収容されている。つまり、テーパ面51aは、ラッチ部材49の貫通孔49c内において、押し上げ部49dに当接可能に配置されている。
【0093】
図5は、ラッチロックピン51の形状を説明するための図であって、(A)は正面図、(B)は平面図、である。
図5(A)及び(B)に示すように、ラッチロックピン51には、切欠き部51bが形成されている。切欠き部51bは、
図5(A)における上方左側の部分が切除されることにより形成されている。すなわち、切欠き部51bは、ラッチロックピン51における軸方向(ブレーキ作動方向)と反対側の端部であって、左右方向におけるテーパ面51aと反対側(ラッチロックピン51がガイド部23cに収容された状態におけるラッチ部材49の進出方向側)に形成されている。
【0094】
上述のような構成のロック機構28において、ラッチ部材49がラッチ付勢バネ50に付勢されてクラッチボックス43に向かって移動した状態のとき(ラッチ部材49が進出状態のとき)には、押し上げ部49dがテーパ面51aを上方に押し上げた状態になる。よって、このときには、ラッチロックピン51は、ラッチ部材49側から退避方向へ退避した状態となる。
【0095】
一方、引き輪60が引っ張られると、ラッチ部材49がラッチ付勢バネ50の付勢力に抗してクラッチボックス43から離間する方向(退避方向)に移動して退避状態になる。すると、ラッチロックピン51は、所定の距離を落下してラッチ部材49側へ進出し、ラッチロックピン51におけるテーパ面51aが設けられている下端部が、逃がし孔53に挿入された状態となる。尚、逃がし孔53に挿入されたラッチロックピン51の端部は、第1ピストン31に当接して支持される。
【0096】
また、ラッチロックピン51は、駐車バネブレーキ機構25が作動した状態で、ブレーキ解除方向における端部、即ち、上端部において、第2ピストン35の内側筒状部35aに対して段状に設けられたリング状の端部に対して当接可能に配置されている。尚、駐車バネブレーキ機構25が作動した状態では、第2バネ34が第2ピストン35を付勢しているため、ロック機構28がロック状態及びロックが解除された状態のいずれの状態でも、ラッチロックピン51の上端部は、第2ピストン35に対して当接する。そして、駐車バネブレーキ機構25が作動した後に一旦ロック機構28が解除された状態では、ラッチロックピン51は、下端部が逃がし孔53に挿入された状態で、上端部が第2ピストン35に当接した状態となる。
【0097】
上記により、引き輪60を引っ張ってロック機構28のロック状態を解除した後、引き輪60を離した場合であっても、ラッチロックピン51が上方に押し戻されることが防止される。即ち、ラッチ付勢バネ50の付勢力を伝達するラッチ部材49の押し上げ部49dがテーパ面51aを付勢しても、ラッチロックピン51が上方に押し上げられることが防止される。これにより、ラッチ部材49がクラッチボックス43に向かって移動することが、ラッチロックピン51によって阻止される。そして、ラッチ部材49の係合刃49aがクラッチボックス43のラッチ刃43cに係合することが阻止される。
【0098】
伝達機構27及びロック機構28は、上述のように構成される。これにより、駐車バネブレーキ機構25が作動すると、伝達機構27により、スピンドル38と第2ピストン35とが連結される。即ち、第2圧力室33に圧縮空気が供給されている状態から排出される状態へと移行し、駐車バネブレーキ機構25が作動すると、第2バネ34の付勢力により第2ピストン35とともにクラッチスリーブ42がスピンドル38に対して移動する。そして、第2ピストン35がスピンドル38に対して移動すると、クラッチスリーブ42の凹凸歯46bとクラッチホイール41の凹凸歯46aとが噛み合う。これにより、クラッチホイール41の回転が止められてスピンドル38と第2ピストン35とが連結される連結状態となる。尚、駐車バネブレーキ機構25の作動は、流体ブレーキ機構24が作動した状態で行われる。即ち、第1圧力室29の圧縮空気が供給されて流体ブレーキ機構24が作動した状態で、第2圧力室33から圧縮空気が排出され、駐車バネブレーキ機構25が作動する。
【0099】
