(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166370
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】防波壁機能を有する組立式高さ可変型遮断構造物
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
E02B3/06
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-525384(P2015-525384)
(86)(22)【出願日】2014年1月23日
(65)【公表番号】特表2016-503467(P2016-503467A)
(43)【公表日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】KR2014000683
(87)【国際公開番号】WO2014119877
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2015年1月28日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0011730
(32)【優先日】2013年2月1日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515026144
【氏名又は名称】カン、ナム グ
【氏名又は名称原語表記】KANG,Nam Gu
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】カン、ナム グ
【審査官】
石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】
韓国登録実用新案第20−0464803(KR,Y1)
【文献】
韓国公開特許第10−2009−0098188(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/00− 7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さを可変させることができる遮断構造物として、前記構造物を設置するための位置に掘削空間を形成し、前記掘削空間に左右一組のブロックで構成される少なくとも一層以上の下部ブロック体と、最上部層には上部が塞がった最上部層ブロック体が昇下降するように設置され、
前記下部ブロック体においては、左右両側のブロックを連結支持する支持台が一つ以上連結され、各ブロックには、シリンダ締結台を介したシリンダが配置されると共に、シリンダのロッドが通るシリンダ用ガイド溝が上下方向に一つ以上形成され、一層上のブロックを昇下降可能であり、
前記最上部層ブロック体においては、左右両側のブロックを連結支持する支持台が一つ以上連結され、各ブロックには、下の層のブロックのシリンダのロッドが通るシリンダ用ガイド溝が上下方向に一つ以上形成され、
また、前記各シリンダの動作による各ブロックの昇下降に伴い各ブロック下端から外側に突出した凸状部分を案内する各ブロック案内部が、前記各ブロックの一層下の各ブロックに形成される
ことを特徴とする高さ可変型遮断構造物。
【請求項2】
前記高さ可変型遮断構造物は、防波壁または水中堰である
請求項1に記載の高さ可変型遮断構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は遮断構造物に関するもので、より詳細には水の氾濫を防ぐための堤防、防波壁として使用するのはもちろん、道路や歩道などで通行を止めるための遮断物や落石などを防止するための構造物としても使用することができ、可変水中堰としても使用可能な高さ可変型遮断構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に防波壁は、波や高潮などを防ぐために港湾に積み上げた堰を意味し、堤防は洪水を防いだり、水に抵抗するために河川や湖または海の周囲に土などを高く積んで防ぐ丘を意味する。
【0003】
しかし、現在は気象異変などで、海岸を大きな高潮である津波などが襲うケースが頻繁にあり、河川や湖などの周辺の堤防も管理不足や集中豪雨などで崩れ落ち、人命被害はもちろん、農耕地などの浸水で莫大な経済的損失を被るケースが増えている。
【0004】
また、山崩れなどによって道路が塞がれるケースもあり、危険地域において必要時に道路統制などを効果的に行うことができずに二次的な被害に遭うケースも頻繁にあった。
【0005】
上記のような問題点により、防波堤や貯水池堰などに関する多様な試みがなされた。例えば特許文献1では、貯水池および河川で水を防いで抵抗したり、水の流れを誘導する貯水池で止水利用堰およびダムなどの水が多くなり過ぎてあふれて流れた場合、下側に埋設された放流管用水門を開けて放流することができる貯水池堰および堤防用放流管を開示しているが、可変構造物を使用してはいない。
【0006】
また別の特許文献2では、海水循環および消波機能を有する直立式防波構造物を開示しているが、この発明は潮止めを直線ではなく曲線型にして補助止めを前記潮止め内側に可変型で設置し、海上の波高に応じて構造物の高さを可変させてくれるものであり、これは補助止めに具備された浮力体によって伸縮可能にしていることから、本発明が追求するところとは距離がある発明である。
【0007】
一方、特許文献3では、水位に応じて自動的に高さが調節される防波堤および防波堤兼用係留場を開示しているが、上記特許では海底面までパイルを打ち込まなければならないなど、非経済的なものと判断され、また別の特許文献4でも浮遊式防波堤を開示しているが、浮力体などを使用することから、本発明が追及する目的とは異なる発明と判断される。