また、上記のように、駐車バネブレーキ機構25が作動してスピンドル38と第2ピストン35とが連結された状態では、ロック機構28がロック状態であれば、ロック機構28のラッチ部材49が伝達機構27に係合している。これにより、ロック機構28は、スピンドル38の第2ピストン35に対する相対変位を規制して駐車バネブレーキ機構25を作動させたままロック状態とするように構成されている。
【0100】
即ち、ラッチ付勢バネ50に付勢されたラッチ部材49の係合刃49aがクラッチボックス43のラッチ刃43cに係合していることで、クラッチボックス43の第2ピストン35及びシリンダ23に対する回転が規制されている。そして、クラッチボックス43に対するクラッチスリーブ42の回転が、クラッチボックス43の突出部43bとクラッチスリーブ42の溝との係合によって、規制されている。更に、凹凸歯46b及び凹凸歯46aの噛み合いにより、クラッチホイール41とクラッチスリーブ42との相対回転が規制され、スピンドル38のクラッチホイール41に対する相対回転も規制されている。
【0101】
このように、ロック機構28は、伝達機構27を介して、スピンドル38の第2ピストン35に対する相対変位を規制して駐車バネブレーキ機構25を作動させたままロック状態とするように構成されている。
【0102】
[回転防止部及び脱落防止部の構成]
第1実施形態に係るブレーキシリンダ装置2は、回転防止部5を備えている。回転防止部5は、ラッチロックピン51がガイド部23cに対して該ラッチロックピン51の進退方向周りに回転するのを防止するためのものである。本実施形態では、回転防止部5は、バネ座部57の延出部59で構成されている。
【0103】
延出部59は、上述のように、立設部58bの先端部から径方向外方へ延びるフランジ状に形成されている。
図4に示すように、延出部59の外縁部と、ガイド部23cに収容された状態のラッチロックピン51の切欠き部51bとの間には、径方向において僅かな隙間が形成されている。また、延出部59は、ブレーキ作動方向側の面が、ラッチロックピン51における退避方向側の端部、具体的には、切欠き部51bにおける退避方向側に向かって露出している部分51cに、軸方向において対向している。
【0104】
また、本実施形態に係るブレーキシリンダ装置2は、脱落防止部6を備えている。脱落防止部6は、回転防止部5と同様、延出部59で構成されている。すなわち、本実施形態では、回転防止部5と脱落防止部6とが、同じ構成要素で構成されている。脱落防止部6は、ラッチロックピン51がガイド部23cから脱落するのを防止するためのものである。また、脱落防止部6としての延出部59は、
図4に示すように、軸方向においてラッチロックピン51と重なるように配置されている。
【0105】
[装置の動作]
次に、ブレーキ装置1及びブレーキシリンダ装置2の動作について説明する。
図1は、流体ブレーキ機構24と駐車バネブレーキ機構25とがいずれも動作しておらず緩められた状態にあるブレーキ装置1及びブレーキシリンダ装置2を示している。例えば、鉄道車両の運転中でブレーキ動作が行われていないときは、
図1に示す状態となる。この状態では、前述したブレーキ制御装置(図示省略)によって、第1の圧縮空気供給源(図示省略)からブレーキ制御装置及び第1ポート37aを介した圧縮空気の第1圧力室29への供給は行われないように制御されている。そして、第1圧力室29内の圧縮空気はブレーキ制御装置及び第1ポート37aを介して自然に排出される。このため、シリンダ本体23a内において第1バネ30によって第1ピストン31がブレーキ解除方向(
図3の矢印D方向)に付勢され、第1ピストン31がシリンダ本体23aの内側の壁部であって第1圧力室29を区画する壁部に当接した状態となっている。
【0106】
一方、
図1に示す状態においては、前述した駐車バネブレーキ制御電磁弁(図示省略)の制御に基づいて、第2の圧縮空気供給源(図示省略)から駐車バネブレーキ制御電磁弁及び第2ポート37bを介して圧縮空気が第2圧力室33に供給される。このため、第2圧力室33に供給された圧縮空気の作用による付勢力によって第2ピストン35が第2バネ34の付勢力に抗してブレーキ解除方向に移動した状態となっている。この状態では、クラッチホイール41の凹凸歯46aとクラッチスリーブ42の凹凸歯46bとは噛み合っておらず、空隙が形成された状態になっている。
【0107】
一方、上記のブレーキ制御装置の制御に基づいて第1の圧縮空気供給源から圧縮空気が第1ポート37aを介して第1圧力室29に供給されることで流体ブレーキ機構24が作動する。このとき、第1圧力室29に供給された圧縮空気の作用による付勢力によって第1ピストン31が第1バネ30の付勢力に抗してブレーキ作動方向(
図3の矢印C方向)に移動する。これにより、第1ピストン31とともにロッド駆動部14もブレーキ作動方向に移動する。これにより、ロッド駆動部14の楔状部分14aによって、可動ローラ21が、固定ローラ20から離間しながら車輪100側に向かって付勢される。そして、可動ローラ21とともに、外側ケース部18、内側ケース部19及びロッド12が、車輪100側に向かって移動する。これにより、ロッド12とともに移動するブレーキ出力部11のライニング15が車輪100の踏面100aに当接し、車輪100の回転が制動される。
【0108】
また、上記の作動の際、第1ピストン31とともにスピンドル38もブレーキ作動方向に移動するが、スピンドル38に設けられたねじ部40にはクラッチホイール41が螺合している。しかし、スピンドル38が第1ピストン31とともにブレーキ作動方向に移動するときは、クラッチホイール41がクラッチボックス43に対して軸受44で回転自在に支持されている。このため、スピンドル38のブレーキ作動方向への移動に伴って、クラッチホイール41がスピンドル38の周りで回転する。これにより、スピンドル38のみがブレーキ作動方向に移動することになる。
【0109】
次に、駐車バネブレーキ機構25の作動について説明する。駐車バネブレーキ機構25は、流体ブレーキ機構24が作動して完全に鉄道車両が停止した状態で、用いられる。そして、駐車バネブレーキ機構25の作動は、流体ブレーキ機構24が作動したままの状態で行われる。即ち、第1圧力室29に圧縮空気が供給されて第1ピストン31がブレーキ作動方向に付勢されている状態で、駐車バネブレーキ機構25の作動が開始される。
【0110】
駐車バネブレーキ機構25は、前述の駐車バネブレーキ制御電磁弁の制御に基づいて、第2圧力室33から第2ポート37b及び駐車バネブレーキ制御電磁弁を介して圧縮空気が排出されることで作動する。第2圧力室33内に供給されていた圧縮空気が第2ポート37b及び駐車バネブレーキ制御電磁弁を介して排出されると、第2バネ34の付勢力によって第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動する。第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動すると、第2ピストン35とともにクラッチスリーブ42もブレーキ作動方向に移動する。そして、クラッチスリーブ42がクラッチホイール41に当接し、クラッチホイール41の凹凸歯46aとクラッチスリーブ42の凹凸歯46bとが噛み合う。
【0111】
上記の状態では、ラッチ部材49の係合刃49aとクラッチボックス43のラッチ刃43cとが係合し、クラッチボックス43のシリンダ本体23aに対する相対回転が規制されている。更に、クラッチボックス43に対してもクラッチスリーブ42の相対回転が規制されている。このため、凹凸歯46aと凹凸歯46bとが噛み合うと、シリンダ本体23aに対して、クラッチボックス43及びクラッチスリーブ42を介して、クラッチホイール41の回転が規制されることになる。これにより、クラッチホイール41の回転が止められてスピンドル38と第2ピストン35とが連結された状態となる。そして、この状態では、ロック機構28により、駐車バネブレーキ機構25は、作動した状態のままロックされたロック状態となっている。このロック状態では、車輪100の回転が制動された状態、即ち、駐車バネブレーキ機構25が作動した状態が維持される。尚、駐車バネブレーキ機構25を一旦作動させた状態では、第1圧力室29への圧縮空気の供給が行われず、徐々に、第1圧力室29から圧縮空気が排出された状態となる。
【0112】