【0008】
本出願人は、上記のような従来技術とは異なり、特許文献5では潜水型堰を、特許文献6では高さ可変型遮断構造物を開示した。
【0009】
しかし、上記の登録特許では、シャッター装置を具備しなければならないなどの付随的な問題があり、上記の登録考案では、
図1のように油圧シリンダ(240)のロッド(242)のサイズ限定により、その高さが制限的にならざるを得ないという問題点が発見された。
【0010】
また、有事の際や必要時には道路などを遮断するケースがあり、このために通常バリケードという鉄構造物を移動設置するが、これは単純に視覚的な通行止めの役割があるだけで、物理的な阻止手段としては不適合な限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国登録特許第10−473937号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10−0660012号公報
【特許文献3】韓国登録特許第10−1026249号公報
【特許文献4】韓国登録特許第10−1207609号公報
【特許文献5】韓国登録特許第10−0990698号公報
【特許文献6】韓国登録実用新案第20−0464803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、必要時に構造物の高さを調節して高潮などを防止することができる防波壁、洪水などを防止することができる堤防、落石防止構造物や道路遮断構造物、または川や河川の堰として使用することができ、普段は構成要素を底の中に隠すことができるようにし、歩道や通路などにまたは水を流すことができるようにする役割を果たす多目的高さ可変型遮断構造物を提供することにその目的がある。
【0013】
本発明は、上記の本発明の目的を達成するために;設置しようとする位置の底下部に掘削空間を形成し、前記掘削空間に左右一組のブロックで構成される少なくとも一つ以上のブロック体と、上部層には上部が塞がった仕上げブロック体が昇下降するように設置する多目的高さ可変型遮断構造物を提供する。
【0014】
上記において、左右一組のブロック体には両側のブロックを連結支持する支持台が一つ以上連結され、各ブロックにはシリンダ用ガイド溝が一つ以上形成され、シリンダ締結台が一つ以上締結され、下部層を除いた各ブロック体のブロックには支持台案内口が一つ以上形成されることが好ましく、最下層を除いた各ブロックには気密部材をさらに設置することもできる。
【0015】
上記において、高さ可変型遮断構造物は防波堤として使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記のような本発明による高さ可変型遮断構造物は、各ブロック体が昇下降することができ、川や河川の水位を必要に応じて調節することができるようになるのはもちろん、高潮や津波などを防ぐことができ、河川や川の洪水や豪雨に伴う風を防ぐことができ、落石を防止する用途で使用したり、道路や歩道の遮断構造物として使用することができるなど、多目的の効果を期待することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】本発明高さ可変型遮断構造物の一実施例による稼働状態断面図
【
図5】本発明高さ可変型遮断構造物の一実施例による隠した状態の断面図
【
図6】本発明高さ可変型遮断構造物の一実施例による稼働状態斜視図
【
図7】本発明高さ可変型遮断構造物のまた別の一実施例による稼働状態斜視図
【
図8】本発明高さ可変型遮断構造物の一実施例設置概略図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施例を通して、本発明をより詳細に説明する。下記の説明は本発明の理解と実施を助けるためのものであり、本発明をこれに限定するものではない。当業者は、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の思想内で多様な変形および変更を行う可能性があることを理解するものである。
【0019】
図2は、本発明による多目的高さ可変型遮断構造物の斜視図で、
図3は
図2の分解斜視図である。
まず、
図2および
図3を参考にすると、本発明による遮断構造物(100)は、高潮被害が頻繁な海岸地帯、防波堤の流失および維持管理が難しい場所、車両および安全事故の危険がある海岸近接道路、農道、橋梁活用が多く川や河川、洪水や豪雨時に堰の役割が不十分な場所、有事の際に道路や歩道を遮断しなければならない場所や落石を防止する必要がある場所などに設置するもので、設置しようとする位置の地中(G)に掘削空間(300)を形成し(
図4および
図5参照)、前記の掘削空間(300)は本発明による遮断構造物(100)が設置されている空間で、底面と壁面をコンクリートで打設して施工する。
【0020】
図2および3で、本発明の遮断構造物(100)は、左右一組のブロックで形成される第1ブロック体(110)ないし第4ブロック体(140)で構成されているが、上記において中間ブロック体(120、130)は設置位置の状況に応じて省略することもでき、より多くのブロック体を構成してさらに高く稼働することもできる。
【0021】
本図面では、ブロック体を4個にして説明するが、ブロック体は1個以上であれば良い。
【0022】
図面において、本発明の構造物(100)のうち最下層である第1ブロック体(110)は、左右ブロックの一組で構成され、左右ブロックは一つ以上の支持台(111)で固定支持される。前記第1ブロック体(110)には、各ブロックに少なくとも一つ以上の油圧シリンダ(S)が配置されるが、前記油圧シリンダ(S)を設置するために左右ブロックそれぞれには一つ以上のシリンダ用ガイド溝(112)が形成され、前記ガイド溝(112)でシリンダ(S)のロッドが油圧により同時に上下作動する。第1ブロック体(110)のシリンダは、掘削空間(300)底に設置する。