次に、ロック機構28のロック状態が解除されたときのブレーキ装置1の動作について説明する。ロック機構28のロック状態の解除は、例えば、第2圧力室33に圧縮空気を供給して駐車バネブレーキ機構25の作動を解除することまでせずに鉄道車両の駐車位置を牽引車で少し移動させたい場合などに行われる。
【0113】
ロック状態の解除を行う場合、作業者によって引き輪60の引っ張り操作が行われる。これにより、ラッチ部材49の係合刃49aがクラッチボックス43のラッチ刃43cから離間するため、クラッチボックス43に対するラッチ部材49の係合が解除される。
【0114】
ラッチ部材49の係合刃49aとクラッチボックス43のラッチ刃43cとの係合が解除されると、クラッチボックス43が、シリンダ23に対して相対回転可能な状態となる。即ち、クラッチボックス43と、クラッチボックス43に対して突出部43bにて係合したクラッチスリーブ42と、クラッチスリーブ42に対して凹凸歯46a,46bを介して噛み合ったクラッチホイール41とが、一体の状態で、シリンダ23に対して相対回転可能な状態となる。
【0115】
クラッチボックス43、クラッチスリーブ42及びクラッチホイール41がシリンダ23に対して相対回転可能な状態では、スピンドル38と第2ピストン35との連結が解除された状態となる。即ち、スピンドル38の第2ピストン35に対する相対回転が許容された状態となる。そして、上記の状態では、第1圧力室29には圧縮空気は供給されていない。このため、第1ピストン31を付勢する第1バネ30の付勢力によって、第1ピストン31とともにスピンドル38がブレーキ解除方向に移動することになる。そして、スピンドル38のブレーキ解除方向への移動に伴って、クラッチボックス43、クラッチスリーブ42及びクラッチホイール41がシリンダ23に対して回転し、スピンドル38のブレーキ解除方向への移動が許容されることになる。
【0116】
上記のように、引き輪60が手動操作によって引っ張られることで、スピンドル38の第2ピストン35に対する相対変位が許容されてロック機構28による駐車バネブレーキ機構25のロック状態が解除される。これにより、駐車バネブレーキ機構25の作動が手動で解放されることになる。
【0117】
そして、上述のようにロック状態が解除された状態では、ラッチ部材49が退避状態となるため、ラッチ部材49の押し上げ部49dとラッチロックピン51のテーパ面51aとの係合が解除される。よって、ラッチロックピン51がラッチ部材49の貫通孔49cを落下してラッチ部材49側へ進出し、その先端部が逃がし孔53に挿入した状態になる。また、このラッチロックピン51の進出に伴い、第2バネ34に付勢される第2ピストン35がブレーキ作動方向に進出して、ラッチロックピン51における退避方向側の面に当接する。これにより、第2ピストン35によってラッチロックピン51が退避方向側から押圧される。従って、引き輪60を離した場合であっても、ラッチロックピン51が上方に押し戻されることが防止される。
【0118】
[回転防止部及び脱落防止部の動作]
ところで、上述した特許文献1に記載のブレーキシリンダ装置において、何らかの要因により、ラッチロックピンが回転又はガイド部から脱落してしまことが考えられる。具体的には、例えば車両における設置スペースの都合上、駐車バネブレーキ機構が流体ブレーキ機構よりも上方となるように配置された場合、ラッチロックピンが回転又は脱落しやすくなる。そうなると、ラッチロックピンのテーパ面がラッチ部材の押し上げ部に係合しなくなる場合があり、ラッチロックピンが正常に動作しなくなってしまう。
【0119】
具体的には、テーパ面と押し上げ部とが係合しないと、例えば、ラッチロックピンが逃がし孔に嵌りこんだ後に再びロック機構をロック状態に戻したい場合に、押し上げ部でラッチロックピンを押し上げることが困難になる。
【0120】
これに対して、本実施形態に係るブレーキシリンダ装置2は、上述のように、延出部59を有する回転防止部5を備えている。回転防止部5では、ラッチロックピン51が回転しようとしても、延出部59の外縁部がラッチロックピン51の切欠き部51bに当接するため、ラッチロックピン51の回転が規制される。これにより、ラッチロックピン51の回転が防止される。その結果、例えば何らかの理由によりラッチロックピン51がガイド部23cから脱落した場合であっても、再びラッチロックピン51がガイド部23cに収容されたときには、テーパ面51aが押し上げ部49dに対して正常に係合する。
【0121】
[効果]
以上説明したように、実施形態1に係るブレーキシリンダ装置2では、ラッチロックピン51が該ラッチロックピン51の進退方向周りに回転するのを防止する回転防止部5を設けている。これにより、何らかの要因によりラッチロックピン51が回転し、ラッチ部材49の押し上げ部49dとラッチロックピン51のテーパ面51aとが係合しなくなるのを防止でき、ラッチ部材49が正常に動作しなくなるのを回避できる。
【0122】
また、ブレーキシリンダ装置2では、上述のように脱落防止部6を設けているため、ラッチロックピン51がガイド部23cから脱落することに起因してラッチロックピン51が回転するのを防止できる。従って、ラッチ部材49の正常な動作をより確実に確保できる。
【0123】
また、ブレーキシリンダ装置2では、脱落防止部6としての延出部59が、該ラッチロックピン51の進退方向において、ラッチロックピン51と重なるように配置されている。これにより、脱落防止部6とラッチロックピン51とが直列に配列されるのが防止される。従って、ラッチロックピン51の進退方向におけるブレーキシリンダ装置2のサイズをコンパクトにできる。
【0124】
また、ブレーキシリンダ装置において、例えば第2ピストンに脱落防止部を形成すると、第2ピストンがブレーキ作動方向に進出したときに、脱落防止部によってラッチロックピン51を押圧してしまう事態が生じうる。すなわち、本来はラッチロックピンの押圧が必要とならない場合において、ラッチロックピンを押圧してしまうおそれが生じる。
【0125】
これに対して、ブレーキシリンダ装置2では、第2位置調整バネ47bを受けるバネ座部57の延出部59を、脱落防止部6として設けているため、第2ピストン35の進出状態によってラッチロックピン51が誤って押圧されてしまうことを回避できる。すなわち、この構成では、脱落防止部6を、適切な部位に設けることができる。
【0126】
また、ブレーキシリンダ装置2では、例えば上述した特許文献1に開示されるブレーキシリンダ装置に対して大幅な形状変更を行うことなく、ラッチ部材49とラッチロックピン51との正常な係合を確保できる。具体的には、ブレーキシリンダ装置2では、特許文献1のブレーキシリンダ装置に対して、ラッチロックピン51及びバネ座部57の形状を一部変更すればよく、シリンダ23などの比較的大きな部品の形状を変更する必要がないため、金型修正等の追加コストの増大を抑制できる。
【0127】
また、ブレーキ装置1によると、ラッチ部材49に対するラッチロックピン51の正常な係合を確保可能なブレーキ装置1を提供できる。
【0128】
(第2実施形態)
[全体構成]
図6は、第2実施形態に係るブレーキ装置3の一部断面を含む図である。また、
図7は、ブレーキ装置3のブレーキシリンダ装置4を示す図である。なお、
図6では、ハッチングを省略している。第2実施形態に係るブレーキ装置3は、ブレーキシリンダ装置4、ブレーキ出力部61、ロッド部62、ブレーキ梃子64、等を備えている。ブレーキ装置3では、ブレーキシリンダ装置4が作動することで、ブレーキ梃子64のアーム部65が支点64aを中心として揺動する。これにより、ブレーキ出力部61が、アーム部65の先端側に設けられた球面軸受66、及びロッド部62を介して駆動され、ブレーキ力を出力する。
【0129】
[ブレーキシリンダ装置]
第2実施形態に係るブレーキシリンダ装置4は、シリンダ73、流体ブレーキ機構74、駐車バネブレーキ機構75、スピンドル76(ブレーキ力伝達部)、伝達機構27(クラッチ機構)、ロック機構28、等を備えて構成されている。第2実施形態に係るブレーキシリンダ装置4も、第1実施形態に係るブレーキシリンダ装置2と同様、圧力流体として圧縮空気の供給及び排出が行われることで作動する流体ブレーキ機構74及び駐車バネブレーキ機構75の両方が作動可能な装置として構成されている。
【0130】