【0023】
また、第1ブロック体(110)には、上部のブロック体(120)を上下移動させるためのシリンダ(S)を設置するためのシリンダ締結台(113)が一つ以上設置され、その上部として上に設置される第2ブロック体(120)を上下移動させるためのシリンダ(S)が一つ以上設置される。前記の第1ブロック体(110)にはまた、その上に設置される第2ブロック体(120)の支持台(121)を案内する支持台案内部(114)が形成される。
【0024】
もちろん、最上部層ブロック体(140)には、シリンダ(S)が設置されないため、シリンダガイド溝(142)のみ形成され、シリンダ締結台は設置されない。
【0025】
本発明ではまた、最下層の第1ブロック体(110)を除いて上部に設置されるブロック体、例えば図面のように4段である場合のブロック体(120〜140)の下部にはその下層のブロック、例えば第1ブロック体(110)の支持台(111)に合わせて案内する案内口(125)が第2ブロック体(120)に形成され、下降時に下ブロックの支持台に案内されて締結される。
【0026】
また、本発明でのブロック体のうち最上部のブロック、例えば第4ブロック体(140)の上部は左右ブロック型ではなく上部蓋(145)がある一体型にし、すべてが下降して掘削空間(300:
図5参照)に隠れた時、その上部は閉鎖されて水が流れるようにしたり、歩道、車道などの役割を果たすことができるようにする。
【0027】
上記のとおりに構成される本発明の遮断構造物(100)では、したがって最下部のブロック(110)上部に設置されるブロック体(120〜140)の支持台案内口(125〜145)は、その下部の支持台(111〜131)の厚さや幅より若干の余裕をもたせて収まるように形成させる。
【0028】
また、下部ブロック体(110,120,130)には、その上部ブロック体(120,130,140)の支持台(121,131,141)がブロック体(120)の上下移動に応じて移動することができる支持台案内部(114,124,134)が、それぞれ支持台の数だけ形成される。
【0029】
以下では、添付図面を参考にして、例示として図示した4段ブロック型の潜水型稼働堰(100)の作動関係を簡単に確認する。
【0030】
図4および
図5を参照すると、
図4は本発明の一実施例による4段構造物をすべて稼動させた断面図で、
図5は4段堰を掘削空間(300)内に隠した状態の断面図である。
【0031】
図4をまず参照すると、例えば、防波堤として使用することができる本発明による遮断構造物(100)のすべてのブロック体(110〜140)が波(W)の高さに応じて昇降すれば、海水(W)の波があふれるのを防止できるようになる。
【0032】
上記で、遮断構造物(100)のブロック(110〜140)の昇降は、上記の特許においてと同様に掘削空間(300)内の底に設置されたブロック体(110)を上昇させるための一つ以上の油圧シリンダ(S)を作動させて第1ブロック体(110)を上昇させ、第1ブロック体(110)のシリンダ締結台(113)に固定締結されたシリンダ(S)を巻線ロール(400)に連結された油圧ラインを通じて第2ブロック体(120)を上昇させ、第3ブロック体と第4ブロック体(130,140)も同じ方法で上昇させれば良い。ここで、各ブロック体(110〜140)の固定および力の維持は、支持台(111〜141)と各油圧シリンダ(S)が行い、必要に応じて最上部ブロック体(140)には、斜線のように補強材を重ねて当てることもできる。
【0033】
上記で、図面符号(200)は気密部材として、各ブロック(110〜140)が上昇する時や下降する時に内部に水が入ってこないようにするもので、通常の方法で締結や固定または形成すれば良い。すなわち、本出願人名義の登録実用新案第20−0464803号に開示された気密部材を使用することもできる。
【0034】
図5は、上記のとおり4段ブロック体(110〜140)すべてを掘削空間(G)内に隠した断面図で、
図3を同時に参照すると、最上部の第4ブロック体(140)の各支持台案内口(145)は下部の支持台(111,121,131)を抱え込むことになり、各支持台(121,131,141)は各下部の支持台案内部(114,124,134)の中に入ることになり、
図5のように掘削空間(G)内にすべて入ることになる。
【0035】
図6は、本発明のまた別の実施例として、最下層ブロック体(110)上部の各ブロック体(120,130,140)の左右ブロックの外部側を突起部型に形成し、これによって下部を構造させ、前記各突起型外側に気密部材(200)を設置した姿であり、
図7はまた別の実施例として、
図6に示すような構造で気密部材(200)を各下部ブロック体の上部ブロック突起部が移動する場所に設置した姿を示すものである。
【0036】
図6および
図7の実施例での作動関係は、前記実施例と同一であるため、その説明は省略する。
【0037】
図8は、本発明の一実施例による遮断構造物を設置した概略図である。
【0038】
本発明での構造物は、鉄構造物またはコンクリート構造物やこれらの混合で形成させることができる。
【符号の説明】
【0039】
110、120、130、140 ブロック
111、121、131、141 支持台
112、122、132、142 シリンダガイド溝
113、123、133 シリンダ締結台
114、124、134 支持台案内部
125、135、145 支持台案内口