なお、第2実施形態に係るブレーキシリンダ装置4は、第1実施形態に係るブレーキシリンダ装置2と比べて、2つのブレーキ機構74,75の構成及び位置関係が大きく異なっている。具体的には、第1実施形態に係るブレーキシリンダ装置2では、2つのブレーキ機構24,25がブレーキ作動方向に直列となるように配置されているのに対し、第2実施形態に係るブレーキシリンダ装置4では、2つのブレーキ機構74,75がブレーキ作動方向に重なるように配置されている。すなわち、第2実施形態に係るブレーキシリンダ装置4は、装置の全長が短くなるように構成されている。
【0131】
以下では、上述した実施形態1と比べて構成が大きく異なる部分(シリンダ73、流体ブレーキ機構74、駐車バネブレーキ機構75、スピンドル76等)について主に説明し、それ以外の部分については、説明を省略する。
【0132】
シリンダ73は、複数の部材が互いに組み合わせられることにより略有底筒状に形成されている。シリンダ73の開口部には、上述したロッド部62及びブレーキ梃子64等が収容されるケース63が取り付けられている。シリンダ73には、流体ブレーキ機構74、駐車バネブレーキ機構75、スピンドル76、伝達機構27、等が収容されている。
【0133】
流体ブレーキ機構74は、第1実施形態の場合と同様、鉄道車両の運転時のブレーキ動作のために用いられる常用ブレーキ機構として設けられている。流体ブレーキ機構74は、第1圧縮室79、第1バネ80、第1ピストン81、等を備えて構成されている。
【0134】
第1圧縮室79は、シリンダ73の底部73aと第1ピストン81とによって区画されている。第1バネ80は、一端側が第1ピストン81における第1圧縮室79と反対側の部分に当接し、他端側が第2ピストン85に当接する。これにより、第1バネ80は、第2ピストン85に対して第1ピストン81を、ブレーキ作動方向と反対方向(
図7の矢印D方向)へ付勢している。第1ピストン81は、シリンダ73の筒軸方向に沿って進退可能なように、該シリンダ73の底部73aに対向するように該シリンダ73内に収容されている。第1ピストン81は、第1圧縮室79に圧縮空気が供給されることで、圧縮された第1バネ30の弾性回復による付勢力に抗してブレーキ作動方向(
図7の矢印C方向)へ移動する。また、第1ピストン81におけるブレーキ作動方向側の面には、シリンダ73の筒軸と同軸となるように配置されたスピンドル76がボルトにより固定されている。
【0135】
駐車バネブレーキ機構75は、第1実施形態の場合と同様、鉄道車両の駐車時にブレーキ状態を維持するために用いられる駐車用のブレーキ機構として設けられている。駐車バネブレーキ機構75は、第2圧縮室83、第2バネ84、第2ピストン85、等を備えて構成されている。
【0136】
第2圧縮室83は、ケース63におけるシリンダ73の開口部を覆っている部分と第2ピストン85とによって区画されている。第2バネ84は、一端側がシリンダ73に当接し、他端側が第2ピストン85に当接する。第2バネ84は、シリンダ73に対して第2ピストン85をブレーキ作動方向(
図7の矢印C方向)へ付勢している。第2ピストン85は、シリンダ73の筒軸方向に沿って進退可能なように、シリンダ73内における第1ピストン81よりもブレーキ作動方向側の領域に収容されている。
【0137】
スピンドル76は、ブレーキ作動方向に沿って延びるように配置される略棒状の部材である。スピンドル76は、一端部(ブレーキ解除方向側の端部)が第1ピストン81に固定され、他端部には開口部76aが形成されている。この開口部76aには、ブレーキ梃子64のアーム部65の一端側に形成された力点部64bが摺動自在に挿通している。また、スピンドル76の外周面における開口部76a側の部分には、ネジ部76bが形成されている。
【0138】
スピンドル76は、ブレーキシリンダ装置4のブレーキ力を出力する際の作動に伴ってブレーキ作動方向(
図6の矢印C方向)に向かって移動する。そうすると、スピンドル76の開口部76a内において摺動自在に挿通するアーム部65の力点部64bもブレーキ作動方向に移動する。これにより、アーム部65における力点部64bと反対側に設けられた球面軸受66が
図6の矢印A方向に移動するため、ブレーキ出力部61からブレーキ力が発生する。
【0139】
伝達機構27は、駐車バネブレーキ機構75における第2ピストン85のブレーキ作動方向の付勢力をスピンドル76に伝達する機構として設けられている。伝達機構27は、ネジ部76b、クラッチホイール41、クラッチスリーブ42、クラッチボックス43、等を備えている。伝達機構27は、第1実施形態の場合と同様に動作する。
【0140】
図8は、
図7の一部を拡大して示す図であって、ロック機構28付近の拡大図である。
図7及び
図8に示すように、ロック機構28は、上記実施形態1の場合と同様、ラッチ部材49、ラッチ付勢バネ50、引き輪60、及びラッチロックピン51等を備えている。ロック機構28は、第1実施形態の場合と同様に動作する。
【0141】
[回転防止部及び脱落防止部]
実施形態2に係るブレーキシリンダ装置4も、実施形態1の場合と同様、バネ座部57の延出部59で構成された回転防止部5及び脱落防止部6を備えている。回転防止部5としての延出部59は、実施形態1の場合と同様、ラッチロックピン51がガイド部23cに対して該ラッチロックピン51の進退方向周りに回転しようとしても、延出部59の外縁部がラッチロックピン51の切欠き部61bに当接する。これにより、ラッチロックピン51の回転が防止される。また、脱落防止部6としての延出部59は、実施形態1の場合と同様、ラッチロックピン51がガイド部23cから脱落しようとしても、ラッチロックピン51が延出部59に引っかかるため、ラッチロックピン51の脱落が防止される。
【0142】
以上のように、本実施形態2に係るブレーキ装置3及びブレーキシリンダ装置4でも、上記実施形態1の場合と同様、ラッチロックピン51の回転及び脱落が防止されるため、ラッチ部材49の正常な動作が確保される。
【0143】
(変形例)
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、次のような変形例を実施することができる。
【0144】
(1)
図9は、変形例に係るブレーキシリンダ装置の一部を拡大して示す断面図である。本変形例では、上記各実施形態の場合と異なり、バネ座部57の延出部59、及びラッチロックピン51の切欠き部51bが省略された構成となっている。そして、本変形例では、回転防止部及び脱落防止部を、コイルバネ7で構成している。
【0145】
コイルバネ7は、一端側が第2ピストン35におけるブレーキ作動方向側の端部に当接する一方、他端側がラッチロックピン51に当接するように配置されている。コイルバネ7は、シリンダ23内において第2ピストンが最もブレーキ解除方向側に位置している状態において、ラッチロックピン51をブレーキ作動方向側へ押圧するような長さに設定されている。これにより、ラッチロックピン51がガイド部23cから脱落しない方向へ付勢されるため、ラッチロックピン51の回転及び脱落を防止できる。
【0146】
(2)上記各実施形態では、ブレーキシリンダ装置2,4に、回転防止部5及び脱落防止部6の両方を設けているが、これに限らず、回転防止部5のみを設けてもよい。例えば、ラッチロックピン51に、該ラッチロックピン51の長手方向に延びる溝部を形成するとともに、バネ座部57に、前記溝部の内部に向かって突出する回転防止部5としての突起部を形成してもよい。これにより、ラッチロックピン51が回転しようとしても、突起部がラッチロックピン51の溝部に引っかかるため、ラッチロックピン51の回転を防止できる。なお、上記突起部は、バネ座部57に限らず、ガイド部23cに形成することもできる。
【0147】
(3)上記各実施形態では、ラッチロックピン51を略丸棒状、すなわち、軸直角断面の形状が円形となるように形成したが、これに限らず、円形以外の形状、例えば、矩形状、多角形状、楕円状などで形成してもよい。この場合、ガイド部の形状は、それらの形状に合わせて形成すればよい。例えば、ラッチロックピンを角棒状に形成した場合、ガイド部の形状を、該角棒状のラッチロックピンが摺動可能な矩形状に形成すればよい。こうすると、ラッチロックピンの回転を、回転防止部として機能するガイド部によって防止することができる。